(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0021】
図1及び
図2に電気ケトル全体の斜視図及び断面図を示し、
図3に
図2の要部拡大断面図を示す。なお、以下においては液体加熱容器として電気ケトルを用いて説明する。電気ケトルの注出口側を前方側とし、注出口と反対の取手側を後方側とし、前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0022】
液体加熱容器である電気ケトルSは、容器本体20、外ケース25、底ケース30、蓋体40及び電源台33を有する。なお、電気ケトルSは、容器本体20と外ケース25とを有する2重構造のものとして説明するが、外ケース25がない1重構造のものでもよい。
【0023】
容器本体20は、水等を入れる内ケースでもあり、上方が開口した筒状のステンレス製部材で、その上部には外方へ若干張り出した環状のフランジ21を有し、その下面には、加熱手段であるヒーター盤22及びソケット23を有する。
【0024】
前記外ケース25は、容器本体20の外方に隙間を有して位置する筒状の樹脂製の部材であり、その前方側には外方に向かって先細り形状の注出口26を有し、注出口26と反対側の後方側には後記する蓋体40の後方側に形成される第1蓋蒸気開口62及び第2蓋蒸気開口63のそれぞれに対向する第1ケース蒸気開口25b及び第2ケース蒸気開口25cを有する。
【0025】
そして、外ケース25の後方側には、第1ケース蒸気開口25b及び第2ケース蒸気開口25cを覆う形態で取手27が設けられる。取手27は、取手本体27aと取手本体27aを後方側からカバーするカバー部材27bを有し、組付後では形成される内部空間に電線28及び後記のスイッチ収納ケース70等が配設される。
【0026】
前記取手本体27aの前方側、即ちカバー部材27bと反対側の壁面27cには、第1取手蒸気開口27d及び第2取手蒸気開口27eが設けられ、取手27が取付けられると、第1蓋蒸気開口62と第1ケース蒸気開口25bと第1取手蒸気開口27dとは一直線上に並び、第2蓋蒸気開口63と第2ケース蒸気開口25cと第2取手蒸気開口27eとは一直線上に並ぶ。
【0027】
取手27は、その下端を図示しない係止片と係止溝による係止で係合し、その上端をビス29によりビス止めする。なお、外ケース25の上方に肩部材を一体または別体で設け、その肩部材に取手27を設けてもよい。
【0028】
外ケース25は、その表面に色ないし模様等を施すことができるためデザイン性が向上する。また、外ケース25と容器本体20との間には断熱空間が形成されるため、外ケース25が熱くならず安全性が高まる。
【0029】
前記底ケース30は、外ケース25の下方に位置する樹脂製の皿状部材であり、その底部には電源台33の接続端子34が挿入する中央開口31を有するとともに、該中央開口31の外側には図示しない複数のビス穴を有する。
【0030】
そして、外ケース25の上部内周部に形成される環状の内周段部25aに容器本体20のフランジ21を載置する形態で外ケース25内に容器本体20を収納し、底ケース30の上端部を外ケース25の下端部に嵌合する。
【0031】
そして、前記ビス穴に下方からビスを挿入し、そのビスを容器本体20の底部に取付けられるソケット23に螺合することにより、容器本体20と外ケース25と底ケース30とを同時に固定する。
【0032】
前記電源台33は、底ケース30の下方に位置する断面逆皿状の樹脂製の部材であり、電気ケトルSを安定した状態で支持する。電源台33内にはその中央に円柱状の接続端子34が立設する形態で有する。そして、電源台33の上に電気ケトルSを乗せて電源台33の図示しないプラグをコンセントに差し込み、取手27に設けられる押動スイッチ75を押し下げると接続端子34を介してヒーター盤22に通電される。
【0033】
前記蓋体40は、蓋カバー41、内蓋42及び蓋本体50を有し、外ケース25に対し着脱自在にされる部材である。蓋カバー41は、蓋本体50の上方を覆う平面視略円形で縦断面円弧状の樹脂部材であり、その上面には、蓋体40と外ケース25との結合及び解除を行うための2個の開閉レバー44が配置される2個の略矩形状のレバー開口44aと、後記弁部材58を開閉するための押圧ボタン45が配置される円形のボタン開口45aを有する。
【0034】
前記内蓋42は、蓋本体50の下面に当接され、環状のシールパッキン46で挟持される平面視円形で縦断面底の浅い皿状のステンレス部材であり、複数のビス穴及び複数の開口42aを有しており、図示しないビスで蓋本体50に下方からビス止めされ、ビス止め後は、蓋本体50の下面との間に後記下部室54を形成し、容器本体20内で発生する蒸気は複数の開口42aより下部室54に浸入する。
【0035】
なお、シールパッキン46は、蓋本体50の下方外周面に嵌合され、蓋体40が外ケース25の上部開口を閉蓋すると、容器本体20内の内容物をシールする。
【0036】
前記蓋本体50は、略中央に略水平な区画壁51、外周に上下方向の外周壁52を有し、その上下に上方が開口した上部室53及び下方が開口した下部室54を形成する。その上部室53には、2個の開閉レバー44と、1個の押圧ボタン45が配置される。
【0037】
2個の開閉レバー44は、共に指で押圧する把持部44bと把持部44bの外方に形成される係止片44c(
図4参照)を有し、図示しないスプリングを介して対向して配置されるもので、常時はお互い離れる方向に付勢され、係止片44cを外ケース25の係止溝25d(
図5参照)に嵌合して蓋体40を閉蓋する。
【0038】
また、押圧ボタン45は、弁部材58の上端部にスプリング受60及びスプリング55を介して当接し、上方から押されると下動し、図示しないストッパ機構により、下動した位置で停止され、再度押されると停止が解除されてスプリング55の作用により上動する公知のものである。そして、上部室53には蒸気が浸入しないようにされている。
【0039】
前記下部室54は、容器本体20で発生する蒸気が侵入する空間で、その前方側には、平面視円形の垂直壁56が垂下している。垂直壁56の高さは、下部室54を形成する外周壁52より短くその下端は下部室54内に位置し、その下端には弁部材58のシールパッキン59が当接する。
【0040】
垂直壁56の下端に弁部材58のシールパッキン59が当接すると、内部に注出空間である略ドーナツ状の注出通路57を形成する。この注出通路57はその前方側で注出口26に連通する。また、垂直壁56の中央には、上部室53から下部室54方向にくぼむとともに、スプリング55の下端を支持するドーナツ状の凹嵌部61を有する。
【0041】
下部室54には、樹脂製で縦断面逆T字状の弁部材58が配設される。弁部材58は弁本体58a及び弁棒58bを有する一体成形部材である。弁本体58aは、平面視円形の部材であり、その上面には容器本体20内の圧力が所定以上になると弁本体58aに設けられる開口を解放する安全弁58cを有し、その外周部には環状のシールパッキン59が嵌合される。
【0042】
弁棒58bは、弁本体58aの上面中央に立設し、弁部材58が下部室54に配置されるとドーナツ状の凹嵌部61の中央を通って上部室53に進入し、その上端は、押圧ボタン45が上方に載置するスプリング受60の下面に当接する。
【0043】
弁部材58は、通常時、スプリング55の作用により上動されており、弁本体58aの外周に嵌合されるシールパッキン59の上面は垂直壁56の下端に当接し、容器本体20内と注出通路57とを遮断するが、押圧ボタン45が押し下げられる注出時には弁部材58は下動し、容器本体20内と注出通路57とを連通する。
【0044】
前記下部室54の後方側の外周壁52には、
図4に示すように下部室54と外部とを連通する円形の第1蓋蒸気開口62と、第1蓋蒸気開口62の直上に第1蓋蒸気開口62と同形の第2蓋蒸気開口63を有する。このように第1蓋蒸気開口62と第2蓋蒸気開口63とは上下に位置している。
【0045】
前記下部室54と前記上部室53との間には筒状で樹脂製の蒸気ダクト65が水平に配設される。蒸気ダクト65は、第2蒸気通路に相当するもので、その一方は第2蓋蒸気開口63に連通し、その他方は下部室54に形成される注出通路57に連通する。
【0046】
前記取手27の取手本体27aとカバー部材27bとにより形成される内部空間には、電線28の他にスイッチ収納ケース70が設けられる。スイッチ収納ケース70内には、スイッチ支持台71が収納される。
【0047】
スイッチ収納ケース70内にスイッチ支持台71が収納されるとスイッチ支持台71の後方側半分は、取手本体27aとカバー部材27bとにより形成される内部空間に連通するが、前方側半分は、後方側半分に対して図示しないシール材により水密状態とされ、蒸気が後方側に流出しないようにされる。
【0048】
スイッチ支持台71の前方側半分とスイッチ収納ケース70との間にケース上部空間72及びケース下部空間73を形成する。なお、ケース上部空間72とケース下部空間73とは、スイッチ支持台71の左右側において連通している。
【0049】
スイッチ支持台71の後方側には図示しない接続端子を有し、電線28と接続される。また、スイッチ収納ケース70の上方には、押動スイッチ75が揺動自在に軸支され、押動スイッチ75を下方に押すと、スイッチがオンし、押動スイッチ75内の表示灯76が点灯する。
【0050】
前記スイッチ支持台71の前方側半分の底面は略20度の傾斜面71aとされ、その傾斜面71aには沸騰検知手段に相当する蒸気を感知して通電をオフする薄い板状のバイメタルスイッチ74が設けられる。
【0051】
前記スイッチ収納ケース70の前方には、
図7に示すようなパッキン67が嵌合される。パッキン67は、前方側に2個の長さの短い筒状部68と、後方側に略皿状の本体部69を有する一体のもので、筒状部68には第1パッキン開口68a及び第2パッキン開口68bを有し、本体部69は筒状部68側が略円弧状の壁面で、反対側が開口され、その開口の全外周端には図示しない嵌合溝が形成される。
【0052】
そして、スイッチ収納ケース70の前端部に本体部69の嵌合溝を嵌合して
図7に示すスイッチ収納ケースユニットを形成する。その結果、スイッチ支持台71の前方側半分とスイッチ収納ケース70とで形成される空間と、本体部69内の空間との間に第2蒸気通路に相当するケース上部空間72とケース下部空間73とが形成される。
【0053】
前記スイッチ収納ケース70は、取手本体27aの後方側からパッキン67を前にしてパッキン67の2個の筒状部68を前方側に押し込む。すると、筒状部68の下方の第1パッキン開口68aは、第1取手蒸気開口27d及び第1ケース蒸気開口25bとを通り、第1パッキン開口68aの先端は、第1ケース蒸気開口25bの内側に突出する。また、筒状部68の上方の第2パッキン開口68bは、第2取手蒸気開口27e及び第2ケース蒸気開口25cとを通り、第2パッキン開口68bの先端は、第2ケース蒸気開口25cの内側に突出する。その状態を
図5に示す。
【0054】
そして、蓋体40を閉蓋すると、蓋体40の第1蓋蒸気開口62の外側外周には第1パッキン開口68aの先端が当接して、第1蓋蒸気開口62をシールし、第2蓋蒸気開口63の外側外周には第2パッキン開口68bの先端が当接して、第2蓋蒸気開口63をシールする。
【0055】
その結果、容器本体20内は、第1蓋蒸気開口62及び第1パッキン開口68aを介して、取手27内上部の第1蒸気通路に相当するケース下部空間73及びケース上部空間72に連通し、さらにケース上部空間72は、第2パッキン開口68b及び第2蓋蒸気開口63を介して、蓋体40内の第2蒸気通路に相当する蒸気ダクト65とに連通し、さらに蒸気ダクト65は、注出通路57を介して注出口26に連通する。
【0056】
そして、容器本体20内で発生する蒸気は、
図3で矢印で示すように第1蓋蒸気開口62、第1パッキン開口68a、ケース下部空間73、ケース上部空間72、第2パッキン開口68b及び第2蓋蒸気開口63、蒸気ダクト65、注出通路57及び注出口26の順で流れる。なお、蓋カバー41に蒸気排出口を設け、蒸気ダクト65からの蒸気をその蒸気排出口から排出してもよい。
【0057】
蒸気が第1パッキン開口68aからケース下部空間73に水平に流れ込むと、蒸気は斜め上方に上昇する。ケース下部空間73では、略20度傾斜したスイッチ支持台71の底面にバイメタルスイッチ74が設けられており、ケース下部空間73に浸入した蒸気の大部分は直接バイメタルスイッチ74に当たる。バイメタルスイッチ74が蒸気を検知すると、押動スイッチ75がオフする。その結果、少量の蒸気であってもバイメタルスイッチ74で適切に検知することができるようになる。外部に放出される蒸気量が減れば、蒸気に当たって火傷等する弊害も低減する。
【0058】
バイメタルスイッチ74に直接当たった蒸気は、スイッチ支持台71の前方及び左右の隙間を通ってケース上部空間72に出、蒸気ダクト65及び注出通路57を通って注出口26より外部に排出される。このように蒸気経路は1経路であり、且つバイメタルスイッチ74を取手27の上方に設けることにより沸騰検知手段までの経路長を短くできる。そのため、容器本体1内で発生する全蒸気がバイメタルスイッチ74に早期に流れるため、沸騰初期の少ない蒸気での検知が可能になる。沸騰検知が15%早くなり、蒸気量も70%カット可能になる。
【0059】
図8に1経路の他の例を示す。この例は、取手27内の沸騰検知手段に当たり排出される蒸気の排出を、取手27の上方から行うものである。なお、排気を外部に放出する経路以外は、既に説明した
図3等と同じであり、同じ箇所には同じ符号を付して説明は省略する。
【0060】
即ち、容器本体20内で発生する蒸気は、
図8で矢印で示すように第1蓋蒸気開口62、第1パッキン開口68a、ケース下部空間73、ケース上部空間72、ケース上部空間72の上方に形成される第2蒸気通路77及び第2蒸気通路77の上方である取手27の上部に形成される蒸気排出口78の順で流れる。
【0061】
このような経路であっても蒸気経路は1経路であり、且つ沸騰検知手段までの経路長を短くできる。そのため、容器本体1内で発生する全蒸気が沸騰検知手段に早期に流れるため、沸騰初期の少ない蒸気での検知が可能になる。
【0062】
図9に1経路のさらに他の例を示す。この例は、取手27内のケース上部空間72をなくし、取手27内の沸騰検知手段に当たり排出される蒸気の排出を、ケース下部空間73から取手27内に設けた蒸気通路を介して取手27の下方から行うものである。なお、排気を外部に放出する経路以外は、既に説明した
図3等と同じであり、同じ箇所には同じ符号を付して説明は省略する。
【0063】
即ち、容器本体20内で発生する蒸気は、
図9で矢印で示すように第1蓋蒸気開口62、第1パッキン開口68a、ケース下部空間73、ケース下部空間73の下方であって取手27内に上下方向に形成される第2蒸気通路80及び取手27の下部に形成される図示しない蒸気排出口の順で流れる。
【0064】
このような経路であっても蒸気経路は1経路であり、且つ沸騰検知手段までの経路長を短くできる。そのため、容器本体1内で発生する全蒸気が沸騰検知手段に早期に流れるため、沸騰初期の少ない蒸気での検知が可能になる。
【0065】
本願発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。