(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マークは、少なくとも一部が露出するように前記センタ穴に装着される鋲を含み、露出した部分に前記指定位置に対応した識別記号及び識別色の少なくとも1つを含む指標を配している
ことを特徴とする請求項8に記載された電気自動車。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の電気自動車100について、
図1から
図15を参照して説明する。
図1に示す電気自動車100は、車体10と電池パック20とを備える。車体10は、主にタイヤ30を交換する場合にジャッキアップするための指定位置11を示す印が下部に付されている。指定位置11が設けられる場所は、各タイヤ30のタイヤハウス12に近い車体10の下部であり、
図1及び
図2においてハッチングで示す4か所に配置されている。指定位置11の外観は、
図6に示す。
【0018】
電池パック20は、
図1及び
図2に示すように、車体10のほぼ中央の下部に搭載されている。この電池パック20は、
図3に示すように、複数のバッテリセル21と、このバッテリセル21を収納するケース22とを含む。バッテリセル21は、リチウムイオンバッテリであり、複数個ずつ束ねられてモジュールを形成している。電池パック20は、さらにこのモジュールを複数備えている。
【0019】
ケース22は、上壁221と側壁222が一体となったカバー22A、および底壁223とブラケット224(
図2)が組み合わされたトレイ22Bで構成されている。カバー22A及びトレイ22Bは、外周部に沿ってガスケットなどのパッキンが装着され、ボルトで締結される。ブラケット224は、
図2に示すように車体10のサイドメンバ10Aに連結される。ケース22は、バッテリセル21の外周に対して隙間Gを有している。ケース22は、充分な強度を有しかつ軽量であるために、例えば板金プレートをインサート成形されたガラス繊維入り樹脂(FRP)で作られている。また、電池パック20は、
図3に示すように、下からアンダーカバー40が取り付けられ、保護されている。
【0020】
電池パック20は、バッテリセル21の他に、複数のモジュールから得られる電力をモータに供給するための電力供給システムをケース22内に有している。電力供給システムは、インバータやコンバータ、一般の商用電源から得られる電力をバッテリセル21に充電するための充電器などを含む。
【0021】
電池パック20は、
図2及び
図3に示すようにさらに、ケース22の内部に連通する排液孔23を開ける位置を示すためのマーク24を有している。このマーク24は、指定位置11をジャッキアップしたことによって傾斜した電池パック20の中で、この指定位置11に対して相対的に低くなる位置の電池パック20の少なくとも底壁223に設けられている。電気自動車100の側方から見て電池パック20の側壁222を見ることができれば、マーク24は、側壁222に印されていてもよい。
【0022】
各排液孔23を開ける位置を示すマーク24は、
図2に示すように排液孔23が開通される位置を示す穿孔標示241を少なくとも有する。穿孔標示241は、排液孔23を開けてもよい範囲を示している。つまり、穿孔標示241の範囲内であればどこに排液孔23を開けても、電池パック20の内部にあるバッテリセル21やその他の部品に干渉しない。したがって、それぞれの穿孔標示241の大きさは、同じ大きさであるとは限らない。この穿孔標示241は、
図3に示すように、電池パック20の底壁223の表面よりも少し凹んだ凹部になっている。
【0023】
排液孔23を開ける際に使用されるドリルなどの工具が底壁223を貫通した後で電池パック20内に配置されるバッテリセル21やその他の部品を傷つけないようにするために、排液孔23は、バッテリセル21などが配置されていない位置に開通するように設定される。第1の実施形態では
図3に示すように、排液孔23は、バッテリセル21の外周に設けられる隙間Gに開通するように設定される。排液孔23に接近しているバッテリセル21やその他の部品を保護するために、電池パック20は、排液孔23が開通される位置とバッテリセル21の間に防護壁25を有している。
【0024】
電池パック20の内部の泥や混濁水あるいは電解液などの液体を排出することを考慮すると、マーク24は、平地でジャッキアップした場合に、ジャッキアップされたことによって最も低くなる位置の電池パック20に設けられている。ジャッキアップする場合の周囲の環境(例えば、地面が少し傾斜していたり、指定位置11に対応してジャッキをセットできなかったりすること)に応じて選択できるように、排液孔23は、1つのみではなく、複数個所に設定されていることが好ましい。第1の実施形態の場合、
図2に示すように、排液孔23及びマーク24は、4つある指定位置11のうちの3つの指定位置11に対応して3つ設けられている。
【0025】
この結果、排液孔23は、1つの指定位置11をジャッキアップした場合に、このジャッキアップした指定位置11よりも相対的に低くなる残りの指定位置11の内の少なくとも1つの指定位置11の近傍に位置する電池パック20の少なくとも底壁223に設定される。そして、マーク24は、この排液孔23が設定された位置に穿孔標示241を配置する。
【0026】
例えば
図2で説明すると、運転席に近い指定位置11(「J1」とする)に対応するマーク24(「M1」とする)は、運転席に対してちょうど対角の位置にあたる席、すなわち助手席の後ろにある後部席、に近い指定位置11(「J2」とする)の近傍に位置する電池パック20の底壁223に配置される。そして、マーク24に応じて開通される排液孔23は、助手席の後ろの後部席の近くにある指定位置11(J2)の近傍に位置する。
【0027】
このとき、
図4に示すように、マーク24に基づいて開通される排液孔23に向かってトレイ22Bの上面に傾斜を設けておくと、液体の排出が促進される。さらに、
図5に示すように、車体10の幅方向に中央から両外側へかつ車体10の前方から後方へなだらかに下がるように、トレイ22Bの上面に傾斜を設けてもよい。この場合、電池パック20は、車体10の後方に位置する2つの角部に少なくとも排液孔23を開通させるためのマーク24を備える。このマーク24が設けられる位置は、車体10の後部に設けられる指定位置11のそれぞれ近傍である。
【0028】
ジャッキアップされた指定位置11に対応する排液孔23及びそれを開通させる位置を印すマーク24を明確にするために、指定位置11を示す印及びこれに対応するマーク24は、同じ識別記号及び識別色の少なくとも1つを含む指標14,242をそれぞれ有する。指定位置11に付される指標14は、
図6に示すように指定位置11を示す印の近傍、ここでは指定位置11を示す印である二つのノッチに対してほぼ中央に配置されている。ジャッキを掛けた場合にも指標14が見えるように、指定位置11から少し外れた位置に指標14を配置してもよい。
【0029】
指定位置11に対応して電池パック20の底壁223に印されるマーク24は、
図7に示す。このマーク24は、排液孔23を開通させる位置を示す穿孔標示241と、指定位置11に印された指標14に対応する指標242を含む。指標242は、
図7に示すように穿孔標示241の隣に配置されている。
図7に示す穿孔標示241は、手で触れて判別しやすいように、底壁223の外表面よりも少し凹んだ凹部になっている。電池パック20の底壁223を構成するトレイ22Bは、FRPで造られる。したがって、指標242は、凹んでいてもよいし、膨らんでいてもよい。指標242に汚れが付着しても、拭えば容易に判別できるようになる。
【0030】
図6及び
図7に示された指定位置11の指標14及びマーク24の指標242は、識別記号の一形態である数字である。指標14,242は、数字に代えて英字、ひらがなやカタカナ、その他の言語の文字、あるいは記号であってもよい。指標14,242に数字を用いる場合、排液孔23を開通させる作業順序や開通すべき優先順位などを関連付けることができる。さらに、指標14,242に数字や文字を採用する場合、指標14,242は、車体10の下に潜り込んで見なくても鏡で簡単に確認できるように、鏡に映したときに正しく読めるいわゆる「鏡文字」にしておいてもよい。
【0031】
指標14,242を判別しやすくするために、指標14,242は、凹ませて造形し、凹んだ部分にボディカラーや周辺の色と異なる色、好ましくは補色を象眼する。このとき、色つきの樹脂を指標14,242の表面が周囲と同じ高さになるように充填してもよい。指標14,242が周囲と面一になっていることで、汚れが付着しにくく、また付着した場合でも落としやすい。
【0032】
同じ表示の指標14,242が設けられた指定位置11とマーク24は、互いに対応している。したがって、例えば、
図7に示された指標242を有したマーク24の穿孔標示241に排液孔23を開通させ、電池パック20の内部の液体を排出する場合、指標242と同じ表示である
図6に示された指標14が付された指定位置11をジャッキアップすればよいことが分かる。
【0033】
ボディの塗装工程や組立工程との関係上、指定位置11に印される指標14は、別部材として取り付けられてもよい。例えば、
図8に示すように、指定位置11に下孔111を開けておき、指標14が表示されたタグ141を後でこの下孔111に取り付ける。色つきのタグを指標14として使用する場合、対応するマーク24の穿孔標示241を同じ色にするだけで対応関係が分かるようになる。
【0034】
指定位置11とマーク24は、一対一に対応していなければならないものではない。例えば、
図8に示すように1つの指定位置11が2つの指標14を有していてもよい。電池パック20を放電させる必要が生じたときの状況が異なる場合や、同じ車種でも電池パック20の仕様が異なるような場合、排液孔23を開通させる順序を変えたほうがよいこともある。このような場合、タグ141に表示される指標14のそれぞれの色を変えたり記号を変えたりすることで、様々な手順を設定することも可能である。
【0035】
図9は、
図7に示したマーク24の変形例の断面図及び下面図を示す。マーク24の穿孔標示241は、電池パック20の底壁223の表面よりも少し凹んだ円形である。この穿孔標示241は、排液孔23を開通させるために用いられるドリルなどの工具の尖端が掛かりやすいようにするために、センタ穴243を中央部に有している。このセンタ穴243は、穿孔標示241として設けられる凹部の一形態に含まれる。指標242は、底壁223の表面よりも突出している。この指標242は、
図7に示した指標242と同様に、数字によって識別され、矢印242Aによって穿孔標示241が指し示されている。矢印242Aの向きは、穿孔標示241を指し示す代わりに、対応している指定位置11がある方向を指し示すようにしてもよい。矢印242Aが対応する指定位置11を指し示すようにすることで、排液孔23を開通させた後にジャッキアップすべき指定位置11が分かるので、作業性が向上する。
【0036】
電池パック20の下にアンダーカバー40がさらに取り付けられている場合、マーク24の穿孔標示241に対応する鉛直投影範囲は、
図3に示すように切り欠かれていてもよいし、
図10に示すようにアウターマーク44が設けられていてもよい。
図10は、アウターマーク44が設けられた部分のアンダーカバー40の断面図及び下面図を示す。このアウターマーク44は、穿孔標示241に対応する投影位置に配置されたアウター標示441と、この標示に基づいて開通される排液孔23に対応する指定位置11と同じ表示のアウター指標442とを含む。アウター指標442に表示される情報は、電池パック20の底壁223に設けられるマーク24の指標242に表示される情報と同じである。つまり、指標242とともに付される矢印242Aと同じく、アンダーカバー40にもアウター指標442とともに矢印442Aを設ける。
【0037】
図10に示すように、アウター標示441およびアウター指標442は、アンダーカバー40がプレス成形する際に同時に作られる。穿孔標示241と同様に、アウター標示441は、アンダーカバー40の外表面よりも少し凹まされた円形である。このアウター標示441は、中央部がアンダーカバー40の外表面とほぼ面一に膨出しており、さらにその中心に電池パック20に向かって凹んだディンプル443が形成されている。ディンプル443は、
図9に示した穿孔標示241が有するセンタ穴243と同じ機能、つまり、ドリルなどの工具の尖端が掛かりやすいようにする機能を備える。
【0038】
排液孔23を開通させる場合、アンダーカバー40のアウター標示441のディンプル443をドリルなどの工具で貫通した後、さらに電池パック20の穿孔標示241のセンタ穴243に工具の尖端を合致させる。アンダーカバー40に開けられた孔がガイドの役割を果たすので、排液孔23は、決められた方向へ開通されやすくなる。したがって、排液孔23を開通した後、工具の尖端によって電池パック20内のバッテリセル21やそのほかの部品が傷つかないように、防止できる。
【0039】
なお、求められる排液孔23の口径に対して、使用される工具の外形が小さい場合、穿孔標示241及びアウター標示441の範囲内であれば、複数の排液孔23を開通させてもよい。また、複数の排液孔23を前提として、センタ穴243やディンプル443を複数設けておいてもよい。センタ穴243及びディンプル443を複数ずつ設ける場合、対応する組み合わせを間違わないようにするために、電池パック20の底壁223とアンダーカバー40との間にガイドスリーブを設けておいてもよい。
【0040】
マーク24は、穿孔標示241と同じ位置に指標242を設けてもよい。
図11及び
図12は、穿孔標示241と同じ位置に指標242を有したマーク24の変形例の断面図及び下面図を示す。
【0041】
図11に示すマーク24は、センタ穴243に装着される鋲244を含む。鋲244は、少なくとも一部がセンタ穴243から露出するように形成される。
図11に示した鋲244は、センタ穴243を中心に電池パック20の底壁223に沿って円形に広がった笠部245を有している。マーク24の指標242は、この笠部245に配置されている。また、笠部245は、排液孔23を開通させてもよい領域を示す穿孔標示241として必要な大きさを有している。鋲244は、電気自動車100の走行中の振動などによって脱落しないように、笠部245の外周を接着剤やパテまたはコーキング材などの合成樹脂Pでしっかり固定される。
【0042】
排液孔23を開通させる場合、鋲244は、マイナス型ドライバーやへらなど楔状の工具によって除去される。そして、現れたセンタ穴243にドリルなどの工具で排液孔23を開通する。排液孔23を開けるための工具に対して鋲244が十分に軟らかい材質である場合、鋲244が取り付けられたまま、工具で排液孔23を開通させてもよい。
【0043】
図11に示したマーク24の場合、センタ穴243のみが電池パック20の底壁223に設けられ、穿孔標示241、指標242が鋲244に設けられる。電池パック20が複数の車種に共通して採用される場合、車種によって指標242に表示すべき情報が異なっても、鋲244を変更することによって容易に対応させることができる。
【0044】
また、鋲244は、センタ穴243に装着されるので、鋲244の向きを自由に変えて固定することができる。したがって、
図9に示したマーク24の矢印242Aと同様の機能を鋲244に付加することができる。例えば、笠部245の外周部にノッチまたは突起を設け、それをこのマーク24に対応する指定位置11に向けて鋲244を固定する。または、指標242として表示される文字の上方がこのマーク24に対応する指定位置11に向くようにして鋲244を固定してもよい。
【0045】
図12に示すマーク24は、穿孔標示241と指標242が一体に形成されている。穿孔標示241は、電池パック20の底壁223の表面よりも凹んだ凹部になっており、排液孔23を開通させてもよい範囲を示している。指標242は、穿孔標示241の範囲内において、穿孔標示241から突出している。また、このマーク24において、指標242が形成された部分以外の穿孔標示241である凹部は、視認しやすい色に着色された合成樹脂Qで充填されている。合成樹脂Qに柔軟な材質のものを採用すると、汚れがこびりついている場合にも、除去しやすい。
【0046】
さらに、着色料に代えてまたは着色料とともに蓄光性の材料を混ぜた合成樹脂Qを穿孔標示241に充填してもよい。懐中電灯などのランプでマーク24にしばらく光を当てれば、合成樹脂Qが蓄光性材料を含んでいることによって、夜間でも容易にマーク24を判別することができる。このとき指標242は、穿孔標示241の範囲内に設けられているので、指標242も判別しやすい。
【0047】
以上のように電池パック20にマーク24が設けられた電気自動車100において、電池パック20が水没するか衝突によって破損した場合、ドリルなどの工具によって排液孔23を開通させ、電池パック20内の泥や混濁水または電解液を速やかに排出するために、以下のような一連の作業が必要となる。まず、穿孔作業を行いやすいように、排液孔23を開ける位置の近くにある指定位置11を使って車体10をジャッキアップする。そして、排液孔23を開通させた後は、ジャッキを元に戻す。最後に、開通した排液孔23の位置を示すマーク24に対応する指定位置11をジャッキアップし、電池パック20内の泥や混濁水あるいは電解液が排液孔23から排出されることを促進させる。
【0048】
複数のマーク24のうち、1か所のみに排液孔23を開通させるのであれば、上記手順をいずれかのマークについて実施すればよい。しかし、上記の一連の動作を3か所に設けられたマーク24のすべてについて別々に行うと、各排液孔23を開通させる前後で1回ずつ、合計6回のジャッキアップが必要となる。そこで、3か所にマーク24が設けられており、これらのすべてに排液孔23を開通する場合、効率よく作業を進めるための穿孔手順を、以下の実施例1から実施例3によって説明する。
【実施例1】
【0049】
電池パック20を車体10の中央に配置している電気自動車100において、電池パック20に排液孔23を開ける場合の手順の実施例1を、
図13を参照して説明する。
図13は、電気自動車100を上方から見た場合の指定位置11に印された指標14の表示、およびマーク24に印された指標242の表示をそれぞれ示す。指標14,242の表示は、それぞれ指定位置11をジャッキアップする順番、および、排液孔23を開通する順番を示す。
【0050】
実施例1では、最初に指標14に「0(ゼロ)」と印された左後部の指定位置11をジャッキアップする。ジャッキアップした左後部の指定位置11の近傍に在る指標242に「(1)」と印されたマーク24の穿孔標示241に、ドリルなどの工具で排液孔23を開通し、ジャッキを下げる。次に、指標242に印された「(1)」に対応して指標14に「1」と印された右後部の指定位置11をジャッキアップする。この結果、「(1)」の指標242の排液孔23から電池パック20内の泥、混濁水、または電解液が排出される。
【0051】
指標14の表示が「1」である指定位置11をジャッキアップしているので、この近傍に在る指標242に「(2)」と印された右後部のマーク24の穿孔標示241に、ドリルなどの工具で排液孔23を開通する。「1」の指標14が印された右後部の指定位置11のジャッキを下げて、「(2)」の指標242に対応して「2」の指標14が印された左前部にある指定位置11をジャッキアップする。この結果、「(2)」の指標242の排液孔23からも電池パック20内の泥、混濁水、あるいは電解液が排出される。
【0052】
「2」の指標14が印されたジャッキアップされた状態の指定位置11の近傍に在る指標242に「(3)」と印された左前部のマーク24の穿孔標示241に、ドリルなどの工具で排液孔23を開通させる。「2」の指標14が印された指定位置11のジャッキを下げ、「(3)」の指標242に対応して右前部にある指標14に「3」と印された右前部の指定位置11をジャッキアップする。この結果、「(1)」,「(2)」,「(3)」の指標242の排液孔23から電池パック20内の泥、混濁水、または電解液が排出される。
【0053】
最後に、「3」の指標14が印された右前部の指定位置11にジャッキの代わりに台を差し込み、「4」の指標14が印された右後部の指定位置11をジャッキアップする。この結果、「(1)」及び「(3)」の指標242の位置の排液孔23から電池パック20内の泥、混濁水、または電解液が排出されようになる。最後にジャッキアップする位置は、「4」の指標14が印された右後部の指定位置11の代わりに、
図13中において「[4]」の指標が印された左前部の指定位置11であってもよい。隣り合う2つの排液孔23が低くなるように指定位置11が持ち上げられることによって、電気自動車100の車体10の姿勢が安定する。
【0054】
電気自動車100の電池パック20が水没した場合、泥や混濁水等が電池パック20に入ってしまっているので、これらを洗い流す。その後、排液孔23を塞ぎ、電池パック20を浄水で満たし、放電させる。電気自動車100が衝突などによって電池パック20内のバッテリセル21を破損している場合、電解液が電池パック20内に流出しているので、同様に電解液を洗い流す。その後、排液孔23を塞いで浄水で電池パック20を浄水で満たし、放電させる。いずれも、電池パック20を放電させた後は、排液孔23を開放し、排水する。この結果、電池パック20から漏電の心配もなく電気自動車100を安全に取り扱うことができる。
【実施例2】
【0055】
電池パック20を車体10の中央に配置している電気自動車100において、電池パック20に排液孔23を開ける場合の手順の実施例2を、
図14を参照して説明する。
図14は、実施例1と同様に、電気自動車100を上方から見た場合の指定位置11に印された指標14、およびマーク24に印された指標242の表示をそれぞれ示す。指標14,242の表示は、それぞれ指定位置11をジャッキアップする順番、および、排液孔23を開通する順番を示す。
【0056】
実施例2では、指標242に「(3)」と印されたマーク24の位置が右前部である点が実施例1と異なっており、これに伴い「2」と印された指定位置11が右前部に配置されている。また「(3)」の指標242に対応する「3」の指標14は、左前部に配置される。
図14において、最後にジャッキアップする「4」の指標14は、「2」の指標14と同じ右前部の指定位置11に配置されている。隣り合う2つの排液孔23が低くなるように指定位置11を持ち上げられれば良いので、右前部の「4」の指標14の代わりに「0」の指標14が配置される左後部の「[4]」の指標14がジャッキアップされてもよい。
【実施例3】
【0057】
電池パック20を車体10の中央に配置している電気自動車100において、電池パック20に排液孔23を開ける場合の手順の実施例3を、
図15を参照して説明する。
図15は、実施例1,2と同様に、電気自動車100を情報から見た場合の指定位置11に印された指標14、およびマーク24に印された指標242の表示をそれぞれ示す。指標14,242の表示は、それぞれ指定位置11をジャッキアップする順番、および、排液孔23を開通する順番を示す。
【0058】
実施例3では、指標242に「(2)」と印されたマーク24の位置が右前部である点が実施例1と異なっており、これに伴い「1」と印される指標14は、右前部の指定位置11に配置される。また、左前部に配置された「(3)」の指標242を有したマーク24を基に排液孔23を開通した後にジャッキアップされる「3」の指標14は、右後部の指定位置11に配置され、最後にジャッキアップされる「4」の指標14は、「1」の指標14と同じ右前部の指定位置11に配置される。
【0059】
図15において、隣り合う2つの排液孔23が低くなるように指定位置11が持ち上げられれば良い。したがって最後にジャッキアップする「4」の指標14は、「0」の指標14が配置される左後部の「[4]」の指標14であってもよい。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電気自動車100は、
図16を参照して説明する。
図16に示すようにこの電気自動車100は、電池パック20を車体10のリアのタイヤ30の間に搭載している。電気自動車100の車体10に付された指定位置11を示す印及び電池パック20に印されたマーク24に係る詳細は、第1の実施形態において説明したとおりである。したがって指定位置11の印及びマーク24は、
図16中において第1の実施形態の指定位置11を示す印及びマーク24と同じ符号を付し、その詳細な説明は、第1の実施形態の記載を参酌する。
【0061】
この電気自動車100において、電池パック20に排液孔23を開ける手順について、
図16を参照して説明する。指標14に「0」と印された左後部の指定位置11をジャッキアップし、電池パック20の左後部に在る「(1)」の指標242のマーク24を基に排液孔23を開通する。次に、指標14に「1」と印された右後部の指定位置11をジャッキアップして、左後部の排液孔23から泥や混濁水あるいは電解液を排出するとともに電池パック20の右前部及び右後部に在る「(2)」の指標242のマーク24を基に2つの排液孔23をそれぞれ開通する。
【0062】
第2の実施形態の場合、電池パック20は、リアのタイヤ30の間に配置されている。したがって、「(2)」の指標242に対応する「2」の指標14は、「0」の指標14と同じ左後部の指定位置11に配置されている。この「2」の指標14が付された指定位置11をジャッキアップすることで、「(2)」の指標242が付された位置にある排液孔23から電池パック20内の泥や混濁水あるいは電解液を排出する。
【0063】
最後に、電池パック20の後部が前部よりも低くなるように、「3」の指標14が付された左前部の指定位置11、および「4」の指標14が付された右前部の指定位置11をそれぞれジャッキアップし、右後部及び左後部の排液孔23から排出する。「4」の指標14が付された右前部の指定位置11をジャッキアップする代わりに、
図17中に「0」及び「2」の指標14と同じ左後部に付された「[4]」の指標14の指定位置11をジャッキアップして、「(2)」の指標242が付された位置にある排液孔23から排出してもよい。この場合、「2」の指標14の指定位置11をジャッキアップした後、その指定位置11に台を噛ませ、「3」の指標14の指定位置11を「2」の指標14が付された指定位置11の台よりもやや高くジャッキアップする。こうすることで、「2」の指標14と同じ指定位置11に付される「[4]」の指標14に係るジャッキアップ作業を省略できる。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電気自動車100は、
図17を参照して説明する。
図17に示すようにこの電気自動車100は、電池パック20を車体10のフロントのタイヤ30の間に搭載している。電気自動車100の車体10に付された指定位置11を示す印及び電池パック20に印されたマーク24に係る詳細は、第1の実施形態において説明したとおりである。したがって指定位置11及びマーク24は、
図17中において第1の実施形態の指定位置11及びマーク24と同じ符号を付し、その詳細な説明は、第1の実施形態の記載を参酌する。
【0065】
この電気自動車100において、電池パック20に排液孔23を開ける手順について、
図17を参照して説明する。第3の実施形態の電気自動車100において、「0」から「4」の指標14が付された指定位置11、「(1)」及び2つの「(2)」の指標242を基に開通される排液孔23の位置は、第2の実施形態の電気自動車100におけるこれらの配置に対して車体10の重心を中心に180°回転対称に配置されている。したがって、第2の実施形態における説明中の「前」を「後ろ」、「後ろ」を「前」、「右」を「左」、「左」を「右」と読み替えて参酌し、ここでの説明を省略する。
【0066】
以上、第1から第3の実施形態において、指定位置11の指標14はジャッキアップする順番を示し、マーク24の指標242は排液孔23を穿孔する順番を示している。「0」の指標14が付された指定位置11から順番に、排液孔23を穿孔し、指定位置11をジャッキアップする一連の手順を示すように、それぞれの指標14,242を連続した番号にしてもよい。
【0067】
第1の実施形態の実施例1から実施例3や、第2及び第3の実施形態に説明した車体10ジャッキアップの順番及び排液孔23の穿孔作業の順番は、本発明を理解しやすくするためのあくまでも一例である。したがって本発明は、この手順に限定されない。