特許第5928147号(P5928147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5928147-押出プレス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928147
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】押出プレス
(51)【国際特許分類】
   B21C 35/04 20060101AFI20160519BHJP
【FI】
   B21C35/04
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-113111(P2012-113111)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-237092(P2013-237092A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(72)【発明者】
【氏名】益永 義和
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸次
(72)【発明者】
【氏名】山本 武治
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−367315(JP,A)
【文献】 特開平06−071331(JP,A)
【文献】 特開平08−010831(JP,A)
【文献】 実開平06−066812(JP,U)
【文献】 特開平10−034227(JP,A)
【文献】 特開平07−275926(JP,A)
【文献】 特開平04−033717(JP,A)
【文献】 特開平03−184616(JP,A)
【文献】 特開平03−146215(JP,A)
【文献】 特開平03−042115(JP,A)
【文献】 米国特許第04317352(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスの保持部に保持されたダイスと、ダイスと接離自在で同芯のコンテナとを備え、
コンテナの内孔に供給されるビレットを押出ステムの前進によりダイスの孔から押出し、
押出後にコンテナ内に押し残されたディスカードを、コンテナの後退後にダイスのコンテ
ナ側端面に倣って進退するシャー装置で切断するように構成され、前記ダイスをダイス保
持部でビレットの押出方向へ進退自在に支持させるとともに、ダイスの孔を囲むようにエ
ンドプラテンに進退自在に支持されて上側と下側とに配され先端でダイスをコンテナ側の
所定の位置まで押圧するように駆動装置で進退駆動される複数の押圧部材と、ダイスのコ
ンテナ側への移動を規制する規制部材とを設けた押出プレスにおいて、
前記押圧部材を、ロッドが搖動自在に連結されたレバー機構を介して前記駆動装置で押圧することを特徴とする押出プレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテナで保持したビレットを押出ステムで押すことによりダイスの孔から押出して所定形状の製品を得る押出プレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の押出プレスのうち、コンテナを固定した状態でビレットの供給と押出とを行う直接押出プレスは従来、次のように構成されている。即ち、この押出プレスには、メインラムに駆動されて軸線方向に進退する押出ステムと、この押出ステムを進退自在に嵌合させる内孔を備えた円筒状のコンテナとが設けられており、コンテナの反押出ステム側には、図3に示すようにダイス24とボルスタ22、23からなるダイスタック20がダイブロック19内に組み込まれて設けられている。また、上記コンテナ11とダイス24との接触部上方には、駆動装置で駆動され押出方向と直交する方向に進退するシャー28が設けられている。
【0003】
そして、ダイス24はダイスタック20により保持されビレット14の押出方向へ進退自在に支持されるとともに、ダイス24の孔を囲むようにエンドプラテン4に進退自在に支持されてダイス24をコンテナ11側の所定の位置まで押圧する駆動装置29と、ダイス24のコンテナ11側への移動を規制する規制部材が設けられている。
【0004】
このように構成されていることにより、コンテナ11の内孔に例えば円筒状のビレット14を供給し、メインラムにより押出ステムを前進させると、押出ステムで押されたビレット14は、ダイスタック20内のダイス24の孔から押出されて製品25になる。そこで、コンテナ11をダイス24から離間する方向へ後退させると、押出粕としてのディスカード26は、ダイス24の孔からコンテナ11側へ突出するので、シャー28を下降させると、このディスカード26はシャー刃で切断され回収され、製品25は押出方向に取り出される。
この構成では、ディスカード26を切断するときに、ダイスタック20をコンテナ11方向へ駆動装置29により押圧するので、ダイス24の温度条件などにかかわらず、シャー28によるディスカード26の切断箇所を一定にし、且つダイス24の傾きを無くしてシャー刃の切れ具合を向上させている。(特許文献1参照)
【0005】
ところで、前記従来型の押出プレスでは、ダイスタックをコンテナ側へ押圧する駆動装置がエンドプラテンの押出芯対応位置に設けられた凹部内に押出孔を囲むように複数個設けた構成になっている。この構成では、エンドプラテンに設けた凹部は駆動装置とそのための配管及び配線などで多くの空間隙間を必要とし、開口面積が大きく設定されるので、エンドプラテンの厚みが増大して押出プレスが大型化し、製作コストが高くなっていた。 また、駆動装置に周辺部に多くの空間隙間を要することから、押出能力の小さな押プレスではこの構成を採用することが困難となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−367315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シャー刃の正確な端面位置に倣いシャーの切れ具合を向上させるとともに、小型化した押出プレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の発明を達成するために本発明では、ダイスの保持部に保持されたダイスと、ダイ
スと接離自在で同芯のコンテナとを備え、コンテナの内孔に供給されるビレットを押出ス
テムの前進によりダイスの孔から押出し、押出後にコンテナ内に押し残されたディスカー
ドを、コンテナの後退後にダイスのコンテナ側端面に倣って進退するシャー装置で切断す
るように構成され、前記ダイスをダイス保持部でビレットの押出方向へ進退自在に支持さ
せるとともに、ダイスの孔を囲むようにエンドプラテンに進退自在に支持されて上側と下
側とに配され先端でダイスをコンテナ側の所定の位置まで押圧するように駆動装置で進退
駆動される複数の押圧部材と、ダイスのコンテナ側への移動を規制する規制部材とを設け
た押出プレスにおいて、前記押圧部材を、ロッドが搖動自在に連結されたレバー機構を介して前記駆動装置で押圧することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
ダイスタックをコンテナ方向に押圧する押圧部材の駆動を、レバー機構を介して行う構成としたので、エンドプラテンの凹部の開口面積を小さくできる。このため、エンドプラテンの厚みを小さくし、押出プレスを小型化することができる。
ディスカードを切断するときに、ダイスタックをコンテナ側に押圧するので、ディスカードの切断箇所を一定にし、ダイスの傾きを無くしてシャー刃の切れ具合を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態を説明する要部の断面図である。
図2】押出プレスの概要を説明する全体図である。
図3】従来の押出プレスの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、2は本発明の実施形態を示す断面図及び全体図である。図に示すように、押出プレス1は、マシンベース2上に対向して立設されたメインシリンダプラテン3とエンドプラテン4とを備えており、これらの両プラテン3,4は、4隅をタイロッド5で連結されている。シリンダプラテン3には、支持台6で支持されて後端部をプレフィルバルブ7や配管でタンク7aと連結されたメインシリンダ8が固定されており、このメインシリンダ8の中に進退自在に設けられているメインラム8aには、メインシリンダ8に供給される油圧により軸線方向に進退する押出ステム9がクロスヘッド10を介して連結されている。
【0012】
符号11で示すものは、両プラテン3、4間のエンドプラテン4寄りに位置して配設されたコンテナであって、円筒状のコンテナライナ、コンテナタイヤ、コンテナホルダにより構成され、コンテナシリンダによりマシンベース2上を軸線方向に進退するようになっている。コンテナタイヤにはヒータが取り付けられている。コンテナ11とシリンダプラテン3との間のコンテナ11側寄りには、ビレットローダ13が図の紙背面と手前側との間で移動自在に設けられていて、このビレットローダ13に機外位置で把持されたビレット14は、ビレットローダ13の図示位置への移動と、押出ステム9の前進とによりコンテナ11の内孔11aに供給されるように構成されている。
【0013】
エンドプラテン4のコンテナ側隣接位置には、上部ガイド15と下側ガイド16とがエンドプラテン4の端面に取り付けられており、これら上下ガイド15,16にはダイス保持部材としてのダイブロック19が、突起15aと溝19a、及び突起16aと溝16bとを係合させて水平方向に進退自在に嵌合されている。そして、このダイブロック19は、図示しない駆動装置で駆動されて軸線方向と直交する方向へ水平状に進退するように構成されており、このダイブロック19の内孔19aには、全体を符号20で示すダイスタックが、ビレット14の押出方向へ進退自在に形成されて嵌合されている。さらに、ダイブロック19のコンテナ11側の端面には、ダイスタック20のコンテナ11側への移動端限を規制する規制部材としてのホースシュー21が、正面視をU字状に形成され断面形状をL字状に形成されて固定されており、ダイスタック20は、このホースシュー21によってコンテナ11側への移動端限を規制されている。
【0014】
そして、このダイスタック20は、軸線方向に2分割された円筒状のボルスタ22、23とボルスタ23に対し着脱自在な円筒状のダイス24とで形成されており、このダイスタック20は、ダイス24の交換のため、前述したようにダイブロック19と一体となってコンテナ11の軸心位置と機外位置との間で水平状に移動するように構成されているとともに、ダイスタック20は、そのホースシュー21までの段部までの全長を、エンドプラテン4の端面とホースシュー21の段部までの間隔より僅かに小さく形成することにより、前述したようにビレット14の押出方向へ僅かに進退できるように構成されている。
【0015】
着脱自在なダイス24には、コンテナ11の内孔11aと同芯の押出孔24aとこれにより大径の孔24bとが穿設されており、メインラム8に駆動されて押出ステム9が前進すると、ビレット14が押出ステム8で押圧され、ダイス24の押出孔24aから大径の孔24b内へ製品25となって押出されるように構成されている。26はビレット14を押出した結果残された押出粕としてのディスカードであって、押出完了時には、コンテナ11の内孔11a端部、又は後退したコンテナ11や押出ステム9とダイス24との間隙内に突出している。
【0016】
さらに、図に示す前進位置にあるコンテナ11の前端面上方には、シャー昇降シリンダ27がエンドプラテン4に支持されて設けられていて、その油圧で昇降するピストンロッドの下端部には、下降によりディスカード26と製品25との境界部を剪断するシャー28が固定されている。そして、製品25の仕様が変わってダイス24を交換する場合には、ダイスタック20を保持するダイブロック19を押出方向と直交する方向に移動させ、機外位置において図示しないダイチェンジャで交換するように構成されており、この交換のためホースシュー21は上方へ開口され、また、ダイブロック19には、この開口に対する空間部19cが設けられている。
【0017】
エンドプラテン4の押出芯対応位置には、エンドプラテン4のロッド孔、及びエンドプラテン4の凹孔4cにブッシュ4dを介し嵌合して設けたプレッシャーリング31,32のロッド孔に摺動自在に嵌合する押圧部材としての押しロッド33が、押出孔24aを囲むように複数個配設されている。そして、エンドプラテン4の外周面(図1では上面及び下面)には、押しロッド33の押圧手段としての駆動装置29が設けられている。駆動装置29の先端部は、エンドプラテン4の反ダイス側端面に設けたブラケット30とレバー機構34の一端とを介して揺動自在に軸支されており、また、レバー機構34の他端部は各押しロッド33と揺動自在に連結されている。駆動装置29は、エンドプラテンの上下面又は両側面に設けることが好ましい。駆動装置29には、油圧シリンダや空圧シリンダ等の流体圧シリンダ又は電動駆動により回転運動を直線運動に変換する機構が好適に用いられ、図1では流体圧シリンダを用いた構成を示している。
【0018】
駆動装置29を作動させて押しロッド33をダイスタック側へ前進させたときに、ホースシュー21の段部で移動限を規制されるまでダイスタック20がダイブロック19内で移動するように構成されている。即ち、ダイスタック20の厚みに熱膨張差による差が出ても、ダイスタック20の前進限が一定となってその端面とシャー28の剪断面と一致するように構成されている。ダイスタック20をホースシュー19に押圧するに際して、例えば下側2本の押しロッド33の押圧力が、上側2本の押しロッド33の押圧力より大きく設定することで、ダイブロック19に空間部19cがあっても押しロッド33で押されるダイス24が傾かないようにすることができる。
【0019】
以上のように構成された押出プレスの動作を説明する。コンテナ11がダイス24に当接する位置へ前進しているときに、ビレットローダ13のアームが回転することによりビレット14が搬送されてくると、メインラム8aの作動により押出ステム9が前進してビレット14を押すので、ビレット14はコンテナ11の内孔11a内に挿入される。押出ステム9を更に前進させると、ビレット14が押圧され、ダイス24の押出孔24aからボルスタ22,23の孔を経てエンドプラテン4の孔内へ製品25となって押出される。
【0020】
押出が終わるとコンテナ11が後退し、押出粕としてのディスカード26がコンテナ11の後端面から突出する。そこで、油圧シリンダ29を同時に作動させて押しロッド33をコンテナ11側に向けて前進させると、その先端がダイスタック20の端面に当接してダイスタック20を押し、図示するようにダイス24の段部がホースシュー21の段部に当接して移動限を規制されるまでダイスタック20が移動して停止し、このとき、ダイスタック20のコンテナ11側の端面と、シャー28の剪断面とが一致する。
即ち、ダイスタック20が熱膨張しても、ダイスタック20はコンテナ11への移動を規制されていることにより、押出ロッド33を後退させる方向にのみ膨張した状態となるので、材質等により熱膨張差ができてもダイスタック20の前進限が一定となってその端面がシャー28の剪断面と一致する。
【0021】
また、本装置においては、例えば下側2本の押しロッド33の押圧力が、上側2本の押しロッド33の押圧力よりも大きくなるように設定することにより、ダイブロック19に空間部19cがあってダイス24が下側のみをホースシュー21で規制されていてもダイス24が傾くことがない。
【0022】
この状態でシャー下降シリンダ27のピストンロッドが下降してこれと一体のシャー28がダイスタック20の端面に沿って下降し、ディスカード26が製品25との境目から確実に剪断される。剪断されたディスカード26はシュート上を滑行して回収される。シャー28が下降し、ディスカード26を製品25から切断したら、ディスカード26が取り出され、製品25は押出方向へ引き出されて取り出される。こうすることにより、製品25はその後端部がダイス24の押出孔24aから抜け出し、図示しないプラーで搬送される。この後、シャー28が上昇するとともに、押しロッド33が後退する。
【0023】
なお、本実施例では、押出ロッド33がダイスタック20の端面に当接してこれを押しているとき、即ちシャー28によるディスカード26の剪断時に、ディスカード26の製品25側の端面がダイス24の端面に密接している例を示したが、このとき、製品25を僅かに後退させてディスカード26の端面とダイス24の端面との間に間隙を設けた状態で剪断する構成であっても良い。
【0024】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、ダイスタックをコンテナ側に押圧する押圧ロッドの駆動をエンドプラテンの外周部である上下面又は押出方向と直交する側面に設け、レバー機構を介して押出芯対応位置の凹部に設けたダイスタックの押しロッドを動作せせる構成としたので、エンドプラテンの厚みを小さくして押出プレスを小型化することができる。また、押しロッドを駆動する駆動装置をエンドプラテンの外周面に設けたので、駆動装置の保全性を向上させることができる。
【0025】
ダイスの保持部に保持されたダイスと、このダイスと接離自在で同芯のコンテナとを備え、コンテナの内孔に供給されたビレットを押出ステムの前進によりダイスの孔から押出、この押出の結果としてコンテナ側に残された押出粕を、コンテナの後退後に、押出方向と直交する方向に進退するシャーで剪断するように構成され、前記ダイスをダイス保持部でビレットの押出方向へ進退自在に支持させるとともに、ダイスの孔を囲むように機台側で進退自在に支持されて上側と下側とに配置され先端でダイスをコンテナ側の所定位置まで押圧するように駆動装置で進退駆動される複数個の押圧部材と、ダイスのコンテナ側への移動端限を規制する規制部材を設けたことにより、ダイスタック及びダイスが熱膨張しても、シャーによる剪断時には、押圧部材がダイスタックをコンテナ側に押して所定位置で停止させ、材質等により熱膨張差ができても、ダイスタックのコンテナ側の端面が一定位置となってその端面がシャーの剪断面と一致する構成の押出プレスを用いる構成としたので、押出粕が製品との境目から確実に剪断され、シャーの良好な切れ具合を維持することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 押出プレス
4 エンドプラテン
9 押出ステム
11 コンテナ
11a 内孔
14 ビレット
15 上部ガイド
15a 突起
16 下部ガイド
16a 突起
19 ダイブロック
19a 溝
19b 溝
20 ダイスタック
21 ホースシュー
24 ダイス
24a 押出孔
26 ディスカード
28 シャー
29 駆動装置
30 ブラケット
33 押しロッド
34 レバー機構
図1
図2
図3