特許第5928065号(P5928065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928065
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】制御装置及びこれを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20160519BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20160519BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   E02F9/22 M
   F15B21/14 A
   F15B11/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-70833(P2012-70833)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-204223(P2013-204223A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 允紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−190261(JP,A)
【文献】 特開2010−174574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、前記機体に対して起伏可能なブームと、前記ブームに対して揺動可能なアームとを有する建設機械の制御装置であって、
前記ブームを起伏させるブームシリンダと、
前記アームを揺動させるアームシリンダと、
前記アームシリンダに作動油を供給する可変容量式の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
前記エンジンの回転数を指示するための指令を出力する回転数指示部と、
前記ブームの下げ動作時における前記ブームシリンダからの戻り油を前記アームの押し動作時における前記アームシリンダの供給側のポートに導入する回生状態と、前記戻り油の前記アームシリンダへの導入を阻止する閉鎖状態との間で切換動作可能な回生弁と、
前記油圧ポンプの吐出流量を特定するための値を検出可能な流量検出手段と、
前記ブーム下げと前記アーム押しの複合動作時に、前記回生状態に切り換わるように前記回生弁の動作を制御するとともに、前記回生弁を通じた作動油の回生に応じて前記油圧ポンプの吐出流量が減少するように前記油圧ポンプの流量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下である場合に前記エンジンの回転数を前記回転数指示部により指示された回転数よりも低下させるための指令を出力し、
前記規定流量は、前記回転数指示部により指示された回転数で前記エンジンが駆動した状態で前記油圧ポンプの傾転が最小とされた場合の流量に相当する、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記回生弁を通じて前記ブームシリンダから前記アームシリンダへ供給される作動油の回生流量に基づいて、前記エンジンの回転数の低下量を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回生流量が増加するに従い大きな前記エンジンの回転数の低下量を決定する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ブームシリンダに対する作動油の給排を制御するための給排制御弁と、
前記ブームに下げ動作を行わせるための前記給排制御弁の操作量を検出可能な操作量検出部とを備え、
前記制御部は、前記操作量検出部により検出される前記給排制御弁の操作量に基づいて、エンジンの回転数の低下量を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作量検出部により検出される前記給排制御弁の操作量が増加するに従い大きな前記エンジンの回転数の低下量を決定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記回転数指示部の指令に基づく回転数が規定回転数以下であるか否かを判定し、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下であっても前記回転数指示部の指令に基づく回転数が規定回転数以下である場合には、前記回転数指示部により指示された回転数で駆動するための指令を出力する、請求項1〜5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記エンジンが暖機運転中であるか否かを判断するための値を検出する暖機運転検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記暖機運転検出部による検出値に基づいてエンジンが暖機運転中であるか否かを判定し、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下であっても前記エンジンが暖機運転中である場合には、前記回転数指示部により指示された回転数で駆動するための指令を出力する、請求項1〜6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
機体と、
前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、
前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたアームと、
請求項1〜7の何れか1項に記載の制御装置とを備えている、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、上記油圧ポンプを駆動するエンジンとを有する建設機械の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載の作業機械が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の作業機械は、ブームシリンダと、アームシリンダと、アームシリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動するエンジンと、ブームシリンダのヘッド側室から導出された作動油をアームシリンダのロッド側室に導く開放状態と閉鎖状態との間で切換動作可能な回生弁と、ブーム下げ操作とアーム押し操作との複合操作時に回生弁を開放状態に切り換える制御部とを備えている。この作業機械によれば、ブーム下げ動作時におけるブームの位置エネルギーをアーム押し動作のためのエネルギーとして利用することができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の制御部は、複合操作時において、ブームシリンダから回生弁を介してアームシリンダへ作動油が供給されることに応じて油圧ポンプの吐出流量を減少させる。これにより、複合操作時における油圧ポンプの仕事量を削減することができる。したがって、エンジンの燃費を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−190261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の作業機械では、複合操作時において、油圧ポンプ(エンジン)の駆動のロスを十分に抑えることができない。
【0007】
具体的に、特許文献1に記載の作業機械では、複合操作時に油圧ポンプの吐出流量を減少させるものの、油圧ポンプの吐出流量を最小流量まで減少させても、当該油圧ポンプの吐出流量の一部が余剰となる場合がある。例えば、油圧ポンプの最小流量とブームシリンダから回生可能な流量とを加えた流量がアームシリンダに必要な流量を超える場合、油圧ポンプは余剰流量を吐出していることになる。この場合、油圧ポンプから吐出されている余剰流量は、リリーフ弁を開放するための熱エネルギーとして廃棄される。
【0008】
本発明の目的は、油圧ポンプの駆動のロスを十分に抑えることができる制御装置及びこれを備えた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、機体と、前記機体に対して起伏可能なブームと、前記ブームに対して揺動可能なアームとを有する建設機械の制御装置であって、前記ブームを起伏させるブームシリンダと、前記アームを揺動させるアームシリンダと、前記アームシリンダに作動油を供給する可変容量式の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンの回転数を指示するための指令を出力する回転数指示部と、前記ブームの下げ動作時における前記ブームシリンダからの戻り油を前記アームの押し動作時における前記アームシリンダの供給側のポートに導入する回生状態と、前記戻り油の前記アームシリンダへの導入を阻止する閉鎖状態との間で切換動作可能な回生弁と、前記油圧ポンプの吐出流量を特定するための値を検出可能な流量検出手段と、前記ブーム下げと前記アーム押しの複合動作時に、前記回生状態に切り換わるように前記回生弁の動作を制御するとともに、前記回生弁を通じた作動油の回生に応じて前記油圧ポンプの吐出流量が減少するように前記油圧ポンプの流量を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下である場合に前記エンジンの回転数を前記回転数指示部により指示された回転数よりも低下させるための指令を出力し、前記規定流量は、前記回転数指示部により指示された回転数で前記エンジンが駆動した状態で前記油圧ポンプの傾転が最小とされた場合の流量に相当する、制御装置を提供する。
【0010】
本発明では、複合動作時に油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下である場合にエンジンの回転数を回転数指示部により指示された回転数よりも低下させる。ここで、『規定流量』は、回転数指示部により指示された回転数でエンジンが駆動した状態で、油圧ポンプの傾転が最小とされた場合の流量に相当する。つまり、本発明では、油圧ポンプの傾転だけではこれ以上流量を低下させることができない状況(例えば、油圧ポンプからの吐出流量が期待されていない状況)において、エンジンの回転数を低下させることにより、油圧ポンプの流量を減少させることができる。これにより、油圧ポンプの駆動のロスを十分に抑えることができる。
【0011】
前記制御装置において、前記制御部は、前記回生弁を通じて前記ブームシリンダから前記アームシリンダへ供給される作動油の回生流量に基づいて、前記エンジンの回転数の低下量を決定することが好ましい。
【0012】
油圧ポンプの吐出量は、アームシリンダへ供給を要する必要流量に対する回生流量の大きさによって相対的に定まる。そのため、前記態様によれば、回生流量を用いて直接的に油圧ポンプの吐出量の低減量(エンジンの回転数の低下量)を決定することができる。したがって、前記態様によれば、エンジンの回転数を適切に低下させることができる。
【0013】
前記制御装置において、前記制御部は、前記回生流量が増加するに従い大きな前記エンジン回転数の低下量を決定することが好ましい。
【0014】
この態様では、回生流量が増えるとエンジンの回転数の低下量を増加させる一方、回生流量が減るとエンジンの回転数の低下量を減少させる。そのため、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作を行って掘削作業の準備姿勢を採る場合に、この複合動作中にエンジンの回転数を極力低下させるとともに、掘削作業時(複合動作の終了時)にエンジンの回転数を復帰させることができる。そのため、オペレータに違和感を与えることなく、複合動作終了後の作業を連続して行なうことができる。したがって、前記態様によれば、エンジンの回転数の低下による燃費の向上と、複合動作後の作業の効率化との両立を図ることができる。
【0015】
なお、前記態様において『回生流量が増加するに従い大きなエンジンの回転数の低下量』とは、特定の回生流量の範囲内でこの関係が成立すればよい。逆に、前記特定の回生流量の範囲の外側には、回生流量の増減にかかわらずエンジンの回転数の低下量が一定となる不感帯を含んでいてもよい。
【0016】
前記制御装置において、前記ブームシリンダに対する作動油の給排を制御するための給排制御弁と、前記ブームに下げ動作を行わせるための前記給排制御弁の操作量を検出可能な操作量検出部とを備え、前記制御部は、前記操作量検出部により検出される前記給排制御弁の操作量に基づいて、エンジンの回転数の低下量を決定することが好ましい。
【0017】
給排制御弁の操作量とブームシリンダからの戻り油の流量(アームシリンダへ回生可能な流量)との間には相関関係がある。そのため、前記態様によれば、回生流量を検出するための手段を別途設けることなく、エンジンの回転数の低下量を決定することができる。したがって、前記回転数制御を追加するためのコストの増加を抑制することもできる。
【0018】
前記制御装置において、前記制御部は、前記操作量検出部により検出される前記給排制御弁の操作量が増加するに従い大きな前記エンジンの回転数の低下量を決定することが好ましい。
【0019】
この態様では、給排制御弁の操作量が増えるとエンジンの回転数の低下量を増加させる一方、給排制御弁の操作量が減るとエンジンの回転数の低下量を減少させる。そのため、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作を行なって掘削作業の準備姿勢を採る場合に、この複合動作中にエンジンの回転数を極力低下させるとともに、掘削作業時(複合動作の終了時)にエンジンの回転数を復帰させることができる。そのため、オペレータに違和感を与えることなく、複合動作終了後の作業を連続して行なうことができる。したがって、前記態様によれば、エンジンの回転数の低下による燃費の向上と、複合動作後の作業の効率化との両立を図ることができる。
【0020】
なお、前記態様において『給排制御弁の操作量が増加するに従い大きなエンジンの回転数の低下量』とは、特定の操作量の範囲内でこの関係が成立すればよい。逆に、前記特定の操作量の範囲の外側には、操作量の増減にかかわらずエンジンの回転数の低下量が一定となる不感帯を含んでいてもよい。
【0021】
前記制御装置において、前記制御部は、前記回転数指示部の指令に基づく回転数が規定回転数以下であるか否かを判定し、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下であっても前記回転数指示部の指令に基づく回転数が規定回転数以下である場合には、前記回転数指示部により指示された回転数で駆動するための指令を出力することが好ましい。
【0022】
前記態様では、回転数指示部の指令に基づく回転数が規定回転数以下の場合に、エンジンの回転数の低下を禁止する。ここで、『規定回転数』とは、エンジンストップが生じる下限を規定する回転数である。したがって、前記態様によれば、エンジンストップが生じない回転数の範囲内で、上述したエンジンの回転数の低下を実行することができる。
【0023】
前記制御装置において、前記エンジンが暖機運転中であるか否かを判断するための値を検出する暖機運転検出部をさらに備え、前記制御部は、前記暖機運転検出部による検出値に基づいてエンジンが暖機運転中であるか否かを判定し、前記複合動作時に前記流量検出手段により検出された前記油圧ポンプの吐出流量が規定流量以下であっても前記エンジンが暖機運転中である場合には、前記回転数指示部により指示された回転数で駆動するための指令を出力することが好ましい。
【0024】
前記態様では、エンジンが暖機運転中である場合に、エンジンの回転数の低下を禁止する。ここで、エンジンの暖機運転中においては、エンジンオイル及び作動油の粘度が高く、エンジンの回転数を上げる際の応答性が悪いという問題がある。そのため、前記態様によれば、エンジンの回転数の復帰(上昇)が必要な場面で、回転数の復帰が間に合わなくなるといった事態を回避することができる。
【0025】
また、本発明は、機体と、前記機体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたアームと、前記制御装置とを備えている、建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、油圧ポンプの駆動のロスを十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を示す左側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルの駆動系を示す回路図である。
図3図2に示す駆動形を制御する制御部の概略構成を示すブロック図である。
図4図3に示す記憶部に記憶された、回生流量を特定するためのマップである。
図5図3に示す記憶部に記憶された、回転数低下量を特定するためのマップである。
図6図3に示す制御部により実行される処理を示すフローチャートである。
図7図6に示す回転数設定処理を示すフローチャートである。
図8】回転数設定処理の別の実施形態を示すフローチャートである。
図9図3に示す記憶部に記憶された、回転数低下量を特定するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0029】
図1を参照して、本実施形態に係る建設機械の一例としての油圧ショベル1は、クローラ2aを有する下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられたアッパーフレーム3aを有する上部旋回体3と、アッパーフレーム3aに対して変位可能に設けられた作業アタッチメント4と、図2に示す駆動系12と、図3に示す制御部14とを備えている。本実施形態に係る油圧ショベル1では、下部走行体2及び上部旋回体3が機体を構成する。
【0030】
作業アタッチメント4は、アッパーフレーム3aに対して起伏可能に取り付けられた基端部を有するブーム6と、ブーム6の先端部に対して揺動可能に取り付けられた基端部を有するアーム7と、アーム7の先端部に対して揺動可能に取り付けられたバケット8とを備えている。また、作業アタッチメント4は、アッパーフレーム3aに対してブーム6を起伏させるブームシリンダ9と、ブーム6に対してアーム7を揺動させるアームシリンダ10と、アーム7に対してバケット8を揺動させるバケットシリンダ11とを備えている。
【0031】
図2を参照して、駆動系12は、ブームシリンダ9に作動油を供給するための第1油圧ポンプ15と、アームシリンダ10に作動油を供給するための第2油圧ポンプ16と、各油圧ポンプ15、16を駆動するエンジン5と、ブームシリンダ9に対する作動油の給排を制御する第1制御弁(給排制御弁)17と、第1制御弁17を操作するためのリモコン弁19と、アームシリンダ10に対する作動油の給排を制御する第2制御弁18と、第2制御弁18を操作するためのリモコン弁20と、メータアウト弁21と、回生弁22と、メータイン弁23と、合流弁24と、ブーム再生弁25と、アーム再生弁26と、リリーフ弁27と、リリーフ弁28と、圧力センサP1〜P6と、回転数指示部29(図3参照)と、ECU30(図3参照)とを備えている。
【0032】
第1油圧ポンプ15は、可変容量式のポンプである。具体的に、第1油圧ポンプ15は、その吐出流量がレギュレータR1から出力される指令に応じて調整可能である。第1油圧ポンプ15の吐出圧は、第1油圧ポンプ15と第1制御弁17との間の油路y1に設けられた圧力センサP1によって検出される。
【0033】
第2油圧ポンプ16は、可変容量式のポンプである。具体的に、第2油圧ポンプ16は、その吐出流量がレギュレータR2から出力される指令に応じて調整可能である。第2油圧ポンプ16の吐出圧は、第2油圧ポンプ16と第2制御弁18との間の油路y2に設けられた圧力センサP2によって検出される。
【0034】
第1制御弁17は、図示された中立位置と、ブームシリンダ9を縮小させる(ブーム6を下ろす)ブーム下げ位置(図の右側位置)と、ブームシリンダ9を伸長させる(ブーム6を上げる)ブーム上げ位置(図の左側位置)との間で切換操作可能である。具体的に、第1制御弁17は、通常中立位置に付勢され、リモコン弁19の操作レバー19aの操作に応じてブーム下げ位置又はブーム上げ位置に切り換えられる。第1制御弁17とブームシリンダ9のロッド側室とを接続する油路y3内の作動油の圧力は、圧力センサP3によって検出される。第1制御弁17とブームシリンダ9のヘッド側室とを接続する油路y4内の作動油の圧力は、圧力センサP4によって検出される。また、第1制御弁17に対するパイロット圧は、リモコン弁19と第1制御弁17のスプールとを接続するパイロット回路に設けられた圧力センサP6、P7により検出される。圧力センサP6は、ブーム下げ動作を行なわせるための第1制御弁17の操作量を検出可能な操作量検出部を構成する。
【0035】
第2制御弁18は、図示された中立位置と、アームシリンダ10を縮小させる(アーム7を押す)アーム押し位置(図の右側位置)と、アームシリンダ10を伸張させる(アーム7を引く)アーム引き位置(図の左側位置)との間で切換操作可能である。具体的に、第2制御弁18は、通常中立位置に付勢され、リモコン弁20の操作レバー20aの操作に応じてアーム押し位置又はアーム引き位置に切り換えられる。第2制御弁18とアームシリンダ10のロッド側とを接続する油路y5内の作動油の圧力は、圧力センサP5によって検出される。また、第2制御弁18に対するパイロット圧は、リモコン弁20と第2制御弁18のスプールとを接続するパイロット回路に設けられた圧力センサP8、P9により検出される。
【0036】
メータアウト弁21は、油路y4に設けられ、ブームシリンダ9のヘッド側室からタンクTへ排出される作動油の流量を調整可能である。具体的に、メータアウト弁21は、通常閉じており、電磁比例弁b1からのパイロット圧により作動して開放する。電磁比例弁b1は、アンプa1からの電気信号に応じて作動する。
【0037】
回生弁22は、ブームシリンダ9のヘッド側室からの戻り油をアームシリンダ10のロッド側室に導入する回生状態と、前記戻り油のアームシリンダ10への導入を阻止する閉鎖状態との間で切換可能である。また、回生弁22は、回生状態と閉鎖状態との間の切換位置を調整することにより、当該回生弁22を通過する流量を調整可能である。具体的に、回生弁22は、通常開放されており、電磁比例弁b2からのパイロット圧に応じて作動する。電磁比例弁b2は、アンプa2からの電気信号に応じて作動する。また、回生弁22は、油路y4におけるブームシリンダ9とメータアウト弁21との間の位置と、油路y5におけるアームシリンダ10とメータイン弁23との間の位置とを接続する油路y7に設けられている。
【0038】
メータイン弁23は、油路y5に設けられ、第2制御弁18からアームシリンダ10に供給される作動油の流量を調整可能である。具体的に、メータイン弁23は、通常開放されており、電磁比例弁b3からのパイロット圧により作動して閉じる。電磁比例弁b3は、アンプa3からの電気信号に応じて作動する。
【0039】
合流弁24は、アーム押し操作時に第2油圧ポンプ16からの作動油に加えて第1油圧ポンプ15からの作動油を合流させるためのものである。具体的に、合流弁24は、油路y1と油路y5における第2制御弁18とメータイン弁23との間の位置とを接続する油路y8に設けられている。また、合流弁24は、第1油圧ポンプ15からの作動油をアームシリンダ10のロッド側室に供給可能な供給状態と、第1ポンプ15からの作動油がアームシリンダ10に供給されるのを阻止する停止状態との間で切換可能である。
【0040】
ブーム再生弁25は、ブーム下げ操作時にブームシリンダ9のヘッド側室から導出された作動油をブームシリンダ9のロッド側室に戻すためのものである。具体的に、ブーム再生弁25は、通常閉じられており、操作レバー19aの操作に応じて開放する。
【0041】
アーム再生弁26は、アーム引き操作時にアームシリンダ10のロッド側室から導出された作動油をアームシリンダ10のヘッド側室に戻すためのものである。アーム再生弁26は、通常閉じられており、操作レバー20aの操作に応じて開放する。
【0042】
リリーフ弁27、28は、それぞれ油路y3〜y6内の作動油の圧力が所定圧以上とならないように当該所定圧以上で開放する弁である。なお、油路y6は、第2制御弁18とアームシリンダ10のヘッド側室とを接続する油路である。
【0043】
図3を参照して、回転数指示部29は、エンジン5の回転数を指示する。具体的に、回転数指示部29は、アクセル等により構成され、後述する制御部14に回転数に関する指令を出力する。
【0044】
ECU(Engine Control Unit)30は、回転数を含むエンジン5の駆動を電子制御する。具体的に、ECUは、後述する制御部14からの指令に応じて回転数に関する指令をエンジン5に出力する。
【0045】
次に、制御部14について説明する。
【0046】
制御部14は、各種の情報を記憶する記憶部31と、作動油の回生を行なうか否かを判定する回生判定部32と、回生流量を算出する回生演算部33と、回生弁22及び各油圧ポンプ15、16に対して指令を出力する回生出力部34と、エンジン5の回転数を設定する回転数設定部35と、エンジン5の回転数を変更するか否かを判定する変更判定部36とを備えている。
【0047】
回生判定部32は、ブーム下げとアーム押しの複合動作が行なわれたか否かを判定する。具体的に、回生判定部32は、圧力センサP6〜P9による検出信号に基づいて、ブーム下げ操作が行なわれているとともに、アーム押し操作が行なわれているか否かを判定する。なお、回生判定部32は、操作レバー19a、20a(図2参照)の不感帯を考慮して、操作レバー19a及び操作レバー20aの操作量が規定操作量以上である場合に、ブーム下げ及びアーム押しの操作が行なわれたと判定することが好ましい。
【0048】
また、回生判定部32は、圧力センサP4、P5による検出信号に基づいて、ブームシリンダ9のヘッド側室内の圧力がアームシリンダ10のロッド側室内の圧力を超えているか否かを判定する。ブームシリンダ9から導出される作動油圧がアームシリンダ10に供給される圧力を超えていることが回生を行うための前提となるためである。
【0049】
回生演算部33は、回生を行う場合に、回生弁22の開口面積Ar及び開口面積Arに対応した第2油圧ポンプ16の吐出流量Qp2を算出する。以下、開口面積Ar及び吐出流量Qp2の算出方法を説明する。
【0050】
まず、回生演算部33は、ブーム下げの目標速度V1を特定する。具体的に、目標速度V1は、記憶部31に予め記憶された操作レバー19aの操作量と目標速度V1との関係を示すマップと、圧力センサP6により検出された操作レバー19aの操作量とに基づいて特定される。
【0051】
次に、回生演算部33は、算出された目標速度V1と、下記式(1)とを用いて最大回生流量Qrmaxを算出する。
【0052】
Qrmax=Abh×V1−Qrc・・・(1)
ここで、Abhは、ブームシリンダ9のヘッド側室の断面積である。Qrcは、ブーム再生弁25を通過する作動油の流量である。このQrcは、次の式(2)により定義される。
【0053】
Qrc=Cv×Arc×√(Pbh−Pbr)・・・(2)
ここで、Arcは、ブーム再生弁25の開度であり、圧力センサP6の検出値に基づいて特定される。Pbhは、ブームシリンダ9のヘッド側室の圧力であり、圧力センサP4により検出される。Pbrは、ブームシリンダ9のロッド側室の圧力であり、圧力センサP3により検出される。なお、Cvは、ブーム再生弁25の容量係数である。
【0054】
次に、回生演算部33は、アームシリンダ10のロッド側室に供給すべき作動油の目標流量Qarを算出する。
【0055】
まず、回生演算部33は、アーム押しの目標速度V2を特定する。具体的に、目標速度V2は、記憶部31に予め記憶された操作レバー20aの操作量と目標速度V2との関係を示すマップと、圧力センサP8により検出された操作レバー20aの操作量とに基づいて特定される。
【0056】
次に、回生演算部33は、算出された目標速度V2と、下記式(3)とを用いてアームシリンダ10に対する目標流量Qarを算出する。
【0057】
Qar=Aar×V2・・・(3)
ここで、Aarは、アームシリンダ10のロッド側室の断面積である。
【0058】
そして、回生演算部33は、最大回生流量Qrmax>目標流量Qarのときに回生パターン1を選択する一方、最大回生流量Qrmax≦目標流量Qarのときに回生パターン2を選択する。
【0059】
[回生パターン1]
回生パターン1が選択される場合、アームシリンダ10に対する目標流量Qarの全てを最大回生流量Qrmaxで賄うことができる。したがって、第2油圧ポンプ16の流量(傾転)を最小に設定するとともに、メータイン弁23を全閉とする。
【0060】
また、回生パターン1では、回生弁22に流れる流量をアームシリンダ10に対する目標流量Qarに設定する必要がある。そのため、回生演算部33は、次の式(4)を用いて回生弁22の開口面積Arを算出する。
【0061】
Ar=Qar/{Cv×√(Pbh−Par)}・・・(4)
ここで、Parは、アームシリンダ10のロッド側室の圧力であり、圧力センサP5により検出された値である。また、Cvは、回生弁22の容量係数である。
【0062】
なお、回生パターン1において、メータアウト弁21は、ブームシリンダ9からの余剰の戻り油をタンクに戻すための開度に設定される。
【0063】
[回生パターン2]
回生パターン2が選択される場合、アームシリンダ10に対する目標流量Qarの一部を最大回生流量Qrmaxの全てを用いて賄うことになる。したがって、メータアウト弁21を全閉とするとともに、回生弁22を全開とする。
【0064】
さらに、回生パターン2では、最大回生流量Qrmaxに対応して第2油圧ポンプ16の吐出流量を減少させる。具体的に、第2油圧ポンプ16の吐出流量(傾転)は、回生を行わない場合の吐出流量(例えば、目標流量Qar)から最大回生流量Qrmaxを減じた流量となるように設定される。
【0065】
前記回生パターン1においては、第2油圧ポンプ16からの吐出流量が期待されていないにもかかわらず、第2油圧ポンプ16は、その最小流量(最小傾転に対応する流量)の余分な作動油を吐出している。また、回生パターン2においては、アームシリンダ10に対する目標流量Qarから最大回生流量Qrmaxを減じた流量が第2油圧ポンプ16の最小流量を下回る場合、第2油圧ポンプ16を最小傾転に設定しても、第2油圧ポンプ16は、余分な作動油を吐出することになる。このように、前記回生パターン1及び回生パターン2では、第2油圧ポンプ16の流量を減少させているものの、第2油圧ポンプ16の駆動のロスが発生するおそれがある。この駆動のロスを抑えるために、本実施形態では、エンジン5の回転数を変更する制御を行なう。以下その構成を説明する。
【0066】
回転数設定部35は、回転数指示部29から入力された指令値に基づいてエンジン5の回転数に関する指令をECU30に出力する。具体的に、回転数設定部35は、後述する変更判定部36からの変更指令が入力されていない場合には、回転数指示部29の指令に応じた回転数に関する指令を出力する。一方、回転数設定部35は、変更判定部36から変更指令が入力された場合、エンジン5の回転数の低下量を決定し、この低下量を回転数指示部29からの指令に基づく回転数から減じた回転数に関する指令をECU30に出力する。
【0067】
また、回転数設定部35は、前記回転数の低下量を次のように決定する。まず、回転数設定部35は、記憶部31に予め記憶された図4に示すマップと、圧力センサP2、P4により検出された圧力とに基づいて回生弁22を通過する回生流量を特定する。具体的に、図4に示すマップは、ブームヘッド圧とポンプ吐出圧との差に対する回生流量が設定されたものである。ブームヘッド圧とアームロッド圧との差に対する回生流量が設定されたマップを記憶部31に予め記憶させるとともに、このマップと圧力センサP、P5により検出された圧力とに基づいて回生流量を特定してもよい。
【0068】
次に、回転数設定部35は、前記のように特定された回生流量と、記憶部31に予め記憶された図5に示すマップとに基づいて回転数の低下量を特定する。具体的に、図5に示すマップは、回生流量に対する回転数の低下量が設定されたものである。また、このマップには、回生流量が大きくなるに従い回転数の低下量が大きくなる範囲と、この範囲の両側で回生流量の増減にかかわらず回転数の低下量が一定となる不感帯とが設定されている。
【0069】
変更判定部36は、前記回転数設定部35によるエンジン5の回転数の変更(低下)を行なうか否かを判定する。具体的に、変更判定部36は、次の3種類の判定を行う。
【0070】
第1に、変更判定部36は、第2油圧ポンプ16の吐出流量が規定値以下であるか否かを判定する。ここで、『規定値』は、回転数指示部29により指示された回転数でエンジン5が駆動した状態で、第2油圧ポンプ16の傾転が最小とされた場合の流量に相当する。本実施形態に係る変更判定部36は、前記回生演算部33により算出された第2油圧ポンプ16の流量(傾転)の指令値に基づいて、第2油圧ポンプ16の傾転が最小であるか否かを判定する。第2油圧ポンプ16の傾転が最小である場合には、第2油圧ポンプ16の駆動にロスが生じているものとして、エンジン5の回転数の低下を許容する。つまり、本実施形態に係る回生演算部33は、第2油圧ポンプ16の吐出流量を特定するための値を検出可能な流量検出手段を構成する。なお、流量検出手段として、第2油圧ポンプ16の吐出流量を検出可能な流量センサを用いてもよい。
【0071】
第2に、変更判定部36は、回転数指示部29の指令に基づく回転数が規定回転数以下であるか否かを判定する。ここで、『規定回転数』とは、エンジンストップが生じる下限を規定する回転数である。本実施形態に係る変更判定部36は、回転数指示部29による回転数の指令値が規定値よりも大きいか否かを判定する。回転数の指令値が規定値よりも大きい場合には、エンジンストップが生じる可能性が低いものとして、エンジン5の回転数の低下を許容する。
【0072】
第3に、変更判定部36は、エンジン5が暖機運転中であるか否かを判定する。具体的に、本実施形態に係る変更判定部36は、エンジン5に設けられた冷却水センサ5aにより検出された水温が規定温度よりも低い場合に、エンジン5が暖機運転中であると判定する。エンジン5が暖機運転中である場合、エンジン5の回転数を上げる際の応答性が悪いため、エンジン5の回転数の低下を禁止する。
【0073】
なお、本実施形態では、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時に、ブーム下げ時のブームシリンダ9の戻り流量がアーム押し動作中のアームシリンダ10に利用されることで、第1ポンプ15の吐出流量が抑えられるため、第1ポンプ15の傾転は、制御部14により最小に設定される。この複合動作時にエンジン5の回転数を低下させても、第1ポンプ15に要求される流量が満たされると制御部14により判断された場合、エンジン5の回転数を低下させる。言い換えれば、第1ポンプ15の傾転が最小になっていない場合であっても、第1ポンプ15に要求される流量を得ることができる範囲内で、前記エンジン5の回転数の低下制御を実施することができる。
【0074】
以下、図6を参照して、制御部14により実行される処理を説明する。
【0075】
制御部14による処理が開始されると、ブーム下げ操作及びアーム押し操作の複合操作が行なわれたか否かが判定される(ステップS1)。複合操作が行なわれたと判定されると(ステップS1でYES)、ブームヘッド圧がアームロッド圧よりも大きいか否かが判定される(ステップS2)。前記ステップS1及びステップS2でNOと判定されると、回生を行うことなく(ステップS3)、ステップS1にリターンする。
【0076】
一方、前記ステップS2でYESと判定されると、最大回生流量Qrmaxがアームシリンダ10に対する目標流量Qarよりも大きいか否かが判定される(ステップS4)。
【0077】
ステップS4でYESの場合には、上述した回生パターン1に設定する(ステップS5)一方、ステップS4でNOの場合には、上述した回生パターン2に設定する(ステップS6)。つまり、ステップS5及びステップS6では、ブームシリンダ9のヘッド側からアームシリンダ10のロッド側への作動油の回生を行うとともに、この回生に応じて第2油圧ポンプ16の吐出流量(傾転)を低下させる。
【0078】
前記ステップS5及びステップS6が実行されると、エンジン5の回転数を設定する回転数設定処理Tが実行され、当該処理がリターンする。
【0079】
図7を参照して、回転数設定処理Tが開始されると、第2油圧ポンプ16の吐出流量が規定値以下であるか否かが判定される(ステップT1)。つまり、ステップT1では、第2油圧ポンプ16の吐出流量が、傾転の設定によってこれ以上低下させることができない最小の流量であるか否かが判定される。
【0080】
ステップT1において、第2油圧ポンプ16の吐出流量が規定値以下であると判定されると、図4に示すマップ及び圧力センサP2、P4により検出された圧力に基づいて、回生流量を特定する(ステップT2)。つまり、ブームシリンダ9のヘッド側室から回生弁22を通じてアームシリンダ10のロッド側室に導かれる作動油の流量を特定する。そして、ステップT2で特定された回生流量と、図5に示すマップとに基づいて、エンジン5の回転数の低下量を特定する(ステップT3)。
【0081】
次いで、回転数指示部29による回転数指令値が規定値より大きいか否かが判定される(ステップT4)。つまり、ステップT4では、エンジン5の回転数が、回転数を低下させてもエンジンストップを生じる可能性の低い回転数であるか否かが判定される。
【0082】
前記ステップT4でYESと判定されると、エンジン5が暖機運転中であるか否かが判定される(ステップT5)。つまり、ステップT5では、エンジン5の回転数を下げた場合に、回転数を復帰させるのに時間がかかる状態にあるか否かが判定される。
【0083】
前記ステップT5でYESと判定されると、ステップT3で特定された低下量でエンジン5の回転数を低下させた場合に、第1ポンプ15の必要流量が得られる否かが判定される(ステップT6)。つまり、エンジン5の回転数を低下させても、第1ポンプ15に要求される流量に不足が生じないか否かが判定される。
【0084】
そして、前記ステップT6でYESと判定されると、ステップT3で特定された回転数の低下量を回転数指示部29による指令に基づく回転数から減じた回転数に設定する(ステップT7)。これにより、傾転の調整ではこれ以上低下させることのできない第2油圧ポンプ16の流量を、エンジン5の回転数を低下させることによって、低下させることができる。したがって、第2油圧ポンプ16の駆動のロスを抑制することができる。
【0085】
一方、前記ステップT1、T4、T5及びT6においてNOと判定された場合、回転数指示部29による指令に基づく回転数に設定する(ステップT8)。これにより、第2油圧ポンプ16の駆動にロスが生じていない場合(ステップT1でNOと判定された場合)に、エンジン5の回転数の低下を禁止することができる。また、エンジンストップの生じるおそれのある回転数でエンジン5が駆動している場合(ステップT4でNOと判定された場合)に、エンジン5の回転数の低下を禁止することができる。さらに、エンジン5の回転数の復帰に時間がかかる暖機運転中である場合(ステップT5でNOと判定された場合)に、エンジン5の回転数の低下を禁止することができる。また、エンジン5の回転数を低下させると第1ポンプ15の流量に不足が生じる場合(ステップT6でNOと判定された場合)に、エンジン5の回転数の低下を禁止することができる。
【0086】
なお、前記実施形態では、エンジン5の回転数の低下を行うか否かを判断するためのステップT4、T5を回転数の低下量を算出するステップT3よりも後に実行しているが、これらの順序を逆にしてもよい。具体的に、エンジン5の回転数の低下を禁止するためのステップを実行した後に、エンジン5の回転数の低下量を算出するステップを実行することができる。このようにすれば、エンジン5の回転数の低下を禁止する場合に、回転数の低下量を特定するためのステップを省略することができる。
【0087】
以上説明したように、前記実施形態では、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作時に第2油圧ポンプ16の吐出流量が規定流量以下である場合にエンジン5の回転数を回転数指示部29により指示された回転数よりも低下させる。つまり、前記実施形態では、第2油圧ポンプ16の傾転だけではこれ以上流量を低下させることができない状況(例えば、第2油圧ポンプ16からの吐出流量が期待されていない状況)において、エンジン5の回転数を低下させることにより、第2油圧ポンプ16の流量を減少させることができる。これにより、第2油圧ポンプ16の駆動のロスを十分に抑えることができる。
【0088】
第2油圧ポンプ16の吐出量は、アームシリンダ10へ供給を要する必要流量(目標流量Qar)に対する回生流量の大きさによって相対的に定まる。そのため、前記実施形態によれば、図7のステップT3に示すように、回生流量に基づいてエンジン5の回転数の低下量を直接決定することにより、エンジン5の回転数を適切に低下させることができる。
【0089】
前記実施形態では、図5に示すマップに基づいて、回生流量が増えるとエンジン5の回転数の低下量を増加させる一方、回生流量が減るとエンジン5の回転数の低下量を減少させる。そのため、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作を行って掘削作業の準備姿勢を採る場合に、この複合動作中にエンジン5の回転数を極力低下させるとともに、掘削作業時(複合動作の終了時)にエンジン5の回転数を復帰させることができる。そのため、オペレータに違和感を与えることなく、複合動作終了後の作業を連続して行なうことができる。したがって、前記実施形態によれば、エンジン5の回転数の低下による燃費の向上と、複合動作後の作業の効率化との両立を図ることができる。
【0090】
前記実施形態では、ステップT4及びステップT8に示すように、回転数指示部29の指令に基づく回転数が規定回転数以下の場合に、エンジン5の回転数の低下を禁止する。したがって、前記実施形態によれば、エンジンストップが生じない回転数の範囲内で、上述したエンジン5の回転数の低下を実行することができる。
【0091】
前記実施形態では、ステップT5及びステップT8に示すように、エンジン5が暖機運転中である場合に、エンジン5の回転数の低下を禁止する。ここで、エンジン5の暖機運転中においては、エンジンオイル及び作動油の粘度が高く、エンジン5の回転数を上げる際の応答性が悪いという問題がある。そのため、前記実施形態によれば、エンジン5の回転数の復帰(上昇)が必要な場面で、回転数の復帰が間に合わなくなるといった事態を回避することができる。
【0092】
以下、図8及び図9を参照して、回転数設定処理Tの別の実施形態について説明する。なお、前記実施形態と同様の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、前記実施形態と比較して回転数設定処理TのステップT2及びステップT3の内容が相違する。
【0093】
具体的に、ステップT1において第2油圧ポンプ16の流量が規定値以下であると判定されると(ステップT1でYES)、圧力センサP6(図2参照)によりブーム下げ動作のためのパイロット圧を検出する(ステップT21)。
【0094】
次いで、ステップT21で検出されたパイロット圧に基づいて、エンジン5の回転数の低下量を特定する(ステップT3)。具体的に、本実施形態に係る記憶部31(図3参照)には、図9に示すマップが予め記憶されている。このマップには、ブーム下げ動作のためのパイロット圧に対する回転数低下量が設定されている。そのため、前記ステップT21で検出されたパイロット圧と図9に示すマップとに基づいてエンジン5の回転数の低下量を特定することができる。
【0095】
なお、図9に示すマップには、パイロット圧が大きくなるに従い回転数の低下量が大きくなる範囲と、この範囲の両側でパイロット圧の増減にかかわらず回転数の低下量が一定となる不感帯とが設定されている。
【0096】
パイロット圧(第1制御弁17の操作量)とブームシリンダ9からの戻り油の流量(アームシリンダ10へ回生可能な流量)との間には相関関係がある。そのため、前記実施形態によれば、前記相関関係を利用して、エンジン5の回転数の低下量を決定することができる。さらに、前記実施形態によれば、回生流量を検出するための手段を別途設けることなく、エンジン5の回転数の低下量を決定することができる。したがって、前記回転数制御を追加するためのコストの増加を抑制することもできる。
【0097】
前記実施形態では、図9に示すマップに基づいて、第1制御弁17の操作量が増えるとエンジン5の回転数の低下量を増加させる一方、第1制御弁17の操作量が減るとエンジン5の回転数の低下量を減少させる。そのため、ブーム下げ及びアーム押しの複合動作を行なって掘削作業の準備姿勢を採る場合に、この複合動作中にエンジン5の回転数を極力低下させるとともに、掘削作業時(複合動作の終了時)にエンジン5の回転数を復帰させることができる。そのため、オペレータに違和感を与えることなく、複合動作終了後の作業を連続して行なうことができる。
【符号の説明】
【0098】
P6 圧力センサ(操作量検出部)
2 下部走行体(機体)
3 上部旋回体(機体)
5 エンジン
5a 冷却水センサ(暖機運転検出部)
6 ブーム
7 アーム
9 ブームシリンダ
10 アームシリンダ
14 制御部
16 第2油圧ポンプ
17 第1制御弁(給排制御弁)
22 回生弁
29 回転数指示部
33 回生演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9