(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸引器は、吸引口と、吸引された前記液体を保持する胴部と、押圧されることで前記胴部内に前記液体を吸引するための陰圧を形成する尾部とを有するピペットであり、
前記容器は、マイクロチューブであること
を特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットシステム、検査方法および被検査物の生産方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
また、以下では、バイオメディカル分野においてベンチワークを実施するロボットを例に挙げて説明を行う。また、ロボットのエンドエフェクタである「ロボットハンド」については、「ハンド」と記載する。また、ロボットアームについては、「アーム」と記載する。
【0013】
また、以下では、ベンチワークの代表例として、「ピペッティング」を主に採り上げて説明を進める。
【0014】
図1Aは、実施形態に係るロボットシステム1の構成を示す平面模式図である。また、
図1Bは、検知部21の構成を示す正面模式図である。
【0015】
なお、
図1Aおよび
図1Bには、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。
【0016】
図1Aに示すように、ロボットシステム1は、直方体状の内部空間を有する安全キャビネット2を備える。また、ロボットシステム1は、かかる安全キャビネット2の内部に、ロボット10と、作業台20と、各種の処理用機器(後述)とを備える。
【0017】
なお、本実施形態では安全キャビネット2内部にロボット10を配置しているが、作業内容に応じては、安全キャビネット2の代わりにドラフトチャンバ、クリーンベンチなどの用途に応じた作業用筐体が適用されうる。また、ロボット10が安全キャビネット2等の外部に配置され、安全キャビネット2の前面扉などを通じて右ハンド14R、左ハンド14Lを内部に進入させた状態で作業をさせる構成としてもよい。
【0018】
処理用機器としては、たとえば、
図1Aに示すように、検知部21やインキュベータ22、加熱・冷却器23、撹拌機24、遠心機25、試験管立て26、ピペット立て27、シャーレ台28といったものが挙げられる。
【0019】
なお、試験管立て26にはマイクロチューブMTが、ピペット立て27にはピペットMPやバキューム吸引器ASといった吸引器が、シャーレ台28にはシャーレSCがそれぞれ保持される。これらマイクロチューブMTやピペットMP、バキューム吸引器AS、シャーレSCもまた処理用機器に含まれる。
【0020】
また、ロボットシステム1は、安全キャビネット2の外部に制御装置30を備える。制御装置30は、ロボット10といった安全キャビネット2内部の各種装置と情報伝達可能に接続される。なお、その接続形態は、有線および無線を問わない。
【0021】
ここで、制御装置30は、接続された各種装置の動作を制御するコントローラであり、種々の制御機器や演算処理装置、記憶装置などを含んで構成される。かかる制御装置30の具体的な構成については、
図2を用いて後述する。なお、制御装置30は、安全キャビネット2の内部に配設されてもよい。
【0022】
ロボット10は、制御装置30からの動作指示を受けて動作する双腕型のマニュピレータであり、右腕に右ハンド14Rを、左腕に左ハンド14Lを、それぞれ備える。かかる右ハンド14Rおよび左ハンド14Lを含むロボット10の構成の詳細については、
図3A以降を用いて後述する。
【0023】
作業台20は、ロボット10が、処理用機器を用いてベンチワークを実施するためのワークスペースである。かかる作業台20において、たとえば、ロボット10は、左ハンド14Lを用いてマイクロチューブMTを把持しながら、かかるマイクロチューブMTに入れられた液体を、右ハンド14Rを用いて把持したピペットMPでピペッティングするといった動作を行う。
【0024】
なお、このようなロボット10の動作は、ロボット10を動作させる特定のプログラムである「ジョブ」に基づく。「ジョブ」は、図示略の入力装置(たとえば、プログラミングペンダントなど)を介してあらかじめ制御装置30等に登録される。
【0025】
制御装置30は、かかる「ジョブ」に基づいてロボット10を動作させる動作信号を生成し、ロボット10へ出力する。この動作信号は、たとえば、ロボット10がその各関節部に搭載するサーボモータへのパルス信号として生成される。
【0026】
ところで、ピペッティングなどを行う際、従来技術によれば、マイクロチューブMT内の液体の界面の高さ位置(以下、「液面高さ」と言う場合がある)を検知せず、液面下方の大まかな位置にピペットMPの先端を進入させ、液体を吸引などする場合が多かった。
【0027】
このため、吸引されて液体の量が変化したり、沈殿物が生じたりしている場合に、所定の分量を吸引できなかったり、上澄みだけを取り出したいのに沈殿物が混入したりする場合があった。すなわち、精度よく再現性の高いベンチワークを実施するうえで、更なる改善の余地があった。
【0028】
そこで、本実施形態では、液面高さを検知しながら、ロボット10にピペッティングなどのベンチワークを実施させることとした。検知部21は、かかる液面高さを検知しながらのロボット10によるベンチワークの実施を可能とするユニットである。
【0029】
図1Bに示すように、検知部21は、治具21aと、検知センサ21bとを備える。治具21aは、作業台20から立設される支柱と、かかる支柱の先端から下垂させて設けられる当接部21aaとを有する。当接部21aaには、ピペットMPの尾部MP−T(後述)が押し付けられることとなる。この点については
図7A以降を用いて後述する。
【0030】
検知センサ21bは、発光部21baと、受光部21bbとを有し、光軸axoの形成領域をセンシング領域SAとする光学式センサである。検知センサ21bは、かかるセンシング領域SAにおける光軸axoの透過量や屈折率等の変化によって液体の界面を検知する液面センサとして機能する。
【0031】
なお、検知センサ21bは、光軸axoが水平方向(図中のXY平面に沿った方向)に略平行となるように設けられる。
【0032】
そして、本実施形態では、たとえばピペッティングを行うに際し、かかる検知部21を用いて液面高さを検知しながら、精確なピペッティングが可能となるようにロボット10の動作を制御する。この点については、
図6A以降を用いて詳しく述べる。
【0033】
次に、実施形態に係るロボットシステム1のブロック構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係るロボットシステム1のブロック図である。なお、
図2では、ロボットシステム1の説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0034】
また、
図2を用いた説明では、主として制御装置30の内部構成について説明することとし、既に
図1Aで示した各種装置や処理用機器については説明を簡略化するか省略する場合がある。
【0035】
図2に示すように、制御装置30は、制御部31と、記憶部32とを備える。制御部31は、指示部31aと、液面情報取得部31bとをさらに備える。また、指示部31aは、逆運動学演算部31aaと、位置情報取得部31abとを備える。
【0036】
記憶部32は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、教示情報32aと、液面情報32bとを記憶する。
【0037】
なお、
図2に示す制御装置30の各構成要素は、すべてが制御装置30単体に配置されなくともよい。たとえば、記憶部32の記憶する教示情報32aおよび液面情報32bのいずれかまたは双方を、ロボット10が有する内部メモリに記憶させてもよい。また、制御装置30の上位装置が記憶し、上位装置から制御装置30が適宜取得してもよい。
【0038】
制御部31は、制御装置30の全体制御を行う。指示部31aは、あらかじめ登録された教示情報32aと、液面情報取得部31bによって適宜更新される液面情報32bとに基づき、アーム13を含むロボット10を動作させる動作信号を生成して、ロボット10へ向け出力する。
【0039】
ここで、教示情報32aは、ベンチワークの種別などに応じて実際にロボット10を動作させる特定のプログラムである「ジョブ」を含む。そして、指示部31aは、かかる「ジョブ」に対して、液面情報32bに含まれる液面高さといった各種情報をパラメータとして加味しつつ、ロボット10の動作態様を決定する。
【0040】
そして、逆運動学演算部31aaにおいて逆運動学演算を実行して、アーム13の各関節部それぞれの動作位置を算出する。そして、これに基づき、逆運動学演算部31aaが、アーム13の各関節部に搭載されるサーボモータのそれぞれを動作させる動作信号を演算周期毎にそれぞれのサーボモータに与えるようになっている。
【0041】
なお、動作信号は、たとえば、上記サーボモータそれぞれへのパルス信号として生成される。また、制御装置30は、各サーボモータが有するエンコーダから自身の回転位置を示す位置信号(パルス信号)を取得するようになっており、位置情報取得部31abが、エンコーダの分解能に応じてアーム13の位置情報(あるいは姿勢posture情報)を取得する。かかる位置情報取得部31abにおいて得られた位置情報は、逆運動学演算部31aaへ通知される。
【0042】
液面情報取得部31bは、検知センサ21bが出力するON信号/OFF信号を適宜取得して、これら信号取得時のアーム13の位置情報等から液面高さを導出する。また、液面情報取得部31bは、導出した液面高さを液面情報32bに含んで記憶させる。
【0043】
なお、検知センサ21bは、液体を検知した場合にはON信号を、液体の上面(すなわち、液体の界面)を検知した場合にはOFF信号をそれぞれ出力するものとする。この点の詳細については、
図6A〜
図6Dを用いて後述する。
【0044】
以下、指示部31aの指示に基づいて動作するロボット10の構成、および、ロボットシステム1におけるピペッティング動作の一例について、順次詳細に説明する。
【0045】
まず、ロボット10の構成例について、
図3Aおよび
図3Bを用いて説明する。
図3Aは、ロボット10の構成を示す正面模式図であり、
図3Bは、ロボット10の構成を示す平面模式図である。
【0046】
図3Aに示すように、ロボット10は、双腕型の多軸ロボットである。具体的には、ロボット10は、基台部11と、胴部12と、右アーム13Rと、左アーム13Lとを備える。
【0047】
基台部11は、安全キャビネット2(
図1A参照)内部の床面などに固定され、先端部において胴部12を軸SWまわりに旋回が可能となるように支持する(
図3A中の軸SWまわりの両矢印参照)。
【0048】
胴部12は、基端部を基台部11によって支持され、右肩部において右アーム13Rの基端部を軸Sまわりに回動が可能となるように支持する。同様に、左肩部において左アーム13Lの基端部を軸Sまわりに回動が可能となるように支持する(いずれも図中の軸Sまわりの両矢印参照)。
【0049】
右アーム13Rおよび左アーム13Lはそれぞれ、複数個のリンクと関節部によって構成され、基端部から先端部にかけての各関節部において、軸S、軸Eおよび軸Tまわりの回動が可能となるように設けられる(図中の軸S、軸Eおよび軸Tまわりの両矢印参照)。
【0050】
また、
図3Bに示すように、右アーム13Rおよび左アーム13Lはそれぞれ、軸L、軸U、軸Rおよび軸Bまわりの回動が可能である(図中の軸L、軸U、軸Rおよび軸Bまわりの両矢印参照)。すなわち、ロボット10は、1個のアームにつき7軸を有する。
【0051】
そして、ロボット10は、制御装置30からの動作指示に基づき、かかる7軸のアーム2個分と、軸SWまわりの旋回を組み合わせた多様な多軸動作を行うこととなる。
【0052】
なお、右アーム13Rの軸Tまわりの終端可動部には右ハンド14Rが、左アーム13Lの軸Tまわりの終端可動部には左ハンド14Lが、それぞれ取り付けられる。
【0053】
つづいて、右ハンド14Rおよび左ハンド14Lの構成例について、
図4A〜
図4Dを用いて説明する。なお、本実施形態では、右ハンド14Rおよび左ハンド14Lは、左右が異なるのみでほぼ同一構成であるものとする。したがって、右ハンド14Rおよび左ハンド14Lを「ハンド14」と総称する場合がある。また、これと同様に、右アーム13Rおよび左アーム13Lを「アーム13」と総称する場合がある。
【0054】
図4Aは、ハンド14の構成を示す斜視模式図である。また、
図4Bは、把持部141の構成を示す平面模式図である。また、
図4Cは、マイクロチューブMTの把持例を示す側面模式図である。また、
図4Dは、ピペットMPの把持例を示す側面模式図である。
【0055】
図4Aに示すように、ハンド14は、把持部141(保持機構)と、基部142と、カメラ部143とを備える。かかるハンド14は、上述したように、アーム13の終端可動部に取り付けられる。
【0056】
把持部141は、互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライド可能に設けられた平行開閉式の1組の把持爪である。把持部141は、この1組の把持爪の間に把持対象物を挟み付けることによって、把持対象物を把持する。
【0057】
基部142は、かかる把持部141をスライドさせるスライド機構を含む。カメラ部143は、把持対象物の形状等を撮像して識別するといった用途に用いられる撮像デバイスである。
【0058】
また、
図4Bに示すように、把持部141には、第1凹部141aと、第2凹部141bと、第3凹部141cとが形成される。かかる第1凹部141a〜第3凹部141cは、たとえば、種別の異なる把持対象物の形状等にそれぞれ応じて形成される。
【0059】
たとえば、
図4Cに示すように、把持部141は、第1凹部141aの間においてマイクロチューブMTを把持する。なお、マイクロチューブMTは蓋部MT−Cを有しており、把持部141は、その先端部やジグ等を用いてかかる蓋部MT−Cを開閉することも可能である。以下、この蓋部MT−Cについては、説明の便宜上、図示を省略する。
【0060】
また、たとえば、
図4Dに示すように、把持部141は、第2凹部141bの間および第3凹部141cの間においてピペットMPを把持する。具体的には、ピペットMPは、ホルダMP−Hが取り付けられた状態で上述のピペット立て27(
図1A参照)に保持されており、把持部141は、かかるホルダMP−Hの把手部分を第3凹部141cの間で把持することで、ピペットMPを第2凹部141bの間に保持する。
【0061】
なお、
図4Dに示すように、ピペットMPは、チップMP−C(吸引口)と、胴部MP−Bと、尾部MP−Tとを有する。ここで、後述の説明に備え、かかるピペットMPの構成についてあらかじめ述べておく。
図5Aおよび
図5Bは、ピペットMPの構成を示す模式図(その1)および(その2)である。
【0062】
一般に知られているように、ピペットMPは、試薬や上澄み液等の吸引や注入を行うための処理用機器である。
図5Aに示すように、尾部MP−Tは、押圧されることでチップMP−Cから空気を吐出し(図中の矢印501および502参照)、胴部MP−B内へ液体を吸引するための陰圧を形成する。なお、図中の「−」(マイナス)を付した丸印は、胴部MP−B内に陰圧が形成されたことをあらわしている。
【0063】
そして、このように生じた胴部MP−B内外の気圧差によって、
図5Bに示すように、ピペットMPは、尾部MP−Tの押圧が解かれることでチップMP−Cから胴部MP−B内へ液体を吸引することとなる(図中の矢印503および504参照)。そして、胴部MP−Bは、吸引された液体を保持する。
【0064】
また、尾部MP−Tは、たとえば、スプリングといった付勢部材によって、自由状態においては非押圧状態となるように設けられている。
【0065】
なお、本実施形態のように、バイオメディカル分野における処理用機器として用いられる場合には、ピペットMPは、微量(例えば1μl〜1000μl程度)の液体の体積を精確に計量および分注可能なマイクロピペットであることが好ましい。ただし、マイクロピペットに限らず、ホールピペットや、メスピペット、駒込ピペット、パスツールピペット等であってもよい。
【0066】
図4Bの説明に戻り、把持部141の突起部141dについて説明する。把持部141は、複数個(ここでは4個)の突起部141dをさらに備える。突起部141dは、シャーレSC(
図1A参照)を保持するための部材である。
【0067】
具体的には、ロボット10は、シャーレSCを保持する際には、把持部141へシャーレSCを載置し、把持爪を閉じて、突起部141dでシャーレSCの外縁を挟み込むことによってシャーレSCを把持する。
【0068】
このように、把持部141が、第1凹部141a〜第3凹部141cや突起部141dを備えることによって、1組の把持爪であっても、複数の種別の把持対象物を把持することが可能となる。すなわち、ベンチワークにおいて用いられる多種多様な処理用機器に対し、把持部141を都度交換することなく、効率的に、ベンチワークを進めることができる。
【0069】
なお、ベンチワークにおいては、脆い素材の処理用機器が用いられることも多いため、無用な破損等を防止するうえで、第1凹部141a〜第3凹部141cや突起部141dは、たとえば、Rを付けて形成されることが好ましい。
【0070】
次に、本実施形態における液面高さの具体的な検知手法について説明する。
図6A〜
図6Dは、液面高さの検知手法の説明図(その1)〜(その4)である。なお、液体が入れられる容器は、マイクロチューブMTであるものとする。
【0071】
本実施形態では、把持部141にマイクロチューブMTを保持させたまま、マイクロチューブMTが検知センサ21bのセンシング領域SAにかかるようにアーム13を動作させて液体の界面を検知させることによって液面高さを導出する。なお、アーム13の動作は、上述の指示部31aの指示に基づく。
【0072】
具体的には、
図6Aに示すように、指示部31aは、把持部141にマイクロチューブMTを保持させつつアーム13を動作させ、発光部21baおよび受光部21bbにより光軸axoが形成されたセンシング領域SAへ進入するようにマイクロチューブMTを下降させる(図中の矢印601参照)。
【0073】
そして、
図6Bに示すように、マイクロチューブMTが光軸axoを遮り、検知センサ21bは、マイクロチューブMT内の液体を検知する。このとき、検知センサ21bからON信号が出力され、上述の液面情報取得部31b(
図2参照)によって取得される。そして、指示部31aは、アーム13にさらにマイクロチューブMTを下降させる(図中の矢印602参照)。
【0074】
そして、
図6Cに示すように、光軸axoの透過量が変化することで、検知センサ21bは、マイクロチューブMT内の液体上面(すなわち、界面)を検知する。このとき、検知センサ21bからはOFF信号が出力され、液面情報取得部31bによって取得される。
【0075】
そして、液面情報取得部31bは、かかるOFF信号を取得したときのアーム13の位置情報から、液面高さを導出する。
【0076】
つづいて、
図6Dに示すように、指示部31aは、ロボット10にチップMP−CをマイクロチューブMTに挿し込ませ、ピペットMPで液体を吸引させる。このとき、指示部31aは、吸引量aによってマイクロチューブMT内の液面高さが変化しても、かかる液面の高さ位置を略一定に保つようにアーム13(右アーム13Rおよび左アーム13Lの少なくともいずれか)の動作を調整する。
【0077】
具体的には、指示部31aは、検知センサ21bからの出力がOFF信号に保たれるように、たとえば、マイクロチューブMT内の液面が下降するのにあわせて、アーム13にマイクロチューブMTを上昇させる(図中の矢印603参照)。
【0078】
また、この間、検知センサ21bからON信号が出力されるようであれば、液面の下降速度よりもマイクロチューブMTの上昇速度が大きいので、指示部31aは、かかる上昇速度を抑制させて、検知センサ21bからの出力をOFF信号に保つ速度制御もあわせて行う。
【0079】
このようにして、本実施形態では、検知部21を用いて液体の液面高さを検知しながら、精確なピペッティングが可能となるようにロボット10の動作を制御する。これにより、精度よく再現性の高いベンチワークを実施することが可能となる。
【0080】
さらに具体的に、本実施形態におけるピペッティング動作の一例について説明する。
図7A〜
図7Hは、ピペッティング動作の一例を示す模式図(その1)〜(その8)である。
【0081】
図7Aに示すように、本実施形態ではたとえば、右ハンド14RにピペットMPを保持させるとともに、左ハンド14LにマイクロチューブMTを保持させながら、ロボット10にピペッティングを行わせる。
【0082】
このとき、ピペットMPによる液体の吸引は、ロボット10に、尾部MP−Tを治具21aの当接部21aaへ押し付けさせ、あるいは、かかる押し付けを解かせることによって行われる。
【0083】
具体的に説明する。まず、
図7Bに示すように、指示部31aは、ロボット10に右ハンド14Rの把持部141でピペットMPを保持させ、尾部MP−Tを治具21aの当接部21aaへ押し付けさせる(図中の矢印701参照)。これにより、胴部MP−Bの内部は陰圧が形成された状態となる。
【0084】
そして、
図7Cに示すように、指示部31aは、ロボット10に、左ハンド14Lの把持部141でマイクロチューブMTを保持させ、上述の検知手法(
図6A〜
図6D参照)を用いて液面高さを検知させる。また、あわせてピペットMPをマイクロチューブMTへ挿し込ませ、チップMP−Cを液面高さよりもさらに下方位置に位置付ける。
【0085】
そして、
図7Dに示すように、指示部31aは、徐々に尾部MP−Tの押し付けを解くことによってマイクロチューブMT内の液体がピペットMPに吸引されるように、ロボット10に右ハンド14R(すなわち、右アーム13R)を下降動作させる(図中の矢印702参照)。
【0086】
また、このとき、指示部31aは、ロボット10に、右アーム13Rの動作に応じて液面高さが略一定に保たれるように、たとえば、左ハンド14L(すなわち、左アーム13L)を上昇動作させて、マイクロチューブMTを上昇させる(図中の矢印703参照)。
【0087】
このように、本実施形態では、指示部31aは、尾部MP−Tを治具21aに押し付けて胴部MP−B内に陰圧を形成した状態でピペットMPをマイクロチューブMTへ挿し込み、徐々に尾部MP−Tの押し付けを解くことによって液体が吸引されるように右アーム13Rを動作させる。あわせて指示部31aは、右アーム13Rの動作に応じて液体の界面の高さ位置が略一定に保たれるように左アーム13Lの動作を調整する。
【0088】
すなわち、本実施形態では、液面高さを検知しつつ、ロボット10の右アーム13Rおよび左アーム13Lを連係して動作させ、精確に液面高さを略一定に保つ制御を行う。これにより、精確なピペッティング動作を行うことができるので、精度よく再現性の高いベンチワークを実施するのに資することができる。
【0089】
ところで、このような連係制御は、液面高さを略一定に保つとともに、
図7Eに示すように、ピペットMPのチップMP−Cの先端が液面から所定の微小量bだけ下方に保たれるように行われることが好ましい。
【0090】
このように、チップMP−Cの先端を液面から所定の位置に保つことで、
図7Fに示すように、マイクロチューブMT内で液体が上澄みlq1と沈殿物lq2との2層に分離しているような場合に上澄みlq1のみを吸引するといったピペッティングを精確に行うことが可能となる。すなわち、精度よく再現性の高いベンチワークを実施するのに資することができる。
【0091】
なお、このような分離界面の検知は、たとえば、
図7Gに示すような構成をとることで実現可能である。すなわち、発光部21ba−1および受光部21bb−1の組と、発光部21ba−2および受光部21bb−2の組とを、それぞれの光軸axo1およびaxo2が交差する(ねじれの位置を含む)ように配置する。
【0092】
そして、それぞれの組が検知する光の透過量や屈折率等の閾値を異なるものに設定すればよい。これにより、たとえば、
図7Hに示すように、上澄みlq1、沈殿物lq2および中間層lq3の3層に液体が分離しているような場合であっても、中間層lq3の液面高さを検知することが可能となる。
【0093】
そして、かかる中間層lq3の上面から所定の下方位置にチップMP−Cの先端を保つことによって、中間層lq3のみをピペッティングすることが可能となる。すなわち、精度よく再現性の高いベンチワークを実施するのに資することができる。
【0094】
ところで、これまでは、尾部MP−Tの押圧が必要なピペットMPを用いるピペッティング動作の一例を例に挙げたが、本実施形態における液面高さの検知手法は、押圧不要のバキューム吸引器ASを用いる場合にも適用可能である。
【0095】
次に、かかる場合を変形例として、
図8Aおよび
図8Bを用いて説明する。
図8Aおよび
図8Bは、ピペッティング動作の変形例を示す模式図(その1)および(その2)である。
【0096】
図8Aに示すように、ピペッティングに際しては、押圧不要のバキューム吸引器ASを用いる場合がある。たとえば、
図8Aには、右ハンド14Rにてバキューム吸引器ASを保持し、左ハンド14LにてマイクロチューブMTを保持する場合を図示している。
【0097】
かかるバキューム吸引器ASにおいては、吸引源(図示略)による吸引が行われるため、上述したような尾部MP−Tの治具21aへの押し付けを行う必要がない。このため、
図8Aに示すように、バキューム吸引器ASの姿勢を鉛直方向に沿わせることなく傾けたままで液体を吸引させることが可能である。
【0098】
そして、かかる場合、
図8Bに示すように、検知センサ21b(すなわち、発光部21baおよび受光部21bb)による液面高さの検知は、マイクロチューブMTを傾けつつ、バキューム吸引器ASの延在方向に沿って上昇させることによって行うことができる(図中の矢印801参照)。
【0099】
また、このとき、バキューム吸引器ASのチップAS−Cが、液面から所定の下方位置に略一定に保たれるように、右アーム13Rおよび左アーム13Lが連係制御されることが好ましい。
【0100】
これにより、
図8Bに示すように、たとえば、斜めに傾いたマイクロチューブMT内の液体が、上述のように上澄みlq1および沈殿物lq2の2層に分離しているような場合であっても、上澄みlq1のみをピペッティングするといった動作が可能となる。すなわち、精度よく再現性の高いベンチワークを実施するのに資することができる。
【0101】
上述してきたように、実施形態に係るロボットシステムは、検知センサと、アームと、指示部とを備える。上記検知センサは、液体の界面を検知する。上記アームは、上記液体が入れられた容器を保持する保持機構を含む。上記指示部は、上記容器を保持したままこの容器が上記検知センサのセンシング領域にかかるように上記アームを動作させて上記界面を検知させる。
【0102】
したがって、実施形態に係るロボットシステムによれば、精度よく再現性の高いベンチワークを実施することができる。
【0103】
ところで、上述した実施形態では、液体が入れられた容器がマイクロチューブである場合を主たる例に挙げたが、容器の種別を問うものではない。たとえば、シャーレであってもよいし、ビーカーであってもよい。無論、マイクロチューブ以外の試験管であってもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、ベンチワークの代表例としてピペッティングを主に採り上げたが、液体の界面を検知しつつ実施することが高い精度につながるベンチワークであれば、上述した検知手法を適用可能である。
【0105】
たとえば、容器から液体を吸引するのではなく、容器へ精確に分注するような場合に、分注された液体の液面高さを検知しながら、液面高さを略一定に保ち、かつ、ピペットの先端が上昇する液面に進入し過ぎないように、ロボットにアームの少なくともいずれか一方の動作を調整させてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態は、検査方法にも適用可能である。すなわち、検査方法が、液体の界面を検知する検知工程と、上記液体が入れられた容器を保持する保持機構を含むアームを、上記容器を保持したままこの容器が上記検知工程のセンシング領域にかかるように動作させて上記界面を検知させる指示工程とを含むこととすればよい。
【0107】
また、上述した実施形態は、被検査物の生産方法にも適用可能である。すなわち、被検査物の生産方法が、液体の界面を検知する検知工程と、上記液体が入れられた容器を保持する保持機構を含むアームを、上記容器を保持したままこの容器が上記検知工程のセンシング領域にかかるように動作させて上記界面を検知させる指示工程とを含むこととすればよい。かかる被検査物の生産方法により、たとえば、バイオメディカル分野の検体処理における被検査物を生産することができる。
【0108】
また、上述した実施形態では、ロボットが、双腕ロボットである場合を例に挙げたが、これに限られるものではない。たとえば、複数台の単腕ロボットであってもよい。
【0109】
また、上述した実施形態では、ロボットの各アームが7軸である場合を例に挙げたが、軸数を限定するものではない。
【0110】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。