(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る定着ローラまたは定着ベルトの製造方法は、フッ素系樹脂チューブの中空内に基材を挿入する工程(以下、工程(1)とする)、基材とフッ素系樹脂チューブとの間に存在する間隙に弾性体層に対する気体透過率が空気よりも高い気体を満たす工程(以下、工程(2)とする)、およびフッ素系樹脂チューブを基材に被覆させる工程(以下、工程(3)とする)を含む。
【0012】
本発明の製造方法では、フッ素系樹脂チューブを基材に被覆させる工程で、空気よりも弾性体層に対する気体透過率が高い気体で基材とフッ素系樹脂チューブとの間に存在する間隙を満たすことに特徴を有する。
【0013】
一般に、基材とフッ素系樹脂チューブとの間に残された気泡は、外部に排出されることとなるが、この際、気泡は、基材を通過して外部へ排出される経路と、フッ素系樹脂チューブを通過して外部へ排出される経路がある。本発明では、基材は最外層に弾性体層を有するので、チューブ被覆後に残存する気泡は弾性体層とフッ素系樹脂チューブとに接していることになる。ここで、弾性体層(特にシリコーンゴムを含む弾性体層)とフッ素系樹脂チューブとでは、概ね弾性体層のほうが速く気体を通過させることから、本発明では弾性体層に対する気体の透過率に着目した。
【0014】
そして、従来は、フッ素系樹脂チューブへの基材の挿入は大気中で行われていたために、気泡は当然に空気の気泡であった。このため、気泡の排出にある程度時間を要しており、気泡の残存が歩留まりの低下の原因となっていた。一方で、本発明では、空気よりも弾性体層に対する気体透過率が高い気体で間隙を満たした後に、基材とフッ素系樹脂チューブとを密着させるため、基材とフッ素系樹脂チューブとの間に残された気泡は、空気よりも弾性体層に対する気体透過率が高い気体から構成される。したがって、従来よりも気泡の外部への排出が速く、気泡残りが少ないため、歩留まりが向上する。また、気泡残りに起因する画像不良や、耐久性の低下を抑制することもできる。
【0015】
以下、各工程について説明する。なお、本明細書において、定着ローラまたはベルトは、定着装置に用いられる、ローラ状またはベルト状のあらゆる部材を指す。
【0016】
(1)工程(1)
工程(1)は、本発明でいうフッ素系樹脂チューブの中空内に基材を挿入する工程を有するものであるが、まず、フッ素系樹脂チューブおよび基材をそれぞれ準備する。
【0017】
(基材)
本発明においては、基材はその最外層に弾性体層を有し、その断面が円形の外周面を有するものであれば、特に限定されるものではない。基材は、その用途によって適宜選択されるものである。基材の形状としては、円柱状、中空状、及びシームレスベルト状の基材がある。
【0018】
円柱状基材とは、一般に、全体が中実の成形体であり、加圧ローラなどの内部に加熱源を配置する必要のないローラ部材の基材として適している。中空状基材とは、中心部が空洞となっている基材を指し、内部に加熱源を設ける加熱ローラなどに用いられる。
【0019】
円柱状または中空状の基材は、後述する弾性体層の他、支持体層を有する。支持体層は、一般に、熱伝導性の良好なアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどの金属である。支持体層が金属から構成される場合、該支持体層は一般に芯金と呼ばれている。中空状の芯金の場合、厚さとしては、0.1mm〜5mm程度である。
【0020】
また、シームレスベルト状の基材とは、主として定着ベルトに用いられる基材を指す。定着ベルトは熱フィルム定着方式の定着装置に用いられるものであり、熱フィルム定着方式とは、定着ベルトを加熱することにより未定着トナー像を加熱定着する方法である。このような熱フィルム定着方式の定着装置では、例えばセラミックヒーターを介してフィルムが加熱される方法、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接加熱し、トナー像を定着させる発熱定着ベルトによる方法がある。発熱定着ベルトを用いた画像形成装置は、ウォーミングアップタイムが短く、消費電力もより小さく、熱定着装置として、省エネルギー化と高速化などの面から優れているため、好ましい。
【0021】
上記定着ベルトに用いられる基材には、耐熱性樹脂層を含む。耐熱性樹脂層を構成する耐熱性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が挙げられるが、耐熱性の点からポリイミド樹脂が好ましい。
【0022】
また、発熱定着ベルトの場合、耐熱性樹脂層に導電性物質が分散されている。導電性物質の構成材料としては、例えば金、銀、鉄、アルミニウムなどの純金属、ステンレス、ニクロムなどの合金、または炭素、黒鉛などの非金属が挙げられ、導電性物質の形状としては、球状粉末状、不定形粉末状、扁平粉末状、繊維状などが挙げられる。発熱性の観点から、繊維状の黒鉛であることが好ましい。ここに、繊維状とは、長径(L)が短径(l)の4倍以上であるものをいう。耐熱性樹脂層における導電性物質の含有量は、耐熱性樹脂層全体に対して、好ましくは、5〜60質量%である。
【0023】
定着ベルトの加熱には、電磁誘導加熱方式による加熱装置を用いる方式もある。かような方式であっても定着装置のウォームアップ時間の短縮が可能となる。電磁誘導加熱方式によって定着ベルトを加熱する場合、定着ベルトの基材は、磁束発生部によって発生される磁束を受けて誘導電流が誘起され、それによって発熱する発熱体層を有する。発熱体層に用いられる材料としては,比透磁率が高く,適度に体積抵抗率が大きい磁性材が用いられ、例えば、具体的には、ニッケル、磁性ステンレス、鉄、パーマロイ等が挙げられる。発熱体層の厚さとしては、10〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。発熱体層としては,金属等の導電性の非磁性材料を薄膜にし,ニッケル、パーマロイ、SUS、PI(ポリイミド)等と積層したものを使用することもできる。また、発熱体層として、上記発熱ベルトの欄で記載した耐熱性樹脂にニッケル、パーマロイ等の磁性材の粒子を分散させたものとしてもよい。あるいは、樹脂材にこれらの磁性材をコーティングしたものとしてもよい。発熱体層として、樹脂ベースのものを用いれば、定着ベルト全体としての柔軟性がさらに大きくなり、用紙の分離性を向上させることができる。
【0024】
本発明において、基材は弾性体層を含む。弾性体層は基材の最外層に配置される。弾性体層は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性体層を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。
【0025】
弾性体層を構成する材料としては、弾性を有し、かつ耐熱性の高い材質であれば特に限定されない。弾性体層を構成する材料として、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。シリコーンゴムは、シロキサン結合(−Si−O−Si)を主鎖に持つものであり、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン、フッ化ポリシロキサンなどがあり、具体的には、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴムなどが挙げられる。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合ゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどを挙げることができる。これらの材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上混合してもよい。中でも、耐熱性、耐寒性、加工時における自由度の高さの点で、弾性体層がシリコーンゴムを含むことが好ましい。弾性体層中のシリコーンゴムの含有量は特に限定されるものではないが、弾性体層100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは100質量%である。シリコーンゴムとしては、加硫形態により、熱加硫型シリコーンゴムと室温硬化型シリコーンゴムがあるが、いずれを用いてもよい。また、化合物の粘性状態により、シリコーンゴムはミラブル型シリコーンゴムと縮合型または白金化合物等の付加反応触媒により硬化可能な付加型の液状シリコーンゴムとに大別できるが、特別な硬化装置を必要としないことから、液状シリコーンゴムを用いることが好ましく、中でも付加型液状シリコーンゴムを用いることが好ましい。ここで、液状シリコーンゴムの場合の、シリコーンゴムの粘度は、25℃で50〜200Pa・sであることが好ましい。
【0026】
弾性体層には、熱伝導性を高める目的で、無機粒子を配合することが好ましい。弾性体層に含有されうる無機粒子としては、炭化ケイ素、ボロンナイトライド、アルミナ、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、マイカ、シリカ、酸化鉄、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、シリカ、酸化鉄が好ましい。無機粒子の弾性体層中の配合量は、弾性体層100質量%に対して、20〜60質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、弾性体層に熱伝導性を効果的に付与できる。
【0027】
弾性体層は2層以上の積層形態であってもよい。弾性体層の厚みは通常0.1〜30mmであり、好ましくは0.1〜20mmである。
【0028】
弾性体層には、使用目的、設計目的などに応じて、増量充填剤、加硫剤、着色剤、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を添加することが出来る。
【0029】
基材には上記の他、用途に応じて他の層を含んでいてもよい。
【0030】
(フッ素系樹脂チューブ)
フッ素系樹脂チューブは押し出し成形または延伸成形により製造することができる。
【0031】
フッ素系樹脂チューブを構成する材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体)等が挙げられる。これらの材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上混合してもよい。中でも、成形性やトナー離型性などの点で、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が好ましい。フッ素系樹脂チューブは、熱収縮性であっても、非熱収縮性であってもよい。フッ素系樹脂チューブは市販品を用いることもでき、独自に合成したものを使用することができ、例えば、デュポン社製451HP、351HP、950HPなどのHPシリーズ;旭硝子社製802UP;グンゼ社製NST、NSE、SMT、SMEなどが挙げられる。
【0032】
フッ素系樹脂チューブの厚さは、10〜500μm程度であり、好ましくは20〜200μmであり、より好ましくは20〜50μmであり、内径は、通常15〜80mm、好ましくは15〜40mmである。チューブの長さは、基材の長さに応じて適宜設定することができる。
【0033】
なお、弾性体層とフッ素系樹脂チューブとの間に、弾性体層とフッ素系樹脂チューブとの密着性を向上させるために、プライマー層または接着剤層を設けてもよい。弾性体層を通過する気泡抜けを速くさせるためには、プライマー層または接着剤層を予めフッ素系樹脂チューブ側に設けて、弾性体層を含む基材にチューブを被覆させることが好ましい。
【0034】
工程(1)においては、続いてフッ素系樹脂チューブの中空内に基材を挿入する。
【0035】
フッ素系樹脂チューブへの基材の挿入方法は、フッ素系樹脂チューブと基材との間に後述する気体が満たされる間隙が存在するように挿入する限り、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0036】
非熱収縮性のフッ素系樹脂チューブを用いる場合には、基材の外径よりも小さい内径を有するチューブを用いることが好ましい。このような内径を有するチューブを用いる場合には、チューブを拡張することによって、基材を挿入することができる。具体的には、例えば、真空ポンプを用いてフッ素系樹脂チューブを外型の内面へ拡張状態で保持することによって、基材を挿入することができる。
図1にフッ素系樹脂チューブの中空内への基材の挿入を説明する概略図を示す。真空ポンプ3を用いて、フッ素系樹脂チューブと基材との間に後述する気体が満たされる間隙ができるように、外型4の内面にフッ素系樹脂チューブ2を拡張しながら保持することにより、チューブ中空内に基材1を挿入することができる。かような方法によれば、工程(2)において気体を満たすための間隙を併せて作製することもできる。
【0037】
一方で、熱収縮性のフッ素系樹脂チューブを用いる場合には、フッ素系樹脂チューブの内径は基材の外径よりも大きいチューブを用いることが好ましい。この場合、チューブを保持してそのまま基材を挿入することができ、また、工程(2)で必要な気体充填のための間隙を別途作製する必要もない。
【0038】
(2)工程(2)
工程(2)では、基材とフッ素系樹脂チューブとの間に存在する間隙に弾性体層に対する気体透過率が空気よりも高い気体を満たす。
【0039】
ここで、気体透過率は、室温、大気圧(23℃、1気圧)、50%RH環境下で、JIS K7126−1(2006)に準じて測定した値を採用する。ここで、気体透過率は、定圧下、単位厚さ当たり、単位面積当たり、単位時間当たりの気体の体積(10
−9cm
3・cm/sec/cm
2/cmHg)で表す。
【0040】
気体透過率は、基材に用いられている弾性体層に対する値である。基材に用いられている弾性体層が単一層である場合には、弾性体層と同じ組成の樹脂断片を測定用に作製し、該断片を用いて気体透過率を測定すればよい。また、弾性体層が積層形態である場合には、最外層(フッ素系樹脂チューブと接する層)と同じ組成の樹脂断片を測定用に作製し、該断片を用いて気体透過率を測定すればよい。
【0041】
本発明の効果がより効果的に発揮されることから、気体透過率が空気の透過率よりも2〜10倍である気体を用いることが好ましい。
【0042】
空気よりも弾性体層に対する気体透過率が高い気体としては、例えば、二酸化炭素、アルゴン、酸素、水素、ヘリウム、アンモニア、一酸化窒素、二酸化窒素、硫化水素、二硫化炭素、メタンおよびこれらの混合物などが挙げられる。中でも、安全性、操作性、弾性体層やフッ素系樹脂チューブの物性に影響を与えない気体であることから、二酸化炭素、アルゴン、またはこれらの混合物であることが好ましく、二酸化炭素であることがより好ましい。
【0043】
基材とフッ素系樹脂チューブとの間に存在する間隙に気体を満たす方法としては、特に限定されず、基材およびフッ素系樹脂チューブとが含まれるように密閉空間とし、該密閉空間全体の真空ポンプ等を用いて空気を除去した後、所望の気体で満たす方法、基材とフッ素系樹脂チューブとの間に存在する間隙が密閉空間となるように、間隙の両端部を密閉し空気を除去した後、チューブ等により間隙に所望の気体を送り込む方法などが挙げられる。あるいは、基材のフッ素系樹脂チューブへの挿入を、所望の気体環境下で行い(フッ素系樹脂チューブ内の気体を所望の気体に置換した後、基材のチューブへの挿入を行い)、該環境下のまま次工程に進行してもよい。
【0044】
この際、気体の充填圧としては、1〜2気圧が好ましい。
【0045】
(3)工程(3)
工程(3)では、フッ素系樹脂チューブを基材に被覆させる。
【0046】
フッ素系樹脂チューブを基材に被覆させる方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
好適な一実施形態としては、上述したように、基材の外径よりも小さい内径を有する非熱収縮性のチューブを用い、
図1に示すように、真空ポンプを用いて、フッ素系樹脂チューブを外型の内面へ拡張状態で保持して基材を挿入した後、真空を解除すれば、チューブの収縮により基材にチューブを被覆することができる。
【0048】
熱収縮性チューブを用いる場合には、さらにチューブを加熱してもよい。
【0049】
[定着装置]
本発明に係る製造方法により製造された定着ベルトおよび定着ローラは、定着装置に用いることができる。
【0050】
定着装置としては、熱ローラ方式の定着装置や、ベルト加熱方式の定着装置が挙げられる。
【0051】
熱ローラ方式の定着装置は、一般に、加熱ローラと、これに当接する加圧ローラとによるローラ対を備え、加熱ローラおよび加圧ローラ間に付与された圧力によって加圧ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。
【0052】
図2は、熱ローラ方式の定着装置の一実施形態を示す断面模式図である。
図2の定着装置20は、本発明に係る製造方法により製造された加熱定着ローラ20aとこれに当接する加圧ローラ20bとを備えている。Pは画像支持体である。本実施形態では、加熱定着ローラ20aが本発明に係る製造方法により製造されたローラである。
【0053】
加熱定着ローラ20aは、芯金23の表面上にフッ素系樹脂層21、および弾性体層22が芯金23の表面上に形成され、線状ヒーターよりなる加熱部材24を内包している。加圧ローラ20bは、弾性体層25が芯金26の表面に形成されてなる。
【0054】
加熱ローラは、一般に、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなる芯金の内部に、ハロゲンランプなどよりなる熱源が配設されてなり、当該熱源によって芯金が加熱され、加熱ローラの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものである。
【0055】
特に、最大4層のトナー層からなるトナー像を十分に加熱溶融させて混色させる能力を要求されるフルカラー画像の形成を行う画像形成装置の定着装置として用いられる場合は、加熱ローラとして、芯金を高い熱容量を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
また、加圧ローラは、例えばウレタンゴム、シリコーンゴムなどの軟質ゴムからなる弾性体層を有するものである。
【0057】
加圧ローラとしては、例えばアルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなる芯金を有するものとし、当該芯金の外周面上に弾性体層が形成されたものを用いてもよい。
【0058】
また、加圧ローラとしては、その最外層として、加熱ローラと同様、フッ素系樹脂層が形成されていてもよい。このフッ素系樹脂層の厚みは、概ね10〜30μmとすることができる。したがって、本発明に係る製造方法により製造された定着ローラを加圧ローラとして用いることができる。
【0059】
さらに、加圧ローラは、芯金を有するものとして構成した場合に、その内部に、加熱ローラと同様にハロゲンランプなどよりなる熱源を配設して当該熱源によって芯金を加熱し、加圧ローラの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものとして構成してもよい。
【0060】
このような熱ローラ方式の定着装置においては、ローラ対を回転させて定着ニップ部に可視画像を形成すべき画像支持体を挟持搬送させることによって、加熱ローラによる加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0061】
ベルト加熱方式の定着装置は、一般に、例えばセラミックヒータよりなる加熱体と、加圧ローラと、これらの加熱体と加圧ローラとの間に耐熱性ベルトよりなる加熱定着ベルトが挟まれてなるものであり、加熱体および加圧ローラ間に付与された圧力によって加圧ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。この加熱定着ベルトとして、本発明に係る製造方法により製造された定着ベルトを用いることができる。
【0062】
このようなベルト加熱方式の定着装置においては、定着ニップ部を形成する加熱定着ベルトと加圧ローラとの間に、未定着のトナー像が担持された画像支持体を前記加熱定着ベルトと共に挟持搬送させることによって、加熱定着ベルトを介した加熱体による加熱と、
定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0063】
図3aは、発熱ベルトの層構成の概略断面図である。該発熱ベルトは、本発明に係る製造方法により製造された定着ベルトである。
【0064】
定着装置用発熱ベルト30は、発熱ベルトの支持体層31は、ポリイミド等の耐熱性樹脂、ステンレス、鉄、アルミニウム等の薄い金属板等からなる。その上に端部に給電端子33a、33bを設けた導電性粒子が分散された耐熱性樹脂層33を塗設し、絶縁樹脂層34を介して弾性体層35と更に表面層としてフッ素系樹脂層36が設けられている。
【0065】
図3bは、
図3aの定着装置用発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図を示す。定着装置用発熱ベルト30を押圧部材37により、対向する押圧ローラ38に押し当てる構成を有する。なお、Nは押圧部材37により押しつけられた発熱ベルト30と押圧ローラ38によるニップ部であり、39は定着装置用発熱ベルト30のガイド部材である。未定着トナー像を乗せた画像支持体Pがこのニップ間を通り搬送されることにより、トナー像は画像支持体P上に定着される。
【0066】
[画像形成装置]
上記定着装置を含む画像形成装置は公知のものを用いることができる。
【0067】
図4は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0068】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0069】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0070】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0071】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0072】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0073】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0074】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる
画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0075】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0076】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての画像支持体Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、画像支持体P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や画像支持体等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0077】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0078】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0079】
二次転写ローラ5bは、ここを画像支持体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0080】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0081】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0082】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0083】
尚、
図4の画像形成装置では、カラーのレーザプリンタを示したが、勿論、モノクローのレーザプリンタやコピーにも同様に適用可能である。又、露光光源もレーザ以外の光源、例えばLED光源を用いてもよい。
【0084】
[画像支持体]
画像支持体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、上述した画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば特に限定されるものではない。本発明で使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【実施例】
【0085】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0086】
(気体透過率の測定方法)
GTRテック株式会社製のガス透過率測定装置(GTR−10X)を用いて、室温、大気圧(23℃、1気圧)、50%RH環境下で、JIS K7126−1(2006)に記載の方法に準じて測定し、弾性体層に対する気体透過率(10
−9cm
3・cm/sec/cm
2/cmHg)を求めた。
【0087】
(実施例1)
図5の工程にしたがって、定着ローラを製造した。
【0088】
ポリアルキルアルケニルシロキサンを主成分とするシリコーン混和物2種(商品名:XE15−B7354(A)を50重量部、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製とXE15−B7354(B)を50重量部、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)を混合し、弾性体層形成用塗布液とした。粘度は、55Pa・sであった。粘度は、ビスコテック(株)デジタル回転式粘度計で測定した値を示す。
【0089】
SUS芯金(外径30mm、長さ400mm、厚み0.5mm)を回転させながら、弾性体層形成用塗布液を乾燥後膜厚200μmとなるように塗布した後、200℃2時間で乾燥・加硫を行って、シリコーンゴムからなる弾性体層が被覆された芯金を基材として準備した。
【0090】
押し出し成形で製造されたPFAチューブ(グンゼ社製NSEタイプ、厚み30μm、内径30.0mm、軸方向400mm)を
図1のように真空ポンプを用いて基材が挿入できるように外型に保持した。一方、上記で製造した基材をPFAチューブに挿入した。この際、PFAチューブと基材との間には0.1〜0.5mmほどの間隙がある。
【0091】
基材を挿入した後、チューブの両端部を封鎖し、PFAチューブと基材との間の空間が密閉空間となるようにした。
【0092】
次いで、PFAチューブと基材との間の空間雰囲気を、外部から二酸化炭素を導入することにより大気から二酸化炭素に置換した。なお、二酸化炭素のシリコーンゴム弾性体層に対する気体透過率は、323×10
−9cm
3・cm/sec・cm
2・cmHgであった。その後、PFAチューブをシュリンクして、基材に被覆させて、実施例1の定着ローラを得た。
【0093】
(実施例2)
PFAチューブと基材との間の空間雰囲気を、外部からアルゴンを導入することにより大気からアルゴンに置換したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の定着ローラを得た。なお、アルゴンのシリコーンゴム弾性体層に対する気体透過率は、69×10
−9cm
3・cm/sec・cm
2・cmHgであった。
【0094】
(比較例1)
PFAチューブと基材との間の空間雰囲気を他の気体に置換することなく、大気中で外型にセットされたPFAチューブを解除してPFAチューブを基材に被覆させたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の定着ローラを得た。なお、空気のシリコーンゴム弾性体層に対する気体透過率は、34×10
−9cm
3・cm/sec・cm
2・cmHgであった。
【0095】
(比較例2)
PFAチューブと基材との間の空間雰囲気を外部からヘリウムを導入することにより大気をアルゴンで置換したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の定着ローラを得た。なお、ヘリウムのシリコーンゴム弾性体層に対する気体透過率は、34×10
−9cm
3・cm/sec・cm
2・cmHgであった。
【0096】
各実施例および比較例で得られた定着ローラの製造直後の0.5mm以上の気泡残りを目視で観察した。一定面積内に気泡残りのないものを良品と判断し、n=50による歩留まりを求めた。表1に結果を示す。
【0097】
【表1】
【0098】
上記表1に記載のとおり、実施例1および2で作製された定着ローラはいずれも80%以上の歩留まりが得られることから、製造直後の気泡残りが少なく、気泡抜けが早いことがわかる。