【実施例】
【0089】
実施例1 3,5-ジクロロフェニルトリオールボレートナトリウム塩の製造方法
(1) 3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールエステルの合成
ジ-μ-メトキソビス(1,5-シクロオクタジエン)二イリジウム(I)(和光純薬工業(株)製)1.66 mg(0.01 mmol%)、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(dtbpy)(ALDRICH社製)1.34 mg(0.01 mmol)及びヘキサン5 mlを、室温で30分間攪拌した。その後、ビス(ピナコラート)ジボロン(和光純薬工業(株)製) 1397 mg(5.5 mmol)を入れ、最後に1,3-ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)1460 mg(10 mmol)を入れて80℃にして16時間攪拌した。反応後はジエチルエーテルと飽和食塩水で抽出しカラム精製し、3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールエステルを得た。
【0090】
(2)トリオールボレート塩の合成
3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールエステル273mg(1mmol)、トリス(ヒドロキシルメチル)エタン(和光純薬工業(株)製)120mg(1mmol)、水酸化ナトリウム 40mg(1mmol)、ジオキサン 5ml、水 54μl (3mmol)を25ml用枝つきフラスコに入れ、30℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応後、ヘキサン16 mlを入れて反応物を析出させ、固体をろ過、洗浄した。さらに、1 mmHg(1.33hPa)、60℃で乾燥し、単離・精製して、目的のトリオールボレート塩を得た(収率84%)。
反応スキームを以下に示す。
上記反応の反応条件[使用溶媒、3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールエステル(出発物質)に対する水酸化ナトリウムの使用量(当量)、反応温度、出発物質に対する水の使用量(当量)]及び収率について、表1に示す。
【0091】
また、得られたトリオールボレート塩の物性データを以下に示す。
〔物性データ〕
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.47 (s, 3H),3.56 (s, 6H),7.05-7.06 (m, 1H), 7.18-7.19 (m, 2H).;
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.1, 74.2, 123.8, 130.8, 132.3;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = -0.096; MS (FAB
-) m/z (%): 273 ([M-Na]
-, 17), 199 (45), 168 (26), 153 (100), 152 (81), 122 (26); HRMS (FAB
-) m/z calcd. for C
11H
12BCl
2O
3-, 273.0262; found 273.0253.
【0092】
実施例2 反応温度の違いによる反応効率の違い
実施例1の反応温度30℃を60℃とした以外は、実施例1と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。その結果、収率は76%であった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。また、物性データは実施例1と同じであった。
【0093】
実施例3 水酸化ナトリウムの使用量の違いによる反応効率の違い
使用した水酸化ナトリウム量を36mg(0.9mmol)とした以外は、実施例2と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。その結果、収率は72%であった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。また、物性データは実施例1と同じであった。
【0094】
実施例4 水の使用量の違いによる反応効率の違い
使用した水の量を17μl(1mmol)とした以外は、実施例3と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。その結果、収率は27%であった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。また、物性データは実施例1と同じであった。
【0095】
比較例1 水の使用量の違いによる反応効率の違い
反応において水を添加しなかった以外、実施例4と同様の方法により実験を行った。その結果、微量のトリオールボレート塩しか得られなかった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。
【0096】
実施例5 溶媒の違いによる反応効率の違い
溶媒としてジオキサンの代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。その結果、収率は48%であった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。また、物性データは実施例1と同じであった。
【0097】
実施例6 溶媒の違いによる反応効率の違い
溶媒としてジオキサンの代わりに1,2-ジメトキシエタン(DME)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。その結果、収率は46%であった。
尚、該反応の反応条件及び収率を表1に示す。また、物性データは実施例1と同じであった。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1及び2の結果から、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いた本発明の方法によれば30℃〜60℃で高い収率でトリオールボレート塩が得られることが判った。また、実施例1〜3の結果より水酸化ナトリウムの量は、出発物質の0.9〜1当量であれば高い収率でトリオールボレート塩が得られることが判った。
実施例1〜4及び比較例1の結果より、水を使用しないとトリオールボレート塩はほとんど得られなかったが、水の使用量を出発物質の1当量とすると27%の収率ではあるが、目的のトリオールボレート塩を得る事ができ、水の使用量を出発物質の3当量とすると、高い収率でトリオールボレート塩が得られることが判った。
実施例5及び6より、ジオキサン以外のテトラヒドロフランや1,2-ジメトキシエタンを溶媒として用いた場合であっても、収率は低下するものの目的のトリオールボレート塩が得られることが判った。
【0100】
実施例7〜21 各種出発物質を用いたトリオールボレート塩の製造方法
実施例1の出発物質としての3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールの代わりに、表2に記載の各種置換基を有するボロン酸ピナコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により実験を行い、トリオールボレート塩を得た。尚、実施例10、12、15及び16においては、反応温度を60℃として実験を行った。
それぞれの収率を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
尚、実施例7〜21により得られた有機トリオールボレート塩の物性データは以下の通りである。
実施例7で得られたトリオールボレート塩(3,4-ジクロロフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.47 (s, 3H), 3.61 (s, 6H), 7.17-7.22 (m, 2H), 7.40 (s, 1H).;
13C NMR(100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.1, 74.2, 126.7, 128.4, 129.1, 132.7, 134.5;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.4; MS (FAB
-) m/z (%): 273 ([M-Na]
-, 30), 199 (40), 168 (22), 153 (100), 152 (71), 122 (22); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
11H
12BCl
2O
3-, 273.0262; found, 273.0261.
【0103】
実施例8で得られたトリオールボレート塩[3-クロロ-5-メトキシカルボニルフェニル)トリオールボレートナトリウム塩]:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.56 (s, 6H), 3.82 (s, 3H), 7.49-7.52 (m, 2H), 7.91 (s, 1H).;
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.2, 52.4, 74.2, 125.0, 129.5, 131.9, 132.3, 137.0, 167.0;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 1.25; MS (FAB
-) m/z (%): 297 ([M-Na]
- 24), 199 (42), 168 (30), 153 (100), 122 (12); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
13H
15BClO
5-, 297.0707; found, 297.0695.
【0104】
実施例9で得られたトリオールボレート塩[3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)フェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.57 (s, 6H), 7.44 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.66 (s, 1H).;
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.5, 35.2, 74.2, 121.0,121.6, 122.1, 123.7, 127.7, 139.2;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = -1.00; MS (FAB
-) m/z (%): 351 ([M-Na]
-,6), 306 (67), 305 (66), 199 (40), 168 (32), 153 (100), 152 (59), 122 (12); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
12H
12BBrF
3O
3-, 351.0020; found, 351.0014.
【0105】
実施例10で得られたトリオールボレート塩(2-チオフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.46 (s, 3H), 3.54 (s, 6H), 6.70-6.71 (m, 1H), 6.79-6.81 (m, 1H), 7.07 (d, J =4.56 Hz 1H).;
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.7, 34.9, 74.1, 123.8, 126.4, 126.9;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = -0.077, MS (FAB
-) m/z (%): 211 ([M-Na]
-,20), 199 (38), 153 (100), 152 (59), 122 (15); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
9H
12BO
3S
-, 211.0606; found, 211.0604.
【0106】
実施例11で得られたトリオールボレート塩(2-ベンゾチオフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.49 (s, 3H), 3.58 (s, 6H), 6.94 (s 1H), 7.04-7.08 (m, 1H), 7.12-7.16 (m 1H), 7.58 (d, J = 7.80 Hz, 1H), 7.73 (d, J =7.80 Hz, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.0, 74.1, 121.7, 122.2, 122.3, 122.9, 123.3, 141.9, 142.3;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.60; MS (FAB
-) m/z (%): 261 ([M-Na]
-, 27), 199 (48), 168 (23), 153 (100), 122 (21); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
13H
14BO
3S
-, 261.0762; found, 261.0760
【0107】
実施例12で得られたトリオールボレート塩(2-フラニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.45 (s,3H), 3.52 (s, 6H), 5.89 (s 1H), 6.09 (s 1H), 7.29 (s 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.0, 73.7, 109.0, 110.3, 140.9;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.60; MS (FAB
-) m/z (%): 195 ([M-Na]
-, 38), 168 (18), 152 (47), 122 (23); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
9H
12BO
4-, 195.0834; found, 195.0827.
【0108】
実施例13で得られたトリオールボレート塩(2-ベンゾフラニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.49 (s, 3H), 3.57 (s, 6H), 6.29 (s, 1H), 7.00-7.02 (m, 2H), 7.32-7.34 (m, 1H), 7.37-7.39 (m, 1H);
13C NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.0, 73.9, 106.9, 110.7, 120.0, 121.3, 121.6, 130.1, 156.0;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = -0.99; MS (FAB
-) m/z (%): 245 ([M-Na]
-, 43), 199 (41), 168 (30), 153 (100), 122 (15); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
13H
14BO
4-, 245.0991; found, 245.0992.
【0109】
実施例14で得られたトリオールボレート塩(1H-2-インドリルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO): δ = 0.50 (s, 3H), 3.60 (s, 6H), 5.94 (s, 1H), 6.72-6.74 (m, 2H), 7.20 (d, J = 9.16 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 6.84 Hz, 1H), 9.81 (s, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.8, 35.0, 74.0, 102.2, 110.9, 117.2, 117.9, 118.7, 129.9, 137.2;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = -0.33; MS (FAB
-) m/z (%): 244 ([M-Na]
-, 20), 199 (40), 153 (100), 151 (59), 122 (14); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
13H
15BNO
3-, 244.1150; found, 244.1151.
【0110】
実施例15で得られたトリオールボレート塩(1H-2-ピローリルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.46 (s, 3H), 3.54 (s, 6H), 5.61 (s, 1H), 5.70 (s, 1H), 6.37 (s, 1H), 9.27 (brs, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.3, 34.3, 73.5, 106.0, 108.1, 114.3;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.64; MS (FAB
-) m/z (%): 194 ([M-Na]
-, 2), 193 (1), 168 (26), 153 (100), 152 (60), 122 (13); HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
9H
13BNO
3-, 194.0994; found, 194.0994
【0111】
実施例16で得られたトリオールボレート塩(1-メチル-1H-4-ピラゾリルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.47 (s, 3H), 3.57 (s, 6H), 3.75 (s, 3H), 5.74 (s, 1H), 6.96 (s, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 6.5, 16.7, 38.7, 74.0, 108.2, 136.1;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.98; MS (FAB
-) m/z (%): 209 ([M-Na]
-,52), 199 (43), 168 (30), 153 (100), 152 (70).; HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
9H
14BN
2O
3-, 209.1103; found, 209.1107.
【0112】
実施例17で得られたトリオールボレート塩(3-トリフルオロメチルフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.58 (s, 6H), 7.19-7.24 (m, 2H), 7.56 (d, J = 7.32 Hz, 1H), 7.61 (s, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 36.7, 35.1, 74.2, 121, 124.7, 126.6, 126.9, 127.4, 129.0, 136.5;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.33; HRMS (FAB
-): m/z calcd. for C
12H
13BF
3O
3-, 273.0915; found, 273.0919.
【0113】
実施例18で得られたトリオールボレート塩(4-トリフルオロメチルフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.58 (s, 6H), 7.28 (d, J = 7.32 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 7.76 Hz, 2H);
13C NMR (100 MHz, DMSO): δ = 16.7, 35.1, 74.2, 122,4, 133.0;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.44; MS (FAB
-) m/z (%): 273 ([M-Na]
-, 100), 272 (25), 199 (9), 168 (9), 153 (28), 122 (8); HRMS (FAB
-): m/z: calcd. for C
12H
13BF
3O
3-, 273.0915; found 273.0907.
【0114】
実施例19で得られたトリオールボレート塩(3-メトキシフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.56 (s, 6H), 3.65 (s, 3H), 6.45-6.47 (m, 1H), 6.88-6.89 (m, 3H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.8, 35.0, 54.9, 74.1, 110.9, 117.0, 125.2, 126.9, 158.1;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.73; MS (FAB
-) m/z (%): 235 ([M-Na]
-, 16), 199 (41), 153 (100), 152 (60), 122 (14); HRMS (FAB
-): m/z: calcd. for C
12H
16BO
4-, 235.1147; found, 235.1151.
【0115】
実施例20で得られたトリオールボレート塩(4-メトキシフェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.46 (s,3H), 3.55 (s, 6H), 3.63 (s, 3H), 6.55 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.20 (d, J = 7.8 Hz, 2H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.8, 34.9, 54.9, 74.1, 111.8, 133.5, 157.2;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 1.24.; HRMS (FAB
-): m/z: calcd. for C
12H
16BO
4-, 235.1147; found, 235.1159.
【0116】
実施例21で得られたトリオールボレート塩(フェニルトリオールボレートナトリウム塩):
1H-NMR (DMSO-d
6, 400MHz) δ: 0.47 (s, 3H), 3.56 (s, 6H), 6.88-6.98 (m, 3H), 7.30 (d, J = 6.8 Hz, 2H);
13C-NMR (DMSO-d
6, 100MHz) δ:16.5, 73.9, 124.2, 125.7, 132.3;
11B-NMR (DMSO-d
6, 128MHz) δ:4.39; MS (m/z) 56(5), 104(100), 148(27), 205(10, M
+); exact mass calcd for C
11H
14 BO
3: 205.1036; found 205.1041; anal. calcd for C
11H
14BKO
3: C, 54.12, H, 5.78; found C, 52.76, H, 5.65.
実施例7〜21の結果より、本発明の製造方法によれば、従来のトリオールボレート塩の製造方法では製造することができなかったカルボニル基、カルボニルオキシ基、2級アミノ基又は3級アミノ基を有するトリオールボレート塩を製造できることが判った。
【0117】
実施例22〜26 各種出発物質を用いたトリオールボレートカリウム塩の製造方法
実施例1の3,5-ジクロロフェニルボロン酸ピナコールの代わりに、表3に記載の各種置換基を有するボロン酸ピナコールを用い、水酸化ナトリウム1.0mmolの代わりに水酸化カリウム0.9mmolを用い、反応温度を90℃とした以外は、実施例1と同様の方法により実験を行い、トリオールボレートカリウム塩を得た。
それぞれの収率を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
尚、実施例22〜26により得られた有機トリオールボレート塩の物性データは以下の通りである。
実施例22
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.49 (s, 3H), 3.59 (s, 6H), 6.92-7.01 (m, 3H), 7.33 (d, J = 7.5 Hz, 2H);
13C NMR: δ =16.5, 34.6, 73.8, 124.4, 126.0, 132.3; HRMS m/z: calc. for C
11H
14BO
3 205.1042, found 205.1041.
【0120】
実施例23
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.57 (s, 6H), 3.64 (s, 3H), 6.57 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.1 Hz, 2H);
13C NMR (100 Hz, DMSO-d
6): δ = 16.5, 34.6, 54.6, 73.8, 111.6, 133.1, 156.9; MS m/z (%): 235 (M
+, 100), 234 (24); HRMS m/z: calc. for C
12H
16BO
4 235.1142, found 235.1159.
【0121】
実施例24
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.47 (s, 3H), 3.56 (s, 6H), 3.66 (s, 3H), 6.44-6.47 (m, 1H), 6.86-6.89 (m, 3H);
13C NMR(100 Hz, DMSO-d
6): δ = 16.6, 35.0, 54.9, 73.7, 111.7, 118.2, 125.2, 126.9, 158.6; MS m/z (%): 235 ([M-K]
+, 100), 199 (42), 153 (100), 122 (18); HRMS m/z: calc. for C
12H
16BO
4 235.1142, found 235.1151.
【0122】
実施例25
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.48 (s, 3H), 3.57 (s, 6H), 3.64 (s, 3H), 6.57 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.1 Hz, 2H);
13C NMR (100 Hz, DMSO-d
6): δ = 16.3, 34.7, 73.8, 122.2, 123.6, 124.5, 124.9, 125.4, 127.6, 132.7; MS m/z (%): 273 (M
+, 25), 272 (6), 258 (6), 245 (15), 153 (10), 148 (100), 146 (24); HRMS m/z: calc. for C
12H
13BF
3O
3 273.0915, found 273.0919.
【0123】
実施例26
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.49 (s, 3H), 3.61 (s, 6H), 7.20-7.27 (m, 2H), 7.59-7.65 (m, 2H);
13C NMR (100 Hz, DMSO-d
6): δ = 16.3, 34.8, 73.8, 121.2, 123.9, 126.7, 128.8, 136.2; HRMS m/z: calc. for C
12H
13BF
3O
3 273.0915, found 273.0919.
実施例22〜26の結果より、本発明の製造方法によれば、ホウ素との結合手を1位とした場合の3位又は4位に置換基を有するフェニル基を有するトリオールボレート塩も容易に製造できることが判った。
【0124】
実施例27 ピレニルトリオールボレートカリウム塩の製造方法
(1)ピレニルピナコールボロン酸エステルの合成(C-Hホウ素化方法)
ジ-μ-メトキソビス(1,5-シクロオクタジエン)二イリジウム(I)([Ie(OMe)(cod)]
2、和光純薬工業(株)製)1.66 mg(反応基質に対して0.1 mol%;0.01mmol)、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(dtbpy)(アルドリッチ社製)1.34 mg (反応基質に対して0.1 mol%;0.01mmol)、及びシクロヘキサン5 mlを25mlの枝つきフラスコに測りとり、室温で30分間攪拌した。その後、ビス(ピナコラート)ジボロン(B
2pin
2、和光純薬工業(株)製) 1397 mg(5.5 mmol)を入れ、最後にピレン(和光純薬工業(株)製)2022 mg(10 mmol)を入れて80℃で16時間攪拌した。反応後はジエチルエーテルと飽和食塩水で抽出しカラム精製し、ピレニルボロン酸ピナコールエステルを得た。以下に反応式を記載する(式中、Bpinは、ピナコールボロン酸エステルを表す。尚、Bpinは、以下同じものを表す。)
【0125】
(2) ピレニルトリオールボレートカリウム塩の製造
(1)で得られたピレニルボロン酸ピナコールエステル 932mg(1mmol)、トリス(ヒドロキシルメチル)エタン (和光純薬工業(株)製) 120mg(1mmol)、水酸化カリウム 50mg(0.9mmol)、ジオキサン 5ml、水 54μl (3mmol)を25ml用枝つきフラスコに入れ、60℃で16時間攪拌しながら反応させた。反応後、ヘキサン16 mlを入れて反応物を析出させ、固体をろ過、洗浄した。さらに、1 mmHg(1.33hPa)、60℃で乾燥し、単離・精製して、目的のトリオールボレート塩を得た(収率89%)。以下に、反応式を記載する。
得られたトリオールボレート塩の物性データを以下に示す。
〔物性データ〕
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.56 (s, 3H), 3.72 (s, 6H), 7.91-8.13 (m, 7H), 8.30 (s, 2H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 16.3, 34.7, 73.8, 122.4, 123.5, 124.6, 124.8, 125.1, 128.3, 128.6, 130.4, 130.5;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 1.72.; HRMS (FAB
-): m/z: calcd. for C
21H
18BO
3-, 329.1354; found, 329.1353.
実施例27の結果より、本発明の製造方法によれば、ピレニル基を有するトリオールボレート塩を製造できることが判った。
【0126】
実施例28 3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリルトリオールボレートカリウム塩の製造方法
(1) 3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリルボロン酸ピナコールエステルの合成
ジオキサン (30 ml)に4-ヨード-3,5-ジメチルイソオキサゾール(東京化成工業(株)製) (3.56 g, 16 mmol), トリエチルアミン(和光純薬工業(株)製) (6.68 ml, 48mmol), ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(和光純薬工業(株)製) (0.56 g, 0.8 mmol)、 4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(和光純薬工業(株)製)(4.06 ml, 24 mmol)を入れ、還流下3時間攪拌した。反応液を濃縮した後、ジエチルエーテル(30mL)を入れ攪拌し、不溶物をろ過した。ろ液を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過した。ろ液を濃縮し、カラム精製を行い、目的物を2.1 g収率62%で得た。 1H NMR (CDCl3, 250 MHz);1.30 (s, 12H), 2.33 (s, 3H), 2.51 (s, 3H)
【0127】
(2) 3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリルトリオールボレートカリウム塩の合成
出発物質としてピレニルボロン酸ピナコールエステル 1mmolの代わりに(1)で得た3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリルピナコールエステルを用いた以外は、実施例27の(2)と同様に実験を行い、3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリルトリオールボレートカリウム塩を得た(収率:82%)。
【0128】
得られたトリオールボレート塩の物性データを以下に示す。
〔物性データ〕
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.41 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 3.51 (s, 6H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6): δ = 12.1, 12.3, 16.3, 34.4, 73.5, 163.3, 191.1;
11B NMR (128 MHz, DMSO-d
6): δ = 0.07; HRMS (FAB
-): m/z: calcd. for C
10H
15BNO
4-, 224.1100; found, 235.1098.
実施例28の結果より、本発明の製造方法によれば、3級アミノ基及びオキシ基を有する複素環基を有するトリオールボレート塩を製造できることが判った。
【0129】
実験例29 ワンポット法による3,5-ジクロロフェニルトリオールボレートナトリウム塩の合成方法
50mlの枝つきフラスコにジ-μ-メトキソビス(1,5-シクロオクタジエン)二イリジウム(I)(和光純薬工業(株)製)50 mg(反応基質に対して3 mol%;0.225mmol)、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(dtbpy)(アルドリッチ社製)40.2 mg(反応基質に対して3 mol%;0.225mmol)、n-ヘキサン 30mlを測りとり室温で30分攪拌した。その後、ピナコールボロン酸(和光純薬工業(株)製) 1 ml(7.5 mmol)を入れ、最後に1,3-ジクロロベンゼン730 mg(5 mmol)を入れて室温で、16時間攪拌して反応させた。反応終了後ショートカラムで処理し、ガスクロマトフラフィーによって生成物の量を決定した後、トリオール540 mg(4.5 mmol)、水酸化ナトリウム 180 mg(4.5 mmol)、ジオキサン 23 ml、及び水 243μl(13.5 mmol)を入れ30℃、16時間攪拌し反応させた。反応後、ヘキサン70 mlに入れて目的物を析出させ、得られた固体をろ過、洗浄した後に0.5 mmHg(0.67hPa)、60℃で乾燥することで単離・精製した。
【0130】
この結果より、ワンポットで行っても目的のトリオールボレート塩を容易に製造できることが判った。
【0131】
実験例1 ピレニルトリオールボレートカリウム塩を用いたカップリング方法
酢酸パラジウム(0.03 mmol)、ジメチルホルムアミド(4 ml)及び水(1ml)を25ml用枝つきフラスコに入れ、室温で30分攪拌した。そこに実施例27で得たピレニルトリオールボレートナトリウム塩(1.5mmol)及び4-ブロモ安息香酸メチル(東京化成工業(株)製) (1 mmol)を入れ、室温で10時間攪拌し、反応させた。反応終了後、ジエチルエーテルと飽和食塩水を用いて目的物を抽出し、硫酸マグネシウムで処理した。その後、カラムクロマトグラフィーで単離・精製を行い、4-ピレニル安息香酸メチルを得た(収率99%以上)。
この結果より、本発明の製造方法により得られた本発明のトリオールボレート塩を用いることで、高効率にカップリング反応を進めることができることが判った。
【0132】
実験例2 1H-2-ピロリルトリオールボレートナトリウム塩を用いたカップリング方法
酢酸パラジウム(0.05 mmol)、ジフェニルホスフィノプロパン(0.055 mmol)及びジメチルホルムアミド(5 ml)を25ml用枝つきフラスコに入れ、室温で30分攪拌した。そこに実施例15で得られた1H-2-ピロリルトリオールボレートナトリウム塩 (2mmol)、p-ブロモアセトフェノン(和光純薬工業(株)製) (1 mmol)、及びヨウ化銅(I)(0.2 mmol)を入れ、80℃で16時間攪拌し反応させた。反応終了後、ジエチルエーテルと飽和食塩水を用いて目的物を抽出し、硫酸マグネシウムで処理した。その後、カラムクロマトグラフィーで単離・精製し、1-(1H-2-ピロリルフェニル)エタノンを得た(収率99%以上)。
この結果より、本発明の製造方法により得られた本発明のトリオールボレート塩を用いることで、高効率にカップリング反応を進めることができることが判った。