特許第5928440号(P5928440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928440
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20160519BHJP
   E03D 9/06 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   E03D9/08 D
   E03D9/06
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-245924(P2013-245924)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-101941(P2015-101941A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】上村 彰博
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小薗 由寛
(72)【発明者】
【氏名】濱北 明希
(72)【発明者】
【氏名】山川 剛志
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−189321(JP,A)
【文献】 特開2008−223244(JP,A)
【文献】 実開昭60−178077(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体の内部に設けられ前記本体から便器のボウルへ向かって進出可能とされた人体洗浄ノズルと、
前記人体洗浄ノズルが前記本体の内部に格納された状態において前記人体洗浄ノズルの前方に設けられ自重により垂下する遮蔽板と、
前記本体の前記内部に設けられ、前記人体洗浄ノズルの外形部分を洗浄するノズル洗浄室と、
を備え、
前記人体洗浄ノズルは、
人体の局部を洗浄する水を噴出する人体局部噴出穴と、
前記ボウルの表面へ向かって水を噴出する便器洗浄噴出穴と、
を有し、前記本体の内部に格納された状態において前記便器洗浄噴出穴から水を噴出させ、
前記遮蔽板は、前記便器洗浄噴出穴から噴出した水の噴出範囲の外側に存在することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記便器洗浄噴出穴は、前記人体洗浄ノズルの先端部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記便器洗浄噴出穴は、前記先端部の下部に設けられたことを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記本体に設けられた便座と、
使用者が前記便座に座ったことを検知する着座検知センサと、
をさらに備え、
前記便器洗浄噴出穴から前記ボウルの表面へ向かう水の噴出は、前記着座検知センサが前記便器に着座した前記使用者あるいは前記便座の上方に存在する前記使用者を検知したときに実行されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記遮蔽板は、前記本体に対して回動可能に軸止され、
前記遮蔽板は、自重により垂下した状態において、前記本体の前面と、面一に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚物が便器のボウル部に付着することを抑制するため、使用者が便器を使用する前に、便器のボウル部を水で濡らす技術が知られている。
例えば、便器の内面に洗浄水を噴出する便器ノズルと、便器の後部側において便器ノズルの前方に設けられる便器ノズルカバーと、を有する衛生洗浄装置がある(特許文献1)。特許文献1に開示された衛生洗浄装置では、便器ノズルの位置は、電動のモータにより変化する。便器後部洗浄時には、便器ノズルから噴出された洗浄水は、便器ノズルカバーの内面に衝突する。つまり、便器ノズルカバーは、便器ノズルから噴出された洗浄水を遮ることができる。
【0003】
しかし、特許文献1に開示された衛生洗浄装置では、便器ノズルの位置が電動のモータにより変化するため、衛生洗浄装置の構造が複雑になるという問題がある。衛生洗浄装置の構造が複雑になると、衛生洗浄装置の小型化に対して弊害となるという問題がある。また、便器ノズルカバーが洗浄水を遮るため、節水という点において、エコロジーに対して弊害となるという問題がある。
【0004】
また、例えば、下部外周に便器本体の鉢面に向かって洗浄水を噴出させるプレ洗浄孔を有するノズル部が設けられているとともに、ノズル部の上面を収納位置において覆蓋するカバー突部が便器本体側に設けられている局部洗浄装置付便器がある(特許文献2)。特許文献2に開示された局部洗浄装置付便器では、ノズル部の前端は、便器側に露出している。そのため、ノズル部が汚れるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223467号公報
【特許文献2】特開平6−322806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、小型化もしくはエコロジーに対して弊害となることを抑え、またはノズルが汚れることを抑え、効率よく便器を濡らすことができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、本体と、前記本体の内部に設けられ前記本体から便器のボウルへ向かって進出可能とされた人体洗浄ノズルと、前記人体洗浄ノズルが前記本体の内部に格納された状態において前記人体洗浄ノズルの前方に設けられ自重により垂下する遮蔽板と、前記本体の前記内部に設けられ、前記人体洗浄ノズルの外形部分を洗浄するノズル洗浄室と、を備え、前記人体洗浄ノズルは、人体の局部を洗浄する水を噴出する人体局部噴出穴と、前記ボウルの表面へ向かって水を噴出する便器洗浄噴出穴と、を有し、前記本体の内部に格納された状態において前記便器洗浄噴出穴から水を噴出させ、前記遮蔽板は、前記便器洗浄噴出穴から噴出した水の噴出範囲の外側に存在することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0008】
この衛生洗浄装置によれば、遮蔽板は、便器洗浄噴出穴から噴出した水を遮ることがない。そのため、人体洗浄ノズルは、便器のボウルの表面を効率的に濡らすことができる。また、便器洗浄噴出穴から噴出した水は、便器のボウルの表面を濡らすことに有効に利用される。そのため、節水という点において、エコロジーに対して弊害となることを抑えることができる。
【0009】
また、遮蔽板は、本体の内部に格納された状態の人体洗浄ノズルの前方に設けられている。これにより、例えば便器洗浄噴出穴の詰まりなどにより噴出範囲が変わり、水が使用者の局部へ向かって噴出した場合でも、水が使用者の局部にかかったり、水が便器の外側に飛び出すことを抑制することができる。また、遮蔽板は、本体の内部に格納された状態の人体洗浄ノズルが汚れることを抑制することができる。
【0010】
遮蔽板は、自重により垂下している。そのため、例えば、水が遮蔽板に当たった場合でも、遮蔽板は、水から力を受けて押し上げられる。一方で、遮蔽板に当たった水は、便器のボウルの表面に向かって落下する。これにより、水が本体の内部に入り込むことを抑制することができる。また、本体の内部に湿気が溜まり、本体の内部に設置された電子機器に不良が生ずることを抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記便器洗浄噴出穴は、前記人体洗浄ノズルの先端部に設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0012】
この衛生洗浄装置によれば、人体洗浄ノズルは、便器のボウルの前側部分にまで水を噴出させ、ボウルの表面の略全体を濡らすことができる。また、遮蔽板は、本体の内部に格納された状態の人体洗浄ノズルよりも前方に設けられているため、便器洗浄噴出穴が例えば汚物などにより詰まることを抑制することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記便器洗浄噴出穴は、前記先端部の下部に設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
この衛生洗浄装置によれば、人体洗浄ノズルが使用者の局部を洗浄するために本体の内部から便器のボウルへ進出する際に、便器洗浄噴出穴の部分が遮蔽板と接触することを抑制することができる。そのため、便器洗浄噴出穴の部分が変形したり破損することで便器洗浄噴出穴から噴出する水の噴出範囲が変わることを抑制することができる。
【0015】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記本体に設けられた便座をさらに備え、前記便器洗浄噴出穴から前記ボウルの表面へ向かう水の噴出は、使用者が前記便座に着座したときに実行されることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0016】
この衛生洗浄装置によれば、便器洗浄噴出穴からボウルの表面へ向かう水の噴出は、使用者が便座に着座したときに実行される。そのため、使用者が便器を使用する直前に、人体洗浄ノズルは、便器のボウルの表面を水で濡らすことができる。そのため、ボウルの表面に噴出された水が乾燥しボウルの表面を濡らした効果が軽減することを抑制することができる。
【0017】
例えば、遮蔽板が設けられていない場合において、使用者が便座に着座しているときにボウルの表面への水の噴出が実行されると、便座に着座中の使用者は、水の噴出による気流の影響で、気流を感じたりあるいは冷たさを感ずることがある。
これに対して、この衛生洗浄装置では、遮蔽板が、本体に格納された状態の人体洗浄ノズルの前方に設けられている。これにより、便器洗浄噴出穴から上側の気流の影響を抑制することができる。そのため、便座に着座中の使用者が水の噴出による気流の影響で気流を感じたりあるいは冷たさを感ずることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、小型化もしくはエコロジーに対して弊害となることを抑え、またはノズルが汚れることを抑え、効率よく便器を濡らすことができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す模式的斜視図である。
図2】本実施形態のノズルユニットを表す模式図である。
図3】本実施形態の人体洗浄ノズルを表す模式的断面図である。
図4】本実施形態の人体洗浄ノズルを表す模式図である。
図5】本実施形態の便器洗浄噴出穴から噴出した水の噴出範囲を表す模式的断面図である。
図6図2に表した領域A31を拡大して眺めた模式的拡大図である。
図7】本実施形態のノズルユニットを下方から眺めた模式的平面図である。
図8】本実施形態の人体洗浄ノズルの動作の一例を例示するタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す模式的斜視図である。
図2は、本実施形態のノズルユニットを表す模式図である。
図3は、本実施形態の人体洗浄ノズルを表す模式的断面図である。
図2(a)は、本実施形態のノズルユニットを前方から眺めた模式的平面図である。図2(b)は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。
図3は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける人体洗浄ノズルの模式的断面図に相当する。
【0021】
図1に表したトイレ装置10は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、本体400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、本体400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0022】
本体400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現するノズルユニット460が設けられている。ノズルユニット460は、人体の局部を洗浄する人体洗浄ノズル470を有する。
【0023】
例えば本体400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ404は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ404としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
【0024】
着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部を操作すると、人体洗浄ノズル470を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、人体洗浄ノズル470が本体400の内部に格納された状態を表している。
【0025】
人体洗浄ノズル470が本体400の内部に格納された状態において、人体洗浄ノズル470の前方には、遮蔽板410が設けられている。遮蔽板410は、例えば本体400に対して回動可能に軸支されている。図1に表したように、遮蔽板410は、外部から力を受けていない状態では、自重により垂下している。一方、人体洗浄ノズル470が便器800のボウル801内に進出すると、遮蔽板410は、人体洗浄ノズル470により裏面411(本体400の内部の側の面)(図5参照)を押されて開く。
【0026】
図2(a)および図2(b)に表したように、本実施形態のノズルユニット460は、取付台461と、人体洗浄ノズル470と、ノズル駆動部463と、ノズル洗浄室465と、流量・流路切替弁469と、を有する。
【0027】
取付台461は、ノズルユニット460の下部に設けられ、基台として機能する。ノズル駆動部463は、例えばモータなどを有し、人体洗浄ノズル470を移動させることができる。
ノズル洗浄室465は、取付台461に対して固定され、本体400の内部に設けられている。ノズル洗浄室465は、人体洗浄ノズル470の進退時または待機時において洗浄室噴出口465aから水を吐出することにより、人体洗浄ノズル470の外形部分を洗浄することができる。
【0028】
流量・流路切替弁469は、人体洗浄ノズル470の後端部に設けられている。流量・流路切替弁469は、人体洗浄ノズル470を流れる水の流量を調整する。また、流量・流路切替弁469は、給水先(流路の接続先)を人体洗浄ノズル470およびノズル洗浄室465のいずれかに切り替えることができる。
【0029】
人体洗浄ノズル470は、取付台461に支持されている。具体的には、図2(b)に表した矢印A11のように、人体洗浄ノズル470は、ベルトなどの伝動部材467を介してノズル駆動部463から伝達される駆動力により取付台461に対して摺動可能に設けられている。すなわち、人体洗浄ノズル470は、人体洗浄ノズル470自身の軸A1の方向(進退方向)に直進移動することができる。そして、人体洗浄ノズル470は、本体400および取付台461に対して進退自在に移動できる。
【0030】
図2(b)および図3に表したように、人体洗浄ノズル470は、ノズル本体471と、ノズルカバー477と、を有する。ノズル本体471は、人体局部噴出穴473と、便器洗浄噴出穴475と、を有する。ノズルカバー477は、ノズル本体471を覆い、人体洗浄ノズル470の外形のうちの少なくとも一部を形成する。ノズルカバー477は、人体洗浄切り欠き部478と、便器洗浄切り欠き部479と、を有する。人体洗浄切り欠き部478は、人体局部噴出穴473と連通している。便器洗浄切り欠き部479は、便器洗浄噴出穴475と連通している。
【0031】
人体の局部を洗浄する洗浄水は、人体局部噴出穴473から噴出し、人体洗浄切り欠き部478を通して人体洗浄ノズル470の外部へ吐出する。人体局部噴出穴473は、人体洗浄ノズル470の上部に設けられている。例えば、人体局部噴出穴473は、第1の噴出穴473aと、第2の噴出穴473bと、第3の噴出穴473cと、を有する。例えば、人体洗浄切り欠き部478は、第1の切り欠き部478aと、第2の切り欠き部478bと、第3の切り欠き部478cと、を有する。第1の噴出穴473aから噴出した水は、第1の切り欠き部478aを通して人体洗浄ノズル470の外部へ吐出する。第2の噴出穴473bから噴出した水は、第2の切り欠き部478bを通して人体洗浄ノズル470の外部へ吐出する。第3の噴出穴473cから噴出した水は、第3の切り欠き部478cを通して人体洗浄ノズル470の外部へ吐出する。例えば、第1の噴出穴473aは、おしり洗浄の際に使用される。例えば、第2の噴出穴473bは、おしりを優しく洗浄する「やわらか洗浄」の際に使用される。第3の噴出穴473cは、ビデ洗浄の際に使用される。
【0032】
便器800のボウル801の表面を濡らす水は、便器洗浄噴出穴475から噴出し、便器洗浄切り欠き部479を通して便器800のボウル801へ向かって吐出する。図2(b)および図3に表したように、便器洗浄噴出穴475は、人体洗浄ノズル470の先端部470a(本実施形態では前方の端部)の下部に設けられている。
【0033】
本願明細書においては、便座200に座った使用者からみて上方を「上方」とし、便座200に座った使用者からみて下方を「下方」とする。また、便座200に座った使用者からみて前方を「前方」とし、便座200に座った使用者からみて後方を「後方」とする。あるいは、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて手前側を「前方」とし、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて奥側を「後方」とする。
【0034】
使用者が便座200に着座すると、人体洗浄ノズル470は、本体400の内部に格納されている状態で、便器洗浄噴出穴475から便器800のボウル801の表面へ向かって噴出させる。つまり、着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知すると、人体洗浄ノズル470が本体400の内部に格納されている状態で、便器洗浄噴出穴475から便器800のボウル801の表面へ向かって水が噴出する。これについて、さらに説明する。
【0035】
図4は、本実施形態の人体洗浄ノズルを表す模式図である。
図4(a)は、本実施形態の人体洗浄ノズルを表す模式的斜視図である。図4(b)は、図4(a)に表した切断面B−Bにおける模式的断面図である。図4(b)は、便器洗浄噴出穴が設けられた部分を拡大して表している。
なお、図4(a)および図4(b)では、説明の便宜上、ノズルカバー477を省略している。
【0036】
図4(a)に表したように、本実施形態の人体洗浄ノズル470は、第1のノズルヘッド481と、第2のノズルヘッド483と、を有する。第1のノズルヘッド481は、第2のノズルヘッド483に固定されている。第2のノズルヘッド483は、ノズル本体471の先端部(本実施形態では前方の端部)に固定されている。第1のノズルヘッド481のうちの少なくとも一部は、第2のノズルヘッド483の内部に設けられている。
【0037】
図4(b)に表したように、第1のノズルヘッド481は、洗浄水を第2のノズルヘッド483へ導く連通路481bを有する。
図4(b)に表したように、第2のノズルヘッド483は、ノズルヘッド流路483aを有する。ノズルヘッド流路483aは、第2のノズルヘッド483の内部に設けられている。第1のノズルヘッド481の連通路481bから吐出された水は、ノズルヘッド流路483aを通過する。ノズルヘッド流路483aの先端部(下流側の端部)には、テーパ部483bが形成されている。テーパ部483bの下流側の流路径は、テーパ部483bの上流側の流路径よりも大きい。
【0038】
図4(a)に表した矢印A12〜A15のように、流量・流路切替弁469を介してノズル本体471の内部の流路を通った水は、第1のノズルヘッド481へ導かれる。図4(a)に表した矢印A16〜A18のように、第1のノズルヘッド481へ導かれた水は、連通路481bおよびノズルヘッド流路483aを通過する。なお、第1のノズルヘッド481へ導かれた水は、第1のノズルヘッド481の連通路481bおよび第1のノズルヘッド481の側面を通って第2のノズルヘッド483のノズルヘッド流路483aへ導かれてもよい。
【0039】
便器洗浄噴出穴475は、ノズルヘッド流路483aを含む。ノズルヘッド流路483aの端部は、便器洗浄噴出穴475の噴出口(便器洗浄噴出口)475aを形成する。ノズルヘッド流路483aを通過した水は、便器洗浄噴出口475aを通過し便器800のボウル801の表面へ向かって噴出する。
【0040】
第1のノズルヘッド481および第2のノズルヘッド483を通過する水について、さらに説明する。
第1のノズルヘッド481は、より大きな径を有する大径部内周壁481cと、連通路481bへ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁481dと、を有する。大径部内周壁481cおよび傾斜内周壁481dが設けられた部分は、中空室とされている。傾斜内周壁481dは、その一端において連通路481bに接続されている。
【0041】
第1のノズルヘッド481から吐水された水は、直進力と旋回力とを有し、ノズルヘッド流路483aへ導かれる。ノズルヘッド流路483aは、略満水状態となっている。ノズルヘッド流路483aでは、直進流と旋回流とが混在している。ノズルヘッド流路483aにおいて直進流と旋回流とが混在した水は、ノズルヘッド流路483aの壁面およびテーパ部483bに沿って流れ、便器洗浄噴出穴475から噴出する。
【0042】
便器洗浄噴出穴475から噴出した水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水610として吐水されるが、便器洗浄噴出口475aからある程度離間した位置において粒化水流(ミスト流)620へ遷移する。具体的には、便器洗浄噴出口475aからある程度離間した位置において、便器洗浄噴出穴475から噴出した中空円錐状吐水610に亀裂が生ずる。すると、図4(b)に表したように、便器洗浄噴出穴475から噴出した中空円錐状吐水610は、便器洗浄噴出口475aからある程度離間した位置において破砕される。このようにして、便器洗浄噴出穴475から噴出した中空円錐状吐水610は、粒化水流(ミスト流)620へ遷移する。
【0043】
図5は、本実施形態の便器洗浄噴出穴から噴出した水の噴出範囲を表す模式的断面図である。
図5は、図1に表した切断面C−Cにおける模式的断面図であって、便器洗浄噴出穴475の近傍を拡大した模式的拡大図である。
【0044】
便器洗浄噴出穴475から噴出した水の噴出範囲630は、図5に表した通りである。すなわち、便器洗浄噴出穴475から噴出した水の噴出範囲630には、遮蔽板410は存在しない。言い換えれば、遮蔽板410は、便器洗浄噴出穴475から噴出した水の噴出範囲630の外側に存在する。
【0045】
これにより、遮蔽板410は、便器洗浄噴出穴475から噴出した水を遮ることがない。そのため、本実施形態の人体洗浄ノズル470は、便器800のボウル801の表面を効率的に濡らすことができる。また、便器洗浄噴出穴475から噴出した水は、便器800のボウル801の表面を濡らすことに有効に利用される。そのため、節水という点において、エコロジーに対して弊害となることを抑えることができる。
【0046】
図5に表したように、遮蔽板410は、本体400の内部に格納された状態の人体洗浄ノズル470よりも前方に設けられている。これにより、例えば便器洗浄噴出穴475の詰まりなどにより噴出範囲630が変わり、水が使用者の局部へ向かって噴出した場合でも、水が使用者の局部にかかったり、水が便器800の外側に飛び出すことを抑制することができる。また、遮蔽板410は、本体400の内部に格納された状態の人体洗浄ノズル470が汚れることを抑制することができる。
【0047】
図1に関して前述したように、遮蔽板410は、外部から力を受けていない状態では、自重により垂下している。そのため、例えば、水が遮蔽板410の裏面411に当たった場合でも、遮蔽板410は、水から力を受けて押し上げられる。一方で、遮蔽板410の裏面411に当たった水は、便器800のボウル801の表面に向かって落下する。これにより、水が本体400の内部に入り込むことを抑制することができる。また、本体400の内部に湿気が溜まり、本体400の内部に設置された電子機器に不良が生ずることを抑制することができる。
【0048】
便器洗浄噴出穴475は、人体洗浄ノズル470の先端部470a(本実施形態では前方の端部)に設けられている。これにより、人体洗浄ノズル470は、便器800のボウル801の前側部分にまで水を噴出させ、ボウル801の表面の略全体を濡らすことができる。また、遮蔽板410は、本体400の内部に格納された状態の人体洗浄ノズル470よりも前方に設けられているため、便器洗浄噴出穴475が例えば汚物などにより詰まることを抑制することができる。
【0049】
また、便器洗浄噴出穴475は、人体洗浄ノズル470の先端部470aの下部に設けられている。これにより、人体洗浄ノズル470が使用者の局部を洗浄するために本体400の内部から便器800のボウル801へ進出する際に、便器洗浄噴出穴475の部分が遮蔽板410と接触することを抑制することができる。そのため、便器洗浄噴出穴475の部分が変形したり破損することで水の噴出範囲630が変わることを抑制することができる。
【0050】
図5に表したように、ノズルカバー477の先端部477aは、湾曲した形状を有する。ノズルカバー477の先端部477aにおける中心部は、ノズルカバー477の先端部477aにおける外周部よりも進出方向の位置に存在する。つまり、ノズルカバー477の先端部477aにおける中心部は、ノズルカバー477の先端部477aにおける外周部よりも進出方向へ突出している。前述したように、便器洗浄噴出穴475は、人体洗浄ノズル470の先端部470aの下部に設けられている。これにより、便器洗浄噴出穴475から噴出した水は、ノズルカバー477の先端部477aにより、上側へ浮遊することを抑制される。また、局部洗浄中の汚れが便器洗浄噴出穴475に付着することを抑制することができる。さらに、便器洗浄噴出穴475から上側の気流の影響を抑制することができるため、使用者の着座時あるいは着座中に水が便器洗浄噴出穴475から噴出しても、使用者が気流を感じたりあるいは冷たさを感ずることを抑制することができる。
【0051】
図6は、図2に表した領域A31を拡大して眺めた模式的拡大図である。
図6に表したように、便器洗浄噴出穴475の軸A2と水平面810との間のなす角度θ2は、人体洗浄ノズル470の軸A1と水平面810との間のなす角度θ1よりも大きい。このとき、角度θ1、θ2は、0度以上90度以下の範囲で規定されるものとする。人体洗浄ノズル470の軸A1は、人体洗浄ノズル470の進退方向と平行である。水平面810は、例えば便器800の上面803(図1参照)やトイレ室の床面などであり、上下方向に対して略垂直な面をいう。
【0052】
これにより、水は、便器洗浄噴出穴475から便器800のボウル801の表面へ向かってより確実に噴出される。そのため、人体洗浄ノズル470は、比較的広い範囲のボウル801の表面を濡らすことができる。また、便座200あるいはトイレ室の床などが水で濡れることを抑制することができる。
【0053】
図7は、本実施形態のノズルユニットを下方から眺めた模式的平面図である。
図7(a)は、本実施形態のノズルユニットを下方から眺めた模式的平面図である。図7(b)は、図7(a)に表した領域A32を拡大して眺めた模式的平面図である。
【0054】
図6図7(a)、および図7(b)に表したように、便器洗浄噴出穴475の軸A2(図6参照)に対して垂直な方向における便器洗浄噴出穴475の断面形状は、略円形である。一方で、図7(a)および図7(b)に表したように、便器洗浄噴出穴475の軸A2にみたときの便器洗浄切り欠き部479の形状は、非円形である。例えば、便器洗浄噴出穴475の軸A2にみたときの便器洗浄切り欠き部479の形状は、扁平な円形である。例えば、便器洗浄噴出穴475の軸A2にみたときの便器洗浄切り欠き部479の形状は、略楕円形である。この略楕円形状は、便器洗浄噴出穴475からの円錐状の噴霧範囲に相当する形状である。
【0055】
これによれば、図5に関して前述したようにノズルカバー477の先端部477aが湾曲した形状を有する場合でも、便器洗浄噴出穴475から噴出した水がノズルカバー477に当たることを抑制することができる。そのため、水は、便器800のボウル801の表面の所望の範囲に効率よく噴出する。
【0056】
図8は、本実施形態の人体洗浄ノズルの動作の一例を例示するタイミングチャート図である。
着座検知センサ404が便座200に着座した使用者あるいは便座200の上方に存在する使用者を検知すると、人体洗浄ノズル470は、本体400の内部に格納されている状態で、便器洗浄噴出穴475から便器800のボウル801の表面へ向かって水を噴出させる(タイミングt1)。続いて、予め設定された所定の時間が経過すると、人体洗浄ノズル470は、便器洗浄噴出穴475からの水の噴出を停止させる(タイミングt2)。続いて、使用者が便座200から離れると、着座検知センサ404は、使用者を検知しなくなる(タイミングt3)。
【0057】
本実施形態によれば、便器800のボウル801の表面への水の噴出は、使用者が便座200に着座したときに実行される。そのため、使用者が便器800を使用する直前に、人体洗浄ノズル470は、便器800のボウル801の表面を水で濡らすことができる。そのため、ボウル801の表面に噴出された水が乾燥しボウル801の表面を濡らした効果が軽減することを抑制することができる。
【0058】
例えば、遮蔽板410が設けられていない場合において、使用者が便座200に着座しているときにボウル801の表面への水の噴出が実行されると、便座200に着座中の使用者は、水の噴出による気流の影響で、気流を感じたりあるいは冷たさを感ずることがある。
これに対して、本実施形態では、遮蔽板410が、本体400に格納された状態の人体洗浄ノズル470の前方に設けられている。これにより、便器洗浄噴出穴475から上側の気流の影響を抑制することができる。そのため、便座200に着座中の使用者が水の噴出による気流の影響で気流を感じたりあるいは冷たさを感ずることを抑制することができる。
【0059】
また、図5に関して前述したように、便器洗浄噴出穴475は、人体洗浄ノズル470の先端部470aの下部に設けられている。これにより、人体洗浄ノズル470は、比較的広い範囲のボウル801の表面を濡らすことができる。そのため、使用者が便器800を使用する前に、人体洗浄ノズル470が便器洗浄噴出穴475から便器800のボウル801の表面へ向かって水を噴出させることで、汚物が便器800のボウル801の表面に付着することを効率的に抑制することができる。
【0060】
また、便器洗浄噴出穴475が人体洗浄ノズル470の先端部470aの下部に設けられているため、便器800のボウル801の表面と便器洗浄噴出穴475が設けられた部分との間の距離は、比較的短い。そのため、便器洗浄噴出穴475から噴出した水がミスト状になり浮遊することを抑制することができる。そのため、便座200あるいはトイレ室の床などが水で濡れることを抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノズルユニット460および人体洗浄ノズル470などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや第1のノズルヘッド481および第2のノズルヘッド483の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
10 トイレ装置、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 本体、 404 着座検知センサ、 410 遮蔽板、 411 裏面、 460 ノズルユニット、 461 取付台、 463 ノズル駆動部、 465 ノズル洗浄室、 465a 洗浄室噴出口、 467 伝動部材、 469 流路切替弁、 470 人体洗浄ノズル、 470a 先端部、 471 ノズル本体、 473 人体局部噴出穴、 473a 第1の噴出穴、 473b 第2の噴出穴、 473c 第3の噴出穴、 475 便器洗浄噴出穴、 475a 便器洗浄噴出口、 477 ノズルカバー、 477a 先端部、 478 人体洗浄切り欠き部、 478a 第1の切り欠き部、 478b 第2の切り欠き部、 478c 第3の切り欠き部、 479 便器洗浄切り欠き部、 481 第1のノズルヘッド、 481b 連通路、 481c 大径部内周壁、 481d 傾斜内周壁、 483 第2のノズルヘッド、483a ノズルヘッド流路、 483b テーパ部、 610 中空円錐状吐水、 620 粒化水流、 630 噴出範囲、 800 便器、 801 ボウル、 803 上面、810 水平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8