特許第5928232号(P5928232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928232
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】通信ケーブルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20160519BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160519BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20160519BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   G02B6/44 381
   G02B6/44 391
   H01B7/00 309Z
   H01B11/00 B
   H01B13/00 551Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-172680(P2012-172680)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-32302(P2014-32302A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】平間 隆郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝司
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−110450(JP,A)
【文献】 特開平8−110449(JP,A)
【文献】 特開2001−264602(JP,A)
【文献】 実開平5−090737(JP,U)
【文献】 特開2004−347869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/44
H01B 7/00
H01B 11/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアの外周が外被で被覆され、前記外被の内面側に引裂き紐が埋設された通信ケーブルであって、
前記引裂き紐は、前記外被との間に空隙が存在する部分がケーブル長手方向に間欠的に存在するように埋設されていることを特徴とする通信ケーブル。
【請求項2】
前記空隙が存在しない部分の連続長さは30mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の通信ケーブル。
【請求項3】
前記空隙が存在する部分の孔断面積は、前記引裂き紐が存在しない状態で、前記引裂き紐の断面積の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の通信ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載する通信ケーブルの製造方法であって、外被が押出成形される前に、前記外被に埋設される引裂き紐に油分もしくは水分をケーブル長手方向に間欠的に付与し、前記外被の押出成形時の熱により前記油分もしくは水分を気化させて、前記引裂き紐と外被との間に間欠的に空隙を形成することを特徴とする通信ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルコアと外被との間に外被引裂き紐を埋設した通信ケーブルと該通信ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブルは、通常、複数本の光ファイバや電線等の信号線を束ねたケーブルコアの外周を、押出成形による外被(シースとも言う)で覆って構成される。また、通信ケーブルは、布設後にケーブル中間部分から信号線を引き出して、家屋等に引き落とされる。この場合、ケーブルの外被を長手方向に所定長さ除去して内部の信号線を露出させるが、外被の除去を容易にするために、外被の内面側に外被引裂き用の紐(リップコードとも言われている)を埋設しておき、この引裂き紐で外被を切り裂く構成の通信ケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の特許文献1には、外被の内面に引裂き紐を円周が一部開口した円形状の空洞からなる凹状溝に引裂き紐を挿入し、この引裂き紐の位置を示すために、外被の表面に引裂き紐の位置を示す突条を設けることが開示されている。また、引裂き紐が上記の凹状溝から飛び出さないように凹状溝の開口を間欠的に閉じることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−264602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引裂き紐を埋設した通信ケーブルの外被を除去する場合、まず、引裂きの始端となる部分の紐を露出させる必要がある。外被をカッタ等で輪切りにして露出させる場合もあるが、引裂き紐を切断するおそれがある。一方、特許文献1に開示のような引裂き紐の位置を示す突条が外被表面に設けられている場合は、この突条部分をピーラやカッタで部分的に削りとることで引裂き紐を露出させることが可能となる。
【0006】
しかし、引裂き紐が外被に密着するように埋め込まれていると、外被を削り込んだ場合に引裂き紐まで削りとるおそれがあり、引裂き紐を取り出しにくいという問題がある。一方、特許文献1のように、凹状溝に引裂き紐を挿入する形態で、外被と引裂き紐の間に空隙があると、上記の問題は回避することができる。しかしながら、外被と引裂き紐の間に空隙があると、外被の除去位置がケーブル端末に近い場合は、抜け出てしまい外被を切り裂くことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、引裂き紐の取り出しが容易であると共に、引裂き紐が外被から容易に抜け出ない通信ケーブルとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による通信ケーブルは、ケーブルコアの外周が外被で被覆され、外被の内面側に引裂き紐が埋設された通信ケーブルであって、引裂き紐は、外被との間に空隙が存在する部分がケーブル長手方向に間欠的に存在するように埋設されていることを特徴とする。
また、空隙が存在しない部分の連続長さは30mm未満であり、上記の空隙が存在する部分の孔断面積は、裂き紐が存在しない状態で、引裂き紐の断面積の1.5倍以上あることが好ましい。
【0009】
上記の通信ケーブルの製造方法は、外被が押出成形される前に、外被に埋設される引裂き紐に油分もしくは水分をケーブル長手方向に間欠的に付与し、外被の押出成形時の熱により油分もしくは水分を気化させて、引裂き紐と外被との間に間欠的に空隙を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外被の突条の一部をピーラまたはカッタで削ることにより、引裂き紐を傷付けることなく容易に外被から引き出すことができる。そして、この引き出した引裂き紐を手で摘まんで引っ張ることにより、外被内から引く抜けることなく外被を切り裂くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による通信ケーブルの一例を説明する図である。
図2】本発明による通信ケーブルの製造方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1により本発明による通信ケーブルの概略を説明する。図1において、10は通信ケーブル、11はケーブルコア、12は外被、12aは突条、13は引裂き紐、14aは空隙部分、14bは密着部分を示す。
【0013】
本発明の対象とする通信ケーブルは、多数本の光ファイバを信号線とする光ケーブル、多数本の絶縁電線もしくは同軸電線を信号線とする電気ケーブルの何れにも適用することができる。しかし、図1(A)に示すように、ケーブルの構造としては、多数の信号線を束ねたケーブルコア11の外周を樹脂の押出成形による外被12で被覆し、外被12の内面に接しているか、ないしは外被12の内面接してはいない、すなわち外被12の内面側に、少なくとも1本の引裂き紐13が外被内に埋設された形態の通信ケーブルである。なお、埋設位置を示す表示手段としては、例えば、図に例示するような突条12aで表示したり、その他、着色された線で表示することができる。
【0014】
外被12には、例えば、ポリエチレンまたは難燃ポリエチレンが用いられるが、これに限定されるものではない。また、引裂き紐13には、アラミド繊維等の高張力繊維を束ねた紐、また、これに樹脂を含浸またはコーティングしたものを用いることができる。
なお、外被12内に引裂き紐13を埋設する以外に、テンションメンバ(抗張力体)が埋設されていてもよい。また、ケーブルコア11を被覆した外被12と鋼線等を細幅の連結部を介して被覆した支持線部とが、一体に設けられた自己支持型の通信ケーブルであってもよい。
【0015】
通信ケーブルの信号線が光ファイバの場合は、ケーブルコア11としては、複数本の光ファイバ心線を集合してテープ等で円形状に束ねた形状のもの、またはスロットロッドを用いて上巻テープで束ねたものを用いることができる。通信ケーブルの信号線がメタルワイヤの場合は、ケーブルコア11としては、複数本の絶縁電線または同軸線等を集合し、あるいは、共通シールドを施してテープ等で円形状に束ねた形状のものを用いることができる。
【0016】
本発明は、上述した通信ケーブルで、図1(B)から図1(D)に示すように、外被12と引裂き紐13との間に、空隙が存在する部分(以下、空隙部分という)14aが間欠的に設けられていることを特徴としている。この空隙部分14aと次の空隙部分14aの間は、空隙の存在しない部分(以下、密着部分という)14bは、外被14と密着ないしは接着し、引裂き紐13が外被14から抜け出ないようにされている。
【0017】
なお、外被12の中間部分を切り裂いて除去するに際して、その切り裂きの始端となる引裂き紐13は、30mm程度は必要なので、外被を長手方向に削りとる長さは少なくとも30mm以上となる。このため、密着部分14bが連続する長さLは、30mm未満で形成されていることが好ましい。これにより、外被の突条12aの部分を、ケーブル長手方向に少なくとも30mm削りとれば、その範囲内な空隙部分14aが必ず存在するので、この空隙部分14aから引裂き紐13が露出するのを目安に外被12を削り落とせばよい。
【0018】
また、引裂き紐13が通る空隙部分14aの孔は、図1(C)に示すように外被の内面側で開口されていてもよい。この場合、引裂き紐13で外被12を引裂いた時に、外被の引裂き残しを少なくすることができる。しかし、その開口の幅は、引裂き紐13の太さより小さい方が好ましい。また、引裂き紐13が通る空隙部分14aの孔断面積は、裂き紐が存在しない状態で、引裂き紐13の断面積の1.5倍以上あるのが好ましい。この程度の空隙があれば、引裂き紐13が外被12に密着したり接着するのを回避することができる。
【0019】
上記のように構成された通信ケーブルで、ケーブル内の信号線を分岐するために外被12を除去する場合、ピーラまたはカッタ等で引裂き紐13の埋設位置を示す突条12aの部分を、上述したように長手方向に少なくとも30mm程度削りとる。この突条12aを削りとるとき、密着部分14bに先立って空隙部分14aが表出され、引裂き紐13が露出するので、外被の削りとりが所定量に達したことを知ることができ、これ以上に削りとって引裂き紐13を損傷しないようにすることができる。なお、露出した引裂き紐の部分を元にして、削りとりにより厚さが薄くなっている密着部分14bからも引裂き紐13を容易に引出すことができ、手で掴める程度の長さとすることができる。そして、この外被内から引出した引裂き紐を始端に外被12を長手方向に切り裂く。
【0020】
図2は、上述した外被12と引裂き紐13との間に、間欠的な空隙部分14aを形成する方法の一例を示す外被成形装置を示す。
外被成形装置20は、ケーブルコア11の外周を押出成形による外被12で被覆する装置で、ケーブルコア11は、コア供給リール21からコア引取り装置22により繰り出される。ケーブルコア11には、2つの紐供給リール23から繰り出される1対の引裂き紐13がケーブルコアの対向する側面に縦添えされて、押出成形機25に移送される。
【0021】
本発明においては、ケーブルコア11と引裂き紐13とが、押出成形機25に移送される手前側で、塗布装置24により引裂き紐13に油分または水分が所定の間隔でケーブル長手方向に間欠的に付与される。この後、引裂き紐13は、ケーブルコア11に接するようにして、押出成形機25により押出成形された外被12により被覆され埋設される。このとき、外被12の押出時の熱により、引裂き紐13に付与された油分または水分が気化して、引裂き紐13と外被12との間に空隙が生じる。この空隙は、図1で説明したように、間欠的に形成することができる。
【0022】
この後、押出成形機25により外被12が施されたケーブルは、冷却装置26により外被12を冷却硬化され、ケーブル引取り装置27により引き取られる。ケーブル引取り装置27で引き取られる通信ケーブル10は、巻取リール(図示省略)により巻き取られる。
【符号の説明】
【0023】
10…通信ケーブル、11…ケーブルコア、12…外被、12a…突条、13…引裂き紐、14a…空隙部分、14b…密着部分、20…外被成形装置、21…コア供給リール、22…コア引取り装置、23…紐供給リール、24…塗布装置、25…押出成形機、26…冷却装置、27…ケーブル引取り装置。
図1
図2