(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)架橋樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を含む樹脂が(D)架橋剤を介して架橋されたものである請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を含む請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記フィルム成形工程、前記溶融紡糸工程および前記射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)のメルトフローレイトは、10〜100g/10分であり、
前記メルトフローレイトは、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を130℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、試験温度275℃、荷重325gの条件下でISO1133に準拠した手法で測定したものである請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記フィルム成形工程、前記溶融紡糸工程および前記射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)の昇温時結晶化温度は、140℃〜160℃である請求項5または6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記積層フィルムを粉砕および/または造粒した後、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に配合して溶融混練する請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、1,4−ブタンジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体とを重縮合することによって得られる重合体である。テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルなどが挙げられる。1,4−ブタンジオールのエステル形成性誘導体としては、例えば、1,4−ブタンジオールエステルなどのジオールのアルキルエステルなどが挙げられる。
【0017】
本発明にかかる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、特性を損なわない範囲であれば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とともに、他のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を1,4−ブタンジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体と共重合したものであってもよい。また、1,4−ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体とともに、他のジオールまたはそのエステル形成性誘導体をテレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と共重合したものであってもよい。共重合成分として用いられるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸やこれらのアルキルエステルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、共重合成分として用いられるジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、分子量400〜6000のポリエチレングリコールやポリ1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの長鎖グリコールやこれらの脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これら共重合成分は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を形成する原料の20質量%以下が好ましい。
【0018】
このような共重合体の好ましい例としては、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられる。本発明にかかる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、これらを2種以上配合して用いてもよい。
【0019】
本発明に用いられる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールおよび/またはそのエステル形成性誘導体を重縮合することによって得られる重合体である。テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成するテレフタル酸のエステル形成性誘導体として例示したものが挙げられる。エチレングリコールのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
本発明にかかる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、特性を損なわない範囲であれば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体ともに、他のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体をエチレングリコールおよび/またはそのエステル形成性誘導体と共重合したものであってもよい。また、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とともに、他のジオールまたはそのエステル形成性誘導体をテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と共重合したものであってもよい。共重合成分として用いられるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する共重合成分として例示したものが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これら共重合成分は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を形成する原料の20質量%以下が好ましい。
【0021】
このような共重合体の好ましい例としては、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナフタレート)等が挙げられる。本発明にかかる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、これらを2種以上配合して用いてもよい。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して10〜70質量部である。(B)成分の配合量が70質量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の固化速度が著しく遅くなるため、成形サイクルが長くなる、すなわちハイサイクル成形性が低下する。65質量部以下が好ましい。また、(B)成分の配合量が10質量部未満であると、固化速度が速いため、金型転写性が低下することから成形品の表面外観が低下する。15質量部以上が好ましい。
【0023】
本発明に用いられる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができる。バッチ重合法および連続重合法のいずれを適用してもよいが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、流動性向上効果がより大きくなるという点で、連続重合法が好ましい。また、エステル交換反応および直接重合反応のいずれを適用してもよいが、コストの点で、直接重合反応が好ましい。エステル化反応、エステル交換反応および/または重縮合反応を効率よく進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましい。触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルがより好ましい。触媒の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂または(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.01〜0.2質量部が一般的である。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂が、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を含むことが好ましい。これらの工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)は、これらの工程を経ていないバージンのポリエチレンテレフタレート樹脂と比較して、熱履歴を多く受けているため、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上する。ポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)は、前記工程を複数回経てもよいし、2種以上の工程を経てもよいが、工程回数および工程種類が多ければ多いほど、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する。同様に、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂も、フィルム成形工程、溶融紡糸工程または射出成形工程を経ることにより流動性が向上するため、本発明の熱可塑性樹脂組成物として、フィルム成形工程、溶融紡糸工程または射出成形工程を経たポリブチレンテレフタレート樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)、またはポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を含む(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂のメルトフローレイト(以下、MFRとする)は、10〜100g/10分が好ましい。MFRが10g/10分以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する。12g/10分以上がより好ましい。一方、MFRが100g/10分以下であれば、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物により形成された成形品の機械物性が向上する。90g/10分未満がより好ましい。ここで、本発明におけるMFRは、予め130℃で4時間乾燥したペレットを用い、ISO1133に準拠して試験温度275℃、荷重325gの条件下で測定した時に、流れ出るポリマー量をいう。かかる範囲のMFRを有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)は、例えば、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たものであればよいが、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を粉砕機に投入し、フレーク状に粉砕したものを使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)の粉砕工程の回数が多いほど、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)のMFR値が高くなる傾向にある。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)、またはポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を含む(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の昇温時結晶化温度(以下、Tccとする)は、140〜160℃が好ましい。Tccがこの範囲内であれば、結晶成長速度が成形加工により適した範囲となり、成形性がより向上する。ここで、本発明におけるTccは、小型のホットプレスなどを用いて270℃以上の熱を加えて溶融させた直後に、液体窒素などの冷却溶媒に投入して急冷させたサンプルを、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で40℃〜300℃まで昇温させたときの吸熱ピークの値をいう。かかる範囲のTccを有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)は、例えば、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たものであればよいが、フィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)を粉砕機に投入し、フレーク状に粉砕した後、造粒機に投入し、回転ローラーで圧力をかけながら押し固めて吐出したものを使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)の造粒時に加熱すると、Tccは下がる傾向にあり、冷却するとTccは上がる傾向にある。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに(C)架橋樹脂を含むことを特徴とする。本発明の熱可塑性樹脂組成物が(C)架橋樹脂を含むことにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物中で(C)架橋樹脂が結晶核となるため、固化速度が速くなり、ハイサイクル成形性が向上する。(C)架橋樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などの、樹脂単独で架橋することができる熱硬化性樹脂や、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの、さらに架橋剤と組み合わせることにより架橋する熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂をさらに架橋剤と組み合わせて架橋させることもできる。
【0028】
本発明に用いられる(C)架橋樹脂は、(D)架橋剤を介した架橋構造を有する樹脂を含むことが好ましい。(D)架橋剤を介した架橋構造を有する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが(D)架橋剤を介して架橋された樹脂が挙げられる。本発明に用いられる(C)架橋樹脂として、これらを2種以上用いてもよい。
【0029】
本発明にかかる(C)架橋樹脂としてポリエステル樹脂、またはポリエステル樹脂が架橋剤を介して架橋された樹脂を使用する場合、ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、カルボン酸塩基またはスルホン酸塩基を含む水溶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、(C)架橋樹脂としてアクリル樹脂が架橋剤を介して架橋された樹脂を使用する場合、アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステルの重合体、アルキル酸アルキルエステルの重合体などが挙げられる。ウレタン樹脂は、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応生成物である。(C)架橋樹脂としてウレタン樹脂またはウレタン樹脂が架橋剤を介して架橋した樹脂を使用する場合、ポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールなど、イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンイソシアネート、フェニレンイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネートなどであり、ウレタン樹脂としては、上記したポリオール化合物とイソシアネート化合物の任意の反応生成物が挙げられる。
【0030】
(C)架橋樹脂としてエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂が架橋剤を介して架橋した樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ポリエチレンオキシド型エポキシ樹脂などが挙げられる。(C)架橋樹脂としてシリコーン樹脂またはシリコーン樹脂が架橋剤を介して架橋した樹脂を使用する場合、シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、ポリエチレン変性ポリシロキサン、ポリプレンオキシド変性ポリシロキサンなどが挙げられる。(C)架橋樹脂として尿素樹脂または尿素樹脂が架橋剤を介して架橋した樹脂を使用する場合、シリコーン樹脂としては、例えば、メチル化尿素樹脂、チオ尿素樹脂、エチレン尿素樹脂、ジメチロール尿素樹脂、メチロール尿素樹脂などが挙げられる。(C)架橋樹脂としてフェノール樹脂またはフェノール樹脂が架橋剤を介して架橋した樹脂を使用する場合、フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0031】
本発明で使用する(C)架橋樹脂としては、これらの中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を含む樹脂が(D)架橋剤を介して架橋された樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂との相溶性が高い。したがって、得られる熱可塑性樹脂組成物中に均一に分散するため、熱可塑性樹脂組成物の結晶性が向上し、成形サイクルが短くなる、即ちハイサイクル成形性がより向上する。
【0032】
本発明に用いられる(D)架橋剤としては、例えば、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられる。本発明に用いられる(D)架橋剤として、これらを2種以上用いてもよい。
【0033】
オキサゾリン系架橋剤は、オキサゾリン基を有する化合物であり、(D)架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤を使用する場合、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。
【0034】
メラミン系架橋剤は、イミノ基、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を有するメラミン化合物であり、(D)架橋剤として、メラミン系架橋剤を使用する場合、例えば、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、完全アルキル基型メチル化メラミンなどが挙げられる。カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基またはシアナミド基を1個以上有する化合物であり、(D)架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を使用する場合、例えば、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、ウレア変性カルボジイミドなどが挙げられる。(D)架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を使用する場合、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートなどが挙げられる。(D)架橋剤としてエポキシ系架橋剤を使用する場合、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、オキサゾリン系架橋剤および/またはメラミン系架橋剤が好ましい。オキサゾリン系架橋剤およびメラミン系架橋剤は、前述のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂との反応性に優れていることから、これらの樹脂に架橋構造を容易に形成することができる。
【0036】
(C)架橋樹脂が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を含む樹脂が(D)架橋剤を介して架橋された樹脂である場合、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の総量と(D)架橋剤との配合比(質量比)は、98/2〜52/48であることが好ましい。樹脂の配合比を98以下、架橋剤の配合比を2以上とすることにより、(C)架橋樹脂の結晶核としての効果が高まり、ハイサイクル成形性がより向上する。一方、樹脂の配合比を52以上、架橋剤の配合比を48以下とすることにより、(C)架橋樹脂の粘度を適度に抑えることができるので取り扱い性が優れる。ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の総量と(D)架橋剤との配合比は、より好ましくは85/15〜65/35である。
【0037】
また、本発明に用いられる(C)架橋樹脂は、前述のフィルム成形工程、溶融紡糸工程および射出成形工程からなる群から選ばれる少なくとも1種の工程を経たポリエチレンテレフタレート樹脂(B1)に由来するものであることが好ましく、積層フィルムに由来するもの、すなわち、少なくとも一部の層が(C)架橋樹脂により形成されている積層フィルムであることがより好ましい。さらに、積層フィルムの基材フィルムとしてポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレンテレフタレートを使用し、該基材フィルムの少なくとも片面に(C)架橋樹脂を含む層が形成された積層フィルムを使用することが特に好ましい。積層フィルムは成形時に加熱され、熱履歴を多く受けているため、該積層フィルムを(C)架橋樹脂の材料として選択した場合、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上し、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上する。積層フィルムは、基材であるポリブチレンテレフタレートフィルムおよび/またはポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも片面に、接着性、耐溶剤性を付与するため各種樹脂層を有する場合が多く、本発明においては、接着性、耐溶剤性を付与する樹脂層として(C)架橋樹脂を含む層を有することが好ましい。また、フィルム材料中に(C)架橋樹脂が添加されフィルム成形されたものや、(C)架橋樹脂が添加または塗布された樹脂材料を、溶融紡糸、射出成形されたものも、(C)架橋樹脂として使用することができる。(C)架橋樹脂が添加等される樹脂材料は、ポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0038】
さらに、本発明に用いられる(C)架橋樹脂は、少なくとも(C)架橋樹脂を含む層が形成された積層フィルムを、粉砕および/または造粒したものであることが好ましい。積層フィルムを、粉砕および/または造粒することにより、溶融混練時の原料投入が容易となり、溶融混練性が向上する。
【0039】
なお、熱可塑性樹脂組成物中に含有される(C)架橋樹脂は、例えば、赤外吸収分析、示差走査熱量測定などにより特定することができる。
【0040】
本発明に用いられる(C)架橋樹脂の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.0001〜10質量部である。(C)架橋樹脂の配合量が10質量部を超えると流動性が低下するため、成形サイクルが長くなり、ハイサイクル成形性が低下する。8質量部以下が好ましい。また、(C)架橋樹脂の配合量が0.0001質量部未満であると、固化速度が低下するため、成形サイクルが長くなり、ハイサイクル成形性が低下する。0.0005質量部以上が好ましい。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(C)架橋樹脂以外の樹脂、臭素系難燃剤などのハロゲン難燃剤、リン系難燃剤などの非ハロゲン難燃剤、ガラス繊維などの繊維強化材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を配合してもよい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型両性界面活性剤、ベイタン型両性界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤、グリシン型界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に界面活性剤を配合することにより、(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂との相溶性、および分散性を向上することができる。なお、熱可塑性樹脂組成物中に配合されるこれら界面活性剤成分は、例えば、熱可塑性樹脂組成物の赤外吸収分析、示差走査熱量測定などにより特定することができる。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(C)架橋樹脂および必要によりその他成分を溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物が調製される。本発明においては、(C)架橋樹脂をそのまま配合してもよいし、ポリブチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも片面に(C)架橋樹脂を含む層を有する積層フィルムを加えることにより(C)架橋樹脂を配合してもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも片面に(C)架橋樹脂を含む層を有する積層フィルムを配合することが好ましい。熱履歴を多く受けている積層フィルムを配合すると、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上するため、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上する。この場合、前記積層フィルムを粉砕および/または造粒した後、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂とともに溶融混練することが好ましい。(C)架橋樹脂を含む層を有する積層フィルムを粉砕および/または造粒した後溶融混練した場合、溶融混練時の原料投入が容易となり、溶融混練性が向上する。溶融混練には、例えば“ユニメルト(登録商標)”あるいはダルメージタイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機などの多軸押出機、ニーダータイプの混練機などを用いることができる。
【0043】
必要により、一部成分を予備混合した後、他の成分を配合して溶融混練してもよい。予備混合の例として、ドライブレンドする方法、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合する方法などが挙げられる。また、繊維強化材を配合する場合は、多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加してもよい。また、液体の添加剤を配合する場合は、多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してブランジャーポンプにより添加する方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法などを用いることができる。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0045】
以下実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。ここで部とはすべて質量部を表す。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0046】
(1)MFR測定方法
各実施例および比較例に用いる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を130℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、試験温度270℃、荷重325gの条件下でISO1133に準拠した手法で、流れ出た樹脂量を測定した。
【0047】
(2)Tcc測定方法
各実施例および比較例に用いる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、温度270℃に設定した小型のホットプレスに載せ、加圧して溶融させた。その直後、溶融したペレットを液体窒素に投入し、冷却した。冷却したペレットを、示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度20℃/分で40℃〜300℃まで昇温させたときの吸熱ピークを測定した。
【0048】
(3)表面外観の評価
各実施例および比較例により得られたペレットを130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度265℃、金型温度80℃の条件で80mm×80mm×厚み3mmの角板を射出成形した。射出成形後の角板の外観を目視観察し、表面外観を評価した。
○:光沢があり、表面に凹凸が確認されない。
△:光沢がなく、表面に凹凸が確認されない。
×:光沢がなく、表面に凹凸が確認される。
【0049】
(4)ハイサイクル成形性の評価
各実施例および比較例により得られたペレットを130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度265℃、金型温度80℃の条件で縦30mm×横30mm×高さ30mm×厚み1.5mmの四角い小箱を射出成形した。射出時間と冷却時間を変化させてサイクル秒数を35秒から22秒まで1秒ずつ短くしながら射出成形し、末端まで充填された小箱を突き出した時の小箱の変形有無を目視で判定した。小箱が最初に変形した時の成形サイクル秒数を計測した。
【0050】
(5)流動性の評価
各実施例および比較例により得られたペレットを130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度265℃、金型温度80℃、射出圧力20MPaの条件で厚み3mm、幅10mmの短冊型成形を行い、成形品の長さを測定した。
【0051】
(6)引張ひずみの評価
各実施例および比較例により得られたペレットを130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度265℃、金型温度80℃の条件で厚さ4mmのISOダンベルの射出成形を行い、ISO527−1、2に従い引張ひずみを測定した。
【0052】
また、実施例、比較例で使用する原料の略号および内容を以下に示す。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート(東レ製“トレコン(登録商標)”1100M)
(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂(B−2〜B−11は、シリコーン系架橋樹脂(C−6、LTC−300B)を含む)
B−1:ポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ製“テトロン(登録商標)”T900E)
B−2:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部に溶剤型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン製LTC−300B)をシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕、造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を1回行った。)
B−3:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を160℃に制御)を3回行った。)
B−4:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を110℃に制御)を3回行った。)
B−5:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を20回行った。)
B−6:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を20回行った。)
B−7:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を110℃に制御)を20回行った。)
B−8:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を2回行った。)
B−9:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕、造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を3回行った。)
B−10:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を18回行った。)
B−11:ポリエチレンテレフタレート(F20K100質量部にLTC−300Bをシリコーン樹脂の割合が1質量部となるよう添加し、フィルム成形した後、粉砕および造粒(造粒時の温度を130℃に制御)を10回行った。)
B−12:ポリエチレンテレフタレート樹脂(バージン、MFR8g/10分、Tcc135℃)
【0053】
(C)架橋樹脂
C−1:酸成分としてテレフタル酸30質量部、トリメリット酸20質量部、グリコール成分としてエチレングリコール50質量部を公知の方法により重縮合し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。ここに、オキサゾリン系架橋剤(2−ビニル−2−オキサゾリン)15質量部を添加し、270℃で10分間混練することにより、ポリエステル樹脂がオキサゾリン系架橋剤を介して架橋された架橋樹脂を得た。
C−2:アクリル樹脂(メタクリル酸アルキルエステル)100質量部にオキサゾリン系架橋剤(2−ビニル−2−オキサゾリン)15質量部を添加し、150℃で10分間混練することにより、アクリル樹脂がオキサゾリン系架橋剤を介して架橋された架橋樹脂を得た。
C−3:ウレタン樹脂100質量部にオキサゾリン系架橋剤(2−ビニル−2−オキサゾリン)15質量部を添加し、220℃で10分間混練することにより、ウレタン樹脂がオキサゾリン系架橋剤を介して架橋された架橋樹脂を得た。
C−4:ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂を公知の方法により溶融押出(押出温度270℃)して積層フィルムを形成した。得られた積層フィルムに、上記C−1(ポリエステル樹脂がオキサゾリン系架橋剤を介して架橋された架橋樹脂)の50質量%水溶液を塗布・乾燥した。得られた積層フィルムを粉砕機でフレーク状に粉砕し、さらに造粒機で押し固めて造粒した。
C−5:酸成分としてテレフタル酸30質量部、トリメリット酸20質量部、グリコール成分としてエチレングリコール50質量部を公知の方法により重縮合し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。ここに、メラミン系架橋剤(メチロール化メラミン)15質量部を添加し、270℃で10分間混練することにより、ポリエステル樹脂がメラミン系架橋剤を介して架橋された架橋樹脂を得た。
【0054】
(D)硫酸バリウム
D−1:硫酸バリウム(メジアン径0.8μm)
【0055】
[実施例1〜24、比較例1〜7]
表1〜5に示す質量部の各成分をバレル温度260℃に設定したスクリュー径57mmφの二軸押出機で溶融混練を行った。ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。
各実施例、比較例の組成および評価結果を表1〜5に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1に示すように、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の配合量が同じである実施例2〜5によれば、(C)架橋樹脂の配合量が0.0005〜8質量部の範囲内である実施例3および4が、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上することがわかった。
また、実施例1、3、6、7のように(C)架橋樹脂の種類および配合量が同じ場合、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の配合量が15〜65質量部の範囲内である実施例3および6が、成形品の表面外観に優れるとともに、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上する。
さらに、実施例3、8〜11のように(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(C)架橋樹脂の配合量が同じ場合、(C)架橋樹脂が積層フィルム由来の実施例10が、流動性が向上することにより、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上することがわかった。
表1および2に示すように、比較例1は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、および(C)架橋樹脂の種類および配合量が同じ実施例1、3、6および7と比べて、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の量が少ないため、成形品の表面外観が悪い。
また、比較例2は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、および(C)架橋樹脂の種類および配合量が同じ実施例1、3、6および7と比べて、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の量が多いため、成形サイクルが長く、ハイサイクル成形性に劣る。
比較例3、4は、(C)架橋樹脂を含まないため成形サイクルが長く、ハイサイクル成形性に劣る。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
表4に示すように、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂のTccが同じ実施例18〜21によれば、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂のMFRが10〜100g/10分、より好ましくは12g/10分以上90g/分未満の範囲内である実施例19、21は、流動性と成形品の機械物性に優れることから、成形サイクルを短くでき、ハイサイクル成形性がより向上することがわかる。
表3および4に示すように、実施例12〜17に比べて、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂のMFRおよびTccが好ましい範囲内にある実施例18〜24は、流動性に優れることから、成形サイクルが短く、ハイサイクル成形性がより向上する。
また、実施例22〜24によれば、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して15質量部以上65質量部以下である実施例23は、ハイサイクル成形性と成形品の表面外観がより向上することが分かる。
表5に示すように、比較例5は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の量が少ないため、成形品の表面外観が悪い。
また、比較例6は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の量が多いため、成形サイクルが長く、成形性に劣る。
比較例7は、(C)架橋樹脂を含まないため成形サイクルが長く、ハイサイクル成形性に劣る。