特許第5928334号(P5928334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928334
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび成型体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20160519BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20160519BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B32B27/36
   G06F3/041 400
   G06F3/041
   B32B27/40
【請求項の数】11
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2012-524955(P2012-524955)
(86)(22)【出願日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2012061942
(87)【国際公開番号】WO2012157500
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-109093(P2011-109093)
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-270982(P2011-270982)
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 嘉丈
(72)【発明者】
【氏名】長田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】園田 和衛
(72)【発明者】
【氏名】三村 尚
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137780(JP,A)
【文献】 特開平07−117202(JP,A)
【文献】 特開2007−056268(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08F 290/06
C08G 18/42、18/61
C08J 7/04
G06F 3/041
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片側に、A層を有する積層フィルムであって、該A層が、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有し、蒸留水の該A層上での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンの該A層上での接触角が70°以上87°未満であり、
前記A層が、以下のフッ素化合物Aに由来する成分(以下、フッ素化合物A由来成分という)を含み、前記A層の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むことを特徴とする積層フィルム。
フッ素化合物A:下記の一般式(1)で示される化合物を指す。
B−R−R ・・・一般式(1)
(上記一般式中のBは反応性部位またはヒドロキシル基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rはフルオロアルキル基を示し、それぞれ側鎖を構造中に持ってもよい。)
【請求項2】
ジヨードメタンのA層上での接触角が80°以上87°未満であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
該A層が、(3)ポリシロキサンセグメント及び/またはポリジメチルシロキサンセグメント、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
積層フィルムのA層側表面について、XPSにより検出されるフッ素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子の合計数を100%とした際に、フッ素原子の数が0.4%以上50%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
A層の全体厚みを100%とした際に、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ1%以上100%以下の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をa、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ0%以上1%未満の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をbとしたときに、a/bが0%以上60%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記a/bが、5%以上20%以下であることを特徴とする請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記A層のTgが−30℃以上15℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
基材フィルムの少なくとも片側に有する層がA層の一層のみからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
80℃および150℃におけるA層の平均破壊伸度が、いずれも65%以上100%未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルムを含んでなるタッチパネル。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルムを含んでなる成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。本発明は、特に、成型材料として成型追従性、耐傷性に優れ、かつ生産性、コスト面で有利な積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
加飾成型などの成型材料は、成型時の傷防止や成型後の物品使用過程での傷を防止するために表面硬度化層が設けられる。しかし、表面硬度化層は、成型に追従する伸びが不足するため、成型時にクラックが発生する。極端な場合には、フィルムが破断し、表面硬度化層が剥離する。このため、成型後に表面硬度化層を形成する、あるいは、セミ硬化状態で成型した後、加熱やエネルギー線照射などで完全硬化させるなどの手段が適用されている。
【0003】
成型後の物品は3次元に加工されているため、後加工で表面硬度化層を設けるのは非常に困難である。また、セミ硬化状態で成型する場合には、成型条件によっては金型の汚れを誘発する場合がある。そのため、成型に追従する耐擦傷性材料として、近年硬度アップによる傷防止から軽度の傷を自己修復する「自己治癒材料」が注目されている。自己治癒材料は、自身の弾性回復範囲の変形を自己修復できるもので(この性質を自己治癒性という)、大きく熱硬化型と紫外線や電子線を用いたエネルギー線硬化型の2種類が知られている。特許文献1には、表面硬度が高いエネルギー線硬化型の材料が記載されている。特許文献2及び3には、自己治癒性のエネルギー線硬化型の材料が記載されている。また、特許文献4には、自己治癒性の熱硬化型の材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84395号公報
【特許文献2】特開2004−35599号公報
【特許文献3】特開2006−137780号公報
【特許文献4】国際公開第WO2011/136042号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載されたエネルギー線硬化型の材料は、表面硬度が高いものの自己治癒性は無く、また伸びが小さいため成型倍率の高い成型用途には適していない課題があった。
【0006】
特許文献2及び3に記載のエネルギー線硬化型の材料、および特許文献4に記載の熱硬化型の材料は、自己治癒性は十分なものの、塩ビシートに由来するジオクチルフタレートや化粧品、油性マジック等による汚染が見られることがあり、耐汚染性の点で十分ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、成型時の追従性や自己治癒性に優れ、耐汚染性に優れる自己治癒層を有する積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材フィルムの少なくとも片側に、A層を有する積層フィルムであって、該A層が、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有し、蒸留水の該A層上での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンの該A層上での接触角が70°以上87°未満であり、前記A層が、以下のフッ素化合物Aに由来する成分(以下、フッ素化合物A由来成分という)を含み、前記A層の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むことを特徴とする、積層フィルムである。
フッ素化合物A:下記の一般式(1)で示される化合物を指す。
B−R−R ・・・一般式(1)
(上記一般式中のBは反応性部位またはヒドロキシル基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rはフルオロアルキル基を示し、それぞれ側鎖を構造中に持ってもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムは、加温成型加工における追従性に優れ、表面傷の補修機能(自己治癒性)を有し、優れた耐汚染性を有する。本発明の積層フィルムは、特に表面傷の発生しやすい樹脂フィルムに有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
<基材フィルム>
本発明において基材フィルムを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。より好ましくは、基材フィルムを構成する樹脂は、成型性が良好であるため、熱可塑性樹脂である。
【0012】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、特に、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0013】
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分及びそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであっても良い。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0014】
また、基材フィルムには、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0015】
基材フィルムは、単層構成の基材フィルムや積層構成の基材フィルムのいずれであってもよい。
【0016】
<ポリエステル基材フィルム>
本発明では、基材フィルムを構成する樹脂が、基材フィルムの全成分100質量%において、ポリエステル樹脂を50質量%以上100質量%以下含む場合、基材フィルムをポリエステル基材フィルムという。
【0017】
本発明では、ポリエステル基材フィルムを構成するポリエステル樹脂は、用いるポリエステルの極限粘度(JIS K7367(2000)に従って25℃のo−クロロフェノール中で測定)が、0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gが特に好ましい。
【0018】
ポリエステル基材フィルムは、未延伸(無配向)フィルム、一軸延伸(一軸配向)フィルム、二軸延伸(二軸配向)フィルムのいずれも使用しうるが、寸法安定性や耐熱性に優れる二軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。二軸延伸フィルムは、高度に結晶配向されたものが好ましい。本発明では、二軸配向とは広角X線回折で二軸配向パターンを示すものをいう。
【0019】
ポリエステル基材フィルムは、内部に微細な空洞を有するポリエステルフィルムであっても良い。
【0020】
ポリエステル基材フィルムは、単層構成であっても積層構成であっても良い。
【0021】
ポリエステル基材フィルムが積層構成の場合には、異なるポリエステル樹脂、好ましくは、ポリエステル樹脂Cを50質量%以上100質量%以下含む層(C層)とポリエステル樹脂Dを50質量%以上100質量%以下含む層(D層)を積層させる。ポリエステル基材フィルムが積層構成の場合、本発明では、異なるポリエステル樹脂とは、分子構造が異なるポリエステル樹脂である場合も、共重合ポリエステル樹脂の一部の成分が異なる場合も意味する。
【0022】
ポリエステル基材フィルムが積層構成の場合、より好ましくは、ポリエステル樹脂Cを50質量%以上100質量%以下含む層(C層)と、ポリエステル樹脂Cとは異なるポリエステル樹脂Dを50質量%以上100質量%以下含む層(D層)を積層する。さらにより好ましくは、ポリエステル樹脂Cを50質量%以上100質量%以下含む層(C層)と、ポリエステル樹脂Cとは異なるポリエステル樹脂Dを50質量%以上100質量%以下含む層(D層)を、交互に、C層とD層を合わせて50層以上有する。積層数は、さらに、より好ましくは、200層以上である。積層数の上限値は、装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下に伴う波長選択性の低下を考慮すると、1500層以下であることが好ましい。本発明では、多層積層構成のポリエステル基材フィルムとすることにより、干渉色ないし更には金属調色を有するために好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂Cは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、ポリエステル樹脂Dが、スピログリコールを含むポリエステルであることが好ましい。スピログリコールを含むポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル(ポリエステルのグリコール成分を一部スピログリコールとしたもの)、またはホモポリエステル(グリコール成分が全てスピログリコールであるホモポリエステル)、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールを含むポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成型時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離しにくいために好ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂Cがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、ポリエステル樹脂Dがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含むポリエステルであることが、より好ましい。ポリエステル樹脂Dがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含むポリエステルとは、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸(またはシクロヘキサンジカルボン酸のエステル誘導体)を共重合したポリエステル、またホモポリエステル(グリコール成分が全てスピログリコールであり、カルボン酸成分が全てシクロヘキサンジカルボン酸であるホモポリエステル)、またはこれをブレンドしたポリエステルのことを言う。ポリエステル樹脂Dがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含むポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成型時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離しにくい。
【0025】
ポリエステル樹脂Cがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、ポリエステル樹脂Dがシクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル(グリコール成分が全てシクロヘキサンジメタノールであるホモポリエステル)、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成型時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。
【0026】
本発明では、より好ましくは、ポリエステル樹脂Dがシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。ポリエステル樹脂Dがシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体であると、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離が生じにくい。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強い相溶性を示す。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化が少なく、製膜時、やぶれにくい。
【0027】
前記C層の面内平均屈折率は、前記D層の面内平均屈折率より相対的に高いことが好ましい。また、C層の面内平均屈折率とD層の面内平均屈折率の差が、0.01以上であり、さらに1層の厚みが0.03μm以上0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくはC層の面内平均屈折率とD層の面内平均屈折率の差が、0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。C層の面内平均屈折率とD層の面内平均屈折率の差が、0.01以上であると、干渉反射によりフィルムは優れた金属調色を示すようになる。また、C層の面内平均屈折率と厚み方向屈折率の差が0.01以上であり、D層の面内平均屈折率と厚み方向屈折率差が0.01以下であると、入射角が大きくなっても、反射帯域の反射率低下が起きないため、より好ましい。
【0028】
本発明では、ポリエステル樹脂Cとポリエステル樹脂Dのガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂Cとポリエステル樹脂Dのガラス転移温度差が20℃以下の場合は、C層とD層とを積層したポリエステル基材フィルムを製膜する際の厚みが均一となり、該基材フィルムを用いた積層フィルムを成型する際にも、クラックや剥離が生じない。
【0029】
<A層を有する積層フィルム>
以下、基材フィルムの少なくとも片側に、A層を有する積層フィルムについて説明する。
【0030】
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片側に、A層を有する積層フィルムであって、該A層が、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有し、蒸留水の該A層上での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンの該A層上での接触角が70°以上87°未満である積層フィルムである。
【0031】
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片側にA層を有することで、自己治癒性及び耐汚染性に優れた効果を有する。
【0032】
A層は、基材フィルムの両側に設けることも可能であるが、その用途にも依存するものの、コストを考慮すると基材フィルムの片側のみに存在することが好ましい。多くの用途の場合、A層は基材フィルムの片側に存在するのみで、積層フィルムは十分な自己治癒性及び耐汚染性を有することとなるからである。
【0033】
以下、A層に含まれる成分について、説明する。
【0034】
<(ポリ)カプロラクトンセグメント>
本発明では、A層が、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメントを有する。A層が(ポリ)カプロラクトンセグメントを有することで、A層に弾性回復性(自己治癒性)を賦与することができる。
【0035】
本発明において、(ポリ)カプロラクトンセグメントとは、下記の化学式1で示されるセグメントを指す。
【0036】
【化1】
【0037】
(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂を含む組成物を用いてA層を形成することにより、A層は、(ポリ)カプロラクトンセグメントを有することができる。(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂は、少なくとも1以上の水酸基(ヒドロキシル基)を有することが好ましい。水酸基は、(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂の末端にあることが好ましい。
【0038】
(ポリ)カプロラクトンセグメントを有する成分をA層が有することにより、A層は自己治癒性を持つことができる。すなわち、A層表面に傷が付されたとしても、数秒の短時間で傷を消滅させる(自己治癒させる)ことができる。
【0039】
(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂としては、特に、2〜3官能の水酸基を有する(ポリ)カプロラクトンが好ましい。具体的には、(ポリ)カプロラクトンジオール、
【0040】
【化2】
【0041】
(ポリ)カプロラクトントリオール、
【0042】
【化3】
【0043】
ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
【0044】
【化4】
【0045】
などのラジカル重合性カプロラクトンを用いることができる。
【0046】
また、本発明において、(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂は、(ポリ)カプロラクトンセグメント以外に、他のセグメントやモノマーが含有(あるいは、共重合)されていても良い。たとえば、ポリジメチルシロキサンセグメントやポリシロキサンセグメントが含有(あるいは、共重合)されていても良い。
【0047】
また、本発明において、(ポリ)カプロラクトンセグメントを含有する樹脂中の、(ポリ)カプロラクトンセグメントの重量平均分子量は500〜2500であることが好ましく、より好ましい重量平均分子量は1000〜1500である。(ポリ)カプロラクトンセグメントの重量平均分子量は500〜2500であると、自己治癒性の効果がより発現し、また耐傷性がより向上する。
【0048】
(ポリ)カプロラクトンセグメントが共重合される場合であっても、別途添加される場合であっても、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%において、(ポリ)カプロラクトンセグメントの量が5〜70質量%であると、自己治癒性、耐汚染性の点で好ましい。ここで、組成物の全成分100質量%には、反応に関与しない溶媒は含まない。反応に関与するモノマー成分は含む。
【0049】
<ウレタン結合>
本発明では、A層が(2)ウレタン結合を有する。
【0050】
A層を形成するために用いる組成物が、ウレタン変性樹脂を含むことにより、A層はウレタン結合を有することが可能となる。また、A層を形成する際に、イソシアネート基と水酸基を反応させてウレタン結合を生成させることによっても、A層はウレタン結合を有することができる。
【0051】
本発明では、好ましくは、イソシアネート基と水酸基を反応させてウレタン結合を生成させることにより、A層は、ウレタン結合を有する。イソシアネート基と水酸基を反応させてウレタン結合を生成させることにより、A層の強靱性を向上させると共に弾性回復性(自己治癒性)を向上することができる。
【0052】
また、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂やポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂が、水酸基を有する場合は、熱などによってこれら樹脂とイソシアネート基を有する化合物との間にウレタン結合を生成させることが可能である。イソシアネート基を有する化合物と、水酸基を有するポリシロキサンセグメントを含有する樹脂や水酸基を有するポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂を用いてA層を形成すると、A層の強靱性および弾性回復性(自己治癒性)をさらに高めることができ、好ましい。
【0053】
本発明において、イソシアネート基を含有する化合物とは、イソシアネート基を含有する樹脂や、イソシアネート基を含有するモノマーやオリゴマーを指す。イソシアネート基を含有する化合物は、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などのポリイソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。
【0054】
これらのイソシアネート基を含有する化合物の中でも、脂環族や芳香族のイソシアネートに比べて脂肪族のイソシアネートが、自己治癒性が高く好ましい。イソシアネート基を含有する化合物は、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートである。また、イソシアネート基を含有する化合物は、イソシアヌレート環を有するイソシアネートが耐熱性の点で特に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が最も好ましい。イソシアヌレート環を有するイソシアネートは、自己治癒性と耐熱特性を併せ持つA層を形成する。
【0055】
本発明のA層は、イソシアネート基と水酸基によって、ウレタン結合を生じる熱による反応によって形成されることが好ましい。イソシアネート基を含有する化合物のイソシアネート官能基が2以上であれば、水酸基を有する化合物とより多く連結して、物性を向上させることから好ましい。
【0056】
本発明において、A層を形成するには、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%中にイソシアネート基を含有する化合物を11質量%以上40質量%以下含んでいることが好ましい。ただし、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%には、反応に関与しない溶媒は含まない。反応に関与するモノマー成分は含む。
【0057】
A層を形成するために用いる組成物中には、アルコキシメチロールメラミンなどのメラミン架橋剤、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系架橋剤、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアミン系架橋剤などの他の架橋剤を含むことも可能である。必要に応じてウレタン結合の形成反応を促進させるためにジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの架橋触媒を用いても良い。
【0058】
本発明におけるA層は、好ましくは、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、(2)ウレタン結合、(3)ポリシロキサンセグメント及び/またはポリジメチルシロキサンセグメントの全てを有する樹脂をA層が含む。(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、(2)ウレタン結合、(3)ポリシロキサンセグメント及び/またはポリジメチルシロキサンセグメントの全てが、高分子体である一つの樹脂の中に含まれることにより、A層はより強靱な層となるため好ましい。
【0059】
水酸基を有するポリジメチルシロキサン系共重合体、(ポリ)カプロラクトン、イソシアネート基を含有する化合物の少なくとも3成分を含む組成物を、基材フィルム上に塗布して加熱により反応させることで、(ポリ)カプロラクトンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメント、ウレタン結合の全てを有する樹脂を有するA層を得ることができる。
【0060】
A層を構成する全成分100質量%において、A層が、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、(2)ウレタン結合、(3)(ポリ)シロキサンセグメント及び/または(ポリ)ジメチルシロキサンセグメントの全てを有する樹脂を、80質量%以上100質量%以下を占めることが、さらに好ましい。A層を構成する全成分100質量%において、(ポリ)カプロラクトンセグメント、ポリシロキサンセグメント及び/またはポリジメチルシロキサンセグメント、ウレタン結合の全てを有する樹脂が、80質量%以上100質量%以下を占めることにより、自己治癒性が高まる。
【0061】
<ポリシロキサンセグメント>
本発明では、A層が(3)ポリシロキサンセグメントを有することが好ましい。本発明において、ポリシロキサンセグメントとは、以下の化学式で示されるセグメントを指す。なお、下記化学式5において、Rは、OHとC数1〜8のアルキル基のいずれかであり、式中においてそれぞれを少なくとも1つ以上有する。
【0062】
【化5】
【0063】
A層がポリシロキサンセグメントを有するためには、A層を形成するために用いる組成物が、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂を含むことで可能となる。
【0064】
本発明では、加水分解性シリル基を含有するシラン化合物の部分加水分解物、オルガノシリカゾルまたは該オルガノシリカゾルにラジカル重合体を有する加水分解性シラン化合物を付加させた組成物を、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂として用いることができる。
【0065】
ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂は、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシランなどの加水分解性シリル基を有するシラン化合物の完全もしくは部分加水分解物や有機溶媒に分散させたオルガノシリカゾル、オルガノシリカゾルの表面に加水分解性シリル基の加水分解シラン化合物を付加させたものなどを例示することができる。
【0066】
また、本発明において、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂は、ポリシロキサンセグメント以外に、他のセグメント等が含有(共重合)されていても良い。たとえば、(ポリ)カプロラクトンセグメント、ポリジメチルシロキサンセグメントを有するモノマー成分が含有(共重合)されていても良い。
【0067】
本発明においては、ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂として、イソシアネート基と反応する水酸基を有するモノマー等が共重合されていることが好ましい。ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂に、イソシアネート基と反応する水酸基を有するモノマー等が共重合すると、A層の強靱性を向上する。
【0068】
ポリシロキサンセグメントを含有する樹脂が水酸基を有する共重合体である場合、水酸基を有するポリシロキサンセグメントを含有する樹脂(共重合体)とイソシアネート基を含有する化合物とを含む組成物を用いてA層を形成すると、効率的に、ポリシロキサンセグメントとウレタン結合とを有するA層とすることができる。
【0069】
ポリシロキサンセグメントが、共重合される場合であっても、別途添加される場合であっても、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%においてポリシロキサンセグメントが1〜20質量%であると、自己治癒性、耐汚染性、耐候性、耐熱性の点で好ましい。組成物の全成分100質量%には、反応に関与しない溶媒は含まない。反応に関与するモノマー成分は含む。
【0070】
<ポリジメチルシロキサンセグメント>
本発明では、A層が(3)ポリジメチルシロキサンセグメントを有することが好ましい。
【0071】
本発明において、ポリジメチルシロキサンセグメントとは、下記式で示されるセグメントを指す。
【0072】
【化6】
【0073】
A層が、ポリジメチルシロキサンセグメントを有すると、ポリジメチルシロキサンセグメントがA層の表面に存在することとなる。ポリジメチルシロキサンセグメントがA層の表面に存在することにより、A層表面の潤滑性が向上し、摩擦抵抗を低減することができる。この結果、傷付き性を抑制することができる。
【0074】
A層がポリジメチルシロキサンセグメントを有するためには、A層を形成するために用いる組成物が、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂を含むことで可能である。本発明においては、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂としては、ポリジメチルシロキサンセグメントにビニルモノマーが共重合された共重合体を用いることが好ましい。
【0075】
A層の強靱性を向上させる目的で、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂は、イソシアネート基と反応する水酸基を有するモノマー等が共重合されていることが好ましい。ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂が水酸基を有する共重合体である場合、水酸基を有するポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂(共重合体)とイソシアネート基を含有する化合物とを含む組成物を用いてA層を形成すると、効率的にポリジメチルシロキサンセグメントとウレタン結合とを有するA層とすることができる。
【0076】
ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂が、ビニルモノマーとの共重合体の場合は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであっても良い。ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂がビニルモノマーとの共重合体の場合、これを、ポリジメチルシロキサン系共重合体という。ポリジメチルシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などに製造することができるが、生産性を考慮すると高分子開始剤法、高分子連鎖移動法を用いるのが好ましい。
【0077】
高分子開始剤法を用いる場合には下記の化学式
【0078】
【化7】
【0079】
で示される高分子アゾ系ラジカル重合開始剤を用いて他のビニルモノマーと共重合させることができる。またペルオキシモノマーと不飽和基を有するポリジメチルシロキサンとを低温で共重合させて過酸化物基を側鎖に導入したプレポリマーを合成し、該プレポリマーをビニルモノマーと共重合させる二段階の重合を行うこともできる。
【0080】
高分子連鎖移動法を用いる場合は、例えば、下記化学式
【0081】
【化8】
【0082】
に示すシリコーンオイルに、HS−CH2COOHやHS−CH2CH2COOH等を付加してSH基を有する化合物とした後、SH基の連鎖移動を利用して該シリコーン化合物とビニルモノマーとを共重合させることでブロック共重合体を合成することができる。
【0083】
ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を合成するには、例えば、下記化学式
【0084】
【化9】
【0085】
に示す化合物、すなわちポリジメチルシロキサンのメタクリルエステルなどとビニルモノマーを共重合させることにより容易にグラフト共重合体を得ることができる。
【0086】
ポリジメチルシロキサンとの共重合体に用いられるビニルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート,n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセチトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコールなどを挙げることができる。
【0087】
また、ポリジメチルシロキサン系共重合体は、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などを単独もしくは混合溶媒中で溶液重合法によって製造されることが好ましい。
【0088】
必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリルなどの重合開始剤を併用する。重合反応は50〜150℃で3〜12時間行うのが好ましい。
【0089】
本発明におけるポリジメチルシロキサン系共重合体中のポリジメチルシロキサンセグメントの量は、A層の潤滑性や耐汚染性の点で、ポリジメチルシロキサン系共重合体の全成分100質量%において1〜30質量%であるのが好ましい。またポリジメチルシロキサンセグメントの重量平均分子量は1000〜30000とするのが好ましい。
【0090】
ポリジメチルシロキサンセグメントが、共重合される場合であっても、別途添加される場合であっても、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%においてジメチルシロキサンセグメントが1〜20質量%であると、自己治癒性、耐汚染性、耐候性、耐熱性の点で好ましい。組成物の全成分100質量%には、反応に関与しない溶媒は含まない。反応に関与するモノマー成分は含む。
【0091】
本発明において、A層を形成するために用いる組成物として、ポリジメチルシロキサンセグメントを含有する樹脂を使用する場合は、ポリジメチルシロキサンセグメント以外に、他のセグメント等が含有(共重合)されていても良い。たとえば、(ポリ)カプロラクトンセグメントやポリシロキサンセグメントが含有(共重合)されていても良い。
【0092】
A層を形成するために用いる組成物には、(ポリ)カプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメントの共重合体、(ポリ)カプロラクトンセグメントとポリシロキサンセグメントとの共重合体、(ポリ)カプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメントとポリシロキサンセグメントとの共重合体などを用いることが可能である。このような組成物を用いて得られるA層は、(ポリ)カプロラクトンセグメントとポリジメチルシロキサンセグメント及び/又はポリシロキサンセグメントとを有することが可能となる。
【0093】
(ポリ)カプロラクトンセグメント、ポリシロキサンセグメント及びポリジメチルシロキサンセグメントを有するA層を形成するために用いる組成物中の、ポリジメチルシロキサン系共重合体、(ポリ)カプロラクトン、およびポリシロキサンの反応は、ポリジメチルシロキサン系共重合体合成時に、適宜(ポリ)カプロラクトンセグメント及びポリシロキサンセグメントを添加して共重合することができる。
【0094】
<フッ素化合物A>
本発明では、A層が、以下のフッ素化合物Aに由来する成分(以下、フッ素化合物A由来成分という)を含むことが好ましい。A層が、フッ素化合物A由来成分を含むことで、A層に耐汚染性を賦与することができる。
【0095】
本発明において、フッ素化化合物Aとは、下記の一般式(1)で示される化合物を指す。
B−R−R ・・・一般式(1)
(上記一般式中のBは反応性部位またはヒドロキシル基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rはフルオロアルキル基を示し、それぞれ側鎖を構造中に持ってもよい。)
Bの反応性部位とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基を持つ部位、又は、ヒドロキシル基を意味する。光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基を持つ部位の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。また、本発明においてはA層がウレタン結合を有する為、Bがヒドロキシル基であってもよい。
【0096】
またフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。
【0097】
フッ素化合物Aとしては、例えば、2-(パーフルオロブチル)エタノール、2-(パーフルオロヘキシル)エタノール、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン、3-(パーフルオロヘキシル)プロピレンなどを挙げることができる。
【0098】
これらのフッ素化合物Aの中でも、Bがアクリロイル基である場合に、特に耐汚染性が高く好ましい。Bがアクリロイル基を含有するフッ素化合物Aは、より好ましくは、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートである。
【0099】
A層を形成するために用いる組成物が、フッ素化合物Aを含有することにより、該組成物を用いて得られるA層は、フッ素化合物A由来成分を含むことができる。
【0100】
また、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むことが好ましい。A層を形成するために用いる組成物をこのようにすることで、得られる積層フィルムのA層の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むこととなり、A層の自己治癒性と耐汚染性を特に優れたものとすることができる。すなわち、優れた自己治癒性を維持したまま、しかもA層表面に塩ビシートに由来するジオクチルフタレートや化粧品等が付着しても、拭き取りによってきれいに除去することができる。
【0101】
また、本発明において、A層を形成するために用いる組成物中にフッ素化合物Aを含有する際は、フッ素化合物A以外に、他のフッ素化合物を含有しても良い。このような化合物としては、たとえば、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロヘキシルアイオダイド、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが含有されていても良い。
<他の添加剤>
A層を形成するために用いる組成物には、開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤および触媒は、フッ素化合物Aの硬化を促進するために用いられる。開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0102】
開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0103】
なお、A層を形成するために用いる組成物中の開始剤および硬化剤の含有割合は、フッ素化合物A100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましい。より好ましくは0.05質量部から20質量部であり、さら好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0104】
<A層のその他の成分>
本発明のA層は、アクリルセグメント、ポリオレフィンセグメント、ポリエステルセグメントなどのその他の成分が含まれていても良い。
【0105】
ポリオレフィンセグメントは、ポリオレフィン系樹脂と同等の構造を有する炭素原子数が2〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位からなる重合体である。
【0106】
アクリルセグメントは、アクリル単位を構成成分として含む重合体であり、アクリル単位を50mol%以上含むことが好ましい。好適例として、メタクリル酸メチル単位、アクリルメチル単位、アクリルエチル単位およびアクリルブチル単位を挙げることができる。A層にアクリルセグメントを有すると、耐汚染性、強靱性に優れたA層とすることができる。
【0107】
ポリエステルセグメントのジオール成分としては、ブタンジオールおよび/またはヘキサンジオール以外に、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ダイマージオール、水添ダイマージオールを用いることができる。ポリエステルセグメントの酸成分としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などを用いることができ、これらの構成成分が複数含まれていてもよい。
【0108】
A層は、例えば、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機、無機の粒子、顔料、染料、離型剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【0109】
<A層のガラス転移温度(Tg)>
本発明の積層フィルムは、A層のガラス転移温度(Tg)が−30℃以上15℃以下であることが好ましい。A層のガラス転移温度(Tg)は、より好ましくは、0℃以上15℃以下である。
【0110】
A層のガラス転移温度が−30℃以上15℃以下であると、自己治癒速度が大きく向上し、また、低温領域においても自己治癒性を維持した積層フィルムとなる。A層のガラス転移温度が15℃を超える場合は、雰囲気温度10℃以下での自己治癒性が極端に遅くなり、また、A層のガラス転移温度が−30℃未満では、すべり性が低下してロールでの巻き取り不良やブロッキング、成型不良などの問題が発生する。A層のガラス転移温度が、0℃以上15℃以下であると、雰囲気温度5℃での自己治癒性が良く、耐汚染性がよい。
【0111】
A層のガラス転移温度を−30℃以上15℃以下とするためには、A層を形成するために用いる組成物の全成分100質量%中に、イソシアネート基を含有する化合物を11〜40質量%とすることが好ましい。
【0112】
A層のガラス転移温度を−30℃以上15℃以下とするための別の方法としては、A層が低ガラス転移温度成分を有することが好ましい。特に、A層が低ガラス転移温度成分のアクリルセグメントを有することが好ましい。低ガラス転移温度成分のアクリルセグメントとは、例えば、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートなどのモノマーの重合体で構成されるセグメントである。A層中に、低ガラス転移温度成分のアクリルセグメントの含有量を変えることにより、A層のガラス転移温度を−30℃以上15℃以下に制御できるため、好ましい。
【0113】
<A層の温度10℃での傷の回復時間>
本発明の積層フィルムは、A層の温度10℃での傷の回復時間が25秒以下であることが好ましい。さらに好ましくは、A層の温度10℃での傷の回復時間が10秒以下である。回復時間が25秒以下であると、自己治癒速度が大きく向上する。また、回復時間が10秒以下であれば、成型倍率を高くしても自己治癒性の低下が少ないので、好ましい。なお、本発明の積層フィルムは温度によって回復時間が異なる。温度が低ければ回復時間が長くなり、温度が高ければ回復時間が短くなることがわかっている。また、本発明の積層フィルムは基材フィルムによって回復時間がわずかに異なる。基材フィルムが前記積層構成であれば回復時間が短くなり、前記単層構成であれば回復時間が長くなることがわかっているが、その変化はA層の温度10℃のとき1秒以下と回復時間への寄与はわずかである。
【0114】
A層の温度10℃での傷の回復時間を25秒以下とするには、A層のガラス転移温度を下げることが好ましく、A層の温度10℃での傷の回復時間を25秒以下とするために好ましいA層のガラス転移温度は、−30℃以上15℃以下である。
<フッ素原子の分布>
本発明の積層フィルムは、A層側表面について、XPSにより検出されるフッ素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子の合計数を100%とした際に、フッ素原子の数が0.4%以上50%以下であることが好ましく、10%以上50%以下であることがより好ましい。A層側表面について、フッ素原子の数を0.4%以上50%以下とすることで、耐汚染性を特に優れたものとすることができる。A層側表面について、フッ素原子の数を0.4%以上50%以下とする方法としては、A層の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むことが好ましい。
【0115】
本発明の積層フィルムは、A層の全体厚みを100%とした際に、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ1%以上100%以下の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をa、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ0%以上1%未満の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をbとしたときに、a/bが0%以上60%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上25%以下であることが好ましい。このような構成とすることで、自己治癒性と耐汚染性を両立させることができる。
【0116】
ここでaとは、この範囲において複数検出されたフッ素原子の検出強度の中で、最大の値を示す1点を意味する。bについても同様である。
【0117】
a/bは、より好ましくは5%以上20%以下である。
【0118】
なお、前記フッ素化合物A(フッ素化合物由来成分)は、表面に集まって硬化する特徴を持つ。その為、a/bが0%以上60%以下である構成の積層フィルムを得るためには、A層を形成するために用いる組成物がフッ素化合物Aを含有することが好ましい。
<A層の層数>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも片側に有する層がA層の一層のみからなることが好ましい。
【0119】
本発明の積層フィルムのA層は、フッ素化合物A由来成分を含むことが好ましいが、例えばフッ素化合物A由来成分を含まずに後述の積層工程、加熱工程、エージング工程を経て得られた、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有するA層に対して、さらにフッ素化合物A由来成分を含む層を積層した場合、表面の性質はフッ素化合物A由来成分に大きく依存し、耐汚染性は得られるものの自己治癒性が得られないこととなる。この為、A層は、(ポリ)カプロラクトンセグメント等を有する層にフッ素化合物Aからなる層を積層した2層以上の態様よりも、フッ素化合物A由来成分及び(ポリ)カプロラクトンセグメント等を有する層の1層のみからなる態様が好ましい。
【0120】
つまり、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有するA層自体が、フッ素化合物A由来成分を含むことが好ましい。
【0121】
本発明において、層が一層のみであるとは、内部に輝度の差が5%以上となる界面が存在しない層のことを意味する。詳細は後述する。
【0122】
なお、本発明においては、層数が一層であることが好ましいので、本発明の積層フィルムを製造するに際しては、A層を形成するために用いる組成物として、フッ素化合物Aを含有する組成物のみを塗布して硬化させることが好ましい。フッ素化合物Aを含有する組成物を基材フィルム中に塗布して硬化させると、フッ素化合物AがA層の表面に移動するため、一層からなり、該一層の中で含有成分に濃度分布が存在する本発明の積層フィルムを得ることができる。つまり本発明の積層フィルムは、フッ素化合物Aを含有するA層を形成するために用いる組成物を、基材フィルム上に1回のみ塗布した後に硬化させることによって得られる積層フィルムであることが好ましい。
【0123】
<A層の性能>
本発明の積層フィルムは、蒸留水のA層上での接触角が95°以上120°未満であり、ジヨードメタンのA層上での接触角が70°以上87°未満であることが重要である。
【0124】
蒸留水のA層上での接触角は、より好ましくは105°以上120°未満、更に好ましくは95°以上120°未満である。また、ジヨードメタンのA層上での接触角は、より好ましくは75°以上87°未満であり、更に好ましくは80°以上87°未満である。
【0125】
蒸留水のA層上での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンのA層上での接触角が70°以上87°未満であると、耐汚染性が良好となる。耐汚染性とは、美肌効果、紫外線カット効果を有するクリーム剤や油性マジック、塩ビシートに由来するジオクチルフタレート等に対する耐性である。
【0126】
蒸留水のA層上での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンのA層上での接触角が70°以上87°未満とするためには、前記A層の全成分100質量%中に、フッ素化合物A由来成分を0.5質量%以上25質量%以下含むことが好ましい。
【0127】
本発明の積層フィルムを得るためにA層を積層構成にして、基材フィルム上に(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、および(2)ウレタン結合、を有するA1層を形成し、次いで該A1層上に蒸留水での接触角が95°以上120°未満、ジヨードメタンでの接触角が70°以上87°未満となるA2層を形成することも可能である。しかしこのような構成の場合には、十分な自己治癒性を有さないので機能面で劣り、また2層を別々に構成するために、コスト的にも望ましくない。一方で、フッ素化合物Aを含有するA層を形成するために用いる組成物を、基材フィルム上に1回のみ塗布した後に硬化させることによって得られる本発明の積層フィルムであれば、A層の総数が1層となり、機能的にもコスト的にも優れた積層フィルムとすることができる。
【0128】
また、ジヨードメタンのA層上での接触角を80°以上87°未満に制御するためには、さらに特別な条件による製造が重要である。つまり、ジヨードメタンのA層上での接触角を80°以上87°未満に制御するためには、フッ素原子を表面に集めることが重要である。ジヨードメタンのA層上での接触角が70°以上87°未満とするためには、単にフッ素化合物Aを含む組成物を用いてA層を形成すれば可能であるが、該接触角を80°以上87°未満に制御するためには、さらにフッ素原子を表面に集めることが要求される。
【0129】
フッ素化合物Aをより効率よく表面に集め、表面に集まった状態で硬化させる、つまり、A層表面にフッ素化合物A由来成分を集める為には、塗液中のフッ素化合物AがA層表面へ移動するまでの移動抵抗を低下させることが有効であり、その為にはフッ素化合物A以外のA層を形成する材料の硬化を抑制させることが有効である。例えば、A層を形成するために用いる組成物中に、低沸点溶媒(例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル)とともに、高沸点溶媒(例えば、シクロヘキサノンや酢酸ブチル)を混合して用いることが好ましい。ここで低沸点溶媒としては、沸点が80℃以下の溶媒が好ましく、より好ましくは75℃以上80℃以下である。一方で高沸点溶媒とは、沸点が125℃以上の溶媒が好ましく、より好ましくは125℃以上160℃以下である。また、これら溶媒の質量比率は、高沸点溶媒:低沸点溶媒が1〜50:99〜50であることが好ましい。さらに、後述のエネルギー線照射工程において、窒素雰囲気下で行うことにより、該工程中の酸素濃度を2体積%以下とすると、フッ素化合物Aの硬化が酸素によって阻害されない為好ましい。さらにA層を形成するに際して、フッ素化合物Aはエネルギー線照射によって硬化させ、その他のA層を形成するための材料は、熱により硬化させることが好ましい。つまり、フッ素化合物Aを含有するA層を形成するために用いる組成物を、基材フィルム上に1回のみ塗布する工程、エネルギー線照射工程、後述する加熱工程、及び後述するエージング工程を、この順に行うことで、A層を形成することが好ましい。これらの操作を施すことによって、ジヨードメタンのA層上での接触角を80°以上87°未満とすることが出来るため好ましい。
【0130】
本発明の積層フィルムでは、自己治癒性および耐化粧品性のよい積層フィルムを得るため、A層の厚みを、15〜30μmとすることが好ましい。A層の厚みを、15〜30μmとすることにより、自己治癒効果があって、耐化粧品性のよい積層フィルムとすることができる。
【0131】
本発明の積層フィルムを成型する場合、成型によりA層の厚みは薄くなるため、成型倍率にあわせてA層の厚みを厚くしておくのが有効である。成型倍率1.1倍の成型において好ましいA層の厚みは、16.5〜33μm、成型倍率1.6倍の成型において好ましいA層の厚みは24〜48μmである。
【0132】
本発明の積層フィルムのA層の80℃および150℃における平均破壊伸度は、いずれも65%以上100%未満であることが好ましく、より好ましくは70%以上100%未満である。80℃および150℃での平均破壊伸度が65%以上の場合、十分な伸度を維持でき、100%未満であると、基材フィルムとの追従性がよい。
【0133】
<A層の形成方法>
本発明の積層フィルムのA層は、例えば、以下の工程をその順に経て、製造することができる。A層の80℃および150℃における平均破壊伸度を65%以上100%未満にするためには、積層工程、加熱工程、エネルギー線照射工程の後に、エージング工程を経ることが特に好ましい。
【0134】
積層工程
前記基材フィルムの少なくとも片側に、(1)(ポリ)カプロラクトンセグメント、(3)ポリシロキサンセグメント及び/またはポリジメチルシロキサンセグメント、(2)ウレタン結合、フッ素化合物Aを有する層(A層)を積層する。基材フィルムへのA層の積層は、例えば、A層を形成するために用いる組成物と、必要に応じて溶媒を含む塗液を、基材フィルムの少なくとも片側に、塗布する手法を挙げることができる。また、塗布方法としては、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、リバースコート法、ナイフコート法、バーコート法など公知の塗布方法を適用することができる。
【0135】
加熱工程
加熱を行うことにより、層中の溶媒が揮発するとともに、A層を形成するために用いる組成物中のイソシアネート基と、他のセグメントとの架橋反応を促進することができる。本発明では、加熱工程後、エージング工程前のA層中のイソシアネート基の残量が、加熱工程前のイソシアネート基の量に対して、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは実質的に0%である。実質的に0%とは、赤外分光光度計分析を行ってもイソシアネート基が検出されないことを言う。A層中にイソシアネート基が多量に残存すると、その後のエージング工程において、A層中のイソシネート基が、空気中の水分と反応し、ウレア結合を形成し、エージング工程後のA層が硬質化して、A層の平均破壊伸度が低下する原因となる。そのためにエージング工程前に、イソシアネート基の反応をできるだけ進行(より好ましくは完了)させておくことが望ましい。反応が不十分である場合には、A層にタック性が残り、ロール状に巻き取った場合に反対面とのブロッキングが発生し、エージング後には剥離困難となる場合がある。
【0136】
加熱工程における加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上である。基材フィルムの熱収縮によるしわの発生などを考慮すると、加熱温度は180℃以下であることが好ましく、加熱によるフッ素化合物Aの揮発を考慮すると、160℃以下であることが好ましく、更に好ましくは100℃以下であることが好ましい。加熱温度が60℃以上であると、溶媒の揮発が十分となる。
【0137】
加熱時間は、1分以上、好ましくは、2分以上、更に好ましくは、3分以上である。生産性、基材フィルムの寸法安定性、透明性の維持の点で、加熱時間は、5分以下とすることが望ましい。
【0138】
本発明では、加熱温度が60℃以上160℃以下、かつ、加熱時間が1分以上5分以下であることが好ましい。加熱工程における加熱方法は、加熱効率の点から熱風で行うのが好ましく、公知の熱風乾燥機、または、ロール搬送やフローティングなどの連続搬送が可能な熱風炉などを適用できる。
【0139】
エネルギー線照射工程
エネルギー線を照射する事により、A層を形成するために用いる組成物中のフッ素化合物Aを硬化させることができる。エネルギー線による硬化は、汎用性の点から電子線(EB線)または紫外線(UV線)が好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度が2体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0体積%であることが好ましいため、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化するのが好ましい。酸素濃度が18体積%以上と高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、自己治癒性、耐汚染性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度は100mW/cm以上3000mW/cm以下である。紫外線の照度は200mW/cm以上2000mW/cm以下が好ましく、300mW/cm以上1500mW/cm以下がさらに好ましい。紫外線の積算光量は100mJ/cm以上3000mJ/cm以下である。積算光量は200mJ/cm以上2000mJ/cm以下が好ましく、300mJ/cm以上1500mJ/cm以下がさらに好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0140】
エージング工程
加熱工程において、加熱した積層フィルムは、エネルギー線照射工程を経た後、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は、好ましくは、20〜60℃であり、より好ましくは、40℃〜60℃である。エージング時間は、好ましくは、3日間以上、より好ましくは、7日間以上、更に好ましくは、20日間以上である。エージング処理により、ウレタン結合が増え、A層の平均破壊伸度を65%以上100%未満とすることができる為、エージング工程によってA層の硬化が完了することが好ましい。エージング処理は、所定の温度設定が可能な恒温室で枚葉もしくはロールで行うことが好ましい。
【0141】
本発明の積層フィルムの好ましい用途は、成型用途、特にパソコンや携帯電話などの筐体に適用される加飾成型用途である。本発明の積層フィルムは、射出成型、圧空成型、真空成型、熱成型、プレス成型などの成型方法を適用して、成型体とすることができる。中でも、成型時に80℃〜180℃に加温される用途に特に好適に適用することができる。
【0142】
また、成型用途に用いる場合、本発明の積層フィルムの成型倍率が、1.1〜1.6倍であることが好ましい。成型体は、折り曲げ部分や湾曲部分などが特に成型倍率が高くなりやすく、折り曲げ部分や湾曲部分の成型倍率が、1.1〜1.6倍であれば、深絞りの成型に対応できるため好ましい。
【0143】
また本発明の積層フィルムは、該積層フィルムを含んでなるタッチパネルとしても好適に用いることができる。
【0144】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は以下のとおりである。
【0145】
(1)A層の厚みおよび層数
厚み:
積層フィルムおよび成型フィルムの断面を、ミクロトーム(日本ミクロトーム製、RMS−50)のダイヤモンドナイフにて切削して得る(方法Aとする。方法AによるサンプルをサンプルAという。)。この後、1質量%四酸化オスミウム液(4℃)中で2時間する放置する。純度99.8質量%以上のエタノール100mlにて3回、各20分揺り動かしながら洗浄を行い、サンプルを得る(方法Bとする。方法BによるサンプルをサンプルBという。)。また、1質量%四酸化ルテニウム液を用いて、同様の操作を行なった別のサンプルを作成する(方法Cとする。方法CによるサンプルをサンプルCという。)。これらのサンプルA,B,Cについて透過型電子顕微鏡(日立(株)製 H−7100FA)にて観察される層厚みに応じて最大4万倍まで拡大させた像を得て、最もコントラストの高いサンプルを得られる方法を選択した。
【0146】
そして、選択された特定の方法のサンプルについて層厚みを測定した。なお測定は、選択された方法における10サンプルの平均値とした。また、測定個所は、サンプルの中心部分50mm四方を切り取り、その中の3箇所を測定した。
層数:
層数の測定は、層厚みの測定に用いた画像について、日本ローパー(株)製の画像解析ソフトImage-Pro Plusを用いて輝度を調べることで行なう。そして、基材フィルム上に積層される層の有する輝度を測定して、基材フィルムと略平行な方向に輝度の差が5%以上となる界面を設定できるか否かで判断する。
【0147】
つまり、基材フィルム上に積層される層の有する輝度を測定して、基材フィルムと略平行な方向に輝度の差が5%以上となる界面を見出すことができる場合、二層以上から構成されるものとする。一方で、基材フィルム上に積層される層の有する輝度を測定することで、基材フィルムと略平行な方向に輝度の差が5%以上となる界面を見出すことができない場合、一層から構成されるものとする。
【0148】
なお、基材フィルムと略平行な方向に輝度の差が5%以上となる界面を設定できるか否かで判断するため、仮に輝度の差が5%以上となる部分が存在したとしても、それがある一部分だけであり、基材フィルムと略平行な方向に輝度の差が5%以上となる界面を設定できない場合には、一層から構成されるものとする。
【0149】
また、厚さ0.01nm未満の層は観察すること自体が困難なため、厚さ0.01nm未満の層は無視するものとする。
【0150】
(2)80℃および150℃におけるA層の平均破壊伸度
積層フィルムを10mm幅×200mm長に切り出し、長手方向にチャックで把持してインストロン型引っ張り試験機(インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848)にて引っ張り速度100mm/分で伸長した。測定雰囲気温度を80℃とし、伸度1%単位でサンプルを採取した。採取したサンプルの薄膜断面を切り出し、観察するA層の厚みが、透過型電子顕微鏡の観察画面上において、30mm以上になるような倍率でA層を観察し、A層の平均厚みの50%以上のクラック(亀裂)が発生している場合をクラック有り(A層の破壊有り)として、当該フィルムの破壊伸度(80℃−1回目)とした。同一の測定を計3回行い、破壊伸度(80℃−1回目)、破壊伸度(80℃−2回目)および破壊伸度(80℃−3回目)を得て、それらの平均値を80℃におけるA層の平均破壊伸度とした。
【0151】
次いで、測定雰囲気温度を150℃とした以外は、測定雰囲気温度が80℃の場合と同様にして、150℃におけるA層の平均破壊伸度を求めた。
【0152】
(3)A層表面のフッ素原子数比(X線光電子分光分析法:XPS)
アルバック・ファイ社製PHI5000 VersaProbeにて測定した。条件は以下の通り。
X線源:mono−Al
出力:24.2W
X線ビーム径:100μm
取り出し角:45°
パスエネルギー:23.50eV
各原子の組成比は、高分解能スペクトルからピーク面積を測定し、伝達関数修正された原子感度定数を適用することによって決定され、解析には付属のソフトウェアが使用される。
【0153】
そして、積層フィルムのA層側表面について、XPSにより検出されるフッ素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子の合計数を100%とした際の、フッ素原子の数を求めた(表において、「A層表面のフッ素原子数比[%]」として記した。)。この測定で検出限界よりも下回っている場合(フッ素原子が検出されない場合)は、表中で「‐」と示した。
【0154】
(4)a/b(飛行時間型二次イオン質量分析法:TOF−SIMS)
ION TOF社製TOF−SIMSVを用い、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって、(1)の方法で求められた厚みについて、二次イオン質量分析法によってフッ素原子の検出強度を求めた。条件は以下の通り。
・Analysis parameter
Analysis beam:Bi+, negative
Current beam:1.000pA
Area:50×50μm2
・Sputter parameter
Sputter beam:Cs+,10keV
Current beam:39.000nA
Area:200×200μm2
表には、A層の全体厚みを100%とした際に、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ1%以上100%以下の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をa、積層フィルムのA層側表面から基材フィルム方向に向かって厚さ0%以上1%未満の範囲における、TOF−SIMSによるフッ素原子の検出強度の最大値をbとしたときの、a/b[%]を示した。この測定で検出限界よりも下回っている場合(フッ素原子が検出されない場合)は、表中で「‐」と示した。
【0155】
(5)A層の自己治癒性
JIS K5600(1999年制定)『引っ掻き硬度(鉛筆法)』に従って、塗膜表面に傷を形成した。条件は以下のとおり。
【0156】
引っ掻き装置:鉛筆引っ掻き試験機(KT−VF2391)
鉛筆:HB鉛筆(“ユニ”三菱鉛筆製)
荷重:750g
引っ掻き速度:10mm/s
サンプルの真上にハイスピードカメラを設置して、傷が入ってから画面上の傷の10秒後の輝度差が1.0%以下になるまでの時間を計測し、回復時間とした。回復時間が速ければそれだけ自己治癒性が高いことを表す。測定は3回行い、その平均値を採った。また、測定は温調されているアクリルボックス内で行い、温度5℃、10℃、20℃の時で行った。また、成型フィルムの測定個所は、フィルムの中心部分50mm四方を切り取り、その中の3箇所を測定した。カメラの撮影条件は以下のとおりである。
【0157】
光源:LuminarAce LA−150UXのリングライトをカメラ先端に設置
カメラ:VW−6000(キーエンス株式会社)
sample rate:10pps
exposhure time:20000μs 。
【0158】
傷の回復が見られないものについては、表中で「‐」と示した。
【0159】
(6)A層のTg
示差熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。刃ナイフで削りだしたA層のサンプルを、アルミ製のパンに詰め、−100℃から100℃まで20℃/minで昇温した。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg。
【0160】
(7)接触角
温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下で試料を24時間放置後、協和界面化学(株)製接触角計CA−D型を用いて、蒸留水、ナカライテスク(株)製ジヨードメタンを滴下後、10秒後の接触角をそれぞれ測定した。なお、各試料につき3回測定を行い、平均値を接触角とした。
【0161】
(8)耐汚染性(化粧品)
5cm角に切り出した試料に花王(株)製”アトリックス ハンドクリーム”を0.5g塗布し、温度40℃、相対湿度95%の雰囲気下で6時間放置後、25℃相対湿度65%の雰囲気下で30分間放置し、表面をガーゼできれいに拭き取る。温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間放置後、表面の状態を観察し、下記の基準に則り判定を行った。
○(優):白斑の発生なし。
●(良):白斑の発生がほとんどなし。
△(可):白斑が発生するが、拭き取ればきれいになる。
×(不可):白斑が発生する。拭き取っても温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間放置後に再度発生する。
【0162】
(9)耐汚染性(塩ビシート)
5cm角に切り出した試料にアキレス(株)製塩ビシート”アキレスタイプC+ 青味透明”を4cm角に切り出して中央に載せ、均等に500gの荷重を掛け温度40℃、相対湿度95%の雰囲気下で6時間放置し、試料を取り外し、表面をガーゼできれいに拭き取る。表面の状態を観察し、下記の基準に則り判定を行った。
○(優):外観の変化なし。
△(可):塩ビシートを載せた箇所にわずかな跡が発生。
×(不可):塩ビシートを載せた箇所に明確な跡が発生。
【0163】
(10)成型
3室ストレッチャー(KARO IV、ブルックナー製)で、フィルムの端部をクリップにて把持し、以下の条件にて同時二軸延伸を行った。この時、クリップでのサンプルの外れを防止するために、サンプルの四辺を、幅10mm、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んで補強している。本法による延伸は、実際の成型と同じ挙動で積層フィルムが延伸されるため、得られたフィルムは成型体(成型フィルム)とみなすことができる。なお、予熱のみで延伸をしていない場合においても、成型フィルムとする。成型時の延伸の倍率は、元の寸法に対して延伸後に何倍まで延伸されているかを示している。
【0164】
フィルムサイズ:100mm×100mm
クリップ圧力:5MPa
予熱・延伸温度:100℃
ファン風量:50%
予熱時間:40秒
延伸速度:20%/sec 。
【0165】
(11)成型倍率
積層フィルムおよび成型フィルムの断面を、ミクロトーム(日本ミクロトーム製、RMS−50)のダイヤモンドナイフにて切削し、白金で蒸着後、SEM(日立(株)製)にて、成型前と成型後のA層の厚みを測定し、下記の式から成型倍率を求めた。測定個所は成型フィルムの中心部分50mm四方を切り取り、その中の3箇所を測定した。成型倍率とは厚みの変化である為、前記した成型時の延伸の倍率とは異なる。
【0166】
A層の厚さ(成型前)/A層の厚さ(成型後)。
【0167】
(12)成型性
成型後、A層の状態を目視観察し、下記の基準に則り評価を行った。また、観察部分は、成型フィルムの中心部分50mm四方の中で行った。
○(良):クラックや剥離が発生せず、表面性に問題ない。
×(不良):クラックや剥離が生じて実用上問題がある。
【実施例】
【0168】
(参考例1)原料A1の作成
<ポリシロキサン(a)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサ及び窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコにエタノール106質量部、メチルトリメトキシシラン270質量部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン23質量部、脱イオン水100質量部、1質量%塩酸1質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部を仕込み、80℃で3時間反応させ、ポリシロキサン(a)を合成した。これをメチルイソブチルケトンで50質量%に調整した。
【0169】
<ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体(a)の合成>
ポリシロキサン(a)の合成と同様の装置を用い、トルエン50質量部、およびメチルイソブチルケトン50質量部、ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬株式会社製、VPS−0501)20質量部、メタクリル酸メチル18質量部、メタクリル酸ブチル38質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、メタクリル酸1質量部および1−チオグリセリン0.5質量部を仕込み、180℃で8時間反応させてポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体(a)を得た。得られたブロック共重合体は、固形分50質量%であった。
【0170】
<原料A1の調合>
ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体(a)75質量部、上記のポリシロキサン(a)10質量部および水酸基を有するポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル308、分子量850)15質量部を配合(混合)した混合物、100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製、タケネートD−170N)を15質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の原料A1を作成した。
【0171】
[実施例1]
原料A1に2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートを10質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを0.5質量部添加し、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを93:7の質量比率で混合した溶媒を用いて固形分濃度が30質量%となるように再度調整し、厚み100μmのポリエステル基材フィルム(東レ(株)製、“ルミラー”U46)上に、エージング工程後のA層厚みが30μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。塗布後、100℃で2分間、熱風乾燥機で加熱した(加熱工程)。その後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射し(エネルギー線照射工程)、40℃で14日間加熱(エージング)を行い(エージング工程)、積層フィルムを得た。次に、この得られたフィルムの成型を行った。このとき延伸は行わずに予熱だけを行った。
【0172】
得られた積層フィルムと成型フィルムの評価結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0173】
[実施例2〜3]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例2は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例3は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0174】
[実施例4]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート10質量部の代わりに2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート10質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0175】
[実施例5〜6]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例4と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例5は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例6は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0176】
[実施例7]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート10質量部の代わりに2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート10質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0177】
[実施例8〜9]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例7と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例8は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例9は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0178】
[実施例10]
原料A1に2-(パーフルオロヘキシル)エタノールを10質量部添加し、厚み100μmのポリエステル基材フィルム(東レ(株)製、“ルミラー”U46)上に、エージング工程後のA層厚みが30μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。塗布後、160℃で2分間、熱風乾燥機で加熱した(加熱工程)。その後、40℃で14日間加熱(エージング)を行い(エージング工程)、積層フィルムを得た。次に、この得られたフィルムの成型を行った。このとき延伸は行わずに予熱だけを行った。得られた結果を表1に示す。
【0179】
得られたフィルム(フィルムと記載した)と成型フィルムの評価結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0180】
[実施例11〜12]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例10と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例11は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例12は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0181】
[実施例13]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの添加量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0182】
[実施例14〜15]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例13と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例14は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例15は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0183】
[実施例16]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの添加量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0184】
[実施例17〜18]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例16と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例17は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例18は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0185】
(参考例2)原料A2の作成
<原料A2の調合>
ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体(a)75質量部、ポリシロキサン(a)10質量部および水酸基を有するポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業(株)製 プラクセル308、重量平均分子量850)15質量部を配合(混合)した混合物、100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(バイエル(株)製、デスモジュールN3200)を15質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の原料A2を作成した。
【0186】
[実施例19]
原料A2を、実施例1と同様の条件で、積層フィルムを得た。次に、実施例1と同様して、この得られたフィルムの成型を行った。得られたフィルムと成型フィルムの評価結果を表1に示す。低温でも優れた自己治癒性を示した。
【0187】
[実施例20〜21]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例19と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。実施例20は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。実施例21は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表1に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。また、成型不良も見られなかった。
【0188】
[実施例22]
ポリエステル樹脂Cとして、固有粘度0.65、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも表す)[東レ製F20S]を用い、ポリエステル樹脂Dとして固有粘度0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジカルボン酸30mol%、スピログリコール成分20mol%共重合したPET)に酸化防止剤である“アデカスタブ”AS36[ADEKA製]を0.1質量%添加したものを用いた。これらポリエステル樹脂Cおよびポリエステル樹脂Dは、それぞれ乾燥した後、別々の押出機に供給した。
【0189】
ポリエステル樹脂Cおよびポリエステル樹脂Dは、それぞれ、押出機にて270℃の溶融状態とし、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比がポリエステル樹脂C/ポリエステル樹脂D=1.2/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板1とスリット数269個のスリット板2とスリット数267個のスリット板3によってポリエステル樹脂Cおよびポリエステル樹脂Dを交互に積層し、フィードブロックにて合流させて、801層に積層された積層体とした。合流したポリエステル樹脂Cおよびポリエステル樹脂Dは、フィードブロック内にて各層の厚みが表面側から反対表面側に向かうにつれ徐々に厚くなるように変化させ、ポリエステル樹脂Aが400層、ポリエステル樹脂Bが401層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。また、隣接するC層とD層の層厚みはほぼ同じになるようにスリット形状を設計した。この設計では、350nm〜1200nmに反射帯域が存在するものとなる。このようにして得られた計801層からなる積層体を、マルチマニホールドダイに供給、さらにその表層に別の押出機から供給したポリエステル樹脂Aからなる層を形成し、シート状に成型した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。ポリエステル樹脂Cとポリエステル樹脂Dが合流してからキャスティングドラム上で急冷固化されるまでの時間が約8分となるように流路形状および総吐出量を設定した。
【0190】
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.0倍延伸し、その後一旦冷却した。次に、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.3倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で235℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られたフィルムは、層間剥離がなく、優れた光沢調を有していた。
【0191】
このフィルムに実施例1と同様にしてA層を形成して、積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。得られたフィルムと成型フィルムは優れた金属調の外観と自己治癒性を有していた。
【0192】
[実施例23]
1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が、グリコール成分に対して、33mol%共重合された共重合ポリエステル(イーストマン・ケミカル社製 EatsterPETG6763)と、固有粘度0.65、融点255℃のPET[東レ製F20S]を質量比76:24で混合した。混合物を、ベント式二軸押出機を用いて、280℃で溶融混練した。この結果、副生したジエチレングリコールが、樹脂中のグリコール成分に対して、2モル%共重合された、1,4−シクロヘキサンジメタノール25mol%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂が得られた。これを、1,4−シクロヘキサンジメタノール25mol%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(ジエチレングリコール共重合率2モル%)と記載する。
【0193】
固有粘度0.65、融点255℃のPET[東レ製F20S]と、1,4−シクロヘキサンジメタノール25mol%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(ジエチレングリコール共重合率2モル%)を質量比70:30で混合した。混合物を、真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、単軸押出機に供給、275℃で溶融し、異物の除去、押出量の均整化を行った後、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。
【0194】
次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を9
0℃、延伸温度を95℃で長手方向に3.2倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属
ロールで冷却化した。
【0195】
次いでテンター式横延伸機にて予熱温度90℃、延伸温度100℃で幅方向に3.5倍
延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度210℃で
5秒間の熱処理を行い、フィルム厚み188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、耐傷性がやや弱いものの透明性と成型性に非常に優れていた。
【0196】
この二軸配向ポリエステフィルムに実施例1と同様にしてA層を形成して、積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。得られたフィルムと成型フィルムは、自己治癒性に優れていた。
【0197】
[実施例24]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0198】
[実施例25]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0199】
[実施例26]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例25と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
【0200】
[実施例27]
原料A1の希釈にメチルエチルケトンを用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0201】
[実施例28]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例27と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0202】
[実施例29]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例27と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0203】
[実施例30]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例28と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0204】
[実施例31]
エネルギー線照射工程における酸素濃度を21体積%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0205】
[実施例32]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例31と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0206】
[実施例33]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例31と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0207】
[実施例34]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例32と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0208】
[実施例35]
原料A1の希釈にメチルエチルケトンを用いた以外は、実施例31と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0209】
[実施例36]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例35と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0210】
[実施例37]
固形分濃度を40質量%とした以外は、実施例35と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0211】
[実施例38]
加熱工程における温度を160℃とした以外は、実施例37と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0212】
(参考例3)原料A3の作成
<原料A3の調合>
トルエン100質量部、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート50質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製プラクセルFA1)59質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製プラクセルFA5)20質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、40℃にまで昇温して12時間保持した。その後、ポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業(株)製、プラクセル308、分子量850)82質量部を加えて80℃で30分間保持した後、ジブチル錫ラウレート0.02質量部を加えて80℃で24時間保持し、トルエン111質量部を加えて固形分50質量%のウレタンアクリレートを得た。そして、このウレタンアクリレート100質量部に1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン3質量部を混合して活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0213】
[実施例39]
原料A3に2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートを10質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを0.5質量部添加し、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを93:7の質量比率で混合した溶媒を用いて固形分濃度が30質量%となるように再度調整し、厚み100μmのポリエステル基材フィルム(東レ(株)製、“ルミラー”U46)上に、エージング工程後のA層厚みが30μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。塗布後、100℃で2分間、熱風乾燥機で加熱した(加熱工程)。その後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射し(エネルギー線照射工程)、積層フィルムを得た。次に、この得られたフィルムの成型を行った。このとき延伸は行わずに予熱だけを行った。得られた結果を表1に示す。
【0214】
得られた積層フィルムと成型フィルムの評価結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示し、優れた耐汚染性を示した。
<原料A4の調合>
トルエン100質量部、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート25質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート11質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業社製プラクセルFA5)34質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、40℃にまで昇温して12時間保持した。それから、ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製プラクセル220)141質量部を加えて80℃で30分間保持した後、ジブチル錫ラウレート0.02質量部を加えて80℃で24時間保持し、最後にトルエン111質量部を加えて固形分50質量%のウレタンアクリレートを得た。そして、このウレタンアクリレート74質量部に、トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製ライトアクリレート3EG−A)10質量部、ステアリルアクリレート(日本油脂社製ブレンマーSA)3質量部、トルエン13質量部及び光開始剤(チバガイギー社製イルガキュア184)3質量部を混合して活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0215】
[実施例40]
原料A4を用いた以外は、実施例39と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。優れた自己治癒性を示した。
【0216】
【表1-1】
【0217】
【表1-2】
【0218】
【表1-3】
【0219】
【表1-4】
【0220】
【表1-5】
【0221】
[比較例1]
原料A1を、厚み100μmのポリエステル基材フィルム(東レ(株)製、“ルミラー”U46)上に、エージング工程後のA層厚みが30μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。塗布後、160℃で2分間、熱風乾燥機で加熱した(加熱工程)。その後、40℃で14日間加熱(エージング)を行い(エージング工程)、積層フィルムを得た。次に、この得られたフィルムの成型を行った。このとき延伸は行わずに予熱だけを行った。
【0222】
得られたフィルム(フィルムと記載した)と成型フィルムの評価結果を表2に示す。優れた自己治癒性を示したが、耐汚染性は不足していた。
【0223】
[比較例2〜3]
A層の厚みと成型延伸の倍率を変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。比較例2は、成型時の延伸を縦方向に1.2倍、横方向に1.2倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが23μmとなるようにした。比較例3は、成型時の延伸を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍の倍率で行い、エージング工程後のA層厚みが19μmとなるようにした。得られた結果を表2に示す。A層厚みを薄くしても優れた自己治癒性を示し、また、成型不良も見られなかったが、耐汚染性は不足していた。
【0224】
[比較例4]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの添加量を0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表2に示す。優れた自己治癒性を示したが、耐汚染性は不足していた。
【0225】
[比較例5]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの添加量を30質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表2に示す。自己治癒性は不足していたが、優れた耐汚染性を示した。
【0226】
[比較例6]
2-(パーフルオロヘキシル)エタノールの添加量を0.1質量部とした以外は、実施例10と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表2に示す。優れた自己治癒性を示したが、耐汚染性は不足していた。
【0227】
[比較例7]
2-(パーフルオロヘキシル)エタノールの添加量を30質量部とした以外は、実施例10と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表2に示す。自己治癒性は不足していたが、優れた耐汚染性を示した。
【0228】
[比較例8]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート100質量部に対し、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを5質量部含む組成物をメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の塗液を作成し、これを比較例1で得られた積層フィルムに上に、エネルギー線照射工程後の厚みが1μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。塗布後、80℃で2分間、熱風乾燥機で加熱した(加熱工程)。その後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射した(エネルギー線照射工程)。次に、この得られたフィルムの成型を行った。このとき延伸は行わずに予熱だけを行った。
【0229】
得られたフィルム(積層フィルムと記載した)と成型フィルムの評価結果を表2に示す。自己治癒性は示さなかったが、優れた耐汚染性を示した。
【0230】
[比較例9]
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート10質量部の代わりにヘキサフルオロプロペントリマーを10質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムと成型フィルムを得た。得られた結果を表2に示す。優れた自己治癒性を示したが、耐汚染性は不足していた。
【0231】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明の積層フィルムは、成型性と自己治癒性が同時に求められる用途に用いることができる。特に、特にパソコンや携帯電話などの筐体に適用される加飾成型用フィルムとして好適に用いることができる。
【0233】
本発明の積層フィルムは、射出成型、圧空成型、真空成型、熱成型、プレス成型などの成型方法を適用して、成型体とすることができる。本発明の積層フィルムは、深絞りの成型に対応することができる。