特許第5928198号(P5928198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928198
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】電子楽器の鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20160519BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   G10H1/34
   G10B3/12 130
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-148155(P2012-148155)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-10374(P2014-10374A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168756
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 元彦
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】市来 俊介
(72)【発明者】
【氏名】播本 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 信
【審査官】 間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−41081(JP,A)
【文献】 特開平4−347895(JP,A)
【文献】 特開2004−252246(JP,A)
【文献】 特開2005−275167(JP,A)
【文献】 特開平9−134164(JP,A)
【文献】 特開2001−236056(JP,A)
【文献】 特開平8−44345(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/088106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 1/00−3/22
G10C 1/00−9/00
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者の押離鍵操作によって前端が上下方向に揺動するように鍵支点部にてそれぞれ支持され、側面と上面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の白鍵、及び下側の側面と前記下側の側面に対して内側に傾斜した上側の側面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の黒鍵であって、前記押離鍵操作される操作部と、下方へ延設された駆動部をそれぞれ有していて、前記操作部の前端から前記鍵支点部までの距離を互いに異ならせた複数の白鍵及び複数の黒鍵と、
前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の駆動部に係合する係合部をそれぞれ有していて、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動に連動して揺動するようにハンマー支点部にてそれぞれ支持された複数のハンマーと、
前記複数のハンマーの揺動を規制して、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動範囲を規定する規制部材とを備えた鍵盤装置において、
前記複数の白鍵及び複数の黒鍵のうちの白鍵同士又は黒鍵同士である第1の鍵及び第2の鍵の駆動部の上下方向の長さを共通とし、
前記第1の鍵に係合している第1のハンマーのハンマー支点部の前後方向及び上下方向の位置と、前記第2の鍵に係合している第2のハンマーのハンマー支点部の前後方向及び上下方向の位置とをそれぞれ共通とし、
前記第1の鍵及び前記第2の鍵の離鍵状態において前記第1の鍵及び前記第2の鍵の操作部の前端の上下方向の位置が同一となるように、前記第1の鍵と前記第1のハンマーとの係合点の上下方向の位置及び前記第2の鍵と前記第2のハンマーとの係合点の上下方向の位置を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記規制部材は、前記第1の鍵及び前記第2の鍵の前端の上方への移動を規制する上限ストッパを備え、
前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の位置を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定することにより、前記第1の鍵及び前記第2の鍵の離鍵状態における前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーの揺動角度を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた角度にそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーは、前記上限ストッパに当接する当接部をそれぞれ備え、
前記当接部は、前後方向に延設された当接面を有し、
前記当接面は、前記第1の鍵及び前記第2の鍵の離鍵状態において前記上限ストッパの設置面に対して傾斜しており、
前記第1のハンマーの前記当接部に対する前記上限ストッパの前後方向の位置及び前記第2のハンマーの前記当接部に対する前記上限ストッパの前後方向の位置を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定することにより、前記第1のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の上下方向の位置と、前記第2のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の上下方向の位置とを共通に設定し、かつ前記第1のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の前後方向の位置及び前記第2のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の前後方向の位置を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記複数の白鍵の駆動部は、前記複数の白鍵の操作部の前端よりも後方に設けられ、
前記複数の黒鍵の駆動部は、前記複数の黒鍵の操作部の前端よりも前方に設けられ、
前記白鍵に係合しているハンマーの前記当接面の傾斜方向と、前記黒鍵に係合しているハンマーの前記当接面の傾斜方向とが逆方向であることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーにそれぞれ当接する前記上限ストッパの厚さを、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた厚さに設定することにより、前記第1のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の上下方向の位置及び前記第2のハンマーと前記上限ストッパとの当接点の上下方向の位置を、前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーの係合部は、ベース部材及び前記ベース部材に組み付けられたスペーサをそれぞれ備え、
前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じて、前記スペーサの厚さをそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーは、前後方向中間部にて曲げ加工されて、上下方向に湾曲しており、
前記第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び前記第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じて、前記第1のハンマー及び前記第2のハンマーの曲げ加工における曲げ量をそれぞれ設定したことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1の鍵の稜線を含む平面と前記第1の鍵の鍵支点部との距離を、前記第2の鍵の稜線を含む平面と前記第2の鍵の鍵支点部との距離と同一にしたことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1の鍵及び前記第2の鍵の鍵支点部の上下方向の位置を同一としたことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1の鍵及び前記第2の鍵は、隣接する白鍵であって、
前記第1の鍵、前記第2の鍵、及び前記第1の鍵と前記第2の鍵との間に位置する黒鍵の離鍵状態において、前記黒鍵の稜線が、前記第1の鍵の上面と前記第2の鍵の上面の間に位置していることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記第1の鍵及び前記第2の鍵は、隣接する白鍵であって、
前記第1の鍵、前記第2の鍵、及び前記第1の鍵と前記第2の鍵との間に位置する黒鍵が押鍵されて、前記第1の鍵、前記第2の鍵及び前記黒鍵の揺動が規制された状態において、前記黒鍵の稜線が、前記第1の鍵の上面及び前記第2の鍵の上面よりも下方に位置していることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子オルガン、電子ピアノなどの電子楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているように、アコースティックピアノの鍵タッチ感(押離鍵操作に対する反力)を模擬するために、割り当てられた音高が高い鍵ほど、鍵の前端の鍵タッチ感を軽くした電子楽器の鍵盤装置は知られている。この鍵盤装置においては、鍵にそれぞれ係合して揺動し、それぞれの鍵の押離鍵操作に対する反力を付与する複数のハンマーを備えている。この複数のハンマーは、共通部品である。そして、低音部の鍵から高音部の鍵に向かうに従って、後端部に設けられた鍵の回動支点から鍵の前端までの長さを徐々に長くしている。また、低音部から高音部へ向かうに従って、ハンマーの回動支点の位置を徐々に後方へずらして、鍵の回動支点から、ハンマーと鍵との係合位置までの距離を全ての鍵について同一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3074794号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の鍵盤装置は、鍵の上方への変位を規制する上限ストッパが鍵の前端(演奏者側の端部)より後方に設けられている。そして、鍵の下面から下方へ延設された係合部が上限ストッパに当接する。また、離鍵状態では、鍵は前端側よりも後端側が低くなるように傾斜している。したがって、前記係合部の上下方向の長さが複数の鍵について共通であれば、離鍵状態では、前記複数の鍵の上面のうち、上限ストッパの当接点の直上付近に位置する部分の高さが同一となる。そして、短い鍵ほど離鍵状態における鍵の傾斜角度が大きいので、前記複数の鍵のうちの短い鍵ほど、その前端の位置が高い。このように、上記従来の鍵盤装置では、その外観については考慮されていない。
【0005】
また、上記従来の鍵盤装置は、鍵の上方への変位を規制する下限ストッパも、鍵の前端よりも後方に設けられている。そして、前記係合部の下面が下限ストッパに当接する。したがって、前記複数の鍵のうちの短い鍵ほど、鍵の前端の揺動範囲が大きい。また、ハンマーは、前記係合部よりも後方にて鍵に係合している。そして、短い鍵のハンマーほどその支点部が前記係合部に近い。そのため、短い鍵に係合するハンマーほど、離鍵状態において鍵に当接する位置が高い。したがって、短い鍵に係合するハンマーほど、鍵に連動して揺動する範囲が大きい。上記従来の鍵盤装置では、ハンマーが鍵から離れて揺動可能であるが、上記のように、ハンマーが鍵の揺動に連動して揺動する範囲が、係合する鍵の長さによって異なるので、ハンマーが鍵から離れるタイミング(又は、押鍵深さ)は鍵の長さによって異なる。このハンマーが鍵から離れるタイミングの違いは、鍵タッチ感に影響を与えると考えられるが、上記従来の鍵盤装置では、この点については考慮されていない。
【0006】
本発明は上記従来の鍵盤装置の問題のうち、特に鍵盤装置の外観に関する問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、鍵の支点の位置を異ならせてアコースティックピアノの鍵盤装置の鍵タッチ感及び外観を模擬した電子楽器の鍵盤装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、演奏者の押離鍵操作によって前端が上下方向に揺動するように鍵支点部(Kw,13w1,Kb,13b1)にてそれぞれ支持され、側面と上面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の白鍵、及び下側の側面と前記下側の側面に対して内側に傾斜した上側の側面との交差部にて前後方向に延びる稜線が形成されている複数の黒鍵であって、前記押離鍵操作される操作部と、下方へ延設された駆動部(11w1,11b1)をそれぞれ有していて、操作部の前端から鍵支点部までの距離を互いに異ならせた複数の白鍵及び複数の黒鍵(11w,11b)と、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の駆動部に係合する係合部をそれぞれ有していて、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動に連動して揺動するようにハンマー支点部(Hw,18w1,Hb,18b1)にてそれぞれ支持された複数のハンマー(16w,16b)と、前記複数のハンマーの揺動を規制して、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵の揺動範囲を規定する規制部材(20,21,21A)とを備えた鍵盤装置において、前記複数の白鍵及び複数の黒鍵のうちの白鍵同士又は黒鍵同士である第1の鍵及び第2の鍵の駆動部の上下方向の長さを共通とし、第1の鍵に係合している第1のハンマーのハンマー支点部の前後方向及び上下方向の位置と、第2の鍵に係合している第2のハンマーのハンマー支点部の前後方向及び上下方向の位置とをそれぞれ共通とし、第1の鍵及び第2の鍵の離鍵状態において第1の鍵及び第2の鍵の操作部の前端の上下方向の位置が同一となるように、第1の鍵と第1のハンマーとの係合点の上下方向の位置及び第2の鍵と第2のハンマーとの係合点の上下方向の位置を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定したことにある。なお、規制部材によってハンマーを制動する制動力が、鍵とハンマーとの係合部を介して伝達されている状態においては、実質的にハンマーの規制部材によって、鍵の揺動が規制されている状態とみなす。また、離鍵状態とは、鍵の操作部の前端の上方への変位が規制されている状態である。
【0008】
この場合、規制部材は、第1の鍵及び第2の鍵の前端の上方への揺動を規制する上限ストッパ(21,21A)を備え、第1のハンマー及び第2のハンマーと上限ストッパとの当接点の位置を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定することにより、第1の鍵及び第2の鍵の離鍵状態における第1のハンマー及び第2のハンマーの揺動角度を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた角度にそれぞれ設定するとよい。
【0009】
また、この場合、第1のハンマー及び第2のハンマーは、上限ストッパに当接する当接部(16w3,16b3)をそれぞれ備え、当接部は、前後方向に延設された当接面を有し、当接面は、第1の鍵及び第2の鍵の離鍵状態において上限ストッパの設置面(FR)に対して傾斜しており、第1のハンマーの当接部に対する上限ストッパの前後方向の位置及び第2のハンマーの当接部に対する上限ストッパの前後方向の位置を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定することにより、第1のハンマーと上限ストッパとの当接点の上下方向の位置と、第2のハンマーと上限ストッパとの当接点の上下方向の位置とを共通に設定し、かつ第1のハンマーと上限ストッパとの当接点の前後方向の位置及び第2のハンマーと上限ストッパとの当接点の前後方向の位置を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定とよい。
【0010】
さらに、この場合、前記複数の白鍵の駆動部は、前記複数の白鍵の操作部の前端よりも後方に設けられ、前記複数の黒鍵の駆動部は、前記複数の黒鍵の操作部の前端よりも前方に設けられ、前記白鍵に係合しているハンマーの前記当接面の傾斜方向と、前記黒鍵に係合しているハンマーの前記当接面の傾斜方向とが逆方向であるとよい。
【0011】
また、この場合、第1のハンマー及び第2のハンマーにそれぞれ当接する上限ストッパ(21A)の厚さを、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた厚さに設定することにより、第1のハンマーと上限ストッパとの当接点の上下方向の位置及び第2のハンマーと上限ストッパとの当接点の上下方向の位置を、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じた位置にそれぞれ設定するとよい。
【0012】
また、この場合、第1のハンマー及び第2のハンマーの係合部は、ベース部材(Fw1,Fw2,Fb1,Fb2)及びベース部材に組み付けられたスペーサ(SP)をそれぞれ備え、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じて、スペーサの厚さをそれぞれ設定するとよい。
【0013】
また、この場合、第1のハンマー及び第2のハンマーは、前後方向中間部にて曲げ加工されて、上下方向に湾曲しており、第1の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離及び第2の鍵の操作部の前端から鍵支点部までの距離に応じて、第1のハンマー及び第2のハンマーの曲げ加工における曲げ量をそれぞれ設定するとよい。
【0014】
また、この場合、第1の鍵及び第2の鍵は、隣接する白鍵であって、第1の鍵、第2の鍵、及び第1の鍵と第2の鍵との間に位置する黒鍵の離鍵状態において、黒鍵の稜線が、第1の鍵の上面と第2の鍵の上面の間に位置しているとよい。
【0015】
また、この場合、第1の鍵及び第2の鍵は、隣接する白鍵であって、第1の鍵、第2の鍵、及び第1の鍵と第2の鍵との間に位置する黒鍵が押鍵されて、第1の鍵、第2の鍵及び黒鍵の揺動が規制された状態において、黒鍵の稜線が、第1の鍵の上面及び第2の鍵の上面よりも下方に位置しているとよい。なお、上記の揺動が規制された状態とは、例えば、白鍵の前端部と黒鍵の前端部に同一の荷重を印加して、鍵の揺動が規制されている状態である。また、本発明には、黒鍵の稜線のうちの前端側の一部分が、第1の鍵の上面及び第2の鍵の上面よりも下方に位置している場合も含まれる。
【0016】
本発明によれば、鍵の長さに応じて、離鍵状態におけるハンマーの揺動角度を異ならせること、ベース部材に組み付けるスペーサの厚さを異ならせること、ハンマーの曲げ加工における曲げ量を異ならせることなどにより、離鍵状態における鍵とハンマーとの係合点の上下方向の位置を異ならせて、離鍵状態における第1の鍵及び第2の鍵の前端の高さを揃えることができる。これにより、離鍵状態におけるアコースティックピアノの鍵盤装置の外観を模擬できる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、第1の鍵の稜線を含む平面と第1の鍵の鍵支点部との距離を、第2の鍵の稜線を含む平面と第2の鍵の鍵支点部との距離と同一にしたことにある。この場合、第1の鍵及び第2の鍵の鍵支点部の上下方向の位置を同一にするとよい。これによれば、鍵の長さ以外に関する部位を出来るだけ共通化することができる。また、鍵を支持する支持部材(フレーム)の設計が簡単である。また、支持部材を加工し易く、精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の平面図である。
図2図1の鍵盤装置の低音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図3図1の鍵盤装置の高音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図4図1の鍵盤装置の低音部側の黒鍵に関する構成を示す右側面図である。
図5図1の鍵盤装置の高音部側の黒鍵に関する構成を示す右側面図である。
図6】音高と質量体の質量との関係を示す特性曲線図である。
図7】音高と鍵タッチとの関係を示す特性曲線図である。
図8】本発明の変形例に係る鍵盤装置の平面図である。
図9図8の鍵盤装置の低音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図10図8の鍵盤装置の低音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図11図8の鍵盤装置の低音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図12図8の鍵盤装置の低音部側の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図13】本発明の他の変形例に係る鍵盤装置の白鍵に関する構成を示す右側面図である。
図14】本発明の他の変形例に係る鍵盤装置の黒鍵に関する構成を示す右側面図である。
図15】本発明の他の変形例に係り、係合部周辺を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。以下の説明では、演奏者に近い側を「前側」とし、演奏者から遠い側を「後側」とする。また、高音部側を「右側」とし、低音部側を「左側」とする。
【0020】
この鍵盤装置は、図1に示すように、複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bを有している。この複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bには、互いに異なる音高がそれぞれ割り当てられている。本実施形態においては、白鍵11wには、「C3」、「D3」・・・「C6」のうちのいずれか1つの音高がそれぞれ割り当てられており、黒鍵11bには、「C#3」、「D#3」・・・「B#5」のうちのいずれか1つの音高がそれぞれ割り当てられている。白鍵11w及び黒鍵11bは、それぞれ合成樹脂によって長尺状に一体成型されている。低音部の白鍵11wから高音部の白鍵11wに向かうに従って、白鍵11wの長さを徐々に短くし、低音部の黒鍵11bから高音部の黒鍵11bに向かうに従って、黒鍵11bの長さを徐々に短くしている。なお、黒鍵11bの後端の位置は、隣り合う白鍵11wの後端よりも後方に位置している。
【0021】
割り当てられた音高が異なる白鍵11wは、前後方向の長さが異なっているが、他の構成は同様である。また、割り当てられた音高が異なる黒鍵11bは、前後方向の長さが異なっているが、他の構成は同様である。図2乃至図5に示すように、白鍵11wは、黒鍵11bに比べて、上下方向の幅が小さく、左右方向の幅が大きい。白鍵11w及び黒鍵11bは、前後方向に延設された薄肉の上壁及び上壁の左右端からそれぞれ下方へ延設された薄肉の側壁を有し、下方に開放した中空状に形成されている。
【0022】
また、白鍵11w及び黒鍵11bの側壁の後部には、それぞれ対向する貫通孔Kw及び貫通孔Kbが設けられている。貫通孔Kw及び貫通孔Kbから、それぞれの鍵の後端までの距離は、全ての鍵について同一である。そして、白鍵11w及び黒鍵11bは、貫通孔Kw及び貫通孔Kbにて、後述する鍵フレーム12の鍵支持部13w及び鍵支持部13bによって支持されている。離鍵状態において、白鍵11w及び黒鍵11bは、前端よりも後端が低くなるように傾斜している。なお、この鍵盤装置が電子楽器の筐体に組み付けられたとき、白鍵11wの後端部は、電子楽器の筐体の内側に入り込んでいる。この筐体の内側に入り込む部分よりも前方の部分を白鍵11wの見え掛り部と言う。また、白鍵11wの側面と上面とが交差する部分には稜線が形成されている。また、黒鍵11bが押鍵されておらず、かつ隣り合う白鍵11wが押鍵されていない状態において、前記黒鍵11bは、前記白鍵11wの上面よりも上方に突出した部分を有する。この突出した部分を黒鍵11bの見え掛り部という。また、黒鍵11bの見え掛り部よりも下方の部分を本体部という。演奏者は、白鍵11w及び黒鍵11bの見え掛り部を押離鍵操作する。すなわち、見え掛り部が本発明の操作部に相当する。黒鍵11bの見え掛り部は、上端部ほど左右方向の幅が狭くなっており、本体部の左右方向の幅は一定である。すなわち、見え掛り部の側面は、本体部の側面に対して内側に傾斜している。黒鍵11bの見え掛り部と本体部の境界部には、稜線Rが形成されている(図4及び図5参照)。
【0023】
鍵フレーム12は、前後方向及び左右方向に延設された上板部12aを有する。上板部12aの低音部側の前端と高音部側の前端の位置は同一であるが、低音部側の後端は、高音部側の後端よりも後方に位置している。また、鍵フレーム12は、上板部12aの前端から下方へ垂直に延設された前板部12b、前板部12bの下端から前方へ水平に延設された底板部12c、底板部12cの前端から上方へ垂直に延設された前板部12dを有する。また、鍵フレーム12は、上板部12aの後端から下方へ垂直に延設された後板部12e及び後板部12eの下端から後方へ水平に延設された底板部12fを有する。底板部12cの下面の高さと底板部12fの下面の高さは同じであり、底板部12cの下面と底板部12fの下面を電子楽器のフレームFRに当接させて固定することにより、この鍵盤装置が、電子楽器のフレームFRに支持される。上記の鍵支持部13w及び鍵支持部13bは、上板部12aの上面から上方へ突出するように形成されている。鍵支持部13bは、隣り合う鍵支持部13wよりも後方に位置している。鍵支持部13w及び鍵支持部13bは、それぞれ対向する2枚の板状に形成されていて、内側に対向する突出部13w1及び突出部13b1をそれぞれ備えている。突出部13w1及び突出部13b1は、貫通孔Kw及び貫通孔Kbに嵌合している。これにより、白鍵11w及び黒鍵11bは、突出部13w1及び突出部13b1回りに回転可能にそれぞれ支持され、貫通孔Kw及び貫通孔Kb並びに突出部13w1及び突出部13b1の中心軸を揺動中心として、前端部が上下方向にそれぞれ揺動可能となっている。突出部13w1及び突出部13b1の上下方向の位置は、全ての鍵支持部について共通である。つまり、全ての鍵の揺動中心の高さが共通である。白鍵11wの見え掛り部の上面(又は、白鍵11wの左右の稜線を含む平面)からその揺動中心までの上下方向の距離は、全ての白鍵11wについて共通である。また、黒鍵11bの操作部の上面(又は、黒鍵11bの左右の稜線Rを含む平面)からその揺動中心までの上下方向の距離は、すべての黒鍵11bについて共通である。
【0024】
また、白鍵11wの見え掛り部の中間部から下方へ向かって駆動部11w1が延設されている。駆動部11w1は、上下に延設された薄肉の前壁及び前壁の左右端からそれぞれ後方へ延設された薄肉の側壁を有し、後方に開放した中空状に形成されている。駆動部11w1の下端は下端壁により閉じている。駆動部11w1の上下方向の長さは、全ての白鍵11wについて共通である。一方、黒鍵11bも白鍵11wと同様の駆動部11b1を有する。ただし、駆動部11b1は、黒鍵11bの見え掛り部の前端から下方へ延設され、かつ僅かに前方へ湾曲した連結部と、この連結部の先端から下方へ延設された垂直部からなる。垂直部の構成は、駆動部11w1と同様である。駆動部11b1の上下方向の長さも、すべての黒鍵11bについて共通である。
【0025】
白鍵11wの前端から駆動部11w1までの前後方向の距離Lw1は、最高音の白鍵11w(すなわち、複数の白鍵11wのうちで最も短い鍵)の前端から貫通孔Kwまでの距離Lw2の30%以内である。距離Lw1は、全ての白鍵11wについて共通である。また、黒鍵11bの見え掛り部の前端から駆動部11b1までの前後方向の距離Lb1は、最高音の黒鍵11b(すなわち、複数の黒鍵11bのうちで最も短い鍵)の見え掛り部の前端から貫通孔Kbまでの距離Lb2の30%以内である。距離Lb1は、全ての黒鍵11bについて共通である。そして、白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵状態において、駆動部11w1と駆動部11b1の前後方向の位置は同一である。すなわち、駆動部11w1及び駆動部11b1は、黒鍵11bの見え掛り部の前端よりも前方に位置しており、駆動部11w1及び駆動部11b1は、左右方向に並設されている。
【0026】
前板部12bと前板部12dとの間に設けられた上方に開口した開口部内にて、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端部が、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部にそれぞれ係合している。詳しくは後述するように、ハンマー16w及びハンマー16bは、それぞれ係合している白鍵11w及び黒鍵11bの揺動に連動して揺動する。
【0027】
ハンマー16wは、合成樹脂製の基部16w1と、金属製の連結棒16w2及び質量体16w3とからなる。ハンマー16bは、ハンマー16wと同様に、基部16b1、連結棒16b2及び質量体16b3からなる。基部16w1及び基部16b1は、板状の部材であって、右側面から左側面に貫通する貫通孔Hw及び貫通孔Hbをそれぞれ有する。上板部12aの下面には、下方に突出するようにして、ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bが形成されている。ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bは、それぞれ対向する2枚の板状に形成されていて、それぞれ内側に対向する突出部18w1及び突出部18b1を備えている。前記突出部18w1及び突出部18b1は、貫通孔Hw及び貫通孔Hbにそれぞれ嵌合している。これにより、基部16w1及び基部16b1は、突出部18w1及び突出部18b1回りに回転可能に支持されている。すなわち、ハンマー16w及びハンマー16bは、前端部及び後端部が上下方向に揺動可能に支持されている。ハンマー支持部18wとハンマー支持部18bの前後方向及び上下方向の位置は全てのハンマーについて同一である。すなわち、複数のハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bが、左右方向に並設されていて、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動中心の前後方向及び上下方向の位置は、全てのハンマー16w及びハンマー16bについて同一である。言い換えれば、ハンマー16w及びハンマー16bの揺動中心は、左右方向に延びる同一直線上に位置している。
【0028】
また、基部16w1は、前端部に上下一対の脚部Fw1及び脚部Fw2を備え、上側に位置する脚部Fw1は下側に位置する脚部Fw2より短く形成されている。基部16b1も、基部16w1と同様に、前端部に上下一対の脚部Fb1及び脚部Fb2を備えている。前板部12bには、ハンマー16w及びハンマー16bごとに、上下方向に長いスリット状の開口部12b1が設けられている。各ハンマー16w及びハンマー16bの前端部は、開口部12b1を通って、前板部12bよりも前方に突出している。脚部Fw1と脚部Fw2の間には、駆動部11w1の下端壁が侵入しており、脚部Fb1と脚部Fb2の間には、駆動部11b1の下端壁が侵入している。脚部Fw1及び脚部Fb1は、それぞれ、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁と、駆動部11w1及び駆動部11b1内であって、それぞれの下端壁との間に隙間を形成する中間壁との間に侵入している。駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁には、ゴム、ウレタン、フエルトなどの衝撃吸収材が嵌め込まれて固着されている。この衝撃吸収材は、駆動部11w1と脚部Fw2の上面との衝突、駆動部11b1の下端と脚部Fb2の上面との衝突、駆動部11w1の下端と脚部Fw1の下面との衝突、及び駆動部11b1の下端と脚部Fb1の下面との衝突による衝撃をそれぞれ緩和している。
【0029】
基部16w1及び基部16b1の後端部に、連結棒16w2及び連結棒16b2の前端部がそれぞれ組み付けられている。連結棒16w2及び連結棒16b2は、それぞれ後方へ延設されている。連結棒16w2と連結棒16b2の後端の前後方向の位置は同一である。そして、連結棒16w2及び連結棒16b2の後端には、次に説明する質量体16w3及び質量体16b3が組み付けられている。なお、質量体16w3及び質量体16b3が本発明の当接部に相当し、質量体16w3及び質量体16b3の下面が本発明の当接面に相当する。
【0030】
質量体16w3及び質量体16b3は、板状に形成されている。質量体16w3及び質量体16b3は、前後方向に長い。質量体16w3及び質量体16b3は、その板厚方向が左右方向となるように連結棒16w2及び連結棒16b2に組み付けられている。離鍵状態において、質量体16w3の下面は、フレームFRの上面に対して傾斜しており、質量体16w3の下面の後側が前側よりも上方に位置している。また、離鍵状態において、質量体16b3の下面は、フレームFRの上面に対して傾斜しており、質量体16b3の下面の後側が前側よりも下方に位置している。また、押鍵状態において、質量体16w3及び質量体16b3の上面は、フレーム12の上板部12aの下面と平行である。質量体16w3の外形は、全てのハンマー16wについて共通である。また、質量体16b3の外形は、全てのハンマー16bについて共通である。
【0031】
上記のように、割り当てられた音高によって、鍵の支点の前後方向の位置が異なる。したがって、白鍵11wの揺動中心から脚部Fw2と駆動部11w1とが係合(当接)する係合部Pw1までの距離は、割り当てられた音高によって異なる。また、黒鍵11bの揺動中心から脚部Fb2と駆動部11b1とが係合(当接)する係合部Pb1までの距離も、割り当てられた音高によって異なる。さらに、白鍵11wにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端である押離鍵操作位置W0が係合部Pw1よりも前方に位置するのに対して、黒鍵11bにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端である押離鍵操作位置B0が係合部Pb1の後方に位置している。したがって、全てのハンマーについて質量体の質量が同一であれば、てこの原理によって、押離鍵操作位置W0,B0においては、低音部よりも中音部の鍵タッチ感が重く、中音部よりも高音部の鍵タッチ感がさらに重い。
【0032】
また、この場合、各音域における白鍵11wと黒鍵11bの鍵タッチ感が統一されない。すなわち、鍵11bの鍵タッチ感は隣り合う2つの白鍵11wの鍵タッチ感に比べて重い。そこで、図6に示すように、質量体16w3及び質量体16b3の質量を鍵ごとに調整している。すなわち、音高順に質量体16w3及び質量体16b3の質量を表した特性曲線図において、質量体16w3の特性曲線と質量体16b3の特性曲線が右下がりの平行な曲線であって、質量体16b3の特性曲線が質量体16w3の特性曲線の下側に位置するように、質量体16w3及び質量体16b3の質量を調整している。これにより、図7に一点鎖線で示すように、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感を、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くしている。したがって、図7に破線で示すように、押離鍵操作位置W0,B0からそれぞれ距離dだけ後方に位置する押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感も、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くなっている。ただし、割り当てられた音高が高い鍵ほど鍵の長さが短いので、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感と、押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感との差は、低音から高音に向かうに従って大きくなる。すなわち、押離鍵操作位置の前後方向の違いによる鍵タッチ感の違いは、低音部において小さく、中音部において中程度であり、高音部において大きい。
【0033】
白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵時には、ハンマー16w及びハンマーの16bの自重により、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部がそれぞれ上方へ変位する。このとき、脚部Fw2及び脚部Fb2により駆動部11w1及び駆動部11b1がそれぞれ上方へ付勢され、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部はそれぞれ上方へ変位する。一方、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時には、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端面が脚部Fw2及び脚部Fb2の上面をそれぞれ押圧し、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部がそれぞれ下方へ変位する。
【0034】
鍵フレーム12には、押鍵時にハンマー16w及びハンマー16bの質量体16w3及び質量体16b3の上面に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の上方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する下限ストッパ20が設けられている。下限ストッパ20は、ストッパレール20a及び緩衝材20bからなる。ストッパレール20aは、上板部12aの中間部の下面から下方へ突出している。鍵フレーム12の平面視において、ストッパレール20aは、低音部側よりも高音部側がやや前方に位置するように傾斜している(図1参照)。ただし、ストッパレール20aは、鍵の並び方向に平行に延設されていてもよい。また、ストッパレール20aの各ハンマーとの当接部における前板部12aの下面からの突出量は左右方向に一定である。そして、ストッパレール20aの下端面に緩衝材20bが固着されている。緩衝材20bは、ゴム、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の部材である。緩衝材20bは、一端から他端に至るまで断面形状が同一である。
【0035】
また、フレームFRの中間部には、離鍵時に、ハンマー16w及びハンマー16bの質量体16w3及び質量体16b3の下面に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の下方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する上限ストッパ21が設けられている。上限ストッパ21は、下限ストッパ20と同様に、ストッパレール21a及び緩衝材21bからなる。すなわち、鍵フレーム12の平面視において、ストッパレール21aは、低音部側よりも高音部側がやや前方に位置するように傾斜している(図1参照)。フレームFRからの突出量は、左右方向に一定である。そして、ストッパレール21aの上面に緩衝材21bが固着されている。緩衝材21bも、緩衝材20bと同様に、一端から他端に至るまで断面形状が同一である。また、ストッパレール20a及びストッパレール21aは、連続的に延設されていてもよいし、断続的に延設されていてもよい。また、ストッパレール20a及びストッパレール21aは、それぞれ上板部12a及びフレームFRと一体的に設けられていてもよいし、別部品として構成されていて、それぞれ上板部12a及びフレームFRに組み付けられるようにしてもよい。
【0036】
上記のように、鍵フレーム12の平面視において、ストッパレール21aは、低音部側よりも高音部側がやや前方に位置するように傾斜している。したがって、高音部側のハンマー16w(図3)と上限ストッパ21との当接点は、前記高音部側のハンマーよりも低音部側に位置するハンマー16w(図2)と上限ストッパ21との当接点よりも前方に位置する。離鍵状態において、質量体16w3の下面の後側が前側よりも上方に位置するように構成されているので、図3に示す高音部側のハンマー16wの後端部は、図2に示す低音部側のハンマー16wの後端部よりも上方に位置する。また、上記のように、押鍵状態においては、質量体16w3の上面が上板部12aの下面と平行である。すなわち、下限ストッパ20の下面に質量体16w3が当接した状態において、下限ストッパ20の下面と質量体16w3の上面が平行である。したがって、押鍵状態においては、ハンマー16wの傾斜角度(揺動角度)は全てのハンマー16wについて同一である。そこで、押鍵状態におけるハンマー16wの傾斜角度を基準とすると、離鍵状態においては、高音部側のハンマー16wの傾斜角度は、低音部側のハンマー16wの傾斜角度よりも小さい。したがって、離鍵状態において、高音部側のハンマー16wと駆動部11w1との係合部Pw1は、低音部側のハンマー16wと駆動部11w1との係合部Pw1よりも下方に位置する。
【0037】
上記のように、離鍵状態において、白鍵11wは、前端よりも後端が低くなるように傾斜している。また、全ての白鍵11wの駆動部11w1の上下方向の長さが同一である。また、全ての白鍵11wの揺動中心の高さが同一である。したがって、離鍵状態における係合部Pw1の上下方向の位置が同一である場合には、前後方向の長さが短い白鍵11wほど、前端の位置が高くなってしまう。そこで、本実施形態においては、白鍵11wの長さに応じて、上限ストッパ21の前後方向の位置を設定することにより、離鍵状態における各ハンマー16wの傾斜角度を設定している。これにより、離鍵状態における高音部側の白鍵11wの係合部Pw1が低音部側の白鍵11wの係合部Pw1よりも下方に位置するようにして、全ての白鍵11wの前端の高さを揃えている。
【0038】
また、高音部側のハンマー16b(図5)と上限ストッパ21との当接点は、前記高音部側のハンマーよりも低音部側に位置するハンマー16b(図4)と上限ストッパ21との当接点よりも前方に位置する。離鍵状態において、質量体16b3の下面の後側が前側よりも下方に位置するように構成されているので、図5に示す高音部側のハンマー16bの後端部は、図4に示す低音部側のハンマー16bの後端部よりも下方に位置する。また、上記のように、押鍵状態においては、質量体16b3の上面が上板部12aの下面と平行である。すなわち、下限ストッパ20の下面に質量体16b3が当接した状態において、下限ストッパ20の下面と質量体16b3の上面が平行である。したがって、押鍵状態においては、ハンマー16bの傾斜角度(揺動角度)は全てのハンマー16bについて同一である。そこで、押鍵状態におけるハンマー16bの傾斜角度を基準とすると、離鍵状態においては、高音部側のハンマー16bの傾斜角度は、低音部側のハンマー16bの傾斜角度よりも大きい。したがって、離鍵状態において、高音部側のハンマー16bと駆動部11b1との係合部Pb1は、高音部側のハンマー16bと駆動部11b1との係合部Pb1よりも上方に位置する。
【0039】
また、上記のように、離鍵状態において、黒鍵11bは前端よりも後端が低くなるように傾斜している。また、全ての黒鍵11bの駆動部11b1の上下方向の長さが同一である。また、全ての黒鍵11bの揺動中心の高さが同一である。したがって、離鍵状態における係合部Pb1の上下方向の位置が同一である場合には、前後方向の長さが短い黒鍵11bほど、前端の位置が低くなってしまう。そこで、本実施形態においては、黒鍵11bの長さに応じて、上限ストッパ21の前後方向の位置を設定することにより、離鍵状態における各ハンマー16bの傾斜角度を設定している。これにより、離鍵状態における高音部側の黒鍵11bの係合部Pb1が低音部側の黒鍵11bの係合部Pb1よりも下方に位置するようにして、全ての黒鍵11bの前端の高さを揃えている。
【0040】
また、隣接する2つの白鍵11w及び前記2つの白鍵11wの間に位置する黒鍵11bが離鍵されている状態において、前記黒鍵11bの稜線Rが、前記2つの白鍵11wのうちの低音部側の白鍵11wの上面よりも下方に位置しており、かつ前記2つの白鍵11wのうちの高音部側の白鍵11wの上面よりも上方に位置するように、各ハンマーの揺動角度が設定されている。
【0041】
白鍵11w及び前記白鍵11wに隣接する黒鍵11bが同一の押鍵力でそれぞれ押鍵されて、それらの揺動がそれぞれ規制された状態において、黒鍵11bの稜線Rが、前記白鍵11wの上面よりも下方に位置するように、各ハンマーの揺動角度が設定されている。なお、緩衝材20b及び緩衝材21bは、弾性を有する。したがって、押鍵時にハンマーが緩衝材に当接した後、さらに鍵を下方へ押すと、緩衝材が弾性変形するので、鍵の前端は下方へ僅かに変位する。
【0042】
また、白鍵11w及び黒鍵11bの中間部の下面には、スイッチ駆動部AC1が設けられている。スイッチ駆動部AC1は、白鍵11w及び黒鍵11bの内部にて上下方向に延設された板状の部分であり、スイッチ駆動部AC1の下端面が、スイッチSW1の上面に当接している。スイッチSW1は、鍵ごとに設けられ、鍵によって押圧されて、各鍵の押離鍵状態を検出する。すなわち、スイッチSW1は、鍵によって押圧されると、ゴム製の本体部が変形して、回路基板23上に形成された2つの接点を短絡することにより、OFF状態からON状態に変化する。回路基板23は、左右方向に延設されている。回路基板23には、上面から下面に貫通した貫通孔が設けられている。この貫通孔は、上板部12aの上面に一体的に形成されたボス24に対応している。この貫通孔にねじを通してボス24にねじ込むことにより、回路基板23が、鍵フレーム12に固定される。各鍵にそれぞれ対応した複数のスイッチSW1の前記本体部が、回路基板23の上面に左右方向に並設されている。白鍵11w用のスイッチSW1と黒鍵11b用のスイッチSW1の前後方向の位置が同一である。白鍵11wの前端からスイッチSW1までの前後方向の距離Lw3が、最高音の白鍵11wの前端から貫通孔Kwまでの距離Lw2の30%以内であり、かつ黒鍵11bの見え掛り部の前端からスイッチSW1までの前後方向の距離Lb3が、最高音の黒鍵11bの見え掛り部の前端から貫通孔Kbまでの距離Lb2の30%以内である。なお、白鍵11w用のスイッチSW1と黒鍵11b用のスイッチSW1をそれぞれ左右方向に並設しておき、両者の前後方向の位置をずらしてもよい。
【0043】
また、前板部12dの上端面から上方に突出するようにして、白鍵11wの揺動をガイドするための鍵ガイド25wが形成されている。鍵ガイド25wは、白鍵11wに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド25wの側面と白鍵11wの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の白鍵11wの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0044】
また、上板部12aの前端部の上面から上方に突出するようにして、黒鍵11bの揺動をガイドするための鍵ガイド25bが形成されている。鍵ガイド25bは、黒鍵11bに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド25bの側面と黒鍵11bの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の黒鍵11bの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0045】
上記のように構成した鍵盤装置によれば、離鍵状態における鍵の前端の高さを揃えたので、離鍵状態におけるアコースティックピアノの鍵盤装置の外観を模擬できる。また、鍵の支点部とフレームとの間に挟み込むスペーサの枚数、厚さなどを調整して鍵の前端の高さを揃えるアコースティックピアノの鍵盤装置と比較すると、生産性が高い。
【0046】
また、白鍵11wの見え掛り部の上面からその揺動中心までの距離は、全ての白鍵11wについて共通であり、黒鍵11bの本体部の上面からその揺動中心までの距離は、すべての黒鍵11bについて共通である。したがって、例えば、白鍵11w及び黒鍵11bの外形を成型加工した後の別工程において、貫通孔Kw,Kbを設ける場合、この別工程を共通化して、鍵の生産性を向上させることができる。また、鍵支持部13w及び鍵支持部13bの突出部13w1及び突出部13b1の上下方向の位置を、すべての鍵支持部13w及び鍵支持部13bについて共通としたので、鍵を支持するフレームFRの設計が簡単である。また、フレームFRを加工し易く、精度を向上させることができる。
【0047】
また、上限ストッパ21を平面視において傾斜するように配置し、質量体16w3及び質量体16b3の下面の傾斜方向を逆方向にした。これにより、白鍵11w用のハンマー16w3に関しては、低音部側のハンマー16w3から高音部側のハンマー16w3へ向かうに従って、離鍵状態におけるそれらの傾斜角度が徐々に小さくなり、黒鍵11b用のハンマー16b3に関しては、低音部側のハンマー16w3から高音部側のハンマー16w3へ向かうに従って、離鍵状態におけるそれらの傾斜角度が徐々に大きくなるように構成できる。したがって、上限ストッパ21をハンマーごとに設ける必要が無いので、部品点数を削減でき、コストを削減できる。また、鍵盤装置の生産性を向上させることができる。
【0048】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
上記実施形態によれば、フレーム12の平面視において上限ストッパ21の高音部側が低音部側よりも前方に位置するように傾斜している。しかし、これに代えて、図8乃至図12に示すように、上限ストッパ21Aを鍵の並び方向に平行に延設してもよい。この場合、緩衝材21bに代えて緩衝材21cを用いる。緩衝材21cは、ハンマーごとに上下方向の厚さが異なる。具体的には、低音部側の白鍵11w(図9)のハンマー16wの緩衝材21cは薄く、高音部側の白鍵11w(図10)のハンマー16wの緩衝材21cは厚い。このように、白鍵11wの長さに応じて、緩衝材21cの厚さを設定することにより、離鍵状態における各ハンマー16wの傾斜角度を設定してもよい。これによっても、離鍵状態における白鍵11wの前端の高さを揃えることができる。また、低音部側の黒鍵11b(図11)の緩衝材21cは厚く、高音部側の黒鍵11b(図12)の緩衝材21cは薄い。このように、黒鍵11bの長さに応じて、緩衝材21cの厚さを設定することにより、離鍵状態における各ハンマー16bの傾斜角度を設定してもよい。これによっても、離鍵状態における黒鍵11bの前端の高さを揃えることができる。
【0050】
また、図13及び図14に示すように、離鍵状態において、質量体16w3及び質量体16b3の下面がフレームFRの上面と平行であってもよい。この場合、緩衝材21bの厚さは、全てのハンマーについて共通である。そのため、離鍵状態におけるハンマー16w及びハンマー16bの傾斜角度は割り当てられた音高によらず同一である。そこで、図15に示すように、ハンマー16wの脚部Fw1及び脚部Fw2、並びにハンマー16bの脚部Fb1及び脚部Fb2に、各鍵の長さに応じた厚さのスペーサSPを組み付ける。具体的には、高音部側のハンマー16wのスペーサSPを薄く、低音部側のハンマー16wのスペーサSPを厚くすることにより、高音部側の白鍵11wの係合部Pw1を低音部側の白鍵11wの係合部Pw1よりも下方に位置させればよい。これにより、白鍵11wの前端の高さを揃えることができる。また、高音部側のハンマー16bのスペーサSPを厚く、低音部側のハンマー16bのスペーサSPを薄くすることにより、高音部側の黒鍵11bの係合部Pb1を低音部側の黒鍵11bの係合部Pb1よりも上方に位置させればよい。これにより、黒鍵11bの前端の高さを揃えることができる。なお、スペーサSPの厚さに応じて、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁に嵌め込まれる衝撃吸収材の厚さが調整される。
【0051】
また、図13及び図14に示す鍵盤装置において、図15のスペーサを組み付けるのではなく、ハンマー16w及びハンマー16bの連結棒16w2及び連結棒16b2をその前後方向中間部にて曲げることにより、離鍵状態における係合部Pw1及び係合部Pb1の高さを調整してもよい。例えば、ハンマー16wの後端側を上方へ持ち上げるように曲げ、ハンマー16bの後端側を下方へ押し下げるように曲げるとよい。連結棒の曲げ量(曲げ角度)は、係合する鍵の長さに応じて設定すればよい。この場合、低音部側のハンマー16wの連結棒16w2の曲げ量を大きくし、高音部側のハンマー16wの連結棒16w2の曲げ量を小さくすることにより、高音部側の白鍵11wの係合部Pw1を低音部側の白鍵11wの係合部Pw1よりも下方に位置させることができる。これにより、白鍵11wの前端の高さを揃えることができる。また、この場合、低音部側のハンマー16bの連結棒16b2の曲げ量を大きくし、高音部側のハンマー16bの連結棒16b2の曲げ量を小さくすることにより、低音部側の黒鍵11bの係合部Pb1を高音部側の黒鍵11bの係合部Pb1よりも下方に位置させることができる。これにより、黒鍵11bの前端の高さを揃えることができる。
【符号の説明】
【0052】
11w・・・白鍵、11b・・・黒鍵、11w1,11b1・・・駆動部、12・・・鍵フレーム、13w,13b・・・鍵支持部、16w,16b・・・ハンマー、16w1,16b1・・・基部、16w2,16b2・・・連結棒、16w3,16b3・・・質量体、18w,18b・・・ハンマー支持部、20・・・下限ストッパ、21・・・上限ストッパ、Pw1,Pb1・・・係合部、FR・・・フレーム、SP・・・スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
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図13
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図15