【実施例1】
【0013】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
この実施例では転がり軸受が深溝玉軸受である場合を例示する。
図1に示すように、転がり軸受としての深溝玉軸受は、内輪10と、外輪20と、転動体としての多数(3つ以上)の玉31と、保持器35とを備えている。
内輪10は、円筒状に形成され、その外周面11の軸方向中央部には、円弧状の環状溝をなす内輪軌道面12が形成されている。
【0014】
図1に示すように、外輪20は、内輪10の外径寸法よりも大きい内径寸法を有する円筒状に形成され、内輪10の外周に環状空間を隔てて同一中心線上に配設される。この外輪20の内周面の軸方向中央部には、円弧状の環状溝をなす外輪軌道面22が形成されている。
多数の玉31は、保持器35によって保持された状態で内輪軌道面12と外輪軌道面22との間に転動可能に配設されている。
【0015】
図2と
図3に示すように、内輪軌道面12及び外輪軌道面22は、玉31に接触する接触領域13、23と、その接触領域13、23の両端部外側に隣接して形成されかつ玉31に接触しない非接触領域14、24とを有する。なお、
図2と
図3に示す二点鎖線の楕円は、玉31との接触楕円40を示し、接触領域13、23の軸方向の幅寸法は、接触楕円40の長径寸法に相当する。
【0016】
内輪軌道面12と、外輪軌道面22とのうち、少なくとも一方の軌道面には多数(3つ以上)の動圧発生用溝15が周方向に等間隔に配設されている。
また、この実施例1において、多数の動圧発生用溝15は、内輪軌道面12のそれぞれの非接触領域14にヘリンボーン形状をなして配設されている。
すなわち、多数の動圧発生用溝15は、その外端が非接触領域14の外側に開口し、内端が接触領域13との境界部まで延びている。
さらに、多数の動圧発生用溝15の内端は、内輪10の回転方向の前側に位置し、外端が内輪10の回転方向の後側に位置して傾斜溝に形成され、内輪10が回転することで、多数の動圧発生用溝15の内端に潤滑油の動圧が発生する。
【0017】
また、動圧発生用溝15の数(周方向の数)をAとし、玉31の数をZとし、自然数(1、2、3・・・)をnとしたときに、
「A=〔{n+(n+1)}/2〕×Z」
の関係となるように設定されている。
ここで、動圧発生用溝15の数Aは、小数点以下を四捨五入(又は切り上げ)して正の整数(自然数)とする。
【0018】
この実施例1に係る転がり軸受としての深溝玉軸受は上述したように構成される。
したがって、内輪軌道面12に多数の動圧発生用溝15が周方向に等間隔に配設されることで、軸受回転時において、内輪10が回転することで、多数の動圧発生用溝15の内端に潤滑油の動圧が発生する。これによって、深溝玉軸受の低トルク化を良好に図ることができる。
【0019】
また、内輪軌道面12の周方向に等間隔に配設される多数の動圧発生用溝15は、うねりと同じような作用をすることが想定される。
そこで、動圧発生用溝15の数(周方向の数)をAとし、玉31の数をZとし、自然数(1、2、3・・・)をnとしたときに、
「A=〔{n+(n+1)}/2〕×Z」
の関係となるように設定される。
このため、多数の玉31のうち、一つの玉31が一つの動圧発生用溝15の内端に対応する位置に配置されたときには、他の玉31が他の動圧発生用溝15の内端から外れた位置に配置される。
すなわち、全ての玉31が、全ての動圧発生用溝15の内端に対応する位置に配置されることがないと共に、その後、全ての玉31が全ての動圧発生用溝15の内端から外れた位置にされることがない。
これによって、全ての玉31が、全ての動圧発生用溝15の内端に対応する位置に配置され、その後、全ての玉31が全ての動圧発生用溝15の内端から外れた位置にされる場合と比べ、深溝玉軸受の振動(振幅)を小さく抑えることができる。
【0020】
また、この実施例1においては、内輪軌道面12の非接触領域14に多数の動圧発生用溝15が形成されることで、接触領域13に多数の動圧発生用溝15が形成される場合と比べ、多数の動圧発生用溝15が原因となる振動発生を抑制しながら、多数の動圧発生用溝15本来の機能を達成することができる。これによって、深溝玉軸受の低トルク化や耐久性の向上を図ることができる。
【0021】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、内輪軌道面12に、多数の動圧発生用溝15が形成される場合を例示したが、内輪軌道面12及び/又は外輪軌道面22に、多数の動圧発生用溝が形成されてもこの発明を実施することができる。
また、多数の動圧発生用溝は、内輪軌道面12及び/又は外輪軌道面22の多数の玉31に接触する接触領域13、23まで延びて配設されてもこの発明を実施することができる。
また、前記実施例1においては、転がり軸受が深溝玉軸受である場合を例示したが、アンギュラ玉軸受であってもよく、ころ軸受けであってもよい。
但し、転がり軸受がころ軸受である場合には、ころがクラウニング形状に形成される。