特許第5928191号(P5928191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928191
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20160519BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20160519BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20160519BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20160519BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160519BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/46
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61K8/34
   A61Q5/02
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-145595(P2012-145595)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9177(P2014-9177A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】柿澤 恭史
(72)【発明者】
【氏名】廣島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】青野 恵
(72)【発明者】
【氏名】廣畠 利江
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−057711(JP,A)
【文献】 特開2009−120638(JP,A)
【文献】 特開2001−233743(JP,A)
【文献】 特開2002−308725(JP,A)
【文献】 特開2002−047134(JP,A)
【文献】 特表2001−516703(JP,A)
【文献】 米国特許第05573756(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均分子量280420のポリエチレングリコール:6074質量%、
(B)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩:8〜15質量%
(C)カチオン化セルロース又はカチオン化グアーガム:0.1〜0.5質量%
(D)POE(10)メチルグルコシド又はPOE(20)メチルグルコシド:0.5〜5質量%、
(E)グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる多価アルコール:10〜15質量%を含有し、
(E)成分が、グリセリン又はグリセリンとプロピレングリコールとの併用の場合、(C)成分のカチオン化度は0.4〜1.3meq/gであり、
(E)成分が、プロピレングリコールの場合、(C)成分のカチオン化度が0.8〜1.0meq/gであり、
(D)/(C)で示される、(C)及び(D)成分の配合質量比が20であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
水の含有量が33質量%以下である請求項1記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
温感型シャンプーである請求項1又は2記載の毛髪洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温感効果を有し、すすぎ時の髪に滑らかさを与える毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーの機能として、余分な皮脂の除去が挙げられるが、皮脂を除去するためには頭皮を温めた方が効果的である。しかし、洗髪時に頭部にお湯をかけても頭皮温度はすぐに下がってしまい、詰まった毛穴の皮脂を充分に除去できない場合があった。このため、洗髪時に発熱して頭皮を温めるシャンプーが求められている。
【0003】
これまでに、発熱するインバス製品として、高濃度ポリエチレングリコール(PEG)の水和熱を利用した温熱タイプコンディショナーが提案されている。これは、PEGを溶媒としてカチオン界面活性剤及びヒドロキシプロピルセルロースで増粘させるというものである。
【0004】
しかし、PEGを用いた温感タイプの毛髪化粧料には、すすぎ時に髪がからまり、使用性が著しく悪いという欠点がある。すすぎ時の髪の絡まりや、きしみを防ぐ方法として、カチオン化セルロース等のカチオン化ポリマーを使用することが知られているが、PEGにカチオン化ポリマーは不溶であり、シャンプーとしての性能を充分に発揮することができていないのが現状であった。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−233743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、頭皮に温感を与え、更に充分な泡立ち、洗浄力を有し、しかもすすぎ時の髪の絡まりを防ぐことのできる毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は上記に加え、低温保存安定性にも優れた毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討し、まず、PEGを含む毛髪洗浄剤組成物に水を混合し、糖骨格を有する(セルロース系)カチオン性ポリマーの可溶化を試みたところ、多量の水を混合することで、糖骨格を有するカチオン性ポリマーを溶解させることはできるものの、温感を得るためにはPEGは50質量%以上でなければならず、また、このような系では糖骨格のカチオン性ポリマーはある程度分散するが、すぐに分離してしまうことがわかった。なお、非糖骨格のカチオン性ポリマーは、温感が得られるPEGが50質量%以上の系には不溶である。
【0008】
そこで、本発明者らは更に鋭意検討し、カチオン性ポリマーのPEGへの溶解性向上剤について検討したところ、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド、特には、メチルグルコース(MGL)のPOE付加物であるポリオキシエチレンメチルグルコースを配合することで、糖骨格を有するカチオン性ポリマーのPEGへの溶解が可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
なお、本発明において、温感とは、温度感覚であって、温かさを感じる感覚をいい、実施例における評点平均値が3.0点以上の場合をさす。
【0009】
従って、本発明は、下記毛髪洗浄剤組成物を提供する。
[1]
(A)平均分子量280420のポリエチレングリコール:6074質量%、
(B)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩:8〜15質量%
(C)カチオン化セルロース又はカチオン化グアーガム:0.1〜0.5質量%
(D)POE(10)メチルグルコシド又はPOE(20)メチルグルコシド:0.5〜5質量%、
(E)グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる多価アルコール:10〜15質量%を含有し、
(E)成分が、グリセリン又はグリセリンとプロピレングリコールとの併用の場合、(C)成分のカチオン化度は0.4〜1.3meq/gであり、
(E)成分が、プロピレングリコールの場合、(C)成分のカチオン化度が0.8〜1.0meq/gであり、
(D)/(C)で示される、(C)及び(D)成分の配合質量比が20であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
[2]
水の含有量が33質量%以下である[1]記載の毛髪洗浄剤組成物。

温感型シャンプーである[1]又は[2]記載の毛髪洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温感効果を有し、充分な泡立ちもあって、汚れ落ちがよく、すすぎ時の髪の滑らかさが改善された毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。また、本発明は、上記に加え、低温保存安定性にも優れた毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、
(A)平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、
(B)アニオン性界面活性剤、
(C)糖骨格を有するカチオン性ポリマー、
(D)ポリオキシアルキレンメチルグルコシド
を含有する。
【0012】
[(A)成分:ポリエチレングリコール]
本発明の(A)成分は、平均分子量190〜630のポリエチレングリコールであり、ポリエチレングリコールを配合することで、使用時に水和熱による発熱を起こし、洗浄中に頭皮に温熱を与えることができる。
ポリエチレングリコールは平均分子量が190〜630であれば特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、平均分子量190〜210のポリエチレングリコール200、平均分子量280〜320のポリエチレングリコール300、平均分子量380〜420のポリエチレングリコール400、平均分子量570〜630のポリエチレングリコール600が挙げられる。商品によっては、例えば、ポリエチレングリコール200は、ポリエチレングリコール#200等のように、ポリエチレングリコールと数値との間に#がつく場合がある。
【0013】
これらの中でも、カチオン性ポリマーの溶解性、塗布時の温かさの点から、平均分子量は280〜420がより好ましく、具体的にはポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400がより好ましい。平均分子量を上記範囲内にすることで、より温感が得られ、カチオン性ポリマーの溶解性もよりよくなる。
【0014】
本発明において、ポリエチレングリコールの平均分子量の測定は、医薬部外品原料規格2006(薬事日報社)収載のポリエチレングリコール200の試験法(p1378)を準用する。すなわち、無水フタル酸42gを取り、新たに蒸留したピリジン300mLを正確に量って入れた1Lの遮光した共栓びんに加え、強く振り混ぜて溶かした後、16時間以上放置する。この液25mLを正確に量り、約200mLの耐圧共栓びんに入れ、これにポリエチレングリコール約0.8gを精密に量って加え、密栓し、98℃±2℃に加熱した水浴中に入れる。98℃±2℃で30分間保った後、水浴からびんを取り出し、室温になるまで空気中に放置する。次に、0.5N水酸化ナトリウム溶液50mLを正確に加え、この液につき、0.5N水酸化ナトリウム溶液で滴定する。このときの指示薬はフェノールフタレイン・ピリジン溶液(1→100)を5滴用いる。ただし、滴定の終点は液が15秒間持続する淡赤色を呈するときとする。同様の方法で空試験をする。
【0015】
得られた値を下記式にあてはめ、平均分子量を算出する。
平均分子量={試料の量(g)×4000}/(a−b)
ただし、a:空試験における0.5N水酸化ナトリウム溶液の消費量(mL)
b:試料の試験における0.5N水酸化ナトリウム溶液の消費量(mL)
【0016】
(A)成分のポリエチレングリコールの配合量は、毛髪洗浄剤組成物中に50〜80質量%であり、好ましくは60〜74質量%である。50質量%未満では、塗布時の温かさが得られず、80質量%を超えると、後述する(C)成分の糖骨格を有するカチオン性ポリマーの溶解性が低下し、すすぎ時の滑らかさが低下する。
【0017】
[(B)成分:アニオン性界面活性剤]
本発明の(B)成分はアニオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。アニオン性界面活性剤は、頭皮の余分な皮脂を取り除き、余分な皮脂の汚れを除去する。
【0018】
(B)アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルメチルアラニン塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、泡立ちの良さ、汚れ落ちの良さの点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩中のアルキル基としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基が好ましい。またアルキレン基部分は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、特にポリオキシエチレン基が好ましい。また、好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩中の総平均付加モル数の範囲は2〜4である。これらの対イオンとしては、例えば、ナトリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられ、これらの中で、ナトリウムが好ましい。
【0020】
(B)アニオン性界面活性剤の配合量は、毛髪洗浄剤組成物中、泡立ちの良さ、汚れ落ちの良さの点から、5〜20質量%が好ましく、より好ましくは8〜15質量%である。上記範囲内にすることで、泡立ち、汚れ落ちがより良くなり、(C)成分の溶解性もより良好となる。
【0021】
[(C)成分:糖骨格を有するカチオン性ポリマー]
(C)成分は、糖骨格を有するカチオン性ポリマーである。(A)ポリエチレングリコールは貧溶媒であるため、通常ポリエチレングリコールにイオン性ポリマーは溶解しない。しかし、本発明においては、本来溶解しないポリエチレングリコールに対して不溶の(C)成分が、(D)成分と組み合わせることで溶解できるようになる点に意義がある。
【0022】
(C)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、具体的には、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(カチオン化セルロース)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム(カチオン化グァーガム)、カチオン化デンプン、カチオン化タマリンドガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム等が挙げられる。
【0023】
これらのカチオン性ポリマーは市販品を用いることができ、例えば、カチオン化セルロースとしては、レオガードシリーズ(GP、KGP、LP、MGP、MLP(ライオン(株)製))、Ucare polymerシリーズ(JR−125、JR−400、JR−30M、LR−400、LR−30M(ダウケミカル社製))、カチナールシリーズ(HC−100、HC−200、LC−100、LC−200(東邦化学工業社製))等が好ましい。
カチオン化グァーガムには透明に溶解するものと、透明になりにくいグレードがあり、透明になるタイプであるラボールガムCG−M8M(大日本住友製薬社製)、ジャガーエクセル(ローディア社製)が最も適している。
カチオン化デンプンとしては、センサマーCI−50(ナルコジャパン(株)製)等が挙げられる。
カチオン化タマリンドガムとしてはカチナールCTM−200S(東邦化学工業社製)、カチオン化フェヌグリークガムとしてはカチナールCF−100、カチナールCF−200(東邦化学工業社製)、カチオン化タラガムとしてはカチナールCTR−100、カチナールCTR−200(東邦化学工業社製)、カチオン化ローカストビーンガムとしてはカチナールCL−200(東邦化学工業社製)等がそれぞれ挙げられる。
【0024】
これらの中で、特に、すすぎ時の滑らかさ、カチオン性ポリマーの溶解性の点から、カチオン化セルロースが好ましく、具体的には、レオガードGP(カチオン化度:1.2meq/g、重量平均分子量:40万)、レオガードMLP(カチオン化度:0.4meq/g、重量平均分子量:120万)、カチナールHC−100(カチオン化度:1.3meq/g、重量平均分子量:40万)、カチナールHC−200(カチオン化度:1.3meq/g、重量平均分子量:100万)、カチナールLC−100(カチオン化度:0.8meq/g、重量平均分子量:40万)、カチナールLC−200(カチオン化度:1.0meq/g、重量平均分子量:100万)が好ましい。
【0025】
(C)成分のカチオン化度は、0.4〜1.3meq/gが好ましく、すすぎ時の滑らかさ、低温安定性の点から、特に、0.8〜1.0meq/gがより好ましい。0.4meq/g未満及び1.3meq/gを超えると、すすぎ時の滑らかさ、低温安定性が悪くなる場合がある。
なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン化度は、下記式より求めた。カチオン化度の単位であるmeq/gとは試料1g当たりのカチオン基のミリ当量数を示す。
カチオン化度(meq/g)
=(高分子化合物1g中のカチオン化グルコースユニットのモル数)×1000
高分子化合物1g中のカチオン化グルコースユニットのモル数
=(高分子化合物中の窒素含量)/(Nの原子量)
【0026】
なお、カチオン性ポリマーのカチオン化度は、化学構造が明瞭であれば簡単に計算することができるが、モノマー比率等の構造が不明な場合であっても、ケルダール法等のN含量の測定値から計算することができる。本発明で示したカチオン化度は、ケルダール法である化粧品原料基準の一般試験法の窒素定量法第2法で測定した値を基に算出した。
【0027】
(C)成分の重量平均分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、溶解性、すすぎ時の滑らかさの点から30万〜200万がより好ましい。上記範囲内とすることで、すすぎ時の滑らかさがより良くなり、乾燥後の髪のパサついた感触をより抑えることができ、毛髪洗浄剤組成物中への溶解も良く、組成物の保存安定性も良好となる。
なお、本発明において、重量平均分子量の測定方法は、静的光散乱測定による。すなわち、希釈した高分子水溶液の示唆屈折率計を用いた濃度−示唆屈折率曲線と、散乱強度測定装置を用いて散乱強度の濃度−角度依存性を測定し、Zimmプロットの濃度0、角度0に外挿することにより重量平均分子量を測定することができる。
【0028】
(C)成分の含有量は特に限定されないが、毛髪洗浄剤組成物中0.04〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。上記範囲内とすることで、すすぎ時の滑らかさ、泡立ちがより良くなり、(C)成分の溶解性もより良好となる。
【0029】
[(D)成分:ポリオキシアルキレンメチルグルコシド]
(D)成分のポリオキシアルキレンメチルグルコシドとしては、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、アルキレン基がエチレン基又はプロピレン基が好ましく、ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は、特に限定されないが、(C)成分のカチオン性ポリマーの溶解性の点から、10〜20が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン(10〜20)メチルグルコシド、ポリオキシプロピレン(10〜20)メチルグルコシド等を例示することができる。好適な(D)成分としては、泡質に悪影響を及ぼすことなく、(C)成分の溶解性、洗浄後の肌にしっとりとした潤い感を付与する観点から、ポリオキシエチレン(10〜20)メチルグルコシドを用いることが好ましい。
【0030】
上記(D)成分は、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−10E、ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−20E、ポリオキシプロピレン(10)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−10P、ポリオキシプロピレン(20)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−20P(商品名,何れも日油(株)製)等を例示することができる。なお、( )内の数値は、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
これらの中でも、カチオン性ポリマーの溶解性の点から、ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−10E、ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド:マクビオブライドMG−20Eが好ましい。
【0031】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、しっとりとした潤い感を付与する観点から、毛髪洗浄剤組成物中0.3〜10質量%が好ましく、より好ましくは、泡立ちの良さの点から0.5〜5質量%、特に1〜5質量%である。上記範囲内とすることで、カチオン性ポリマーの溶解性がより良く、すすぎ時の滑らかさがより良好となり、泡立ち、汚れ落ちをより良くすることができる。
【0032】
ここで、(C)糖骨格を有するカチオン性ポリマーと(D)ポリオキシアルキレンメチルグルコシドとの配合割合は、(C)成分の溶解性や安定化、泡立ちの良さの点から、(D)/(C)=0.5〜30であり、より好ましくは1〜20である。0.5未満では充分なカチオン性ポリマーの溶解性が得られず、すすぎ時の滑らかさが低下し、30を超えると泡立ちの良さ、すすぎ時の滑らかさが悪くなる。
【0033】
[(E)成分:(A)成分以外の多価アルコール]
本発明の毛髪洗浄剤組成物には、上記成分に加え、更に(E)(A)成分以外の多価アルコールを配合することができる。(E)成分を配合することで(D)成分の溶解性、温感をより向上させ、良好な低温安定性を得ることができる。(A)成分以外の多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、トレハロース等が挙げられる。本発明では、これらの成分のうち1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができるが、特に、塗布時の温かさ、(C)成分の溶解性、低温安定性の点から、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールが好ましく、特に、低温安定性、温感の持続の点から、グリセリンがより好ましい。
【0034】
(E)成分の含有量は、特に限定されないが、塗布時の温かさ、(C)成分の溶解性の点から、毛髪洗浄剤組成物中に1〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましく、塗布時の温かさの点から、10〜15質量%が更に好ましい。上記範囲であればカチオン性ポリマーを充分に溶解してすすぎ時のなめらかさを付与でき、温感効果も得ることができる。
【0035】
[その他の成分]
また、本発明の毛髪洗浄剤組成物には、前記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪洗浄剤組成物に用いられる成分を用いることができる。例えば、すすぎ時の滑らかさや泡立ちの点からカルボキシベタイン型両性活性剤を毛髪洗浄剤組成物中1〜10質量%、特に2〜5質量%用いることが好ましい。また、可溶化剤として、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、カチオン界面活性剤、(D)成分以外のラウリン酸ポリグリセリル等の非イオン性界面活性剤、油分、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤、クエン酸、EDTA等のキレート剤、ジイソステアリン酸エチレングリコールや魚鱗、雲母片等の白濁剤、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の殺菌剤、色素、防腐・防黴剤、清涼剤、香料・香料組成物等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0036】
本発明においては、ポリエチレングリコールによる温感を充分に得て、カチオン性ポリマーの溶解性をより向上させるために、水の含有量は毛髪洗浄剤組成物中に33質量%以下、特に23質量%以下とすることが好ましい。下限値は特に制限されず、含有しなくてもよいが、カチオン性ポリマーの溶解性の点から2.5質量%以上が好ましい。
【0037】
本発明の毛髪洗浄剤組成物の25℃でのpH(精製水で10倍希釈)は、6〜9が好ましく、6.5〜8がより好ましい。なお、本発明において、pHの測定は、pHメーターHM−30V(東亜ディーケーケー(株)製)を用いて測定することができ、pHの調整は、クエン酸、水酸化カリウム等のpH調整剤を用いることができる。
【0038】
また、本発明の毛髪洗浄剤組成物の25℃での粘度は0.2〜7Pa・s、特に0.5〜6Pa・sの範囲が好ましい。なお、本発明において、粘度の測定は、BM型粘度計(ローターNo.3、30回転/20秒)により行うことができる。
【0039】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、シャンプー、リンスインシャンプー、コンディショニングシャンプー、トリートメントインシャンプー等に幅広く利用でき、温感効果を有するため、特に温感型シャンプー、温感型リンスインシャンプー、温感型コンディショニングシャンプー、温感型トリートメントインシャンプーとして用いることができ、特に頭皮を温めることで洗浄力が向上し、すすぎ時のきしみも抑えることができることから温感型シャンプーが好ましく、これらは常法に従って調製することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0041】
[実施例1〜4、参考例1〜37及び比較例1〜19]
下記表に示す毛髪洗浄剤組成物(シャンプー)を以下のように調製した。(A)、(B)、(D)成分、及び香料以外の共通成分を80℃に加温して溶解した。溶解後、攪拌しながら(C)成分を添加し、冷却後、香料を添加した。得られた毛髪洗浄剤組成物について下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0042】
糖骨格を有するカチオン性ポリマーの溶解性
<評価方法>
高さ8cm、口径3cmの硬質透明ガラス瓶(容量55mL)に毛髪洗浄剤組成物を50mL充填し、25℃に静置した後、外観を目視で評価した。
<評価基準>
◎:透明である
◎〜○:殆ど透明である
○:僅かに白濁している
△:白濁している
×:析出物がある
【0043】
使用感の評価
「塗布時の温かさ」、「泡立ちの良さ」、「汚れ落ちの良さ」、「すすぎ時の滑らかさ」は、被験者10名が、下記表の毛髪洗浄剤組成物を使用して評価した。ポンプ容器(内容量500mL、吐出量3mL)に毛髪洗浄剤組成物を充填し、42℃の水道水で7L/分の流速で髪の予洗を30秒行った後、水で濡らした手のひらに試料約6mLをとり、頭髪に両手で延ばして泡立て、「塗布時の温かさ」「泡立ちの良さ」を評価した。更に、42℃、7L/分の水道水ですすぎを行い、「汚れ落ちの良さ」「すすぎ時の滑らかさ」を評価した。
評価は、下記に示す評価基準に基づいて5段階の評点を付け、各サンプルの評点の平均値をとり、下記判定基準に準拠して行った。
【0044】
「塗布時の温かさ」
<評価基準>
5点:温感を非常に感じる
4点:温感を感じる
3点:温感をやや感じる
2点:温感をやや感じない
1点:温感を感じない
【0045】
「泡立ちの良さ」
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:やや良い
2点:やや悪い
1点:悪い
【0046】
「汚れ落ちの良さ」
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:やや良い
2点:やや悪い
1点:悪い
【0047】
「すすぎ時の滑らかさ」
<評価基準>
5点:非常に滑らかである
4点:滑らかである
3点:やや滑らかである
2点:やや滑らかでない
1点:滑らかでない
【0048】
<評点平均値の判定基準>
◎ : 4.5点〜5点
◎〜〇: 4.0点〜4.5点未満
○ : 3.0点〜4.0点未満
△ : 2.0点〜3.0点未満
× : 2.0点未満
【0049】
低温安定性(−5℃)
高さ8cm、口径3cmの硬質透明ガラス瓶(容量55mL)に毛髪洗浄剤組成物を50mL充填し、−5℃に1ケ月間保存した後、外観を目視で評価した。
<評価基準>
◎:透明である
◎〜○:殆ど透明である
○:僅かに白濁しているが、析出物はない
△:白濁しているが、析出物はない
×:析出物がある
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
実施例及び比較例で使用した原料を下記に示す。
*1:PEG#300K(ライオン(株))
*2:PEG#200K(ライオン(株))
*3:PEG#600K(ライオン(株))
*4:シノリンSPE−1250(新日本理化(株))
*5:シノリンSPE−1250をステンレスバットに取り、真空乾燥機(50℃)にて乾燥し、純分量を80%に濃縮した。
*6:アルスコープA−225B(東邦化学(株))をステンレスバットに取り、真空乾燥機(50℃)にて乾燥し、純分量を70%に濃縮した。
*7:アミライトGCK−11(味の素(株))
*8:アラノンALA(川研ファインケミカル(株))
*9:レオガードGP(ライオン(株))
*10:センサマーCI−50(ナルコジャパン(株))
*11:ラポールガムCG−M(DSP五協フード&ケミカル(株))
*12:マーコート2001(ナルコジャパン(株))
*13:マーコート2003(ナルコジャパン(株))
*14:マーコート100(ナルコジャパン(株))
*15:マーコート550(ナルコジャパン(株))
*16:マーコート280(ナルコジャパン(株))
*17:マーコートプラス3330(ナルコジャパン(株))
*18:マクビオブライドMG−10E(日油(株))
*19:マクビオブライドMG−20E(日油(株))
*20:マクビオブライドMG−10P(日油(株))
*21:マクビオブライドMG−20P(日油(株))
*22:ウィルブライドS−753(日油(株))
*23:ユニルーブDGP−700(日油(株))
*24:ユニオールHS−1600D(日油(株))
*25:PLANTACARE2000UP(コグニスジャパン(株))
*26:エナジコールL−30B(ライオン(株))
*27:エナジコールL−30Bをステンレスバットに取り、真空乾燥機(50℃)にて乾燥し、純分量を90%に濃縮した。
*28:HPC−H(日本曹達(株))
*29:レオガードMLP(ライオン(株))
*30:カチナールLC−100(東邦化学(株))
*31:濃グリセリン(坂本薬品工業(株))
*32:ジグリセリン(坂本薬品工業(株))
*33:化粧品用プロピレングリコール((株)アデカ)