特許第5928425号(P5928425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5928425ネブライザ用メッシュ選定方法、装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928425
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】ネブライザ用メッシュ選定方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20160519BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   A61M11/00 F
   A61M16/10 Z
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-196572(P2013-196572)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-62454(P2015-62454A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年1月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117042
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 正志
(72)【発明者】
【氏名】田畑 信
(72)【発明者】
【氏名】寺田 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】朝井 慶
(72)【発明者】
【氏名】前田 真郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐介
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−249208(JP,A)
【文献】 特開2008−301847(JP,A)
【文献】 特開2012−000145(JP,A)
【文献】 特開2002−165883(JP,A)
【文献】 特開2008−229356(JP,A)
【文献】 特開2003−159332(JP,A)
【文献】 特表2013−501565(JP,A)
【文献】 特開2009−072313(JP,A)
【文献】 特開2010−142737(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00−15/00
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤及び患者に合わせてメッシュ交換可能なネブライザに対して
コンピュータにより最適なメッシュを選択するネブライザ用メッシュ選択方法であって、
コンピュータが、薬剤の属性と対応づけられた識別記号を取得するステップと、
患者の呼吸能力と対応づけられた区分を取得するステップと、
薬剤の属性と患者の呼吸能力の組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブルに基づいて、前記取得された薬剤の属性と患者の呼吸能力に対応する最適なメッシュを選択するステップと、
前記選択されたメッシュを出力するステップと、
を有するネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項2】
前記薬剤の属性と対応づけられた識別記号を取得するステップは、
薬剤の名称を取得するステップと、
薬剤の名称と薬剤の属性を関連付けたテーブルに基づいて、前記取得された薬剤の名称を薬剤の属性に変換するステップと、
含むことを特徴とする請求項1に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項3】
前記薬剤の名称と前記薬剤の属性とは1対1で対応することを特徴とする請求項2に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項4】
前記薬剤の属性と対応づけられた識別記号を取得するステップは、
薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位を取得するステップと、
前記取得された薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位に基づいて、薬剤の属性を決定するステップと、
含むことを特徴とする請求項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項5】
前記薬剤の属性を決定するステップは、
前記取得された薬剤の適用部位が、決定される薬剤の属性にかかる薬剤の適用部位と同じであり、かつ、前記取得された薬剤の表面張力及び粘度が、決定される薬剤の属性にかかる薬剤の表面張力の基準値及び粘度の基準値のいずれからも所定範囲内にあるように薬剤の属性を決定する
ことを特徴とする請求項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項6】
前記所定範囲は、±10%であることを特徴とする請求項5に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項7】
前記患者の呼吸能力と対応づけられた区分を取得するステップは、
患者の年齢を取得するステップと、
患者の年齢と患者の呼吸能力を関連付けたテーブルに基づき、前記取得された患者の年齢を患者の呼吸能力に変換するステップと、
含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項8】
前記患者の呼吸能力と対応づけられた区分を取得するステップは、
患者の年齢及び患者の性別を取得するステップと、
患者の年齢及び患者の性別が患者の呼吸能力に関連づけられたテーブルに基づき、前記取得された患者の年齢及び患者の性別を患者の呼吸能力に変換するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項9】
前記患者の呼吸能力と対応づけられた区分を取得するステップは、
患者のピークフロー及び/又は肺活量を取得するステップと、
患者のピークフロー及び/又は肺活量が患者の呼吸能力に関連づけられたテーブルに基づき、前記取得された患者のピークフロー及び/又は肺活量を患者の呼吸能力に変換するステップと、
含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項10】
薬剤及び患者に合わせてメッシュ交換可能なネブライザに対して
コンピュータにより最適なメッシュを選択するネブライザ用メッシュ選択方法であって、
コンピュータが、薬剤の名称を取得するステップと、
患者の呼吸能力と対応づけられた区分を取得するステップと、
薬剤の名称と患者の呼吸能力の組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブルに基づいて、前記取得された薬剤の名称と患者の呼吸能力に対応する最適なメッシュを選択するステップと、
前記選択されたメッシュを出力するステップと、
を有するネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項11】
前記所定のメッシュは、少なくとも孔径と孔数とが異なる複数のメッシュの中から前記患者の呼吸能力に合った噴霧量になるメッシュであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項にネブライザ用メッシュ選択方法。
【請求項12】
薬剤の属性と患者の呼吸能力との組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブルを記憶する記憶装置と、
薬剤の属性と対応づけられた識別記号と、患者の呼吸能力と対応づけられた区分と、を取得するとともに、前記メッシュ選択テーブルに基づき、前記取得された薬剤の属性と患者の呼吸能力から対応メッシュを選択する選択装置と、
前記対応メッシュを出力する出力装置と、
を有するメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項13】
前記選択装置は、
薬剤の名称を取得し、薬剤の名称と薬剤の属性を関連付けたテーブルに基づいて、前記取得された薬剤の名称を薬剤の属性に変換する
ことを特徴とする請求項12に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項14】
前記薬剤の名称と前記薬剤の属性とは1対1で対応することを特徴とする請求項13に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項15】
前記選択装置は、
薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位を取得し、前記取得された薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位に基づいて、薬剤の属性を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項16】
前記選択装置は、
前記取得された薬剤の適用部位が、決定される薬剤の属性にかかる薬剤の適用部位と同じであり、かつ、前記取得された薬剤の表面張力及び粘度が、決定される薬剤の属性にかかる薬剤の表面張力の基準値及び粘度の基準値のいずれからも所定範囲内にあるように薬剤の属性を決定する
ことを特徴とする請求項15に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項17】
前記所定範囲は、±10%であることを特徴とする請求項16に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項18】
前記選択装置は、
患者の年齢を取得し、患者の年齢と患者の呼吸能力を関連付けたテーブルに基づき、前記取得された患者の年齢を患者の呼吸能力に変換する
ことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項19】
前記選択装置は、
患者の年齢及び患者の性別を取得し、患者の年齢及び患者の性別が患者の呼吸能力に関連づけられたテーブルに基づき、前記取得された患者の年齢及び患者の性別を患者の呼吸能力に変換する
ことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項20】
前記選択装置は、
患者のピークフロー及び/又は肺活量を取得し、患者のピークフロー及び/又は肺活量が患者の呼吸能力に関連づけられたテーブルに基づき、前記取得された患者のピークフロー及び/又は肺活量を患者の呼吸能力に変換する、
ことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項に記載のメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項21】
前記所定のメッシュは、少なくとも孔径と孔数とが異なる複数のメッシュの中から前記患者の呼吸能力に合った噴霧量になるメッシュであることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項にメッシュ交換式ネブライザ用メッシュ選択システム。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のネブライザ用メッシュ選択方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザ用メッシュ選定方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤などの液体を霧化して噴出する液体噴霧装置(ネブライザ)は、コンプレッサを備えるコンプレッサ式ネブライザと、超音波振動子を備える超音波式ネブライザに大別される。超音波式ネブライザの代表的なものとして、微細なメッシュの穴から瞬時に薬剤を押し出すことによって薬剤を霧化するメッシュ式ネブライザがある。
【0003】
メッシュ式ネブライザは、一般的に、液体を貯留する貯液部と、多数の微細孔を有するメッシュと、メッシュに当接するように配置される振動源とを備える。メッシュと振動源との間に、貯液部から液体が供給される。メッシュと振動源との間に供給された液体は、振動源が振動することによって、微細孔を通して外部に向けて噴霧される。従来の液体噴霧装置は、たとえば、特開2006−297226号公報(特許文献1)及び特開平7−256170号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
メッシュ式ネブライザにおいて、メッシュは、噴霧される薬液の粒子径、噴霧量に大きな影響を与える重要な部材である。例えば、噴霧粒子径を小さくするためには、メッシュの孔径を小さくし、噴霧量を増やすためには、メッシュの孔数を増やす、あるいは、メッシュの孔形状を薬剤が出やすい形状にすることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−297226号公報
【特許文献2】特開平7−256170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のネブライザ治療においては、薬剤及び患者に合わせてメッシュを交換することは行われていなかった。この理由として、薬剤と患者に合わせてどのようなメッシュを用いるべきか、患者又は薬剤師等が判断することは容易ではない、ということが挙げられる。また、ネブライザ本体の調整により噴霧量等を変えることは可能であるが、その調整は患者任せであり、より最適な治療が望まれていた。
【0007】
それ故、この発明の課題は、薬剤と患者に合わせた最適なネブライザ治療を実現できる、ネブライザ用メッシュ選択方法を提供することにある。具体的には、薬剤と患者に合わせて孔径・孔数・孔形状を変えた最適なネブライザ用メッシュを選択する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるネブライザ用メッシュ選択方法は、
コンピュータが、薬剤の属性を取得するステップと、
患者の呼吸能力を取得するステップと、
薬剤の属性と患者の呼吸能力の組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブルに基づいて、前記取得した薬剤の属性と患者の呼吸能力に対応するメッシュを選択するステップと、
前記選択されたメッシュを出力するステップとを有する。
【0009】
最適なネブライザ治療を行うためには、薬剤と患者に合わせて噴霧粒子径と噴霧量を調整する必要がある。以下にその理由を説明する。
【0010】
噴霧された薬剤の粒子は、その粒子径が小さくなるほど、喉、気管支、さらには肺へと到達することが可能となる。よって、治療効果の向上のためには、薬剤を患部まで効率よく到達させることができるよう、噴霧粒子径を調整する必要がある。例えば、薬剤の適用部位が肺である場合の噴霧粒子径は、適用部位が喉である場合の噴霧粒子径よりも小さく設定する。
【0011】
また、噴霧量は、患者の呼吸能力(詳細は後述する。)により調整する必要がある。患者の呼吸能力に対して噴霧量が多い場合、噴霧された薬剤の全てを患者が吸入できず、薬剤が無駄になるだけではなく、治療中に患者がむせるなどが生じる。患者の呼吸能力に対して噴霧量が少ない場合は、治療に時間がかかるという問題が生じる。
【0012】
さらに、薬剤の噴霧粒子径と噴霧量は、メッシュの孔径・孔数・孔形状に加えて、薬剤の表面張力や粘度の影響を受ける。例えば、表面張力が大きい薬剤、あるいは粘度が高い薬剤は、他の薬剤と比較して、噴霧量が小さくなる傾向にある。よって、所望の出力噴霧径と噴霧量を実現できるメッシュの孔径・孔数・孔形状を決定する際には、薬剤の表面張力及び粘度を考慮する必要がある。
【0013】
それ故、上記のような構成によれば、患者は、本発明にかかるネブライザ用メッシュ選択方法により選択されたメッシュを用いることで、ネブライザ本体の調整を最小限にして、薬剤及び患者に最適なネブライザ治療を受けることが可能となる。
【0014】
ここで、「薬剤の属性」とは、ネブライザに用いられる薬剤を、メッシュ選択の観点から、予め所定数の属性に分類したものであり、薬剤の属性にはそれぞれ属性番号が割り振られている。薬剤の適用部位が同部位であり、薬剤の表面張力及び粘度が近い範囲にある薬剤は、同じ属性に属するよう分類される。
【0015】
なお、取り扱う薬剤の種類が少ない場合などにおいては、薬剤の属性と薬剤の名称が1対1で対応してもよい。
【0016】
また、「患者の呼吸能力」とは、患者が一呼吸で吸入できる薬剤の量に対応するものであり、メッシュ選択の観点から所定数の段階に分類されたランクである。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明にかかるネブライザ用メッシュ選択方法によれば、薬剤及び患者に合った最適なメッシュを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態にかかる薬剤の属性を決定する処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態にかかるメッシュ選択の具体的な処理フローを説明する図である。
図5】本発明の一実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択テーブルを示す図である。
図6】本発明の一実施形態にかかるネブライザ用メッシュの孔形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。但し、これらの実施形態はいずれも例示であり、本発明についての限定的解釈を与えるものではない。なお、図面において、同一又は対応する部分については同一の符号を付すものとする。
【0020】
(実施例1)
図1は、本発明の前提となるネブライザ用メッシュ選択システム1の一実施形態の全体構成を示す図である。ネブライザ用メッシュ選択システム1は、薬剤の属性と患者の呼吸能力の組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブル21を記憶する記憶装置20と、前記メッシュ選択テーブル21に基づき、取得した前記薬剤の属性と患者の呼吸能力から対応メッシュを選択する選択装置10と、前記対応メッシュを出力する出力装置30から構成されている。
【0021】
本実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択システム1は、例えば次のように利用される。喘息等を患った患者は、医師の診断を受け、医師より処方箋の発行を受ける。かかる処方箋に従って、薬局でネブライザ用の薬剤が処方される。このとき、薬局が有する端末、すなわち、本実施形態における選択装置10に、薬剤の属性と患者の呼吸能力を入力すると、選択装置10は、記憶装置20に記憶されているメッシュ選択テーブル21に基づいて薬剤と患者に最適なネブライザ用メッシュを選択する。
【0022】
本実施形態にかかるネブライザ用メッシュは、汎用性や生産性を考慮し、孔径・孔数・孔形状を変えた10〜15種が予め用意されている。それぞれのメッシュには識別号が割り当てられており、かかる出力装置30は、選択されたメッシュの識別番号を出力する。薬剤師等は、出力されたメッシュの識別番号をもとに、薬剤及び患者に適したメッシュを患者に提供する。
【0023】
患者は、処方された薬剤とメッシュをネブライザにセットし、治療を行う。噴霧粒子径及び噴霧量は、薬剤及び患者にとって最適となるようメッシュにて調整されるため、患者はネブライザ本体の調整を最小限にして、最適な治療を受けることができる。
【0024】
(各構成要素について)
本実施形態では、選択装置10として汎用的なパーソナル・コンピュータを用いている。この他にも、タブレットコンピュータ、スマートフォン、携帯電話などを用いることが可能である。
【0025】
ネブライザに用いられる薬剤は、メッシュ選択の観点から、予め所定数の属性に分類されている。薬剤の適用部位が同部位であり、表面張力及び粘度が近い範囲にある薬剤は、同じ属性に属する。薬剤の属性とは、処方された薬剤が属する属性の識別記号である。本実施形態においては、1〜9の9分類で管理している。
【0026】
ネブライザの噴霧量は、患者の呼吸能力によって調節される。本実施形態において、患者の呼吸能力は、1〜9の9段階に区分され、1が最も弱く、9が最も強い設定となっている。
【0027】
出力装置30は、汎用的なディスプレイなどを用いることができる。また、視覚的出力に限られず、音声により出力することも可能である。
【0028】
(フローチャートの説明)
図2は、本実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択の処理を示すフローチャートである。患者に処方される薬剤が決定されると、操作者(薬剤師等)は、入力画面において、プルダウンメニューから薬剤の名称を選択する(ステップSa1)。
【0029】
なお、薬剤の名称の入力は、プルダウンメニューによる選択に限られず、キーボードによる文字入力、専用入力装置による入力、音声入力など、様々な方法を用いることができる。また、薬剤の名称の代わりに薬剤の属性を入力できるようにしてもよい。
【0030】
処方される薬剤の名称がプルダウンメニューにない場合、すなわち、処方される薬剤の属性情報が本実施形態にかかるシステム1に登録されていない場合(ステップSa2においてNoの場合)、操作者は、薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位をプルダウンメニューから選択し、選択装置10に入力する(ステップSa3)。
【0031】
なお、薬剤の属性に関する情報は、記憶装置に記憶されている。この場合、かかる記憶装置は、メッシュ選択テーブル21が記憶されている記憶装置20と異なっていてもよく、また、選択装置10内に記憶されていてもよい。
【0032】
かかる記憶装置は、薬剤の属性情報のほかに、各属性にかかる表面張力の基準値、粘度の基準値、及び適用部位の情報を有する。したがって、処方される薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位が入力された場合、これらの情報に従って、本薬剤が属する薬剤の属性が決定される(ステップSa4)。
【0033】
なお、薬剤の属性を決定するステップSa4については、具体的に図3に示すような処理が考えられる。
【0034】
まず、Sa3にて入力された薬剤の表面張力及び粘度が、それぞれ基準値から±10%以内にあり、かつ、適用部位が同部位である薬剤の属性を抽出する(ステップSb1)。
【0035】
該当する属性が1つのみであるとき(ステップSb1においてYes、かつ、ステップSb2においてYesの場合)は、かかる該当する属性に属するものとして処理される(ステップSb3)。
【0036】
該当する属性が2以上あるとき(ステップSb1においてYes、かつ、ステップSb2においてNoの場合)は、最も小さい識別番号を有する薬剤の属性に属するものとして処理される(ステップSb4)。
【0037】
入力された薬剤の表面張力及び粘度が、それぞれ基準値から±10%以内にある属性が存在しない、あるいは、基準値から±10%以内にはあるが、適用部位が同部位の属性が存在しない場合(ステップSb1においてNoの場合)には、本システム1にてメッシュを選択することができない薬剤であるため、「該当なし」との表示を出力装置30に出力するように処理される(ステップSb5)。
【0038】
このように、例えば新規の薬剤など、属性情報が予め登録されていない薬剤であっても、その表面張力、粘度、及び適用部位から薬剤の属性を決定することができる。なお、上記の判定基準は、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0039】
また、操作者は、患者の呼吸能力を選択装置10に入力する。呼吸能力は、患者の年齢及び性別から大まかに推定することが可能であるが、患者のピークフロー及び/又は肺活量を用いることでより正確に判定できる。
【0040】
そこで、患者のピークフロー及び/又は肺活量の情報がある場合(ステップSa6においてYesの場合)、操作者は、患者のピークフロー及び/又は肺活量を選択装置10に入力する(ステップSa7)。かかる入力情報は、所定の変換テーブルに基づき、呼吸能力に変換される(ステップSa8)。
【0041】
患者のピークフロー及び/又は肺活量の情報がない場合(ステップSa6においてNoの場合)、操作者は、患者のピークフロー及び/又は肺活量の代わりに、患者の年齢及び性別を入力する(ステップSa9)。かかる入力情報は、所定の変換テーブルに基づき、患者の呼吸能力に変換される(ステップSa10)。
【0042】
なお、「ピークフロー」とは、息を大きく吸い込んだ状態から目一杯に息を吐き出したときの息の速さ、をいうものとする。
【0043】
患者の年齢及び性別は、一般的に処方箋に記載されている。よって、患者のピークフロー及び/又は肺活量の情報がない場合であっても、特別な検査・測定をすることなく、患者の年齢及び性別を用いて患者の呼吸能力を推定することができ、薬剤と患者に合った最適なメッシュを選択することが可能となる。
【0044】
上記のステップSa8、Sa10を通して取得された患者の呼吸能力は、記憶装置20に入力される(ステップSa11)。
【0045】
選択装置10は、ステップSa5にて取得された薬剤の属性、及びステップSa11にて取得された患者の呼吸能力に基づき、記憶装置20に記憶されたネブライザ用メッシュ選択テーブル21を用いて、薬剤及び患者に最適なメッシュを選択する(ステップSa12)。選択されたメッシュの識別番号が選択装置10から出力装置30に送信され、出力装置30はかかるメッシュの識別番号を出力する(ステップSa13)。
【0046】
なお、本実施形態にかかるメッシュ選択システムが取り扱う薬剤の種類が少ない場合などにおいては、薬剤の属性が薬剤の名称と1対1で対応していてもよい。この場合、選択装置10は薬剤の名称を薬剤の属性に変換することなく、薬剤の名称と患者の呼吸能力の組み合わせに対して所定のメッシュが対応させられているメッシュ選択テーブルに基づき、最適なメッシュを選択するよう構成してもよい。
【0047】
(メッシュ選択フローについて)
図4は、本実施形態のメッシュ選択の具体的な処理フローを説明する図である。簡単のため、薬剤の名称、並びに、患者のピークフロー及び肺活量が入力された場合のメッシュ選択方法について説明する。
【0048】
まず、操作者は、薬剤の名称を入力する(ステップSc1)。システム1は、薬剤の名称に対応する薬剤の表面張力、粘度、及び適用部位の情報を有している。選択装置10は、薬剤の名称に対応する適用部位を取得する(ステップSc2)。薬剤の適用部位に応じて、噴霧粒子径が決定される(ステップSc3・Sc4)。患部が、喉、気管、肺と、口腔から遠ざかるに従って、噴霧粒子径が小さく設定される。
【0049】
なお、薬剤の名称に対応する適用部位が複数考えられる場合には、適用部位を特定できないことになる。このような場合は、処方箋の情報に基づいた操作者からの入力を受け付けることにより、適用部位の情報を取得してもよい。
【0050】
また、操作者は、患者のピークフロー及び肺活量を入力する(ステップSc5)。かかる情報により患者の呼吸能力が判定され、患者の呼吸能力に合った噴霧量が決定される(ステップSc6・Sc7)。
【0051】
ステップSc4で決定された噴霧粒子径、及びステップSc7で決定された噴霧量を実現するメッシュの孔径・孔数・孔形状を演算により求める(ステップSc8)。
【0052】
なお、薬剤の出やすさは、表面張力及び粘度といった薬剤の物性値の影響を受けるため、メッシュの孔径・孔数・孔形状を演算する際には、薬剤の物性値が考慮される(ステップSc8・Sc9)。
【0053】
ステップSc8における演算処理により、メッシュの孔径・孔数・孔形状が決定される(ステップSc10・Sc11・SC12)。
【0054】
メッシュは、汎用性や生産性を考慮し、孔径・孔数・孔形状を変えた10〜15種が予め用意されている。これらのメッシュのうち、ステップSc8における演算処理により決定された孔径・孔数・孔形状に最も近いメッシュが選択される(ステップSc13)。選択されたメッシュの識別番号は、出力装置30に表示される(ステップSc14)。
【0055】
このように、図4に示すメッシュ選択の処理フローでは、ステップSc1で入力される薬剤の名称、並びに、ステップSc5で入力される患者のピークフロー及び肺活量から、種々の処理を経て、ステップSc14にてメッシュが選択される。そこで、図1及び図2で示した実施形態においては、薬剤の属性及び患者の呼吸能力、並びに、それらの情報から選択されるメッシュNo.を予めテーブルとして記憶している。このようにすることで、処理を簡略化でき、選択装置10の処理負荷を軽減することができる。なお、メッシュ選択テーブルを用いる代わりに、図4に示した処理をリアルタイムで選択装置10に行わせるように構成してもよい。
【0056】
図5は、記憶装置20に記憶されているネブライザ用メッシュ選択テーブル21の一例を示したものである。薬剤の属性及び患者の呼吸能力に対応したメッシュが規定されている。
【0057】
図6は、本実施形態のネブライザ用メッシュの孔形状を示した図である。
【0058】
同図(a)の貫通孔43は、円錐型の断面形状を有する。メッシュ40の入口面41から薬剤が供給され、貫通孔43を通ってメッシュ40の出口面42から霧化される。貫通孔43は、メッシュ40の入口面41からメッシュ40の出口面42に向かって先細りとなるテーパー形状であり、テーパー角度はθである。
【0059】
同図(b)の貫通孔43は、ホーン型の断面形状を有する。同図(a)と同じくテーパー角度はθであるが、貫通孔43はメッシュ40の入口面41側において同図(a)よりも断面形状において末広がりの形状となっている。このため、同図(a)よりも薬剤が貫通孔43内に入りやすくなり、噴霧量が多くなる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態にかかるネブライザ用メッシュ選択システム1によれば、薬剤及び患者に合った最適なメッシュを選択することができる。患者は、かかるメッシュをネブライザにセットすることにより、ネブライザ本体の調整を最小限にして、最適な治療を受けることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 メッシュ選択システム
10 選択装置
20 記憶装置
21 メッシュ選択テーブル
30 出力装置
40 メッシュ
41 入口面
42 出口面
43 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6