【実施例】
【0065】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。実施例及び比較例において、得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの素ゴムの物性、及び得られたゴム組成物の配合物の物性と加硫物の物性は以下のようにして測定した。
(1)沸騰n−ヘキサン不溶分(H.I.);示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した融解熱量と、実測H.I測定法で得られたH.Iの検量線から求めた。実測H.Iは2gのビニル・シス−ポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンにて4時間ソックスレー抽出器によって沸騰抽出した抽出残部を重量部で示した。
(2)沸騰n−ヘキサン不溶分(H.I)の融点、融解熱量及び結晶化温度;試料約10mg、昇温速度10℃/minとした場合の値を示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した。
(3)ムーニー粘度;ビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及びビニル・シス−ポリブタジエンゴムの配合物をJIS K6300に準じて100℃にて測定した値である。
(4)シス−ポリブタジエンゴムのトルエン溶液粘度;シス−ポリブタジエンの25℃における5重量%トルエン溶液の粘度を測定してセンチポイズ(cp)で示した。
(5)伸張疲労性:定伸張疲労試験機(上島製作所製)を用いて、ダンベル状3号形(JIS−K6251)試験片の中央に0.5mmの傷を入れ、初期歪30%、50%、100%、300回/分の条件で試験片が破断した回数を測定した。市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴムであるUBEPOL VCR412(宇部興産株式会社製)を用いた比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きいほど耐疲労性が高いことを示す。
(6)ダイ・スウェル;加工性測定装置(モンサント社、MPT)を用いて配合物の押出加工性の目安として100℃、100sec
−1のせん断速度で押出時の配合物の断面積とダイオリフィス断面積(但し、L/D=1.5mm/1.5mm)の比を測定して求めた。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が小さい程押出し加工性が良好なことを示す。
(7)引張弾性率;JIS K6251に従い、引張弾性率M100を測定した。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きい程引張応力が高いことを示す。
(7’)引張弾性率;JIS K6251に従い、引張弾性率M300を測定した。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きい程引張応力が高いことを示す。
(8)発熱性(tanδ);粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、RPA2000)を用い、温度50℃、周波数1Hz、動歪み3%、10%で測定し、比較例3を100とし、指数を算出した。数値が低い程発熱性が良好なことを示す。
(9)硬度;JIS K6253に準じてタイプAデュロメーターを用いて室温で測定した。比較例3を100として指数を算出した。数値が大きいほど硬度が高く良好な物性であることを示す。
(10)ポリブタジエンゴム中の高分子量成分の割合;シス−1,4重合で得られたポリブタジエンゴム100mgをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC−8220 GPC、カラム:KF−805L×2、検出器:RI)を用いて測定し、得られた溶出曲線を市販の波形分離ソフト(ORIGIN Pro8.0)を用い、ピーク検索にてピークトップと分子量10^6.10付近のピーク(もしくはショルダー)を指定し、反復回数500、許容値1E−15で波形分離し、高分子量成分の面積割合を求めた。
【0066】
(実施例1)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)で測定した融点が97.4℃のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(低融点SPB)粉末を0.425g導入した後、チッソ置換を5kg/cm
2で5回行った。次に、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を0.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水15.3mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)0.97ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)0.375ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)0.40mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。
次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.95mlを添加し、5分後にオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(0.05M)0.70ml及び二硫化炭素(CS
2)のシクロヘキサン溶液(0.25M)0.50mlを添加して、40℃で20分間1,2重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を0.5ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を0.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥した。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0067】
(B)シスポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を2.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水76.7mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)4.48ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)1.875ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)3.75mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)2.70mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を2.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、シスポリブタジエン253.2gを得た。このシスポリブタジエンのML粘度は26.1であった。
【0068】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン40g、前述のシスポリブタジエン40gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム80gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0069】
(実施例2)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を0.85g、CODの添加量を1.05ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.54mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0070】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
実施例2の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0071】
(実施例3)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を1.70g、CODの添加量を1.26ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.79mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0072】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
実施例3の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0073】
(比較例1)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBを添加せず、CODの添加量を0.96ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.33mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0074】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
比較例1の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0075】
(実施例4)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエン溶液の製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)で測定した融点が97.4℃のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(低融点SPB)粉末を0.425g導入した後、チッソ置換を5kg/cm
2で5回行った。次に、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を0.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水15.3mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)0.97ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)0.375ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)0.40mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。
次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.95mlを添加し、5分後にオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(0.05M)0.70ml及び二硫化炭素(CS
2)のシクロヘキサン溶液(0.25M)0.50mlを添加して、40℃で20分間1,2重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を0.5ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を0.5ml加えて行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0076】
(B)シスポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を2.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水76.7mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)4.58ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)1.875ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)3.75mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct)
2)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)2.75mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を2.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、シスポリブタジエン259.4gを得た。このシスポリブタジエンのML粘度は25.9であった。
【0077】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ヘリカル羽根を備えた1.9Lステンレス製オートクレーブにシクロヘキサン500ml、実施例4の(B)で得られたシスポリブタジエン50gを加え、攪拌速度を500rpmとした。25℃で5時間保持し、シスポリブタジエン溶液を作製した。この溶液を実施例4の(A)で作製したビニル・シス−ポリブタジエン溶液に加え、攪拌速度を500rpmとし、40℃で30分間保持した。オートクレーブを放圧した後、内容物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥して(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム92.7gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0078】
(実施例5)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を0.85g、CODの添加量を1.05ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.54mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0079】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として実施例5の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム95.2gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0080】
(実施例6)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を1.7g、CODの添加量を1.26ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.79mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0081】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として実施例6の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム94.4gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0082】
(比較例2)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBを添加せず、CODの添加量を0.96ml、Co(Oct)
2のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.33mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0083】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として比較例2の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム93.7gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0084】
前記の実施例と比較例にあるビニル・シス−ポリブタジエンゴムを表8の配合表に従ってプラストミルでカーボンブラック、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を加えて混練する一次配合を実施し、次いでロールにて加硫促進剤、硫黄を添加する二次配合を実施し、配合ゴムを作製した。この配合ゴムを用い、ダイ・スウェルを測定した。更にこの配合ゴムを目的物性に応じて成型し、150℃にてプレス加硫し加硫物を得た後、物性測定を行った。それぞれの物性測定結果について、市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴムであるUBEPOL VCR412(宇部興産株式会社製)を用い、これを100とした指数を表9に示した。表9の結果から、実施例1〜6で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた場合、比較例1、2、3と比べ、配合物及び加硫物の押出加工性、引張応力並びに耐伸張疲労性が向上していることが分かる。