(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は眼内レンズ挿入器具(以下、インジェクターと記す)10の外観斜視図である。
図2は、押出部材(以下、プランジャーと記す)40の構成の説明図である。
図3A、3Bはインジェクター10の側面図である。
図4A〜4Cは眼内レンズ保持部の構成の説明図であり、眼内レンズ1と各構成要素の斜視図が示されている。
【0011】
インジェクター10は、眼内レンズ1を眼内に注入するための本体10aと、未使用の眼内レンズ1を保持(保管)するための眼内レンズ保持部100とから構成される。本体10aは、眼内レンズ1を小さく折り畳む中空状の挿入筒部(以下、挿入部と記す)20と、挿入部20を先端に備える中空状の筒部30と、筒部30に対して前後方向に移動可能に取り付けられ,眼内レンズ1を眼内へと押し出すためのプランジャー40から構成される。
【0012】
挿入部20は、先端21aを有する略円筒形状の挿入筒21、使用時に眼内レンズ1が置かれる載置台22、眼内レンズ保持部100に保持された眼内レンズ1を載置台22側へと通過させるための開口部23を備える。なお、載置台22は挿入部20の基端側に設けられ、開口部23は載置台22の近辺に設けられる。本実施形態では開口部23は載置台22の上方に設けられているとする。挿入筒21は先端21aに向けて内径が徐々に小さく(細く)なるテーパ形状に形成されている。開口部23は、眼内レンズ保持部100で保持された眼内レンズ1が本体10a側へと移動される際に、破損などの不具合の生じない広さ(形状)に形成されている。例えばここでは開口部23の端23aは、眼内レンズ保持部100から押出された眼内レンズ1が開放状態(応力がかけられていない状態)で通過できる範囲の外側の位置に設けられる。開口部23を介して載置台22に置かれた眼内レンズは、プランジャー40による押出によって挿入筒21の内部を通過しながら、その内壁形状に沿って小さく折り曲げられ、先端21aから送出される。
【0013】
眼内レンズ保持部100は、挿入筒21の先端21a側に設けられた接続部25を介して本体10aに対して回動可能に取り付けられている。また眼内レンズ保持部100の開口部23に接触(接続)される側には、開口部23と閉じ合う形状に形成された保持手段(保持部材)である蓋部110が用意されている(
図3B参照)。これにより眼内レンズ保持部100が本体10aに接近する方向に回動され、蓋部110と開口部23が閉じ合わせられると、本体10a内が密閉される。なおここでの図示は省略するが、蓋部110と開口部23は係止部を介して閉じ合わせられるとする。
【0014】
一方、眼内レンズ保持部100が本体10aに対して離れる方向に回動されると、開口部23が開き、載置台22(又は、眼内レンズ1が接触される挿入筒21の内壁)が現れ、開口部23から載置台22に粘弾性物質を塗布できる状態となる。
【0015】
また、眼内レンズ保持部100の蓋部110(開口部23に閉じ合わせられる側)は、規制手段(規制部材)である保持部111、112を備え(
図4B参照)、保持部111、112によって眼内レンズ1がプランジャー40の押出軸L外で保持される。なおプランジャー40の押出軸Lとは、眼内レンズ1を眼内へと押し出す際に、プランジャー40が前後方向に進退移動されるときの軸である。
これにより蓋部110と開口部23が閉じ合わせられると、本体10a内が密閉されると共に、眼内レンズ1が載置台22上の押出軸L外に位置される。このような眼内レンズ保持部100の構成の詳細な説明は後述する。
【0016】
接続部25には、眼内レンズ保持部100を本体10aに対して回動可能に開閉できる強度を有するものが使用される。例えば、周知のヒンジ等が使用される他、本体10aと眼内レンズ保持部100を同一素材の薄い屈曲部で接続しても良い。
【0017】
プランジャー40は術者に押圧される押圧部41、押圧部41に接続される軸基部42、軸基部42に接続される押出棒43、押出棒43の先端に接続されて眼内レンズ1の押出時に光学部に当接される先端44から構成される。これによりプランジャー40は筒部30から挿入部20の先端まで繋がる通路を押出軸Lに沿って進退可能に挿通される。
【0018】
次に眼内レンズ保持部100の構成を説明する。
図4A〜4Cにおいて、眼内レンズ保持部100は、眼内レンズ1が保持される蓋部110と、蓋部110に保持されている眼内レンズ1の保持を解除して、載置台22上に向けて押し込むための複数の押込部を有する押込部材(押込手段)120との組み合わせで構成される。なお、
図4A〜4Cでは蓋部110に保持される眼内レンズ1のレンズ面の裏面側を上側とした状態(
図1と逆向きの状態)が示されている。
【0019】
なお
図4Aでは、眼内レンズ1として、光学部1aと一対の支持部1bとが柔軟な素材で一体成形されたワンピースタイプの眼内レンズが示されている。これ以外にも、眼内レンズ1としては、インジェクター10を用いて折り曲げ可能な周知のものが使用される。例えば、光学部と一対の支持部とを別部材で形成した後、一体化される3ピースタイプの眼内レンズ等が使用されても良い。
【0020】
蓋部110の本体10a側に位置される設置面110aには、眼内レンズ1を保持するために設置面110aに対して垂直方向に伸びる柱状の保持部111、112が設けられている。保持部111は、眼内レンズ1の設置面110aに対する水平方向の移動を抑えるために、眼内レンズ1の外周形状に沿う(接する)位置に形成される。ここでは、光学部1aと支持部1bの接続位置の2箇所に保持部111が形成されている。
【0021】
保持部112は、設置面110aに置かれた光学部1aの外縁に接し(もしくは僅かに外側で)光学部1aに対して左右位置(押出方向に垂直な方向)に設けられる。保持部112は、設置面110aに対して垂直方向に延びる柱状の支持部112aと、支持部112aの先端から内側に向けて略直角に取り付けられた規制部材112bから構成される。規制部材112bは、後述する押込部による押込み方向に対して、設置台111に置かれた眼内レンズ1(光学部1a)の移動を規制し、押出軸L外で保持する。また規制部材112bは、押込み方向に対して眼内レンズ1の裏面側のレンズ面を支持するために、光学部1aの周囲から内側(ここでは光学部の中心)に向けて所定量だけ水平方向に延びる長さの凸形状に形成されている。
【0022】
以上のような構成の蓋部110は樹脂で形成される。そして規制部材112bは後述する押込部材120による押圧によって、眼内レンズ1の移動方向に向けて変形される柔軟性を有する肉厚で形成される。なお規制部材112bは、眼内レンズ1の重量又は設置面110a上での眼内レンズ1の動き(微動)によって生じる力に対しては変形されず、押込部材120から加えられる押力で容易に変形される(支持部112aの接続位置を軸として折り曲げられる)柔軟性と強度を有する厚さ(肉厚)に形成される。また、規制部材112bは、保持部112による眼内レンズ1の保持が解除されるときに、変形された規制部材112bの先端がプランジャー40の押出軸Lに掛からない長さに決定されている。
【0023】
以上のような構成の保持部112によって、眼内レンズ1の保管時であって後述する押込部材120の押し込み操作が行われていないときに、規制部材112bで設置面110aに対する眼内レンズ1の上下方向の移動が抑えられる。なお、眼内レンズ保持部100と開口部23が閉じ合わせられているときは、規制部材112bによって眼内レンズ1は設置面110から若干離れた位置で保持されても良い。
【0024】
一方、眼内レンズ1の使用時に押込部材120の押し込み操作によって、眼内レンズ1を介して規制部材112bに押圧が加えられると、規制部材112bが外方向(眼内レンズの移動方向に沿って)に向けて広げられる(変形される)。これにより眼内レンズ1は変形前の規制部材112bの位置を通過でき、眼内レンズ1の移動によって保持部112による保持が解除される。
【0025】
なお、規制部材112bは変形可能に柔軟であるので、眼内レンズ1が本体10a側へ移動される際に、光学部1aの周縁(コバ)が規制部材112bに接触したとしても、接触により加えられる応力で光学部1aの周縁には傷などの損傷が生じ難い。
【0026】
つまり、眼内レンズ1を保持するための規制部材112bを変形可能な構成にすることで、光学部に不要な応力が加わりにくくなり、眼内レンズ1の保持解除が好適に行われる。なお、規制部材112bは、少なくとも光学部1aが接触される範囲が変形可能な構成であれば良く、例えば規制部材112bは支持部112aの接続位置から変形される肉厚又は形状に形成される。
【0027】
以上、本実施形態では、眼内レンズ保持部100に設けられた規制部材112bによって、光学部1aの左右方向への移動と、設置面110aに対して上下に接近又は離れる方向への移動が抑えられる。その為、保管時に眼内レンズ1が眼内レンズ保持部100内で動き、誤って本体10a側へと押出されてしまうことが防止される。
【0028】
なお保持部111は、保管された眼内レンズ1の外周に接触するよう設置面110aからの高さが決定されている。また保持部112(支持部112a)は、規制部材112bの形成位置が、設置面110aに置かれた眼内レンズ1のレンズ面(ここでは裏面)の高さ(厚さ)よりも高く形成される。これにより眼内レンズ1は応力が加えられない状態で押出軸L外にて安定して保持される。一方、各保持部111、112の長さは出来るだけ短いほうが、眼内レンズ1の保持を解除する際に押圧部120の押込み量を少なくできる。
【0029】
更に各保持部111、112の高さ(長さ)は、蓋部110で開口部23が塞がれたときに、プランジャー40の押出軸L(射出軸)に掛からない高さ(長さ)になっている。これにより蓋部110と本体10aが閉じ合わせられたままで、プランジャー40による眼内レンズ1の折り曲げ動作が好適に行われる。
【0030】
なお規制部材112bの長さが押出軸Lに掛からない程度に十分に短い場合には、押込部材120の押圧によって規制部材112bが一旦外側に向けて変形した後、元の状態に戻らなくても良い。勿論、規制部材112bが変形した後、その復元力で元の状態に戻っても良い。
【0031】
また、蓋部110で開口部23の端23aに対応する位置には、段状の溝119が形成されており、蓋部110で開口部23が塞がれたときに、端23aと溝119が嵌合されることで本体10a内が密閉される。
【0032】
更に、蓋部110には、押込部材120に形成された複数の押圧部を通過させる複数の貫通孔116が形成されている。本実施形態では、蓋部110に置かれた光学部1aの周縁の位置に対応して略円弧形状に形成された貫通孔116aと、光学部1aの中心位置に対応して略円形に形成された貫通孔116bと、各支持部1bの位置に対応して長方形状に形成された貫通孔116cとが設けられている。このように眼内レンズ1の各部位に対応させて貫通孔116を形成し、押圧部が通過されることで、眼内レンズ1全体がバランス良く(均一に)押される。なお、貫通孔116は押圧部で眼内レンズ1を押出可能な位置に少なくとも1箇所設けられていれば良く、光学部及び支持部の少なくとも一方に対応する位置に形成されていれば良い。
【0033】
押込部材120は、眼内レンズ保持部100から本体10a側へと、眼内レンズ1を押し込むための部材であり、術者が押力を加えるための板121と、前述の貫通孔116(116a〜116c)の形成位置に対応して設けられた押出部126(126a〜126c)から構成され、蓋部110と同様に樹脂で形成されている。
【0034】
各押出部126a〜126cは、各貫通孔116a〜116cを通過可能に、その先端形状が各貫通孔116a〜116cの形状と略等しく(僅かに小さく)形成されている。これにより、板121を介して押力が加えられると、押出部126が貫通孔116を通過して、眼内レンズ1に接触される。また眼内レンズ1の保管時に蓋部110と押込部材120の位置関係を保つため、本実施形態の押出部126はその先端から基端(板121)に向かいその幅(径)が次第に大きく形成されている。これにより板121に押力が加えられていないとき、押込部材120と蓋部110は所定の位置関係に保たれる。これ以外にも蓋部110と押込部材120に凹凸等による嵌合部を設けて、眼内レンズ1の保管時の蓋部110と押込部材120の位置関係を保っても良い。
【0035】
なお押出部126は、光学部1aを介して規制部材112bを変形させることのできる長さを有すると共に、蓋部110と開口部23が閉じ合わせられた状態から、押出部126が蓋部110に当接するまで押され、眼内レンズ1が本体10a側へと完全に押し込まれたときに、プランジャー40の押出軸L上に掛からない長さに形成されている。これにより眼内レンズ1を押し込んだ後に、押込部材120を取り除くことなく、一度の操作で眼内レンズ1を眼内へと押出可能となる。
【0036】
また、支持部1bが接触される押出部126cの先端(接触面)には、蓋部110に置かれた眼内レンズ1の前後(プランジャー40の押出軸L)方向に延びる溝129が形成されている。なお、溝129は、プランジャー40の押出棒43の外形(径)に略一致される形状に形成されており、眼内レンズ1の使用時にプランジャーの軸出し機構として用いられる。また、光学部1a(表面側)に接触される押出部126aの先端(接触面)は、出来るだけ面積が広く、光学部1aの形状に沿った曲面(R形状)に形成されていることが好ましい。これにより、眼内レンズ1がプランジャー40で折り曲げられる際に、光学部1aに掛かる負荷を好適に取り除くことが出来る。
【0037】
以上のような構成により、保管時には、眼内レンズ1は眼内レンズ保持部100の複数の保持部で応力が加えられない状態で保持される。使用時には、蓋部110で開口部23が塞がれた状態から、押込部材120を押すだけの簡単な操作で、眼内レンズを本体10a側(載置台22上)へと移動させることができる。更に、蓋部110で開口部23を塞ぐための眼内レンズ保持部100の回動と、保持部100から載置台22へ眼内レンズ1を移動させるための押込み操作とが一連の動作(一度の操作)で行われる。
【0038】
ところで、眼内レンズの押出時に、インジェクターの内壁との間に生じる摩擦抵抗を抑えるためには、眼内レンズが接触されるインジェクターの内壁面(底面等)に粘弾性物質が塗布されることが好ましいとされる。しかし、特開2003‐325570号公報では、眼内レンズがインジェクター内部で密閉される構成でありインジェクターの内壁面に粘弾性物質を塗布しがたい。また、特開2008−61677号公報では、蓋部材を用いてインジェクター内部が開放される構成ではあるが、予め底面に眼内レンズが置かれているため粘弾性物質を塗布しがたい。また、特表2007−503872号公報では、眼内レンズがインジェクター本体と別部材で保持される構成であり、以上のような粘弾性物質の塗布の操作に加えて、眼内レンズをインジェクター本体に取り付けると共に、眼内レンズをインジェクター本体内で押出可能な状態とするための操作が必要となり、手間がかかる課題がある。
【0039】
一方本実施形態では、眼内レンズ保持部100の回動で開口部23を開いた状態で、載置面22に粘弾性物質が簡単に塗布できる。また眼内レンズ保持部100と開口部23を閉じ合わせて、眼内レンズ1を本体10a側に押し込む動作に連動して(眼内レンズ1が載置面22に移動する動作と連動して)粘弾性物質が挿入筒21内に一様に広げられる。その為、従来技術と比べて粘弾性物質の塗布と眼内レンズのセットとが効率よく行える。
【0040】
なお以上のような構成のインジェクター10は樹脂によるモールド成形で形成される。例えば、本体10aと眼内レンズ保持部100とが別々にモールド成型された後に接続部25で接続される。また、眼内レンズ保持部100は、蓋部110と押込部材120とが個別にモールド成型される。なお、保持部112の規制部材112bは、蓋部110(支持部112a)とモールド加工で一体成形されるか、蓋部110(支持部112a)のみを先に形成した後に接着されても良い。又は、蓋部110の削り出しによる切削加工にて形成しても良い。
【0041】
次に、以上のような構成を備えるインジェクター10を用いた眼内レンズ1の押出動作を説明する。ここで
図3A、3Bのインジェクター10の側面図を用いて、眼内レンズ保持部100の回動動作を説明する。まず、眼内レンズ1が保持されている状態では、
図3Aでは、開口部23が蓋部110で塞がれて挿入筒21内が密閉されている。この時、眼内レンズ1は保持部111、112(規制部材112b)によって押出軸L外で保持されている。なお、ここでは本体10a内で眼内レンズ1が下向き(裏面側が下向き)置かれているが、各保持部111、112は、眼内レンズ1の重さ及び振動によって変形されないため、眼内レンズ1は各保持部111、112によって本体10a内で安定して保持される。
【0042】
次に、術者は、押出軸L外での眼内レンズ1の保持を解除する。まず、術者は載置台22(挿入筒21の内壁)に粘弾性物質を塗布するため、
図3Bのように、本体10aから離れるように眼内レンズ保持部100を回動させる。これにより、開口部23が開き、載置台22(眼内レンズが接触される側の内壁)が現れる。この状態で、術者は周知のシリンジ等を用いて載置台22に粘弾性物質を塗布する。なお、本実施形態では、粘弾性物質を塗布するための開口部23が広く形成されているので、術者は載置台22に簡単に(均一に)粘弾性物質を塗布できる。
【0043】
粘弾性物質の塗布が完了したら、再び本体10a内を密閉するために、術者は押込部材120の板121押しながら、眼内レンズ保持部100を本体10aに近づくように回動させる。これにより、溝119と開口部23の端23aとが嵌合されて、蓋部110によって開口部23が塞がれる(
図3A参照)。更に、開口部23が塞がれた状態で、押込部材120の板121が押し続けられると、押込部材120の押出部126が蓋部110の各開口116を次第に通過する。そして、押出部126の先端が眼内レンズ1に接触されると、押込部材120から加えられる押力で眼内レンズ1が押される。このとき、各押出部126a〜126cが、眼内レンズ1全体に均一に接触されるので、眼内レンズ1全体が安定して本体10a側へと押し込まれる。
【0044】
なお、眼内レンズ1が本体10a側へと押し込まれると、次第に保持部111、112による保持が解除される。ここで、
図5A〜
図5Cに眼内レンズ1の保持解除動作の説明図を示す。なお、
図5A〜5Cには、眼内レンズ保持部100を保持部112の位置で切断したときの断面図が示されている。なお、説明の便宜上、保持部126a、126c等の図示は省略している。
【0045】
先ず、
図5Aに示されるように、保持部112、111で眼内レンズ1が保持されているときに、板121に加えられる押力で押出部126(
図5A〜5Cでは保持部126bのみが示されている)を介して眼内レンズ1が押されると、押出部126が眼内レンズ1(光学部1aの表面側)に接触される。更に板121が押し込まれると、
図5Bに示されるように、眼内レンズ1(光学部1a)を介して押される力で、規制部材112bが次第に外側に向けて変形する。更に眼内レンズ1が押し込まれると、眼内レンズ1の移動方向に沿って規制部材112bが更に外側に向けて変形される。そして、眼内レンズ1が変形前の規制部材112bの位置を通過して本体10a側(押出軸L上)へと移動することで、眼内レンズ1の保持が解除される。なお、ここでは規制部材112bの長さが十分に短く、眼内レンズ1通過後の規制部材112bは、変形された状態のままであるとする。更に押込部材120が押し込まれると、
図5Cに示されるように、眼内レンズ1が本体10aの載置台22(押出軸L上)に置かれる。
【0046】
以上、眼内レンズ1が押されて移動される方向に、眼内レンズ1のレンズ面を保持すると共に、押込部の押圧で変形される(開閉される)保持部が設けられることで、押込み動作で眼内レンズ1の保持が簡単に解除される。また、眼内レンズ1が載置台22に置かれたときに、保持部111、112はプランジャー40の押出軸Lに掛からない位置にあるので、術者は眼内レンズ保持部100を取り除く事無く、眼内レンズの折り曲げ動作を継続できる。
【0047】
一方、押込部材120が蓋部110に対して完全に押し込まれ、眼内レンズ1が載置台22に置かれると、押出部126cの接触面に形成された溝119が、プランジャー40(押出棒43)の押出軸Lに位置されて、軸出し機構として使用される。つまり蓋部110に押し込まれた状態の押込部材120を取外すことなく、眼内レンズ1の折り曲げ動作が好適に行える。また、上述したように、予め粘弾性物質が塗布された載置台22上に眼内レンズ1が置かれることに伴い、粘弾性物質が挿入筒21内に好適に広げられ、眼内レンズ1の押出時にと内壁との間に生じる摩擦抵抗が抑えられる。以上のように、押込部材120による回動動作と連動して、眼内レンズ1が載置台22に簡単に置かれる。
【0048】
次に、術者は、眼内レンズ1を患者眼に挿入させる操作を行う。術者によって押圧部41が押されると、プランジャー40の先端44が光学部1aの周縁(コバ)に当接される。更に、押圧部41が押されると、光学部1aが挿入筒21の内壁に沿って次第に折り曲げられる(丸められる)。この時、溝119による軸出しによってプランジャー40の前後方向の移動が安定され、光学部1aが安定して折り曲げられる。更に押圧部41が押されると、眼内レンズ1が折り曲げられながら先端21a側へと移動される。
【0049】
以上のように、先端21aから光学部2が送出されると、光学部2は嚢内で次第に開放される。そして、プランジャー40の先端44が挿入筒21の先端21aまで移動されると、後側の支持部1bも眼内へと移動される。そして、一対の支持部1bが嚢に沿って位置されることで、光学部1aが眼内から加えられる応力で保持される。
【0050】
以上のように、本実施形態の構成にすることで、眼内レンズが予め保持されているタイプの眼内レンズ挿入器具において、粘弾性物質の塗布が簡単に行われる。また、予め粘弾性物質が塗布された状態から、インジェクター本体10a内を密閉させる動作と、眼内レンズ1を載置台上へと移動させる動作を一度の動作で行うことができる。更には、眼内レンズの保管時に、簡単な構成の保持部を用いて眼内レンズが保持され、押出動作に連動して簡単に眼内レンズの保持が解除される。
【0051】
なお上記では、インジェクター本体と眼内レンズ保持部が一体成形されたタイプのインジェクター(プリセットタイプ若しくはプリロードタイプのインジェクター)の例を示したが、これに限られるものではない。例えば、インジェクター本体と、眼内レンズ保持部とが別構成とされる場合に上記のインジェクターの構成が適用されることで、簡単に必要な箇所への粘弾性物質の塗布を行うことができる。また、眼内レンズの保持と使用の切換を簡単に行える。例えば、眼内レンズ保持部がインジェクター本体の一部を構成する(眼内レンズ保持部が本体の挿入部内壁の一部を形成する)タイプのインジェクター(セミプリセットタイプ若しくはセミプリロードタイプのインジェクター)において本発明の構成を適用可能である。
【0052】
更に上記の構成では、インジェクター本体に接続された眼内レンズ保持部が回動可能な構成であるが、これに限られるものではない。例えば、眼内レンズ保持部をインジェクター本体の開口部に対して上下方向にスライド可能に保持するスライド部を設ける。これにより、眼内レンズ保持部で眼内レンズが保持された状態で、開口部の位置から簡単に粘弾性物質を塗布できる。また、眼内レンズ保持部がインジェクター本体側へと押し込まれた時に、眼内レンズ保持部がスライド部を介して本体に接近されることで、眼内レンズ保持部(蓋部材)で開口部が塞がれても良い。
【0053】
また、上記の構成では、載置部の上方に開口部が形成される例が示されているが、開口部は載置部に対して側方(横方向)に設けられていても良い。これ以外にも、眼内レンズ保持部により眼内レンズが保持された状態で、載置部に粘弾性物質を塗布できる位置(載置部に近辺の位置)に開口部が設けられていれば良い。
更に、上記では、眼内レンズ保持部100(蓋部110)で開口部23が塞がれたときに、インジェクター10全体が密閉される構成であるが、眼内レンズ保持部100と本体10aとが別々に密閉されていても良い。
【0054】
なお、以上の構成では、インジェクター本体10aと別構成で用意された眼内レンズ保持部110によって、眼内レンズ1がプランジャー40の押出軸L外で保持される例を示したが、これ以外にも、眼内レンズ1をプランジャー40押出軸L上で保持する場合にも、眼内レンズが押出軸L上で前後方向に移動することを抑えるための規制部材を形成することができる。この場合、プランジャー40の押出動作に伴って光学部の一部(コバ)に接触されると共に、プランジャー40の押出軸L上を避けた位置に、眼内レンズ1の振動等の微動によって加えられる力によっては変形されず、プランジャー40から加えられる押圧によって変形される規制部材を設ける(なお、規制部材の構成は上述と同様であるためここでの図示は省略する)。このようにすると、保管時に、規制部材によって眼内レンズ1の押出軸L方向(前後方向)の移動が抑えられる。一方、使用時には、プランジャー40の押出動作で加えられる押圧で、眼内レンズ1を介して規制部材が変形される。これにより、眼内レンズ1に負荷を掛けることなく簡単に保持状態の解除ができる。また押出軸L上を避けた位置に規制部材が設けられることで、保持部を取外すことなく、眼内レンズの押出動作のみで簡単に保持状態の解除と眼内への押出動作が連続して行える。
【0055】
また、眼内レンズ保持部100に保持されている眼内レンズ1が、本体10aに対して横方向(側方)から押し込まれる場合には、その眼内レンズ1の移動方向に、押圧部により加えられる押圧で変形される規制部材が設けられれば良い。つまり眼内レンズ1が保持状態から設置状態(使用状態)へと押し込まれることによる移動方向に、上述と同様の規制部材が形成されれば良い。
【0056】
また、本実施形態のように、眼内レンズ保持部が本体に対して取り外し可能な構成は、上述したようなプリセット型のインジェクターとして用いられる他、後から眼内レンズを術者が設置するタイプのインジェクターとしても用いることができる。このようにすると、1種類のインジェクターによる用途に応じた使い分けが容易に行えるようになる。