特許第5928343号(P5928343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928343
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20160519BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   G01N21/78 A
   G01N21/17 D
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-549702(P2012-549702)
(86)(22)【出願日】2011年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2011077595
(87)【国際公開番号】WO2012086376
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-282583(P2010-282583)
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生山 淳
(72)【発明者】
【氏名】長井 史生
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊之
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−296246(JP,A)
【文献】 特開2007−212261(JP,A)
【文献】 特表2002−520617(JP,A)
【文献】 特開平07−005110(JP,A)
【文献】 特開2003−098078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 33/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のクロマトグラフィー試験片上における分析対象物の状態を検知するクロマトグラフィー分析装置において、
光源と、
前記光源から出射された光を前記クロマトグラフィー試験片に導き、当該クロマトグラフィー試験片に対する照射光を出射する照射光学系と、
所定の長手方向に延在して配設されるとともに、光電変換を行うラインセンサと、
前記照射光に起因して前記クロマトグラフィー試験片で生じる検出対象光を前記ラインセンサに導く検出光学系と、
前記クロマトグラフィー試験片を走査対象物として走査方向に走査させる走査手段と、
前記ラインセンサからの出力信号に基づいて分析対象物の状態を特定する演算処理部とを備え、
前記長手方向と、前記照射光の中心軸と、前記検出対象光の中心軸とは、同一平面上に存在し、且つ、前記照射光の中心軸は前記試験片に対して斜めに照射され
前記走査方向は、前記長手方向と前記照射光の中心軸と前記検出対象光の中心軸とが存在する平面に対して交差する方向であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項2】
請求項1記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記クロマトグラフィー試験片は、
分析対象物の状態を検知するための帯状の検知対象領域を、所定の検知ライン方向に延在した状態で少なくとも1つ有しており、
前記長手方向は、
前記検出対象光の中心軸の軸方向と、前記検知ライン方向とを含む平面に対して平行であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項3】
請求項2記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記長手方向は、前記検知ライン方向に対して平行であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記照射光は、
前記クロマトグラフィー試験片の照射スポット内で、照度が均一であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記照射光は、略平行光であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記クロマトグラフィー試験片は、
分析対象物の状態を検知するための帯状の検知対象領域を、所定の検知ライン方向に延在した状態で少なくとも1つ有しており、
前記照射光は、
前記検知ライン方向に断面が長尺であることを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項7】
請求項6記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記照射光は、
前記照射光による前記クロマトグラフィー試験片の照射スポットの短尺方向でのスポットサイズをd(mm)、前記検出光学系の横倍率を−M(但し、M>0)、前記ラインセンサの短手方向のサイズをt(mm)とした場合に、以下の(1)式を満足することを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
40>dM/t>3…(1)
(但し、前記スポットサイズdは、照射強度がピーク照射強度の1/e2となるサイズを表す。)
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記演算処理部は、
分析対象物の濃度を算出し、当該分析対象物の状態として特定する第1の濃度算出部を有し、
この第1の濃度算出部は、
前記ラインセンサにおける各画素のうち、前記検出光学系を介して前記検出対象光を受光した領域内の画素による出力の和に基づいて分析対象物の濃度を算出することを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記演算処理部は、
分析対象物の濃度を算出し、当該分析対象物の状態として特定する第2の濃度算出部を有し、
この第2の濃度算出部は、
前記検出光学系における周辺光量の低下分を補正して分析対象物の濃度を算出することを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記クロマトグラフィー試験片は、
分析対象物の状態を検知するための帯状の検知対象領域を、所定の検知ライン方向に延在した状態で少なくとも1つ有しており、
前記走査手段は、
前記走査対象物を前記走査方向に複数回移動させることによって、
当該走査対象物を1回走査させ、
前記走査手段による前記走査対象物の各移動量は、
前記走査方向における前記検知対象領域の幅よりも小さいことを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記走査手段は、前記走査対象物を複数回走査させ、
前記演算処理部は、
前記走査手段による各回の走査時に前記ラインセンサから得られる出力信号に基づいて、分析対象物の状態を特定することを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項12】
請求項11記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記クロマトグラフィー試験片は、
分析対象物の状態を検知するための帯状の検知対象領域として、
分析対象物としての抗原と、色素標識抗体との複合体を結合させるテストラインと、
前記色素標識抗体を結合させるコントロールラインとを、
所定の検知ライン方向にそれぞれ延在した状態で有しており、
前記走査手段は、
前記走査対象物の1回目の走査を、前記コントロールラインの位置を検出するための予備走査として行い、
前記走査対象物の2回目以降の走査を、前記テストラインにおける分析対象物の状態を検知するための本走査として行うことを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項13】
請求項12記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記予備走査の結果に基づいて前記クロマトグラフィー試験片上での前記テストラインの位置を特定するテストライン位置特定手段を備え、
前記走査手段は、
前記テストライン位置特定手段による特定結果に基づいて前記本走査を行うことを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【請求項14】
請求項12または13記載のクロマトグラフィー分析装置において、
前記光源は、
前記走査手段が前記本走査を行っている場合には、前記照射光による前記クロマトグラフィー試験片の照射スポットが前記テストラインと、当該テストラインの近傍とに位置するタイミングのみで光を出射することを特徴とするクロマトグラフィー分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、抗原抗体反応の特異性を利用して抗原を定性的あるいは定量的に検出する技術分野において、板状のクロマトグラフィー試験片が用いられている。このクロマトグラフィー試験片には、検体中の抗原(分析対象物)と色素標識抗体との免疫複合体を特異的に捕捉する抗原特異的抗体が固定化されたテストライン(検出ゾーン)と、色素標識抗体を特異的に捕捉する標識抗体特異的抗体が固定化されたコントロールライン(参照ゾーン)とが間隔をおいて短冊状に設けられている。
【0003】
このようなクロマトグラフィー試験片においては、一端に液状の検体が滴下されると、色素標識抗体と抗原との結合が促された後、毛細管現象により免疫複合体と色素標識抗体がクロマトグラフィー試験片上を他端に向かって移動する結果、テストライン及びコントロールラインでそれぞれの抗体が捕捉されるので、両ラインの呈色を光学的に検出することによって、分析対象物が定性的あるいは定量的に検出される。
【0004】
ここで、テストラインおよびコントロールラインの呈色を検出する方法としては、受光素子としてエリアセンサ(エリアCCD、エリアCMOS)を用い、LED光源で照射したクロマトグラフィー試験片をエリアセンサで撮像する方法(例えば、特許文献1参照)や、受光素子としてフォトダイオードを用いるとともに、楕円光束をクロマトグラフィー試験片に照射し、当該試験片で生じる散乱光を当該フォトダイオードに集光して検出する方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
但し、受光素子としてエリアセンサを用いる場合には、多大なデータ量を処理する画像処理回路が必要となるため、制御が複雑になり、システムが高価になるという問題がある。一方、受光素子としてフォトダイオードを用いる場合には、クロマトグラフィー試験片の面内における各位置で呈色の検出処理を行うべく当該試験片とフォトダイオードとを相対的に二次元走査させる必要が生じるため、機構が複雑になり、測定時間が伸びるという問題がある。
【0006】
このような問題を解消し、システムを簡易かつ安価に構成する手法としては、受光素子としてラインセンサを用い、試験片とラインセンサとを相対的に一次元走査させることが考えられる。
【0007】
この点、郵便物に付された蛍光性の認証を検出する技術分野においては、認証の検出素子としてラインセンサが用いられており、被写体を搬送しつつ、当該被写体から発生する蛍光をラインセンサで撮像するようになっている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2002−520617号公報
【特許文献2】特開2003−98078号公報
【特許文献3】特開2005−215905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献3の技術はクロマトグラフィー試験片における呈色検出に対して単純に適用することはできない。具体的には、図12に示すように、受光素子として単純にラインセンサ100を用いる場合には、ラインセンサ100を搬送方向101と直交するように配設するとともに、当該ラインセンサ100に対して搬送方向101における上流側または下流側に光源(図示せず)を配設し、試験片102に向かって斜めに照射光103を当てることが考えられるが、この場合には、試験片102の寸法のバラツキや搬送時におけるガタツキなどによって試験片102の厚み方向104において被照射位置105が変化してしまうと、試験片102上の被照射位置105が搬送方向101にずれたり、試験片での検出対象光がラインセンサに当たらなかったりしてしまい、試験片102での呈色を正確に検出することができず、正確な分析を行うことができない。なお、この図では、ラインセンサ100が紙面の表面側から裏面側に向かって延在して配設されている。
【0010】
そこで、本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、試験片の厚み方向に被照射位置が変化する場合であっても、正確な分析を行うことのできるクロマトグラフィー分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、
板状のクロマトグラフィー試験片上における分析対象物の状態を検知するクロマトグラフィー分析装置において、
光源と、
前記光源から出射された光を前記クロマトグラフィー試験片に導き、当該クロマトグラフィー試験片に対する照射光を出射する照射光学系と、
所定の長手方向に延在して配設されるとともに、光電変換を行うラインセンサと、
前記照射光に起因して前記クロマトグラフィー試験片で生じる検出対象光を前記ラインセンサに導く検出光学系と、
前記クロマトグラフィー試験片を走査対象物として走査方向に走査させる走査手段と、
前記ラインセンサからの出力信号に基づいて分析対象物の状態を特定する演算処理部とを備え、
前記長手方向と、前記照射光の中心軸と、前記検出対象光の中心軸とは、同一平面上に存在し、且つ、前記照射光の中心軸は前記試験片に対して斜めに照射され
前記走査方向は、前記長手方向と前記照射光の中心軸と前記検出対象光の中心軸とが存在する平面に対して交差する方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、システムを簡易かつ安価に構成することができる。また、試験片の厚み方向に被照射位置が変化する場合であっても、正確な分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】クロマトグラフィー試験片を示す図である。
図1B】クロマトグラフィー試験片を示す図である。
図1C】クロマトグラフィー試験片を示す図である。
図2】クロマトグラフィー分析装置の外観構成を示す図である。
図3】クロマトグラフィー分析装置の内部構成を示す図である。
図4】分析処理を示すフローチャートである。
図5】予備走査処理を示すフローチャートである。
図6】本走査処理を示すフローチャートである。
図7】クロマトグラフィー試験片の厚み方向に被照射位置が変化した場合のラインセンサでの受光の様子を示す図である。
図8】検出光学系における像側,物側の焦点面にラインセンサ,検知対象領域が一致した状態を示す図である。
図9A】ラインセンサの短手方向における各位置での受光強度を示す図である。
図9B】ラインセンサの短手方向における各位置での受光強度を示す図である。
図10】第2の実施形態における照射光学系を示す図である。
図11】ラインセンサの長手方向と検知対象領域の検知ライン方向とが平行でない場合の配置を示す図である。
図12】ラインセンサを単純に適用した装置においてクロマトグラフィー試験片の厚み方向に被照射位置が変化した場合の受光の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
(1.クロマトグラフィー試験片)
始めに、本実施の形態におけるクロマトグラフィー試験片について、図1A図1Cを用いて説明する。
【0016】
ここで、図1Aはクロマトグラフィー試験片9(以下、試験片とする)の外観構成の一例を示す斜視図であり、図1B図1Cは側面図である。
【0017】
試験片9は、図1Aに示すように、矩形板状に形成されており、後述の走査方向Xに長尺となっている。
この試験片9は、図1B図1Cに示すように、上面における一端部にサンプルパッド90が設けられ、他端部に吸収パッド91が設けられている。
このうち、サンプルパッド90は、液状の検体が滴下される部分である。また、吸収パッド91は、サンプルパッド90に滴下された検体を吸収することにより、当該検体を毛細管現象によって検体移動方向Kに流させる部分である。なお、本実施の形態においては、検体移動方向Kと走査方向Xとは平行となっている。
【0018】
サンプルパッド90に対して検体移動方向Kの下流側には、コンジュゲートパッド92が配設されている。このコンジュゲートパッド92は、検体中に含まれる分析対象物としての抗原と結合する色素標識抗体を含んでおり、サンプルパッド90から供給される検体を検体移動方向Kの下流側に移動させつつ、検体内の抗原を色素標識抗体と結合させるようになっている。
【0019】
コンジュゲートパッド92と吸収パッド91との間には、分析対象物の状態を検知するための帯状の検知対象領域93として、テストライン93aとコントロールライン93bとが設けられている。これらテストライン93a及びコントロールライン93bは、検体移動方向Kの直交方向、つまり試験片9の幅方向(以下、検知ライン方向Zとする)にそれぞれ延在した状態で、所定の間隔を空けて、それぞれ所定の幅で配設されている。なお、本実施の形態においては、検体移動方向Kにおける検知対象領域93の長さは1mm〜3mm程度となっている。
【0020】
このうち、テストライン93aは、検出ゾーンとも称される領域であり、検体中の抗原(分析対象物)と色素標識抗体との複合体を結合させるようになっている。具体的には、テストライン93aには、抗原(分析対象物)と色素標識抗体との免疫複合体を特異的に捕捉する抗原特異的抗体が固定化されている。
【0021】
また、コントロールライン93bは、参照ゾーンとも称される領域であり、色素標識抗体を結合させるようになっている。具体的には、コントロールライン93bには、色素標識抗体を特異的に捕捉する標識抗体特異的抗体が固定化されている。
【0022】
なお、以上のような試験片9としては、従来より公知のクロマトグラフィー試験片を用いることができる。
【0023】
(2.クロマトグラフィー分析装置)
(2−1.外観構成)
続いて、本発明に係るクロマトグラフィー分析装置の外観構成について、図2を用いて説明する。
ここで、図2はクロマトグラフィー分析装置1の外観構成の一例を示す斜視図である。
【0024】
この図に示すように、クロマトグラフィー分析装置1は、試験片9上における分析対象物の状態を検知するものであり、挿入口10と、スイッチ群11と、ディスプレイ12と、プリンタ部13とを備えている。
【0025】
このうち、挿入口10は、クロマトグラフィー分析装置1に対して試験片9を挿入したり、クロマトグラフィー分析装置1内の試験片9を排出したりするための開口部である。
【0026】
スイッチ群11は、クロマトグラフィー分析装置1に対して各種の指示を行うための複数のスイッチを有している。具体的には、本実施の形態におけるスイッチ群11は、起動状態への移行を指示するためのパワースイッチ11aと、測定の開始指示を行うための測定開始スイッチ11bと、測定結果のプリントを指示するためのプリントスイッチ11cと、クロマトグラフィー分析装置1内の試験片9の排出を指示するための排出スイッチ11d等とを有している。
【0027】
ディスプレイ12は、試験片9の分析結果など、各種の情報を表示するものであり、本実施の形態においてはLCD(Liquid Crystal Display)となっている。
【0028】
プリンタ部13は、試験片9の分析結果など、各種の情報をプリントアウトするものである。
【0029】
(2−2.内部構成)
続いて、クロマトグラフィー分析装置1の内部構成について、図3を用いて説明する。
ここで、図3はクロマトグラフィー分析装置1の内部構成の一例を示す模式図である。
【0030】
この図に示すように、クロマトグラフィー分析装置1は、光源2と、照射光学系3と、ラインセンサ4と、検出光学系5と、走査装置6と、制御部7とを備えている。
【0031】
光源2は、光を出射するものであり、本実施の形態においては、レーザ光源となっている。このレーザ光源の波長は、660nm程度であることが好ましい。
【0032】
照射光学系3は、光源2から出射された光を試験片9に導いて、当該試験片9に対する照射光Sを出射する光学系であり、本実施の形態においては、レンズ30,32と、バンドパスフィルター31と、アパーチャ33とを有している。なお、本実施の形態において照射光Sとは、光源2から試験片9に向かって照射された光のうち、照射光学系3を通過した後、試験片9に当たるまでの部分をいう。
【0033】
レンズ30は、光源2から出射された光を平行光に変換してバンドパスフィルター31に入射させるようになっている。
【0034】
バンドパスフィルター31は、光源2から出射された光の各周波数成分のうち、試験片9の色素標識抗体を励起して蛍光を生じさせる周波数成分のみを通過させるようになっている。なお、本実施の形態においては、波長660nmの光によって色素標識抗体から生じる蛍光の波長は700nm付近となっている。
【0035】
レンズ32は、バンドパスフィルター31を通過した光を試験片9上に集光するようになっている。
【0036】
アパーチャ33は、レンズ32から出射される収束光の周辺部分を遮ることにより、試験片9に不要な光が当たるのを防止するようになっている。
【0037】
なお、以上の照射光学系3は、照射光Sを検知ライン方向Z(試験片9における検知対象領域93の延在方向)に断面の長尺な略平行光とするようになっている。
また、この照射光学系3は、試験片9の照射スポットの短尺方向(本実施の形態においては走査方向X)でのスポットサイズをd(mm)、検出光学系5の横倍率を−M(但し、M>0)、ラインセンサ4の短手方向(本実施の形態においては走査方向X)のサイズをt(mm)とした場合に、照射光Sに以下の(1)式を満足させるようになっている。
【0038】
40>dM/t>3…(1)
(但し、スポットサイズdは照射強度がピーク照射強度の1/e2となるサイズを表す。)
【0039】
ラインセンサ4は、ライン状に配列された複数の画素によって光電変換を行うセンサであり、所定の長手方向Yに延在して配設されている。このようなラインセンサ4としては、ラインCCDやラインCMOS、1次元に配列されたフォトダイオードなど、従来より公知のものを用いることができる。
【0040】
ここで、ラインセンサ4の長手方向Yは検出対象光Tの中心軸Jtの軸方向と、検知ライン方向Z(試験片9における検知対象領域93の延在方向)とを含む平面に対して略平行となっており、好ましくは検知ライン方向Zに対して略平行となっている。
【0041】
検出光学系5は、照射光Sに起因して試験片9で生じる検出対象光Tをラインセンサ4に導く光学系であり、本実施の形態においては、レンズ50,52と、バンドパスフィルター51とを有している。なお、本実施の形態において検出対象光Tとは、光源2からの出射光に起因して試験片9で発生する光のうち、検出光学系5に入射するまでの部分をいい、励起された色素標識抗体で生じる蛍光や、試験片9での反射光、散乱光を含んでいる。
【0042】
レンズ50は、試験片9で生じる検出対象光Tを平行光に変換してバンドパスフィルター51に入射させるようになっている。
【0043】
バンドパスフィルター51は、検出対象光Tの各周波数成分うち、色素標識抗体で生じた蛍光の周波数成分のみを通過させるようになっている。
【0044】
レンズ52は、バンドパスフィルター51を通過した光をラインセンサ4上に集光するようになっている。
【0045】
なお、以上の照射光学系3、ラインセンサ4及び検出光学系5において、ラインセンサ4の長手方向Yと、照射光学系3から出射される照射光Sの中心軸Jsと、検出光学系5に入射する検出対象光Tの中心軸Jtとは、同一平面上に存在している。
【0046】
走査装置6は、照射光学系3若しくは検出光学系5における少なくとも1つの光学素子、または試験片9を走査対象物として走査方向Xに走査させるものであり、本実施の形態においては、試験片9を下方から支持する板状の支持台60と、当該支持台60を走査方向Xに往復運動させるモータ61とを有し、試験片9を走査対象物として支持台60ごと走査方向Xに走査させるようになっている。ここで、モータ61としてはステッピングモータやボイスコイルモータ、DCモータなど、従来より公知のモータを用いることができる。また、本実施の形態においては、走査方向Xはラインセンサ4の長手方向Yと交差しており、好ましくは直交している。
【0047】
また、この走査装置6は、1回の走査を複数回のステップに分けて行うようになっており、換言すれば、試験片9を走査方向Xに複数回移動させることによって、当該試験片9を1回走査させるようになっている。
【0048】
制御部7は、スイッチ群11から入力される指示に応じて所定の処理を実行し、各機能部への指示やデータの転送等を行い、クロマトグラフィー分析装置1を統括的に制御するとともに、種々の演算を行うものである。例えば、この制御部7は、ラインセンサ4からの出力信号に基づいて分析対象物の状態を特定するようになっており、本実施の形態においては、検体中での分析対象物の濃度を算出して、分析対象物の状態として特定するようになっている。但し、制御部7は分析対象物の有無を検知することとしても良いし、他の状態を検知することとしても良い。なお、図3では制御部7が光源2やラインセンサ4、モータ61などに接続された状態を図示しているが、制御部7の接続対象はこれらに限定されるものではない。
【0049】
続いて、クロマトグラフィー分析装置1による分析処理について、図4図6を参照しながら説明する。
【0050】
まず、図4に示すように、クロマトグラフィー分析装置1に電源が接続されると(ステップS1)、制御部7はクロマトグラフィー分析装置1の初期設定を行った後(ステップS2)、パワースイッチ11aのON・OFFを判定する(ステップS3)。
【0051】
このステップS3においてパワースイッチ11aがOFFになっていると判定した場合(ステップS3;OFF)には、制御部7は、スリープモードに入って操作の待機状態に入った後(ステップS4)、ステップS3に移行する。
【0052】
また、ステップS3においてパワースイッチ11aがONになっていると判定した場合(ステップS3;ON)には、制御部7は、通常モードに入って各種の設定値を読み出すとともに(ステップS5)、モータ61などの各駆動部を初期位置に移動させる(ステップS6)。
【0053】
次に、制御部7は、測定開始スイッチ11bがONにされるか否かを判定し(ステップS7)、ONにされないと判定した場合(ステップS7;OFF)には、後述のステップS20に移行する。
【0054】
また、測定開始スイッチ11bがONにされたと判定した場合(ステップS7;ON)には、制御部7は、モータ61が初期位置にあるか否かを判定し(ステップS11)、初期位置に無いと判定した場合(ステップS11;NG)には、ディスプレイ12にエラーメッセージを表示させた後(ステップS19)、後述のステップS20に移行する。
【0055】
また、ステップS11においてモータ61が初期位置にあると判定した場合(ステップS11;OK)には、制御部7は、試験片9が挿入口10から挿入されてセットされているか否かを判定し(ステップS12)、セットされていないと判定した場合(ステップS12;無)には、上述のステップS19に移行する。
【0056】
また、ステップS12において試験片9が挿入口10から挿入されてセットされていると判定した場合(ステップS12;有)には、制御部7は、予備走査を行うための予備走査処理を行う(ステップS13)。ここで、予備走査とは、走査装置6によって複数回行われる走査のうち初回に行われる走査であり、試験片9上でのコントロールライン93bの位置や幅、コントロールライン93bに対してラインセンサ4で受光される光量などを検出するための走査である。
【0057】
具体的には、図5に示すように、この予備走査処理においてまず制御部7は、モータ61を駆動して試験片9を1ステップ分だけ走査方向Xに移動させる(ステップT1)。ここで、1ステップ分の移動量としては、走査方向Xにおけるコントロールライン93bの幅より小さい所定の移動量が予め設定されている。
【0058】
次に、制御部7は、光源2を点灯させて光を照射させた後(ステップT2)、ラインセンサ4から各画素での受光信号のデータを取得して(ステップT3)、光源2を消灯させる(ステップT4)。
【0059】
そして、制御部7は、走査方向Xにおいてコントロールライン93bの全域が検出されたか否かを判定し(ステップT5)、検出されていないと判定した場合(ステップT5;NG)には上述のステップT1に移行する一方、検出されたと判定した場合(ステップT5;OK)には、予備走査処理を終了する。なお、このステップT5において制御部7は、所定の閾値以上に明るい領域が検知された場合には、その位置がコントロールライン93bであると判断し、一旦、閾値以上に明るい領域が検知された後、暗い領域が検知された場合には、その位置がコントロールライン93bの境界部分であると判断する。
【0060】
以上の予備走査処理が終了したら、図4に示すように、次に制御部7は、予備走査処理で検知されたコントロールライン93bの位置に基づいて、テストライン93aの位置を特定するとともに、コントロールライン93bでの光量に基づいて、光源2のパワーを変更し、テストライン93aの検知に用いる閾値を変更した後(ステップS14)、本走査を行うための本走査処理を行う(ステップS15)。ここで、本走査とは、走査装置6によって複数回行われる走査のうち2回目以降に行われる走査であり、テストライン93aにおける分析対象物の状態(本実施の形態においては分析対象物の濃度)を検知するための走査である。
【0061】
具体的には、図6に示すように、この本走査処理においてまず制御部7は、特定されたテストライン93aの位置に基づいて、走査方向Xにおいて当該位置の直前にモータ61を移動させた後(ステップU1)、1回の走査において行うべきステップ数を決定する(ステップU2)。具体的には、このステップU2において制御部7は、走査方向Xにおけるテストライン93aの幅を1ステップ当たりの移動量で割ることにより、ステップ数を算出する。ここで、1ステップ分の移動量としては、走査方向Xにおけるテストライン93aの幅より小さい所定の移動量が予め設定されている。
【0062】
次に、制御部7は、1ステップ分だけモータ61を駆動させる(ステップU3)。
次に、制御部7は、光源2を点灯させて光を照射させた後(ステップU4)、ラインセンサ4から各画素での受光信号のデータを取得して(ステップU5)、光源2を消灯させる(ステップU6)。これにより、走査装置6が本走査を行っている場合には、照射光Sによる試験片9の照射スポットがテストライン93aと、当該テストライン93aの近傍とに位置するタイミングのみで光源2から光が出射される。
【0063】
そして、制御部7は、ステップU2で決定したステップ数だけモータ61の駆動を行ったか否かを判定し(ステップU7)、行っていないと判定した場合(ステップU7;未満)には上述のステップU3に移行する一方、行ったと判定した場合(ステップU7;終了)には本走査処理を終了する。
【0064】
以上の本走査処理が終了したら、図4に示すように、次に制御部7は、走査装置6による各回の走査時にラインセンサ4から得られる出力信号に基づいて、分析対象物の濃度を算出する演算を行った後(ステップS16)、その結果をディスプレイ12に表示させる(ステップS17)。
【0065】
より詳細には、このステップS16において制御部7は、ラインセンサ4における各画素のうち、検出光学系5を介して検出対象光Tを受光した領域内の画素による出力の和に基づいて、分析対象物の濃度を算出する。なお、ラインセンサ4における各画素のうち、検出対象光Tを受光した領域内の画素としては、例えば所定の閾値を越える出力信号を出力する画素を用いることができる。
【0066】
また、このステップS16において制御部7は、検出光学系5における周辺光量の低下分を補正して分析対象物の濃度を算出する。例えば、検出光学系5がコサイン4乗則に準ずる光量低下を示す場合には、各画素での検出光量を(cosθ)4で除算して濃度計算を行う。ここで、θは検出光学系5における主光線がラインセンサ4に入射する角度である。
【0067】
次に、制御部7は、排出スイッチ11dがONに操作されるか否かを判定し(ステップS20)、ONに操作されないと判定した場合(ステップS20;OFF)には、後述のステップS22に移行する。
【0068】
また、ステップS20において排出スイッチ11dがONに操作されたと判定した場合(ステップS20;ON)には、制御部7は、挿入口10から試験片9を排出させた後(ステップS21)、プリントスイッチ11cがONに操作されるか否かを判定する(ステップS22)。
【0069】
このステップS22においてプリントスイッチ11cがONに操作されないと判定した場合(ステップS22;OFF)には、制御部7は、パワースイッチ11aがONになっているか否かを判定し(ステップS26)、なっていないと判定した場合(ステップS26;OFF)には、上述のステップS4に移行する一方、ONになっていると判定した場合(ステップS26;ON)には上述のステップS6に移行する。
【0070】
また、上述のステップS22においてプリントスイッチ11cがONに操作されたと判定した場合(ステップS22;ON)には、制御部7は、試験片9について測定(分析)を行っているか否かを判定し(ステップS23)、行っていると判定した場合(ステップS23;Yes)には測定結果をプリンタ部13にプリントさせた後(ステップS24)、上述のステップS26に移行する。
【0071】
また、ステップS23において測定を行っていないと判定した場合(ステップS23;No)にはディスプレイ12にエラーメッセージを表示させた後(ステップS25)、上述のステップS26に移行する。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、クロマトグラフィー分析装置1には、長手方向Yに延在して配設されて光電変換を行うラインセンサ4と、ラインセンサ4からの出力信号に基づいて分析対象物の状態(濃度)を特定する制御部7とが具備されるので、受光素子としてエリアセンサやフォトダイオードを用いる従来の場合と比較して、システムを簡易かつ安価に構成することができる。
【0073】
また、走査装置6による走査対象物(試験片9)の走査方向Xはラインセンサ4の長手方向Yと交差しており、当該長手方向Yと、試験片9に対する照射光Sの中心軸Jsと、試験片9からの検出対象光Tの中心軸Jtとは同一平面上に存在するので、図7に示すように、試験片9の寸法のバラツキや走査時におけるガタツキなどによって試験片9の厚み方向(図中の上下方向)に被照射位置が変化する場合であっても、試験片9上の被照射位置がラインセンサ4の長手方向Yにずれ、試験片9での検出対象光Tが確実にラインセンサ4に当たる。従って、試験片9の厚み方向に被照射位置が変化する場合であっても、正確な分析を行うことができる。
【0074】
また、検出対象光Tの中心軸Jtの軸方向と、検知ライン方向Zとを含む平面に対してラインセンサ4の長手方向Yが略平行であるので、この平面に対してラインセンサ4の長手方向Yが交差する場合と異なり、検知対象領域93の検知ライン方向Zの各位置で生じる検出対象光Tを、ラインセンサ4の長手方向Yの各画素に当てることができる。従って、試験片9上で液状検体が目詰まりを起こして分析対象物が局所的に散在する場合であっても、正確な分析を行うことができる。
【0075】
また、ラインセンサ4の長手方向Yと、試験片9における検知ライン方向Z(検知対象領域93の延在方向)とは略平行であるので、両者が平行で無い場合と異なり、図8に示すように、検出光学系5における像側,物側の焦点面にラインセンサ4,検知対象領域93を一致させて配置することができる。従って、試験片9と、ラインセンサ4の各画素とにそれぞれフォーカスを合わせた状態で試験片9からの検出対象光Tをラインセンサ4に受光させることができるため、検知対象領域93の各位置における分析対象物の状態を精度良くラインセンサ4で検出することができる。なお、図8では、バンドパスフィルター51の図示を省略している。
【0076】
また、照射光Sは略平行光であるので、照射光Sによる試験片9の照射スポット内で照度を容易に均一化することができる。また、試験片9における被照射位置が照射光Sの中心軸に沿ってずれる場合であっても、照射スポット内での照度分布の変化を防止することができる。
【0077】
また、照射光Sは検知ライン方向Z(帯状の検知対象領域93の延在方向)に断面が長尺であるので、バックノイズや迷光の影響を緩和し、効率よく分析を行うことができる。
【0078】
また、照射光Sは短尺方向でのスポットサイズをd(mm)、検出光学系5の横倍率を−M(但し、M>0)、ラインセンサ4の短手方向のサイズをt(mm)とした場合に、40>dM/t>3を満足するので、dM/t≦3の場合と異なり、ラインセンサ4上での受光領域が小さくなってしまうのを防止し、照射光学系3と検出光学系5との光軸アライメントを容易化することができる。また、ラインセンサ4上での受光領域が小さくなってしまうのを防止することができるため、装置の経時劣化や温度特性に起因して照射光学系3と検出光学系5との光軸ずれが生じる場合であっても、ラインセンサ4上での受光光量が減少して分析対象物の状態検知に支障をきたすのを防止することができる。例えば、ラインセンサ4における短手方向の画素サイズtをt=0.06mm、光学系の倍率MをM=1、照明スポットの短辺方向のサイズdをd=0.2mmとしたとき、つまりdM/t=3.3としたときには、ラインセンサ4上の結像スポットでの受光強度分布は、図9Aに示すような状態となる。ここで、図中の太線は短手方向におけるラインセンサ4を表す。この図によれば、10μmの光軸アライメント誤差が生じた場合であっても、ラインセンサ4の面内で受光する光量の最小値(受光強度分布のグラフと太線(ラインセンサ4)との交点の強度)の変化をおよそ10%程度の低下に抑えられることが分かる。
また、40≦dM/tの場合と異なり、試験片9における照明スポットが大きくなり過ぎて分析対象物の状態検知に不要な光が多くなってしまうのを防止することができるため、不要光によるフレアを防止するとともに、試験片9が不要光の照射によって退色などの悪影響を受けてしまうのを防止することができる。なお、ラインセンサ4における短手方向の画素サイズtをt=0.06mm、光学系の倍率MをM=1、照明スポットの短辺方向のサイズdをd=2.2mmとしたとき、つまりdM/t=36.7としたときには、図9Bに示すように、ラインセンサ4上の結像スポットでの受光強度分布は均一になるため、ラインセンサ4の光軸アライメントが多少ズレた場合であっても、ラインセンサ4の面内で受光する光量の変化は少ない。
【0079】
また、ラインセンサ4における各画素のうち、検出光学系5を介して検出対象光Tを受光した領域内の画素による出力の和に基づいて、制御部7が分析対象物の濃度を算出するので、ラインセンサ4の画素ごとに異なる量で発生するノイズの影響を低減し、分析対象物の濃度を正確に算出することができる。また、試験片9上で液状検体が目詰まりを起こして分析対象物が局所的に散在する場合であっても、分析対象物の濃度を確実に算出することができる。
【0080】
また、制御部7は検出光学系5における周辺光量の低下分を補正して分析対象物の濃度を算出するので、検出光学系5の周辺領域を通過する検出対象光Tからであっても、分析対象物の濃度を正確に算出することができる。
【0081】
また、走査装置6は走査対象物を走査方向Xに複数回移動させることによって当該走査対象物を1回走査させ、走査装置6による走査対象物の各移動量は走査方向Xにおける検知対象領域93の幅よりも小さいので、確実に検知対象領域93に照射光Sを照射し、当該検知対象領域93における分析対象物の状態を検知することができる。
【0082】
また、走査装置6は走査対象物を複数回走査させ、制御部7は走査装置6による各回の走査時にラインセンサ4から得られる出力信号に基づいて、分析対象物の状態を特定するので、例えば複数回の出力信号を合算して分析対象物の状態を特定することにより、各走査時での出力信号に含まれるランダムノイズの影響を低減し、いっそう正確な分析を行うことができる。
【0083】
また、走査装置6は走査対象物の1回目の走査をコントロールライン93bの位置や幅、光量などを検出するための予備走査として行い、走査対象物の2回目以降の走査を、テストライン93aにおける分析対象物の状態を検知するための本走査として行うので、予備走査時におけるラインセンサ4からの出力信号に基づいて、本走査時にラインセンサ4からの出力信号に適用すべき最適なゲイン値を算出することができる。また、コントロールライン93bの検出幅に基づいてテストライン93aの幅を算出することができるため、本走査における走査対象物の各移動量を適切な値に設定することができる。また、予備走査の結果に基づいて走査方向Xにおける試験片9の傾きを検知することができるため、この傾きに応じて試験片9と照射光学系3,検出光学系5との位置関係を調整して各光学系のフォーカス位置に試験片9を配置しつつ、本走査を行うことができる。
【0084】
また、予備走査の結果に基づいて試験片9上でのテストライン93aの位置を特定し、この特定結果に基づいて本走査を行うので、テストライン93aの位置特定に要する時間を省くことができる。
【0085】
また、走査装置6が本走査を行っている場合には、照射光Sによる試験片9の照射スポットがテストライン93aと、当該テストライン93aの近傍とに位置するタイミングのみで光源が光を出射するので、エネルギーのロスを防止するとともに、試験片9が過度な光の照射によって退色などの悪影響を受けてしまうのを防止することができる。
【0086】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
本実施の形態におけるクロマトグラフィー分析装置1は、図10に示すように、照射光学系3の代わりに照射光学系3Aを備えている。なお、この図では、バンドパスフィルター31及びアパーチャ33の図示を省略している。
【0088】
この照射光学系3Aは、レンズ32の代わりにシリンドリカルレンズ32Aを有している。
シリンドリカルレンズ32Aは、レンズ30から出射される平行光のうち、走査方向Xにおける中心部分のみを自身に入射させつつ走査方向Xに集光して照射光Sを出射することにより、照射光Sによる試験片9の照射スポットのうち、検出光学系5によって受光されうる領域内で照度を均一とするようになっている。ここで、照度が均一であるとは、最小ピークと最大ピークの光量差が小さいことを言い、例えば光量の最小値が最大値の50%以上であることを言う。
【0089】
以上のように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、照射光Sは試験片9の照射スポット内で照度が均一であるので、試験片9の厚み方向において被照射位置が変化してラインセンサ4での受光位置が当該ラインセンサ4の中心からずれる場合であっても、受光した画素からの出力の変化を低減することができる。従って、照射スポット内での照度分布にガウス分布のような特性がある場合と異なり、被照射位置の変化に応じてラインセンサ4からの出力値を補正する必要がないため、制御部7での処理を簡素化することができる。
【0090】
なお、照射光Sによる試験片9の照射スポットのうち、検出光学系5によって受光されうる領域内で照度を均一とするには他の手法を用いても良く、例えばケーラー照明や、フライアイインテグレーター、ロッドインテグレーターなどの光学系を照射光学系3に適用しても良い。ここで、ケーラー照明の光学系を照射光学系3に適用する場合には、光源2をLEDとしても良い。
【0091】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0092】
例えば、上記第1の実施形態においては、ラインセンサ4の長手方向Yと、検知対象領域93の検知ライン方向Zとは略平行であることとして説明したが、図11に示すように、平行でないこととしても良い。ここで、ラインセンサ4を検知ライン方向Zに対して平行ではなく配設するには他の手法を用いてもよく、例えば図3で示した検出光学系5においてレンズ50とバンドパスフィルター51との間にミラーやダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズムなどの光学素子を配置し、この光学素子で検出対象光Tを屈曲させることで、ラインセンサ4の長手方向Yと、検知対象領域93の検知ライン方向Zとを非平行としても良い。なお、ダイクロイックミラーやダイクロイックプリズムを配置する場合には、この光学素子によってバンドパスフィルター51の機能を兼ねることができるため、バンドパスフィルター51を省略しても良い。
【0093】
また、照射光学系3はレンズ32で集光した収束光を照射光Sとして出射することとして説明したが、平行光を照射光Sとして出射することとしても良い。この場合には、レンズ32を省くことができるため、装置全体を低コスト化することができる。
【0094】
また、バンドパスフィルター31をレンズ30,32の間、バンドパスフィルター51をレンズ50,52の間に配設されることとして説明したが、バンドパスフィルター31,51に対しておよそ垂直(例えば80度〜100度)に光が入射する限りにおいて、他の位置に配設されることとしても良い。
【0095】
なお、明細書、請求の範囲、図面および要約を含む2010年12月20日に出願された日本特許出願No.2010−282583号の全ての開示は、そのまま本出願の一部に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明は、試験片の厚み方向に被照射位置が変化する場合であっても、正確な分析を行うことのできるクロマトグラフィー分析装置に適している。
【符号の説明】
【0097】
1 クロマトグラフィー分析装置
2 光源
3 照射光学系
4 ラインセンサ
5 検出光学系
6 走査手段
7 制御部(演算処理部、第1,第2の濃度算出部,テストライン位置特定手段)
93 検知対象領域
93a テストライン
93b コントロールライン
S 照射光
T 検出対象光
X 走査方向
Y ラインセンサの長手方向
Z 検知ライン方向
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12