特許第5927970号(P5927970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5927970
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20160519BHJP
【FI】
   B60N2/06
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-30749(P2012-30749)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-166452(P2013-166452A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】林 貴文
(72)【発明者】
【氏名】阪口 航
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直希
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭61−030915(JP,Y2)
【文献】 特開2004−352229(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0006355(US,A1)
【文献】 特開昭62−077246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロア及びシートのいずれか一方に固定される金属板からなる第1レールと、前記車両フロア及び前記シートのいずれか他方に固定され前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールとを備える車両用シートスライド装置において、
前記第1レールの長手方向端部には、前記第1レールの底壁部に対して該第1レールの立設方向にずれた、締結部材の頭部を支持するための座面が形成されており、
前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側で前記座面及び前記底壁部を接続する接続部は、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側に位置する1点で交差するように放射状に延びる直線群を稜線とする複数の平面を有するように成形されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記直線群は、隣り合う直線との間で三角面を形成することを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項3】
車両フロア及びシートのいずれか一方に固定される金属板からなる第1レールと、前記車両フロア及び前記シートのいずれか他方に固定され前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールとを備える車両用シートスライド装置において、
前記第1レールの長手方向端部には、前記第1レールの底壁部に対して該第1レールの立設方向にずれた、締結部材の頭部を支持するための座面が形成されており、
前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側で前記座面及び前記底壁部を接続する接続部は、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側に位置する1点で交差するように放射状に延びる無限数の直線群からなる曲面を有するように成形されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記第1レール及び前記第2レールの相対移動に際し、前記第2レールが摺動可能な前記第1レールの部位は、前記接続部よりも前記レールの長手方向中間部側に収まるように設定されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記第1レール及び前記第2レールの相対移動に際し、前記第2レールが摺動可能な前記第1レールの部位は、幅方向において前記接続部よりも外側に収まるように設定されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記接続部の幅方向の断面形状の長さから前記接続部の幅方向の距離を減算した長さは、前記接続部を展開したときの幅方向への突出長と同等に設定されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートスライド装置として種々のものが知られている。例えば特許文献1に記載された車両用シートスライド装置では、図11に示すように、車両フロアに固定されるブラケット100にロアレール110の底壁111端部をねじ120にて円滑に締結するべく、例えば絞り成形にてねじ120を取り付けるための座面112を、ロアレール110の底壁111に対して傾斜させることが提案されている。この場合、ねじ120の締結方向を底壁111の直交方向に対して傾斜させることができる。これにより、ねじ120を締め付けるためのねじ回し装置121を、シートの前方又は後方から使用でき、円滑な組付作業が実現される。
【0003】
一方、特許文献2に記載された車両用シートスライド装置では、図12に示すように、車両フロア側に固定されるロアレール150の任意の位置に、例えば絞り成形にてねじを取り付けるための略円形の座面151を形成することが提案されている。そして、ロアレール150の幅方向両端から下向きに折り返す一対のフランジ部152には、座面151に取り付けるねじの頭部を通すための切り込み152aが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−35136号公報
【特許文献2】特許第4791553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2では、ロアレール110,150の長手方向に一定となる断面形状を、例えばプレス成形にて曲げ成形することになる。つまり、ロアレール110,150の製造には、曲げ成形の工程と絞り成形の工程とが必要となる。この場合、例えばロアレール110,150の断面形状の成形後(曲げ成形の工程後)に座面112,151を成形すると、前工程で成形したロアレール110,150の断面形状の寸法に歪みが生じ、アッパレールと組み合わせたときのスライド作動の性能が劣化する可能性がある。
【0006】
反対に、座面112,151の成形後(絞り成形の工程後)にロアレール110,150の断面形状を成形する場合には、絞り成形分を考慮したロアレール110,150の素材外形を厳密に定めることが困難であることから、ロアレール110,150の断面形状を高精度に成形することが困難となる。
【0007】
また、通常、絞り成形では、一度に変形できる量には限界があり、製造工数を増加させない限り座面の設計自由度の低下を余儀なくされる。
本発明の目的は、座面の設計自由度を低下することなく、レールの断面形状を長手方向に一定となるようにより高精度に成形することができる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両フロア及びシートのいずれか一方に固定される金属板からなる第1レールと、前記車両フロア及び前記シートのいずれか他方に固定され前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールとを備える車両用シートスライド装置において、前記第1レールの長手方向端部には、前記第1レールの底壁部に対して該第1レールの立設方向にずれた、締結部材の頭部を支持するための座面が形成されており、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側で前記座面及び前記底壁部を接続する接続部は、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側に位置する1点で交差するように放射状に延びる直線群を稜線とする複数の平面を有するように成形されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、車両フロア及びシートのいずれか一方に固定される金属板からなる第1レールと、前記車両フロア及び前記シートのいずれか他方に固定され前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールとを備える車両用シートスライド装置において、前記第1レールの長手方向端部には、前記第1レールの底壁部に対して該第1レールの立設方向にずれた、締結部材の頭部を支持するための座面が形成されており、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側で前記座面及び前記底壁部を接続する接続部は、前記座面よりも前記第1レールの長手方向中間部側に位置する1点で交差するように放射状に延びる無限数の直線群からなる曲面を有するように成形されていることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記接続部の有する直線群(例えば折曲された接続部であれば複数の稜線、曲成された接続部であれば無限数の母線)は、前記座面よりも前記第1レールの反端部側に位置する1点で交差するように放射状に延びている。従って、前記底壁部に対して前記座面が前記立設方向にずれていても、前記接続部の成形は、各直線の近傍に一定の関係で変形が起きるいわゆる折曲成形が支配的となる。このため、例えば一般的な絞り成形を行う場合に比べて前記第1レールの素材が広範且つ不確定に変形することを抑制でき、先端を除いて前記第1レールの断面形状を長手方向に一定となるようにより高精度に成形することができる。また、前記底壁部に対する前記座面の前記立設方向のずれ量に関わらず、前記第1レールの素材が広範且つ不確定に変形することを抑制できるため、前記座面の設計自由度を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記直線群は、隣り合う直線との間で三角面を形成することを要旨とする。
同構成によれば、前記接続部は、前記三角面を有することで、例えば該三角面又はその一部による四角面のなす平面を利用して周辺部品を取り付けることができ、利便性を向上することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動に際し、前記第2レールが摺動可能な前記第1レールの部位は、前記接続部よりも前記レールの長手方向中間部側に収まるように設定されていることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動時、前記第2レールが前記接続部を摺動することがないため、該接続部によって当該相対移動の動作(摺動動作)が阻害されることを回避できる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動に際し、前記第2レールが摺動可能な前記第1レールの部位は、幅方向において前記接続部よりも外側に収まるように設定されていることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動時、前記第2レールが前記接続部を摺動することがないため、該接続部によって当該相対移動の動作(摺動動作)が阻害されることを回避できる。また、前記第2レールが摺動可能な前記第1レールの部位は、長手方向(相対移動方向)で前記接続部の範囲に重なってもよいため、前記接続部によって前記第1レール及び前記第2レールの相対移動の範囲が制約されることを解消することができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置において、前記接続部の幅方向の断面形状の長さから前記接続部の幅方向の距離を減算した長さは、前記接続部を展開したときの幅方向への突出長と同等に設定されていることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記第1レールの素材に前記接続部等を成形した後は、当該素材の幅方向への突出が解消される。従って、前記接続部等の成形後に見かけ上、帯状となった素材を曲げ成形することで、前記第1レールの断面形状を容易且つ正確に成形することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、座面の設計自由度を低下することなく、レールの断面形状を長手方向に一定となるようにより高精度に成形することができる車両用シートスライド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用される車両用シートを示す側面図。
図2】本発明の第1の実施形態を示す横断面図。
図3】同実施形態を示す分解斜視図。
図4図2のA−A線に沿った断面図。
図5】同実施形態を示す斜視図。
図6】同実施形態を示す横断面図。
図7】(a)は、ロアレールの素材を示す平面図であり、(b)(c)は、ロアレールの素材の成形後を示す平面図及び斜視図であり、(d)は、(b)のB−B線に沿った断面図。
図8】本発明の第2の実施形態を示す斜視図。
図9】同実施形態を示す横断面図。
図10】(a)は、ロアレールの素材を示す平面図であり、(b)(c)は、ロアレールの素材の成形後を示す平面図及び斜視図であり、(d)は、(b)のA1−A1線、B1−B1線、C1−C1線に沿った断面図。
図11】従来形態を示す縦断面図。
図12】別の従来形態を破断して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1図7を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロア2には、第1レールとしてのロアレール3が前後方向に延在する態様で固定されるとともに、該ロアレール3には、第2レールとしてのアッパレール4がロアレール3に対し前後方向に相対移動可能に装着されている。
【0022】
なお、ロアレール3及びアッパレール4は、幅方向(図1において紙面に直交する方向)でそれぞれ対をなして配設されており、ここでは前方に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール4には、乗員の着座部を形成するシート5が固定・支持されている。ロアレール3及びアッパレール4の相対移動は基本的に係止状態にあって、該係止状態を解除するための解除ハンドル6が設けられている。
【0023】
図2に示すように、ロアレール3は、金属板からなり、幅方向両側で上下方向に延びる一対の第1側壁部11及びこれら第1側壁部11の基端(下端)間を連結する底壁部としての第1連結壁部12を有する。そして、各第1側壁部11の先端(上端)には、幅方向内側に張り出して更に第1側壁部11の基端側に折り返された第1折返し壁部13が連続形成されている。
【0024】
なお、各第1折返し壁部13の先端部は、下方に延びてフランジ13aを形成する。図3に示すように、各フランジ13aの長手方向中間部には、当該方向に所定の間隔をもってその先端(下端)から上向きに複数の切り欠き13bが形成されるとともに、各隣り合う切り欠き13b間に四角歯状の被係止部13cが形成されている。従って、複数の被係止部13cは、前記所定の間隔をもってロアレール3の長手方向に並設されている。
【0025】
また、各フランジ13aの長手方向両端部には、その先端(下端)から更に下方にステップ状に延出する規制部17が形成されている。複数の被係止部13cの全てが、ロアレール3(フランジ13a)の長手方向で両規制部17間に挟まれるように配置されていることはいうまでもない。
【0026】
一方、前記アッパレール4は、金属板からなり、図2に示すように、ロアレール3の両第1折返し壁部13間で上下方向に延びる一対の第2側壁部14及びこれら第2側壁部14のロアレール3から離隔する基端(上端)間を連結する第2連結壁部15を有する。そして、各第2側壁部14の先端(下端)には、幅方向外側に張り出して更に第1側壁部11及び第1折返し壁部13に包囲されるように折り返された第2折返し壁部16が連続形成されている。
【0027】
つまり、ロアレール3及びアッパレール4は、開口側が互いに突き合わされたU字状のレール断面をそれぞれ有しており、主として第1及び第2折返し壁部13,16との係合によって上下方向に抜け止めされている。
【0028】
図3に示すように、アッパレール4の両第2側壁部14には、それらの前端部に軸受孔18がそれぞれ形成されている。また、アッパレール4の両第2側壁部14には、軸受孔18の後方に該軸受孔18を中心とする扇形の係止部挿通用開口部19がそれぞれ形成されている。さらに、アッパレール4の第2連結壁部15には、軸受孔18よりも前側寄りに四角形の支持孔21が形成されている。
【0029】
なお、図2に示すように、各第2折返し壁部16の下端及びこれに対向する第1側壁部11の下端間、並びに各第2折返し壁部16の上端及びこれに対向する第1側壁部11の上端間には、それぞれ転動部材20が装着されている。図3に示すように、各転動部材20は、前後方向(レール長手方向)に延在する樹脂製のホルダ20aと、該ホルダ20aに装着されたボール20bとを備える。各ホルダ20aに装着されるボール20bは、ホルダ20aの前端部に配置された一対及び後端部に配置された一対の合計4個である。アッパレール4は、ロアレール3との間で各転動部材20のボール20bを転動させる態様で、該ロアレール3に対し長手方向(前後方向)に摺動自在に支持されている。
【0030】
また、図4に示すように、アッパレール4の長手方向中間部には、係止部挿通用開口部19を挟むように当該方向に間隔をあけて、金属板からなる一対の係止部材40が固定されている。係止部材40は、幅方向で各隣り合う第2側壁部14及び第2折返し壁部16間に幅方向で橋渡しされる態様で保持されている。そして、係止部材40は、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動方向において、フランジ13a(被係止部13c)の移動軌跡を開放するとともに規制部17の移動軌跡を遮るように配置されている。従って、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動時、該当の規制部17及び係止部材40が当接することで当該移動が係止される。これにより、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動量が一定範囲内に制限される。
【0031】
アッパレール4内には、幅方向に軸線の延びる円柱状の支持ピン22により、板材からなるロック部材30が回動自在に連結されている。すなわち、ロック部材30は、前後方向に延在しており、その長手方向略全長に亘って一対の縦壁部32が幅方向に並設される態様で立設されている。これら両縦壁部32の幅方向の距離は、アッパレール4の両第2側壁部14の幅方向の距離よりも小さく設定されている。そして、図3に示すように、両縦壁部32は、各々の前端部において天板部33により上端縁間が幅方向に接続されるとともに、各々の天板部33よりも後方の部位で天板部34により上端縁間が幅方向に接続されている。ロック部材30は、これら両天板部33,34間に四角形のスプリング挿入孔31を形成する。
【0032】
なお、天板部33は、縦壁部32の前端よりも前側に延出する保持壁33aを有する。図4に示すように、保持壁33aは、側面視において下向きに凸となる円弧形状を呈する。また、両縦壁部32の長手方向中間部には、支持ピン22(軸受孔18)と同心の円形の軸取付孔35がそれぞれ形成されている。ロック部材30は、両軸受孔18に両端部の軸支される支持ピン22が両軸取付孔35に嵌挿されることで、アッパレール4に回動自在に連結されている。
【0033】
また、ロック部材30は、前後方向における天板部33の位置で、図3に示すように、両縦壁部32の下端縁から互いに対向する幅方向内側にそれぞれ突設された一対のフランジ状の支持壁36を有する。さらに、ロック部材30は、両縦壁部32の後端部の下端縁から互いに離隔する幅方向外側にそれぞれ突設された一対のフランジ状の係止部37を有する。これら係止部37は、両第2側壁部14の係止部挿通用開口部19にそれぞれ挿通される。そして、各係止部37には、前後方向に並設された複数(3個)の四角形のロック孔39が前記所定の間隔をもって形成されている。各ロック孔39は、第1折返し壁部13のフランジ13aに対向して上下方向に開口しており、ロアレール3の長手方向で隣り合う複数(3個)の被係止部13cと合致可能な位置に配置されている。
【0034】
そして、両係止部37が上昇するようにロック部材30が軸受孔18周りに回動するとき、各ロック孔39に該当の被係止部13cを嵌入可能となっている。各ロック孔39に被係止部13cを嵌入するとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。一方、両係止部37が下降するようにロック部材30が軸受孔18周りに回動するとき、各ロック孔39が該当の被係止部13cから外れるように設定されている。このとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。
【0035】
アッパレール4内には、図4に示すように、1本の線材からなるワイヤスプリング50が配置されている。図3に示すように、このワイヤスプリング50は、平面視において後側に開口する略コ字状に成形されており、左右対称で前後方向に延在する一対の延設部51を有するとともに、これら両延設部51の前端間を幅方向に接続する円弧状の接続部52を有する。また、各延設部51は、長手方向中間部を上方に湾出してなる固定部53を有するとともに、該固定部53の後側で後方に向かって時計回りに巻回してなるコイル部54を有する。そして、ワイヤスプリング50は、コイル部54を含む両延設部51の固定部53よりも後側の部位で第1付勢部55を形成するとともに、接続部52及び両延設部51の固定部53よりも前側の部位で第2付勢部56を形成する。
【0036】
図4に示すように、ワイヤスプリング50は、両固定部53をロック部材30のスプリング挿入孔31及びアッパレール4の支持孔21から突出させる態様で概ねロック部材30内に配置され、支持ピン22周りにコイル部54が巻回されて、アッパレール4(両第2側壁部14)に支持されている。ワイヤスプリング50は、両固定部53を支持孔21の後端面に接触させており、コイル部54(支持ピン22)よりも後側で第1付勢部55の後端部を天板部34の下面に弾性的に接触させている。つまり、第1付勢部55は、アッパレール4との固定位置(固定部53)を支点にコイル部54を含めて曲げ変形されており、該固定位置を支点にロック部材30を付勢している。従って、ロック部材30は、ワイヤスプリング50(第1付勢部55)により係止部37が上昇する側、即ち各ロック孔39に該当の被係止部13cが嵌入する側に回動付勢されている。
【0037】
なお、ワイヤスプリング50の両固定部53は、支持孔21の前端面に非接触とされている。そして、ワイヤスプリング50(第2付勢部56)の接続部52は、保持壁33aの前側に配置されている。
【0038】
図3に示すように、前記解除ハンドル6は、筒材を曲げ成形してなり、両アッパレール4の前側でこれらを幅方向に橋渡しするように成形されている。解除ハンドル6の後方に延出する先端部61は、前記両縦壁部32間の幅方向の距離よりも外径の小さい円筒形状を呈しており、その下部には、幅方向に延在するスリット状の支持溝62が形成されている。
【0039】
そして、解除ハンドル6は、図4に示すように、各先端部61が対応するロック部材30の保持壁33aよりも下側、且つ、両支持壁36よりも上側で両縦壁部32間に挿入されている。そして、先端部61は、ワイヤスプリング50(第2付勢部56)の接続部52が支持溝62に嵌入することで係止・抜け止めされる。
【0040】
両縦壁部32間に挿入された先端部61は、支持溝62においてワイヤスプリング50(第2付勢部56)により上昇するように付勢されることで、先端部61の上部及び下部を保持壁33aの下面及び両支持壁36の上面にそれぞれ当接させる態様で、実質的に軸受孔18周りにロック部材30と一体回転するように保持される。
【0041】
ここで、本実施形態の動作について説明する。
まず、解除ハンドル6の操作力が解放されているものとする。このとき、ワイヤスプリング50(第1付勢部55)の付勢力により、先端部61(解除ハンドル6)と一体でロック部材30が支持ピン22周りに係止部37が上昇する側、即ち各ロック孔39が対応する被係止部13cに嵌入する側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置が保持される。
【0042】
ここで、解除ハンドル6がその前端を持ち上げるように操作されたとする。このとき、ワイヤスプリング50(第1付勢部55)の付勢力に抗して、先端部61(解除ハンドル6)と一体でロック部材30が支持ピン22周りに係止部37が下降する側、即ち各ロック孔39が対応する被係止部13cから外れる側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置調整が可能になる。
【0043】
次に、車両フロア2に対するロアレール3の固定構造について説明する。
図4に示すように、ロアレール3の前端及び後端には、ロアレール3(第1側壁部11)の立設方向に台座部70がそれぞれ突設されている。各台座部70は、第1連結壁部12に対して上記立設方向にアッパレール4から離れる側にずれた平面状の座面71を有する。各座面71は、締結部材としての締結ボルト76の頭部76aを支持するためのものである。
【0044】
詳述すると、図5に示すように、座面71は、第1連結壁部12と略平行に広がる五角形状を呈している。すなわち、座面71は、第1連結壁部12の幅方向の長さと同等の辺の長さを有する長方形及び同じく同等の底辺の長さを有する二等辺三角形を組み合わせた形状で、当該二等辺三角形の頂点P1がロアレール3の反端部側(長手方向中間部側)に位置している。そして、座面71の中央部には、高さ方向(ロアレール3の立設方向)に貫通する円形のボルト挿通孔71aが形成されている。ロアレール3は、座面71に頭部76aが載置される状態でボルト挿通孔71aに挿通された締結ボルト76が車両フロア2に形成されたねじ孔(図示略)に締め付けられることで、車両フロア2に締結される。
【0045】
なお、第1連結壁部12に対して前記立設方向にずれて配置される座面71は、ロアレール3の反端部側で接続部72を介して第1連結壁部12に接続されている。この接続部72は、座面71の幅方向先端の点P2及び頂点P1を結ぶ線分(即ち座面71の二等辺三角形の斜辺)と、頂点P1よりもロアレール3の反端部側で第1連結壁部12上に配置された起点Ps及び頂点P1を結ぶ線分と、起点Ps及び点P2を結ぶ線分とで区画される一対の三角面72aを有する。また、接続部72は、第1連結壁部12上で起点Psよりもロアレール3の端部側の幅方向先端に配置された点P3及び起点Psを結ぶ線分と、点P2及び起点Psを結ぶ線分と、点P2及び点P3を結ぶ線分とで区画される一対の三角面72bを有する。換言すれば、接続部72は、起点Ps及び頂点P1を結ぶ直線としての稜線L1、起点Ps及び両点P2を結ぶ一対の直線としての稜線L2、起点Ps及び両点P3を結ぶ一対の直線としての稜線L3からなる直線群、即ち起点Ps(1点)で交差するように放射状に延びる直線群を有する。そして、接続部72は、基本的にこれら三角面72a,72bの各辺(稜線L1〜L3等)を折曲部とすることで、第1連結壁部12に対して前記立設方向にずれた座面71を第1連結壁部12に接続する。なお、ロアレール3の先端は、上側に向かうに従い両第1側壁部11が反端部側に位置するようにこれら第1側壁部11が斜めに切除されている。
【0046】
このように接続部72を成形するのは、ロアレール3の断面形状を高精度に保ちながらも、第1連結壁部12との間で高低差のある座面71を形成するためである。
なお、図6に示すように、接続部72(台座部70)は、前記相対移動方向において、下側の一対の転動部材20の延長上に配置されている。本実施形態では、これらの転動部材20が台座部70に進入しないように、前記係止部材40等によってロアレール3及びアッパレール4の相対移動量が制限されている。つまり、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動に際し、アッパレール4が摺動可能なロアレール3の部位は、接続部72よりもロアレール3の反端部側に収まるように設定されている。
【0047】
次に、ロアレール3の製造方法について説明する。なお、以下では、便宜的に被係止部13c及び規制部17を割愛した簡略化したロアレール3の構造で説明する。
図7(a)に示すように、ロアレール3の素材Wは、金属製の平板からなり、先端を除く長手方向略全長に亘って長方形状の本体部Waを有する。この本体部Waの幅方向の長さLn1は、ロアレール3のレール断面において、両第1側壁部11、第1連結壁部12及び両第1折返し壁部13の全てを合計した長さに略一致する。また、素材Wは、本体部Waに連続する先端に、台座加工部Wbを有する。この台座加工部Wbは、幅方向両端部が本体部Waに対して三角形状に張り出すように成形された第1加工部Wb1を有するとともに、該第1加工部Wb1の縮幅された先端に連続する等脚台形状の第2加工部Wb2を有する。
【0048】
なお、台座加工部Wbは、ロアレール3の座面71及び接続部72を成形するための部位で、図7(a)には、当該成形時に折曲部となる折れ線を2点鎖線にて併せて描画している。すなわち、本体部Wa及び台座加工部Wbの境界位置上の幅方向中心の起点Pes(起点Psに相当)から長手方向に先端側に延びる折れ線Le1と、起点Pesから左右対称に先端側に延びる一対の折れ線Le2と、これら両折れ線Le2の幅方向外側で同じく左右対称に先端側に延びる一対の折れ線Le3とが設定されている。また、折れ線Le1の端点Pe1及び両折れ線Le2の端点Pe2を結ぶ一対の折れ線Le4と、端点Pe2及び折れ線Le3の端点Pe3を結ぶ一対の折れ線Le5とが設定されている。さらに、端点Pe2から長手方向に先端まで延びる一対の折れ線Le6と、端点Pe3から長手方向に先端まで延びる一対の折れ線Le7とが設定されている。両折れ線Le3及び両折れ線Le7のみが山折り線であり、それ以外は谷折り線となる。両折れ線Le4及び両折れ線Le6は、素材Wの先端とともに五角形状の面Se(座面71に相当)を区画する。
【0049】
そして、プレス成形により、折れ線Le1〜Le7に沿って素材Wを曲げ成形すると、図7(b)(c)に示すように、台座加工部Wbには、本体部Waに対してその板厚方向(前記立設方向に相当)にずれた凹部Cが形成される。この凹部Cは台座部70に相当するもので、その外側は本体部Waと面一となるように広がっている。従って、凹部Cは、五角形状の座面C1(座面71に相当)を有するとともに、素材Wの反端部側で座面C1及び本体部Wa等を接続する接続部C2を有する。
【0050】
台座加工部Wbの第1加工部Wb1は、平面視で本体部Waに連続する長方形状を呈しており、その幅方向の長さは前記長さLn1に一致する。つまり、接続部C2(接続部72)の幅方向の断面形状の長さから接続部C2の幅方向の距離を減算した長さは、接続部C2を展開した状態(即ち図7(a)における第1加工部Wb1)の本体部Waからの幅方向への突出長と同等に設定されている。
【0051】
具体的には、接続部C2を幅方向に横切る任意のB−B線に沿う断面図を図7(d)に示したように、接続部C2(接続部72)の幅方向の断面形状の長さLsは、接続部C2を構成する各三角面の断面形状の長さLs1,Ls2にて下式により表される。
【0052】
Ls=(Ls1+Ls2)×2
従って、B−B線に沿う接続部C2の幅方向の距離を距離Wsで表すと、上記長さLsから距離Wsを減算した長さΔL1は下式により表される。
【0053】
ΔL1=Ls−Ws=(Ls1+Ls2)×2−Ws
一方、図7(a)において、B−B線に沿う台座加工部Wbの幅方向の距離を距離Wseで表すと、本体部Waからの台座加工部Wbの幅方向への突出長ΔL2は下式により表される。
【0054】
ΔL2=Wse−Ln1
そして、これら長さΔL1及び突出長ΔL2が同等に設定されることで(ΔL1=ΔL2)、素材Wに接続部C2等を成形した後は、該接続部C2やその周縁部に及ぼす板厚の変動(肉の移動)を抑えながらも、見かけ上、帯状となった素材Wとなる。
【0055】
その後、プレス成形により、凹部Cの幅方向両端を含む長手方向に延びる一対の折れ線L11に沿って素材Wを曲げ成形すると、素材Wの幅方向中央部に対して両側が起立して最終的に、図5に示すように、第1連結壁部12及び該第1連結壁部12の両端縁から起立する一対の第1側壁部11等が形成される。このとき、凹部Cは、座面C1及び接続部C2がそれぞれ座面71及び接続部72となって台座部70を形成する。
【0056】
次に、ロアレール3の製造時の作用について説明する。
既述のように、接続部72の有する複数の稜線L1〜L3(直線群)は、座面71よりもロアレール3の反端部側に位置する1点(起点Ps)で交差するように放射状に延びている。従って、第1連結壁部12に対して座面71が前記立設方向にずれていても、接続部72の成形は、各稜線L1〜L3線の近傍に一定の関係で変形が起きるいわゆる折曲成形が支配的となる。このため、例えば一般的な絞り成形を行う場合に比べてロアレール3の素材Wが広範且つ不確定に変形することが抑制され、先端を除いてロアレール3の断面形状が長手方向に一定となるようにより高精度に成形される。また、第1連結壁部12に対する座面71の前記立設方向のずれ量に関わらず、ロアレール3の素材Wが広範且つ不確定に変形することが抑制されるため、座面71の設計自由度が向上される。
【0057】
加えて、ロアレール3の素材Wに接続部C2等を成形した後は、当該素材W(第1加工部Wb1)の幅方向への突出が解消される。従って、接続部C2等の成形後に見かけ上、帯状となった素材Wを曲げ成形することで、ロアレール3の断面形状が容易且つ正確に成形される。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、例えば一般的な絞り成形を行う場合に比べてロアレール3の素材Wが広範且つ不確定に変形することを抑制でき、先端を除いてロアレール3の断面形状を長手方向に一定となるようにより高精度に成形することができる。また、第1連結壁部12に対する座面71の前記立設方向のずれ量に関わらず、ロアレール3の素材Wが広範且つ不確定に変形することを抑制できるため(ロアレール3の材料の引っ張り限界の制約を緩和できるため)、座面71の設計自由度を向上することができる。
【0059】
(2)本実施形態では、係止部材40等により、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動に際し、アッパレール4(転動部材20)が摺動可能なロアレール3の部位は、接続部72よりもロアレール3の反端部側に収まるように設定されている。従って、アッパレール4が接続部72を摺動することがないため、該接続部72によって当該相対移動の動作(摺動動作)が阻害されることを回避できる。
【0060】
(3)本実施形態では、接続部72は三角面72a,72bを有することで、例えば該三角面(平面)72a,72bを利用して周辺部品を取り付けることができ、利便性を向上することができる。
【0061】
(4)本実施形態では、接続部C2(接続部72)の幅方向の断面形状の長さLsから接続部C2の幅方向の距離Wsを減算した長さΔL1は、接続部C2を展開したときの幅方向への突出長ΔL2と同等に設定されている。従って、ロアレール3の素材Wに接続部C2等を成形した後は、当該素材Wの幅方向への突出が解消される。従って、接続部C2等の成形後に見かけ上、帯状となった素材Wを曲げ成形することで、ロアレール3の断面形状を容易且つ正確に成形することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
図8図10を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の台座部の構造を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0063】
図8に示すように、本実施形態のロアレール3の前端(及び後端)には、ロアレール3(第1側壁部11)の立設方向に台座部80が突設されている。台座部80は、第1連結壁部12に対して上記立設方向にアッパレール4から離れる側にずれた平面状の座面81を有する。座面81は、第1連結壁部12と略平行に広がる略半長円形状を呈している。すなわち、座面81は、第1連結壁部12の幅方向の長さと同等の辺の長さを有する長方形及び同じく同等の弦の長さを有する弓形を組み合わせた形状で、当該弓形の頂点P11がロアレール3の反端部側(長手方向中間部側)に位置している。そして、座面81の中央部には、高さ方向(ロアレール3の立設方向)に貫通する円形のボルト挿通孔81aが形成されている。ロアレール3は、座面81に前記締結ボルト76の頭部76aが載置される状態でボルト挿通孔81aに挿通された締結ボルト76が車両フロア2に形成されたねじ孔(図示略)に締め付けられることで、車両フロア2に締結される。
【0064】
なお、第1連結壁部12に対して前記立設方向にずれて配置される座面81は、ロアレール3の反端部側で接続部82を介して第1連結壁部12に接続されている。この接続部82は、頂点P11よりもロアレール3の反端部側で第1連結壁部12上に配置された起点Ps1を頂点とする下向き(第1連結壁部12に対して座面81がずれる側の前記立設方向)に凸の円錐形状を呈しており、座面81の幅方向両端の一対の点P12及び前記頂点P11を含む曲線(即ち座面81の反端部側の先端)と、第1連結壁部12上で起点Ps1よりもロアレール3の端部側の幅方向先端に配置された点P13及び起点Ps1を結ぶ一対の線分と、点P12及び点P13を結ぶ一対の線分とで区画されている。換言すれば、接続部82は、起点Ps1から延びる無限数の母線からなる直線群、即ち起点Ps1(1点)で交差するように放射状に延びる直線群を有する。そして、接続部82は、基本的に前述の区画位置を折曲部として曲成されることで、第1連結壁部12に対して前記立設方向にずれた座面81を第1連結壁部12に接続する。
【0065】
このように接続部82を成形するのは、ロアレール3の断面形状を高精度に保ちながらも、第1連結壁部12との間で高低差のある座面81を形成するためである。
なお、図9に示すように、接続部82(台座部80)は、前記相対移動方向において、下側の一対の転動部材20の延長上に配置されている。本実施形態でも、これらの転動部材20が台座部80に進入しないように、前記係止部材40等によってロアレール3及びアッパレール4の相対移動量が制限されている。つまり、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動に際し、アッパレール4が摺動可能なロアレール3の部位は、接続部82よりもロアレール3の反端部側に収まるように設定されている。
【0066】
次に、ロアレール3の製造方法について説明する。なお、本実施形態でも、便宜的に被係止部13c及び規制部17を割愛した簡略化したロアレール3の構造で説明する。
図10(a)に示すように、ロアレール3の素材W1は、金属製の平板からなり、先端を除く長手方向略全長に亘って前記本体部Waを有する。また、素材W1は、本体部Waに連続する先端に、台座加工部Wcを有する。この台座加工部Wcは、幅方向両端部が本体部Waに対して三角形状に張り出すように成形された第1加工部Wc1を有するとともに、該第1加工部Wc1の縮幅された先端に連続する等脚台形状の第2加工部Wc2を有する。これら第1及び第2加工部Wc1,Wc2の境界部は直線状に繋がっており、台座加工部Wcの先端部は全体として一つの等脚台形状を呈している。
【0067】
なお、台座加工部Wcは、ロアレール3の座面81及び接続部82を成形するための部位で、図10(a)には、当該成形時に折曲部となる折れ線を2点鎖線にて併せて描画している。すなわち、本体部Wa及び台座加工部Wcの境界位置上の幅方向中心の起点Pes1(起点Ps1に相当)から左右対称に先端側に延びる一対の折れ線Le11と、両折れ線Le11の端点Pe11から左右対称に先端側に延びる一対の折れ線Le12と、両折れ線Le12の端点Pe12を幅方向に繋ぐ弓形の折れ線Le13とが設定されている。また、端点Pe11から長手方向に先端まで延びる一対の折れ線Le14と、端点Pe12から長手方向に先端まで延びる一対の折れ線Le15とが設定されている。両折れ線Le11及び両折れ線Le14のみが山折り線であり、それ以外は谷折り線となる。折れ線Le13及び両折れ線Le15は、素材W1の先端とともに略半長円形状の面Se1(座面81に相当)を区画する。
【0068】
そして、プレス成形により、折れ線Le11〜Le15に沿って素材W1を曲げ成形すると、図10(b)(c)に示すように、台座加工部Wcには、本体部Waに対してその板厚方向(前記立設方向に相当)にずれた凹部Dが形成される。この凹部Dは台座部80に相当するもので、その外側は本体部Waと面一となるように広がっている。従って、凹部Dは、略半長円形状の座面D1(座面81に相当)を有するとともに、素材W1の反端部側で座面D1及び本体部Wa等を接続する接続部D2を有する。
【0069】
台座加工部Wcの第1加工部Wc1は、平面視で本体部Waに連続する長方形状を呈しており、その幅方向の長さは前記長さLn1に一致する。つまり、接続部D2(接続部82)の幅方向の断面形状の長さから接続部D2の幅方向の距離を減算した長さは、接続部D2を展開した状態(即ち図10(a)における第1加工部Wc1)の本体部Waからの幅方向への突出長と同等に設定されている。
【0070】
具体的には、接続部D2を幅方向に横切る互いに異なる任意のA1−A1線、B1−B1線、C1−C1線に沿う断面図を図10(d)に示したように、接続部D2(接続部82)の幅方向の断面形状の長さLsa,Lsb,Lscから該当線に沿う接続部D2の幅方向の距離Wsa,Wsb,Wscを減算した長さΔL1a,ΔL1b,ΔL1cはそれぞれ下式により表される。
【0071】
ΔL1a=Lsa−Wsa
ΔL1b=Lsb−Wsb
ΔL1c=Lsc−Wsc
なお、下向きに凸の円錐面からなる接続部D2の各々の断面形状が、下向きに凸の円弧形状を呈することはいうまでもない。
【0072】
一方、図10(a)において、A1−A1線、B1−B1線、C1−C1線に沿う台座加工部Wcの幅方向の距離をそれぞれ距離Wsea,Wseb,Wsecで表すと、本体部Waからの台座加工部Wcの幅方向への突出長ΔL2a,ΔL2b,ΔL2cはそれぞれ下式により表される。
【0073】
ΔL2a=Wsea−Ln1
ΔL2b=Wseb−Ln1
ΔL2c=Wsec−Ln1
そして、これら長さΔL1a,ΔL1b,ΔL1c及び突出長ΔL2a,ΔL2b,ΔL2cが同等に設定されることで、素材W1に接続部D2等を成形した後は、該接続部D2やその周縁部に及ぼす板厚の変動(肉の移動)を抑えながらも、見かけ上、帯状となった素材W1となる。
【0074】
その後、プレス成形により、凹部Dの幅方向両端を含む長手方向に延びる前記一対の折れ線L11に沿って素材W1を曲げ成形すると、素材W1の幅方向中央部に対して両側が起立して最終的に、図8に示すように、第1連結壁部12及び該第1連結壁部12の両端縁から起立する一対の第1側壁部11等が形成される。このとき、凹部Dは、座面D1及び接続部D2がそれぞれ座面81及び接続部82となって台座部80を形成する。
【0075】
次に、ロアレール3の製造時の作用について説明する。
既述のように、曲成された接続部82の有する無限数の母線(直線群)は、座面81よりもロアレール3の反端部側に位置する1点(起点Ps1)で交差するように放射状に延びている。従って、第1連結壁部12に対して座面81が前記立設方向にずれていても、接続部82の成形は、各母線の近傍に一定の関係で変形が起きるいわゆる折曲成形が支配的となる。特に、接続部82は、無限数の母線を有することから、全体的に緩やかな変形となる。このため、例えば一般的な絞り成形を行う場合に比べてロアレール3の素材W1が広範且つ不確定に変形することが抑制され、先端を除いてロアレール3の断面形状が長手方向に一定となるようにより高精度に成形される。また、第1連結壁部12に対する座面81の前記立設方向のずれ量に関わらず、ロアレール3の素材W1が広範且つ不確定に変形することが抑制されるため、座面81の設計自由度が向上される。
【0076】
加えて、ロアレール3の素材W1に接続部D2等を成形した後は、当該素材W1(第1加工部Wc1)の幅方向への突出が解消される。従って、接続部D2等の成形後に見かけ上、帯状となった素材W1を曲げ成形することで、ロアレール3の断面形状が容易且つ正確に成形される。
【0077】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(2)(4)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、接続部82は、第1連結壁部12に対して座面81がずれる側の前記立設方向に凸となる円錐面(曲面)であることで、例えば急峻な曲げ成形(折曲成形)が不要になる分、加工性を向上することができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記各実施形態においては、台座部70,80(接続部72,82)の幅方向の長さと第1連結壁部12の幅方向の長さとを同等に設定した。これに対し、台座部70,80の幅方向の長さを、例えば第1連結壁部12の幅方向の長さよりも短く設定してもよい。特に、前記相対移動方向において、下側の一対の転動部材20の延長上に接続部72,82(台座部70,80)が配置されないように、即ちロアレール3及びアッパレール4の相対移動に際し、アッパレール4が摺動可能なロアレール3の部位が幅方向において接続部72,82よりも外側に収まるように設定してもよい。この場合、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動時、アッパレール4が接続部72,82を摺動することがないため、該接続部72,82によって当該相対移動の動作(摺動動作)が阻害されることを回避できる。また、アッパレール4が摺動可能なロアレール3の部位は、長手方向(相対移動方向)で接続部72,82の範囲に重なってもよいため、接続部72,82によってロアレール3及びアッパレール4の相対移動の範囲が制約されることを解消することができる。
【0079】
・前記各実施形態において、接続部72,82(接続部C2,D2)の幅方向の断面形状の長さから接続部72,82の幅方向の距離を減算した長さは、接続部72,82を展開したときの幅方向への突出長と異なっていてもよい。
【0080】
・前記各実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動に際し、アッパレール4が摺動可能なロアレール3の部位は、接続部72,82(台座部70,80)を超えていてもよい。
【0081】
・前記各実施形態において、接続部72,82の有する直線群は、第1連結壁部12上の一点(起点Ps,Ps1)で交差するものとしたが、第1連結壁部12に対して高さ方向にずれた一点で交差するものであってもよい。つまり、これら直線群は、第1連結壁部12上の複数点を通過するものであってもよい。この場合、これら複数点を結ぶ線分も、接続部72,82の折曲部となる。
【0082】
・前記各実施形態において、座面71,81は、第1連結壁部12に対して前記立設方向にアッパレール4に近付く側にずれていてもよい。
・前記各実施形態において、座面71,81は、第1連結壁部12に対して必ずしも平行に広がる必要はない。また、座面71,81は、必ずしも平面状である必要はなく、その支持する締結部材の頭部に合わせて折曲されていたり、曲成されていたりしてもよい。
【0083】
・前記各実施形態において、座面71,81により頭部の支持される締結部材は、例えばカシメピンであってもよい。
・前記各実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4と、車両フロア2及びシート5の固定関係(即ち上下の配置関係)は逆であってもよい。この場合、座面71,81により頭部の支持される締結部材(締結ボルト76)は、シート5との締結に供される。
【0084】
・前記各実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4(車両用シートスライド装置)は、シート5に対し各1本ずつ配設される構成であってもよいし、各3本以上ずつ配設される構成であってもよい。
【0085】
・前記各実施形態において、ロアレール及びアッパレールの相対移動に伴うシートの移動方向は、例えばその幅方向であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
L1〜L3…稜線(直線)、Ps,Ps1…起点、W,W1…素材、2…車両フロア、3…ロアレール(第1又は第2レール)、4…アッパレール(第1又は第2レール)、5…シート、12…第1連結壁部(底壁部)、70,80…台座部、71,81…座面、72,82…接続部、72a,72b…三角面、76…締結ボルト(締結部材)、76a…頭部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12