(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928459
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン樹脂分散体及びそれを含有するコーティング用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20160519BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20160519BHJP
C08L 75/00 20060101ALI20160519BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20160519BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
C08G18/66 B
C08G18/75 Z
C08L75/00
C09D175/00
C08G18/44
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-518171(P2013-518171)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2012064135
(87)【国際公開番号】WO2012165569
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-122106(P2011-122106)
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(72)【発明者】
【氏名】森上 敦史
(72)【発明者】
【氏名】内貴 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】足立 文夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
【審査官】
井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−002035(JP,A)
【文献】
特開2005−146089(JP,A)
【文献】
特開平06−248046(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/098317(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/058937(WO,A1)
【文献】
特開2010−132779(JP,A)
【文献】
特開2009−179736(JP,A)
【文献】
特開平11−092655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールを含むポリオール化合物、及び(c)酸性基含有ポリオール化合物を反応させて得られる(A)ポリウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されており、
前記(B)鎖延長剤が、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物を含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、それぞれ固形分基準で、ウレタン結合の含有割合が5〜10重量%であり、ウレア結合の含有割合が2〜7重量%であり、カーボネート結合の含有割合が15〜40重量%であり、エーテル結合及びエステル結合を有さず、架橋点密度が1.0×10−4〜1.0×10−3モル/gであり、酸価が12〜20mgKOH/gであり、かつ重量平均分子量が100,000以上である、水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項2】
(a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールを含むポリオール化合物、及び(c)酸性基含有ポリオール化合物を構成成分とする(A)ポリウレタンプレポリマーが(B)鎖延長剤により鎖延長されたポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されており、
前記(B)鎖延長剤が、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物を含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、それぞれ固形分基準で、ウレタン結合の含有割合が5〜10重量%であり、ウレア結合の含有割合が2〜7重量%であり、カーボネート結合の含有割合が15〜40重量%であり、エーテル結合及びエステル結合を有さず、架橋点密度が1.0×10−4〜1.0×10−3モル/gであり、酸価が12〜20mgKOH/gであり、かつ重量平均分子量が100,000以上である、水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項3】
ポリウレタン樹脂が脂環構造を含み、かつ脂環構造の含有割合が固形分基準で10〜40重量%である、請求項1又は2に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項4】
(a)ポリイソシアネート化合物が、アロファネート結合を有しないポリイソシアネート化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項5】
(a)ポリイソシアネート化合物が、脂環式ジイソシアネートを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項6】
(a)ポリイソシアネート化合物が、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを80モル%以上で含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項7】
(B)鎖延長剤が、1分子中に2つのNH2基と1つ以上のNH基とを有するポリアミン化合物を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項8】
(b)ポリオール化合物が、1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコールを10モル%以上50モル%未満で含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項9】
(A)ポリウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤との反応を、1分子中に3つ以上のイソシアナト基を有する多官能イソシアネート化合物の存在下に行うことにより得られる、請求項1、3〜8のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含むコーティング用組成物。
【請求項11】
さらに非水溶性有機溶剤を含む、請求項10に記載のコーティング用組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を基材に塗布し、加熱乾燥して得られる、ポリウレタン樹脂フィルム。
【請求項13】
(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物を反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程;
−前記ポリウレタンプレポリマー中の酸性基を中和する工程;
−前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程;及び
−前記ポリウレタンプレポリマーに(B)鎖延長剤を反応させて水性ポリウレタン樹脂分散体を得る工程
を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の製造方法で得られる水性ポリウレタン樹脂分散体に、添加剤を添加する工程を含む、コーティング用組成物の製造方法。
【請求項15】
添加剤が非水溶性有機溶剤である、請求項14に記載のコーティング用組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を基材に塗布し、加熱乾燥する工程を含む、ポリウレタン樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系媒体中にポリウレタン樹脂を分散させた水性ポリウレタン樹脂分散体に関する。また、本発明は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有するコーティング用組成物及び前記ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を加熱乾燥させて得られるポリウレタン樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタン樹脂分散体は、接着性、耐摩耗性、ゴム的性質を有する塗膜をもたらすことができ、従来の溶剤系ポリウレタンと比較して揮発性有機物を減少できる環境対応材料であることから、溶剤系ポリウレタンからの置き換えが進んでいる材料である。
ポリカーボネートポリオールはポリウレタン樹脂の原料となる有用な化合物であり、イソシアネート化合物との反応により、硬質フォーム、軟質フォーム、塗料、接着剤、合成皮革、インキバインダー等に用いられる耐久性のあるポリウレタン樹脂を製造することができる。ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタン樹脂の特徴は、カーボネート基の高い凝集力によって発現し、ポリエーテルポリオールを用いた場合やポリエステルポリオールを用いた場合に比べて、耐加水分解性、耐熱性、耐油性、弾性回復性、耐摩耗性、耐候性に優れることが述べられている(非特許文献1参照)。また、水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂組成物より得られるフィルムにおいても、耐光性、耐熱性、耐加水分解性、耐油性に優れることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
本発明者らは、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合を有し、かつブロック化されたイソシアナト基を特定量で有する水性ポリウレタン樹脂分散体により、塗布後の製膜速度を制御し、塗膜の水への再分散を可能にすることができ、これを塗布・加熱処理して得られる塗膜は、耐水性及び耐溶剤性に優れ、電着塗膜への密着性にも優れ、引張における破断エネルギーが高いため、耐衝撃性にも優れるということを見出している(特許文献2参照)。
【0004】
水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性を高めるための手段として、分子内に3つ以上のアミノ基を有する多官能アミンとイソシアネートとの反応により三次元架橋を導入するという手法が知られている(特許文献3及び特許文献4参照)。
【0005】
一方で、水性ポリウレタン樹脂分散体には、種々の顔料等の添加剤が添加されることがある。水性媒体中に分散しにくい顔料を添加する場合には、顔料と共に、分散剤として非水溶性有機溶剤を水性樹脂分散体に添加することが行われている(特許文献5参照)。しかし、水性ポリウレタン樹脂分散体に非水溶性有機溶剤を添加した場合、水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度が増加し、取り扱い性が悪くなったり、スプレー噴霧等を行う際の吐出性が悪くなったりする等の問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−120757号公報
【特許文献2】国際公開第2010/098318号公報
【特許文献3】特開2010−132779号公報
【特許文献4】特開2009−179736号公報
【特許文献5】特開2003−327895号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「最新ポリウレタン材料と応用技術」 シーエムシー出版社発行 第2章 第43ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、非水溶性有機溶剤を添加した際にも水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度の増加率が低く、かつ、耐水性に優れ、弾性率の高い塗膜を与える水性ポリウレタン樹脂分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、具体的には、以下の構成を有する。
[1] (a)ポリイソシアネート化合物、(b)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールを含むポリオール化合物、及び(c)酸性基含有ポリオール化合物を反応させて得られる(A)ポリウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されており、
前記(B)鎖延長剤が、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物を含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、それぞれ固形分基準で、ウレタン結合の含有割合が5〜10重量%であり、ウレア結合の含有割合が2〜7重量%であり、カーボネート結合の含有割合が15〜40重量%であり、エーテル結合及びエステル結合を有さず、架橋点密度が1.0×10
−4〜1.0×10
−3モル/gであり、酸価が12〜20mgKOH/gであり、かつ重量平均分子量が100,000以上である、水性ポリウレタン樹脂分散体。
[2] ポリウレタン樹脂が脂環構造を含み、かつ脂環構造の含有割合が固形分基準で10〜40重量%である、前記[1]に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[3] (a)ポリイソシアネート化合物が、アロファネート結合を有しないポリイソシアネート化合物である、前記[1]又は[2]に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[4] (a)ポリイソシアネート化合物が、脂環式ジイソシアネートを含有する、前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[5] (a)ポリイソシアネート化合物が、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを80モル%以上で含有する、前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[6] (B)鎖延長剤が、1分子中に2つのNH
2基と1つ以上のNH基とを有するポリアミン化合物を含有する、前記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[7] (b)ポリオール化合物が、1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコールを10モル%以上50モル%未満で含有する、前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[8] (A)ポリウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤との反応を、1分子中に3つ以上のイソシアナト基を有する多官能イソシアネート化合物の存在下に行うことにより得られる、前記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[9] 前記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含む、コーティング用組成物。
[10] さらに非水溶性有機溶剤を含む、前記[9]に記載のコーティング用組成物。
[11] 前記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を基材に塗布し、加熱乾燥して得られる、ポリウレタン樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、非水溶性有機溶剤を添加した際にも水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度の増加率が低く、取り扱い性や貯蔵安定性が良好である。また、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体を含むコーティング用組成物により得られる塗膜は、高い弾性率を示し、かつ完全に乾燥する前(基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度が約60〜95重量%)であっても、水に対する膨潤率および溶解率が低い(すなわち、耐水性に優れている)ため、さらに他の水性コーティング剤で塗装し、多層塗膜を得て同時に加熱乾燥させることができるため、作業効率の点からも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔(a)ポリイソシアネート化合物〕
本発明における(a)ポリイソシアネート化合物は、エーテル結合及びエステル結合を有しないポリイソシアネート化合物であれば、特に制限されないが、1分子当りのイソシアナト基が2個のジイソシアネート化合物が好ましい。
具体的には1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0012】
前記(a)ポリイソシアネート化合物の中でも、アロファネート結合を有しないポリイソシアネート化合物が好ましい。前記(a)ポリイソシアネート化合物が、アロファネート結合を有するポリイソシアネートを含有すると、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体より得られる塗膜やフィルムの引張強度、破断点伸度、破断エネルギー等が小さくなる傾向があり、塗膜やフィルムの耐衝撃性や引張特性が低くなる傾向がある。
【0013】
前記(a)ポリイソシアネート化合物の中でも、脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましい。前記脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることにより、黄変しにくい塗膜を得ることができ、得られた塗膜の硬度がより高くなる傾向がある。脂環式ポリイソシアネート化合物としては、脂環式ジイソシアネート化合物が好ましい。中でも反応性の制御と得られる塗膜の弾性率が高いという観点から、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を必須成分とし、(a)ポリイソシアネート化合物中におけるその割合が、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0014】
〔(b)ポリオール化合物〕
本発明における(b)ポリオール化合物は、(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールを含むポリオール化合物である。
【0015】
〔(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオール〕
本発明における数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が800〜3500であれば、特に制限されない。前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が800未満であると、得られる塗膜の引張における破断エネルギーが低い場合がある。前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が3500を超えると、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度が約60〜95重量%)の耐水性が劣る場合がある。数平均分子量としては、かかる引張における破断エネルギー及び耐水性の観点から、1000〜2500がより好ましく、1分子当りの水酸基数が2つであるポリカーボネートジオールが好ましい。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、ポリオールと炭酸エステルとのエステル交換法やホスゲン法等の一般的な製造方法で製造されるポリカーボネートポリオールを用いることができる。前記(b)ポリオール化合物中における前記(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールの割合は、形成される塗膜の引張における破断エネルギーの観点から、50〜100モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがより好ましく、80〜90モル%であることが特に好ましい。本発明において、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、水酸基価から次式により求められる。
Mn=(56100×価数)/水酸基価
【0017】
前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数であり、水酸基価はJIS K 1557のB法に準拠して測定したものである。ポリカーボネートポリオールがポリカーボネートジオールの場合は価数が2となる。
【0018】
前記ポリカーボネートポリオールの原料となるポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等や、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ベンゼンジメタノール等の芳香族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能ポリオール等を挙げることができる。前記ポリオールは、一種のみを用いて前記ポリカーボネートポリオールとすることもできるし、複数種を併用してポリカーボネートポリオールとすることもできる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、前記脂肪族ジオール又は脂環式ジオールより得られるポリカーボネートポリオールが好ましく、前記脂肪族ジオールより得られるポリカーボネートポリオールがより好ましく、1,6−ヘキサンジオールより得られるポリカーボネートポリオールが特に好ましい。
【0019】
本発明においては、前記ポリカーボネートポリオールとして、エーテル結合及びエステル結合を含有しないものを使用することにより、エーテル結合及びエステル結合を含有しない水性ポリウレタン樹脂とする。これにより、水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の耐水性を良好なものとすることができる。
【0020】
〔(b−2)1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコール〕
本発明において、(b)ポリオール化合物中には、前記(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールの他に、(b−2)1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコールを含有するものが好ましい。多官能アルコールを使用することにより、(A)ポリウレタンプレポリマーに架橋構造が導入されるため、ポリウレタン樹脂の水への分散性が良好になる。(b−2)1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリオール化合物や、ペンタエリスリトール等のテトラオール化合物などが挙げられる。(b−2)1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能アルコールは、(b)ポリオール化合物中、モル基準で50%未満であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、10〜20%であることが特に好ましい。(b−2)多官能アルコールが(b)ポリオール中に、10モル%以上含まれると、(A)ポリウレタンプレポリマーに架橋構造が導入されるため、非水溶性有機溶剤共存下での水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性が良好になり、かつ水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の耐水性も良好になる。また、(b−2)多官能アルコールが(b)ポリオール中に、50モル%以上含まれると、塗膜の破断エネルギーが低くなるため、耐衝撃性が低くなる場合がある。
【0021】
本発明においては、前記(b−2)多官能アルコールとして、エーテル結合及びエステル結合を含有しないものを使用することにより、エーテル結合及びエステル結合を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体とする。これにより、水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の耐水性が良好なものとなる。
【0022】
〔(b−3)その他のポリオール化合物〕
本発明において、(b)ポリオール化合物中には、前記(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオールの他に、(b−3)その他のポリオール化合物を混合することもできる。(b−3)その他のポリオール化合物とは、(b−1)数平均分子量が800〜3500であるポリカーボネートポリオール及び(b−2)1分子中に3つ以上の水酸基を有する多官能ポリオールと異なり、かつ、エーテル結合及びエステル結合を有しないポリオール化合物であり、前記(b−3)その他のポリオール化合物を併用する場合には、全ての(b)ポリオール化合物中におけるその割合が、20モル%未満であることが好ましく、0〜10モル%がより好ましく、0〜5モル%であることが特に好ましい。前記(b−3)その他のポリオール化合物は、特に制限されないが、例えば、数平均分子量が800〜3500以外のポリカーボネートポリオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。これらポリオール化合物は、引張における破断エネルギーや塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度が約60〜95重量%)の耐水性を高めるために使用することができる。ここで、(b−3)その他のポリオール化合物の中には、次項で記載する(c)酸性基含有ポリオール化合物を含まない。
【0023】
本発明においては、前記(b−3)その他のポリオール化合物として、エーテル結合及びエステル結合を含有しないものを使用することにより、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体にポリウレタン樹脂がエーテル結合及びエステル結合を含有しないようにする。これにより、水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の良好な耐水性を得ることができる。
【0024】
〔(c)酸性基含有ポリオール化合物〕
本発明における(c)酸性基含有ポリオール化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基と1個以上の酸性基を含有する化合物であれば、特に制限されない。酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、フェノール性水酸基等が挙げられる。具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等の2,2−ジメチロールアルカン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。前記酸性基含有ポリオール化合物の中でも入手の容易さの観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0025】
本発明においては、前記(c)酸性基含有ポリオール化合物として、エーテル結合及びエステル結合を含有しないものを使用することにより、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体にポリウレタン樹脂がエーテル結合及びエステル結合を含有しないようにする。これにより、水性ポリウレタン分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)は、より良好な耐水性を有するものとなる。
【0026】
〔(A)ポリウレタンプレポリマー〕
本発明における(A)ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーであればよい。前記ポリウレタンプレポリマーの製造方法は、特に制限されないが、例えば、ウレタン化触媒存在下又は不存在下で、(a)ポリイソシアネート化合物と、(b)ポリオール化合物と、(c)酸性基含有ポリオール化合物とを反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを合成する方法が挙げられる。
【0027】
前記ウレタン化触媒は、特に制限されないが、例えば、スズ系触媒(トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0028】
(a)、(b)及び(c)の使用量は、以下が好ましい。(b)の使用量は、(a)に対してモル基準で0.1〜0.5倍が好ましく、0.15〜0.45倍がより好ましく、0.2〜0.4倍が特に好ましい。(c)の使用量は、(b)に対してモル基準で0.3〜2.0倍が好ましく、0.4〜1.6倍がより好ましく、0.5〜1.3倍が特に好ましい。
【0029】
〔(B)鎖延長剤〕
本発明における(B)鎖延長剤は、(B−1)1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物を少なくとも1種含むことが必要である。任意成分として、前記(B)鎖延長剤は、(B−2)その他の鎖延長剤を含んでもよい。ただし、ポリウレタン樹脂とした場合に、架橋点密度が1.0×10
−4〜1.0×10
−3モル/gの範囲に入ることが必要である。架橋点密度が1.0×10
−4モル/g未満の場合、非水溶性有機溶剤を添加したときに粘度が増加する傾向にあり、貯蔵安定性が不十分となる。さらに塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水系洗浄液への膨潤率が小さくなり、塗り直しを施すことが困難になる。架橋点密度が1.0×10
−3モル/gを超える場合、引張における破断点伸びが小さくなり、衝撃に弱い塗膜しか得られない。
【0030】
前記(B)鎖延長剤中の(B−1)1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物の割合は、10〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましい。
【0031】
(B−1)1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミン化合物としては、エーテル結合及びエステル結合を有しないポリアミン化合物であれば、特に制限されないが、例えば、ジエチレントリアミン、ビス(2−アミノプロピル)アミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン等のトリアミン化合物;トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、N−(ベンジル)トリエチレンテトラミン、N,N’’’−(ジベンジル)トリエチレンテトラミン、N−(ベンジル)−N’’’−(2−エチルヘキシル)トリエチレンテトラミン等のテトラミン化合物;テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン等のペンタミン化合物;ペンタエチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等のヘキサミン化合物;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリウレタンプレポリマーとの反応性の観点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ビス(2−アミノプロピル)アミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等の2つのアミノ基と1つ以上のイミノ基を有するポリアミン又はその混合物が好ましい。
【0032】
(B−2)その他の鎖延長剤としては、エーテル結合及びエステル結合を有しない化合物であれば、特に制限されないが、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のジアミン化合物、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のポリオール化合物、水等が挙げられ、中でも好ましくは1級ジアミン化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0033】
前記(B)鎖延長剤の添加量は、前記(A)ウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となる残存イソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくは残存イソシアナト基の0.7〜0.99当量である。残存イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤を添加すると、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量が低下してしまう場合があり、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を使用して形成した塗膜の強度が低下する場合がある。
【0034】
本発明においては、前記(B)鎖延長剤として、エーテル結合及びエステル結合を含有しないものを使用することにより、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体にポリウレタン樹脂がエーテル結合及びエステル結合を含有しないようにし、水性ポリウレタン分散体を使用して形成した塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)について、良好な耐水性を得ることができる。
【0035】
〔水性ポリウレタン樹脂分散体〕
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の工程:
−(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物を反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程;
−前記ポリウレタンプレポリマー中の酸性基を中和する工程;
−前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程;及び
−前記ポリウレタンプレポリマーに(B)鎖延長剤を反応させて水性ポリウレタン樹脂分散体を得る工程
を含む。なお、前記製造方法において、鎖延長剤の添加はポリウレタンプレポリマーの水系媒体への分散後でもよく、分散中でもよい。また、前記の各工程は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、大気中で行ってもよい。
【0036】
非水溶性有機溶剤共存下での水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性の観点で、下記の工程:
−(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール化合物を反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程;
−前記ポリウレタンプレポリマー中の酸性基を中和する工程;
−(X)1分子中に3つ以上のイソシアナト基を有する多官能イソシアネート化合物を添加・混合する工程;
−前記(A)ポリウレタンプレポリマーと(X)多官能イソシアネートの混合物を水系媒体中に分散させる工程;及び
−前記(B)鎖延長剤を反応させて水性ポリウレタン樹脂分散体を得る工程
を含む方法により、水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することがより好ましい。前記方法により製造した水性ポリウレタン樹脂分散体は、非水溶性有機溶剤共存下での貯蔵安定性が良好であり、得られる塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の耐水性も良好である。
【0037】
前記中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリハイドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン類、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ塩、さらには、アンモニア等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。前記中和剤の中でも、作業性の観点から、有機アミン類が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。中和剤の添加量は、酸性基1当量あたり、例えば、0.4〜1.2当量、好ましくは、0.6〜1.0当量である。
【0038】
前記水系媒体としては、水や水と親水性有機溶剤との混合媒体等が挙げられる。前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になることを考慮して、好ましくはイオン交換水が挙げられる。前記親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の非プロトン性の親水性有機溶剤等が挙げられる。前記水系媒体中の前記親水性有機溶剤の量としては、0〜20重量%が好ましい。
【0039】
(X)多官能イソシアネートとしては、1,6−ヘキサンジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート4分子と1,6−ヘキサンジイソシアネート1分子とから得られるイソシアヌレート体などが挙げられる。(X)多官能イソシアネートのイソシアナト基のモル数は、(A)ポリウレタンプレポリマーの残存イソシアナト基の20モル%以下が好ましく、1〜15モル%がより好ましく、3〜10モル%が特に好ましい。(X)多官能イソシアネートのイソシアナト基が(A)ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基の20モル%を超えると、塗膜の引張における破断エネルギーが小さくなり、衝撃に対して弱いものとなる。
【0040】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体中のウレタン結合の含有割合が、固形分基準で5〜10重量%である必要があり、ウレア結合の含有割合が、固形分基準で2〜7重量%である必要がある。前記ウレタン結合とウレア結合の含有割合が少なすぎると、塗膜を形成できず、乾燥後にも塗膜表面がべたつく等の問題がある。また、前記ウレタン結合とウレア結合の含有割合が多すぎると、水性ポリウレタン樹脂分散体を基材に塗布した場合に、塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水系洗浄液への膨潤率が低下するために除去が難しくなり、塗り直しを施すことができなくなる場合がある。ウレタン結合の含有割合は、引張破断エネルギー及び係る水系洗浄液への膨潤率の点から、好ましくは6〜9重量%であり、さらに好ましくは6〜8重量%であり、ウレア結合の含有割合は、塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水膨潤率及び非水溶性有機溶剤共存下での貯蔵安定性の点から、好ましくは3〜6重量%であり、さらに好ましくは3.5〜5.5重量%である。
【0041】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、分散体中のポリウレタン樹脂のカーボネート結合の含有割合が、固形分基準で15〜40重量%である必要があり、18〜35重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることが特に好ましい。前記カーボネート結合の含有割合が少なすぎると、得られる塗膜の破断点伸度が小さく、衝撃に弱い塗膜しか得られないという問題がある。また、前記カーボネート結合の含有割合が多すぎると、塗膜を形成できず、乾燥後にも塗膜表面がべたつく等の問題がある。
【0042】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、分散体中のポリウレタン樹脂のエーテル結合及びエステル結合の含有割合が、固形分基準で0重量%である必要がある。すなわち、ポリウレタン樹脂はエーテル結合及びエステル結合を含有しない。前記ポリウレタン樹脂中にエーテル結合及びエステル結合が存在すると、得られる塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の耐水性が低下するため、多層塗膜を形成する際に混層する等の問題が生じる。
【0043】
前記水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、100,000以上である必要があり、150,000以上であることがより好ましく、200,000以上であることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000未満である場合には、得られる塗膜の引張強度が小さくなり、衝撃に弱い塗膜となる。さらに、塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水への膨潤率も高くなる。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値である。
【0044】
前記水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の酸価は、固形分基準で12〜20mgKOH/gである必要があり、12〜18mgKOH/gであることがより好ましく、13〜16mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂の酸価が20mgKOH/gを超えると塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水膨潤率が高くなり、12mgKOH/g未満であると、水系媒体中への分散性が悪くなる傾向がある。酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定することができる。ただし、酸性基を中和するために使用した中和剤を取り除いて測定することとする。例えば、有機アミン類を中和剤として用いた場合には、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して酸価を測定することができる。
【0045】
前記水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造の含有割合は、特に制限されないが、固形分基準で10〜40重量%であることが好ましく、12〜30重量%であることがより好ましく、12〜25重量%であることが特に好ましい。前記水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造の含有割合が少なすぎると、得られる塗膜の弾性率が低くなる場合があり、塗膜の硬度が低くなる場合がある。また、前記水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造の含有割合が多すぎると、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を基材に塗布した場合に、塗膜(乾燥完了前:基材と塗膜の積層体を垂直に立てた場合に塗膜が垂れない状態であり、例えば、塗膜の固形分濃度約60〜95重量%)の水系洗浄液への膨潤率が低下するために除去が難しくなり、塗り直しを施すことが困難になる場合がある。
【0046】
〔コーティング用組成物〕
本発明のコーティング用組成物としては、前記水性ポリウレタン樹脂分散体をそのまま用いてもよいし、各種添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防かび剤、防錆剤、つや消し剤、難燃剤、粘着性付与剤、揺変剤、滑剤、帯電防止剤、減粘剤、増粘剤、希釈剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤等が挙げられる。本発明のコーティング用組成物は、金属、セラミック、合成樹脂、不織布、織布、編布、紙等の種々の基材にコーティングすることができる。
【0047】
(非水溶性有機溶剤)
また、本発明のコーティング用組成物に、前記添加剤の分散剤として、非水溶性有機溶剤を使用することもできる。前記非水溶性有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸sec−ブチル等のアルキルエステル類、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジ−n−ブチルケトン等のケトン類、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、アニソール等のエーテル類、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族類、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、塩化n−ブチル、クロロホルム、ヘキサン、オクタン等の脂肪族類等が挙げられる。本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、非水溶性有機溶剤を添加した場合の粘度増加率が低いため、本発明のコーティング用組成物は、非水溶性有機溶剤の共存下であっても、取り扱い性や貯蔵安定性が良好である。特に、非水溶性有機溶剤が炭素数6以上のアルコール類である場合に、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度増加率が低い。
【0048】
〔ポリウレタン樹脂フィルム〕
本発明のポリウレタン樹脂フィルムは、例えば、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を基材に塗布し、加熱乾燥することによって製造される。水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物には、前記水性ポリウレタン樹脂分散体をそのまま用いてもよいし、前記水性ポリウレタン樹脂分散体に各種添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防かび剤、防錆剤、つや消し剤、難燃剤、粘着性付与剤、揺変剤、滑剤、帯電防止剤、減粘剤、増粘剤、希釈剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤、非水溶性有機溶剤等が挙げられる。
【0049】
前記ポリウレタン樹脂フィルムの製造方法は、特に制限されないが、例えば、離型性基材上に、上述した水性ポリウレタン樹脂分散体を各種塗布装置を用いて塗布した後、乾燥させ、前記離型性基材と前記ポリウレタン樹脂フィルムとを剥離する方法が挙げられる。
【0050】
前記離型性基材は、特に制限されないが、例えば、ガラス基材、ポリエチレンテレフタレートやポリテトラフルオロエチレン等のプラスチック基材、金属基材等が挙げられる。前記各基材は、その表面を剥離剤処理されていてもよい。前記塗布装置は、特に制限されないが、例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアロールコーター、エアスプレー等が挙げられる。
【0051】
本発明のポリウレタン樹脂フィルムの厚さは、特に制限されないが、0.01〜0.5mmが好ましい。
【実施例】
【0052】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
なお、物性の測定は、以下の通り行った。
(1)水酸基価:JIS K 1557のB法に準拠して測定した。
(2)遊離イソシアナト基含有割合:ウレタン化反応終了後のポリウレタンプレポリマーの反応混合物を0.5gサンプリングして、0.1モル/L(リットル)のジブチルアミン−テトラヒドロフラン(THF)溶液10mLとTHF20mLの混合溶液に加えて、0.1モル/Lの塩酸で未消費のジブチルアミンを滴定した。この滴定値とブランク実験との差より反応混合物中に残存するイソシアナト基のモル濃度を算出した。モル濃度をイソシアナト基の重量分率に換算して遊離イソシアナト基含有割合とした。なお、滴定に使用した指示薬はブロモフェノールブルーである。
(3)ウレタン結合の固形分基準の含有割合、ウレア結合の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からウレタン結合及びウレア結合のモル濃度(モル/g)を算出し、重量分率に換算したものを表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とする。水性ポリウレタン樹脂分散体0.3gを厚さ0.2mmでガラス基板上に塗布し、140℃で4時間加熱乾燥した後に残った重量を測定し、これを乾燥前の重量で割ったものを固形分濃度とした。水性ポリウレタン樹脂分散体の全重量と固形分濃度の積を固形分重量として、前記重量分率を算出した。
(4)カーボネート結合の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からカーボネート結合のモル濃度(モル/g)を算出し重量分率に換算したものを表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(5)エーテル結合の固形分基準の含有割合、エステル結合の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合からエーテル結合及びエステル結合のモル濃度(モル/g)を算出し重量分率に換算したものを表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(6)脂環構造の固形分基準の含有割合:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から算出した脂環構造の重量分率を表記した。重量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とし、前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(7)酸価:JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した。ただし、水性ポリウレタン樹脂分散体の中和に用いた有機アミン類を取り除くために、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を用いて酸価を測定した。
(8)架橋点密度:水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から架橋点のモル濃度(モル/g)を算出し、架橋点密度として表記した。
(9)水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を記した。
【0053】
(10)2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率:水性ポリウレタン樹脂分散体100gに2−エチルヘキサノールを3g添加して20℃で5分間撹拌した。同温度で10分間静置後に粘度を測定し、2−エチルヘキサノール添加前後の粘度の増加率(%)を算出した。
(11)塗膜の水への膨潤率及び溶解率:ガラス板上に水性ポリウレタン樹脂分散体0.3mLを厚さ0.2mmで塗布し、塗膜の固形分濃度が90±1重量%になるまで40℃で加熱乾燥した。この塗膜を27℃のイオン交換水に8時間浸漬し、浸漬前後の塗膜重量を測定した。浸漬後の塗膜をさらに140℃で4時間乾燥させ、塗膜重量を測定した。塗膜の水への膨潤率と溶解率を下式により算出した。乾燥塗膜の固形分濃度は前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(塗膜の固形分濃度)=(塗布後の塗膜重量)×(固形分濃度)/(40℃加熱乾燥後の塗膜重量)×100
(膨潤率)=〔(水浸漬後の塗膜重量)−(水浸漬前の塗膜重量)〕/(水浸漬前の塗膜重量)×100
(溶解率)=〔(塗布後の塗膜重量)×(固形分濃度)−(水浸漬後に140℃で乾燥した塗膜の重量)〕/〔(塗布後の塗膜重量)×(固形分濃度)〕×100
(12)塗膜の水系洗浄液への膨潤率及び溶解率:ブチルセルソルブ、イソプロパノール、ジメチルエタノールアミン及びイオン交換水をそれぞれ重量基準で5%、4%、1%及び90%含有する水系洗浄液を調整した。ガラス板上に水性ポリウレタン樹脂分散体0.3mlを厚さ0.2mmで塗布し、塗膜の固形分濃度が90%になるまで40℃で加熱乾燥した。この塗膜を27℃の水系洗浄液に3分間浸漬し、浸漬前後の塗膜重量を測定した。浸漬後の塗膜をさらに140℃で4時間乾燥させ、塗膜重量を測定した。塗膜の水系洗浄液への膨潤率と溶解率を下式により算出した。乾燥塗膜の固形分濃度は前記ウレタン結合の固形分基準の含有割合と同様の方法で算出した。
(膨潤率)=〔(水系洗浄液浸漬後の塗膜重量)−(水系洗浄液浸漬前の塗膜重量)〕/(水系洗浄液浸漬前の塗膜重量)×100
(溶解率)=〔(塗布後の塗膜重量)×(固形分濃度)−(水系洗浄液浸漬後に140℃で乾燥した塗膜の重量)〕/〔(塗布後の塗膜重量)×(固形分濃度)〕×100
(13)ポリウレタン樹脂フィルムの弾性率、引張強度、破断点伸度:JIS K 7311に準拠する方法で測定した。なお、測定条件は、測定温度23℃、湿度50%、引張速度100mm/分とした。
(14)破断エネルギー:伸度−応力曲線の伸度ゼロから破断点伸度までの応力を積分して求めた。
(15)電着塗面への密着性は、次のようにして評価した。自動車鋼板カチオン電着塗板(日本テストパネル社製)上に水性ポリウレタン樹脂分散体をバーコーターで塗布し、60℃で30分間、140℃で60分間加熱乾燥し、得られた塗膜(厚さ20μm)を用いて碁盤目剥離試験を行った。塗膜に5mm×5mmの面積に縦横1mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを貼った後、剥がしたときに電着層表面に残っているマスの数を目視で数えて評価した。25個中15個が残っていた場合を15/25と記載した。
【0054】
[実施例1]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の製造〕
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1980;水酸基価56.8mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)301g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)20.9g及びN−メチルピロリドン(NMP)152gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)140g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.37g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.67重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン15.4gを添加・混合したものの中から585gを抜き出して、強攪拌下のもと水860gの中に加えた。ついで35重量%のジエチレントリアミン水溶液33.9gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(1)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0055】
〔ポリウレタンフィルム(A)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(1)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(A)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(A)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0056】
[実施例2]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(2)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)261g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)13.3g及びN−メチルピロリドン(NMP)124gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)104g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.35g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.44重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン12.0gを添加・混合したものの中から475gを抜き出して、強攪拌下のもと水713gの中に加えた。ついで35重量%のジエチレントリアミン水溶液25.1gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(2)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(2)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0057】
〔ポリウレタンフィルム(B)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(2)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(B)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(B)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0058】
[実施例3]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(3)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−300(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2950;水酸基価38.1mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)341g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.0g及びN−メチルピロリドン(NMP)197gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)109g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.39g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.00重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン12.3gを添加・混合したものの中から639gを抜き出して、強攪拌下のもと水827gの中に加えた。35重量%のジエチレントリアミン水溶液26.8gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(3)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0059】
〔ポリウレタンフィルム(C)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(3)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(C)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(C)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0060】
[実施例4]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(4)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1980;水酸基価56.8mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)310g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.6g及びN−メチルピロリドン(NMP)156gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を143g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.38g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後トリメチロールプロパン(TMP)2.75gを注入し、同温度で2時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.80重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン12.3gを添加・混合したものの中から596gを抜き出して、強攪拌下のもと水887gの中に加えた。ヒドラジン1.56gとジエチレントリアミン9.43gを混合した34重量%のアミン水溶液32.4gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(4)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(4)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0061】
〔ポリウレタンフィルム(D)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(4)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(D)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(D)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0062】
[実施例5]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(5)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2030;水酸基価55.2mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)260g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)13.5g及びN−メチルピロリドン(NMP)127gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)105g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.30g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.56重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン10.1g及びデュラネートTLA100(登録商標;旭化成ケミカルズ製イソシアヌレート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)3.47gを添加・混合したものの中から475gを抜き出して、強攪拌下のもと水713gの中に加えた。ついで35重量%のジエチレントリアミン水溶液26.5gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(5)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(5)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0063】
〔ポリウレタンフィルム(E)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(5)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(E)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(E)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0064】
[実施例6]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2060;水酸基価54.5mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)320g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.4g及びN−メチルピロリドン(NMP)154gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を122g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.40g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.46重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン12.3gを添加・混合したものの中から588gを抜き出して、強攪拌下のもと、トリエチルアミン4.30g及び水845gの混合溶液中に加えた。ついで、35重量%のトリエチレンテトラミン(東ソー製;アミン価1440mgKOH/g)水溶液35.8gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(6)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0065】
〔ポリウレタンフィルム(F)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(6)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(F)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(F)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0066】
[比較例1]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1990;水酸基価56.4mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)301g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)20.4g及びN−メチルピロリドン(NMP)153gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を139g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.36g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.75重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン15.4gを添加・混合したものの中から584gを抜き出して、強攪拌下のもと水838gの中に加えた。ついで、35重量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液58.3gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(6)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0067】
〔ポリウレタンフィルム(F)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(6)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(F)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(F)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0068】
[比較例2]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(7)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL PH−200D(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量1980;水酸基価56.6mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオール(モル比1:1)を炭酸ジメチルと反応させて得られたポリカーボネートジオール)270g、ポリプロピレングリコール(和光純薬試薬;PPG−1000;数平均分子量1000)30.0g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)15.5g及びN−メチルピロリドン(NMP)145gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を125g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.38g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.71重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン11.4gを添加・混合したものの中から555gを抜き出して、強攪拌下のもとトリエチルアミン3.45gと水804gの混合溶液の中に加えた。ついで、ヒドラジン一水和物2.63gとジエチレントリアミン5.58gを混合した35重量%のアミン水溶液23.5gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(7)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(7)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0069】
〔ポリウレタンフィルム(G)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(7)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(G)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(G)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0070】
[比較例3]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(8)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−50(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量509;水酸基価220mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)315g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.2g及びN−メチルピロリドン(NMP)146gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を246g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.36g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後トリメチロールプロパン(TMP)8.33gを注入し、同温度で2.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は5.23重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン12.3gを添加・混合したものの中から568gを抜き出して、強攪拌下のもとトリエチルアミン4.35g及び水845gの混合溶液の中に加えた。ついで、35重量%のジエチレントリアミン水溶液63.9gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(8)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(8)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0071】
〔ポリウレタンフィルム(H)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(8)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(H)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(H)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0072】
[比較例4]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(9)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL 3040(登録商標;宇部興産製ポリエステルポリオール;数平均分子量1990;水酸基価56.3mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール)310g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)15.6g及びN−メチルピロリドン(NMP)149gを窒素気流下で仕込んだ。その後60℃で加熱攪拌しDMPAが溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)119g、ジブチル錫ジラウリレート(触媒)を0.37g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は2.56重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエチルアミン12.8gを添加・混合したものの中から571gを抜き出して、強攪拌下のもと水841gの中に加えた。ついで、35重量%のジエチレントリアミン水溶液31.3gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(9)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(9)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0073】
〔ポリウレタンフィルム(I)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(9)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(I)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(I)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0074】
[比較例5]
〔水性ポリウレタン樹脂分散体(10)の製造〕
実施例1と同様の反応容器に、ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)272g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)18.5g及びN−メチルピロリドン(NMP)176gを窒素気流下で仕込んだ。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)を125g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を0.33g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行った。その後3,5−ジメチルピラゾール(DMPZ)10.4gを注入し、同温度で1.5時間攪拌を続けて、ポリウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化反応終了時の遊離イソシアナト基含有割合は1.78重量%であった。反応混合物にトリエチルアミン13.9gを添加・混合したものの中から564gを抜き出して、強攪拌下のもと水870gの中に加えた。ついで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液36.5gを加えて鎖延長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(10)のウレタン結合の含有割合、ウレア結合の含有割合、カーボネート結合の含有割合、エーテル結合の含有割合、エステル結合の含有割合、架橋点密度、酸価、重量平均分子量及び脂環構造の含有割合を表1に記す。水性ポリウレタン樹脂分散体(10)の2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率、塗膜の水及び水系洗浄液への膨潤率を表2に記す。
【0075】
〔ポリウレタンフィルム(J)の製造〕
水性ポリウレタン樹脂分散体(10)をコーティング用組成物としてガラス板上に塗布し、60℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、良好なコーティング層が得られた。得られたコーティング層を剥離して、ポリウレタンフィルム(J)を作成した。得られたポリウレタンフィルム(J)の膜厚は0.08mmであり、引張特性を表2に記す。
【0076】
表1において、各略語は、下記のことである。
DETA:ジエチレントリアミン
TETA:トリエチレンテトラミン
MPDA:2−メチル−1,5−ペンタンジアミン
HZ:ヒドラジン一水和物
UH−200:ETERNACOLL UH−200(宇部興産製)
UH−300:ETERNACOLL UH−300(宇部興産製)
TMP:トリメチロールプロパン
PH−200:ETERNACOLL PH−200(宇部興産製)
PPG1000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量=1000)
UH−50:ETERNACOLL UH−50(宇部興産製)
ET−3040:ETERNACOLL 3040(宇部興産製)
また、表2中、「*」は、塗膜に割れがあり引張試験等ができなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例の各水性ポリウレタン樹脂分散体は、2−エチルヘキサノール添加時の粘度増加率が小さいため、非水溶性有機溶剤共存下での取り扱い性や貯蔵安定性が良好である。さらに、実施例の各水性ポリウレタン樹脂分散体より形成された塗膜(固形分濃度90±1%)は、水に対する膨潤性及び溶解率が低く、耐水性に優れていた。また、かかる塗膜はいずれも、水系洗浄液に対して、高い膨潤率を示し、塗り直しが可能なことがわかる。一方、比較例1〜2及び比較例5は、非水溶性有機溶剤共存下での貯蔵安定性の点で実施例に及ばず、比較例3は、貯蔵安定性には優れているものの、塗膜の引張における破断エネルギーが小さいため、耐衝撃性に劣っている。比較例4は、塗膜(固形分濃度90±1%)の水への膨潤率が高いため、耐水性に劣っている。
【0080】
特に、ポリウレタン樹脂の架橋点密度が3.0×10
−4〜8.0×10
−4モル/g、好ましくは3.0×10
−4〜7.6×10
−4モル/gの水性ポリウレタン樹脂分散体とすることにより、非水溶性有機溶剤を添加した際の水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度増加率をさらに低くすることができる。
また、(b)ポリオール化合物として、ポリカーボネートジオールのみを用いることにより、水に対する膨潤率を低く抑えつつ、水系洗浄液に対する膨潤率を高くすることができるため、基材等へ水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布した後に、洗浄液で塗膜を洗ったり剥がしたりして、塗り直しを行うことができる。
一方、ポリウレタン樹脂の架橋点密度を2.0×10
−4〜2.9×10
−4モル/g、好ましくは2.1×10
−4〜2.7×10
−4モル/gとすることにより、破断エネルギーの高い塗膜を形成することができ、外部から衝撃を受けても割れにくい塗膜を得ることができる。また、電着塗膜面への密着性が非常に高いため、鉄骨や配管のコーティング剤や電着塗膜上に塗装する塗料、これらの原料としても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、塗料やコーティング剤の原料等として広く利用できる。また、本発明のポリウレタン樹脂フィルムは、加飾フィルムとしても利用できる。