特許第5928171号(P5928171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000002
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000003
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000004
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000005
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000006
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000007
  • 特許5928171-部材取り付け装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928171
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】部材取り付け装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20160519BHJP
   B66B 13/30 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   F16B5/02 C
   B66B13/30 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-132011(P2012-132011)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-256973(P2013-256973A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 寛
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−305445(JP,A)
【文献】 実開平04−127405(JP,U)
【文献】 特開2007−197211(JP,A)
【文献】 米国特許第04232497(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を有するエレベータのかごドアの折り曲げ部の外側に、貫通穴を有する部材を取り付ける際に、雄ねじ部材を、前記貫通穴を有する部材側から、前記各貫通穴を介して、前記折り曲げ部の内側に配置される雌ねじ部材に螺合する構成のものにおいて、
前記雌ねじ部材は、断面L字形の本体と、この本体を貫通する貫通穴を備え、この貫通穴は雌ねじ部と、前記雄ねじ部材が貫通可能で横断面積が前記雌ねじ部の横断面積より広い凹部とが直列に連結した形状であり、
前記部材の前記折り曲げ部の外側への取付作業時に、前記断面L字形の本体の貫通穴のある方が前記かごドアの戸閉端部側に位置するとともに、前記凹部が前記折り曲げ部の内側に来るように、前記雌ねじ部材を前記折り曲げ部の内側に押し当てる構成であることを特徴とする部材取り付け装置。
【請求項2】
貫通穴を有するエレベータのかごドアの折り曲げ部の外側に、貫通穴を有する部材を取り付ける際に、雄ねじ部材を、前記貫通穴を有する部材側から、前記各貫通穴を介して、前記折り曲げ部の内側に配置される雌ねじ部材に螺合する構成のものにおいて、
前記雌ねじ部材は、断面L字形の本体と、この本体を貫通する貫通穴と、この貫通穴に連通するように、前記本体に溶接されたナットとを備え、前記本体を貫通する貫通穴は前記雄ねじ部材が貫通可能でその横断面積が前記ナットの雌ねじ部の横断面積より広い形状であり、
前記部材の前記折り曲げ部の外側への取付作業時に、前記断面L字形の本体の貫通穴のある方が前記かごドアの戸閉端部側に位置するとともに、前記本体を貫通する貫通穴が前記折り曲げ部の内側に来るように、前記雌ねじ部材を前記折り曲げ部の内側に押し当てる構成であることを特徴とする部材取り付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア装置への部材の取り付けのような、狭いスペースでの取り付け作業を効率的に行なうための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータドア装置などに部材を取り付ける場合、ボルト及びナットを使用することがあるが、狭いスペースでの取り付け作業の場合には、ボルト又はナットの一方又は両方が見えないため、手探りで作業を行なわざるを得ない場合がある。そこでこの問題を解決するために、種々の部材の取り付け装置が考えられている。
【0003】
従来の部材の取り付け装置の例として、エレベータのかごドアに多光軸センサを取り付けた構成ついて説明する。この多光軸センサとは、投光側の多光軸センサから投光された多数の光軸を受光側の多光軸センサが受光するものであり、これらの多数の光軸により、障害物の有無を検出するものである(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
図5はエレベータドア装置の横断面図、図6はエレベータドア装置の正面図、図7はプレートナットを示す図である。
図において、1はかごドア、2は乗場ドア、3はセーフティシュー4を取り付けるためにかごドア1に固定したチャンネル、5はかご敷居の端面、6は乗場敷居の端面、11は多光軸センサ、12はプレートにタップ穴14(雌ねじ部)を設けたプレートナット、13は多光軸センサ11をかごドア1に取り付けるビスである。
また図5に示すように、かごドア1の戸閉端部の幅Aは戸開端部の幅Bよりも小さくすることによって、多光軸センサ11の取り付けスペースを確保している。
【0005】
多光軸センサ11のかごドア1への取り付け作業は、図6に示すように、セーフティシュー4を取り付ける前に行なう。多光軸センサ11の表側からビス13を挿入してかごドア1の穴(図示省略)に通すとともに、プレートナット12が横長になるように持って、かごドア1の内側に押し当て、ビス13をタップ穴14に螺合することにより、多光軸センサ11を取り付ける。
その後、図6に示すように、プレートナット12を90度回転することにより、プレートナット12のはみ出した部分をかごドア1の内側に収納する。
【0006】
このようにプレートナット12を使用することにより、ビス13の螺合作業が容易になり、またプレートナット12を90度回転することにより、窓付きドアの場合であっても、窓からプレートナット12が見えること防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−6561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の構成の場合、プレートナット12のタップ穴14が見えない状態でビス13の螺合作業を行なうため、ビス13をタップ穴14に挿入するのが容易でないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、貫通穴を有するエレベータのかごドアの折り曲げ部の外側に、貫通穴を有する部材を取り付ける際に、雄ねじ部材を、前記貫通穴を有する部材側から、前記各貫通穴を介して、前記折り曲げ部の内側に配置される雌ねじ部材に螺合する構成のものにおいて、前記雌ねじ部材は、断面L字形の本体と、この本体を貫通する貫通穴を備え、この貫通穴は雌ねじ部と、前記雄ねじ部材が貫通可能で横断面積が前記雌ねじ部の横断面積より広い凹部とが直列に連結した形状であり、前記部材の前記折り曲げ部の外側への取付作業時に、前記断面L字形の本体の貫通穴のある方が前記かごドアの戸閉端部側に位置するとともに、前記凹部が前記折り曲げ部の内側に来るように、前記雌ねじ部材を前記折り曲げ部の内側に押し当てる構成としたものである。
【0011】
更に本発明は、貫通穴を有するエレベータのかごドアの折り曲げ部の外側に、貫通穴を有する部材を取り付ける際に、雄ねじ部材を、前記貫通穴を有する部材側から、前記各貫通穴を介して、前記折り曲げ部の内側に配置される雌ねじ部材に螺合する構成のものにおいて、前記雌ねじ部材は、断面L字形の本体と、この本体を貫通する貫通穴と、この貫通穴に連通するように、前記本体に溶接されたナットとを備え、前記本体を貫通する貫通穴は前記雄ねじ部材が貫通可能でその横断面積が前記ナットの雌ねじ部の横断面積より広い形状であり、前記部材の前記折り曲げ部の外側への取付作業時に、前記断面L字形の本体の貫通穴のある方が前記かごドアの戸閉端部側に位置するとともに、前記本体を貫通する貫通穴が前記折り曲げ部の内側に来るように、前記雌ねじ部材を前記折り曲げ部の内側に押し当てる構成としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部材の取り付け作業が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態によるエレベータかごドア要部の横断面図であり、図3のA−A断面図である。
図2図1の雌ねじ部材を示す図である。
図3】本発明の実施の形態によるエレベータかごドアを示す正面図である。
図4】本発明の他の実施の形態を示す図であり、図3のB−B断面図である。
図5】従来のエレベータドア装置の横断面図である。
図6】従来のエレベータドア装置の正面図である。
図7】従来のプレートナットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図1図3により説明する。図1は本発明の実施の形態によるエレベータかごドア要部の横断面図であり、後述の図3のA−A断面図に相当する図である。図2図1の雌ねじ部材を示す図、図3は本実施の形態のエレベータかごドアを示す正面図である。なお各図において、図5〜7と同一符号は同一のものを示している。
【0015】
図において、30は多光軸センサ11をかごドア1の折り曲げ部10に取り付けるボルト(雄ねじ部材)であり、多光軸センサ11の穴11a及び折り曲げ部10に設けた穴10aを介して、多光軸センサ11を折り曲げ部10に取り付ける。31はボルト30が螺合する雌ねじ部材であり、断面L字形の本体32と、この本体32に設けられた貫通穴33からなり、この貫通穴33はタップ穴(雌ねじ部)34と、このタップ穴34と直列に空けられた凹部35からなっている。ここで凹部35は本体32の表面側の横断面積がタップ穴34側の横断面積より大きい略円錐型(皿形状)をなしている。つまり皿ねじの頭部が挿入可能な形状になっている。
【0016】
また多光軸センサ11から突出しないように、ボルト30は皿ねじとなっている。36は多光軸センサ11のケーブル、40は図示省略した敷居に沿って、かごドア1の開閉を案内するガイドシューである。
【0017】
本実施の形態において、多光軸センサ11をかごドア1に取り付ける場合には、多光軸センサ11をかごドア1の折り曲げ部10に押し当てて、多光軸センサ11の穴11aと折り曲げ部10の穴10aとを一致させるように、ボルト30を通すとともに、雌ねじ部材31を持って、折り曲げ部10の内側に押し当て、ボルト30を、凹部35を通ってタップ穴34へ螺合することにより、多光軸センサ11を折り曲げ部10に取り付ける。
【0018】
前記の説明では、多光軸センサ11の穴11aは単に穴としているが、作業者の見える位置にあるものであるため雌ねじとし、取り付け作業の前にあらかじめボルト30を螺合しておくこともできるが、バカ穴としてもよい。
また、折り曲げ部10の穴10aは、上下に長い多光軸センサ11を取り付けるものであるから複数個配置されている。そのため、製作誤差により、多光軸センサ11の穴11aの配置位置(ピッチ)と、折り曲げ部10の穴10aの配置位置とがずれる可能性もあるため、バカ穴とし、製作誤差を吸収するようにしている。
【0019】
本実施の形態によれば、タップ穴34が見えなくても、ボルト30をタップ穴34側に挿入すると、凹部35にガイドされて、ボルト30はタップ穴34に容易に到達し、螺合することができる。
このタップ穴34及び凹部35は、皿ねじ用の雌ねじ側と類似しているが、本実施形態のように凹部35をボルト30のガイドとして使用することによって作業効率を上げた例はない。
また、凹部35は略円錐型に限ることはなく、ボルト30が貫通可能でタップ穴34よりも横断面積が広く、ボルト30の先端をタップ穴34の方へガイドできればよい。
【0020】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。図4図3のB−B断面に相当する図であり、41はガイドシュー40を支持する支持金具、42はかごドア1のパネルに固定されたブラケット、43はブラケット42に対するガイドシュー40の位置を調整するためのシム、44は四角形の板からなる本体45の中央に貫通穴46を空けた構成のプレートナット(雌ねじ部材)である。貫通穴46は、タップ穴47と、このタップ穴47と直列に空けられた凹部48からなっている。ここで凹部48は本体45の表面側の横断面積がタップ穴47の横断面積より大きい略円錐型(皿形状)をなしている。つまり皿ねじの頭部が挿入可能な形状になっている。
【0021】
50は支持金具41の穴41a,シム43の穴(図示省略),ブラケット42の穴42aを貫通して、プレートナット44のタップ穴47に螺合されるボルトである。
【0022】
本実施の形態において、ブラケット42にガイドシュー40を取り付ける場合は、シム43を挟んで支持金具41をブラケット42に押し付け、ボルト50を支持金具41の穴41a,シム43の穴,ブラケット42の穴42aに挿入し、その先端をプレートナット44のタップ穴47に螺合する。
これにより、ボルト50はプレートナット44の凹部48にガイドされてタップ穴47に螺合するため、タップ穴47が作業者から見えなくても、スムーズに作業を行なうことができる。
また、ボルト50の螺合時、ボルト50を支持金具41の穴41a及びシム43の穴に挿入した状態で、ブラケット42の穴42aに挿入してもよい。このようにすれば、作業者からブラケット42の穴42aが見えるため、作業がやりやすくなる。
【0023】
尚、支持金具41の穴41a,及びブラケット42の穴42aは、単に穴としているが、これらの穴は作業者の見える位置にあるため雌ねじでもよいが、通常一つのガイドシュー40に対してボルト50は2本使用するため、支持金具41の穴41aやブラケット42の穴42a又はプレートナット44の貫通穴46に製作誤差による各穴の配置位置(ピッチ)のずれがあると、2つのボルト50が螺合できない可能性も出てくる。そこで穴の製作誤差を吸収するため、穴41a及び42aをバカ穴としてもよい。
【0024】
以上の各実施の形態においては、雌ねじ部材の本体に凹部とタップ穴を直列に設けた貫通穴を空けていたが、本体に皿形状などの凹部を設け、この凹部に連通するように、本体にナットを溶接すれば、本体をより薄くすることができる。
【0025】
また前記の各実施の形態では、貫通穴を有する部材(多光軸センサ11,支持金具41)を作業者の手前側、貫通穴を有する固定部(かごドア1の折り曲げ部10,ブラケット42)を向こう側に設置しているが、現場の事情が許せば、手前側に固定部、向こう側に部材を設置することもできる。
更に、前記の各実施の形態では、雄ねじ部材を作業者の手前側から向こう側に挿入しているが、現場の事情が許せば、雄ねじ部材を作業者の向こう側から手前側に挿入することもできる。
【0026】
更にまた、雌ねじ部材は、断面L字状のブラケットや四角形の板に限定されることはなく、凹部と雌ねじ部が設けられておればよい。更に本発明は、エレベータドアの多光軸センサやドアガイドシューに限ることはなく、ドアの赤外線光電センサやレーザセンサやレーザ光の反射板の取り付けなど、種々の取り付け作業に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 かごドア
10 かごドアの折り曲げ部(貫通穴を有する固定部)
11 多光軸センサ(貫通穴を有する部材)
12,44 プレートナット(雌ねじ部材)
30,50 ボルト(雄ねじ部材)
31 雌ねじ部材
32,45 本体
33,46 貫通穴
34,47 タップ穴(雌ねじ部)
35,48 凹部
40 ガイドシュー
41 支持金具(貫通穴を有する部材)
42 ブラケット(貫通穴を有する固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7