(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記制限制御期間中に、前記単独制御よりも第1ポンプの容量が小さくなるように予め設定された規定上限容量以下となるように、前記第1ポンプの容量を制御する、請求項1に記載の油圧制御装置。
前記規定上限容量は、前記規定操作量以上の範囲において、前記ブーム操作部材の操作量の増加に応じて減少するように設定されている、請求項2に記載の油圧制御装置。
前記制御部は、前記アーム操作部材の操作量の増加に応じて増加するように設定された第1ポンプの容量の特性であるアーム必要容量を記憶するとともに、前記制限制御期間中に、前記アーム必要容量、前記規定上限容量のうちの小さい容量となるように前記第1ポンプの容量を制御する、請求項2又は3に記載の油圧制御装置。
【背景技術】
【0002】
ブームとアームとを有する建設機械として、例えば特許文献1に記載の油圧ショベルが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の油圧ショベルは、ブームを上げ動作又は下げ動作させるブームシリンダと、アームの押し動作又は引き動作させるアームシリンダと、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプとを備えている。
【0004】
また、前記油圧ショベルは、第1油圧ポンプからブームシリンダ及びアームシリンダに対する作動油の給排を制御するための第1のグループに属するコントロールバルブと、第2油圧ポンプからブームシリンダ及びアームシリンダに対する作動油の給排を制御するための第2のグループに属するコントロールバルブとを備えている。
【0005】
具体的に、第1及び第2のグループは、ブームシリンダに対する作動油の給排を制御するためのブーム用コントロールバルブと、アームシリンダに対する作動油の給排を制御するためのアーム用コントロールバルブと、をそれぞれ備えている。
【0006】
ブーム用コントロールバルブ及びアーム用コントロールバルブは、それぞれタンデムラインにより直列に接続されたセンターバイパス通路をそれぞれ有する。また、ブーム用コントロールバルブ及びアーム用コントロールバルブは、パラレル回路を通じて第1ポンプに対して並列に接続されている。
【0007】
前記油圧ショベルでは、アーム引きと、これよりも相対的に高負荷の動作であるブーム上げとが複合して操作される場合がある。この複合動作時にポンプからの作動油が低負荷側のアームシリンダのみに供給されるのを抑制するために、第1のグループに属するパラレル回路には、絞りが設けられている。
【0008】
これにより、アーム引きとブーム上げの複合動作時に、第1ポンプからの作動油を優先的にブームシリンダに導くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧ショベルでは、アーム押しと、これよりも相対的に低負荷の動作であるブーム下げとが複合して操作された場合に、第1ポンプの動力をロスする、という問題がある。
【0011】
具体的に、ブーム下げ操作が行なわれると、ブーム用コントロールバルブのセンターバイパス通路の開口が絞られる。その結果、ポンプからの作動油は、パラレル回路を介してアーム用コントロールバルブに導かれる。しかし、このパラレル回路には、絞りが設けられているため、アームシリンダよりも低負荷側のブームシリンダに優先的に作動油が導かれる。したがって、ブームシリンダに対して余分な作動油を供給することにより、第1ポンプの動力が浪費される。
【0012】
特に、ブーム下げ操作量の増加に応じてポンプの容量が大きくなるように、ポンプの容量を制御することが一般である。そのため、ブーム下げ操作量が大きくなるほど、前記動力のロスは、大きくなる。
【0013】
本発明の目的は、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時におけるポンプの動力のロスを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、ブームとアームとを有する建設機械に設けられる油圧制御装置であって、前記ブームを上げ動作又は下げ動作させるブームシリンダと、前記ブームに対しアームを押し動作又は引き動作させるアームシリンダと、可変容量式の第1ポンプと、前記アームシリンダに対して作動油を供給可能な第2ポンプと、前記ブームを駆動するための操作を受けるブーム操作部材と、前記アームを駆動するための操作を受けるアーム操作部材と、ブームシリンダに対して作動油を供給する供給位置と、ブームシリンダに対する作動油の供給を停止させるとともに作動油を通過させる開口が設けられた中立位置との間で前記ブーム操作部材の操作量に応じて切換可能なブーム側制御弁と、前記アーム操作部材の操作量に応じた切換動作により前記アームシリンダに対する作動油の給排を制御するアーム側制御弁と、前記アーム側制御弁が前記ブーム側制御弁の下流に位置するように、前記第1ポンプに対して前記ブーム側制御弁と前記アーム側制御弁とを直列に接続するタンデム回路と、前記第1ポンプに対して前記ブーム側制御弁と前記アーム側制御弁とを並列に接続するパラレル回路と、前記第1ポンプからの作動油を前記アーム側制御弁よりも前記ブーム側制御弁に対して優先的に導くために前記パラレル回路に設けられた絞りと、前記ブーム操作部材の操作量を検出可能なブーム操作検出部材と、前記アーム操作部材の操作量を検出可能なアーム操作検出部材と、前記ブーム下げの単独動作時に、前記ブーム操作部材の操作量の増加に応じて前記第1ポンプの容量を増加させる単独制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記各検出部材によりブーム下げ及びアーム押し複合動作が検出され、かつ、前記ブーム操作部材の操作量が規定操作量以上である制限制御期間中に、前記単独制御と比較して第1ポンプの容量を制限する、油圧制御装置を提供する。
【0015】
本発明では、ブーム下げ及びア−ム押し複合動作が検出され、かつ、ブーム操作部材の操作量が規定操作量以上である制限制御期間中に、単独制御と比較して第1ポンプの容量を制限する。これにより、第1ポンプからの作動油の大半がブームシリンダに優先的に供給される状況において、ブームシリンダに対して作動油が余分に供給されるのを抑制することにより、第1ポンプの動力のロスを低減することができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時におけるポンプの動力のロスを低減することができる。
【0017】
なお、前記規定操作量は、第1ポンプからの作動油のうち、ブーム側制御弁の開口を通してアーム側制御弁に導くことができる作動油の割合が所定値以下となる操作量として予め設定されたものである。
【0018】
前記油圧制御装置において、前記制御部は、前記制限制御期間中に、前記単独制御よりも第1ポンプの容量が小さくなるように予め設定された規定上限容量以下となるように、前記第1ポンプの容量を制御することが好ましい。
【0019】
この態様では、予め設定された規定上限容量以下となるように第1ポンプの容量を制御する。したがって、ブーム下げ操作量が変更される度に、この操作量に応じた第1ポンプの容量を算出する場合と比較して、制御部により実行される制御を簡素化することができる。
【0020】
前記油圧制御装置において、前記規定上限容量は、前記規定操作量以上の範囲において、前記ブーム操作部材の操作量の増加に応じて減少するように設定されていることが好ましい。
【0021】
ブーム操作部材の操作量の増加に応じて、ブーム側制御弁の開口が絞られることにより第1ポンプからアームシリンダに導くことができる作動油の流量が制限される。ここで、前記態様では、ブーム操作部材の操作量の増加に応じて減少する規定上限容量以下となるように第1ポンプの容量が制御される。そのため、第1ポンプの動力のロスをブーム操作部材の操作量の変化に応じて有効に低減することができる。
【0022】
前記油圧制御装置において、前記制御部は、前記アーム操作部材の操作量の増加に応じて増加するように設定された第1ポンプの容量の特性であるアーム必要容量を記憶するとともに、前記制限制御期間中に、前記アーム必要容量、前記規定上限容量のうちの小さい容量となるように前記第1ポンプの容量を制御することが好ましい。
【0023】
この態様では、アーム必要容量、規定上限容量のうちの小さい容量となるように第1ポンプの容量を制御する。これにより、アーム必要容量が規定上限容量の範囲内である場合に、規定上限容量からさらに第1ポンプの容量を減じて、より有効に第1ポンプの動力のロスを低減することができる。
【0024】
前記油圧制御装置において、前記規定上限容量は、前記規定操作量未満の範囲においても、ブーム操作部材の操作量の増加に応じて減少するように設定され、前記制御部は、
前記アーム操作部材の操作量の増加に応じて増加するように設定された第1ポンプの容量の特性であるアーム必要容量を記憶するとともに、前記ブーム下げ及びアーム押し複合動作が検出された場合に前記ブーム操作部材の全操作範囲において、前記アーム必要容量、前記規定上限容量のうちの小さい容量となるように前記第1ポンプの容量を制御することが好ましい。
【0025】
この態様によれば、ブーム操作部材の操作量が小さい状況、つまり、ブーム
側制御弁の開口があまり絞られていない状況において、アームシリンダに対して有効に作動油を供給することができる。そのため、例えば、アーム操作部材の操作量が最大の状態で、ブーム操作部材が非操作の状態から少し操作された場合に、第1ポンプの容量が急激に減少するのを抑制することができる。
【0026】
前記油圧制御装置において、前記規定上限容量の最大値は、前記アーム必要容量の最大値と同等又はこれよりも大きく設定されていることが好ましい。
【0027】
この態様によれば、ブーム操作部材の操作量が最小の状態において、第1ポンプの容量をアーム必要容量の最大値に設定することができる。
【0028】
また、本発明は、機体と、前記機体に対して上げ動作又は下げ動作を行なうことが可能なブームと、前記ブームに対して押し動作又は引き動作を行なうことが可能なアームと、前記ブーム及び前記アームの駆動を制御する、前記油圧制御装置と、を備えている、建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時におけるポンプの動力のロスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0032】
[第1実施形態(
図1〜
図6)]
第1実施形態に係る油圧ショベル1は、
図1に示すように、クローラ2aを有する下部走行体2と、地面と垂直な軸回りに旋回可能な状態で前記下部走行体2に設けられた上部旋回体3と、
図2に示す油圧制御装置4とを備えている。
【0033】
上部旋回体3は、下部走行体2に対して旋回可能に設けられた旋回フレーム3aと、旋回フレーム3aに対して起伏可能な作業アタッチメント5を有する。
【0034】
作業アタッチメント5は、前記旋回フレーム3aに対して起伏可能に取り付けられた基端部を有するブーム6と、ブーム6の先端部に対して揺動可能に取り付けられた基端部を有するアーム7と、アーム7の先端部に対して揺動可能に取り付けられたバケット8とを有する。
【0035】
また、作業アタッチメント5は、旋回フレーム3aに対してブーム6を起伏させるブームシリンダ9と、ブーム6に対してアーム7を揺動させるアームシリンダ10と、アーム7に対してバケット8を揺動させるバケットシリンダ11とを備えている。具体的に、ブームシリンダ9が伸長することによりブーム6の上げ動作が実行される一方、ブームシリンダ9が縮小することによりブーム6の下げ動作が実行される。また、アームシリンダ10が伸張することによりアーム7の引き動作が実行される一方、アームシリンダ10が縮小することによりアーム7の押し動作が実行される。
【0036】
図2を参照して、油圧制御装置4は、前記ブームシリンダ9と、前記アームシリンダ10と、図外のエンジンにより駆動される第1ポンプ14及び第2ポンプ15と、第1ポンプ14とブームシリンダ9との間に設けられたブーム側制御弁16と、第1ポンプ14とアームシリンダ10との間に設けられた第1アーム側制御弁17と、第2ポンプ15とアームシリンダ10との間に設けられた第2アーム側制御弁18と、ブーム側制御弁16を切換操作するためのブーム操作部材19と、各アーム側制御弁17、18を切換操作するためのアーム操作部材20と、第1ポンプ14に対してブーム側制御弁16と第1アーム側制御弁17とを直列に接続するタンデム回路R1と、第1ポンプ14に対してブーム側制御弁16と第1アーム側制御弁17とを並列に接続する後述のパラレル回路と、パラレル回路に設けられた絞り27と、第2ポンプ15と第2アーム側制御弁18とを接続するメインラインR5と、ブーム操作部材19の操作量を検出可能なブーム操作センサ(ブーム操作検出部材)21と、アーム操作部材20の操作量を検出可能なアーム操作センサ(アーム操作検出部材)22と、コントローラ30と、第3パイロット弁25と、第4パイロット弁26と、第1切換弁28と、第2切換弁29とを備えている。
【0037】
第1ポンプ14及び第2ポンプ15は、可変容量式のポンプである。具体的に、第1ポンプ14は、その容量を調整可能なレギュレータ14aを有する。同様に、第2ポンプ15は、その容量を調整可能なレギュレータ15aを有する。
【0038】
ブーム側制御弁16は、ブームシリンダ9に対する作動油の給排を制御する。具体的に、ブーム側制御弁16は、ブーム操作部材19が操作されていない状態で中立位置Aに付勢されているとともに、中立位置Aからブーム下げ位置B又はブーム上げ位置Cへ向けてブーム操作部材19の操作量に応じて切換可能である。中立位置Aには、センターバイパス開口が設けられている。ブーム側制御弁16が中立位置Aとされた状態において、第1ポンプ14からの作動油は、ブームシリンダ9に対して供給されずに、センターバイパス開口を通過する。ブーム側制御弁16がブーム下げ位置Bに切り換えられると、ブームシリンダ9が縮小することにより、ブーム6は、倒伏する。ブーム側制御弁16がブーム上げ位置Cに切り換えられると、ブームシリンダ9が伸長することにより、ブーム6は、起立する。
【0039】
第1アーム側制御弁17は、アームシリンダ10に対する第1ポンプ14からの作動油の給排を制御する。具体的に、第1アーム側制御弁17は、アーム操作部材20が操作されていない状態で中立位置Dに付勢されているとともに、中立位置Dからアーム押し位置E又はアーム引き位置Fへ向けてアーム操作部材20の操作量に応じて切換可能である。中立位置Dには、センターバイパス開口が設けられている。
第1アーム側制御弁17が中立位置Dとされた状態において、第1ポンプ14からの作動油は、アームシリンダ10に対して供給されずに、センターバイパス開口を通過する。
第1アーム側制御弁17がアーム押し位置Eに切り換えられると、アームシリンダ10が縮小することにより、アーム7は、押し方向に揺動する。
第1アーム側制御弁17がアーム引き位置Fに切り換えられると、アームシリンダ10が伸張することにより、アーム7は、引き方向に揺動する。
【0040】
第2アーム側制御弁18は、アームシリンダ10に対する第2ポンプ15からの作動油の給排を制御する。具体的に、第2アーム側制御弁18は、アーム操作部材20が操作されていない状態で中立位置Gに付勢されているとともに、中立位置Gからアーム押し位置H又はアーム引き位置Iへ向けてアーム操作部材20の操作量に応じて切換可能である。中立位置Gには、センターバイパス開口が設けられている。第2アーム側制御弁18の切換位置に応じたアーム7の動作は、第1アーム側制御弁17の場合と同様である。
【0041】
タンデム回路R1は、第1アーム側制御弁17がブーム側制御弁16の下流に位置するように、第1ポンプ14に対してブーム側制御弁16と第1アーム側制御弁17とを直列に接続する。これにより、ブーム側制御弁16が中立位置Aに付勢された状態において、第1ポンプ14からの作動油は、ブーム側制御弁16のセンターバイパス開口を通じて第1アーム側制御弁17に導かれる。さらに、第1アーム側制御弁17が中立位置Dに付勢された状態において、第1ポンプ14からの作動油は、第1アーム側制御弁17のセンターバイパス開口を通じてタンクTに導かれる。なお、タンクTに導かれる作動油の流量は、第1アーム側制御弁17よりも下流側に設けられた第1切換弁28により調整される。
【0042】
パラレル回路は、第1ポンプ14からブーム側制御弁16を介さずに第1アーム側制御弁17に接続された第1パラレルラインR2と、第1パラレルラインR2とブーム側制御弁16とを接続する第2パラレルラインR3と、第1パラレルラインR2に設けられた第1パイロット弁23と、第2パラレルラインR3に設けられた第2パイロット弁24とを備えている。第1パラレルラインR2は、ブーム側制御弁16よりも上流側でタンデム回路R1から分岐して第1アーム側制御弁17のポンプポートに接続されている。第2パラレルラインR3は、第1パイロット弁23よりも下流側で第1パラレルラインR2から分岐してブーム側制御弁16のポンプポートに接続されている。第1パイロット弁23は、第1ポンプ14から各制御弁16、17へ向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。第2パイロット弁2
4は、第1ポンプ14からブーム側制御弁16へ向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。
【0043】
絞り27は、第1ポンプからの作動油を第1アーム側制御弁17よりもブーム側制御弁16に対して優先的に導くための圧損を生じさせるようにパラレル回路に設けられている。具体的に、絞り27は、第1パラレルラインR2における第2パラレルラインR3の分岐点よりも下流側に設けられている。
【0044】
なお、第1パラレルラインR2における絞り27の下流位置と、タンデム回路R1におけるブーム側制御弁16と第1アーム側制御弁17との間の位置とは、供給ラインR4によって接続されている。この供給ラインR4には、第3パイロット弁25が設けられている。第3パイロット弁25は、タンデム回路R1から第1パラレルラインR2へ向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。したがって、タンデム回路R1を流れる作動油を第1アーム側制御弁17のポンプポートに導くことができる。
【0045】
また、第2ポンプ15に接続されたメインラインR5における第2アーム側制御弁18よりも上流側の位置と第2アーム側制御弁18のポンプポートとの間には、供給ラインR6が設けられている。供給ラインR6には、第4パイロット弁26が設けられている。第4パイロット弁26は、メインラインR5から第2アーム側制御弁18に向けた作動油の流れを許容する一方、逆向きの流れを規制する。さらに、
メインラインR5における第2アーム側制御弁18よりも下流側の位置には、第2切換弁29が設けられている。第2切換弁29は、メインラインR5を通じてタンクTに導かれる作動油の流量を調整可能である。
【0046】
ブーム操作センサは、ブーム操作部材19の操作量を検出可能である。
図2では、ブーム6を下げ動作させるためのパイロット圧を検出し、その検出信号Si1をコントローラ30に出力するブーム操作センサ21のみを図示し、ブーム6を上げ動作させるためのパイロット圧を検出するブーム操作センサの図示を省略する。
【0047】
アーム操作センサは、アーム操作部材20の操作量を検出可能である。
図2では、アーム7を押し動作させるためのパイロット圧を検出し、その検出信号Si2をコントローラ30に出力するアーム操作センサ22のみを図示し、アーム7を引き動作させるためのパイロット圧を検出するアーム操作センサの図示を省略する。
【0048】
コントローラ30は、各ポンプ14、15の容量、及び、各切換弁28、29の操作量を制御可能である。具体的に、コントローラ30は、各操作センサ21、22から検出信号Si1、Si2に基づいて、各レギュレータ14a、15a及び各切換弁28、29のソレノイドに対して制御信号Si3〜Si6を出力する。
【0049】
また、コントローラ30は、
図3〜
図5に示す第1ポンプ14の容量特性を記憶する。
【0050】
図3は、ブーム下げの単独操作が行なわれた場合における、ブーム操作部材19の操作量に応じた第1ポンプ14の容量特性T1を示す。容量特性T1では、ブーム下げの操作量の増加に応じて容量が増加する。具体的に、ブーム操作部材19の最小操作量から所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量にかかわらず最小値minで一定であり、ブーム操作部材19の最大操作量から手前の所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量にかかわらず最大値maxで一定である。これらの範囲を除き、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量の増加に応じて増加する。なお、前記各範囲は、省略することもできる。つまり、『ブーム下げ操作量の増加に応じて容量が増加する』容量特性T1には、容量が最小値minで一定となる前記範囲、及び、容量が最大値maxで一定となる前記範囲が設定されている場合も含まれる。
【0051】
図4は、アーム押しの単独操作が行なわれた場合における、アーム操作部材20の操作量に応じた第1ポンプ14の容量特性(アーム必要容量)T2を示す。容量特性T2では、アーム押しの操作量の増加に応じて容量が増加する。具体的に、アーム操作部材20の最小操作量から所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、アーム操作部材20の操作量にかかわらず最小値minで一定であり、アーム操作部材20の最大操作量から手前の所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、アーム操作部材20の操作量にかかわらず最大値maxで一定である。これらの範囲を除き、第1ポンプ14の容量は、アーム操作部材20の操作量の増加に応じて増加する。なお、前記各範囲は、省略することもできる。つまり、『アーム押し操作量の増加に応じて容量が増加する』容量特性T2には、容量が最小値minで一定となる前記範囲、及び、容量が最大値maxで一定となる前記範囲が設定されている場合も含まれる。
【0052】
図5は、アーム押しとブーム下げとの複合動作が行なわれた場合における、ブーム操作部材19の操作量に応じた第1ポンプ14の容量特性(規定上限容量)T3を示す。容量特性T3は、ブーム下げの操作量の増加に応じて容量が減少する。具体的に、ブーム操作部材19の最小操作量から所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量にかかわらず最大値maxで一定であり、ブーム操作部材19の最大操作量から手前の所定の範囲において、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量にかかわらず最小値minで一定である。これらの範囲を除き、第1ポンプ14の容量は、ブーム操作部材19の操作量の増加に応じて減少する。なお、前記各範囲は、省略することもできる。つまり、『ブーム下げ操作量の増加に応じて容量が
減少する』容量特性T3には、容量が最小値minで一定となる前記範囲、及び、容量が最大値maxで一定となる前記範囲が設定されている場合も含まれる。
【0053】
そして、コントローラ30は、アーム押しとブーム下げとの複合動作が行なわれた場合に、容量特性T3以下となるように第1ポンプ14の容量を制御する。これにより、ブーム下げ単独操作時の容量特性T1と複合動作時の容量特性T3との交点(規定操作量)A1よりもブーム下げ操作量が大きい範囲において、第1ポンプ14の容量は、ブーム下げ単独操作時の容量よりも制限される。そのため、アーム押しとブーム下げとの複合動作時においても容量特性T1に基づく制御を行なう場合と比較して、
図5のハッチングで示す範囲で第1ポンプ14の容量を低減することができる。したがって、第1ポンプ14の動力のロスを低減することができる。
【0054】
さらに、コントローラ30は、容量特性T2により特定される容量、容量特性T3により特定される容量のうち小さい容量となるように第1ポンプ14の容量を制御する。これにより、容量特性T3により特定される容量よりも容量特性T2により特定される容量が小さい場合、つまり、ブーム下げにより定義される容量の上限値よりもアーム押しに必要な容量が小さい場合に、さらに、第1ポンプ14の容量を低減することができる。
【0055】
以下、
図6を参照して、コントローラ30により実行される処理を説明する。
【0056】
コントローラ30による処理が開始されると、ブーム操作センサ21による検出結果に基づいてブーム操作部材19によりブーム下げの操作が行なわれたか否かが判定される(ステップS1)。ここで、ブーム下げ操作が行なわれたと判定されると、アーム操作センサ22による検出結果に基づいてアーム操作部材20によりアーム押し操作が行なわれたか否かが判定される(ステップS2)。
【0057】
ステップS2において、アーム押し操作が行なわれたと判定された場合、つまり、ブーム下げとアーム押しとの複合動作が行なわれていると判定された場合、
図4に示す容量特性T2と
図5に示す容量特性T3との低位選択が行なわれる(ステップS3)。これにより、容量特性T3で定義される容量の上限値、又は、容量特性T2で定義されるアーム押しに必要な容量に、第1ポンプ14の容量を制限することができる。
【0058】
前記ステップS1においてブーム下げ操作が行なわれていないと判定された場合、アーム操作部材20によりアーム押し操作が行なわれているか否かが判定される(ステップS5)。ここで、アーム押し操作が行なわれていないと判定されると、前記ステップS1にリターンする。一方、アーム押し操作が行なわれていると判定された場合、つまり、アーム押しの単独操作が行なわれていると判定された場合、
図4に示す容量特性T2とアーム押し操作量とに基づいて容量を特定する(ステップS6)。
【0059】
また、前記ステップS2においてアーム押し操作が行なわれていないと判定された場合、つまり、ブーム下げの単独操作が行なわれていると判定された場合、
図3に示す容量特性T1とブーム下げ操作量とに基づいて容量を特定する(ステップS4)。
【0060】
そして、前記ステップS3、S4、又はS6において特定された容量に基づく制御信号Si3を第1ポンプ14のレギュレータ14aに出力して(ステップS7)、処理が終了する。
【0061】
以上説明したように、前記実施形態では、ブーム下げ及びアーム押し複合動作が検出され(ステップS1及びS2でYES)、かつ、ブーム操作部材19の操作量が規定操作量A1(
図5参照)以上である制限制御期間中に、ブーム下げ単独動作時の容量特性T1と比較して第1ポンプ14の容量を制限する。これにより、第1ポンプ14から作動油の大半がブームシリンダ9に優先的に供給される状況において、ブームシリンダ9に対して作動油が余分に供給されるのを抑制することにより、第1ポンプ14の動力のロスを低減することができる。
【0062】
したがって、前記実施形態によれば、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時における第1ポンプ14の動力のロスを低減することができる。
【0063】
前記実施形態では、予め設定された容量特性T3以下となるように第1ポンプ14の容量を制御する。したがって、ブーム下げ操作量が変更される度に、この操作量に応じた第1ポンプ14の容量を算出する場合と比較して、コントローラ30により実行される制御を簡素化することができる。
【0064】
ブーム操作部材19の操作量の増加に応じて、ブーム側制御弁16のセンターバイパス開口が絞られることにより第1ポンプ14からアームシリンダ10に導くことができる作動油の流量が制限される。ここで、前記実施形態では、ブーム操作部材19の操作量の増加に応じて減少する容量特性T3以下となるように第1ポンプ14の容量が制御される。そのため、第1ポンプ14の動力のロスをブーム操作部材19の操作量の変化に応じて有効に低減することができる。
【0065】
前記実施形態では、アーム押し操作量に応じた容量特性T2、ブーム下げ操作量に応じた容量特性T3のうちの小さい容量となるように第1ポンプ14の容量を制御する(ステップS3、S7)。これにより、アーム押しに必要な容量が容量特性T3により特定される容量の範囲内である場合に、容量特性T3からさらに第1ポンプ14の容量を減じて、より有効に第1ポンプ14の動力のロスを低減することができる。
【0066】
前記実施形態では、ブーム操作部材19の全操作範囲において、容量特性T2により特定される容量、容量特性T3により特定される容量のうちの小さい容量となるように第1ポンプ14の容量を制御する。これにより、ブーム操作部材19の操作量が小さい状況、つまり、ブーム側制御弁16のセンターバイパス開口があまり絞られていない状況において、アームシリンダ10に対して有効に作動油を供給することができる。そのため、例えば、アーム操作部材20の操作量が最大の状態で、ブーム操作部材19が非操作の状態から少し操作された場合に、第1ポンプ14の容量が急激に減少するのを抑制することができる。
【0067】
前記実施形態において、容量特性T3の最大値(max)は、容量特性T2の最大値(max)と同等とされている。これにより、ブーム操作部材19の操作量が最小の状態において、第1ポンプ14の容量をアーム押しに必要な容量(容量特性T2により特定される容量)の最大値に設定することができる。
【0068】
[第2実施形態(
図7、
図8)]
第1実施形態では、
図5に示すように、ブーム下げ操作量の増加に応じて減少する容量特性T3以下となるように、第1ポンプ14の容量を制御しているが、これに限定されない。具体的に、後述する第2実施形態のように、ブーム下げ操作量が予め設定された操作量A1以上の範囲において、ブーム下げ単独操作時における容量特性T1により特定される容量よりも容量を制限すればよい。
【0069】
第2実施形態に係るコントローラ30は、
図7に示す容量特性T4を予め記憶している。容量特性T4は、ブーム下げの最小操作量から操作量A1までの範囲については、ブーム下げ単独操作時の容量特性T1(
図3参照)と同一である。一方、操作量A1よりも大きな範囲について、容量特性T4は、ブーム下げ操作量にかかわらず一定とされている。そのため、容量特性T4に基づいて容量を特定することにより、ブーム下げ単独操作時の容量特性T1を用いる場合と比較して、ハッチングに示す範囲だけ容量を制限することができる。なお、容量特性T4では、操作量A1以上の範囲の容量が一定に設定されているが、操作量A1以上の範囲の容量が容量特性T1よりも緩やかな勾配で操作量に応じて増加するように設定されていてもよい。
【0070】
以下、
図8を参照して、第2実施形態に係るコントローラ30により実行される処理を説明する。なお、
図6に示す処理と異なる部分のみについて説明する。
【0071】
前記ステップS2においてアーム押し操作が行なわれると判定された場合、つまり、ブーム下げとアーム押しとの複合動作が行なわれていると判定された場合、ブーム下げ操作量が操作量A1以上であるか否かが判定される(ステップS21)。
【0072】
ステップS21でブーム下げ操作量が操作量A1以上であると判定されると、
図7に示す容量特性T4とブーム下げ操作量とに基づいて容量を特定する(ステップS31)。これにより、ブーム下げの単独操作時における容量特性T1に基づき特定される容量と比較して第1ポンプ14の容量を制限することができる。
【0073】
一方、ステップS21でブーム下げ操作量が操作量A1未満であると判定されると、
図7に示す容量特性T4と
図4に示す容量特性T2との高位選択により容量を特定する(ステップS32)。これにより、ブーム下げの操作量が比較的小さい場合、つまり、ブーム側制御弁16のセンターバイパス開口があまり絞られていない場合に、アーム押し動作に必要な作動油を有効に第1アーム側制御弁17に導くことができる。
【0074】
なお、前記各実施形態において、操作量A1は、第1ポンプ14からの作動油のうち、ブーム側制御弁16のセンターバイパス開口を通して第1アーム側制御弁17に導くことができる作動油の割合が所定値以下となる操作量として予め設定されたものである。