特許第5928347号(P5928347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928347
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20160519BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20160519BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20160519BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   G03F7/038 601
   G03F7/039 601
   C08F20/18
   C08F220/22
【請求項の数】4
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2012-555828(P2012-555828)
(86)(22)【出願日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2012051711
(87)【国際公開番号】WO2012105417
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-23384(P2011-23384)
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】榊原 宏和
(72)【発明者】
【氏名】宮田 拡
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亘史
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−248019(JP,A)
【文献】 特開2011−209520(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/032839(WO,A1)
【文献】 特開2012−113003(JP,A)
【文献】 特開2009−025707(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/142181(WO,A1)
【文献】 特開2010−033032(JP,A)
【文献】 特開2010−061116(JP,A)
【文献】 特開2008−304773(JP,A)
【文献】 特開2009−080338(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/029982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜に露光する工程、並びに
上記露光されたレジスト膜を有機溶媒含有率が80質量%以上の現像液で現像する工程を有し、
上記フォトレジスト組成物が、
[A]酸解離性基を有し、下記式(3)又は(4)で表される構造単位(a1)を含むベース重合体、
[B]酸解離性基を有する構造単位(b1)と、下記式(5)で表される構造単位(b2)とを含み、フッ素原子含有率が[A]重合体より高い重合体、及び
[C]酸発生体
を含有し、
上記構造単位(b1)が下記式(1)又は式(2)で表され、
上記[B]重合体の含有率が、[A]重合体100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であるパターン形成方法。
【化1】
(式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。nは0又は1である。
式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数2〜5のアルキル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜15の2価の多環式炭化水素基である。)
【化2】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜10の2価の多環式炭化水素基である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。)
【化3】
(式(5)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、連結基である。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換基で置換されており、上記置換基の少なくとも1つはフッ素原子である。)
【請求項2】
上記構造単位(b1)が上記式(1)で表され、
上記式(1)のZの炭素数7〜10の2価の多環式炭化水素基が、ノルボルナンジイル基又はノルボルネンジイル基である請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
上記構造単位(b1)が上記式(2)で表される請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
上記構造単位(b2)が、下記式(5−1)〜(5−15)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のパターン形成方法。
【化4】
(上記式(5−1)〜(5−15)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。代表的な短波長の光源としては、ArFエキシマレーザーが挙げられ、これを用いて線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができる。かかる短波長の光源に対応できる種々のレジスト用組成物が検討されており、これらのレジスト用組成物としては、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、この酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分とを含有し、露光部と未露光部との溶解速度に差を生じさせ、基板上にパターンを形成させるフォトレジスト組成物が知られている(特開昭59−45439号公報参照)。
【0003】
一方、かかるフォトレジスト組成物の特徴を利用し、かつ既存の装置を用いて工程を増やすことなく解像力を高める技術として、現像液にアルカリ水溶液よりも極性の低い有機溶媒を用いるパターン形成方法が知られている(特開2000−199953号公報参照)。このパターン形成方法によると、現像液に有機溶媒を用いることで、アルカリ水溶液を用いた場合に比べ光学コントラストを高くすることができるため、より微細なパターンを形成することが可能となる。
【0004】
しかし、有機溶媒を現像液に用いる上述のパターン形成方法において、従来のフォトレジスト組成物を用いた場合、現像後の露光部表面の膜荒れ(ラフネス)、ミッシングコンタクトホールの発生等を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【特許文献2】特開2000−199953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は有機溶媒を現像液に用いるパターン形成方法において、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生を抑制すると共に、解像性、円形性等のリソグラフィー特性に優れるフォトレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
有機溶媒現像用フォトレジスト組成物であって、
[A]酸解離性基を有する構造単位(a1)を含むベース重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、
[B]酸解離性基を有する構造単位(b1)を含み、フッ素原子含有率が[A]重合体より高い重合体(以下、「[B]含フッ素重合体」ともいう)、及び
[C]酸発生体
を含有し、
上記構造単位(b1)が下記式(1)又は式(2)で表されるフォトレジスト組成物である。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜10の2価の多環式炭化水素基である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。)
【0008】
本発明のフォトレジスト組成物が含有する撥水性樹脂である[B]含フッ素重合体は、上記式(1)又は式(2)で表される構造単位(b1)を含む。[B]含フッ素重合体が有する上記特定構造の酸解離性基は、[A]重合体が有する酸解離性基より、酸による解離が比較的起こり難い。そのため、当該フォトレジスト組成物は、露光部及び未露光部のそれぞれにおいて、有機溶媒を含有する現像液に対する溶解性が適度に制御され、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生を抑制することができる。また、解像性、円形性等のリソグラフィー特性にも優れる。
【0009】
上記構造単位(a1)が下記式(3)又は(4)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】
(式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。nは0又は1である。
式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数2〜5のアルキル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜15の2価の多環式炭化水素基である。)
【0010】
本発明のフォトレジスト組成物が含有するベース重合体である[A]重合体が、上記式(3)又は(4)で表される酸により解離し易い酸解離性基を有することで、露光部において有機溶媒を含有する現像液に対する難溶性が増し、現像後の露光部表面のラフネスの発生がより抑制される。また、[B]含フッ素重合体が酸により比較的解離し難い上記特定構造の酸解離性基を有し、かつ[A]重合体が酸により解離し易い上記特定構造の酸解離性基を有することで、当該フォトレジスト組成物は、露光部においては有機溶媒現像液に対する難溶性が増し、未露光部においては有機溶媒現像液に対する溶解性がより適度になる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生をより抑制することができる。さらに、解像性、円形性等のリソグラフィー特性にもより優れる。
【0011】
[B]含フッ素重合体が、下記式(5)で表される構造単位(b2)をさらに含むことが好ましい。
【化3】
(式(5)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは連結基である。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換基で置換されており、上記置換基の少なくとも1つはフッ素原子である。)
【0012】
[B]含フッ素重合体が、フッ素原子を含む上記特定構造の構造単位(b2)をさらに含むことで、当該フォトレジスト組成物はレジスト膜表面の接触角を高めることができるため、液浸露光により好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のフォトレジスト組成物は、有機溶媒を現像液に用いるパターン形成法に用いられ、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生を抑制できると共に、解像性、円形性等のリソグラフィー特性に優れる。そのため、当該フォトレジスト組成物は、今後さらなる微細化が進む半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造に十分対応することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<フォトレジスト組成物>
本発明のフォトレジスト組成物は、有機溶媒現像用フォトレジスト組成物であって、[A]重合体、[B]含フッ素重合体及び[C]酸発生体を含有する。なお、本発明の効果を損なわない限り、さらにその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0015】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を有する構造単位(a1)を含むベース重合体である。ここで、「ベース重合体」とは、フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンを構成する重合体の主成分となる重合体をいい、好ましくは、レジストパターンを構成する全重合体に対して50質量%以上を占める重合体をいう。また、「酸解離性基」とは、カルボキシル基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、露光により[C]酸発生体から発生した酸の作用により解離する基を意味する。
【0016】
上記構造単位(a1)は、通常のベース重合体が有する酸解離性基を有していれば特に限定されないが、上記式(3)又は(4)で表される構造単位であることが好ましい。構造単位(a1)が、酸により解離し易い上記特定構造の酸解離性基を有することで、露光部において有機溶媒を含有する現像液に対する難溶性が増し、現像後の露光部表面のラフネスの発生をより低減することができる。なお、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(a1)以外に、ラクトン構造、スルトン構造又は環状カーボネート構造を有する構造単位(a2)、極性基を有する構造単位(a3)、他の酸解離性基を有する構造単位(a4)等を含んでいてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0017】
[構造単位(a1)]
構造単位(a1)は、上記式(3)又は(4)で表される構造単位であることが好ましい。
【0018】
上記式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。nは0又は1である。
【0019】
で表される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基及びプロピル基が好ましい。
としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
nとしては、1が好ましい。
【0020】
上記式(3)で表される構造単位(a1)としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−10)で表される構造単位等が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
上記式中、Rは、上記式(3)と同義である。
【0023】
これらのうち、上記式(3−1)及び(3−2)で表される構造単位が好ましい。
【0024】
上記式(3)で表される構造単位(a1)を与える好ましい単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0025】
【化5】
【0026】
上記式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数2〜5のアルキル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜15の2価の多環式炭化水素基である。
【0027】
で表される炭素数2〜5のアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、エチル基及びプロピル基が好ましい。
としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
【0028】
で表される炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基等が挙げられる。これらのうち、シクロペンタンジイル基及びシクロヘキサンジイル基が好ましく、シクロペンタンジイル基がより好ましい。
【0029】
で表される炭素数7〜15の2価の多環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、ノルボルネンジイル基、ジノルボルナンジイル等が挙げられる。これらのうち、アダマンタンジイル基が好ましい。
【0030】
なお、Zとしては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基及びアダマンタンジイル基が好ましい。
【0031】
上記式(4)で表される構造単位(a1)としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−17)で表される構造単位等が挙げられる。
【0032】
【化6】
【0033】
上記式中、Rは、上記式(4)と同義である。
【0034】
これらのうち、上記式(4−1)、(4−14)、(4−15)、及び(4−17)で表される構造単位が好ましい。
【0035】
上記式(4)で表される構造単位(a1)を与える好ましい単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0036】
【化7】
【0037】
[A]重合体において、構造単位(a1)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましく、30モル%以上60モル%以下がさらに好ましい。構造単位(a1)の含有率が上記特定範囲であると、露光部の現像液不溶性が十分となり、良好なパターンが得られる。なお、[A]重合体は構造単位(a1)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0038】
[構造単位(a2)]
[A]重合体は、ラクトン構造、スルトン構造又は環状カーボネート構造を有する構造単位(a2)を含んでいてもよい。[A]重合体が、構造単位(a2)を有することで、当該フォトレジスト組成物からなるレジスト膜の基板等に対する密着性が向上する。
【0039】
構造単位(a2)としては、例えば、下記式で示される構造単位等が挙げられる。
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
上記式中、R10は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0048】
[A]重合体において、構造単位(a2)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましく、30モル%以上60モル%以下がさらに好ましい。このような含有率とすることによって、当該フォトレジスト組成物からなるレジスト膜の基板等への密着性を向上させることができる。なお、[A]重合体は構造単位(a2)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0049】
構造単位(a2)を与える好ましい単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレットに記載の単量体、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
【化17】
【0053】
【化18】
【0054】
【化19】
【0055】
【化20】
【0056】
[A]重合体は、極性基を含む構造単位(a3)をさらに有することができる。ここでいう「極性基」としては、例えば水酸基、カルボキシル基、ケト基、スルホンアミド基、アミノ基、アミド基、シアノ基等が挙げられる。
【0057】
構造単位(a3)としては、例えば下記式で示される構造単位等が挙げられる。
【0058】
【化21】
【0059】
上記式中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0060】
[A]重合体において、構造単位(a3)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%以上80モル以下が好ましく、10モル以上40モル%以下がより好ましい。なお、[A]重合体は構造単位(a3)を1種又は2種以上を有してもよい。
[A]重合体は、構造単位(a1)及び後述する構造単位(b1)以外に、本願の効果を阻害しない範囲で、その他の酸解離性基を有する構造単位を含むことができる。
【0061】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、ラジカル重合等の常法に従って合成できる。例えば、
単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0062】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記重合における反応温度は、ラジカル開始剤の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0064】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0066】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましく、3,000以上300,000以下が特に好ましい。なお、[A]重合体のMwが上記特定範囲であると、レジストとしたときの耐熱性に優れると共に、現像性も十分満足することができる。
【0067】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0068】
本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0069】
<[B]含フッ素重合体>
当該フォトレジスト組成物は、上記式(1)又は(2)で表される酸解離性基を有する構造単位(b1)を含み、フッ素原子含有率が[A]重合体より高い[B]含フッ素重合体を含有する。当該フォトレジスト組成物が[B]含フッ素重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中の[B]含フッ素重合体の撥水性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向がある。その結果、当該フォトレジスト組成物は、液浸露光時に酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制できる。また、この[B]含フッ素重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速スキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物は、[B]含フッ素重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト塗膜を形成することができる。さらに、このような[B]含フッ素重合体が、酸により比較的解離し難い上記特定構造の酸解離性基を有する構造単位(b1)を含むことで、当該フォトレジスト組成物は、有機溶媒を含有する現像液に対する溶解性が適度に制御され、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生を抑制することができる。また、解像性、円形性等のリソグラフィー特性にも優れる。
【0070】
[B]含フッ素重合体は、上記構造単位(b1)に加えて、上記式(5)で表される構造単位(b2)を含むことが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない限り、その他の構造単位を含んでいてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0071】
[構造単位(b1)]
構造単位(b1)は上記式(1)又は式(2)で表される。
【0072】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Zは、炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基又は炭素数7〜10の2価の多環式炭化水素基である。
【0073】
上記Zで表される炭素数5又は6の2価の単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基等が挙げられる。これらのうち、シクロペンタンジイル基及びシクロヘキサンジイル基が好ましい。
【0074】
上記Zで表される炭素数7〜10の2価の多環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、ノルボルネンジイル基等が挙げられる。これらのうち、ノルボルナンジイル基及びアダマンタンジイル基が好ましい。
【0075】
上記Zとしては、シクロペンタンジイル基及びシクロヘキサンジイル基が好ましい。
【0076】
上記式(1)で表される構造単位(b1)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−8)で表される構造単位等が挙げられる。
【0077】
【化22】
【0078】
上記式中、Rは、上記式(1)と同義である。
【0079】
これらのうち、上記式(1−1)及び(1−2)で表される構造単位が好ましい。
【0080】
上記式(1)で表される構造単位(b1)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0081】
【化23】
【0082】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。
【0083】
上記Rで表される炭素数5〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環の脂環式炭化水素基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基が好ましい。
【0084】
上記式(2)で表される構造単位(b1)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0085】
【化24】
【0086】
上記式中、Rは、上記式(2)と同義である。
【0087】
これらのうち、上記式(2−1)及び(2−2)で表される構造単位が好ましい。
【0088】
上記式(2)で表される構造単位(b1)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0089】
【化25】
【0090】
[B]重合体において、構造単位(b1)の含有率としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上95モル%以下が好ましく、30モル%以上90モル%以下がより好ましく、40モル%以上85モル%以下がさらに好ましい。構造単位(b1)の含有率が上記特定範囲であると、ミッシングコンタクトホールが発生するおそれもなく、露光部の現像液不溶性が十分となり、良好なパターンを得ることができる。なお、[B]重合体は構造単位(b1)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0091】
[構造単位(b2)]
本発明における[B]含フッ素重合体は、フッ素原子含有率が[A]重合体より高い重合体であり、フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成される。
【0092】
フッ素原子を構造中に含む重合体を与える単量体としては、主鎖にフッ素原子を含む単量体、側鎖にフッ素原子を含む単量体、主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む単量体が挙げられる。
【0093】
主鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリレート化合物、α−トリフルオロメチルアクリレート化合物、β−フルオロアクリレート化合物、β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、α,β−フルオロアクリレート化合物、α,β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物等が挙げられる。
【0094】
側鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばノルボルネンのような脂環式オレフィン化合物の側鎖がフッ素又はフルオロアルキル基やその誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のオレフィンの側鎖(二重結合を含まない部位)がフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。
【0095】
主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリル酸、β−フルオロアクリル酸、α,β−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、β−トリフルオロメチルアクリル酸、α,β−トリフルオロメチルアクリル酸等のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物の側鎖をフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体で置換したもの、1種類以上の脂環式オレフィン化合物の二重結合に結合している水素をフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換し、かつ側鎖がフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。なお、この脂環式オレフィン化合物とは、環の一部が二重結合である化合物を示す。
【0096】
[B]含フッ素重合体が有するフッ素原子を構造中に含む構造単位としては、上記フッ素原子を構造中に含む単量体に由来する構造単位であれば特に限定されないが、上記式(5)で表される構造単位(b2)が好ましい。
【0097】
上記式(5)中、Rは、水素、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、連結基である。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換基で置換されており、上記置換基の少なくとも1つはフッ素原子である。
【0098】
上記Xが示す連結基としては、例えば単結合、酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。これらのうち、エステル基であることが好ましい。
【0099】
上記Rで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−へキシル基、i−へキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜6であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−へキシル基、i−へキシル基が好ましい。
【0100】
上記Rで表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらのうち、シクロへキシル基が好ましい。
【0101】
上記Rが置換基として有するフッ素原子の数としては、2〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜10がさらに好ましい。
【0102】
上記構造単位(b2)を与える単量体としては、下記式(5−1)〜(5−15)で表される化合物等が挙げられる。
【0103】
【化26】
【0104】
上記式中、Rは、上記式(5)と同義である。
【0105】
これらのうち、上記式(5−3)で表される化合物が好ましい。
【0106】
[B]含フッ素重合体は、構造単位(b2)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。構造単位(b2)の含有率は、フッ素原子含有重合体における全構造単位を100モル%とした場合に、通常5モル%以上90モル%以下であり、好ましくは10モル%以上80モル%以下であり、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。この構造単位(b2)の含有率が上記特定範囲であると、ブリッジ欠陥等の現像欠陥が発生するおそれがなく、70度以上の後退接触角を達成でき、レジスト塗膜からの酸発生剤等の溶出を十分に抑制することができる。
【0107】
[B]含フッ素重合体は、上記構造単位(b1)及び(b2)以外にも、その他の構造単位として、ラクトン構造、スルトン構造又は環状カーボネート構造を有する構造単位(b3)、極性基を有する構造単位(b4)、他の酸解離性基を有する構造単位(b5)、カルボキシル基を有する構造単位、基板からの反射による光の散乱を抑えるために芳香族化合物に由来する構造単位等を1種類以上含有することができる。
【0108】
上記構造単位(b3)としては、[A]重合体が有する上記構造単位(a2)についての説明を適用できる。上記構造単位(b4)としては、[A]重合体が有する上記構造単位(a3)の説明を適用できる。上記構造単位(b5)としては、[A]重合体が有する上記構造単位(a4)についての説明を適用できる。
【0109】
また、上記芳香族化合物に由来する他の構造単位を生じさせる好ましい単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−(2−t−ブトキシカルボニルエチルオキシ)スチレン2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−メチル−3−ヒドロキシスチレン、4−メチル−3−ヒドロキシスチレン、5−メチル−3−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、2,4,6−トリヒドロキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アセナフチレン、5−ヒドロキシアセナフチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ビニルナフタレン、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−アントリル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリルメチル(メタ)アクリレート、1−ビニルピレン等が挙げられる。
【0110】
上記他の構造単位の含有率としては、[B]含フッ素重合体における全構造単位を100モル%とした場合に、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0111】
[B]含フッ素重合体のMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、1,000〜10,000が特に好ましい。フッ素原子含有重合体のMwが上記特定範囲であると、十分な前進接触角を得ることができ、レジストとした際の現像性にも優れる。[B]フッ素原子含有重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0112】
上記フォトレジスト組成物における[B]含フッ素重合体の含有率としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましく、1〜8質量部が特に好ましい。当該フォトレジスト組成物における[B]含フッ素重合体の含有率を上記特定範囲とすることで、ミッシングコンタクトホール及びラフネスの発生を抑制することができ、かつ得られるレジスト塗膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0113】
[B]含フッ素重合体におけるフッ素原子の含有率としては、[B]含フッ素重合体全量を100質量%として、通常5質量%以上であり、好ましくは5質量%〜50質量%であり、より好ましくは5質量%〜45質量%である。なお、このフッ素原子含有率は13C−NMRにより測定することができる。[B]重合体におけるフッ素原子含有率が[A]重合体よりも大きいものであるため、[B]重合体を含有する当該フォトレジスト組成物によって形成されたレジスト膜表面の撥水性を高めることができ、液浸露光時に上層膜を別途形成する必要がなくなる。上記の効果を十分に発揮するためには、[A]重合体におけるフッ素原子の含有率と、上記[B]重合体におけるフッ素原子の含有率との差が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。
【0114】
<[B]含フッ素重合体の合成方法>
[B]含フッ素重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
上記重合に使用されるラジカル重合開始剤及び溶媒としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0115】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0116】
<[C]酸発生体>
当該フォトレジスト組成物は[C]酸発生体を含有する。[C]酸発生体は、パターン形成工程における露光により酸を発生することができる。その酸により[A]重合体及び[B]含フッ素重合体中に存在する酸解離性基を解離させ、その結果、露光部が有機溶媒を含有する現像液に難溶性となる。なお、当該フォトレジスト組成物における[C]酸発生体の含有形態は、遊離の化合物の形態(以下、「[C]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0117】
[C]酸発生剤としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩化合物、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。これらのうち、[C]酸発生剤の好適な具体例としては、例えば、特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物等を挙げることができる。
【0118】
[C]酸発生剤としては、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−エタン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(1−アダマンチル)−エタン−1−スルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0119】
4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、
【0120】
トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−エタン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(1−アダマンチル)−エタン−1−スルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0121】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生剤の使用量としては、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。[C]酸発生剤の使用量を上記特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は、感度、現像性、及び透明性に優れ、所望のレジストパターンを得ることができる。
【0122】
<[D]含窒素化合物>
当該フォトレジスト組成物は、[D]含窒素化合物をさらに含んでいることが好ましい。[D]含窒素化合物は、露光により[C]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、レジストとしての解像度がより向上するとともに、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。[D]含窒素化合物の当該フォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0123】
[D]含窒素化合物としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0124】
【化27】
【0125】
上記式中、R12〜R16はそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖状、分岐状、環状の炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、若しくはアラルキル基である。但し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、R12とR13とが互いに結合して、それぞれが結合する窒素原子と共に炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又はその誘導体を形成してもよい。R14とR15とが互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又はその誘導体を形成してもよい。
【0126】
上記式で表される[D]含窒素化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−アルキルアルコキシカルボニル基含有アミノ化合物等が挙げられる。これらのうち、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジンが好ましい。
【0127】
また、窒素含有化合物としては、上記式で表される窒素含有化合物以外にも、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、光崩壊性塩基化合物、その他含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0128】
3級アミン化合物としては、例えば
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。これらのうち、アルカノールアミン類が好ましく、トリエタノールアミンがより好ましい。
【0129】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えばテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0130】
光崩壊性塩基化合物としては、露光により分解して酸拡散制御性としての塩基性を失うオニウム塩化合物を用いることができる。このようなオニウム塩化合物の具体例としては、例えば下記式(6−1)で表されるスルホニウム塩化合物、および下記式(6−2)で表されるヨードニウム塩化合物を挙げることができる。
【0131】
【化28】
【0132】
上記式(6−1)及び式(6−2)におけるR17〜R21は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。
また、Anbは、OH、R22−COO、R22−SO(但し、R22は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、又はアルカノール基である。)、又は下記式(7)で表されるアニオンである。
【0133】
【化29】
【0134】
上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の具体例としては、トリフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、トリフェニルスルホニウムアセテート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムアセテート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムサリチレート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムハイドロオキサイド、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムアセテート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、4−t−ブトキシフェニル・ジフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート等を挙げることができる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムサリチレートが好ましい。
【0135】
[D]含窒素化合物の含有率としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。使用量が上記特定範囲であると、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は感度に優れる。
【0136】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は、通常、[E]溶媒を含有する。[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0137】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0138】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0139】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0140】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0141】
その他の溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、アニソール、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0142】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0143】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、偏在化促進剤、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等を含有できる。以下、これらのその他の任意成分について詳述する。これらのその他の任意成分は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0144】
[偏在化促進剤]
当該フォトレジスト組成物は、液浸露光法を使用しレジストパターンを形成する場合等に、偏在化促進剤を配合することができる。偏在化促進剤を配合することで、[D]重合体をさらに表層近傍に偏在化させることができる。偏在化促進剤としては、例えばγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0145】
[脂環式骨格化合物]
脂環式骨格化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。
【0146】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。
【0147】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[A]化合物に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。
【0148】
<フォトレジスト組成物の調製>
当該フォトレジスト組成物は、例えば上記[E]溶媒中で、上記[A]重合体、[B]含フッ素重合体、[C]酸発生体、必要に応じて加えられる[D]含窒素化合物及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。当該フォトレジスト組成物は、通常、その使用に際して、全固形分濃度が1質量%〜50質量%、好ましくは2質量%〜25質量%となるように[E]溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって調製される。
【0149】
<パターン形成方法>
本発明のフォトレジスト組成物は、有機溶媒現像液を用いるパターン形成方法に好適に用いられる。当該フォトレジスト組成物が好適に用いられるパターン形成方法としては、例えば、(1)フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、(2)上記レジスト膜に露光する工程、及び(3)上記露光されたレジスト膜を、有機溶媒含有率が80質量%以上の現像液で現像する工程を有するパターン形成方法等が挙げられる。以下、各工程を詳述する。なお、上記パターン形成方法の(2)露光する工程における露光方法は、特に限定されるものではないが、当該フォトレジスト組成物は液浸露光に好適に用いられるため、以下に、液浸露光方法を用いる場合の各工程について説明する。
【0150】
[工程(1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を、基板上に直接又は下層膜等を介して塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。上記下層膜等としては、特に限定されるものではなく、露光後の現像の際に用いられる現像液に対して不溶性であり、かつ従来のエッチング法でエッチング可能な材料であればよい。例えば半導体素子や液晶表示素子の製造において、下地材として一般的に使用されているものを用いることができる。
【0151】
当該フォトレジスト組成物の塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm〜1μmであり、0.01μm〜0.5μmが好ましい。
【0152】
当該フォトレジスト組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの加熱条件としては、当該フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃程度であり、50℃〜150℃が好ましい。
【0153】
環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。さらに、レジスト層からの酸発生剤等の流出を防止するために、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0154】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成したレジスト膜の所望の領域にドットパターンやラインパターンなどの特定パターンを有するマスク及び液浸液を介して縮小投影することにより露光を行う。例えば、所望の領域にアイソラインパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、トレンチパターンを形成できる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。複数回露光する場合、例えば所望の領域にラインアンドスペースパターンマスクを介して第1の縮小投影露光を行い、続けて第1の露光を行った露光部に対してラインが交差するように第2の縮小投影露光を行う。第1の露光部と第2の露光部とは直交することが好ましい。直交することにより、露光部で囲まれた未露光部において円状のコンタクトホールパターンが形成しやすくなる。なお、露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0155】
露光に使用される光源としては、酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。露光量等の露光条件は、当該組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。本発明のパターン形成方法においては、露光工程を複数回有してもよく複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いても良いが、1回目の露光にはArFエキシマレーザー光を用いることが好ましい。
【0156】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、当該組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEBの加熱条件としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましく、60℃〜120℃がより好ましく、70℃〜100℃がさらに好ましい。当該フォトレジスト組成物は、70℃〜100℃の低温でのPEBを行うことで、本発明の効果をさらに優れたものとすることができる。
【0157】
[工程(3)]
本工程は、工程(2)の露光後に有機溶媒を含有するネガ型現像液を用いて現像を行い、トレンチパターン及び/又はホールパターン等のパターンを形成する。ネガ型現像液とは低露光部及び未露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。ネガ型現像液が含有する有機溶媒は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの有機溶媒としては、上記[E]溶媒として挙げた有機溶媒と同様のものを挙げることができる。
【0158】
これらのネガ型現像液が含有する有機溶媒のうち、酢酸ブチル、メチル−n−ペンチルケトン、酢酸iso−アミル、アニソールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0159】
現像液中の有機溶媒の含有量は、80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上である。現像液が有機溶媒を80質量%以上含有することにより、良好な現像特性を得ることができ、よりリソグラフィー特性に優れたパターンを形成することができる。なお、有機溶媒以外の成分としては、水、シリコンオイル、界面活性剤等が挙げられる。
【0160】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0161】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0162】
上記パターン形成方法においては、工程(3)の現像後にレジスト膜をリンス液により洗浄する工程を行ってもよい。リンス液としては、上記現像液と同様に有機溶媒を含有する液を使用することが好ましく、そうすることにより発生したスカムを効率よく洗浄することができる。リンス液としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒等が好ましい。これらのうちアルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭素数6〜8の1価のアルコール系溶媒がより好ましい。炭素数6〜8の1価のアルコールとしては直鎖状、分岐状又は環状の1価のアルコールが挙げられ、例えば1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのうち、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、4−メチル−2−ペンタノールが好ましい。
【0163】
上記リンス液の各成分は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。リンス液の含水率は、10質量%以下が好ましく、さらにより好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。なお、リンス液には後述する界面活性剤を添加できる。
【0164】
洗浄処理の方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【実施例】
【0165】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0166】
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、以下の条件により測定した。
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0167】
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社、JNM−EX270)を使用し測定した。
【0168】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体及び後述する[B]含フッ素重合体の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0169】
【化30】
【0170】
[合成例1]
化合物(M−1)14.1g(50モル%)及び化合物(M−8)15.9g(50モル%)を60gのメチルエチルケトンに溶解し、AIBN1.2g(5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。30gのエチルメチルケトンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。600gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を120gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を得た(25.4g、収率84.5%)。得られた重合体(A−1)のMwは6,900であり、Mw/Mnは1.4であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−8)由来の構造単位の含有比率は、47.5:52.5(モル%)であった。
【0171】
[合成例2〜10]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例1と同様に操作して重合体(A−2)〜(A−10)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
<[B]重合体の合成>
[合成例11]
化合物(M−5)35.8g(70モル%)及び化合物(M−9)14.2g(30モル%)を100gのメチルエチルケトンに溶解し、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート2.3gを添加して単量体溶液を調製した。50gの2−ブタノンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却し、825gのメタノール/2−ブタノン/ヘキサン=2/1/8混合溶液で洗浄した後、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルで溶媒置換し、共重合体(B−1)の溶液を得た。(固形分換算で38.0g、収率76%)。この共重合体(B−1)は、Mwが7,000であり、Mw/Mnが1.40であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−5)由来の構造単位:化合物(M−9)由来の構造単位の含有比率(モル%)は、70.2:29.8(モル%)であった。
【0174】
[合成例12〜15]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例11と同様に操作して重合体(B−2)〜(B−4)及び(b−1)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0175】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[C]酸発生剤、[D]含窒素化合物及び[E]溶媒を以下に示す。
【0176】
<[C]酸発生剤>
(C−1)〜(C−3):下記式で表される化合物
【0177】
【化31】
【0178】
<[D]含窒素化合物>
(D−1)〜(D−3):下記式で表される化合物
【0179】
【化32】
【0180】
<[E]溶媒>
(E−1):酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
(E−2):シクロヘキサノン
(E−3):γ−ブチロラクトン
【0181】
[実施例1]
重合体(A−1)100質量部、重合体(B−1)3質量部、酸発生剤(C−1)9.8質量部、含窒素化合物(D−1)1.8質量部、溶媒(E−1)2,220質量部、(E−2)950質量部及び(E−3)30質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0182】
[実施例2〜25及び比較例1]
表2に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0183】
【表2】
【0184】
<パターン形成方法>
膜厚105nmのARC66(BREWER SCIENCE社)の下層反射防止膜を形成したシリコンウェハを用い、実施例1〜25及び比較例1で調製した各フォトレジスト組成物を、それぞれ基板上にクリーントラックACT12(東京エレクトロン社)を用いてスピンコートにより塗布した。ホットプレート上にて80℃で60秒間プレベーク(PB)を行って膜厚0.10μmのレジスト膜を形成した。形成したレジスト膜に、ArF液浸露光装置(S610C、ニコン社、開口数1.30)を用いて、マスクパターン、液浸水を介して縮小投影露光を行った。次いで表3に示す温度で60秒間ポスト・エクスポージャー・ベーク(PEB)を行った後、酢酸ブチルにより23℃で30秒間現像し、4−メチル−2−ペンタノールで10秒間リンス処理を行った後、乾燥してネガ型のレジストパターンを形成した。また、他の現像液としてメチル−n−ペンチルケトン(MAK)及びアニソールを使用し、同様にパターンを形成した。なお、縮小投影後にウエハー上で直径0.055μmのホールサイズになるような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とし、現像液として酢酸ブチルを用いた場合を表3に、MAKを用いた場合を表4に、アニソールを用いた場合を表5にそれぞれ示す。
【0185】
上記パターン形成方法を用いて下記の各評価を行った。各評価結果を、現像液として酢酸ブチルを用いた場合を表3に、MAKを用いた場合を表4に、アニソールを用いた場合を表5にそれぞれ示す。
【0186】
[解像性の評価]
縮小投影露光後のパターンが直径0.055μmになるドットパターンを用いて液浸水を介して縮小投影露光し、露光量を大きくしていった際に得られるホールの最小寸法を測定した。ホールの最小寸法が、0.040μm以下の場合「良好」と判断し、0.040μmを超える場合、「不良」と判断した。
【0187】
[ラフネスの評価]
上記パターン形成方法に記載の方法に従って形成したレジスト膜に、ArF液浸露光装置(S610C、ニコン社、開口数1.30)を用いて、表3〜5に記載の各最適露光量(感度)で全面露光し、表3〜5に示される各ベーク温度で60秒間PEBを行った後、酢酸ブチル、MAK又はアニソールにより23℃で30秒間現像し、4−メチル−2−ペンタノールで10秒間リンス処理を行い、乾燥してレジスト膜を形成した。本レジスト膜上の表面ラフネスを、原子間力顕微鏡(Digital Instrument社製 Nano Scope IIIa)にて測定領域40×40μmの条件下で測定した。ラフネスを測定しRMSにより算出した値が10nm未満の場合を「良好」と判断、10nm以上の場合を「不良」と判断した。
【0188】
[ミッシングコンタクトホールの評価]
上記パターン形成方法に記載の方法に従って形成したレジスト膜に、ArF液浸露光装置(S610C、ニコン社、開口数1.30)を用いて、表3〜5に記載の各最適露光量(感度)で形成された0.055μmのホールパターンを、測長SEM(日立製作所社社、CG4000)を用いて観察し、画面上の9点のホールについて全てのパターン開口が見られれば「良好」と評価し、1つ以上のパターン閉口が見られれば「不良」と評価した。
【0189】
[円形性の評価]
上記パターン形成方法に記載の方法に従って形成したレジスト膜に、ArF液浸露光装置(S610C、ニコン社、開口数1.30)を用いて、表3〜5に記載の各最適露光量(感度)で形成された0.055μmのホールパターンを、測長SEM(日立ハイテクノロジーズ社、CG4000)を用いてパターン上部から観察した。ホール直径を任意の24ポイントで測定し、その測定ばらつきを3σで評価し、0.002μm以下である場合を「良好」と判断し、0.002μmを超える場合を「不良」と判断した。
【0190】
[断面形状の評価]
上記パターン形成方法に記載の方法に従って形成したレジスト膜に、ArF液浸露光装置(S610C、ニコン社、開口数1.30)を用いて、表3〜5に記載の各最適露光量(感度)で形成された0.055μmのホールパターンの断面形状を観察し(日立ハイテクノロジーズ社、S−4800)、レジストパターンの中間での線幅Lbと膜の上部での線幅Laを測り、0.9≦(La/Lb)≦1.1の範囲内である場合を「良好」と評価し、範囲外である場合を「不良」と評価した。
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
表3〜5から明らかなように、本発明のフォトレジスト組成物によれば、現像後の露光部表面のラフネス及びミッシングコンタクトホールの発生を抑制すると共に、解像性、円形性等のリソグラフィー特性に優れるパターンを得ることができた。なお、現像液として酢酸ブチルを使用した場合、メチル−n−ペンチルケトンを使用した場合、アニソールを使用した場合の全てにおいて、上記効果が奏されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明のフォトレジスト組成物は、有機溶媒を現像液に用いるパターン形成法に用いられ、現像後のミッシングコンタクトホール及び露光部表面のラフネスの発生を抑制できると共に、解像性、円形性等のリソグラフィー特性に優れる。そのため、当該フォトレジスト組成物は、今後さらなる微細化が進む半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造に十分対応することが可能である。