特許第5928504号(P5928504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928504
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20160519BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160519BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20160519BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20160519BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20160519BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20160519BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   C02F1/58 F
   C02F1/44 F
   B01D65/10
   B01D71/56
   G01M3/00 F
   G01M3/20 Z
   B01D61/02 500
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-29845(P2014-29845)
(22)【出願日】2014年2月19日
(62)【分割の表示】特願2012-106295(P2012-106295)の分割
【原出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-128802(P2014-128802A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−037766(JP,A)
【文献】 特表平11−504855(JP,A)
【文献】 特開2005−137949(JP,A)
【文献】 特開2004−202313(JP,A)
【文献】 特開2005−296414(JP,A)
【文献】 特開2010−104919(JP,A)
【文献】 特開平09−057076(JP,A)
【文献】 特開平08−126882(JP,A)
【文献】 特開昭57−010305(JP,A)
【文献】 特開昭60−137403(JP,A)
【文献】 特開昭47−042579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
C02F 1/58−1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装飲食物の殺菌処理装置からホルムアルデヒド含有排水を回収する回収工程と、
前記排水に対し、亜硫酸水素塩を添加し、前記排水に含まれるホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを、pH5〜7(但し、pH7を除く)であり、かつ、反応温度が20℃以上60℃以下であり、かつ、反応時間が10分以上10時間以下である条件で反応させてヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する反応工程と、
前記反応工程で得られたpH5〜7(但し、pH7を除く)の反応工程後排水を、そのままポリアミド系逆浸透膜に供給することにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが除去された透過水を製造する除去工程と、
前記除去工程で製造されたホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下の透過水を用水として再利用する利用工程と、
を含む、水処理方法。
【請求項2】
次式で表される有効モル比が1以上となる量で、前記亜硫酸水素塩を前記排水に添加する請求項1に記載の水処理方法。
有効モル比=(亜硫酸水素イオンのモル数−酸化剤のモル数)/ホルムアルデヒドのモル数
【請求項3】
包装飲食物の殺菌処理装置からホルムアルデヒド含有排水を回収する回収手段と、
前記排水に対し、亜硫酸水素塩を添加する亜硫酸水素塩添加手段と、
前記排水と前記亜硫酸水素塩とを混合し、前記排水に含まれるホルムアルデヒドと前記亜硫酸水素塩から生成した亜硫酸水素イオンとを、pH5〜7(但し、pH7を除く)であり、かつ、反応温度が20℃以上60℃以下であり、かつ、反応時間が10分以上10時間以下である条件で反応させて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する混合手段と、
前記混合手段で得られたpH5〜7(但し、pH7を除く)の反応工程後排水を、そのままポリアミド系逆浸透膜に供給することにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが除去された透過水を製造する除去手段と、
前記除去手段で製造されたホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下の透過水を用水として再利用する利用手段と、
を備える水処理システム。
【請求項4】
次式で表される有効モル比が1以上となる量で、前記亜硫酸水素塩を前記排水に添加する請求項3に記載の水処理システム。
有効モル比=(亜硫酸水素イオンのモル数−酸化剤のモル数)/ホルムアルデヒドのモル数
【請求項5】
前記ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれる全有機炭素量と、前記ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれる全有機炭素量との差であるTOC差を測定する全有機炭素量測定手段を備え、
前記TOC差に基づいて前記ポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれる亜硫酸水素イオン濃度と、前記ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれる亜硫酸水素イオン濃度との差を測定する亜硫酸水素イオン測定手段を備え、
前記亜硫酸水素イオン濃度の差に基づいて前記ポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれるヒドロキシメタンスルホン酸イオン濃度と、前記ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれるヒドロキシメタンスルホン酸イオン濃度との差を測定するヒドロキシメタンスルホン酸イオン測定手段を備え、
前記ヒドロキシメタンスルホン酸イオン濃度の差に基づいて前記ポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断する、請求項3に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを含む原水からホルムアルデヒドを除去することのできる水処理方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において排出される排水には、ホルムアルデヒド等の有害物質が含まれる場合がある。また、飲用又は食品加工用の原水(例えば、地下水等)からホルムアルデヒド等の有害物質が検出されることがある。
【0003】
従来、ホルムアルデヒド等の有機物質を含む原水からこれらの有機物質を除去する方法としては、生物処理を用いてこれらの有機物質を分解する工程を含む方法が公知である。例えば、特許文献1には、分離膜を備えたメンブレンバイオリアクターを用いて曝気しながら、40℃以上の高温で、ホルムアルデヒド等の有機物を含有する高温廃水を処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、有機性廃水を活性汚泥処理し、活性汚泥処理水に接触するように設置された分離膜によって活性汚泥処理水を固液分離して膜透過水を取得した後、該膜透過水を逆浸透膜処理することにより浄化された再生水を造水する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268468号公報
【特許文献2】特開2008−73622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載の方法では、微生物を培養して活性汚泥を得るのに多大な時間を要し、迅速に廃水処理を行うことが容易ではない。また、環境変化により、活性汚泥における微生物の組成、状態等が影響を受け、廃水処理の効率が変動しやすいため、廃水処理システムを安定に稼動させることが難しい。
【0006】
迅速に安定して廃水処理を行う手段として、例えば、逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)、イオン交換樹脂、多孔質吸着材が一般的に用いられている。しかし、これらの手段を用いて、原水に含まれるホルムアルデヒドを除去しようとする場合には、ホルムアルデヒドが、電荷を有しない分子量30の低分子化合物である点が問題となる。例えば、RO膜は、分子量60を超える物質及び電荷を有する物質の透過を阻止する傾向にあるのに対し、電荷を有しない分子量60以下の物質を透過しやすい。そのため、ホルムアルデヒドはRO膜を透過しやすく、RO膜によるホルムアルデヒドの除去率は20〜30%にとどまる。また、ホルムアルデヒドは、電荷を有しないため、イオン交換によるイオン交換樹脂への吸着を起こさない。よって、イオン交換樹脂によって、原水に含まれるホルムアルデヒドを十分に除去することは困難である。更に、活性炭等の多孔質吸着材はホルムアルデヒドの吸着量が小さく、多孔質吸着材を用いて、原水に含まれるホルムアルデヒドを十分に除去することも難しい。
【0007】
本発明は、迅速かつ安定的に、ホルムアルデヒドを含む原水からホルムアルデヒドを除去することのできる水処理方法及び水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、包装飲食物の殺菌処理装置からホルムアルデヒド含有排水を回収する回収工程と、前記排水に対し、亜硫酸水素塩を添加し、前記排水に含まれるホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを、pH5〜7(但し、pH7を除く)であり、かつ、反応温度が20℃以上60℃以下であり、かつ、反応時間が10分以上10時間以下である条件で反応させてヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する反応工程と、前記反応工程で得られたpH5〜7(但し、pH7を除く)の反応工程後排水を、そのままポリアミド系逆浸透膜に供給することにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが除去された透過水を製造する除去工程と、前記除去工程で製造されたホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下の透過水を用水として再利用する利用工程と、を含む、水処理方法に関する。
上記水処理方法の具体的態様として、次式で表される有効モル比が1以上となる量で、前記亜硫酸水素塩を前記排水に添加することが挙げられる。
有効モル比=(亜硫酸水素イオンのモル数−酸化剤のモル数)/ホルムアルデヒドのモル数
【0009】
また、本発明は、包装飲食物の殺菌処理装置からホルムアルデヒド含有排水を回収する回収手段と、前記排水に対し、亜硫酸水素塩を添加する亜硫酸水素塩添加手段と、前記排水と前記亜硫酸水素塩とを混合し、前記排水に含まれるホルムアルデヒドと前記亜硫酸水素塩から生成した亜硫酸水素イオンとを、pH5〜7(但し、pH7を除く)であり、かつ、反応温度が20℃以上60℃以下であり、かつ、反応時間が10分以上10時間以下である条件で反応させて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する混合手段と、前記混合手段で得られたpH5〜7(但し、pH7を除く)の反応工程後排水を、そのままポリアミド系逆浸透膜に供給することにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが除去された透過水を製造する除去手段と、前記除去手段で製造されたホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下の透過水を用水として再利用する利用手段と、
を備える水処理システムに関する。
上記水処理システムの具体的態様として、次式で表される有効モル比が1以上となる量で、前記亜硫酸水素塩を前記排水に添加することが挙げられる。
有効モル比=(亜硫酸水素イオンのモル数−酸化剤のモル数)/ホルムアルデヒドのモル数
【0010】
上記水処理システムの具体的態様として、ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれる全有機炭素量と、ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれる全有機炭素量との差であるTOC差を測定する全有機炭素量測定手段を備え、このTOC差に基づいてポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断することが挙げられる。
【0011】
他の具体的態様として、上記水処理システムは、ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれる亜硫酸水素イオン濃度と、ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれる亜硫酸水素イオン濃度との差を測定する亜硫酸水素イオン測定手段を備え、この亜硫酸水素イオン濃度の差に基づいてポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断することが挙げられる。
また、他の具体的態様として、上記水処理システムは、ポリアミド系逆浸透膜の上流側に流れる液に含まれるヒドロキシスルホン酸イオン濃度と、ポリアミド系逆浸透膜の下流側に流れる液に含まれるヒドロキシスルホン酸イオン濃度との差を測定するヒドロキシスルホン酸イオン測定手段を備え、このヒドロキシスルホン酸イオン濃度の差に基づいて前記ポリアミド系逆浸透膜の劣化の程度を判断することが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、迅速かつ安定的に、ホルムアルデヒドを含む原水からホルムアルデヒドを除去することのできる水処理方法及び水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
図2】第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。
図3】原水に含まれるホルムアルデヒドと亜硫酸水素ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムとを反応させた後に残存するホルムアルデヒドの量をMBTH法により測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る水処理システム1について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、例えば、工場等において排出されるホルムアルデヒドを含んだ排水(原水W1)からホルムアルデヒドを除去し、工業用水等として再利用可能な再生水(処理水W4)を製造するものである。ホルムアルデヒドを含んだ排水としては、例えば、飲料缶や缶詰等の包装飲食物をレトルト釜やパストライザ等の殺菌処理装置において殺菌処理した後に回収される排水が挙げられる。上記のように殺菌処理した後に回収される排水に含まれるホルムアルデヒドは、包装飲食物の側面に印刷された絵柄の塗料等から溶出したものと考えられる。
【0016】
また、図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、例えば、ホルムアルデヒドを含む地下水等(原水W1)からホルムアルデヒドを除去し、飲用水又は食品加工用水(処理水W4)を製造するものである。水質基準に関する省令には、水道水に含まれるホルムアルデヒドの濃度は0.08mg/L以下でなければならないと定められている。飲用水又は食品加工用水として用いられる処理水W4は、上記の水質基準と同様に、ホルムアルデヒドの濃度が0.08mg/L以下であることが好ましい。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、亜硫酸水素イオン源化合物添加手段としての亜硫酸水素イオン源化合物添加装置2と、混合手段としての混合槽3と、加圧ポンプ4と、除去手段としての逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)5と、バルブ6及び7と、除去手段としての多孔質吸着材床塔8と、を備える。また、水処理システム1は、通水ラインL1、L2、L3、及びL7と、濃縮水ラインL4と、排水ラインL5と、濃縮水還流ラインL6と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0018】
水処理システム1によれば、混合槽3において、原水W1に含まれるホルムアルデヒド(アルデヒド類の一種)は、下記化学反応式に示すとおり、亜硫酸水素イオンとの反応によりヒドロキシメタンスルホン酸イオン(α−ヒドロキシスルホン酸イオンの一種)に変化する。ヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、分子量が111であり、かつ、電荷を有するため、RO膜モジュール5及び多孔質吸着材床塔8により除去される。処理水W4は、ホルムアルデヒドが除去された水として供給される。
【0019】
【化1】
【0020】
なお、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、上記化学反応式に示す逆反応により、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリの存在下で、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとに分解する。よって、水処理システム1では、混合槽3において、ホルムアルデヒドをヒドロキシメタンスルホン酸イオンに転換するのに加え、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの分解によりホルムアルデヒドが再生することを防ぐために、RO膜モジュール5及び多孔質吸着材床塔8によりヒドロキシメタンスルホン酸イオンを除去する。
【0021】
以下、水処理システム1の各部について詳しく説明する。通水ラインL1は、原水W1を混合槽3に供給するラインである。この原水W1には、ホルムアルデヒドが含まれている。原水W1には、ホルムアルデヒド以外の有機成分が含まれている場合がある。通水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。通水ラインL1の下流側の端部は、混合槽3に接続されている。
【0022】
亜硫酸水素イオン源化合物添加装置2は、水に溶解して亜硫酸水素イオンを生成する亜硫酸水素イオン源化合物を、混合槽3に供給された原水W1に添加する手段である。亜硫酸水素イオン源化合物は、そのままの状態で原水W1に添加してもよく、あるいは、水溶液として原水W1に添加してもよい。そのままの状態で原水W1に添加された亜硫酸水素イオン源化合物は、原水W1に溶解して亜硫酸水素イオンを生成する。また、亜硫酸水素イオン源化合物を水溶液として原水W1に添加する場合、該水溶液中では既に亜硫酸水素イオン源化合物から亜硫酸水素イオンが生成している。亜硫酸水素イオン源化合物が水に溶解して生成した亜硫酸水素イオンは、原水W1に含まれるホルムアルデヒドと反応して、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する。
【0023】
亜硫酸水素イオン源化合物としては、水に溶解して亜硫酸水素イオンを生成するものであれば特に限定されず、例えば、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、及び亜硫酸が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。上記で例示した亜硫酸水素イオン源化合物及びこれらの亜硫酸水素イオン源化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物は、還元剤であるが、その還元作用は温和なので、RO膜等の除去手段への悪影響は小さい。また、上記で例示した亜硫酸水素イオン源化合物は、毒性が低く、食品添加物としても使用することができるものであることから、本発明により得られる処理水にこれらの亜硫酸水素イオン源化合物が残存していても、その処理水を飲用又は食品加工用に安全に用いることができる。中でも、ホルムアルデヒドとの反応に用いる際に、低濃度であってもよく、また、pHを特に調整しなくてもよい点で、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩が好ましい。亜硫酸水素イオン源化合物は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0024】
混合槽3は、通水ラインL1を通じて混合槽3に供給された原水W1と、亜硫酸水素イオン源化合物添加装置2によって混合槽3中の原水W1に添加された亜硫酸水素イオン源化合物とを混合し、原水W1に含まれるホルムアルデヒドを亜硫酸水素イオンと反応させて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する手段である。混合槽3は、通水ラインL1の下流側の端部に接続されている。混合槽3の下流側には、混合槽3において生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンを含む原水W1を通水可能な通水ラインL2が接続されている。この通水ラインL2の下流側の端部は、RO膜モジュール5の一次側入口ポートに接続されている。
【0025】
加圧ポンプ4は、通水ラインL2に設けられている。加圧ポンプ4は、混合槽3から供給される原水W1を吸入し加圧して、RO膜モジュール5に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ4は、図示しない制御装置によって運転(駆動及び停止)が制御される。
【0026】
RO膜モジュール5は、加圧ポンプ4から吐出された原水W1を、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが大幅に除去された透過水W2と、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール5は、通水ラインL2の下流側の端部に接続されている。
【0027】
RO膜モジュール5は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール5は、これらRO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。なお、RO膜には、通常のRO膜よりも細孔がルーズなナノ濾過膜(NF膜)も含まれる。よって、RO膜モジュール5としては、NF膜を有するNF膜モジュールを用いることもできる。
【0028】
RO膜モジュール5には、透過水W2を通水可能な通水ラインL3と、濃縮水W3を通水可能な濃縮水ラインL4とが接続されている。通水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール5の二次側ポートに接続されている。通水ラインL3の下流側の端部は、多孔質吸着材床塔8に接続されている。通水ラインL3は、RO膜モジュール5で製造された透過水W2を多孔質吸着材床塔8に供給する。
【0029】
濃縮水ラインL4は、RO膜モジュール5から濃縮水W3を送出するラインである。濃縮水ラインL4の上流側の端部は、RO膜モジュール5の一次側出口ポートに接続されている。濃縮水ラインL4の下流側の端部には、分岐部J1が設けられている。濃縮水ラインL4は、分岐部J1において、排水ラインL5及び濃縮水還流ラインL6に分岐している。
【0030】
排水ラインL5は、RO膜モジュール5からの濃縮水W3の一部を水処理システム1の系外へ排水するラインである。排水ラインL5の上流側の端部は、分岐部J1において濃縮水ラインL4に接続されている。排水ラインL5には、バルブ6が設けられている。バルブ6は、排水ラインL5を開閉することができる。
【0031】
濃縮水還流ラインL6は、RO膜モジュール5からの濃縮水W3の残部を、通水ラインL2における加圧ポンプ4よりも上流側に還流させるラインである。濃縮水還流ラインL6の上流側の端部は、分岐部J1において濃縮水ラインL4に接続されている。濃縮水還流ラインL6の下流側の端部は、分岐部J2において通水ラインL2に接続されている。分岐部J2は、混合槽3と加圧ポンプ4との間に配置されている。濃縮水還流ラインL6には、バルブ7が設けられている。バルブ7は、濃縮水還流ラインL6を開閉することができる。即ち、RO膜モジュール5は、クロスフローによる膜分離処理が可能に構成されている。
【0032】
多孔質吸着材床塔8は、透過水W2に残存するヒドロキシメタンスルホン酸イオンを多孔質吸着材により吸着して除去するものである。多孔質吸着材床塔8は、通水ラインL3の下流側の端部に接続されている。多孔質吸着材床塔8には、多孔質吸着材床が収容されている。多孔質吸着材床に用いられる多孔質吸着材としては、例えば、粉末状、粒状、又は繊維状の活性炭や活性アルミナが挙げられる。多孔質吸着材床塔8の下流側には、多孔質吸着材床塔8で製造された処理水W4を通水可能な通水ラインL7が接続されている。
【0033】
通水ラインL7は、多孔質吸着材床塔8で製造された処理水W4を需要先へ送出するラインである。通水ラインL7の上流側の端部は、多孔質吸着材床塔8に接続されている。通水ラインL7の下流側の端部は、需要先の装置等(不図示)に接続されている。
【0034】
なお、図示を省略するが、上述した通水ラインL1、L2、L3、及びL7、濃縮水ラインL4、排水ラインL5、並びに濃縮水還流ラインL6には、原水W1、透過水W2、濃縮水W3、並びに処理水W4及び処理水W5(図2参照)を送出するポンプや、流路を開閉するバルブ等が適宜設けられている。これらのポンプやバルブ等も、図示しない制御装置によって制御される。
【0035】
次に、第1実施形態に係る水処理システム1による水処理方法(水処理システム1の動作)について、図1を参照しながら説明する。水処理システム1による水処理方法は、原水W1に含まれるホルムアルデヒドを亜硫酸水素イオンと反応させてヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する反応工程と、反応工程で生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンを除去する除去工程と、を含む。
【0036】
まず、反応工程について説明する。水処理システム1が運転されると、原水W1は、通水ラインL1を介して混合槽3に供給される。一方、水に溶解して亜硫酸水素イオンを生成する亜硫酸水素イオン源化合物が、亜硫酸水素イオン源化合物添加装置2により、混合槽3に供給された原水W1に添加される。混合槽3では、原水W1と上記亜硫酸水素イオン源化合物とが混合され、原水W1に含まれるホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオン源化合物から生成した亜硫酸水素イオンとが反応して、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが生成する。
【0037】
反応工程における反応条件について説明する。反応時間は10分〜10時間程度が好ましい。反応時間が上記の範囲内であれば、反応が十分に進行し、かつ、生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンが分解してホルムアルデヒドが再生することを抑制することができる。
【0038】
亜硫酸水素イオンとホルムアルデヒドとのモル比(亜硫酸水素イオン/ホルムアルデヒド)は、通常、1以上であればよい。なお、上記モル比を算出する場合、亜硫酸水素イオンのモル数から、原水W1中に含まれる次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤のモル数を差し引いておく必要がある。亜硫酸水素イオンは、還元剤として作用するため、原水W1中に含まれる酸化剤と反応して失われてしまう。亜硫酸水素イオンのモル数から、原水W1中に含まれる酸化剤のモル数を差し引いておくことにより、亜硫酸水素イオンとホルムアルデヒドとの有効モル比を算出することができる。
【0039】
反応時のpHは、3〜9が好ましく、5〜7がより好ましい。反応時のpHが上記の範囲内であれば、反応が十分に進行することに加え、除去工程においては、RO膜モジュール5及び多孔質吸着材床塔8によるヒドロキシメタンスルホン酸イオンの除去機能を損ねにくい。
【0040】
また、反応温度は5〜95℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。反応温度が上記の範囲内であれば、十分な反応速度で反応を進行させることが容易である。
【0041】
次に、除去工程について説明する。混合槽3において生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンを含む原水W1は、通水ラインL2を介して加圧ポンプ4に供給される。加圧ポンプ4により加圧された原水W1は、更に通水ラインL2を介してRO膜モジュール5に供給される。RO膜モジュール5に供給された原水W1は、RO膜モジュール5のRO膜により、透過水W2と濃縮水W3とに膜分離処理される。透過水W2において、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量は大幅に低減している。
【0042】
なお、RO膜モジュール5で発生した濃縮水W3は、バルブ6及び7を適宜開閉することにより、濃縮水ラインL4、分岐部J1、及び濃縮水還流ラインL6を介して、分岐部2において通水ラインL2に還流される。また、RO膜モジュール5で発生した濃縮水W3の一部は、バルブ6及び7を適宜開閉することにより、濃縮水ラインL4、分岐部J1、及び排水ラインL5を介して水処理システム1の系外へ排水される。
【0043】
RO膜モジュール5により製造された透過水W2は、通水ラインL3を介して多孔質吸着材床塔8に供給される。多孔質吸着材床塔8に供給された透過水W2は、多孔質吸着材床塔8に収容された多孔質吸着材床を通過する。その際、透過水W2に残存していたヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、多孔質吸着材床中の多孔質吸着材に接触して吸着し、透過水W2から除去される。これにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が更に低減した処理水W4を得ることができる。多孔質吸着材床塔8により製造された処理水W4は、通水ラインL7を介して需要先の装置等(不図示)に供給される。
【0044】
処理水W4において、ホルムアルデヒドの濃度は、0.08mg/L以下であることが好ましい。また、処理水W4において、全有機炭素(以下、「TOC」ともいう)は、5mgC/L以下であることが好ましい。
【0045】
上述した第1実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0046】
原水W1に含まれるホルムアルデヒドは、混合槽3において亜硫酸水素イオンとの反応によりヒドロキシメタンスルホン酸イオンに変化する。RO膜モジュール5では、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが高い除去率で除去されて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が大幅に低減した透過水W2が得られる。多孔質吸着材床塔8では、透過水W2に残存している少量のヒドロキシメタンスルホン酸イオンが高い除去率で除去されて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が更に低減した処理水W4が得られる。このように、第1実施形態に係る水処理システム1によれば、ホルムアルデヒドを含む原水W1からホルムアルデヒドを高い除去率で除去することができる。
【0047】
混合槽3におけるホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応は、常温でも加熱下でも十分に進行する。そのため、原水W1として、幅広い温度の水を用いることができる。例えば、レトルト殺菌後の排水等の、温度の高い水であっても、原水W1として用いることができる。よって、混合槽3における反応を進行させるために原水W1の温度を調整する必要がなく、高いエネルギー効率で、原水W1からホルムアルデヒドを除去することができる。
【0048】
RO膜モジュール5及び多孔質吸着材床塔8では、ホルムアルデヒド及びヒドロキシメタンスルホン酸イオン以外の有機成分の一部や無機成分の一部を除去することもできる。よって、処理水W4では、これらの成分の量も低減している。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aについて、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
【0050】
図2に示すように、本実施形態に係る水処理システム1Aは、亜硫酸水素イオン源化合物添加装置2と、混合槽3と、加圧ポンプ4と、除去手段としてのRO膜モジュール5と、バルブ6及び7と、除去手段としての陰イオン交換樹脂床塔9と、を備える。また、水処理システム1Aは、通水ラインL1、L2、L3、及びL8と、濃縮水ラインL4と、排水ラインL5と、濃縮水還流ラインL6と、を備える。つまり、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、第1実施形態に係る水処理システム1の多孔質吸着材床塔8に代えて、陰イオン交換樹脂床塔9を備える点が異なる。
【0051】
陰イオン交換樹脂床塔9は、透過水W2に残存するヒドロキシメタンスルホン酸イオンを陰イオン交換樹脂(例えば、Cl形の強塩基性陰イオン交換樹脂)により吸着して除去するものである。陰イオン交換樹脂床塔9は、通水ラインL3の下流側の端部に接続されている。陰イオン交換樹脂床塔9には、陰イオン交換樹脂床が収容されている。陰イオン交換樹脂床塔9の下流側には、陰イオン交換樹脂床塔9で製造された処理水W5を通水可能な通水ラインL8が接続されている。
【0052】
通水ラインL8は、陰イオン交換樹脂床塔9で製造された処理水W5を需要先へ送出するラインである。通水ラインL8の上流側の端部は、陰イオン交換樹脂床塔9に接続されている。通水ラインL8の下流側の端部は、需要先の装置等(不図示)に接続されている。
【0053】
次に、第2実施形態に係る水処理システム1Aによる水処理方法(水処理システム1Aの動作)について、図2を参照しながら説明する。第2実施形態に係る水処理システム1Aによる水処理方法は、第1実施形態に係る水処理システム1による水処理方法とほぼ同様であり、RO膜モジュール5及び多孔質吸着材床塔8による除去工程に代えて、RO膜モジュール5及び陰イオン交換樹脂床塔9による除去工程を含む点が異なる。そのため、第1実施形態に係る水処理システム1による水処理方法と同様の部分については重複説明を省略し、陰イオン交換樹脂床塔9による除去工程における動作について説明する。
【0054】
RO膜モジュール5により製造された透過水W2は、通水ラインL3を介して陰イオン交換樹脂床塔9に供給される。陰イオン交換樹脂床塔9に供給された透過水W2は、陰イオン交換樹脂床塔9に収容された陰イオン交換樹脂床を通過する。その際、透過水W2に残存していたヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、陰イオン交換樹脂床中の陰イオン交換樹脂に接触して吸着し、透過水W2から除去される。これにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が更に低減した処理水W5を得ることができる。陰イオン交換樹脂床塔9により製造された処理水W5は、通水ラインL8を介して需要先の装置等(不図示)に供給される。
【0055】
処理水W5において、ホルムアルデヒドの濃度は、0.08mg/L以下であることが好ましい。また、処理水W5において、TOCは、5mgC/L以下であることが好ましい。
【0056】
上述した第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0057】
第2実施形態に係る水処理システム1Aでは、第1実施形態に係る水処理システム1における多孔質吸着材床塔8に代えて、陰イオン交換樹脂床塔9が用いられている。陰イオン交換樹脂床塔9では、透過水W2に残存している少量のヒドロキシメタンスルホン酸イオンが高い除去率で除去されて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が更に低減した処理水W5が得られる。このように、第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、ホルムアルデヒドを含む原水W1からホルムアルデヒドを高い除去率で除去することができる。
【0058】
RO膜モジュール5及び陰イオン交換樹脂床塔9では、ホルムアルデヒド及びヒドロキシメタンスルホン酸イオン以外の有機成分の一部や無機成分の少なくとも一部を除去することもできる。よって、処理水W5では、これらの成分の量も低減している。その他の効果は、第1実施形態に係る水処理システム1により奏されるものと同様である。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0060】
例えば、第1実施形態において、多孔質吸着材床塔8及び通水ラインL7を省略し、通水ラインL3の下流側の端部を需要先の装置等(不図示)に接続した構成としてもよい。この構成では、RO膜モジュール5で製造された透過水W2が処理水として用いられる。上述のとおり、透過水W2において、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量は大幅に低減している。よって、透過水W2を処理水として用いることができる。
【0061】
第1実施形態において、加圧ポンプ4、RO膜モジュール5、バルブ6及び7、通水ラインL3、濃縮水ラインL4、排水ラインL5、及び濃縮水還流ラインL6を省略し、通水ラインL2の下流側の端部を多孔質吸着材床塔8に接続した構成としてもよい。この構成では、混合槽3において生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、多孔質吸着材床塔8中の多孔質吸着材に吸着し除去される。これにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が大幅に低減した処理水W4を得ることができる。
【0062】
第2実施形態において、加圧ポンプ4、RO膜モジュール5、バルブ6及び7、通水ラインL3、濃縮水ラインL4、排水ラインL5、及び濃縮水還流ラインL6を省略し、通水ラインL2の下流側の端部を陰イオン交換樹脂床塔9に接続した構成としてもよい。この構成では、混合槽3において生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンは、陰イオン交換樹脂床塔9中の陰イオン交換樹脂に吸着し除去される。これにより、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの量が大幅に低減した処理水W5を得ることができる。
【0063】
第1及び第2実施形態において、除去手段が正常に機能しているか否かを監視するために、TOC測定手段を適宜設けた構成としてもよい。これらの実施形態の除去手段では、ヒドロキシメタンスルホン酸イオン等の有機成分の一部が除去されるので、除去手段の前後で、TOCには差が生じる。この差を監視することで、除去手段の機能の低下を検出することができる。具体的な構成としては、例えば、加圧ポンプ4とRO膜モジュール5との間、及び、通水ラインL3に、TOC測定手段を設けた構成が挙げられる。この構成では、TOC測定手段により、RO膜モジュール5前後におけるTOCの差を監視することができる。TOCの差が所定値以下となった場合、RO膜が劣化し、RO膜モジュール5によるTOC除去率が低下したと判断して、RO膜を交換する。同様にして、多孔質吸着材床塔8又は陰イオン交換樹脂床塔9の前後におけるTOCの差を監視し、TOCの差が所定値以下となった場合に、多孔質吸着材床塔8又は陰イオン交換樹脂床塔9によるTOC除去率が低下したと判断して、多孔質吸着材の交換又は陰イオン交換の再生若しくは交換を行う。TOC測定手段に代えて、亜硫酸水素イオン測定手段又はヒドロキシメタンスルホン酸イオン測定手段を用いてもよい。上記の各測定手段においては、例えば、紫外線吸光度、酸化還元電位等を用いて測定を行う。
【0064】
第1及び第2実施形態において、混合槽3の上流側に軟水化処理装置を設けた構成としてもよい。軟水化処理装置は、原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を陽イオン交換樹脂により吸着して除去するものである。原水W1を軟水化処理装置によって軟水化することにより、RO膜、多孔質吸着剤、陰イオン交換樹脂等の除去手段によるヒドロキシメタンスルホン酸イオンの除去率が向上しやすくなる。
【0065】
第1及び第2実施形態において、酸性薬剤添加装置、塩基性薬剤添加装置等のpH調整手段を設けた構成としてもよい。これにより、原水W1、透過水W2等のpHが適宜調整されるため、混合槽3において、最適のpHでホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを反応させることができ、また、RO膜モジュール5、多孔質吸着材床塔8、及び陰イオン交換樹脂床塔9において、最適のpHでヒドロキシメタンスルホン酸イオンを除去することができ、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの除去率を向上させることができる。例えば、第1及び第2実施形態において、混合槽3の上流側、分岐部J2と加圧ポンプ4との間、及び、通水ラインL3の少なくとも1ヶ所にpH調整手段を設けた構成としてもよい。
【0066】
第1及び第2実施形態において、処理水W4又は処理水W5と、ホルムアルデヒドを含まない希釈水とを混合して、需要先へ供給してもよい。これにより、残存するホルムアルデヒドの量が更に低減した水を得ることができる。希釈水は、ホルムアルデヒド、ヒドロキシメタンスルホン酸イオン、及びその他の有機成分を含まない水であることが好ましい。
【0067】
第1及び第2実施形態において、ホルムアルデヒドを含む原水W1に代えて、他のアルデヒド類、例えばアセトアルデヒド(分子量44)を含む原水W1、又は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとを含む原水W1を用いてもよい。アセトアルデヒドは、ホルムアルデヒドと同様に、分子量が60以下であり、かつ、電荷を有しないため、RO膜、多孔質吸着剤、陰イオン交換樹脂等の除去手段を用いて、アセトアルデヒドを含む原水からアセトアルデヒドを高い除去率で除去することは困難である。アセトアルデヒドを亜硫酸水素イオンと反応させると、α−ヒドロキシスルホン酸イオンの一種である1−ヒドロキシエタンスルホン酸イオン(分子量125)が生成する。1−ヒドロキシエタンスルホン酸イオンは、分子量が60を超え、かつ、電荷を有するため、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンと同様に、上記除去手段を用いて、高い除去率で除去することができる。よって、本発明によれば、アセトアルデヒドを含む原水からアセトアルデヒドを除去することもできるし、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとを含む原水からホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとを除去することもできる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[原水の調製]
レトルト殺菌後の排水(pH7)を50mL採取した。37重量%ホルムアルデヒド水溶液を水で1/1000(体積比)に希釈して得た希釈水溶液0.5mLを上記排水に添加して、以下の実施例1〜4並びに比較例1及び2で用いる原水を得た。GC/MS及びTOC計により測定したところ、この原水において、ホルムアルデヒド濃度は3.3mg/L、TOCは0.88mgC/Lであった。
【0070】
[実施例1〜4、比較例1及び2]ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応性
上記で調製した原水50.5mLに対し、表1に示す濃度となるように、還元剤である亜硫酸水素ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムを添加し、表1に示す反応温度で30分間攪拌して付加反応を行った。付加反応後の原水に含まれるホルムアルデヒドの量をMBTH法により相対的に測定した。即ち、付加反応後の原水に3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(以下、「MBTH」という)を添加してホルムアルデヒドとMBTHとを発色反応に供し、発色反応生成物の吸光度を分光光度計で測定した。上記発色反応生成物が620nmに示すピークの高さに基づいて、付加反応後の原水に含まれるホルムアルデヒドの量を比較した。結果を図3に示す。なお、MBTH法を行うに当たっては、市販のパックテスト((株)共立理化学研究所製)を用いた。
【0071】
【表1】
注)亜硫酸水素ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムとホルムアルデヒドとのモル比
【0072】
図3に示すとおり、原水を未処理のまま用いた比較例1では、620nmにピークが現れた。還元剤として亜硫酸水素ナトリウムを用いた実施例1〜4では、620nmにピークが見られなかった。このことから、亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとのモル比が1以上である場合、原水に含まれていたホルムアルデヒドのほとんどが亜硫酸水素ナトリウムと反応して消失したことが分かる。
【0073】
また、実施例1及び2より、亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとの反応は、常温でも60℃でも、30分という短時間で進行することが確認できた。これに対し、還元剤として亜硫酸水素ナトリウムの代わりにチオ硫酸ナトリウムを用いた比較例2では、620nmにおけるピークの高さが比較例1のものと同じであり、ホルムアルデヒドとチオ硫酸ナトリウムとは全く反応しなかったことが分かる。亜硫酸水素ナトリウムは亜硫酸水素イオンを生成するのに対し、チオ硫酸ナトリウムは亜硫酸水素イオンを生成しない。よって、ホルムアルデヒドは、亜硫酸水素イオンとの反応によりヒドロキシメタンスルホン酸イオンに転換し、原水から消失したことが分かる。
【0074】
[実施例5]RO膜を用いたシステムによるホルムアルデヒドの除去
図1に示す第1実施形態において、多孔質吸着材床塔8及び通水ラインL7を省略した構成を有する水処理システムを用いた水処理方法に相当する実験を行った。上記で調製した原水50.5mLに対し、63mg/L(亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとのモル比:5.5)となるように亜硫酸水素ナトリウムを添加し、常温で30分間攪拌して、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムとを反応させた。反応後の原水を、加圧ポンプを介してRO膜モジュールに導入した。RO膜としては、東レ(株)の逆浸透膜エレメントTMG20を用い、加圧ポンプによる圧力を0.6MPaに設定し、回収率50%で運転した。RO膜モジュールから流出した濃縮水及び透過水について、GC/MS及びTOC計を用いて、ホルムアルデヒド濃度及びTOCを測定した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
注)検出限界未満
【0076】
表2において原水と濃縮水との間で結果を比較すると、モル比5.5で亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとを反応させたことにより、ホルムアルデヒドの量が大幅に減少し、また、反応生成物は、RO膜モジュールでの分離により、ホルムアルデヒド以外のTOCとして濃縮水中に濃縮されたことが分かる。
【0077】
表2において濃縮水と透過水との間で結果を比較すると、濃縮水中のTOCは4.10mgC/Lであったのに対し、透過水中のTOCは0.60mgC/Lであり、RO膜モジュールでの分離により、濃縮水基準で約85%ものTOCが除去されたことが分かる。また、透過水からはホルムアルデヒドが検出されなかったことが分かる。
【0078】
以上は、図1に示す第1実施形態において、多孔質吸着材床塔8及び通水ラインL7を省略した構成を有する水処理システムを用いた水処理方法に相当する実験である。この実験で得られた透過水を多孔質吸着材又は陰イオン交換樹脂と接触させれば、更にTOCが低減した処理水を得られることが期待できる。よって、多孔質吸着材床塔8を更に有する第1実施形態の水処理システム1及び陰イオン交換樹脂床塔9を更に有する第2実施形態の水処理システム1Aでは、更に除去性能が向上していることは明らかである。
【0079】
[実施例6及び7]RO膜を用いたシステムによるホルムアルデヒドの除去
実施例5と同様の水処理システムを用いた水処理方法に相当する実験を行った。上記実施例及び比較例とは異なる冷却したレトルト殺菌後の排水(pH7.2、水温33℃)を原水とし、この原水に対して亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとのモル比が17.7となるように亜硫酸水素ナトリウムを添加し、実施例6では20分間、実施例7では30分間攪拌して、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムとを反応させた。反応後の原水を、加圧ポンプを介してRO膜モジュールに導入した。RO膜としては、東レ(株)の逆浸透膜エレメントTMG20を用い、加圧ポンプによる圧力を0.6MPaに設定し、回収率80%で運転した。亜硫酸水素ナトリウムを添加する前後の原水、並びにRO膜モジュールから流出した濃縮水及び透過水について、GC/MS及びTOC計を用いて、ホルムアルデヒド濃度及びTOCを測定した。結果を表3及び4に示す。
【0080】
【表3】
注)検出限界未満
【0081】
【表4】
注)検出限界未満
【0082】
表3及び4において、添加前原水と添加後原水との間で結果を比較すると、ホルムアルデヒドを含む原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加することにより、亜硫酸水素ナトリウムとホルムアルデヒドとの反応が進んでいることが分かる。亜硫酸水素ナトリウム添加後の水は濃縮されるため、濃縮水中のホルムアルデヒド濃度が高まるが、透過水からはホルムアルデヒドは検出されなかった。
【0083】
[比較例3]亜硫酸水素ナトリウムを用いないシステムによるホルムアルデヒドの除去
原水に亜硫酸水素ナトリウムを添加せずに、RO膜モジュール単独でのホルムアルデヒドの除去実験を行った。上記実施例及び比較例とは異なるレトルト殺菌後の排水(pH6.8)を原水とし、加圧ポンプを介してRO膜モジュールに導入した。RO膜としては、東レ(株)の逆浸透膜エレメントTMG20を用い、加圧ポンプによる圧力を0.6MPaに設定し、回収率80%で運転した。原水並びにRO膜モジュールから流出した濃縮水及び透過水について、GC/MSを用いて、ホルムアルデヒド濃度を測定した。結果を表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5において濃縮水と透過水との間で結果を比較すると、濃縮水中のホルムアルデヒド濃度は0.51mg/Lであったのに対し、透過水中のホルムアルデヒド濃度は0.39mg/Lであり、RO膜モジュールでの分離により、濃縮水基準で約24%しかホルムアルデヒドが除去されなかったことが分かる。また、透過水のホルムアルデヒド濃度は、水道水の水質基準である0.08mg/Lを大幅に超えるものであった。
【符号の説明】
【0086】
1、1A 水処理システム
2 亜硫酸水素イオン源化合物添加装置(亜硫酸水素イオン源化合物添加手段)
3 混合槽(混合手段)
4 加圧ポンプ
5 逆浸透膜モジュール(除去手段)
6、7 バルブ
8 多孔質吸着材床塔(除去手段)
9 陰イオン交換樹脂床塔(除去手段)
L1、L2、L3、L7、L8 通水ライン
L4 濃縮水ライン
L5 排水ライン
L6 濃縮水還流ライン
W1 原水
W2 透過水(処理水)
W3 濃縮水
W4、W5 処理水
図1
図2
図3