【実施例】
【0067】
(参考例A)
本参考例においては、下地基板となるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)−ムライト焼結体基板を、フッ化水素酸に接触(例AR1)、フッ化水素酸および硝酸の混合酸に接触(例AR2)、ならびにフッ化水素酸および硝酸に交互に接触(例A1〜A4)させたときのエッチング質量およびエッチング深さを評価した。本参考例においては、フッ化水素酸に実質的に不溶のフッ化物を溶かす酸として硝酸を用いた。
【0068】
1.下地基板の準備
下地基板として、複数の12mm×12mm×厚さ450μmのYSZ−ムライト焼結体基板を準備した。かかるYSZ−ムライト基板は、YSZが30質量%でムライトが70質量%の割合で焼結されたものであり、YSZの化学組成はZrO
2が90モル%でY
2O
3が10モル%であり、ムライトの化学組成はAl
2O
3が60モル%でSiO
2が40モル%であった。
【0069】
2.エッチング液の準備
下地基板にフッ化水素酸に接触させるためのエッチング液として、49質量%フッ化水素酸水溶液500mlを準備した。下地基板に硝酸を接触させるためのエッチング液として、70質量%硝酸水溶液250mlを純水250mlで希釈して35質量%硝酸水溶液500mlを準備した。下地基板にフッ化水素酸および硝酸の混合酸を接触させるためのエッチング液として49質量%フッ化水素酸水溶液450mlと70質量%硝酸水溶液50mlとを混合した混合水溶液500mlを準備した。
【0070】
3.エッチング
下地基板を、室温(23℃)中マグネチックスターラにより200rpmで撹拌されている上記の少なくともひとつのエッチング液中に、上記の下地基板を2時間浸漬することによりエッチングをおこなった。
【0071】
具体的には、例AR1では、エッチング液として49質量%フッ化水素酸水溶液を用いて、下地基板を49質量%フッ化水素酸水溶液中に120分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をした。例AR2では、エッチング液として49質量%フッ化水素酸水溶液と70質量%硝酸水溶液とが9:1の体積比で均一に混合された混合水溶液を用いて、下地基板をかかる混合水溶液中に120分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をした。なお、例AR2で用いたエッチング液は、49質量%フッ化水素酸水溶液と70質量%硝酸水溶液とを混合した場合に最もエッチング速度が速くなる混合体積比のものであった。
【0072】
例A1〜A4については、エッチング液として49質量%フッ化水素酸水溶液および35質量%硝酸水溶液を交互に用いて、以下の浸漬パターンによりエッチングを行なった。
【0073】
例A1では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を55分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを2セット行なった。すなわち、下地基板とフッ化水素酸との接触時間は、下地基板と硝酸との接触時間の11倍であった。
【0074】
例A2では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を25分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを4セット行なった。すなわち、下地基板とフッ化水素酸との接触時間は、下地基板と硝酸との接触時間の5倍であった。
【0075】
例A3では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを8セット行なった。すなわち、下地基板とフッ化水素酸との接触時間は、下地基板と硝酸との接触時間の2倍であった。
【0076】
例A4では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを12セット行なった。すなわち、下地基板とフッ化水素酸との接触時間は、下地基板と硝酸との接触時間の1倍であった。
【0077】
4.エッチング質量の評価
上記の各例について、エッチング前の下地基板の乾燥質量とエッチング後の下地基板の乾燥質量との差から下地基板の1mm
2当たりの2時間でエッチングされた質量(以下、エッチング質量という)を算出した。
【0078】
算出されたエッチング質量は、例AR1では31.6μg/mm
2であり、例AR2では36.2μg/mm
2であり、例A1では41.7μg/mm
2であり、例A2では64.7μg/mm
2であり、例A3では84.1μg/mm
2であり、例A4では107μg/mm
2であった。結果を表1にまとめた。
【0079】
5.エッチング深さの評価
上記の各例について、エッチング後の下地基板を中央で劈開してその断面をSEM(走査型電子顕微鏡)−EDX(エネルギー分散型X線分光)法により観察した。ZrO
2およびY
2O
3すなわちYSZはムライトと独立した粒状に存在するため、断面の元素組成分布をEDXでマッピング撮影すると、YSZの存在する場所は浮島のように飛び飛びに存在する。エッチングの進行により形成されるフッ化水素酸浸透領域および被エッチング領域では、ZrO
2およびY
2O
3が存在するべき場所においてZrが有意に減少しかつFおよびYが有意に増加している様子が観察された。また、このZr減少およびFおよびYの増加領域の末端面(深さ方向に下地基板の露出主面から遠い側の面)は、末端面の任意の場所において下地基板の露出主面からの距離が同じであることがわかった。ここで、Fが検出されなくなる領域の末端面から下地基板の露出主面までの距離をエッチング深さと定義した。
【0080】
算出されたエッチング深さは、例AR1では15μmであり、例AR2では17μm、例A1では20μmであり、例A2では27μmであり、例A3では45μmであり、例A4では45μmであった。結果を表1にまとめた。また、例AR1、AR2およびA1〜A4についてのエッチング質量とエッチング深さとの相関関係を
図6に示した。
【0081】
また、各例において、2時間エッチングしたときのエッチング深さ(単位:μm)から1分間当たりのエッチング速度(単位:nm/min)を算出した。
【0082】
算出されたエッチング平均速度は、平均例AR1では130nm/minであり、例AR2では140nm/minであり、例A1では170nm/minであり、例A2では230nm/minであり、例A3では380nm/minであり、例A4では380nm/minであった。結果を表1にまとめた。
【0083】
【表1】
【0084】
表1を参照して、例AR1〜AR2およびA1〜A4を参照して、エッチング液としてフッ化水素酸水溶液またはフッ化水素酸および硝酸の混酸の水溶液のみを用いてエッチングした場合に比べて、エッチング液としてフッ化水素酸水溶液および硝酸水溶液を用いて交互にエッチングした場合は、下地基板のエッチング質量およびエッチング深さはいずれも大きくなった。具体的には、エッチング質量は、例AR1の場合に比べて、例A3の場合は2.7倍に、例A4の場合は3.4倍にまで大きくなった。また、エッチング深さは、例AR1の場合に比べて、例A3の場合は3.0倍に、例A4の場合は3.0倍にまで大きくなった。また、
図6を参照して、エッチング質量とエッチング深さとは、相関係数rは0.95であり、強い正の相関を有していた。
【0085】
(参考例B)
本参考例においては、下地基板となるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)−ムライト焼結体基板を、フッ化水素酸と、フッ化水素酸に実質的に不溶のフッ化物を溶かす酸として硝酸(例B1および例B4)、塩酸(例B2)、または王水(例B3)と、に交互に接触させたときのエッチング質量およびエッチング深さを評価した。
【0086】
1.下地基板の準備
参考例Aと同様の下地基板を複数準備した。
【0087】
2.エッチング液の準備
下地基板にフッ化水素酸に接触させるためのエッチング液として、49質量%フッ化水素酸水溶液500mlを準備した。下地基板に硝酸を接触させるためのエッチング液として、35質量%硝酸水溶液500mlおよび70質量%硝酸水溶液500mlを準備した。下地基板に塩酸を接触させるためのエッチング液として30質量%塩酸水溶液500mlを準備した。下地基板に王水を接触させるためのエッチング液として、30質量%の塩酸水溶液と70質量%の硝酸水溶液とを3:1の体積比で混合した王水500mlを準備した。
【0088】
3.エッチング
下地基板を、室温(23℃)中マグネチックスターラにより200rpmで撹拌されている上記のエッチング液中に、上記の下地基板を2時間浸漬することによりエッチングをおこなった。
【0089】
具体的には、例B1では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを8セット行なった。例B2では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、30質量%塩酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを8セット行なった。例B3では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、王水中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを8セット行なった。例B4では、下地基板を、49質量%フッ化水素酸水溶液に中に下地基板を10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、70質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、これを8セット行なった。
【0090】
4.エッチング質量の評価
上記の各例について、参考例Aと同様にして、エッチング質量を算出した。算出されたエッチング質量は、フッ化物を溶かす酸として、例B1のように35質量%硝酸水溶液を用いた場合では82.6μg/mm
2であり、例B2のように30質量%塩酸水溶液を用いた場合では73.7μg/mm
2であり、例B3のように王水を用いた場合では66.9μg/mm
2であり、例B4のように70質量%硝酸水溶液を用いた場合では52.0μg/mm
2であった。結果を表2にまとめた。
【0091】
【表2】
【0092】
表2を参照して、フッ化水素酸に実質的に不溶のフッ化物を溶かす酸としては、硝酸、塩酸、王水などの硝酸および塩酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の酸が好ましく、なかでも35質量%の硝酸がより好ましかった。
【0093】
(実施例1)
1.複合基板の準備
下地基板11として、直径2インチ(50.8mm)×厚さ450μmのYSZ−ムライト焼結体基板を準備した。かかるYSZ−ムライト基板は、YSZが30質量%でムライトが70質量%の割合で焼結されたものであり、YSZの化学組成はZrO
2が90モル%でY
2O
3が10モル%であり、ムライトの化学組成はAl
2O
3が60モル%でSiO
2が40モル%であった。下地基板11の主面はJIS B0601:2001に規定される算術平均粗さRaが10nm以下に鏡面研磨した。
【0094】
図2(A)を参照して、この下地基板11の主面と、主面から150nmの深さに水素イオン注入領域が形成されているGaNからなる厚さ350μmのIII族窒化物半導体基板の水素イオン注入領域が形成されている側の主面と、をSiOからなる厚さ400nmの接合酸化物膜を介在させて貼り合わせ、その後、III族窒化物半導体基板をその水素イオン注入領域で分離することにより、下地基板11と、下地基板11上に配置された厚さ400nmの接合酸化物膜12と、接合酸化物膜12上に配置された厚さ150nmのIII族窒化物半導体膜13と、で構成される複合基板1を準備した。
【0095】
かかる複合基板1は、下地基板11が室温(23℃)から1200℃までGaN結晶と同じ熱膨張係数を示し、III族窒化物半導体膜13の結晶欠陥密度が10
5cm
-2オーダーと低いため、III族窒化物半導体膜13上に結晶品質の高いIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることが可能である。
【0096】
2.III族窒化物半導体層の成長
図2(B)を参照して、複合基板1のIII族窒化物半導体膜13上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層20として、厚さ5μmのn−GaN層21、厚さ50nmのn−In
0.05Ga
0.95N層22、厚さ3nmのIn
0.14Ga
0.86N井戸層と厚さ15nmのGaN障壁層とで構成される3周期の多重量子井戸構造を有する活性層23、厚さ20nmのp−Al
0.08Ga
0.92N層24、および厚さ50nmのp
+−GaN層25をこの順にエピタキシャル成長させて、半導体層付複合基板2を得た。この間に、III族窒化物半導体層20の成長温度は最高で1050℃に達したが、半導体層付複合基板2のIII族窒化物半導体層20にはクラックの発生は見られなかった。III族窒化物半導体層20の結晶欠陥密度は、CL(カソードルミネッセンス)法により測定したところ、10
5cm
-2オーダーであった。この半導体層付複合基板2の発光中心波長は、PL(フォトルミネッセンス)マッパーにより測定したところ、460nmであった。
【0097】
さらに、RTA装置(ラピッドサーマルアニーリング装置、これは赤外線により急速加熱する装置である)を用いて、半導体層付複合基板2を窒素ガス雰囲気中800℃で3分間アニールし、p−Al
0.08Ga
0.92N層24およびp
+−GaN層25を活性化させた。
【0098】
3.第1の電極の形成
図2(C)を参照して、半導体層付複合基板2のIII族窒化物半導体層20の最上層であるp−GaN層25上に、EB蒸着装置を用いて厚さ7nmのNi層および厚さ300nmのAu層を順次形成し、次いで、RTA装置で窒素ガス雰囲気中500℃で1分間アニールすることにより合金化処理して、第1の電極30を形成することにより、電極付半導体層付複合基板3を得た。
【0099】
4.支持基板の貼り合わせ
図2(D)および(E)を参照して、電極付半導体層付複合基板3の第1の電極30上に、EB蒸着装置を用いて、厚さ10nmのTi層、厚さ80nmのPt層、および厚さ300nmのAu層を順次形成することにより、接合用パッド金属層31を形成した。
【0100】
また、Siで形成され直径2インチ(50.8mm)×厚さ300μmの両主面がJIS B0601:2001に規定される算術平均粗さRaで10nm以下に鏡面化されている支持基板40を準備した。ここで、Siで形成された支持基板40は、p型にドープされており、抵抗率は0.01Ωcm以下であった。
【0101】
支持基板40の一方の主面には、EB蒸着法装置を用いて厚さ10nmのTi層および厚さ80nmのPt層を順次形成し、抵抗加熱装置を用いて厚さ300nmのAu層を順次形成することによりオーミック接合金属層41を形成した。支持基板40の他方の主面には、上記と同様にしてオーミック接合金属層41を形成し後、オーミック接合金属層41上に、抵抗加熱装置を用いて厚さ1.5μmのAuSn(質量比Au:Snが8:2)層を形成することにより、接合金属層42を形成した。
【0102】
電極付半導体層付複合基板30上に形成された接合用パッド金属層31と、支持基板40のひとつの主面上に形成されたオーミック接合金属層41上に形成された接合金属層42と、をウエハボンダを用いて貼り合わせて接合することにより、貼り合わせ基板4を得た。かかる接合は、1Pa以下の真空中300℃で3MPaの圧力を両層間に10分間加えることにより行なった。接合後、超音波顕微鏡を用いて接合面内に空隙などの接合不良がないことを確認した。
【0103】
5.下地基板の一部除去による基板厚さの低減工程
図2(E)を参照して、貼り合わせ基板4の支持基板40側を、ワックス(日化精工株式会社製アルコワックス819)およびウエハボンダを用いて、真空中(10Pa未満)120℃で3MPaの圧力で研削冶具に貼り付けた後、平面研削機を用いて、貼り合わせ基板4の下地基板11をその厚さが450μmから50μmになるように研削した。
【0104】
6.下地基板の分離
下地基板11にフッ化水素酸に接触させるためのエッチング液として、49質量%フッ化水素酸水溶液500mlを準備した。下地基板11に硝酸を接触させるためのエッチング液として35質量%硝酸水溶液500mlを準備した。
【0105】
図2(F)を参照して、研削された貼り合わせ基板4を、120℃のホットプレート上で研削冶具から取り外した後、上記と同様にして、直径3インチ×厚さ500μmのサファイア基板に貼り付けた。その後、その貼り合わせ基板4を、室温(23℃)環境下でマグネチックスターラにより200rpmで撹拌されている上記のいずれかのエッチング液中に、以下に示す手順で浸漬して、エッチングを行なった。
【0106】
貼り合わせ基板4を、49質量%フッ化水素酸水溶液中に10分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をし、次いで、35質量%硝酸水溶液中に5分間浸漬した後30秒間の流水洗浄および窒素ガスブロー乾燥をすることを1セットとして、このセットを繰り返したところ、このセットを8セット行なった後、9回目に49質量%フッ化水素酸水溶液中に10分間浸漬したときに、貼り合わせ基板4から下地基板11が分離した。貼り合わせ基板4は、接合酸化物膜12までエッチングにより除去されていた。
【0107】
このようにして、貼り合わせ基板4から、下地基板11が分離するとともに接合酸化物膜12が除去されて、III族窒化物半導体膜13が主面に露出したIII族窒化物半導体ウエハ5が得られた。
【0108】
得られたIII族窒化物半導体ウエハ5は、可視光に対して透明であるIII族窒化物半導体膜13およびIII族窒化物半導体層20を通して見える金属接合面には変化が見られなかった。
【0109】
7.第2の電極の形成
図2(G)を参照して、得られたIII族窒化物半導体ウエハ5を120℃のホットプレート上でサファイア基板から取り外した後、III族窒化物半導体ウエハ5のIII族窒化物半導体膜13上に、n−電極である第2の電極50を形成した。かかる第2の電極50は、III族窒化物半導体膜13上フォトリソグラフィー法により形成したレジストマスク(図示せず)に、EB蒸着法により、厚さ20nmのTi層、厚さ200nmのAl層、厚さ20nmのTi層、および厚さ300nmのAu層を形成し、リフトオフしてパターンを形成した後、RTA装置を用いて窒素ガス雰囲気中250℃で3分間アニールすることにより形成した。これにより、LEDとしての半導体デバイス機能を発現するIII族窒化物半導体ウエハ6が得られた。
【0110】
8.チップ化による半導体デバイスの形成
III族窒化物半導体ウエハ6を、ダイシングによりチップ化して半導体デバイスとした後、ステムに実装した。かかるチップ化および実装の際の歩留まりは100%であった。また、実装された半導体デバイスについて、面内均一な発光が得られた。
【0111】
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した貼り合わせ基板4を、実施例1と同様にして下地基板11をその厚さが450μmから50μmになるように研削した。研削された貼り合わせ基板4を、実施例1と同様にして直径3インチ×厚さ500μmのサファイア基板に貼り付けた後、室温(23℃)中マグネチックスターラにより200rpmで撹拌されている49質量%のフッ化水素酸水溶液500ml中に浸漬した。浸漬開始から10時間後に、貼り合わせ基板4から下地基板11が分離するとともに接合酸化物膜12が除去されて、III族窒化物半導体膜13が主面に露出したIII族窒化物半導体ウエハ5が得られた。
【0112】
得られたIII族窒化物半導体ウエハ5は、可視光に対して透明であるIII族窒化物半導体膜13およびIII族窒化物半導体層20を通して見える金属接合面の金属が変色しており、また、第1の電極30(特にTi層およびNi層)が冒されていた。さらに一部のIII族窒化物半導体膜13およびIII族窒化物半導体層20は第1の電極30の侵食にともない除去されてしまっていた。サンプルにもよるが、残存したIII族窒化物半導体膜13およびIII族窒化物半導体層20の面積(以下、残存面積という)は、エッチング前の18%であった。
【0113】
かかるIII族窒化物半導体ウエハ5(残存面積18%)を、実施例1と同様にして、第2の電極50を形成してIII族窒化物半導体ウエハ6とし、ダイシングによりチップ化して半導体デバイスとした後、ステムに実装した。かかるチップ化および実装の際の歩留まりは5%であった。かかるIII族窒化物半導体ウエハ6においては、ダンシングの際に第1の電極30とIII族窒化物半導体層20とが剥離したり、ステムに実装する際に第2の電極50とボンディングワイヤとが剥離したりする問題があった。また、実装された半導体デバイスについて、面内均一な発光が得られなかった。不良解析の結果、これらは貼り合わせ基板4がフッ化水素酸に長時間浸漬されたため、第1の電極30および第2の電極50に及ぼされたフッ化水素酸による腐食によることがわかった。
【0114】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。