(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928003
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】粉状物質散布補助装置及び粉状物質散布装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/04 20060101AFI20160519BHJP
B05C 19/06 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
B05B17/04
B05C19/06
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-48423(P2012-48423)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-184070(P2013-184070A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100103274
【弁理士】
【氏名又は名称】千且 和也
(72)【発明者】
【氏名】布施 新作
【審査官】
大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−205928(JP,A)
【文献】
特開平07−155392(JP,A)
【文献】
実開昭58−035980(JP,U)
【文献】
特開昭62−231609(JP,A)
【文献】
実開昭49−023467(JP,U)
【文献】
特開平08−103201(JP,A)
【文献】
特開2001−269024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 3/18
B05B 7/00−17/08
B05C 7/00−21/00
A01M 9/00
A47J 42/00−44/02
B22C 11/00−25/00
B65D 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状物質を収容可能な収容空間及び粉状物質を排出可能な排出口を有する収容容器に装着され、該収容容器を振動させることにより、該収容容器の排出口から粉状物質を排出させて散布させるための粉状物質散布補助装置であって、
前記収容容器の排出口が下方を向いた状態において前記収容容器を保持可能な保持部と、
前記収容容器に対する反復運動による衝打により前記収容容器を振動させることが可能な振動発生部と、
前記粉状物質散布補助装置を持ち運ぶための取手部とを備え、
前記振動発生部は、前記収容容器の底面の中心を衝打するよう構成されている
ことを特徴とする粉状物質散布補助装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記収容容器に対して着脱可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の粉状物質散布補助装置。
【請求項3】
前記振動発生部は、加圧空気を供給することにより振動を発生するエアーバイブレータを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉状物質散布補助装置。
【請求項4】
前記振動発生部は、前記収容容器に対する反復運動により該収容容器を衝打可能なピストンを備え、
前記ピストンの前記収容容器に衝打される部位には、緩衝材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の粉状物質散布補助装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の粉状物質散布補助装置と、
粉状物質を収容可能な収容空間及び粉状物質を排出可能な排出口を有する収容容器とを備える
ことを特徴とする粉状物質散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状物質を対象物上に散布するための粉状物質散布補助装置及び粉状物質散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉状物質を対象物上に散布させるためには、粉状物質を収容する有底筒状の収容部材の上端開口部に、粉状物質を篩いにかけることが可能な多孔状又はメッシュ状の排出口を有する蓋部材を取り付けた後、この収容部材を逆さまに把持して上下に振ったり、収容部材の底部を手で叩いたりすることにより、収容部材から粉状物質を排出させている(このような収容部材及び蓋部材として、例えば
図2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のような作業者の手動によって収容部材から粉状物質を排出させる方法では、作業者の負担が大きく、また、作業が長時間に及ぶ場合には作業者が手を傷めるおそれがあるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、作業者の負担を軽減させることが可能な粉状物質散布補助装置及び粉状物質散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明に係る粉状物質散布補助装置は、粉状物質を収容可能な収容空間及び粉状物質を排出可能な排出口を有する収容容器に装着され、該収容容器を振動させることにより、該収容容器の排出口から粉状物質を排出させて散布させるための粉状物質散布補助装置であって、前記収容容器の排出口が下方を向いた状態において前記収容容器を保持可能な保持部と、前記収容容器に対する反復運動による衝打により前記収容容器を振動させることが可能な振動発生部と、取手部とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る粉状物質散布補助装置によれば、作業者が取手部を把持した状態において振動発生部によって収容容器を振動させることにより、収容容器の排出口から粉状物質を排出させて対象物上に散布させるように構成されているため、作業者が手動によって収容容器を上下に振ったり収容容器の底を叩いたりする必要がなく、作業者の負担を軽減させることができる。
【0007】
本発明に係る粉状物質散布補助装置において、前記保持部は、前記収容容器に対して着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る粉状物質散布補助装置において、前記振動発生部は、加圧空気を供給することにより振動を発生するエアーバイブレータを備えることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る粉状物質散布補助装置において、前記振動発生部は、前記収容容器に対する反復運動により該収容容器を衝打可能なピストンを備え、前記ピストンの前記収容容器に衝打される部位には、緩衝材が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る粉状物質散布装置は、前記粉状物質散布補助装置と、粉状物質を収容可能な収容空間及び粉状物質を排出可能な排出口を有する収容容器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者の負担を軽減させることが可能な粉状物質散布補助装置及び粉状物質散布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粉状物質散布補助装置の概略構成を示す正面斜視図である。
【
図2】粉状物質を収容する収容容器の概略構成を示す一部切り欠き断面図である。
【
図3】本実施形態に係る粉状物質散布装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係る粉状物質散布補助装置について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1は、
図1乃至
図3に示すように、粉状物質2を収容する収容容器110を保持可能な保持部10と、収容容器110に対する反復運動による衝打により収容容器110を振動させることが可能な振動発生部20と、取手部30とを備えている。
【0014】
保持部10は、
図1に示すように、上下方向に間隔をおいて一対設けられたリング状の保持部材(上側保持部材12及び下側保持部材14)と、上下方向に延び、これら上側保持部材12及び下側保持部材14を連結する連結部材16とから構成されている。
【0015】
上側保持部材12は、半円弧状に形成された2つのセグメント12a、12bを備え、これら2つのセグメント12a、12bを組み合わせることにより円弧状(リング状)を形成するように構成されている。この上側保持部材12は、2つのセグメント12a、12bを組み合わせることにより形成される円弧の径が、収容容器110の周面を包囲可能な径、すなわち、収容容器110の外径と概ね同径の内径となるような大きさに形成されている。これら2つのセグメント12a、12bは、一方側の端部(
図1中、奥側の端部)がヒンジ等の回動部材(図示せず)によって回動自在に連結されており、これら2つのセグメント12a、12bが閉じた閉塞状態において収容容器110を保持し、回動部材を中心として一方のセグメント12bを他方のセグメント12aに対して離間させた開放状態において、収容容器110の着脱を実行可能に構成されている。これら2つのセグメント12a、12bの他方側の端部(
図1中、手前側の端部)には、一方のセグメント12aに設けられた係合爪13aと、他方のセグメント12bに設けられた係合リング13bとからなる係合手段13が設けられており、これら係合爪13a及び係合リング13bを係合させることにより、2つのセグメント12a、12bの閉塞状態を維持可能に構成されている。下側保持部材14は、上側保持部材12と同様に、半円弧状に形成された2つのセグメント14a、14bから構成されている。なお、下側保持部材14は、上側保持部材12と同様の構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0016】
これら上側保持部材12及び下側保持部材14は、回動部材によって連結された側の端部(
図1中、奥側の端部)の周方向の位置と、係合手段13が設けられた側の端部(
図1中、手前側の端部)の周方向の位置とがそれぞれ整合するように上下方向に間隔をおいて設けられ、上下方向に延びる板状の連結部材16によって連結されている。この連結部材16は、上側保持部材12の一方のセグメント12aの中間部と下側保持部材14の一方のセグメント14aの中間部とを連結し、取手部30を支持する取手部支持用連結部16aと、上側保持部材12のセグメント12a、12bの一方側の各端部(
図1中、奥側の端部)と下側保持部材14のセグメント14a、14bの一方側の各端部(
図1中、奥側の端部)とを連結し、前述の回動部材を支持するための回動部材支持用連結部16b、16cとから構成されている。
【0017】
取手部30は、作業者が把持可能な円筒状に形成されており、取手部支持用連結部16aの外面上に、取手部支持用連結部16aに対して垂直に立設されている。
【0018】
振動発生部20は、取手部30から上方に延びる板状の上方延伸部材22と、上方延伸部材22の上端部に下面が連結され、上側保持部材12の中心と上下方向において整合する位置に向かって水平方向に延びる板状の支持板24と、支持板24上に載置されたエアーバイブレータ26とを備えている。上方延伸部材22及び支持板24は、エアーバイブレータ26の後述するピストン28の先端部29が収容容器110の底面の中心を衝打可能な程度の高さとなるような上下方向の長さ又は水平方向の長さを有している。
【0019】
エアーバイブレータ26は、エアー源(図示せず)に接続されたエアー供給口27からエアー(加圧空気)が供給されることによりピストン28が反復運動(往復動)する公知のピストンバイブレータであり、ピストン28の先端部29を収容容器110に衝打させることにより、収容容器110に振動を与えるように構成されている。ピストン28の先端部29には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等からなる緩衝材が設けられている。
【0020】
本実施形態に係る粉状物質散布装置100は、上述した粉状物質散布補助装置1に、
図2に示すような、粉状物質2を収容可能な収容空間122及び粉状物質2を排出可能な多孔状又はメッシュ状の排出口132を有する収容容器110を取り付けることにより構成される。
【0021】
収容容器110は、粉状物質2を収容可能な収容空間122を有する有底筒状の収容部材120と、収容部材120の上端開口部に取り付けられる蓋部材130とから構成されている。収容部材120は、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネイト)等からなり、上端開口部近傍(略円筒状部分124)が略円筒状に窄まった瓶状に形成されている。蓋部材130は、円盤状の蓋板131と、蓋板131の外周に沿って下向きに延設される胴体133とからなる、上面が閉塞された筒状に形成されており、収容部材120の略円筒状部分124に取り付け可能な大きさに形成されている。これら略円筒状部分124の外周面及び胴体133の内周面には、互いに螺合可能な外ネジ山及び内ネジ山が形成されており、蓋部材130を時計回り又は反時計回りに回転させることにより、蓋部材130を略円筒状部分124に対して着脱可能に構成されている。蓋板131には、上面から下面に亘って貫通する貫通孔が形成されると共に、この貫通孔に例えばSUSからなる篩い網が埋設されており、この篩い網が、粉状物質2を排出可能な多孔状又はメッシュ状の排出口132として機能するように構成されている。
【0022】
次に、本実施形態に係る粉状物質散布装置100を用いて対象物4上に粉状物質2を散布させる方法について、
図3に基づいて説明する。本実施形態に係る粉状物質散布装置100を用いて対象物4上に粉状物質2を散布させるためには、まず、粉状物質2が収容された収容容器110を逆さまに、すなわち、排出口132が下方側に向くように粉状物質散布補助装置1の保持部10に装着させる。その後、取手部30を把持して所望の散布地点まで粉状物質散布装置100を移動させ、所望の散布地点に到達した後に、エアーバイブレータ26にエアーを導入する。これにより、収容容器110が振動し、篩い網によって篩いにかけられた粉状物質2が排出口132から排出され、対象物4の所望の散布地点上に散布される。所望の散布が完了した後、散布地点を変更する場合には、取手部30を把持した状態で粉状物質散布装置100を移動させて粉状物質2の散布を継続し、散布作業を終了する場合には、エアーバイブレータ26に対するエアーの供給を停止し、粉状物質2の散布を終了させる。
【0023】
本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100は、振動発生部20によって収容容器110を振動させることにより、収容容器110の排出口132から粉状物質2を排出させて対象物4上に散布させるように構成されているため、作業者が手動によって収容容器110を上下に振ったり収容容器110の底を叩いたりする必要がなく、作業者の負担を大幅に軽減させることができる。また、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100は、作業者が把持可能な取手部30を備えているため、作業者が粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100を自由に移動させて対象物4の所望の位置上に粉状物質2の散布を行うことができ、散布作業の自由度及び効率を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100は、保持部10が、収容容器110を着脱可能に構成されているため、収容容器110内の粉状物質2が全て排出されて空になった場合であっても、新たな収容容器110と交換するのみで粉状物質2の散布作業を継続することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0025】
さらに、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100は、振動発生部20が、加圧空気を供給することにより振動を発生するエアーバイブレータ26を備えるため、エアー源がある場所であれば何処でも使用が可能であり、また、エアーのみでの駆動であることから、粉塵爆発の危険がある粉状物質2の散布にも使用可能であり、さらに、エアーの圧力を調整することのみで振動(すなわち、散布量)の調整ができる。また、エアーバイブレータ26は小型で軽量であるため、振動発生部20の振動発生源としてエアーバイブレータを用いることにより、粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0026】
またさらに、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1及び粉状物質散布装置100は、振動発生部20のピストン28の先端部29に緩衝材が設けられていることにより、ピストン28が収容容器110に衝突する際の衝撃を緩和させることができるため、収容容器110の破損及び劣化を抑制することができる。
【0027】
本発明に係る粉状物質散布補助装置及び粉状物質散布装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。例えば、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1において、保持部10は、上側保持部材12及び下側保持部材14と、連結部材16とから構成されているとしたが、これに限定されず、収容容器110の排出口132が下方を向いた状態において収容容器110を保持可能に構成されたものであれば、いかなるものであっても良い。
【0028】
また、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1において、振動発生部20は、上方延伸部材22と、支持板24と、エアーバイブレータ26とを備えるとしたが、これに限定されず、収容容器110に対する反復運動による衝打により収容容器110を振動させることが可能なものであれば、いかなるものであっても良い。さらに、本実施形態に係る粉状物質散布補助装置1において、振動発生部20は、収容容器110の底面を衝打するものとして説明したが、これに限定されず、収容容器110の周面や上面等を衝打するように構成されても良い。
【0029】
さらに、本実施形態に係る粉状物質散布装置100において、収容容器110は、収容部材120と、蓋部材130とから構成されているとしたが、これに限定されず、粉状物質2を収容可能な収容空間及び粉状物質2を排出可能な排出口を有するものであれば、いかなるものであっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 粉状物質散布補助装置、10 保持部、20 振動発生部、26 エアーバイブレータ、28 ピストン、29 先端部、30 取手部、100 粉状物質散布装置、110 収容容器