(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
擬似太陽光照射ボックスの上面に対向させて被照射体の被照射面を配置し、前記擬似太陽光照射ボックスの下面に対向させて反射面を設け、前記擬似太陽光照射ボックスの上面から前記被照射面の全域に向けて擬似太陽光を直接照射するとともに、前記擬似太陽光照射ボックスの下面からの擬似太陽光を前記反射面で反射させて前記被照射面の全域を照射し、
前記反射面を、複数の反射板を横並びに並設して形成し、
前記被照射面と前記擬似太陽光照射ボックスとの間に、光を拡散する二層の光拡散部材を離間配置し、
前記二層の光拡散部材の一方は前記被照射面に近づけて配置され、前記二層の光拡散部材の他方は前記擬似太陽光照射ボックスに近づけて配置されていることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、本発明に係る照明装置の一例として擬似太陽光照明装置を例示する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における擬似太陽光照射装置1の構成を模式的に示す縦断面図である。なお、
図1においてWは幅方向を、Hは高さ方向を示している。擬似太陽光照射装置1は、複数の角材2を格子状に組んだ枠体4を有し、この枠体4は、例えば長さが略2m(メートル)、幅及び高さが略1.2〜1.3m程度の寸法に構成されている。枠体4の四方の各側面は、外部光の進入を防止するために遮光板(不図示)で覆われている。
【0014】
擬似太陽光照射装置1は、この枠体4の長さ方向において対面する側面間に、擬似太陽光を放射する擬似太陽光照射ボックス6が渡設されている。また擬似太陽光照射装置1は、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aに対向させて反射面8が配置され、上面6Bに対向させて太陽電池パネル等の平坦な被照射面10Aを有する被照射体10が配置されており、被照射面10Aの全域が擬似太陽光照射ボックス6の直射光と反射面8の反射光とで照明される。また、被照射面10Aが枠体4の上面を閉塞することで当該上面からの外部光の進入が防止されている。
【0015】
図2は擬似太陽光照射装置1の右半分を示す平面図であり、
図3は擬似太陽光照射装置1の構成を示す横断面図である。
擬似太陽光照射ボックス6には、
図2及び
図3に示すように、2本の直管型のランプ(光源)22が擬似太陽光照射ボックス6に沿って同軸に配置されて線状光源を構成している。これらのランプ22には、紫外領域〜可視領域〜赤外領域の広い波長領域に亘り、強い連続したスペクトルを有する、例えばキセノンフラッシュランプ等が用いられている。ランプ22のそれぞれの両端部には端子台40が配設されている。
【0016】
この擬似太陽光照射ボックス6は、
図1に示すように、長手方向に沿った両側面を構成する長板状の一対のサイドフレーム24と、上面6Bを構成する上面光学フィルター26と、下面6Aを構成する下面光学フィルター27と、これらサイドフレーム24、上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27を組み留める金具(図示せず)とを有している。サイドフレーム24は、光遮光性材により形成され、或いは、光の透過を防止する遮光材が付加または塗布されている。
【0017】
上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27は、それぞれランプ22の放射光から赤外波長域をカットすることで、放射光の発光スペクトルを太陽光に近似させる、いわゆるエアマスフィルターであり、誘電多層膜フィルターを用いて構成されている。また、上面光学フィルター26及び下面光学フィルター27は、
図1に示すように、入射光の入射角度を極力垂直に近づけ透過光の波長シフトを抑えるべく、それぞれ2枚の板状のフィルター材28を山形(谷形)に係合させて構成されている。
【0018】
反射面8は、
図1に示すように、擬似太陽光照射ボックス6の下面6Aからの擬似太陽光を反射し、被照射体10の被照射面10Aを照射する反射板30を傾動自在に保持する複数の反射装置32を有して構成されている。
被照射体10は、被照射面10Aが擬似太陽光照射ボックス6から所定の距離Lだけ離間するように、枠体4の上に取り付けられた試料支持枠12に載置され、被照射面10Aに対して、擬似太陽光照射ボックス6の上面6Bからの直接光と、反射面8で反射された反射光が照射される。反射光の配光は、被照射面10Aでの直接光の照度むらを補償するように制御されている。
【0019】
反射板30は、表面が金属の板材であり、
図2及び
図3に示すように、擬似太陽光照射ボックス6に沿って略平行に延在している。反射板30と、該反射板30を保持する保持具31とにより反射装置32が構成されている。そして、枠体4の底床4A上に、複数の反射装置32が並設されることで、複数の反射板30が敷き詰められて設けられ、これらの反射板30により反射面8が形成されている。
保持具31は、反射板30の傾斜角度を調節するための角度調整機構を有し、これにより、反射板30のそれぞれを、互いに独立して光の反射角度を調整することができるようになっている。このとき、
図1に示すように、枠体4の幅方向における両側面に近い幾つかの保持具31の高さが順次高くなされており、両側面側の反射板30の反射光が内側の反射板30に遮蔽されるのを防止している。
【0020】
また、枠体4の長さ方向において対面する側面側には、
図2及び
図3に示すように、長さ方向における両端側に向けて光を反射する補助反射面50が設けられている。補助反射面50は、擬似太陽光照射ボックス6に沿って略平行に延在する表面が金属の板材が複数配列されて構成されている。この補助反射面50は、例えば、擬似太陽光照射ボックス6の長さ方向における両端側での直接光の照度低下が顕著な場合に、この補助反射面50の反射角度(傾斜角度)を調整して照度低下を補うことなどに使用可能である。
【0021】
図1に示すように、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aの間には、該被照射面10Aの全面を覆い該被照射面10Aでの照度分布を均一化するように透過光量を調整する透過光量調整ユニット60が設けられている。
すなわち、擬似太陽光照射装置1では、反射面8の反射光による直接光の照度むら補償に加え、透過光量調整ユニット60によっても被照射面10Aの照度むらの低減が図られている。
【0022】
図4は透過光量調整ユニット60の構成を模式的に示す縦断面図であり、
図5は同平面図である。
透過光量調整ユニット60は、
図4に示すように、ベース板62と、透過光量調整用の透光板積層体64と、表面フィルム(押さえ部材)66とを備え、被照射面10Aの照度が高い箇所に向かう光の光量を透光板積層体64が減じることで、被照射面10Aで照度分布を低い照度に合せて均一化する。
これらベース板62、透光板積層体64、及び、表面フィルム66には、擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しないように、それぞれ擬似太陽光のスペクトル範囲において透過率が一定(フラット)であり、さらに、好ましくは高い透過率を有する材質が用いられている。この材質として、本実施形態では、アクリル樹脂が用いられている。なお、この材質にはガラスを用いてもよい。
【0023】
ベース板62は、透光板積層体64を担持するための上面視矩形状の板状部材であり、自重による撓みが生じない程度の剛性が得られる厚みを有して形成されている。係るベース板62は、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aとの間を完全に仕切るように配置されている。
ベース板62の上面には、
図5に示すように、被照射面10Aを照明する光が通過する照明光通過範囲Rに、透過光量を減じるべき位置のそれぞれに透光板積層体64が配置され、また照明光通過範囲Rの残余の箇所には、透光板積層体64や、この透光板積層体64を構成する透光板65、ベース板62と同一の素材であるアクリル樹脂から成る1枚の透光板68(以下、「スペーサ透光板68」と言う)が配置されている。これにより、照明光通過範囲Rには透光板積層体64及びスペーサ透光板68が隙間無く敷き詰められることとなる。このスペーサ透光板68は、透光板積層体64と同一寸法に形成されており、スペーサ透光板68と透光板積層体64との入れ替えが容易となっている。
透光板積層体64は、複数枚の透光板65(
図6)を積層して構成されており、
図5において符号64に添えて記載した括弧書きは、各透光板積層体64の透光板65の積層枚数を示している。なお、この透光板積層体64の具体的な構成、及び、光量調整の作用については後に詳述する。
【0024】
照明光通過範囲Rの周囲には、
図5に示すように、照明光通過範囲Rと擬似太陽光照射装置1の側面との隙間を埋めるスペーサ板(スペーサ部材)70が設けられている。すなわち、ベース板62の上面は、透光板積層体64、スペーサ透光板68及びスペーサ板70で隙間無く埋め尽くされることとなり、透光板積層体64をベース板62に接着せずとも位置を固定することができる。これにより、透光板積層体64を交換自在にしつつ、設置時の衝撃や地震の振動が透過光量調整ユニット60に加わっても、透光板積層体64の位置ずれを防止できる。
なお、スペーサ板70の素材には、透光板積層体64と同一の素材(本実施形態ではアクリル樹脂)を用いることが好ましい。こうすることで、スペーサ板70の光学特性が、照明光通過範囲Rに設けたスペーサ透光板68と同等になるため、被照射面10Aの面積が広がり照明光通過範囲Rが多少周囲に拡張された場合でも、被照射面10Aの全域を照明することができる。
【0025】
表面フィルム66は、
図4に示すように、ベース板62に載置された透光板積層体64の透光板65の横ずれを防止するために、これら透光板積層体64とともにスペーサ透光板68及びスペーサ板70の表面を覆って押さえる。この表面フィルム66は、アクリル樹脂と同様に擬似太陽光のスペクトルを変調しない素材であるPET(ポリエチレンテレフタラート)を薄いフィルム状に形成したものである。
【0026】
次に、擬似太陽光照射装置1への透過光量調整ユニット60の取付構造を説明する。
図4に示すように、擬似太陽光照射装置1には、擬似太陽光照射ボックス6と平行に延びるズレ落ち防止ブラケット80が、該擬似太陽光照射ボックス6を挟んだ両側の側面にそれぞれ設けられている。また、各ズレ落ち防止ブラケット80には、断面L字状の固定用Lアングル82が固定されており、各固定用Lアングル82に、透過光量調整ユニット60のベース板62の両縁部62Aを載せることで該ベース板62が設置される。
ベース板62の両縁部62Aの上面には、スペーサ板70と擬似太陽光照射装置1の側面の隙間を埋めてスペーサ板70の横ずれを防止する横ずれ防止用Lアングル84が設けられている。
【0027】
透過光量調整ユニット60の取付け時には、先ず、固定用Lアングル82を角材2にネジ止め固定する。この固定用Lアングル82にベース板62を載せた後、上側から横ずれ防止用Lアングル84を置いて、この防止用Lアングル84を固定用Lアングル82にネジ87で、擬似太陽光照射装置1の側面の角材2に固定する。これにより、ベース板62の縁部62Aが固定用Lアングル82及び横ずれ防止用Lアングル84で挟み込まれ、ベース板62のガタつきが防止される。
次いで、ベース板62の上に、スペーサ板70、透光板積層体64及びスペーサ透光板68を敷き詰める。そして、これらスペーサ板70、透光板積層体64及びスペーサ透光板68を横ずれ防止用Lアングル84とともに表面フィルム66で覆う。最後に、表面フィルム66の縁部を押さえバー86で押さえ、この押さえバー86を横ずれ防止用Lアングル84にボルト89で固定する。以上の作業により、透過光量調整ユニット60の取付けが完了する。
【0028】
次いで、透光板積層体64の構成について詳述する。
図6は、
図5に示したI−I’線の断面を模式的に示す図である。
この図に示すように、透光板積層体64は、それぞれ矩形状の透光面が同一寸法のアクリル樹脂から成る透光板65を複数枚重ねて構成されている。この透光板積層体64に擬似太陽光Fを入射した場合、各透光板65の表裏の各界面で擬似太陽光Fの裏面反射が生じ、この裏面反射の分だけ透光板積層体64の透過光量が減じられる。また、この透光板積層体64の透過率は、透光板65の厚みには依らず、該透光板65を重ねた枚数で決定されており、このような透光板積層体64の透過特性について以下に説明する。
【0029】
図7はアクリル樹脂から成る透光板65の厚みtと透過特性の関係を示す図であり、
図8は透光板65の枚数と透過特性の関係を示し、また、
図9は透光板積層体64の厚みを一定にしつつ透光板65の厚みtと枚数を可変したときの透過特性の変化を示す図である。
これらの図に示すように、透光板65は、擬似太陽光Fとして用いられる紫外領域(波長400nm)〜赤外領域(波長900nm)の広い波長範囲Kに亘り透過率がほぼ一定(フラット)になる透過特性を有し、また、高い透過率を有していることが分かる。したがって、この透光板65、並びに、この透光板65と同一素材から成るスペーサ透光板68、スペーサ板70、ベース板62によれば、擬似太陽光照射ボックス6が発する擬似太陽光Fを、そのスペクトルを変調することなく高効率に透過し、照明効率の低下を防止できる。
【0030】
このとき
図7に示すように、ベース板62を10mm厚のアクリル樹脂とし、このベース板62に1枚の透光板65を重ねた場合、この透光板65の厚みtを、0.5mm、1mm、3mmと大きくしても、透過率にさほどの変化は見られない。
一方、
図8に示すように、10mm厚のベース板62の上に重ねる透光板65の枚数を1枚ずつ増やすと、透光板65の枚数に比例して、透過率が全波長域で略一様に減少する。
この理由としては、透光板65の材質であるアクリル樹脂が擬似太陽光Fに対して高い透過率を有するため、擬似太陽光Fが透光板65を透過する際に透光板65への吸収は、ほぼ生じないものの、透光板65の表裏の各界面で裏面反射が発生することから各裏面反射により透過光量が減じられるためと考えられる。この理由の妥当性は、
図9に示すように、厚み0.5mmの透光板65を4枚重ねた場合と、厚み1mmの2枚の透光板65に厚み0.5mmの2枚の透光板65を重ねた場合とで、透光板65の厚みが異なるにもかかわらず透過率はほぼ一致し、また、枚数を5枚に変えても同様な結果が得られることからも裏付けられる。
【0031】
したがって、
図6に示した透過光量調整ユニット60において、透光板65を2枚重ねた透光板積層体64では、それぞれの透光板65の表裏の界面で裏面反射が生じるため、合計4回の裏面反射分だけ擬似太陽光Fの透過光量が減じられ、また、透光板65を4枚重ねた透光板積層体64では、合計8回の裏面反射分だけ擬似太陽光Fの透過光量が減じられることとなる。このように、透光板積層体64では、透光板65の枚数に比例して裏面反射回数が増えるため、透光板65の枚数に比例して擬似太陽光Fの透過光量が減じられる。
【0032】
ここで
図6に示すように、透光板65同士が上下方向で重なり合う接触部Cで2回の裏面反射が生じるのは次のように考えられる。すなわち、接着剤等のバインダ−を使用せずに透光板65同士を単に重ねた場合、これら透光板65の間には薄い空気層90が形成される。この空気層90が透光板65同士の間に介在することで、擬似太陽光Fが下側の透光板65から空気層90に出るときに裏面反射が生じるとともに、空気層90から上側の透光板65に入射するときにも裏面反射が生じ、これにより接触部Cで2回の裏面反射が生じることとなる。
このように、接着剤等のバインダーを用いずに透光板65同士を単純に重ね合せ、これら透光板65の間に空気層90のみを形成することで、透光板積層体64の透過率が透光板65の積層枚数に比例して減少させることができ、透光量の調整が容易な透光板積層体64が得られることとなる。
なお、透過光量調整ユニット60では、透光板積層体64の下にベース板62を、上に表面フィルム66をそれぞれ備え、また、透光板積層体64が無い場所には、スペーサ透光板68が配置されるため、これらベース板62、表面フィルム66及びスペーサ透光板68の各界面でも同様に裏面反射が生じる。したがって、これらの裏面反射を加味して、透光板積層体64の透光板65の枚数が決定される。
【0033】
ここで、接着剤等のバインダーを用いずに透光板65同士を単純に重ねて透光板積層体64を構成しているため、地震などの衝撃により透光板65が横ずれを起こしやすい。そこで、
図6に示すように、透光板積層体64においては、透光板65を重ねる枚数に応じて1枚当たりの透光板65の厚みを薄くすることで透光板65の枚数にかかわらず全体の厚みDが一定(本実施形態では3mm)となるようにし、また、スペーサ透光板68も同じ厚みDに形成されている。これにより、透光板65の横方向には、必ず、他の透光板65又はスペーサ透光板68が存在するため、透光板65の横ずれが防止される。
【0034】
ただし、透光板積層体64においては、透光板65を重ねる枚数が多くなるほど透光板65が薄くなるため、透光板積層体64やスペーサ透光板68の厚みに多少のバラつきがあるだけで透光板65の横ずれが生じやすくなる。そこで、本実施形態では、
図6に示すように、これら透光板積層体64及びスペーサ透光板68の表面を上述した表面フィルム66で覆い、該表面フィルム66により、透光板積層体64の表面を押さえることで透光板65の横ずれを確実に防止することとしている。
【0035】
この擬似太陽光照射装置1による被照射面10Aの照度むらの測定結果を
図10に示す。この図に示す照度分布から照度むらを計算すると約1.59%という値が得られており、本実施形態の擬似太陽光照射装置1によれば、被照射面10Aの照度むらが良好に低減されていることが実証された。なお、この照度むらの計算は、JIS規格(日本工業規格)で規定されたJIS C8912、JIS C8933に基づいて算出したものである。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、被照射面10Aでの照度分布を均一化するように透過光量を調整する透過光量調整ユニット60を、擬似太陽光Fの波長範囲Kで透過率が一定となる透光板65を透過光量の調整量に応じた枚数分だけ重ねて各透光板65の表裏の各界面で入射光を反射するようにした透光板積層体64を設けて構成した。この構成により、透光板65の枚数を変えるだけで透過光量の調整が可能となり、透過率が異なる複数種類の透過型光学フィルター板を用意せずとも、透光板65を重ねた簡単な構成で被照射面10Aの照度むらを低減できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、透光板65を重ねる枚数に応じて各透光板65を薄くして厚みを一定にした透光板積層体64を、透過光量を調整すべき位置のそれぞれに配置し、透光板積層体64の間に生じた隙間にはスペーサ透光板68を配置して、照明光通過範囲Rに、透光板積層体64体及びスペーサ透光板68を敷き詰めるとともに、この照明光通過範囲Rの周囲にはスペーサ板70を配置して、透光板積層体64及びスペーサ透光板68の位置ずれを防ぐ構成とした。
この構成により、ベース板62と透光板積層体64及びスペーサ透光板68を接着剤等のバインダーを用いて固定する必要がないため、これら透光板積層体64及びスペーサ透光板68を交換自在にしつつ、設置時の衝撃や地震の振動が透過光量調整ユニット60に加わっても、透光板積層体64の位置ずれを防止できる。
【0038】
さらに本実施形態によれば、透光板積層体64及びスペーサ透光板68のそれぞれの表面を覆って押さえる押さえ部材としての表面フィルム66を備える構成とした。
この構成により、該表面フィルム66が透光板積層体64の表面を押さえることで透光板65の横ずれが確実に防止される。
【0039】
なお、本実施形態では、枠体4の長さ方向において対面する側面側の下部に補助反射面50が設けられているが、
図1〜
図3に二点鎖線で示すように、枠体4の側面のランプ22と被照射面10Aとの間に、擬似太陽光照射ボックス6から枠体4の側面に向けて放射された光を被照射面10Aに向けて反射する補助反射面150A,150Bが設けられてもよい。この補助反射面150A,150Bは、例えば、枠体4の側面側での直接光の照度低下が顕著な場合に、この補助反射面50の反射角度(傾斜角度)を調整して照度低下を補うことなどに使用可能である。補助反射面150A,150Bは、被照射面10Aの四隅の照度を低下させないように、調整された傾斜角度において、互いに隙間を生じさせない長さに形成される。
このように、擬似太陽光照射装置1側面のランプ22と被照射面10Aとの間に、ランプ22から放射された光のうち被照射面10Aから外れた箇所に向かう光を被照射面10Aに向けて反射する補助反射面150A,150Bを配置する構成とした。この構成により、枠体4の側面に配置した遮光板によって遮光されてしまう光を有効利用して、被照射面10Aの照度低下を補うことができるとともに、補助反射面を枠体4の下部に配置する場合に比べ、擬似太陽光照射装置1を小型化することができる。
【0040】
<第2実施形態>
第1実施形態では、被照射面10Aの照度むらを低減するために、ランプ22と被照射面10Aの間に透過光量を調整する透過光量調整ユニット60を設けていたが、第2実施形態では、透過光量調整ユニット60に代えて、光を拡散する光拡散ユニット101を設けている。
図11は、第2実施形態に係る擬似太陽光照射装置100の構成を模式的に示す縦断面図である。また、
図12は擬似太陽光照射装置100の右半分を示す平面図であり、
図13は擬似太陽光照射装置100の構成を示す横断面図である。なお、これら
図11〜
図13では、
図1〜3に示す擬似太陽光照射装置1と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
擬似太陽光照射装置100では、複数の角材2を格子状に組んだ枠体4が、例えば長さが略1.7m、幅が略1.2m、高さが略0.8m程度の寸法に構成され、被照射面10Aの有効面積が600mm×1200mmに設定されている。また、擬似太陽光照射ボックス6には、1本の直管型のランプ22が擬似太陽光照射ボックス6に沿って配置されて線状光源を構成している。擬似太陽光照射ボックス6は、該擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しない材質で形成されたランプハウス7に収納されている。
【0042】
反射面8は6つの反射装置32を有して構成されており、反射板30の傾斜角度θは、
図1に示すように、右から順に33°、21°、−5°、5°、−21°、−33°に設定されている。この構成により、0.1°単位の微調整を行っても被照射面10Aの照度むらに影響を与えることがなく、出荷調整の時間を短縮することができる。
補助反射面150A,150Bの傾斜角度は0°〜5°程度に設定されるのが望ましく、補助反射面150A,150Bは、被照射面10Aの四隅の照度を低下させないように、傾斜角度が0°〜5°程度に調整された場合に、互いに隙間を生じさせない長さに形成されている。本実施形態では、長手側の補助反射面150Aの長さが約1400mmに、短手側の補助反射面150Bの長さが約920mmに設定されている。
【0043】
このように構成された比較的小型の擬似太陽光照射装置100では、ランプ22から被照射面10Aまでの距離Lが数十cm程度となっており、照度むらを均一化するのが難しく、また、均一化した照度を維持することに労力を必要としていた。
そこで、本実施形態では、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aの間に、該被照射面10Aの全面を覆い該被照射面10Aでの照度分布を均一化するように光を拡散する光拡散ユニット101が設けられている。すなわち、擬似太陽光照射装置100では、反射面8の反射光による直接光の照度むら補償に加え、光拡散ユニット101によっても被照射面10Aの照度むらの低減が図られている。
【0044】
図14は光拡散部材110、120の構成を示す図であり、
図14(A)は擬似太陽光照射装置100を、拡大した光拡散部材110、120とともに模式的に示す縦断面図であり、
図14(B)は被照射面10A側から見た光拡散部材120を示す図である。
光拡散ユニット101は、
図14(A)に示すように、ベース板102と、光拡散効果を有する二層の光拡散部材110,120とを備え、被照射面10Aの照度が高い箇所に向かう光を光拡散部材110,120が拡散することで、被照射面10Aで照度分布を均一化する。
これらベース板102、及び光拡散部材110,120には、擬似太陽光照射ボックス6が放射する擬似太陽光のスペクトルを変調しないように、それぞれ擬似太陽光のスペクトル範囲において透過率が一定(フラット)であり、さらに、好ましくは高い透過率を有する材質が用いられている。
【0045】
ベース板102は、光拡散部材110を担持するための上面視矩形状の板状部材であり、自重による撓みが生じない程度の剛性が得られる厚み(例えば、15mm)を有して形成されている。本実施形態のベース板102には、上記材質として、アクリル樹脂が用いられている。なお、この材質にはガラスを用いてもよい。係るベース板102は、擬似太陽光照射ボックス6と被照射面10Aとの間を完全に仕切るように、枠体4の被照射面10A側に配置されている。
【0046】
二層の光拡散部材110,120は、それぞれ複数枚の拡散板を積層して構成されており、被照射面10Aとランプ22との間に、距離Dだけ離して配置されている。光拡散ユニット101の光拡散効果、すなわち、被照射面10Aの照度むらの低減の効果は、この距離Dに依存しており、このような光拡散ユニット101の光拡散特性を以下に説明する。
図15は光拡散部材110,120の位置を変えて被照射面10Aの照度むらを測定した実験を示す説明図であり、
図15(A)は光拡散部材110,120の配置位置を示す図であり、
図15(B)は光拡散部材110,120の位置及び光拡散部材110,120に使用した拡散板の種類と照度むらの測定結果との関係を示す図であり、
図15(C)は光拡散部材110,120に使用した拡散板の種類を示す図である。
【0047】
この実験では、被照射面10Aの光拡散部材110の位置を固定とし、ランプ22側の光拡散部材120の位置、及び、光拡散部材110,120に使用する拡散板の種類を変更し、被照射面10Aの照度むらを測定した。
光拡散部材110,120の配置位置は、
図15(A)に示すように、ランプ22からの距離とする。
図15(B)には、光拡散部材110をランプ22から400mの位置に配置するとともに、光拡散部材120をランプ22から200mm、300mm、又は400mmの位置に配置した場合の照度むらの測定結果が示されている。
【0048】
図15(B)に示すように、光拡散部材120を300mmの位置に配置した場合(実験E5,E6,E7)の照度むらは、光拡散部材120を400mmの位置に配置した場合(実験E1,E2)の照度むらとあまり差がない。一方、光拡散部材120を200mmの位置に配置した場合(実験E3,E4)には、300mm又は400mmの位置に配置した場合に比べ、照度むらが改善されている。したがって、光拡散部材120は、ランプ22から200mm〜300mmの範囲に配置されるのが望ましく、換言すれば、二層の光拡散部材110,120間の距離Dは、100mm〜200mmに設定されるのが望ましい(100mm<D≦200mm)。本実施形態では、二層の光拡散部材110,120間の距離Dを200mmに設定している。
【0049】
次に、擬似太陽光照射装置100への光拡散ユニット101の取付構造を説明する。
図11〜
図13に示すように、擬似太陽光照射装置100には、枠体4の上部及び擬似太陽光照射ボックス6の上方に、擬似太陽光照射ボックス6と平行に延びる板状の光拡散部材受け103が、該擬似太陽光照射ボックス6を挟んだ両側の側面にそれぞれ設けられている。また、枠体4の上部及び擬似太陽光照射ボックス6の上方に、擬似太陽光照射ボックス6と直交して延びる断面L字状の光拡散部材受け104が、該擬似太陽光照射ボックス6の長さ方向において対面する側面にそれぞれ設けられている。
ベース板102及び光拡散部材110は枠体4の上部に設けられた光拡散部材受け103,104に載置され、図示しない抑え金具によって固定され、光拡散部材120は擬似太陽光照射ボックス6の上方に設けられた光拡散部材受け103,104に載置され、図示しない抑え金具によって固定される。
【0050】
次いで、
図11〜
図14を参照し、光拡散部材110、120の構成について詳述する。
被照射面10A側の光拡散部材110は、ベース板102の上面に配置され、複数枚(本実施形態では、2枚)の光拡散板111,112を積層して構成されている。被照射面10A側の光拡散板111は、被照射面10Aを照明する光が通過する照明光通過範囲全体を覆う大きさに形成された板状部材であり、両面に艶消し加工を施したマット状の拡散面を有している。本実施形態の光拡散板111は、厚みが約3mmであり、ベース板102とほぼ同じ光学的特徴を有する素材(本実施形態では、アクリル樹脂)を用いて形成されている。
【0051】
ベース板102側の光拡散板112は、光拡散板111と略同一の大きさに形成された板状部材であり、両面に拡散面を有している。この拡散面の片面はエンボス加工が施されることによりエンボス形状に形成されており、光拡散板112は、エンボス形状を有する拡散面を被照射面10A側に向けて配置されている。すなわち、光拡散板111のマット状の拡散面と光拡散板112のエンボス面とが接触することとなり、光拡散板111の横ずれを防止できる。本実施形態の光拡散板112は、厚みが約205μm、平行光線透過率と拡散光線透過率の比であるヘイズが約50%である素材を用いて形成されている。
【0052】
ランプ22側の光拡散部材120は、複数枚(本実施形態では、3枚)の光拡散板121〜123と、照度場所むら調整用の拡散板である照度調整板124とを積層して構成されている。光拡散板121は光拡散板111と略同一に構成され、光拡散板121の上面には、光拡散板112と略同一に構成された2枚の光拡散板122,123がエンボス形状を有する拡散面を被照射面10A側に向けて載置されている。2枚の光拡散板122,123間には、光拡散板121〜123より小さく形成された照度調整板124が配置されている(
図14(B)参照)。照度調整板124は、両面に拡散面を有するとともに、片面にエンボス加工が施された板状部材であり、エンボス面をランプ22側に向けて配置されている。これにより、下側の光拡散板123のエンボス面と照度調整板124のエンボス面とが接触することとなり、照度調整板124の横ずれを防止できる。本実施形態では、照度調整板124は、厚みが約270μm、ヘイズが約90%である素材を用いて形成されており、大きさが80mm×400mm、150mm×600mm、80mm×300mmの3枚の照度調整板124が配置されている。
【0053】
このように、比較的光拡散効果の高い照度調整板124を、ランプ22側の光拡散部材120に設けたため、照度調整板124の位置を変えるだけで、被照射面10Aの照度が局部的に高い箇所に向かう光をより効果的に拡散し、照度むらの微調整を容易に行うことができる。これに加え、照度調整板124で拡散した光を被照射面10A側の光拡散部材110でさらに拡散できるので、被照射面10A側の光拡散部材110に照度調整板を配置する場合に比べ、照度むらをより低減できる。また、照度むらに経時変化が生じた場合や、ランプ22を交換して照度むらが変更した場合にも、照度調整板124の位置や大きさを変更することで、照度むらを容易に低減できる。さらに、照度調整板124は、光拡散板122,123の間に配置されているため、照度調整板124を固定する固定具を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。
【0054】
図16は照度調整板124を配置しない擬似太陽光照射装置100による被照射面10Aの照度分布の測定結果を示す図であり、
図16(A)は二層の光拡散部材110,120を被照射面10A側に積層配置した場合の照度分布の測定結果を示す図であり、
図16(B)は二層の光拡散部材110,120を離間配置した場合の照度分布の測定結果を示す図である。
二層の光拡散部材110,120を被照射面10A側に積層配置した場合には、
図16(A)に示すように、照度が0.8−0.85SUN(1SUN=1000W/m
2)の範囲から1.05−1.1SUNの範囲にあり、その差は0.3SUNである。
これに対し、上記擬似太陽光照射装置100のように二層の光拡散部材110,120を離間配置した場合には、
図16(B)に示すように、照度が0.9−0.95SUNの範囲から1.05−1.1SUNの範囲にあり、その差は0.15SUNとなっており、被照射面10Aの照度むらが良好に低減されている。さらに、二層の光拡散部材110,120を積層配置した場合に比べ、複数の反射板30(
図12)に起因する照度の境界が目立たなくなっている。
照度調整板124を配置した擬似太陽光照射装置100による被照射面10Aの照度むらの測定結果を
図17に示す。この図において、照度は0.98−0.99SUNの範囲から1.01−1.02SUNの範囲にあるとともに、照度むらは約1.8%となっており、本実施形態の擬似太陽光照射装置100では、被照射面10Aの照度むらを良好に低減できることが実証された。また、複数の反射板30(
図12)に起因する照度の境界も、より目立たなくなっている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、被照射面10Aでの照度分布を均一化するように、光を拡散する光拡散ユニット101をランプ22と被照射面10Aの間に備え、被照射面10Aとランプ22との間に、二層の光拡散部材110,120を離間配置して光拡散ユニット101を構成した。
この構成により、被照射面10Aに向かう光を拡散して均一化できるので、被照射面10Aの仮想分割区画に配置するために透過率が異なる複数種類の透過型光学フィルター板を用意せずとも、二層の光拡散部材110,120を離間配置した簡単な構成で被照射面10Aの照度むらを低減できる。また、光を拡散することにより、被照射面10Aの四隅の照度の落ち込みを低減できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、ランプ22に対して被照射面10Aと反対側に、複数の反射板30を並設して反射面8を形成し、被照射面10Aに、ランプ22から直接放射される直接光、及び反射面8で反射された反射光を照射する構成とし、複数の反射板30の境界が目立たなくなる距離Dだけ、二層の光拡散部材110,120の間を離す構成とした。
この構成により、複数の反射板30を並設して反射面8を形成した場合であっても、複数の反射板30の境界を目立たなくさせることができる。すなわち、反射面8を複数の反射板30で形成できるので、反射面8を一枚の反射板を湾曲させて形成する場合に比べ、簡単な構成で反射面8を形成できるとともに、反射板30の反射角度(傾斜角度)を調整することにより、被照射面10Aの照度低下を容易に補うことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、二層の光拡散部材110,120のうちランプ22側の光拡散部材120に、照度場所むら調整用の照度調整板124を設ける構成とした。
この構成により、照度が局部的に高い箇所に照度調整板124を配置することで、照度むらの微調整を容易に行うことができる。また、ランプ22側の光拡散部材120に照度調整板124を配置することにより、照度調整板124で拡散した光を被照射面10A側の光拡散部材110で拡散できるので、被照射面10A側の光拡散部材110に照度調整板を配置する場合に比べ、照度むらをより低減できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、擬似太陽光照射装置100側面のランプ22と被照射面10Aとの間に、ランプ22から放射された光のうち被照射面10Aから外れた箇所に向かう光を被照射面10Aに向けて反射する補助反射面150A,150Bを配置する構成とした。
この構成により、ランプ22側の光拡散部材120で拡散された光を反射できるので、ランプ22と反射面8との間に補助反射面を配置する場合に比べ、被照射面10Aの照度低下を補償すべき所望の場所に光を向かわせつつ、光をより拡散させて均一化できる。また、枠体4の側面に配置した遮光板によって遮光されてしまう光を有効利用して、被照射面10Aの照度低下を補うことができるとともに、補助反射面を枠体4の下部に配置する場合に比べ、擬似太陽光照射装置100を小型化できる。
【0059】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
上述した実施形態では、本発明に係る照明装置として、擬似太陽光照射装置を例示したが、これに限らない。すなわち、被照射面の照度むらを低減すべき照明装置であれば、任意の照明装置に、本発明の透過光量調整ユニット又は光拡散ユニットを設けることができる。このような照明装置としては、例えば紫外線硬化装置が挙げられる。紫外線硬化装置は、UVインキ、UV塗料、UV接着剤などの紫外線硬化素材が塗布された面に均一に紫外線を照射して、紫外線硬化素材を硬化させるものであり、印刷や上面コーティング、半導体や電子部品、光学部品の接着、液晶パネルの張り合わせなど様々な表面処理加工システムに応用されている。この紫外線硬化装置に本発明の透過光量調整ユニット又は光拡散ユニットを設けることで、より一層むらを抑えた表面処理加工が可能な紫外線硬化装置が実現される。