特許第5928142号(P5928142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上村工業株式会社の特許一覧

特許5928142錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤、及び錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928142
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤、及び錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/48 20060101AFI20160519BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20160519BHJP
   C23C 22/07 20060101ALI20160519BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20160519BHJP
   B23K 101/36 20060101ALN20160519BHJP
   B23K 103/12 20060101ALN20160519BHJP
【FI】
   C25D5/48
   C23C18/16 Z
   C23C22/07
   B23K1/20 F
   B23K101:36
   B23K103:12
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-107552(P2012-107552)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2012-255205(P2012-255205A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-108141(P2011-108141)
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】加納 俊和
(72)【発明者】
【氏名】辻本 雅宣
(72)【発明者】
【氏名】生本 雷平
(72)【発明者】
【氏名】金森 元気
(72)【発明者】
【氏名】木曽 雅之
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−197791(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/029589(WO,A1)
【文献】 特開2005−097669(JP,A)
【文献】 特開2004−332022(JP,A)
【文献】 特開2007−169746(JP,A)
【文献】 特開2007−113113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00− 5/56
C23C 18/16−18/54,
22/00−22/86
B23K 101/36,
103/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の陰イオン界面活性剤と、リン酸、縮合リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上のリン酸化合物とを含有することを特徴とする錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
【請求項2】
更に、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
【請求項3】
更に、アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル又はそれらの塩を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
【請求項4】
pHが1〜4であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
【請求項5】
錫又は錫合金めっき皮膜に、請求項1乃至4のいずれか1項記載の後処理剤を接触させて処理することを特徴とする錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被はんだ接合部などに形成された錫又は錫合金めっき皮膜の変色や、経時によるはんだ濡れ性の劣化を防止する錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤、及びこれを用いた錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錫又は錫合金(錫−銅、錫−銀、錫−ビスマス等)のめっき皮膜は、はんだ濡れ性に優れていることから、電子部品等に広く利用されているが、錫又は錫合金めっき皮膜が長期間空気中、高温高湿度条件(以下、高湿度条件という)下、又は高温乾燥条件(以下、高温条件という)下に曝されたとき、表面が酸化され、めっき皮膜の変色、はんだ濡れ性の劣化が起こる。
【0003】
はんだ濡れ性が劣化した錫又は錫合金めっき皮膜は、実装時にソルダーペーストをはじくなどして製品の性能や信頼性を低下させる。また、めっき皮膜を実装する際にリフロー処理を行うと、錫又は錫合金めっき皮膜は、黄色から紫色に変色する。これは錫が溶融し、高温下で空気に曝されることで、酸化されて変色するためである。
【0004】
錫又は錫合金めっき皮膜の高湿度条件下及び高温条件下での変色防止及びはんだ濡れ性の劣化防止には、従来、以下のような対策が用いられているが、それぞれに問題がある。
【0005】
まず、錫又は錫合金めっき皮膜を、リン酸エステル又はホスホン酸エステルを含む処理剤に浸漬する方法があるが、この方法では、高湿度条件下での変色防止(耐湿性)と、はんだ濡れ性の劣化防止には効果があるが、高温条件下での変色防止には効果がなく、変色がより顕著になる傾向がある。
【0006】
また、錫又は錫合金めっき皮膜を、リン酸、ホスホン酸又は縮合リン酸を含む処理剤に浸漬する方法もあるが、この方法では、高温条件下での変色防止(耐熱性)には効果があるが、高湿度条件下での変色防止と、はんだ濡れ性の劣化防止には効果がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−41989号公報
【特許文献2】特開2005−240093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来は、高湿度条件又は高温条件のいずれかのみに対して、変色及びはんだ濡れ性の劣化防止に有効な処理剤しかなく、両方の条件に対して有効な処理剤がなかった。
【0009】
例えば、高湿度条件に対して有効なリン酸エステルと、高温条件に対して有効なリン酸又は縮合リン酸とを単純に混合した後処理剤では、錫又は錫合金めっき皮膜への吸着にムラがあり、耐湿性と耐熱性にばらつきが生じる。この場合、高温条件に対して有効な処理剤で処理した後に、高湿度条件に対して有効な処理剤で処理を行うこと、又は、高湿度条件に対して有効な処理剤で処理した後に、高温条件に対して有効な処理剤で処理を行うことは可能ではあるが、2つの槽が必要である上に、単独の処理に対して耐湿性か耐熱性のどちらかの性能が劣化する場合がある。そのため、高湿度条件及び高温条件の双方に対して有効な錫又は錫合金めっき皮膜の処理剤が開発されれば、錫又は錫合金めっき皮膜を効率よく処理して、錫又は錫合金めっき皮膜の信頼性を大きく向上させることが期待できる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、1種の処理剤で、高湿度条件及び高温条件のいずれの条件に対しても、変色及びはんだ濡れ性の劣化防止に優れた効果が得られ、錫又は錫合金めっき皮膜に対して、耐湿性及び耐熱性を同時に与えることができる錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤、及びこれを用いた錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の陰イオン界面活性剤と、リン酸、縮合リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上のリン酸化合物とを含有する後処理剤を用い、これを、錫又は錫合金めっき皮膜に接触させて処理すれば、1種の処理剤で、高湿度条件及び高温条件のいずれの条件に対しても、変色及びはんだ濡れ性の劣化防止に優れた効果が得られ、錫又は錫合金めっき皮膜に対して、耐湿性及び耐熱性を同時に与えることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤、及び錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法を提供する。
請求項1:
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の陰イオン界面活性剤と、リン酸、縮合リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上のリン酸化合物とを含有することを特徴とする錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
請求項2:
更に、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
請求項3:
更に、アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル又はそれらの塩を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
請求項4:
pHが1〜4であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の錫又は錫合金めっき皮膜用後処理剤。
請求項5:
錫又は錫合金めっき皮膜に、請求項1乃至4のいずれか1項記載の後処理剤を接触させて処理することを特徴とする錫又は錫合金めっき皮膜の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、錫又は錫合金めっき皮膜の高湿度条件下及び高温条件下における変色、はんだ濡れ性の劣化を抑制することができ、また、リフロー酸化による変色を抑制することができることから、電子部品のはんだ接合の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の後処理剤は、錫又は錫合金めっき皮膜の表面に接触させて処理するための処理剤であり、めっきにより形成された錫又は錫合金めっき皮膜用の後処理剤である。
【0015】
本発明の後処理剤は、
(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の陰イオン界面活性剤、及び
(B)リン酸、縮合リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上のリン酸化合物
を含有し、通常、水溶液として調製される。
【0016】
(A)成分の陰イオン界面活性剤のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステル、及びポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルとして、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0017】
(A−1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、アルキレン基がエチレン基、プロピレン基などのもの、アルキル基が炭素数2〜20のものが好適であり、例えば、ポリオキシエチレンエチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンプロピルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンブチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアミルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘプタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノナデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアラキルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンエチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンプロピルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンアミルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘプチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンノニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンウンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンドデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンテトラデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンペンタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンセチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘプタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクタデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンノナデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンアラキルエーテルリン酸エステル等のポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0018】
(A−2)ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルとしては、アルキレン基がエチレン基、プロピレン基などのもの、アルキル基が炭素数2〜20のものが好適であり、例えば、ポリオキシエチレンエチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンプロピルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンブチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアミルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンウンデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンペンタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘプタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノナデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアラキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンパラクミルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンエチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンプロピルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンブチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンアミルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘキシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘプチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンウンデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンドデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレントリデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンテトラデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンペンタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンセチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンヘプタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクタデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンノナデシルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンアラキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンパラクミルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンビスフェノールFエーテルリン酸エステル等のポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0019】
(A−3)ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
(A−4)ポリオキシアルキレンナフチルエーテルリン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンα−ナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンβ−ナフチルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンα−ナフチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンβ−ナフチルエーテルリン酸エステル等のポリオキシプロピレンナフチルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0021】
(A−5)ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
これらリン酸エステルのポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基など)は、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)が2〜19個付加したものが好ましい。また、これらリン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0023】
(A)成分の陰イオン界面活性剤の後処理剤中の濃度は0.1〜100g/L、特に0.5〜10g/Lであることが好ましい。0.1g/L未満では、処理した錫又は錫合金めっき皮膜に、十分な耐湿性が得られない場合がある。特に0.5g/L以上であると、高い耐湿性が得られるため好ましい。一方、100g/Lを超えると、耐湿性は得られるが、コストがかかりすぎ、不経済である上、高濃度のために、後処理剤の粘性が高くなり、後処理剤で処理した後の水洗で、余剰の成分を洗浄しきれないおそれがある。
【0024】
(B)成分のリン酸化合物のリン酸、縮合リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸としては、リン酸(オルトリン酸)、ピロリン酸、ポリリン酸(メタリン酸)、亜リン酸(ホスホン酸)、次亜リン酸(ホスフィン酸)が挙げられる。また、これらリン酸化合物の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
(B)成分のリン酸化合物の後処理剤中の濃度は0.1〜100g/L、特に0.5〜10g/Lであることが好ましい。0.1g/L未満では、処理した錫又は錫合金めっき皮膜に、十分な耐熱性が得られない場合がある。特に0.5g/L以上であると、高い耐熱性が得られるため好ましい。一方、100g/Lを超えると、耐熱性は得られるが、コストがかかりすぎ、不経済である上、めっき皮膜によっては、表面がエッチングされる(荒れる)おそれがある。
【0026】
本発明の後処理剤には、更に、(C)非イオン界面活性剤を含有させることが好ましい。これらの非イオン界面活性剤の添加は、(A)成分の陰イオン界面活性剤を溶解させる溶媒として、また、複雑な形状の被めっき物上の錫又は錫合金めっき皮膜を処理する場合に、後処理剤の浸透性を向上させるのに効果的である。(C)成分の非イオン界面活性剤としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0027】
(C−1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキレン基がエチレン基、プロピレン基などのもの、アルキル基が炭素数2〜20のものが好適であり、例えば、ポリオキシエチレンエチルエーテル、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンアミルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンノナデシルエーテル、ポリオキシエチレンアラキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルエーテル、ポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンアミルエーテル、ポリオキシプロピレンヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンヘプチルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンウンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンドデシルエーテル、ポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシプロピレンテトラデシルエーテル、ポリオキシプロピレンペンタデシルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンヘプタデシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクタデシルエーテル、ポリオキシプロピレンノナデシルエーテル、ポリオキシプロピレンアラキルエーテル等のポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
(C−2)ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルとしては、アルキレン基がエチレン基、プロピレン基などのもの、アルキル基が炭素数2〜20のものが好適であり、例えば、ポリオキシエチレンエチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンプロピルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンブチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノナデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアラキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンパラクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンプロピルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアミルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンヘプチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンウンデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレントリデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンテトラデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンペンタデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンヘプタデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンオクタデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンノナデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアラキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンパラクミルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールFエーテル等のポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
(C−3)ポリオキシアルキレンフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
(C−4)ポリオキシアルキレンナフチルエーテルとしては、ポリオキシエチレンα−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンβ−ナフチルエーテル等のポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシプロピレンα−ナフチルエーテル、ポリオキシプロピレンβ−ナフチルエーテル等のポリオキシプロピレンナフチルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
(C−5)ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシプロピレンスチレン化フェニルエーテル
などが挙げられる。
【0032】
また、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、エチレンジアミン型ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどを挙げることもできる。非イオン界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これら非イオン界面活性剤のポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基など)は、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)が2〜30個付加したものが好ましい。
【0033】
(C)成分の非イオン界面活性剤の後処理剤中の濃度は0.1〜200g/L、特に0.2〜20g/Lであることが好ましい。0.1g/L未満では、(A)成分の陰イオン界面活性剤の溶解を十分に促進できないおそれがある。一方、200g/Lを超えると、コストがかかりすぎ、不経済である上、高濃度のために、後処理剤の粘性が高くなり、後処理剤で処理した後の水洗で、余剰の成分を洗浄しきれないおそれがある。
【0034】
(C)成分の非イオン界面活性剤の量は、(A)成分の陰イオン界面活性剤の量に応じて調整され、(A)成分の陰イオン界面活性剤の1倍(質量比)以上、特に2倍(質量比)以上添加することが好適である。この比率の上限は、特に限定されるものではないが、通常10倍(質量比)以下である。
【0035】
本発明の後処理剤には、更に、(D)アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル又はそれらの塩を含有させることが好ましい。アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル又はそれらの塩の添加は、錫又は錫合金めっき皮膜に対する耐湿性を向上させるのに効果的である。(D)成分のアルキルホスホン酸エステルには、アルキルホスホン酸モノアルキルエステル、アルキルホスホン酸ジアルキルエステルが含まれ、アルキルホスホン酸及びアルキルホスホン酸エステルの各々のアルキル基の炭素数が1〜20、特に1〜18のものが好ましく、具体的には、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ウンデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、トリデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ジメチルオクタデシルホスホン酸エステル、ラウリルホスホン酸エステル又はそれらの塩などが挙げられる。この塩は、水溶性塩とし、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など等が挙げられる。
【0036】
(D)成分のアルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル又はそれらの塩の後処理剤中の濃度は0.01〜50g/L、特に0.1〜10g/Lであることが好ましい。0.01g/L未満では、添加による耐湿性向上効果が得られないおそれがある。一方、50g/Lを超えると、耐熱性が低下するおそれがある。また、後処理剤の粘性が高くなり水洗不良の原因となるおそれがある。
【0037】
本発明の後処理剤のpHは1〜4、特に1.5〜3であることが好ましい。特に、(A)成分の陰イオン界面活性剤、又は(B)成分のリン酸化合物に、塩を用いる場合などにおいて、pH調整が必要となる場合がある。pH調整剤としては、硫酸、炭素数1〜6のアルカンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0038】
本発明の後処理剤を用いて、電気めっき又は無電解めっきにより形成された錫又は錫合金めっき皮膜の表面を処理することにより、高湿度条件(典型的には、85℃−85%RH、105℃−100%RHなど)下、又は高温条件(典型的には、175℃、260℃など)下における変色、はんだ濡れ性の劣化、リフロー酸化による変色などを抑制することができる。
【0039】
本発明の後処理剤が対象とする錫又は錫合金めっき皮膜において、錫合金としては、錫−銅、錫−銀、錫−ビスマス、錫−鉛、錫−ニッケル、錫−銀−銅などが挙げられる。錫合金において、錫以外の金属の含有率は50質量%以下、特に0.1〜20質量%のものが好適である。
【0040】
本発明の後処理剤による錫又は錫合金めっき皮膜の処理においては、例えば、錫又は錫合金めっき皮膜を後処理剤に浸漬等の方法で接触させればよい。処理温度は10〜50℃、特に20〜40℃とすることが好適である。また、処理時間は、通常1〜120秒間であり、特に5〜30秒間が好適である。
【0041】
本発明の後処理剤を用いた錫又は錫合金めっき皮膜の処理には、以下の長所がある。
・従来の錫又は錫合金めっき皮膜の後処理である第三リン酸ソーダによる中和処理を、本発明の後処理剤による処理に変更するのみで、かならずしも処理工程数の増加や特別な設備の増設を行なう必要がない。
・後処理剤での処理における処理温度による耐湿性、耐熱性への影響が小さい。
・(A)成分の陰イオン界面活性剤、及び(B)成分のリン酸化合物がpH緩衝作用を有するので、pHの管理範囲が狭くても、管理が比較的容易である。
・本発明の後処理剤による処理により、錫又は錫合金めっき皮膜の表面酸化を防ぐことができ、より低温でのはんだ実装が可能となる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0043】
[実施例1〜23、比較例1〜13]
錫めっき皮膜を形成した下記の評価試料A及びBに対して、表3〜5に示される後処理剤を用い、表3〜5に示される処理条件で、各々錫めっき皮膜に対する処理を実施し、試験1〜4の条件で、処理後の錫めっき皮膜の耐熱性、耐湿性を評価した。
【0044】
銅合金材(C194)リードフレーム(表面積0.245dm2)に、下記の処理(1)を順に施して評価試料Aを、また、下記の処理(2)を順に施して評価試料Bを、各々準備した。
〔評価試料A〕
処理(1):電解脱脂→水洗→酸洗→水洗→エッチング(浸漬処理)→水洗→酸洗→錫めっき→水洗→表3〜5の後処理剤による処理(浸漬処理)→水洗→イオン交換水による水洗→乾燥
〔評価試料B〕
処理(2):電解脱脂→水洗→酸洗→水洗→エッチング(浸漬処理)→水洗→スルファミンニッケルめっき→酸洗→錫めっき→水洗→表3〜5の後処理剤による処理(浸漬処理)→水洗→イオン交換水による水洗→乾燥
【0045】
処理(1)及び処理(2)の錫めっきに用いた錫めっき浴、並びに処理(2)のスルファミンニッケルめっきに用いたスルファミンニッケルめっき浴を以下に示す。また、これらのめっき条件を表1に示す。
〔錫めっき浴〕
メタンスルホン酸錫(II) 90g/L(Snとして50g/L)
70%メタンスルホン酸 135g/L
非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール) 5g/L
〔スルファミンニッケルめっき浴〕
アミド硫酸ニッケル(II)4水和物 300g/L
塩化ニッケル(II)6水和物 15g/L
ホウ酸 30g/L
【0046】
【表1】
【0047】
試験1:評価試料Aを、実施例1〜21及び比較例1〜13はPCT8処理(105℃−100%RHに保持した恒温槽内に8時間保持)、実施例22及び23はPCT24処理(105℃−100%RHに保持した恒温槽内に24時間保持)し、変色の度合いを目視で確認した。
試験2:評価試料Aを、PCT8処理(105℃−100%RHに保持した恒温槽内に8時間保持)し、メニスコグラフ法で、はんだ濡れ性(ゼロクロスタイム)を測定した。はんだ濡れ性の評価には鉛フリーはんだ(錫:銀:銅=96.5:3.0:0.5(質量比))を用い、加熱温度を235℃とし、フラックスにはNA−200(タムラ化研製、不活性ロジンタイプ)を用いた。
試験3:評価試料Bを、260℃のホットプレートで2分間加熱する処理を2回行い、熱による変色の度合いを目視で確認した。
試験4:評価試料Aを、175℃に保持したオーブン内で48時間加熱し、熱による変色の度合いを目視で確認した。
評価結果を表2に示す基準により、表3〜5に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】