(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子アクチュエータは、弾性を有する絶縁性高分子材料により形成された誘電体層と、弾性を有する導電性高分子材料により形成されて前記誘電体層を両側から挟む一対の電極とを備え、前記両電極間への電圧印加に応じ、前記誘電体層をその面に沿う方向へ伸長させ、前記電圧印加の停止に応じ、前記誘電体層を収縮させて元の形状に復元させることにより伸縮動作するものである請求項1又は2に記載の電動義手。
前記高分子アクチュエータは、前記誘電体層及び前記両電極が渦巻き状に巻かれることにより円筒状に形成されており、前記両電極間への電圧印加に応じ軸方向へ伸長し、電圧印加の停止に応じ軸方向へ収縮して元の形状に復元するものである請求項3に記載の電動義手。
前記複数の指部の少なくとも1つは複数の関節部を有しており、前記複数の関節部を有する指部には、前記モータ及び前記高分子アクチュエータにより駆動される前記ワイヤが、前記複数の関節部を経由した状態で配置されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の電動義手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようにモータを駆動源とした電動義手では、指部を大きく屈曲(変位)させて把持対象物を把持することができる。
反面、小型のモータが発生するトルクは小さい。そのため、把持対象物を指部によって安定して把持することが難しい。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、指部を大きく変位させることのできるモータの利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持することのできる電動義手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する
ために、請求項1又は請求項2に記載の電動義手は、それぞれ関節部を支点として屈曲及び伸展する複数の指部と、前記関節部を経由した状態で前記各指部に沿って配置されたワイヤと、前記ワイヤを巻き取ることで、同ワイヤを、その長さ方向についての一方である屈曲方向へ引っ張って前記指部を屈曲させるモータと、高分子材料により長尺状に形成されて前記ワイヤの途中に配置され、電圧印加に応じて弾性変形するとともに、電圧印加の停止に応じて元の形状に復元することにより軸方向に伸縮動作する高分子アクチュエータと、前記モータによる前記ワイヤの巻取り後に、同モータ及び前記高分子アクチュエータの一方と前記ワイヤとの相対移動を規制するロック機構とを備え、前記高分子アクチュエータは、前記ロック機構により前記相対移動が規制されている状態で伸縮動作することで、前記ワイヤを前記屈曲方向へ引っ張るものである。
【0007】
上記の構成によれば、複数の指部を屈曲させて把持対象物を把持する場合には、モータ及び高分子アクチュエータが駆動源とされる。
モータの出力軸が回転させられてワイヤが巻き取られると、ワイヤが、その長さ方向についての一方である屈曲方向へ引っ張られる。ワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、その指部が関節部を支点として屈曲させられる。
【0008】
これに対し、ワイヤの途中に配置された高分子アクチュエータは、電圧が印加されると弾性変形し、その電圧印加が停止されると元の形状に復元することで軸方向へ伸縮動作する。
【0009】
モータによってワイヤが巻き取られた後には、そのモータ及び高分子アクチュエータの一方とワイヤとの相対移動がロック機構によって規制される。そして、高分子アクチュエータの上記伸縮動作は、ロック機構により相対移動が規制されている状態で行なわれる。この伸縮動作により、ワイヤが上記屈曲方向へさらに引っ張られる。ワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、その指部が関節部を支点としてさらに屈曲させられる。
【0010】
ここで、モータには、変位量が多いが出力トルクが小さいという特性があり、高分子アクチュエータには、変位量は少ないが出力トルクが大きいという特性がある。
そのため、指部を大きく屈曲(多く変位)させる場合には、モータによってワイヤを屈曲方向へ多く引っ張る一方、強い力で指部を把持対象物に押付けて同把持対象物を把持する場合には、高分子アクチュエータによってワイヤを強い力で屈曲方向へ引っ張ることで、モータの特性が高分子アクチュエータによって補われる。その結果、複数の指部を把持対象物に接近する位置まで屈曲(変位)させる動作については、モータによって行なわせ、複数の指部によって把持対象物を把持する動作については、高分子アクチュエータによって行なわせる。こうすることで、指部を大きく変位させることのできるモータの利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持することが可能となる。
【0011】
なお、モータによって巻き取られ、高分子アクチュエータによって屈曲方向へ引っ張られたワイヤに対し、屈曲方向とは反対方向へ引っ張る力が作用しても、ワイヤがその方向へ移動することはロック機構により規制される。その結果、把持対象物は複数の指部によって把持され続ける。
【0016】
請求項1に記載の電動継手は、前記ワイヤは、前記高分子アクチュエータに対し、同ワイヤの長さ方向への移動可能に設けられており、前記高分子アクチュエータは、前記軸方向についての前記指部側の端部を固定端とし、前記モータ側の端部を可動端として配置されており、前記ロック機構は、前記モータによる前記ワイヤの巻取り時には、同ワイヤを前記可動端に係止せず、同ワイヤの前記高分子アクチュエータとの相対移動を許容する一方、前記モータによる前記ワイヤの巻取り後には同ワイヤを前記可動端に係止することで、同ワイヤの前記高分子アクチュエータとの相対移動を規制するものであり、前記高分子アクチュエータは、前記モータによる前記ワイヤの巻取り時には収縮させられ、前記ロック機構により前記相対移動が規制されている状態で伸長させられるものであ
る。
【0017】
上記の構成によれば、モータによるワイヤの巻取り時には、同ワイヤが屈曲方向へ引っ張られる。このときには、高分子アクチュエータが収縮させられ、可動端(モータ側の端部)が固定端(指部側の端部)に接近する。また、ロック機構はワイヤを上記可動端に係止しない。そのため、ワイヤの高分子アクチュエータとの相対移動が許容され、同ワイヤがモータ側へ移動する。このワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、複数の指部が把持対象物に接近する位置まで関節部を支点として大きく屈曲(変位)させられる。
【0018】
モータによるワイヤの巻取り後には、同ワイヤがロック機構により可動端に係止される。この係止により、ワイヤの高分子アクチュエータとの相対移動が規制される。この相対移動の規制下で高分子アクチュエータが伸長させられる。この伸長に伴い、高分子アクチュエータの可動端(モータ側の端部)が固定端(指部側の端部)から遠ざかる。この高分子アクチュエータの可動端により、ワイヤが屈曲方向へさらに引っ張られる。ワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、その指部が関節部を支点としてさらに屈曲させられる。複数の指部が強い力で把持対象物に押し当てられ、その把持対象物が安定して把持される。
【0019】
請求項2に記載の電動継手は、前記ワイヤは前記高分子アクチュエータに対し、同ワイヤの長さ方向への移動可能に設けられ、前記モータは前記ワイヤの長さ方向への移動可能に設けられており、前記高分子アクチュエータは、軸方向についての前記指部側の端部を固定端とし、前記モータ側の端部を可動端として配置されており、前記ロック機構は、前記モータによる前記ワイヤの巻取り時には、巻取り方向への前記モータの回転を許容する一方、前記モータによる前記ワイヤの巻取り後には、巻取り方向とは逆方向への前記モータの回転を規制することで、前記ワイヤの前記モータとの相対移動を規制するものであり、前記高分子アクチュエータは、前記モータによる前記ワイヤの巻取り時には収縮させられ、前記ロック機構により前記相対移動が規制されている状態で伸長させられ、その伸長により、前記屈曲方向へ前記モータを移動させるものであ
る。
【0020】
上記の構成によれば、モータによるワイヤの巻取り時には、巻取り方向へのモータの回転がロック機構により許容される。この回転により、ワイヤが屈曲方向へ引っ張られ、同ワイヤがモータ側へ移動する。このときには、高分子アクチュエータが収縮させられ、可動端(モータ側の端部)が固定端(指部側の端部)に接近する。上記ワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、複数の指部が把持対象物に接近する位置まで関節部を支点として大きく屈曲(変位)させられる。
【0021】
モータによるワイヤの巻取り後には、巻取り方向とは逆方向へのモータの回転がロック機構により規制され、ワイヤのモータとの相対移動が規制される。この相対移動の規制下で高分子アクチュエータが伸長させられる。この伸長に伴い、高分子アクチュエータの可動端(モータ側の端部)が固定端(指部側の端部)から遠ざかり、上記屈曲方向へモータが移動させられる。
【0022】
そのため、ワイヤが屈曲方向へさらに引っ張られる。ワイヤの動きが、関節部を経由して指部の各部に伝達され、その指部が関節部を支点としてさらに屈曲させられる。複数の指部が強い力で把持対象物に押し当てられ、その把持対象物が安定して把持される。
【0023】
上記電動義手において、前記高分子アクチュエータは、弾性を有する絶縁性高分子材料により形成された誘電体層と、弾性を有する導電性高分子材料により形成されて前記誘電体層を両側から挟む一対の電極とを備え、前記両電極間への電圧印加に応じ、前記誘電体層をその面に沿う方向へ伸長させ、前記電圧印加の停止に応じ、前記誘電体層を収縮させて元の形状に復元させることにより伸縮動作するものであることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、一対の電極間に電圧が印加されると、一方の電極がプラスの電荷を帯び、他方の電極がマイナスの電荷を帯びる。ここで、各電極に電荷が所定量蓄積されるまでは電流が流れるが、電荷が所定量蓄積されると電流はほとんど流れなくなる。そのため、高分子アクチュエータの伸縮動作のために消費される電力は少なくてすむ。
【0025】
両電極が上記のように電荷を帯びると、プラスの電荷とマイナスの電荷とが互いに引きつけ合う力(クーロン力)が両電極に作用し、誘電体層が両電極によって両側から押圧される。誘電体層は弾性を有する絶縁性高分子材料によって形成されているため、上記のように両電極によって両側から押圧されると、自身の面に沿う方向に伸長する。電極も弾性を有する導電性高分子材料によって形成されているため、上記誘電体層に追従して伸長する。
【0026】
両電極間への上記電圧印加が停止されると、各電極に蓄積されていた電荷が放出(放電)される。この放電により、各電極が帯びている電荷が少なくなり、上記クーロン力が小さくなる。その結果、誘電体層は、自身の弾性復元力により、同誘電体層の面に沿う方向に収縮する。弾性を有する電極もまた誘電体層に追従して収縮する。
【0027】
上記電動義手において、前記高分子アクチュエータは、前記誘電体層及び前記両電極が渦巻き状に巻かれることにより円筒状に形成されており、前記両電極間への電圧印加に応じ軸方向へ伸長し、電圧印加の停止に応じ軸方向へ収縮して元の形状に復元するものであることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、高分子アクチュエータは、誘電体層及びその両側の電極が渦巻き状に巻かれることにより、コンパクトな形態(円筒状)となり、電動義手への搭載性が向上する。
【0029】
円筒状をなす高分子アクチュエータは、両電極間への電圧印加に応じ、誘電体層の面に沿う方向のうち軸方向(高分子アクチュエータの軸方向)へ伸長する。高分子アクチュエータは、両電極間への上記電圧印加の停止に応じ、軸方向に収縮して元の形状に復元する。
【0030】
上記電動義手において、前記高分子アクチュエータは複数本用いられており、前記高分子アクチュエータ毎の可動端は、共通の取付け部に取付けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、高分子アクチュエータが複数本用いられ、それらの可動端が共通の取付け部に取付けられることで、同取付け部に大きな力が加えられる。その結果、取付け部を通じ各指部に大きな力が伝達される。
【0031】
上記電動義手において、前記複数の指部の少なくとも1つが複数の関節部を有している場合には、前記複数の関節部を有する指部には、前記モータ及び前記高分子アクチュエータにより駆動される前記ワイヤが、前記複数の関節部を経由した状態で配置されていることが好ましい。
【0032】
ワイヤを引っ張って指部を屈曲させるタイプの電動義手では、その指部が有する関節部の数が多くなるに従い、指部を関節部毎に屈曲させるために必要なワイヤの引っ張り量が多くなる。従って、複数の関節部を有する指部をワイヤによって屈曲させる電動義手に、モータ及び高分子アクチュエータを組合わせてワイヤを屈曲方向へ引っ張る上記電動義手を適用することで、指部を大きく変位させることのできるモータの利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持するといった効果が、より一層有効なものとして得られる。
【発明の効果】
【0033】
上記電動義手によれば、指部を大きく変位させることのできるモータの利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、電動義手の第1実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すように、電動義手は義手本体11、複数の指部12,13、指部12,13毎のワイヤ21、駆動源、ロック機構A、及び指部12,13毎の引出し機構Bを備えている。
【0036】
義手本体11は、人の手の甲に相当する箇所であり、電動義手の骨格部分をなしている。各指部12,13は、複数の可動部14及び複数の関節部15を備えている。複数の可動部14は、自身の長さ方向に沿って列をなすように配置されている。ここで、各指部12,13の長さ方向のうち、義手本体11に近づく側を基端側といい、義手本体11から遠ざかる側を先端側というものとする。複数の関節部15の1つは、義手本体11と、その義手本体11に最も近い箇所(基端側)の可動部14との間に配置されている。残りの関節部15は、隣り合う可動部14間に配置されている。各可動部14は、その基端部に接する関節部15を支点として屈曲可能である。
【0037】
義手本体11には、指部12,13毎にプーリ16が設けられている。各プーリ16は、各指部12,13の長さ方向に直交する共通の回転軸18に固定されており、その回転軸18と一体で回転する。
【0038】
指部12,13毎のワイヤ21は、人の指の腱に相当するものであり、各関節部15を経由した状態で指部12,13の長さ方向に沿って配置されている。各ワイヤ21の一方(
図1の左方)の端部21Aは、最も先端側の可動部14の先端部に係止されている。各ワイヤ21は、全ての可動部14及び全ての関節部15を経由した状態で配置されている。各ワイヤ21の他方(
図1の右方)の端部は、上記プーリ16に係止されている。
【0039】
駆動源は、上記ワイヤ21を、その長さ方向についての一方(
図1の右方)である屈曲方向へ引っ張って指部12,13を屈曲させるためのものであり、指部12,13に共通のモータ22と、指部12,13毎に設けられた高分子アクチュエータ25とからなる。
【0040】
モータ22としては、通電により出力軸23を回転駆動する電動モータが用いられている。モータ22は、義手本体11に移動不能に取付けられており、通電の態様を切替えることで正逆回転が可能である。モータ22の出力軸23は上記回転軸18に対し直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)へ延びていて、同回転軸18に駆動連結されている。モータ22は、出力軸23を一方向へ回転させることで、ワイヤ21を巻付ける方向へ両プーリ16を回転させる。また、モータ22は、出力軸23を上記方向とは逆方向へ回転させることで、ワイヤ21を引き出す方向へ両プーリ16を回転させることが可能である。
【0041】
各高分子アクチュエータ25は、上記モータ22によるワイヤ21の巻取り後に、そのワイヤ21を上記屈曲方向へ引っ張るためのものである。高分子アクチュエータ25は、高分子材料により形成され、かつ電圧印加に応じて弾性変形し、電圧印加の停止に応じて元の形状に復元することにより伸縮動作するアクチュエータである。
【0042】
各高分子アクチュエータ25としては、誘電方式と呼ばれるものと、イオン方式と呼ばれるものとがあるが、本実施形態では、変位、発生力等の点で優れる誘電方式の高分子アクチュエータ25が採用されている。
【0043】
図2は、誘電方式の高分子アクチュエータ25を、平面状に展開させた状態で示している。
図2に示すように、高分子アクチュエータ25は、弾性を有する絶縁性高分子材料によって形成された誘電体層26と、弾性を有する導電性高分子材料により形成されて、誘電体層26をその厚み方向(
図2の上下方向)についての両側から挟む一対の電極27,28とを備えている。
【0044】
誘電体層26は、架橋点の動く高分子化合物(高分子ゲル等)、例えばポリロタキサンによって形成されている。これに対し、両電極27,28は、汎用ゴム等によって形成されている。
【0045】
高分子アクチュエータ25は、両電極27,28間への電圧印加に応じ、誘電体層26をその面に沿う方向へ伸長させ、電圧印加の停止に応じ、誘電体層26を収縮させて元の形状に復元させることにより伸縮動作するものである。
【0046】
高分子アクチュエータ25の主要部は、誘電体層26及び両電極27,28が、渦巻き状に巻かれることにより、
図3(A),(B)に示すように、両端が開口された円筒状に形成されていて、長尺状をなしている。このように、高分子アクチュエータ25はコンパクトな形態を採っており、電動義手への搭載性のよいものとなっている。
【0047】
また、各高分子アクチュエータ25は、両電極27,28間への電圧印加により、誘電体層26の面に沿う方向のうち軸方向(高分子アクチュエータ25の長さ方向)に伸長する(
図3(B)参照)。また、高分子アクチュエータ25は、電圧印加の停止により、上記軸方向(長さ方向)に収縮して元の形状に復元する(
図3(A)参照)。このように、高分子アクチュエータ25は、電圧の印加及び印加停止により軸方向に伸縮動作する。
【0048】
上記高分子アクチュエータ25の軸方向についての両方の開口には、円筒状の雌ねじ部材29がそれぞれ挿入されて固定されている。各雌ねじ部材29の内壁面には雌ねじが形成されている。
【0049】
各高分子アクチュエータ25内において、上記両雌ねじ部材29間にはコイルばね31が圧縮された状態で配置されている。各コイルばね31は、両雌ねじ部材29を、互いに遠ざける方向(
図3(A),(B)の各左右方向)へ付勢している。このコイルばね31の付勢力は、両雌ねじ部材29を通じて高分子アクチュエータ25に伝わる。従って、高分子アクチュエータ25は、その軸方向に伸びるように付勢されていることになる。このような構成を採っているのは、誘電体層26を面に沿う方向へ伸長させる際に、渦に沿う方向へ伸長するのを極力抑えることにより、軸方向への高分子アクチュエータ25の変位量を可能な限り大きくするためである。
【0050】
図4(A)に示すように、上記の構成を有する高分子アクチュエータ25は複数本用いられている。
図4(A)〜(C)では、便宜上、2本の高分子アクチュエータ25が図示されているが、この本数に限られない。また、上記
図1では、指部12,13毎の高分子アクチュエータ25が1本のみ図示されている。複数本の上記高分子アクチュエータ25は、軸方向を、伸展した指部12,13の長さ方向に揃えた状態で並列に配置されている。すなわち、各高分子アクチュエータ25の伸縮方向と、伸展した各指部12,13の長さ方向とが合致している。これらの高分子アクチュエータ25では、その長さ方向についての両端部が可動端とされている。
【0051】
図3(A),(B)に示すように、各高分子アクチュエータ25の両端部には電極取出し部32,33が設けられている。電極取出し部32は、両電極27,28の一方に電気的に接続され、電極取出し部33は両電極27,28の他方に電気的に接続されている。
【0052】
各高分子アクチュエータ25の軸方向についての両側には、それぞれ板状をなす一対の取付け部34,35が配置されている。両取付け部34,35は、複数の上記高分子アクチュエータ25を挟んで相対向している。両取付け部34,35の一方(取付け部35)は電源36のプラス極に接続され、他方(取付け部34)はスイッチ37を介して電源36のマイナス極に接続されている。
【0053】
各高分子アクチュエータ25の一方(
図3(A),(B)の左方)の端部25Aは、ボルト等の締結部材38により取付け部34に締結されている。この締結部材38により、電極取出し部32が取付け部34に圧接させられ、電極27,28の一方が電極取出し部32を介して取付け部34に電気的に接続されている。
【0054】
また、各高分子アクチュエータ25の他方(
図3(A),(B)の右方)の端部25Bは、締結部材39により取付け部35に締結されている。この締結部材39により、電極取出し部33が取付け部35に圧接させられ、電極27,28の他方が電極取出し部33を介して取付け部35に電気的に接続されている。
【0055】
図4(A)〜(C)に示すように、上記複数の高分子アクチュエータ25は、上記ワイヤ21に対し平行となる姿勢で、同ワイヤ21の途中に配置されている。また、両取付け部34,35は、上記ワイヤ21に対し直交した状態で同ワイヤ21の途中に配置されている。そして、両取付け部34,35がワイヤ21に固定されている。
【0056】
上記複数の高分子アクチュエータ25及び両取付け部34,35は、義手本体11に固定されておらず、ワイヤ21とともにそのワイヤ21の長さ方向へ移動可能である。
ここで、モータ22には、変位量が多いが出力トルクが小さいという特性があり、各高分子アクチュエータ25には、変位量は少ないが出力トルクが大きいという特性がある。
【0057】
そこで、こうした特性の相違を利用し、伸展している指部12,13を大きく屈曲(多く変位)させる場合には、モータ22によってワイヤ21を多く引っ張る。一方、強い力で指部12,13を把持対象物(図示略)に押付けて同把持対象物を把持する場合には、各高分子アクチュエータ25によってワイヤ21を強い力で上記屈曲方向へ引っ張る。こうすることで、モータ22の特性を各高分子アクチュエータ25によって補うようにしている。すなわち、伸展している複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで屈曲(変位)させる動作については、モータ22によって行なわせ、複数の指部12,13によって把持対象物を把持する動作については、各高分子アクチュエータ25によって行なわせるようにしている。
【0058】
図1に示すように、ロック機構Aは、モータ22によるワイヤ21の巻取り後に、そのワイヤ21のモータ22との相対移動を規制するための機構である。ロック機構Aとしては、次の条件を満たすものが用いられている。
【0059】
条件1:モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、巻取り方向へのモータ22の回転を許容する。
条件2:モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転を規制することで、ワイヤ21のモータ22との相対移動を規制する。
【0060】
上記の条件1及び条件2を満たすロック機構Aとして、ウォーム41及びウォームホイール42からなるウォームギヤ40が用いられている。
より詳しくは、プーリ16の回転軸18は、モータ22の出力軸23に対し直交している。ウォーム41は、円筒形や鼓形のねじ状の歯車からなり、モータ22の出力軸23上に一体回転可能に設けられている。ウォームホイール42は、はす歯歯車からなり、上記回転軸18上に一体回転可能に設けられており、上記ウォーム41に噛み合わされている。
【0061】
ウォームギヤ40は一般に、互いに直角で交わらない2軸(回転軸18、出力軸23)間で大きな減速比の回転を伝達する場合に用いられる。ウォームギヤ40には、ウォームホイール42側からウォーム41を回転させるために大きな荷重が必要になるという特徴がある。
【0062】
引出し機構Bは、上記モータ22によりプーリ16に巻き取られたワイヤ21を、モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引き出して、屈曲された各指部12,13を伸展させるためのものである。各引出し機構Bは、指部12,13毎のワイヤ45と、指部12,13毎の復帰ばね46とを備えている。
【0063】
指部12,13毎のワイヤ45は、各関節部15を経由した状態で同指部12,13の長さ方向に沿って配置されている。各ワイヤ45の一方(
図1の左方)の端部45Aは、最も先端側の可動部14の先端部に係止されている。ワイヤ45は、全ての可動部14及び全ての関節部15を経由した状態で配置されている。ワイヤ21の他方(
図1の右方)の端部45Bは復帰ばね46に連結されている。各復帰ばね46は、モータ22がワイヤ21を引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ、すなわち、指部12,13を伸展させる方向へワイヤ45を付勢している。
【0064】
そして、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、両電極27,28間へ電圧が印加されて各高分子アクチュエータ25が伸長させられる。また、ロック機構Aによりワイヤ21のモータ22との相対移動が規制されている状態では、両電極27,28間への電圧印加が停止させられて、各高分子アクチュエータ25が収縮させられる。
【0065】
上記のようにして第1実施形態の電動義手が構成されている。次に、この電動義手の作用について説明する。
図1及び
図4(A)は、電動義手によって把持対象物を把持する直前の状態を示している。このときには、モータ22によるワイヤ21の巻取り量が最少となっている。モータ22への通電は停止されている。ワイヤ21が引出し機構B(ワイヤ45及び復帰ばね46)によって、モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張られている。各指部12,13は伸展している。
【0066】
また、
図3(B)に示すように、スイッチ37が閉じられている。各高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間に電圧が印加されている。電極27,28の一方がプラスの電荷を帯び、他方がマイナスの電荷を帯びている。
【0067】
プラスの電荷とマイナスの電荷とが互いに引きつけ合う力(クーロン力)が両電極27,28に作用し、誘電体層26がその厚み方向についての両側から押圧されて、誘電体層26の面に沿う方向に伸長している。電極27,28も弾性を有する導電性高分子材料によって形成されているため、上記誘電体層26に追従して伸長している。誘電体層26及び両電極27,28が渦巻き状に巻かれることにより円筒状に形成された各高分子アクチュエータ25は、誘電体層26の面に沿う方向のうち軸方向(長さ方向)に伸長している。
【0068】
上記の状態から、電動義手によって把持対象物(図示略)を把持する場合には、モータ22及び高分子アクチュエータ25が駆動源とされる。
モータ22が駆動源とされる際には、ワイヤ21を巻き取る方向への出力軸23の回転が、ロック機構A(ウォームギヤ40)によって許容される。モータ22の出力軸23が回転されると、その回転がウォームギヤ40(ウォーム41及びウォームホイール42)を介して回転軸18に伝達される。プーリ16が回転軸18とともに回転させられ、ワイヤ21がプーリ16に巻き取られる。ワイヤ21が長さ方向についての一方(
図4(A)の右方)である屈曲方向へ引っ張られ、同ワイヤ21がモータ22側へ移動する。
【0069】
ここで、各高分子アクチュエータ25は取付け部34,35を介してワイヤ21に固定されている。このことから、
図4(B)に示すように各高分子アクチュエータ25は、伸長した状態でワイヤ21と一緒に上記屈曲方向へ移動する。
【0070】
このワイヤ21の動きは、各関節部15を経由して指部12,13の各可動部14に伝達され、その指部12,13が関節部15を支点として屈曲させられる。
上述したように、モータ22には、高分子アクチュエータ25に比べ、変位量が多いが出力トルクが小さいという特性がある。このことから、ワイヤ21が多く引っ張られて、指部12,13が大きく屈曲(多く変位)させられる。この変位(屈曲)は、複数の指部12,13が把持対象物に接近するまで行なわれる。
【0071】
指部12,13が上記の状態になるまでワイヤ21がモータ22によってプーリ16に巻取られた後には、モータ22に対する通電が停止される。この停止により、ワイヤ21を屈曲方向へ引っ張る力が消失する。一方、ワイヤ21に対しては引出し機構B(ワイヤ45、復帰ばね46)による力、すなわち、モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張る力が作用している。しかし、このときには、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転がロック機構A(ウォームギヤ40)によって規制され、ワイヤ21のモータ22との相対移動が規制される。すなわち、ウォームギヤ40には、ウォームホイール42側からウォーム41を回転させるために大きな荷重が必要になる。従って、ウォームギヤ40がロック機構Aとされることで、モータ22に対する通電を停止させても、ワイヤ21が、プーリ16から引き出されることがなく、モータ22により巻き取られた位置に保持される。
【0072】
そして、上記のようにウォームギヤ40によりワイヤ21のモータ22との相対移動が規制されている状況下で、
図3(A)に示すように、スイッチ37が開かれ、高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間への電圧印加が停止される。各高分子アクチュエータ25では、放電(電荷の放出)により、両電極27,28に電荷が蓄積されない。その結果、各高分子アクチュエータ25が
図4(C)に示すように収縮する。
【0073】
このように収縮する各高分子アクチュエータ25により、ワイヤ21が屈曲方向へさらに引っ張られる。ワイヤ21のこの動きが、各関節部15を経由して各指部12,13の各可動部14に伝達され、指部12,13が関節部15を支点としてさらに屈曲させられる。
【0074】
上述したように、各高分子アクチュエータ25には、モータ22に比べ変位量は少ないが出力トルクが大きいという特性がある。このことから、ワイヤ21が強い力で少し引っ張られて、複数の指部12,13が強い力で把持対象物に押し当てられ、その把持対象物が安定して把持される。
【0075】
なお、モータ22によって巻き取られ、高分子アクチュエータ25によって長さ方向についての屈曲方向へ引っ張られたワイヤ21に対しては、上述したように、引出し機構B(ワイヤ45、復帰ばね46)により、屈曲方向とは逆方向へ引っ張る力が作用する。しかし、ワイヤ21が上記方向へ移動することはロック機構A(ウォームギヤ40)によって規制され、把持対象物が複数の指部12,13によって把持され続ける。
【0076】
上記把持対象物から指部12,13を離す場合には、モータ22の出力軸23が、上述した把持対象物を把持する際の回転方向とは逆方向へ回転(逆回転)される。この回転により、モータ22がワイヤ21を引っ張る力が弱まる。各ワイヤ21は、ワイヤ45及び復帰ばね46により、上記モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張られる。その結果、各指部12,13が伸展させられ、把持対象物を把持する力が弱まり、各指部12,13が把持対象物から離れる。
【0077】
なお、上記スイッチ37は、モータ22の上記逆回転開始から、電動義手によって把持対象物を再び把持する直前までの期間に閉じられる。スイッチ37が閉じられることで電圧が印加され、各高分子アクチュエータ25が伸長し、電動義手が
図4(A)に示す状態に復帰する。
【0078】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)それぞれ関節部15を支点として屈曲及び伸展する複数の指部12,13にワイヤ21を配置する。ワイヤ21をモータ22によって巻き取ることで、同ワイヤ21を長さ方向についての一方である屈曲方向へ引っ張って指部12,13を屈曲させる。ワイヤ21の途中に高分子アクチュエータ25を配置する。モータ22によるワイヤ21の巻取り後に、同ワイヤ21のモータ22との相対移動を規制するロック機構Aを設ける。ロック機構Aにより相対移動が規制されている状態で高分子アクチュエータ25を伸縮動作させることで、ワイヤ21を上記屈曲方向へ引っ張るようにしている(
図1)。
【0079】
そのため、伸展している複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで大きく屈曲(変位)させる動作については、モータ22によって行なわせ、複数の指部12,13によって把持対象物を把持する動作については、各高分子アクチュエータ25によって行なわせることができる。その結果、指部12,13を大きく屈曲(変位)させることのできるモータ22の利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持することができる。
【0080】
また、モータ22によって巻き取られ、高分子アクチュエータ25によって屈曲方向へ引っ張られたワイヤ21に対しては、引出し機構Bにより、ワイヤ21の長さ方向についての他方へ引っ張る力が作用するが、把持対象物を複数の指部12,13によって把持し続けることができる。
【0081】
さらに、高分子アクチュエータ25がモータ22を補助するため、そのモータ22としてより小型のものを用いることができ、軽量化及び消費電力の低減を図ることができる。
(2)ロック機構Aとしてウォームギヤ40を用い、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、巻取り方向へのモータ22の回転を許容する一方、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転を規制することで、ワイヤ21のモータ22との相対移動を規制する。
【0082】
取付け部34,35を介して、各高分子アクチュエータ25をワイヤ21に固定する。モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、電圧印加により各高分子アクチュエータ25を伸長させる(
図4(A),(B))。ロック機構A(ウォームギヤ40)により、ワイヤ21のモータ22との相対移動が規制されている状態では、電圧印加を停止することで各高分子アクチュエータ25を収縮させるようにしている(
図4(C))。
【0083】
そのため、モータ22によってワイヤ21をプーリ16に巻き取ることで、伸長状態の各高分子アクチュエータ25をワイヤ21と一緒に屈曲方向へ移動させ、複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで大きく屈曲(変位)させることができる。
【0084】
また、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、ワイヤ21のモータ22との相対移動を規制した状態で各高分子アクチュエータ25を収縮させることで、把持対象物を複数の指部12,13によって強く把持することができる。
【0085】
また、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には高分子アクチュエータ25に電力を印加し、ワイヤ21の巻取り後に電圧印加を停止するため、把持対象物から指部12,13を離している期間に比べ、把持対象物を指部12,13によって把持している期間が長い場合には、電力消費量を少なくすることができるメリットもある。
【0086】
(3)高分子アクチュエータ25として、弾性を有する絶縁性高分子材料により形成された誘電体層26と、弾性を有する導電性高分子材料により形成されて誘電体層26を厚み方向についての両側から挟む一対の電極27,28とを備えるものを用いている(
図2)。
【0087】
そのため、両電極27,28間への電圧印加により、誘電体層26をその面に沿う方向へ伸長させ、電圧印加の停止に応じ、誘電体層26を上記面に沿う方向へ収縮させて元の形状に復元させることができる。
【0088】
また、各電極27,28に電荷が所定量蓄積されるまでは電流が流れるが、電荷が所定量蓄積されると電流はほとんど流れなくなるため、高分子アクチュエータ25の作動(伸縮)のために消費される電力が少なくてすむ。その結果、電源36(
図3(A),(B))として、容量の少ないバッテリを使用することができ、利便性が向上する。
【0089】
(4)誘電体層26及び両電極27,28を渦巻き状に巻くことにより、高分子アクチュエータ25の主要部分を円筒状に形成している(
図3(A),(B))。
そのため、各高分子アクチュエータ25をコンパクトな形態(円筒状)とし、電動義手への搭載性を向上させることができる。
【0090】
また、電圧印加により、各高分子アクチュエータ25を、誘電体層26の面に沿う方向のうち軸方向(各高分子アクチュエータ25の長さ方向)へ伸長させることができる(
図3(B))。また、上記電圧印加の停止に応じ、各高分子アクチュエータ25を上記軸方向に収縮させることができる(
図3(A))。
【0091】
(5)高分子アクチュエータ25を複数本用い、それらの長さ方向についての両端部を可動端とし、各可動端を取付け部34,35に取付けている(
図4(A))。
そのため、高分子アクチュエータ25を1本のみ用いた場合に比べ、取付け部34,35を通じてワイヤ21に対し大きな力を伝達し、把持対象物を両指部12,13による大きな力で把持することができる。
【0092】
(6)指部12,13の駆動源の1つとして用いている高分子アクチュエータ25は、金属によって形成された駆動源、例えば、モータや電磁アクチュエータよりも軽量である。
【0093】
そのため、電動義手全体の軽量化を図ることができる。
(7)複数の関節部を有する指部を屈曲させる場合、関節部毎にモータを配置することも考えられる。この場合、重量が増加したり、モータの制御回路が複雑になったりする等の問題がある。
【0094】
この点、第1実施形態では、高分子アクチュエータ25を用いているとはいえ、モータ22は1つで済ませている。前述したように、高分子アクチュエータ25自体は軽量である。そのため、電動義手を軽量化することができる。また、モータ22の制御回路を簡単にすることもできる。
【0095】
(8)高分子アクチュエータ25の誘電体層26を、弾性を有する絶縁性高分子材料によって形成し、電極27,28を、弾性を有する導電性高分子材料によって形成している(
図2)。
【0096】
そのため、屈曲している指部12,13に対し、これらを伸展させて把持対象物から離間させようとする力が外部から加わっても、高分子アクチュエータ25を伸縮させることで、その力を吸収することができる。
【0097】
(9)指部12,13を複数の可動部14と複数の関節部15とにより構成し、これらの指部12,13に、腱に見立てたワイヤ21を配置する。そして、ワイヤ21をモータ22で巻き取ることにより引っ張って、指部12,13を屈曲させるようにしている。
【0098】
そのため、関節部が1つのものとは異なり、指部12,13を把持対象物の形状に沿った形に屈曲させて、同把持対象物を把持することができる。また、把持できる把持対象物の種類が増える。
【0099】
(10)ワイヤを引っ張って指部を屈曲させるタイプの電動義手では、その指部が有する関節部の数が多くなるに従い、指部を関節部毎に屈曲させるために必要なワイヤの引っ張り量が多くなる。
【0100】
この点、第1実施形態では、それぞれ複数の関節部15を有する複数の指部12,13の各々に、モータ22及び高分子アクチュエータ25により駆動されるワイヤ21を、複数の関節部15を経由した状態で配置している。
【0101】
そのため、ワイヤ21をモータ22によって多く引っ張ることで、複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで屈曲(変位)させることができる。その後に、ワイヤ21を高分子アクチュエータ25によって引っ張ることで、複数の指部12,13によって把持対象物を把持することができる。各指部12,13を大きく変位させることのできるモータ22の利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持するといった上記(1)の効果を、より一層有効なものとして得ることができる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、電動義手の第2実施形態について、
図1〜
図3及び
図5を参照して、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0103】
第1実施形態では、ワイヤ21が両取付け部34,35に固定されたが、第2実施形態では、ワイヤ21が、各高分子アクチュエータ25に対し、同ワイヤ21の長さ方向への移動可能に設けられている。より詳しくは、
図5(A)に示すように、ワイヤ21は、隣り合う高分子アクチュエータ25間の空間と、両取付け部34,35とに対し、自身の長さ方向への移動可能に挿通されている。
【0104】
プーリ16は、モータ22の出力軸23に一体回転可能に取付けられている。
各高分子アクチュエータ25において、その軸方向についての指部12,13側の端部25Aは固定端とされている。各高分子アクチュエータ25において、その軸方向についてのモータ22側の端部25Bは可動端とされている。
【0105】
また、高分子アクチュエータ25毎の固定端(端部25A)が取付けられた側の取付け部34は義手本体11に固定されており、同義手本体11に対し移動不能である。高分子アクチュエータ25毎の可動端(端部25B)が取付けられた側の取付け部35は、義手本体11に固定されておらず、同義手本体11に対しワイヤ21の長さ方向(高分子アクチュエータ25の軸方向)へ移動可能である。
【0106】
ロック機構Aとしては、次の条件を満たすものが用いられている。
条件3:モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、同ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止せず、同ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動を許容する。
【0107】
条件4:モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、同ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止することで、同ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動を規制する。
【0108】
上記の条件3及び条件4を満たすロック機構Aとして、第2実施形態では、上記ウォームギヤ40に代え、コレットチャック50が用いられている。コレットチャック50は、コレット51、チャック本体52及びアクチュエータ53を備えており、可動側の取付け部35の近傍に設けられている。
【0109】
コレット51は、ワイヤ21をワークとして把持するためのものであり、中心部にワイヤ21の挿通孔を有している。コレット51には、挿通孔から放射状に延びる切込みが設けられている。コレット51の外周には、プーリ16に近づくに従い縮径するテーパ面が形成されている。
【0110】
チャック本体52は、ワイヤ21の長さ方向についての両端部が開放された筒状をなしており、取付け部35に固定されている。そのため、チャック本体52は、高分子アクチュエータ25の伸縮動作に伴い端部25B(可動端)と一緒に前記ワイヤ21の長さ方向へ移動する。チャック本体52の内部には、上記コレット51に対応して、プーリ16に近づくに従い縮径するテーパ面が形成されている。
【0111】
アクチュエータ53は、電磁ソレノイド等からなり、上記コレット51に駆動連結されており、同コレット51をワイヤ21の長さ方向へ移動させる。コレット51がプーリ16に近づく側へ移動させられて、チャック本体52に入り込むに従い、コレット51において、隣り合う切込みによって挟まれた部分が、中心部に向けて弾性変形させられ、ワイヤ21を掴むことで、そのワイヤ21の端部25B(可動端)との相対移動を規制する。
【0112】
さらに、各高分子アクチュエータ25は、上記モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、電圧印加が停止されて収縮させられる。また、各高分子アクチュエータ25は、モータ22によるワイヤ21の巻取り後、ロック機構Aによりワイヤ21の端部25B(可動端)との相対移動が規制されている状態で、電圧印加により伸長させられる。
【0113】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。
次に、第2実施形態の電動義手の作用について説明する。
【0114】
図5(A)は、電動義手によって把持対象物を把持する直前の状態を示している。このときには、モータ22によるワイヤ21の巻取り量が最少となっている。モータ22への通電は停止されている。ワイヤ21が引出し機構B(ワイヤ45及び復帰ばね46)によって、モータ22による引っ張り方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張られている。各指部12,13は伸展している。
【0115】
また、スイッチ37が開かれて高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間への電圧印加が停止されている。各高分子アクチュエータ25では、放電(電荷の放出)により、両電極27,28に電荷が蓄積されていない。各高分子アクチュエータ25は
図5(A)に示すように収縮している。この収縮により、モータ22側の端部25B(可動端)が指部12,13側の端部25A(固定端)に接近している。さらに、ロック機構Aは、ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止しておらず、同ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動を許容している。そのため、ワイヤ21は高分子アクチュエータ25に対し同ワイヤ21の長さ方向へ移動可能である。
【0116】
上記の状態から、電動義手によって把持対象物を把持する場合には、まずモータ22の出力軸23がプーリ16と一体で一方向へ回転させられる。ワイヤ21が同プーリ16に巻き取られ、ワイヤ21が長さ方向についての一方(
図5(A)の右方)である屈曲方向へ引っ張られ、ワイヤ21が同屈曲方向へ移動する。ワイヤ21の動きが、各関節部15を経由して指部12,13の各可動部14に伝達される。複数の指部12,13が、把持対象物に接近する位置まで各関節部15を支点として大きく屈曲(変位)させられる。
【0117】
指部12,13が上記の状態になるまでワイヤ21がモータ22によってプーリ16に巻取られた後には、
図5(B)に示すように、モータ22への通電が停止される。この停止により、ワイヤ21を上記屈曲方向へ引っ張る力が消失する。しかし、モータ22によってワイヤ21が巻き取られた後には、
図5(C)に示すように、ワイヤ21は、ロック機構A(コレットチャック50)により高分子アクチュエータ25の端部25B(取付け部35)に係止される。この係止により、ワイヤ21の端部25B(取付け部35)との相対移動が規制される。そのため、モータ22によってプーリ16に巻き取られたワイヤ21が、引出し機構Bによって引き出されることがない。それどころか、この状態(ワイヤ21の高分子アクチュエータ25との相対移動が規制された状態)のもとで、上記スイッチ37が閉じられ(
図3(B)参照)、各高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間に電圧が印加される。
【0118】
この電圧印加により、各高分子アクチュエータ25が軸方向(長さ方向)に伸長させられる。この伸長に伴い、端部25B(可動端)が端部25A(固定端)から遠ざかる。端部25B(可動端)が固定された取付け部35も、ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止しているロック機構Aと一緒に同方向へ移動する。そのため、ワイヤ21が長さ方向についての上記屈曲方向へさらに引っ張られる。
【0119】
ワイヤ21の動きが、各関節部15を経由して指部12,13の各可動部14に伝達され、指部12,13が各関節部15を支点として屈曲させられる。複数の指部12,13が強い力で把持対象物に押し当てられ、その把持対象物が安定して把持される。
【0120】
上記把持対象物から指部12,13を離す場合には、ロック機構Aによるワイヤ21の係止が解除される。この解除により、ワイヤ21は各高分子アクチュエータ25に対し移動することが可能となる。この状態のもと、モータ22が、上述した把持対象物を把持する際の回転方向とは逆方向へ回転(逆回転)される。この回転により、モータ22がワイヤ21を引っ張る力が弱まる。ワイヤ21は、ワイヤ45及び復帰ばね46により、上記モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張られる。その結果、各指部12,13が伸展させられ、把持対象物を把持する力が弱まり、各指部12,13が把持対象物から離れる。
【0121】
なお、上記スイッチ37は、モータ22の上記逆回転開始から、電動義手によって把持対象物を再び把持する直前までの期間に開かれる。スイッチ37が開かれることで、各高分子アクチュエータ25が収縮し、電動義手は
図5(A)に示す状態に復帰する。
【0122】
従って、第2実施形態によれば、上述した(1),(3),(4),(6)〜(10)と同様の効果が得られる。そのほか、上記(2)に代えて次の(11)の効果が得られる。また、第2実施形態では、高分子アクチュエータ25が複数本用いられ、それらの長さ方向についての一方の端部25Bのみが可動端とされているが、各可動端が共通の取付け部35に取付けられていることから、上記(5)と同様の効果が得られる。この点は、後述する第3実施形態でも同様である。
【0123】
(11)ワイヤ21を、各高分子アクチュエータ25に対し、同ワイヤ21の長さ方向への移動可能に設ける。各高分子アクチュエータ25において、軸方向についての指部12,13側の端部25Aを固定端とし、モータ22側の端部25Bを可動端とする。
【0124】
ロック機構Aとしてコレットチャック50を用い、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、同ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止せず、同ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動を許容する。一方、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、同ワイヤ21を端部25B(可動端)に係止することで、同ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動を規制する。
【0125】
モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、電圧印加の停止により各高分子アクチュエータ25を収縮させる(
図5(A),(B))。ロック機構A(コレットチャック50)により、ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動が規制されている状態では、電圧を印加することで各高分子アクチュエータ25を伸長させるようにしている(
図5(C))。
【0126】
そのため、モータ22によってワイヤ21をプーリ16に巻き取ることで、複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで大きく屈曲(変位)させることができる。
また、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、ロック機構A(コレットチャック50)によりワイヤ21が端部25B(可動端)に係止されている状態で各高分子アクチュエータ25を伸長させることで、把持対象物を複数の指部12,13によって強く把持することができる。
【0127】
さらに、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には高分子アクチュエータ25への電圧印加を停止し、ワイヤ21の巻取り後に電圧を印加するため、把持対象物を指部12,13によって把持する期間に比べ、把持対象物から指部12,13を離している期間が長い場合には、電力消費量を少なくすることができるメリットもある。
【0128】
(第3実施形態)
次に、電動義手の第3実施形態について、
図1〜
図3及び
図6を参照して、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0129】
図6(A)に示すように、第3実施形態では、モータ22、ロック機構A、プーリ16等が各高分子アクチュエータ25の端部25B(可動端)側の取付け部35に配置されることで、モータ22が義手本体11に対し、ワイヤ21の長さ方向への移動可能に構成されている。
【0130】
また、第3実施形態では、第1実施形態と同様、ウォーム41及びウォームホイール42からなるウォームギヤ40によってロック機構Aが構成されている。第2実施形態とは異なり、コレットチャック50は用いられていない。第3実施形態でのロック機構Aは、第1実施形態でのロック機構Aと同様の機能を担っている。
【0131】
さらに、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、各高分子アクチュエータ25に対する電圧印加が停止される。この停止により、各高分子アクチュエータ25が収縮させられる。また、モータ22によるワイヤ21の巻取り後、ロック機構Aによりワイヤ21のモータ22との相対移動が規制されている状態で、各高分子アクチュエータ25に対し、電圧が印加される。この電圧印加により、各高分子アクチュエータ25が伸長させられ、その伸長により、モータ22が上記屈曲方向へ移動させられる。
【0132】
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。
次に、第3実施形態の電動義手の作用について説明する。
【0133】
図6(A)は、電動義手によって把持対象物を把持する直前の状態を示している。このときには、モータ22によるワイヤ21の巻取り量が最少となっている。モータ22への通電は停止されている。ワイヤ21が引出し機構B(ワイヤ45及び復帰ばね46)によって、モータ22による引っ張り方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張られている。各指部12,13は伸展している。
【0134】
また、スイッチ37が開かれて高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間への電圧印加が停止されている。各高分子アクチュエータ25では、放電(電荷の放出)により、両電極27,28に電荷が蓄積されていない。各高分子アクチュエータ25は
図6(A)に示すように収縮している。この収縮により、モータ22側の端部25B(可動端)が指部12,13側の端部25A(固定端)に接近している。さらに、ワイヤ21は各高分子アクチュエータ25(取付け部34,35)に固定されておらず、各高分子アクチュエータ25(取付け部34,35)に対しワイヤ21の長さ方向へ移動可能である。また、モータ22は義手本体11に対しワイヤ21の長さ方向へ移動することが可能である。
【0135】
上記の状態から、電動義手によって把持対象物を把持する場合には、まず、モータ22が駆動源とされる。この際、ワイヤ21を巻き取る方向への出力軸23の回転は、ロック機構A(ウォームギヤ40)によって許容される。
【0136】
モータ22の出力軸23が回転されると、その回転がウォームギヤ40(ウォーム41及びウォームホイール42)を介して回転軸18に伝達される。プーリ16が回転軸18とともに一方向へ回転させられ、ワイヤ21がプーリ16に巻き取られる。ワイヤ21が長さ方向についての一方(
図6(A)の右方)である屈曲方向へ引っ張られる。このときには、高分子アクチュエータ25は収縮され続ける。そのため、ワイヤ21は長さ方向についての上記屈曲方向へ移動する。
【0137】
ワイヤ21の動きは、各関節部15を経由して指部12,13の各可動部14に伝達される。複数の指部12,13が、把持対象物に接近する位置まで各関節部15を支点として大きく屈曲(変位)させられる。
【0138】
指部12,13が上記の状態になるまでワイヤ21がモータ22によってプーリ16に巻取られた後には、
図6(B)に示すように、モータ22に対する通電が停止される。この停止により、ワイヤ21を上記屈曲方向へ引っ張る力が消失する。一方、ワイヤ21に対しては引出し機構B(ワイヤ45、復帰ばね46)による力、すなわち、モータ22が引っ張る方向(屈曲方向)とは逆方向へ引っ張る力が作用している。しかし、このときには、
図6(C)に示すように、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転がロック機構A(ウォームギヤ40)によって規制され、ワイヤ21のモータ22との相対移動が規制される。従って、モータ22に対する通電を停止させても、ワイヤ21が、プーリ16から引き出されることがなく、モータ22により巻き取られた位置に保持される。
【0139】
そして、上記のようにウォームギヤ40によりワイヤ21のモータ22との相対移動が規制されている状況下で、上記スイッチ37が閉じられ(
図3(B)参照)、各高分子アクチュエータ25の両電極27,28(
図2参照)間に電圧が印加される。この電圧印加により、各高分子アクチュエータ25が軸方向(長さ方向)に伸長させられる。
【0140】
この伸長は、端部25B(可動端)が端部25A(固定端)から遠ざかる方向であるモータ22側へ移動することにより行なわれる。端部25B(可動端)が固定された取付け部35も、ロック機構Aと一緒にモータ22側へ移動する。これに伴い、モータ22が屈曲方向へ移動させられる。そのため、ワイヤ21が屈曲方向へさらに引っ張られる。
【0141】
ワイヤ21の動きが、各関節部15を経由して指部12,13の各可動部14に伝達され、指部12,13が各関節部15を支点として屈曲させられる。複数の指部12,13が強い力で把持対象物に押し当てられ、その把持対象物が安定して把持される。
【0142】
上記把持対象物から指部12,13を離す場合には、モータ22の出力軸23が、上述した把持対象物を把持する際の回転方向とは逆方向へ回転(逆回転)される。この回転により、モータ22がワイヤ21を引っ張る力が弱まる。ワイヤ21は、引出し機構B(ワイヤ45、復帰ばね46)により、上記モータ22が引っ張る方向とは逆方向へ引っ張られる。その結果、各指部12,13が伸展させられ、把持対象物を把持する力が弱まり、各指部12,13が把持対象物から離れる。
【0143】
なお、上記スイッチ37は、モータ22の上記逆回転開始から、電動義手によって把持対象物を把持する直前までの期間に開かれる。スイッチ37が開かれることで、各高分子アクチュエータ25が収縮し、電動義手は
図6(A)に示す状態に復帰する。
【0144】
従って、第3実施形態によれば、上述した(1),(3),(4),(6)〜(10)と同様の効果が得られる。そのほか、上記(2)に代えて次の(12)の効果が得られる。
【0145】
(12)ワイヤ21を、各高分子アクチュエータ25に対し、同ワイヤ21の長さ方向への移動可能に設ける。モータ22をワイヤ21の長さ方向への移動可能に設ける。各高分子アクチュエータ25において、軸方向についての指部12,13側の端部25Aを固定端とし、モータ22側の端部25Bを可動端とする。
【0146】
ロック機構Aとしてウォームギヤ40を用い、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、巻取り方向へのモータ22の回転を許容する一方、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転を規制することで、ワイヤ21のモータ22との相対移動を規制する。
【0147】
モータ22によるワイヤ21の巻取り時には、電圧印加の停止により各高分子アクチュエータ25を収縮させる(
図6(A),(B))。ロック機構A(ウォームギヤ40)により、ワイヤ21の各高分子アクチュエータ25との相対移動が規制されている状態では、電圧を印加することで各高分子アクチュエータ25を伸長させ、その伸長により、上記屈曲方向へモータ22を移動させるようにしている(
図6(C))。
【0148】
そのため、モータ22によってワイヤ21をプーリ16に巻き取ることで、複数の指部12,13を把持対象物に接近する位置まで大きく屈曲(変位)させることができる。
また、モータ22によるワイヤ21の巻取り後には、巻取り方向とは逆方向へのモータ22の回転がロック機構Aによって規制されている状態で高分子アクチュエータ25を伸長させることで、ワイヤ21を上記屈曲方向へ引っ張って把持対象物を複数の指部12,13によって強く把持することができる。
【0149】
さらに、モータ22によるワイヤ21の巻取り時には高分子アクチュエータ25への電圧印加を停止し、ワイヤ21の巻取り後に電圧を印加するため、把持対象物を指部12,13によって把持する期間に比べ、把持対象物から指部12,13を離している期間が長い場合には、電力消費量を少なくすることができるメリットもある。
【0150】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<指部12,13について>
・上記電動義手は、指部12,13を3本以上有するものにも適用可能である。指部12,13の本数が多くなるに従い、把持対象物を安定して把持することが可能となる。
【0151】
・上記電動義手は、指部12,13が、上記第1〜第3実施形態とは異なる数の可動部14及び関節部15を有するものにも適用可能である。可動部14及び関節部15の数が多くなるに従い、指部12,13を把持対象物の形状に沿って屈曲させることができ、より安定した把持が可能となる。
【0152】
なお、各指部における可動部及び関節部の数の最小値は「1」である。この場合でも、上述した(1)の効果を得ることができる。
ただし、指部を大きく変位させることのできるモータの利点を活かしつつ、把持対象物を安定して把持するといった効果は、複数の指部の少なくとも1つが複数の関節部を有している場合に、より大きなものとなる。関節部の数が多くなるに従い、指部を関節部毎に屈曲させるために必要なワイヤの引っ張り量が多くなるからである。この場合、ワイヤをモータによって多く引っ張ることで、複数の指部を把持対象物に接近する位置まで屈曲(変位)させることができる。その後に、ワイヤを高分子アクチュエータによって引っ張ることで、複数の指部によって把持対象物を把持することができる。
【0153】
<高分子アクチュエータ25について>
・高分子アクチュエータ25としては、上述した誘電方式に代え、イオン方式が採用されてもよい。
【0154】
イオン方式の高分子アクチュエータは、イオン交換樹脂と電極との接合体からなる。このタイプの高分子アクチュエータとしては、フッ素系イオン交換樹脂膜の両面に、金、白金等の貴金属によって形成された電極を、無電解メッキにより接合したものが代表的である。この高分子アクチュエータでは、電極間に数ボルトの電圧が印加されることで、イオン交換樹脂の内部でイオンの移動が起こり(陽イオンが陰極側へ移動し)、このイオンの移動により、高分子アクチュエータの表裏で膨潤に差が生じて、同高分子アクチュエータが弾性変形する。電圧印加が停止されると、弾性復元力により高分子アクチュエータは元の形状に復元する。これらの弾性変形及び復元により、高分子アクチュエータを伸縮動作させる。
【0155】
<指部12,13が把持対象物を把持する力について>
・この力は、次の要素を調整することで変更可能である。
(i)高分子アクチュエータ25毎の電極27,28に印加する電圧。この電圧が高くなるに従い、上記力が増大する。
【0156】
(ii)高分子アクチュエータ25の直径。この直径が大きくなるに従い、上記力が増大する。
(iii )伸縮動作する高分子アクチュエータ25の本数。この本数が多くなるに従い、上記力が増大する。
【0157】
この場合、電動義手に装着される高分子アクチュエータ25の本数が変更されてもよいし、電圧印加の対象となる高分子アクチュエータ25の本数が状況に応じて、制御により、又は操作により変更されてもよい。
【0158】
<モータ22について>
・モータ22は、指部12,13毎に設けられてもよい。
・第3実施形態において、モータ22、ロック機構A(ウォームギヤ40)、プーリ16等は、各高分子アクチュエータ25から分離した状態で、義手本体11に対し、ワイヤ21の長さ方向への移動可能に設けられてもよい。この場合には、モータ22等は、各高分子アクチュエータ25の端部25B(可動端)及び取付け部35の近傍に配置される。これは、伸長する各高分子アクチュエータ25によってモータ22等を移動させるためである。
【0159】
<ロック機構Aについて>
・モータ22によるワイヤ21の巻取り後に、同モータ22及び高分子アクチュエータ25の一方と、ワイヤ21との相対移動を規制することができるものであることを条件に、上記ウォームギヤ40及びコレットチャック50とは異なるものがロック機構Aとされてもよい。