特許第5928097号(P5928097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928097
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】非水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20160519BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20160519BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160519BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   C09D11/38
   C09D11/36
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-80882(P2012-80882)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209521(P2013-209521A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 康平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大輔
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−104011(JP,A)
【文献】 特開2013−104010(JP,A)
【文献】 特開2013−104005(JP,A)
【文献】 特開2010−180332(JP,A)
【文献】 特開2012−052041(JP,A)
【文献】 特開2012−057043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、定着樹脂と塩基性分散樹脂とを含有し、さらに有機溶剤として、ジアルキレングリコール誘導体と下記一般式(1)で示される溶剤とを含有し、該一般式(1)で示される溶剤の配合量が非水系インク組成物中10重量%未満であることを特徴とする非水系インク組成物。
一般式(1)
【化1】
(式中R1は炭素数1または2のアルキル基、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一でも異なっていても良く、更に互いに結合して環構造を形成しても良い。)
(ただし、一般式(1)中のR2およびR3がそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、
かつ、
非水系インク組成物が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、乳酸エステル類、または、ラクタム類を含有する場合、
を除く。)
【請求項2】
塩基性分散樹脂として、主鎖にウレタン結合とウレア結合を有し、アルキル(メタ)アクリレート重合体由来の側鎖を有する塩基性分散樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の非水系インク組成物。
【請求項3】
定着樹脂として、ガラス転移温度が80℃以上かつ重量平均分子量Mwが50,000以下のアクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載の非水系インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非吸収性基材を対象とした印刷方式として、軟包材用グラビア印刷、サニタリー用フレキソ印刷、金属版用シルクスクリーン印刷、屋内外広告用インクジェット印刷などが一般的に知られている。しかし、これらの印刷方式に用いられるインク組成物は第二種有機溶剤に該当するトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤を用いることが一般的であり、環境濃度設定、臭気等から局所排気装置の設置、又は定期健康診断等の義務が発生するなど取り扱いが難しく、より安全衛生性の高いインクが求められてきた。特にインクジェットは専用工場で印刷されるグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷と異なり、一般オフィスなどの事務所で使用されるため、より安全性、有害性、臭気を配慮しなければならない。
【0003】
安全性向上のため、軟包材グラビア印刷、サニタリー用フレキソ印刷では、環境濃度設定値が低いトルエンを使用しないノントルエンインクやアルコールを主成分とする水性インクが開発された。
【0004】
一方、インクジェット印刷でも、第二種有機溶剤に非該当であるポリアルキレングリコール系溶剤、又は炭化水素系溶剤を用いたインクが開発された。(特許文献1)しかし、ポリアルキレングリコール系溶剤、又は炭化水素系溶剤からなるインクでは印刷基材表面を溶解させることができないため定着性、耐候性等が劣るなどの問題があった。
【0005】
最近ではポリアルキレングリコール系溶剤と同じく第二種有機溶剤に非該当である2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンといった含窒素複素環化合物、又はラクトン系化合物を副溶剤として併用することで、定着性、耐候性等を改善した溶剤系インクが開発されてきた。(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。しかし、これらのインクは溶解性の強さから顔料等の溶解による保存安定性の欠如やプリンターヘッド材料の腐食がみられたり、臭気が強いなどの問題点があった。
【0006】
また近年、上記課題を解決する為の代替溶剤として、β‐アルコシキプロピオンアミド類化合物を使用したインクが開発されている。(特許文献7)しかし、これらの溶剤の過剰添加は結果的に、前記溶剤と同様、保存安定性の欠如やプリンターヘッド材料の腐食を引き起こす問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3590486号公報
【特許文献2】特開2005−60716号公報
【特許文献3】特開2005−15672号公報
【特許文献4】特開2005−200469号公報
【特許文献5】特許第3692365号公報
【特許文献6】特開2005−248006号公報
【特許文献7】特開2011−246571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、非吸収性基材等への密着性・耐性に優れ、さらに、連続使用した際の印字安定性に優れた非水系インク、特にインクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
本発明は、少なくとも、定着樹脂と、塩基性分散樹脂を含有し、さらに有機溶剤として、ジアルキレングリコール誘導体と下記一般式(1)で示される溶剤を含有し、その配合量が10質量%未満である事を特徴とする非水系インク組成物に関する。
一般式(1)
【化1】

(式中R1は炭素数1〜2のアルキル基、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一でも異なっていても良く、更に互いに結合して環構造を形成しても良い。)
(ただし、一般式(1)中のR2およびR3がそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、
かつ、
非水系インク組成物が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、乳酸エステル類、または、ラクタム類を含有する場合、
を除く。)

【0011】
更に本発明は、該分散樹脂として、主鎖にウレタン結合とウレア結合を有し、アルキル(メタ)アクリレート重合体由来の側鎖を有する分散樹脂を含有する事を特徴とする非水系インク組成物に関する。
【0012】
更に本発明は、定着樹脂として、ガラス転移温度が80℃以上かつ重量平均分子量
Mwが50,000以下のアクリル樹脂を含有する事を特徴とする非水系インク組成物に関する。
更に本発明は、上記いずれか記載の非水性インクジェットインクに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、定着樹脂と、塩基性分散樹脂を含有し、さらに有機溶剤として、ジアルキレングリコール誘導体と一般式(1)で示される溶剤を含有し、その配合量が10質量%未満である事により、非吸収性基材等への密着性・耐性に優れ、さらに、連続使用した際の印字安定性に優れた非水系インクが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
検討の結果、本発明の有機溶剤には一般式(1)中、Rは、炭素数1、2のアルキル基である事が好適である。Rが炭素数1、2のアルキル基である一般式(1)で示される溶剤は、印刷インキ等に使用した場合、PVC等の非吸収性基材の表面を僅かに溶解し、非常に優れた密着性を発現させることができる。この一般式(1)で示される溶剤のインク組成物中への添加量は10重量%未満が良いが、好ましくは2重量%以上10重量%未満が良く、更に好ましくは5重量%以上8重量%未満とするのが良い。添加量が2重量%未満では、その溶解性による基材密着の効果が十分に得られない可能性があり、逆に10重量%以上では印刷機やプリンタ部材の一部を腐食し、かつ乾燥性および保存安定性を悪化させる為、好ましくない。
【0016】
更に本発明に使用するジアルキレングリコール誘導体は、下記一般式(2)および(3)で示される化合物を用いる事ができる。
【0017】
一般式(2)
11−O−C−O−C−O−R12
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はR13CO基であり、R13は炭素数1〜4のアルキル基である)
【0018】
一般式(3)
21−O−C−O−C−O−R22
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はR23CO基であり、R23は炭素数1〜4のアルキル基である)
【0019】
上記一般式(2)および(3)の具体例としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類、ジエチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類等が挙げられる。これらの溶剤は、インク組成中に40重量%以上90重量%未満含まれることが好ましいが、50重量%以上80%未満含まれることが、より好ましい。40%未満では、定着樹脂の溶解性や、インク粘度の上昇などにより、吐出安定性が不安定になる可能性がある。90重量%以上では、印字後の塗膜乾燥性が悪化する可能性がある。
【0020】
更に本発明では、塩基性分散剤を使用する事で、顔料の分散性およびインキ組成物の保存安定性を向上させる事が可能となる。
【0021】
塩基性分散樹脂の具体例としては、ルーブリゾール社製のソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ13650、ソルスパーズ13940、ソルスパーズ16000、ソルスパーズ17000、ソルスパーズ18000、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ24000SG、ソルスパーズ24000GR,ソルスパーズ28000、ソルスパーズ31845、ソルスパーズ32000、ソルスパーズ32500、ソルスパーズ32550、ソルスパーズ32600、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ35200、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ38500、ソルスパーズ39000、ソルスパーズ56000、ソルスパーズ71000、ソルスパーズ76500、ソルスパーズX300、ソルスパーズ9000、ソルスパーズJ200、ビックケミー社製のDISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2022、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2150、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2163、DISPERBYK−2164、BYK−9077、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB823、PB824、PB827等が挙げられる。これらの分散剤を顔料、溶剤の種類にあわせて使用することができる。分散剤はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0022】
更に、塩基性分散樹脂として、高耐性・高分散性の機能を付与するため、主鎖にウレタン結合とウレア結合を有し、アルキル(メタ)アクリレート重合体由来の側鎖を有する分散樹脂が使用できる。使用可能な分散樹脂としては、側鎖のアルキル(メタ)クリレートの炭素数が1〜4である事が良く、好ましくは1〜2とするのが良い。炭素数が5以上の場合は、ガラス転移温度が著しく低下する為、塗膜の耐性が十分に得られない。
【0023】
本発明に使用される定着樹脂は、非吸収性基材への密着性をさらに向上させる効果がある。使用できる樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。樹脂の具体例としては、荒川化学社製のスーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド33、安原社製のYS ポリスター T80、三井化学社製のHirettsHRT200X、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル586、ダウケミカルズ社製のユーカーソリューションビニル樹脂VYHD、VYHH、VMCA、VROH、VYLF−X、日信科学工業製のソルバイン樹脂CL、CNL、C5R、TA5Rを例示することができる。樹脂はインキ組成物中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0024】
更に、印字物の密着性、耐アルコール性、耐候性、延伸性、基材汎用性などの機能を発揮するための定着樹脂として密着性、耐アルコール性、耐候性、基材汎用性に優れるものとしてアクリル系樹脂が良いが、好ましくはガラス転移温度が80℃以上、更に好ましくは、ガラス転移温度90℃以上である。また、インクジェットプリンターヘッドの微小な吐出口からインキを安定に吐出させるには、低粘度なインキが求められ、分子量Mwが50,000以下の定着樹脂が好ましく、更に分子量Mwが30,000以下の定着樹脂が好ましい。
【0025】
本発明に使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,149,168,177,178,179,206,207,209,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、213、ピグメントオレンジ36,43,51,55,59,61,71,74等があげられる。また、カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。顔料はインキ組成物中に0.1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0026】
本発明のインキ組成物は可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤等の種々の添加剤も使用することができる。
【0027】
本発明で効果が確認できる非吸収性基材としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)シート、ポリオレフィン系シート、ガラス、金属等が挙げられ、特に好ましくはPVCシートである。
【0028】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は「重量部」および「重量%」を表す。
【0029】
[分散剤αの合成]
(合成例1)<ビニル重合体(α-1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 11部、及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 511部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)] 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量9,500の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(α-1)の固形分50%溶液を得た。
【0030】
(製造例1)<分散剤(α)の製造>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(α-1)の固形分50%溶液 1022部と、イソホロンジイソシアネート 45.2部と、DEDG 45.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.11gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して無色透明溶液(α-2)を得た。ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、メチルイミノビスプロピルアミン 11.1部、ジブチルアミン 6.6部、DEDG 304.6部の混合液を仕込み、100℃まで加熱して無色透明溶液(α-2)1112.4部を30分かけて滴下し、更に1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、分散剤(α)の無色透明溶液を得た。
【0031】
[実施例1]
[顔料分散体aの製造]
下記の様な配合で顔料分散体aを作成した。この顔料分散体は有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散して作成した。
・LIONOL BLUE FG-7400G (トーヨーケム製 フタロシアニン顔料) 35.0部
・アジスパーPB821 (味の素ファインテクノ製 塩基性分散樹脂) 12.5部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 52.5部
【0032】
[インク組成物Aの製造]
上記顔料分散体aを用いて、下記配合処方にてインキ組成物Aを作成した。また、使用した溶剤β-1については、表1に記載した構造の化合物を使用した。
・顔料分散体a 11.5部
・ダイヤナールBR-87 4.0部
・溶剤β‐1 5.0部
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル 10.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 69.5部
【0033】
[実施例2〜8、比較例1〜6]
実施例1と同様の方法にて、表1、表2、表3に記載された原材料と配合比にてインク組成物B〜Oを作成した。
【0034】
得られたインキ組成物A〜Oを次のような方法で比較評価した。なお、評価結果については表4に示した。
【0035】
[粘度安定性]
実施例1〜15及び比較例1〜11で得られたインキ組成物の粘度について、E型粘度計(東機産業製)を用いて、70℃8週間の経時促進前後にて評価を実施し、粘度の変化率が2%未満であるものを○、変化率が2%以上5%未満であるものを△、変化率が5%以上 であるものを×と評価した。
[印刷安定性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンタ)にて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに連続印刷し、ドット抜け、飛行曲がり又はインキの飛び散りの発生頻度を評価し、50時間連続試験でドット抜け、飛行曲がり又はインキの飛び散りの発生が10回未満であったものを○、10回以上、20回未満であったものを△、20回以上のものを×と評価した。
【0036】
[乾燥性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンタ)にて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートにベタ印刷し、40℃で乾燥するまでの時間を計測。3分以内にて乾燥するものを○、3分以上6分未満のものを△、6分以上のものを×と評価した。
【0037】
[腐食性]
インキ組成物と接する印刷機の部品をそれぞれインキ組成物A〜Jに浸漬し、70℃3週間保存前後の材料の寸法と重量の変化率を評価。変化率が3%未満を○、3%以上9%未満を△、9%以上を×と評価した。
【0038】
[密着性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンタ)にて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて密着性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にて加重200g、50往復で実施し、塗布面が全く剥ぎ取られなかったものを◎、試験用布片に着色が見られたが、印刷面には目立った変化の見られないものを○、試験片が着色、印刷面にも若干の色落ちが見られるものを△、剥ぎ取られ、基材が見えたものを×と評価した。
【0039】
[耐アルコール性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンタ)にて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて耐アルコール性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にてエタノール/水=70/30で希釈した液を1滴たらし加重200g、50往復で実施し、塗布面が全く剥ぎ取られなかったものを◎、試験用布片に着色が見られたが、印刷面には目立った変化の見られないものを○、試験片が着色、印刷面にも若干の色落ちが見られるものを△、剥ぎ取られ、基材が見えたものを×と評価した。
【0040】
表4から明らかのように、定着樹脂と塩基性分散剤を含有し、上記一般式(1)の溶剤を10質量%未満含有する実施例1〜12のインク組成物は保存安定性や印字安定性、密着性、腐食性、耐アルコール性能において、全て優れている。これに対し、比較例1は溶剤β-1、β-2を含有していないため、密着性が劣り、印字安定性もやや劣る。比較例2は、溶剤β-1を過剰に添加した為、プリンタ部材の腐食およびインクの保存安定性が劣る。比較例3は、置換基の異なるβ-3を含有しているため、インクの保存安定性が劣り、プリンタ部材の腐食性がやや劣る。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】