特許第5928306号(P5928306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928306
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/00 20060101AFI20160519BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   A47C7/00 Z
   B60N2/44
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-247537(P2012-247537)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94164(P2014-94164A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年4月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔販 売〕 トヨタ車体株式会社が名古屋トヨペット株式会社に、排水シートを使用した自動車を販売 〔販売日〕 平成24年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納谷 良太郎
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−75334(JP,U)
【文献】 特開平10−59024(JP,A)
【文献】 特開平10−45079(JP,A)
【文献】 特開2000−50999(JP,A)
【文献】 実開昭61−110436(JP,U)
【文献】 特開平8−205947(JP,A)
【文献】 特開2001−112575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00
B60N 2/44
B62D 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、そのシートクッションから離れたシートバックとを備え、前記シートクッションを支えるクッションフレームと前記シートバックを起立した状態で支えるシートバックフレームとが前記シートクッションの後部で相互に連結されて、前記シートバックフレームの下端部と前記シートクッションの後部とがカバー部材により覆われる構成の車両用シートであって、
前記シートバックフレームは水が通過可能な隙間を介した状態で前記カバー部材の開孔部に通されており、
さらに、前記カバー部材に覆われる前記シートクッションの後部には、前記シートバックフレームに隣接して、そのシートバックフレームを伝ってきた水を受ける水受け面が設けられ、その水受け面の周囲には前記シートバックフレームを伝ってきた水を前記シートクッションの側方又は後方に排水する案内部が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シートであって、
前記水受け面は、前記シートバックフレームを囲んだ面であり、前記案内部は、前記水受け面の周囲に設けられた縦壁であることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両用シートであって、
前記シートバックは、シートバック本体部と、そのシートバック本体部の後面を覆うバックボードとから構成されて、前記シートバック本体部と前記バックボード間に前記シートバックフレームが配置される構成であり、
前記シートバック本体部の下端縁を覆う前記バックボードの下端縁は、前側が低くなるような傾斜面状に形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両用シートであって、
前記シートクッションの着座面よりも後方は、その着座面から離れるにつれて低くなるように構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項4に記載された車両用シートであって、
前記シートクッションの着座面は、後側が低くなるように傾斜していることを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両用シートであって、
前記カバー部材は、前記シートバックフレームが通される開孔部の位置で分割可能に構成されていることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションとシートバックとからなり、雨水等の排出機能を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シートが特許文献1に記載されている。
この車両用シート100は、図7に示すように、シートクッション103とシートバック105とを備えており、シートクッション103の後端部とシートバック105の下端部とが接触するようになっている。
シートクッション103の着座面は、その中央後部Bが最も低くなるように形成されている。そして、シートクッション103の着座面には、その中央後部Bを通るように後部横溝103mが形成されている。また、シートクッション103の着座面の前部には、後部横溝103mと平行に前部横溝103fが形成されている。さらに、着座面の前部横溝103fの中央から中央後部Bに向かって縦溝103tが形成されている。そして、着座面の中央後部Bの位置に排水口(図示省略)が形成されている。
このため、例えば、シートバック105に掛かった雨水等がそのシートバック105の表面を伝ってシートクッション103側に流れても、その雨水等がシートクッション103の後部横溝103m、縦溝103t、前部横溝103fを通って排水口から排出され、着座面に水が溜ることがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した車両用シートでは、シートバック105に掛かった雨水等がシートバック105の表面を伝ってシートクッション103側に流れ込むため、シートクッション103の着座面が湿り、座り心地が悪くなる。
さらに、着座面に後部横溝103m、縦溝103t、前部横溝103fが設けられているため、着座面に異物感がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートバックに対して雨等が掛かった場合でもシートバックからシートクッションの着座面側に水が流れないようにして、シートの座り心地が低下しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シートクッションと、そのシートクッションから離れたシートバックとを備え、前記シートクッションを支えるクッションフレームと前記シートバックを起立した状態で支えるシートバックフレームとが前記シートクッションの後部で相互に連結されて、前記シートバックフレームの下端部と前記シートクッションの後部とがカバー部材により覆われる構成の車両用シートであって、前記シートバックフレームは水が通過可能な隙間を介した状態で前記カバー部材の開孔部に通されており、さらに、前記カバー部材に覆われる前記シートクッションの後部には、前記シートバックフレームに隣接して、そのシートバックフレームを伝ってきた水を受ける水受け面が設けられ、その水受け面の周囲には前記シートバックフレームを伝ってきた水を前記シートクッションの側方又は後方に排水する案内部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、シートクッションとシートバックとが離れているため、そのシートバックに掛かった雨水等がシートバックの表面を伝ってシートクッション側に流れるようなことがない。
また、シートバックフレームは水が通過可能な隙間を介した状態でカバー部材の開孔部に通されている。このため、シートバックに掛かった雨水等がシートバックフレームを伝って流下すると、その水はシートバックフレームとカバー部材の隙間を通過してカバー部材の内側に入り込む。したがって、シートバックフレームを伝って流下する水がカバー部材の表面を伝ってシートクッションの着座面側に流れることがない。
さらに、カバー部材に覆われるシートクッションの後部には、シートバックフレームに隣接して水受け面が設けられ、その水受け面の周囲に案内部が設けられている。このため、シートバックフレームを伝ってカバー部材の内側に入り込んだ水は水受け面で受けられ、案内部に案内されてシートクッションの側方又は後方から車室内に落下するようになる。
即ち、前記シートバックフレームを伝ってカバー部材の内側に入り込んだ水がシートクッションの着座面側に流れることがない。
これにより、シートクッションの着座面が湿ってシートの座り心地が低下するようなことがなくなる。
【0008】
請求項2の発明によると、水受け面は、シートバックフレームを囲んだ面であり、案内部は、前記水受け面の周囲に設けられた縦壁であることを特徴とする。
請求項3の発明によると、シートバックは、シートバック本体部と、そのシートバック本体部の後面を覆うバックボードとから構成されて、前記シートバック本体部と前記バックボード間に前記シートバックフレームが配置される構成であり、前記シートバック本体部の下端縁を覆う前記バックボードの下端縁は、前側が低くなるような傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
このため、シートバック本体部とバックボード間に入り込んだ雨水等がバックボードの内壁面(前壁面)を伝って下端縁から落下できるようになる。したがって、シートバック本体部とバックボード間で雨水等が溜まるようなことがない。
【0009】
請求項4の発明によると、シートクッションの着座面よりも後方は、その着座面から離れるにつれて低くなるように構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明によると、シートクッションの着座面は、後側が低くなるように傾斜していることを特徴とする。
このため、仮に、シートクッションの着座面に雨水等が掛かった場合でも、その雨水等はシートクッションの着座面から後方に流れてシートクッションから落下するようになる。
【0010】
請求項6の発明によると、カバー部材は、シートバックフレームが通される開孔部の位置で分割可能に構成されていることを特徴とする。
このため、車両用シートからのカバー部材の取外し、及びカバー部材の取付けが容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、シートバックに対して雨水等が掛かった場合でもシートバックからシートクッションの着座部側に水が流れないようになり、シートの座り心地が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シートを備える車両の運転室内の斜視図である。
図2】前記車両用シートの分解斜視図である。
図3】前記車両用シートの側面図である。
図4】前記車両用シートの平面図である。
図5図4のV部拡大平面図である。
図6図5のVI-VI矢視縦断面図である。
図7】従来の車両用シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1図6に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シートの説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート20は、乗降口12が開放された一人乗りの超小型車10(車両10)で使用されるシートであり、雨水等が掛かった場合の排水機能を備えている。
ここで、図中の前後左右及び上下は、車両用シート20の前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車両用シート20の概要について>
車両用シート20は、図1に示すように、左右に乗降口12を備える車両10の運転室中央に設置されている。車両用シート20は前後スライド機構(図示省略)を介して運転室の床面に固定されており、一定範囲内で車両用シート20の前後位置を調整可能に構成されている。
車両用シート20は、図2に示すように、シートクッション30と、シートバック50と、前記シートクッション30を支えるクッションフレーム40と、前記シートバック50を支えるシートバックフレーム60とを備えている。
さらに、車両用シート20には、シートバックフレーム60の左右下端部とシートクッション30の左右の後角部(高台部310,320)とを覆うカバー部材70が設けられている(図3図4等参照)。
【0015】
<シートクッション30について>
シートクッション30は、運転者が着座する部分であり、軟質ウレタンフォーム等の弾性体の表面を塩ビ等の表皮で覆ったものが好適に使用される。シートクッション30の上面には、図2に示すように、左端面31と右端面32と中央の着座面34とが設けられており、左端面31、右端面32から中央の着座面34にかけて徐々に低くなるように構成されている。さらに、着座面34は、図3に示すように、後側が低くなるように緩やかに傾斜している。また、着座面34の前部中央には、着座高面34hが設けられており、その着座高面34hが左端面31、右端面32とほぼ等しい高さに設定されている。
【0016】
シートクッション30の左端面31、右端面32は、ほぼ等しい高さで前後方向に延びるように形成されており、左端面31、右端面32の後端部に、図2に示すように、角錐台状に盛り上がった高台部310,320が設けられている。左右の高台部310,320は、クッションフレーム40の連結用板部43(後記する)とシートバックフレーム60の下端平板部63(後記する)が挿入される部分であり、上下に貫通する縦穴部312,322が形成されている。さらに、左右の高台部310,320には、シートバックフレーム60の下端部を覆うカバー部材70が幅方向外側から嵌合する段差部315,325が形成されている。
さらに、左右の高台部310,320の間には、着座後面36が設けられている。着座後面36は、前記着座面34と連続するようにその着座面34の後方に配置されており、前記着座面34とほぼ等しい傾きで後側が低くなるように緩やかに傾斜している。このため、着座面34に雨水等が掛かった場合でも、水は着座面34から着座後面36を伝ってシートクッション30の後側に落下するようになる。
【0017】
<クッションフレーム40について>
クッションフレーム40は、図2に示すように、シートクッション30を載せて支えられるように構成されたフレームであり、シートバックフレーム60と連結可能なように構成されている。クッションフレーム40は、平面形状が逆U字形に形成されたフレーム本体部41と、そのフレーム本体部41の左右の後端部に立設された一対の連結用板部43と、それらの連結用板部43間に渡された後部連結バー45とから角枠状に構成されている。
一対の連結用板部43は、フレーム本体部41に沿って延びる横板部43yと、幅広の縦板部43sとから側面略L字形に形成されている。そして、左右の連結用板部43の横板部43yがそれぞれ左右のフレーム本体部41の後端部に固定され、それらの連結用板部43の縦板部43sの下部がそれぞれ後部連結バー45の左端部と右端部とに固定されている。
また、連結用板部43の縦板部43sの中央よりも上側は平板状に形成されており、この平板状に形成された部分(平板部)の上下にボルト孔(図番省略)が設けられている。左右の連結用板部43の縦板部43sにおける平板部は、シートクッション30の左右の高台部310,320に形成された縦穴部312,322にそれぞれ下方から挿入可能に構成されている。そして、左右の連結用板部43の縦板部43sにおける平板部にシートバックフレーム60の左右の下端平板部63(後記する)がそれぞれ連結可能なように構成されている。
クッションフレーム40は、フレーム本体部41と左右の連結用板部43と後部連結バー45とにより角枠状に形成された部分でシートクッション30を下方から支持できるように構成されている。
【0018】
<シートバック50について>
シートバック50は、運転者の背もたれであり、図2に示すように、シートバック本体部52と、そのシートバック本体部52の後面を覆うバックボード56とから構成されている。シートバック本体部52は、運転者の背中が直接接触する部分であり、軟質ウレタンフォーム等の弾性体の表面を塩ビ等の表皮で覆ったものが好適に使用される。シートバック本体部52には、上下に長い中央縦長部53と、その中央縦長部53の高さ方向中央位置から左右両側に張り出す左張出部54f、右張出部54rとから構成されている。
バックボード56は、図2に示すように、シートバック本体部52と等しい平面形状をした浅い容器状に形成されており、シートバック本体部52の背面(後面)と外周面とを覆えるように構成されている。そして、シートバック本体部52の外周下端縁52dを覆うバックボード56の下端縁56dは、前側が低くなるような傾斜面状に形成されている。このため、シートバック本体部52とバックボード56との間に雨水等が入り込んでも、雨水等はバックボード56の内壁面を伝って下端縁56dから落下し易くなる。
バックボード56は、シートバック本体部52と共にシートバックフレーム60を前後から挟んだ状態で、そのシートバックフレーム60に連結されるように構成されている。
【0019】
<シートバックフレーム60について>
シートバックフレーム60は、シートバック50をシートクッション30から上後方に離した状態で支持するフレームであり、図2に示すように、クッションフレーム40の連結用板部43にボルト、ナット等により連結できるように構成されている。シートバックフレーム60は、フレーム上部61と、左右の縦パイプ部62と、フレーム中央部66とから構成されている。
シートバックフレーム60のフレーム上部61は、シートバック50の上端縁の形状に合わせて形成されており、シートバック本体部52の上端縁とバックボード56の上端縁間に挟まれるように構成されている。シートバックフレーム60の左右の縦パイプ部62は、フレーム上部61の左下端部61f、右下端部61rから下方に延びるパイプであり、シートバック本体部52の左端縁、右端縁とバックボード56の左端縁、右端縁間に挟まれて、シートバック50から下方に突出するように形成されている。そして、左右の縦パイプ部62の下端位置に、クッションフレーム40の左右の連結用板部43の縦板部43sにボルト止めされる下端平板部63が形成されている。左右の縦パイプ部62の下端平板部63は、それぞれシートクッション30の左右の高台部310,320に形成された縦穴部312,322に上方から挿入された状態でクッションフレーム40の左右の連結用板部43の縦板部43sにボルト止めされる。
したがって、シートクッション30の高台部310,320に形成された縦穴部312,322の周縁、即ち、高台部310,320の上面319,329(図6参照)が本発明のシートバックフレームに隣接する水受け面に相当する。また、シートクッション30の高台部310,320が本発明におけるシートクッションの後部に相当する。
シートバックフレーム60のフレーム中央部66は、シートバック50の下端縁の形状に合わせて形成されており、シートバック本体部52の下端縁とバックボード56の下端縁間に挟まれるように構成されている。フレーム中央部66は、そのフレーム中央部66の左右両側が左右の縦パイプ部62の途中位置にそれぞれ固定されている。
【0020】
<カバー部材70について>
カバー部材70は、シートクッション30の左右の高台部310,320の上面319,329及び外壁面と、シートバックフレーム60の縦パイプ部62の下端部とを覆うキャップ状の部材である。
カバー部材70は、外側カバー片71と内側カバー片75とが左右方向から合わせられることにより構成される。外側カバー片71は、シートクッション30の左右の高台部310,320の外壁面と上面319,329の幅方向外側を覆えるように構成されている。ここで、シートクッション30の左右の高台部310,320には、図3図6に示すように、上面319,329及び外壁面を他の面から仕切る段差部315,325が形成されており、この段差部315,325によって上面319,329及び外壁面は他の面に対して窪んだ状態となっている。そして、前記外側カバー片71の端縁が、左右の高台部310,320に形成された段差部315,325と嵌合可能なように構成されている。
【0021】
カバー部材70の内側カバー片75は、シートクッション30の左右の高台部310,320における上面319,329の幅方向内側を覆えるように構成されており、その内側カバー片75の端縁が左右の高台部310,320に形成された段差部315,325と嵌合可能なように構成されている。
カバー部材70の外側カバー片71と内側カバー片75とは、図5等に示すように、互いの合わせ面71u,75uの位置で接合されるように構成されている。そして、外側カバー片71と内側カバー片75と互いの合わせ面71u,75uの位置にシートバックフレーム60の縦パイプ部62が通される開孔部77が形成されている。ここで、カバー部材70の開孔部77とシートバックフレーム60の縦パイプ部62との間には、その縦パイプ部62を伝って流下する水が通過できる隙間(図示省略)が形成されている。
さらに、カバー部材70に覆われるシートクッション30の左右の高台部310,320の上面319,329には、図6に示すように、段差部315,325とほぼ平行に延びてシートバックフレーム60の縦パイプ部62を囲む内周側段差部315e,325eが形成されている。なお、内周側段差部315e,325eも縦パイプ部62側が低くなるように形成されている。
即ち、前記段差部315,325と内周側段差部315e,325eとが本発明における水受け面の周囲に設けられた案内部に相当する。
【0022】
<車両用シート20の排水機能について>
次に、本実施形態に係る車両用シート20の排水機能について説明する。
例えば、シートクッション30に雨水等が掛かると、水は着座面34によって後方に導かれ、着座後面36を通ってシートクッション30の後側に落下するようになる。
また、車両用シート20のシートバック50に雨水等が掛かると、シートバック50のシートバック本体部52の表面を伝って流下する水は、シートバック50とシートクッション30との間を通過して床上に落下する。さらに、シートバック本体部52とバックボード56との間に入り込んだ水は、バックボード56の内壁面を伝って流下し、バックボード56の下端縁56dから床上に落下する。
また、シートバック50からシートバックフレーム60の縦パイプ部62を伝って流下する水は、その縦パイプ部62とカバー部材70の開孔部77間の隙間を通過してカバー部材70の内側に入り込む。そして、その水がシートクッション30の左右の高台部310,320に設けられた上面319,329で受けられ、内周側段差部315e,325eに沿ってシートクッション30から落下するようになる。また、シートクッション30の左右の高台部310,320の上面319,329で受けられ、内周側段差部315e,325eを超えた水は段差部315,325に沿ってシートクッション30から落下するようになる。
これにより、車両用シート20に雨水等が掛ってもシートクッション30等に水が溜まるようなことがなくなる。
【0023】
<本実施形態に係る車両用シート20の長所について>
本実施形態に係る車両用シート20によると、シートクッション30とシートバック50とが離れているため、そのシートバック50に掛かった雨水等がシートバック50の表面を伝ってシートクッション30側に流れるようなことがない。
さらに、シートバックフレーム60(縦パイプ部62)は水が通過可能な隙間を介した状態でカバー部材70の開孔部77に通されている。このため、シートバック50に掛かった雨水等がシートバックフレーム60(縦パイプ部62)を伝って流下すると、その水は縦パイプ部62とカバー部材70の隙間を通過してカバー部材70の内側に入り込む。したがって、縦パイプ部62を伝って流下する水がカバー部材70の表面を伝ってシートクッション30の着座面34側に流れることがない。
さらに、カバー部材70に覆われているシートクッション30の高台部310,320には、縦パイプ部62の周囲に上面319,329(水受け面)が設けられており、上面319,329(水受け面)の周囲に段差部315,325等(案内部)がシートクッション30の端側で開かれるように設けられている。
このため、縦パイプ部62を伝ってカバー部材70の内側に入り込んだ水は上面319,329(水受け面)で受けられ、段差部315,325等に遮られることでシートクッション30の後部から落下するようになる。即ち、シートバックフレーム60の縦パイプ部62を伝ってカバー部材70の内側に入り込んだ水がシートクッション30の着座面34側に流れることがない。
これにより、シートクッション30の着座面34が湿ってシートの座り心地が低下するようなことがなくなる。
【0024】
また、シートバック本体部52とバックボード56間に入り込んだ雨水等がバックボード56の内壁面(前壁面)を伝って下端縁から落下できるようになっているため、シートバック本体部52とバックボード56間で雨水等が溜まるようなことがない。
また、シートクッション30の着座面34は、後側が低くなるように傾斜しており、さらに着座面34よりも後方は、その着座面34から離れるにつれて低くなるように構成されている。このため、仮に、シートクッション30の着座面34に雨水等が掛かった場合でも、その雨水等はシートクッション30の着座面34から後方に流れてシートクッション30から落下するようになる。
また、カバー部材70は、シートバックフレーム60の縦パイプ部62が通される開孔部77の位置で分割可能に構成されているため、車両用シート20からのカバー部材70の取外し、及びカバー部材70の取付けが容易になる。
【0025】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、シートクッション30の左右の高台部310,320の上面(後角部)に段差部315,325を設け、その段差部315,325の内周側(縦パイプ部62側)に内周側段差部315e,325eを設ける例を示した。しかし、内周側段差部315e,325eを省略することも可能である。
また、本実施形態では、クッションフレーム40の後部の左右両側と、シートバックフレーム60の左右両側とが連結される構成で、シートクッション30の左右の高台部310,320の上面がカバー部材70に覆われる車両用シート20を例示した。しかし、クッションフレーム40の後部中央とシートバックフレーム60の中央部とが一箇所で連結される構成とし、シートクッション30の後部中央に高台部を形成し、その高台部の上面をカバー部材70で覆う構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
20・・・・・・・・・車両用シート
30・・・・・・・・・シートクッション
34・・・・・・・・・着座面
310,320・・・・高台部(後部)
315,325・・・・段差部(案内部)
315e,325e・・内周側段差部(案内部)
319,329・・・・上面(水受け面)
40・・・・・・・・・クッションフレーム
50・・・・・・・・・シートバック
56・・・・・・・・・バックボード
56d・・・・・・・・下端縁
60・・・・・・・・・シートバックフレーム
62・・・・・・・・・縦パイプ部
70・・・・・・・・・カバー部材
77・・・・・・・・・開孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7