【文献】
V.L.ビーデルマン,「自動車タイヤ工学・下巻(実務編)」,現代工学社,1979年 3月20日,初版,p.27,29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層を装架した空気入りタイヤにおいて、
タイヤ総幅SWとタイヤ外径ODとの比SW/ODがSW/OD≦0.3の関係を満足すると共に、
タイヤ子午線断面において前記トレッド部の輪郭を形成するトレッドプロファイルが、前記トレッド部のタイヤ幅方向の最も外側に位置するサイド円弧と、該サイド円弧のタイヤ幅方向内側に位置するショルダー円弧とを含み、これらサイド円弧の延長線とショルダー円弧の延長線との交点を通りタイヤ内面に対して直交する一対の第一境界線を規定し、各サイドウォール部がタイヤ周方向に延在するリムチェックラインを有し、タイヤ子午線断面において前記リムチェックラインを通りタイヤ内面に対して直交する一対の第二境界線を規定し、前記一対の第一境界線の相互間に第一領域を区分し、前記第一境界線と前記第二境界線との間に第二領域を区分し、前記第二境界線よりもビードトウ側に第三領域を区分し、前記第一領域乃至前記第三領域の断面積(mm2)をそれぞれSA,SB,SCとし、前記第一領域乃至前記第三領域のタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さ(mm)をそれぞれa,b,cとしたとき、比SA/a,SB/b,SC/cについて7.5≦SA/a≦11.5、2.0≦SB/b≦6.0、4.0≦SC/c≦8.0の関係を満足し、
前記カーカス層のカーカスコードの繊度が900dtex/2〜1400dtex/2であり、その幅50mm当たりの打ち込み本数が45本〜70本であり、
前記トレッド部には溝によって形成されたトレッドパターンを有し、前記トレッド部の接地領域における溝面積比率GRが25%以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記トレッド部に形成される溝が少なくとも1本の主溝を含み、該主溝の最大溝深さをGDmaxとしたとき、3.0mm≦GDmax≦6.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む少なくとも1層の傾斜補強層を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記空気透過防止層が熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成されることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タイヤ重量を低減し、操縦安定性と低燃費性能とを両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層を装架した空気入りタイヤにおいて、
タイヤ総幅SWとタイヤ外径ODとの比SW/ODがSW/OD≦0.3の関係を満足すると共に、
タイヤ子午線断面において前記トレッド部の輪郭を形成するトレッドプロファイルが、前記トレッド部のタイヤ幅方向の最も外側に位置するサイド円弧と、該サイド円弧のタイヤ幅方向内側に位置するショルダー円弧とを含み、これらサイド円弧の延長線とショルダー円弧の延長線との交点を通りタイヤ内面に対して直交する一対の第一境界線を規定し、各サイドウォール部がタイヤ周方向に延在するリムチェックラインを有し、タイヤ子午線断面において前記リムチェックラインを通りタイヤ内面に対して直交する一対の第二境界線を規定し、前記一対の第一境界線の相互間に第一領域を区分し、前記第一境界線と前記第二境界線との間に第二領域を区分し、前記第二境界線よりもビードトウ側に第三領域を区分し、前記第一領域乃至前記第三領域の断面積(mm
2)をそれぞれSA,SB,SCとし、前記第一領域乃至前記第三領域のタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さ(mm)をそれぞれa,b,cとしたとき、比SA/a,SB/b,SC/cについて7.5≦SA/a≦11.5、2.0≦SB/b≦6.0、4.0≦SC/c≦8.0の関係を満足し、
前記カーカス層のカーカスコードの繊度が900dtex/2〜1400dtex/2であり、その幅50mm当たりの打ち込み本数が45本〜70本であり、
前記トレッド部には溝によって形成されたトレッドパターンを有し、前記トレッド部の接地領域における溝面積比率GRが25%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、タイヤ総幅SWとタイヤ外径ODとの比SW/ODをSW/OD≦0.3の関係とし、空気入りタイヤを狭幅・大径化することにより、空気入りタイヤの前方投影面積を低減し、その空気抵抗を低減することができる。また、トレッド部の接地領域における溝面積比率GRを25%以下とすることにより、接地幅の減少によるコーナリングフォースの低下及び操縦安定性の悪化を防止することができる。更に、第一境界線及び第二境界線により空気入りタイヤを第一領域乃至第三領域に区分し、第一領域乃至第三領域の断面積SA,SB,SCを第一領域乃至第三領域のタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さa,b,cで除した値を求めたとき、比SA/aについて7.5≦SA/a≦11.5の関係を満足することにより、空気入りタイヤの第一領域のボリュームを必要最小限に抑制し、溝面積比率の低下に伴うタイヤ重量の増加を抑えて転がり抵抗を低減することができる。これにより、タイヤ重量を低減し、操縦安定性と低燃費性能とを両立することが可能になる。その結果、車両の燃費を改善し、省資源・省エネルギーに大きく貢献すると共に、車両からの二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0010】
本発明において、比SB/bについて2.0≦SB/b≦6.0の関係を満足することが好ましい。これにより、空気入りタイヤの第二領域のボリュームを必要最小限に抑制するので、タイヤ重量及び転がり抵抗を更に低減することができる。
【0011】
また、比SC/cについて4.0≦SC/c≦8.0の関係を満足することが好ましい。これにより、空気入りタイヤの第三領域のボリュームを必要最小限に抑制するので、タイヤ重量及び転がり抵抗を更に低減することができる。
【0012】
トレッド部に形成される溝は少なくとも1本の主溝を含み、該主溝の最大溝深さをGDmaxとしたとき、3.0mm≦GDmax≦6.0mmであることが好ましい。このように主溝の最大溝深さGDmaxを比較的小さく設定することにより、コーナリングフォースを増加させ、操縦安定性を向上することができる。
【0013】
トレッド部におけるカーカス層の外周側には、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む少なくとも1層の傾斜補強層を有することが好ましい。このような傾斜補強層を設けることにより、コーナリングフォースを増加させ、操縦安定性を向上することができる。
【0014】
傾斜補強層の外周側には、タイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1層の周方向補強層を配置することが好ましい。このように周方向補強層を配置することにより、コーナリングパワーの増加を図り、操縦安定性を向上することができる。
【0015】
周方向補強層はタイヤ周方向に配向する補強コードをゴム中に埋没させた複合材料から構成されることが好ましい。タイヤ周方向に配向する補強コードを含む周方向補強層を付加することで傾斜補強層の面内曲げ剛性を高め、コーナリングパワーの増加を図り、操縦安定性を向上することができる。
【0016】
周方向補強層の補強コードは有機繊維コードであることが好ましい。周方向補強層の補強コードとして軽量な有機繊維コードを用いることで軽量化を図ることができ、これが転がり抵抗の低減に寄与する。
【0017】
カーカス層に沿ってタイヤ内部及び/又はタイヤ内面には空気透過係数が50×10
-12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下の空気透過防止層を設けることが好ましい。特に、空気透過防止層が熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成されることが好ましい。このように従来のブチルゴムを主体とする空気透過防止層に比べて空気透過係数が低い空気透過防止層を設けることにより、空気透過防止層を薄くして更なる軽量化を図ることができる。なお、空気透過係数はJIS K7126「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験法」に準拠して30℃の温度条件で測定した値である。
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、特に乗用車用として好適である。ここで、乗用車用空気入りタイヤは応急用を除く乗用車標準装着用空気入りタイヤを意味し、これは応急用タイヤやレーシング用タイヤを除外するものである。
【0019】
本発明において、タイヤ総幅SWは、空気入りタイヤをリム組みし、空気入りタイヤの寸法を規定するために230kPa(任意に設定した内圧)で内圧を充填したときの無負荷状態におけるサイドウォール上のデザインを含む空気入りタイヤの総幅であり、タイヤ外径ODは、このときの空気入りタイヤの外径である。なお、上述の230kPaという内圧は、タイヤ総幅SWやタイヤ外径ODなどの空気入りタイヤの寸法を規定するために選択されたものであり、本明細書に記載されているタイヤ寸法に係るパラメータは全て内圧230kPaかつ無負荷状態において規定されるものとする。しかしながら、本発明に係る空気入りタイヤは、通常に使用される範囲の内圧が充填されているものであれば、本発明の効果を奏するものであり、230kPaの内圧が充填されていることが本発明を実施する上で必須ではない。
【0020】
ここで、本発明において使用されるリムは、空気入りタイヤの内径に適合したリム径を有し、かつISO4000−1:2001に準拠して、タイヤ断面幅の呼びSnと、リム組みされるタイヤの偏平比に基づいて表1の対応表によって定められる係数K1との積で求めた値(Rm=K1×Sn)に最も近い、表2に示される規定リム幅Rm(mm)に対応するリム幅の呼びを有するリムである。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
また、本発明において、溝面積比率GRとは、接地領域内の陸部面積と溝面積の総和に対する接地領域内の溝面積の比率(%)である。ここで、接地領域とは、空気入りタイヤを上述したリムに組付け、230kPaで内圧を充填し、負荷能力の80%に相当する荷重を掛けて平面に接地させたときの接地面の領域である。接地幅とは、接地領域内のタイヤ幅方向の最大幅である。接地長とは、接地領域内のタイヤ周方向の最大長さである。
【0024】
本発明では、負荷能力はISO4000−1:1994に基づいて決定される。しかしながら、当該ISO規格において負荷能力指数が設定されていないサイズについては、個別で算出して諸外国の規格との整合を考慮して決定するとの記載があり、この場合、負荷能力については各国の規格に基づいて算出される。従って、本発明では、実際には、JIS規格で採用している負荷能力算出式を利用したJIS−D4202−1994の解説の「負荷能力の算定」に記載されている、下記の算定式から各タイヤサイズの負荷能力が算出されている。
X=K×2.735×10−5×P
0.585×Sd
1.39×(D
R−12.7+Sd)
但し、X=負荷能力[kg]
K=1.36
P=230(=空気圧[kPa])
Sd=0.93×S1−0.637d
S1=S×(180°−Sin
-1(Rm/S))/131.4°
S=設計断面幅[mm]
Rm=設計断面幅に対応したリム幅[mm]
d=(0.9−偏平比)×S1−6.35
D
R=リム径の基準値[mm]
【0025】
更に、本発明において、第一領域乃至第三領域の断面積はタイヤ子午線断面のタイヤ周方向への投影面積である。そのため、トレッド部にタイヤ周方向に延在する周方向溝又はタイヤ幅方向に延びるラグ溝が存在する場合、ラグ溝の部分は断面積に含まれるが、周方向溝の部分は断面積から除外される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜
図4は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1において、CLはタイヤ赤道面であり、AXはタイヤ中心軸である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0029】
図2に示すように、一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含む少なくとも1層のカーカス層4が装架されている。カーカス層4を構成するカーカスコードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。各ビード部3には環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上にゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。ビードフィラー6はビードコア5とカーカス層4との隙間を埋めるために必要に応じてビードコア5の外周側に配置される。このようなビードフィラー6は配置しても配置しなくても良いが、製造時の故障を抑制するためには配置することが好ましい。しかしながら、軽量化の観点から、ビードフィラー6を配置する際には断面積を可及的に小さくすることが望ましい。また、カーカス層4に沿ってタイヤ内面には空気透過防止層7が設けられている。このような空気透過防止層7はカーカス層4に沿ってタイヤ内部に埋設するようにしても良く、或いは、タイヤ内面及びタイヤ内部の両方に設けるようにしても良い。
【0030】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む少なくとも1層の傾斜補強層8が埋設されている。傾斜補強層8の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用されるが、アラミド、ポリオレフィンケトン(POK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の有機繊維コードの使用も可能である。
【0031】
図4に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝11と、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝12と、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ13が形成されている。これら主溝11、ラグ溝12及びサイプ13により所定のトレッドパターンが形成されている。主溝11とは、接地面への開口部における幅が3mm以上である溝であってスリップサインを有する溝であり、その断面形状は例えばU字状又はV字状とすることができる。このような主溝11は、タイヤ周方向に延長する周方向溝のほか、タイヤ幅方向に延長する横溝やタイヤ周方向に対して傾斜しながら延長する傾斜溝であっても良い。
【0032】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ総幅SWとタイヤ外径ODとの比SW/ODはSW/OD≦0.3の関係を満足するようになっている。このようにして空気入りタイヤを狭幅・大径化することにより、空気入りタイヤの前方投影面積を低減し、その空気抵抗を低減することができる。なお、比SW/ODの実用上の下限値は0.15とすれば良い。また、空気入りタイヤを狭幅・大径化するにあたって、タイヤ総幅SWは125mm〜185mmの範囲に設定し、タイヤ外径ODは650mm〜850mmの範囲に設定することが好ましい。
【0033】
また、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ子午線断面においてトレッド部1の輪郭を形成するトレッドプロファイル10が、トレッド部1のタイヤ幅方向の中央部に位置して曲率半径Rcを有するセンター円弧と、トレッド部1のタイヤ幅方向の最も外側に位置して曲率半径Rsを有するサイド円弧と、該サイド円弧のタイヤ幅方向内側に位置して曲率半径Rshを有するショルダー円弧とを含む複数の円弧を繋げることによって形成されている。ショルダー円弧はトレッド部1のタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部の踏面の輪郭を規定する円弧であり、サイド円弧はトレッド部1のタイヤ幅方向の最も外側に位置する陸部の側壁面の輪郭を規定する円弧である。センター円弧とショルダー円弧とは共通の円弧であっても良く、或いは、互いに異なる円弧であっても良い。これらセンター円弧とショルダー円弧との間には他の円弧を介在させても良い。ショルダー円弧とサイド円弧とは互いに接するように連結されていても良く、或いは、互いに交差するように連結されていても良い。これらショルダー円弧とサイド円弧との間に両者を滑らかに連結するために他の円弧を介在させても良い。
【0034】
ここで、
図3に示すように、トレッド部1のタイヤ幅方向両側において、サイド円弧の延長線Esとショルダー円弧の延長線Eshとの交点Pを通りタイヤ内面に対して直交する直線を引いたとき、これら直線からなる一対の第一境界線L1が規定される。なお、ショルダー円弧とサイド円弧とが直接連結される場合、交点Pはトレッドプロファイル10上に位置することになる。
【0035】
一方、
図2に示すように、各サイドウォール部2はタイヤ外面においてタイヤ周方向に延在するリムチェックライン21を有している。リムチェックライン21はリムに対するタイヤの嵌合状態を確認するために形成されるものであって、通常、タイヤ外面から突出する突条をなしている。タイヤ子午線断面において各サイドウォール部2のリムチェックライン21を通りタイヤ内面に対して直交する直線を引いたとき、これら直線からなる一対の第二境界線L2が規定される。
【0036】
一対の第一境界線L1,L1の相互間に第一領域Aを区分し、第一境界線L1と第二境界線L2との間に第二領域Bを区分し、第二境界線L2よりもビードトウ31側に第三領域Cを区分し、第一領域A、第二領域B及び第三領域Cの断面積(mm
2)をそれぞれSA,SB,SCとし、第一領域A、第二領域B及び第三領域Cのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さ(mm)をそれぞれa,b,cとしたとき、上記空気入りタイヤは比SA/aについて7.5≦SA/a≦11.5の関係を満足するように構成されている。
【0037】
上述した空気入りタイヤでは、比SA/aについて7.5≦SA/a≦11.5の関係を満足することにより、空気入りタイヤの第一領域Aのボリューム(実質的な平均厚さ)を必要最小限に抑制するので、耐摩耗性等のタイヤ性能を損なうことなく、タイヤ重量を大幅に低減し、それに伴って転がり抵抗を大幅に低減することができる。ここで、トレッド部1に対応する第一領域Aについて、比SA/aが7.5よりも小さいと耐摩耗性が低下し、逆に11.5よりも大きいと軽量化効果が不十分になる。
【0038】
上記空気入りタイヤにおいて、比SB/bについて2.0≦SB/b≦6.0の関係を満足すると良い。これにより、空気入りタイヤの第二領域Bのボリューム(実質的な平均厚さ)を必要最小限に抑制するので、耐カット性等のタイヤ性能を損なうことなく、タイヤ重量を大幅に低減し、それに伴って転がり抵抗を大幅に低減することができる。ここで、サイドウォール部2に対応する第二領域Bについて、比SB/bが2.0よりも小さいと耐カット性が低下し、逆に6.0よりも大きいと軽量化効果が不十分になる。
【0039】
上記空気入りタイヤにおいて、比SC/cについて4.0≦SC/c≦8.0の関係を満足すると良い。つまり、ビードコア5のワイヤ巻き数を減らしたり、ビードフィラー6の断面積を減らしたり、リムクッションゴム層の厚さを減らしたりすることにより、比SC/cを可及的に小さくすると良い。これにより、空気入りタイヤの第三領域Cのボリュームを必要最小限に抑制するので、嵌合特性、特に耐リム外れ性を損なうことなく、タイヤ重量及び転がり抵抗を大幅に低減することができる。ここで、ビード部3に対応する第三領域Cについて、比SC/cが4.0よりも小さいと嵌合特性が悪化し、逆に8.0よりも大きいと軽量化効果が低下する。
【0040】
なお、第一領域Aの断面積SA、第二領域Bの断面積SB及び第三領域Cの断面積SCはタイヤサイズに応じて適正範囲が大きく異なるが、これら断面積SA,SB,SCをそれぞれ各領域のペリフェリ長さa,b,cで除した値からなる比SA/a,SB/b、SC/cを規定することにより、タイヤサイズに拘わらず上述した作用効果を期待することができる。
【0041】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1には主溝11、ラグ溝12、サイプ13を含む種々の溝によって形成されたトレッドパターンが形成されているが、そのトレッド部1の接地領域TCWにおける溝面積比率GRは25%以下となるように設定されている。このようにトレッド部1の接地領域TCWにおける溝面積比率GRを小さく設定することにより、空気入りタイヤの狭幅・大径化により接地幅が減少した場合であっても、実際に路面に対して接地する陸部を十分に確保することができ、コーナリングフォースの低下及び操縦安定性の悪化を防止することができる。また、溝面積比率GRを広く設定した場合であっても、上述のように比SA/a,SB/b,SC/cに基づいて空気入りタイヤの第一領域A乃至第三領域Cのボリュームを必要最小限に抑制しているので、溝面積比率GRの低下に伴うタイヤ重量の増加を抑えて転がり抵抗を低減することができる。これにより、タイヤ重量を低減し、操縦安定性と低燃費性能とを両立することが可能になる。ここで、溝面積比率GRが25%よりも大きいと、パターン剛性の低下により操縦安定性の改善効果が低下する。なお、排水性を確保しつつ良好な操縦安定性を得るために、溝面積比率GRは好ましくは10%≦GR≦22%とし、より好ましくは12%≦GR≦20%とする。
【0042】
上記空気入りタイヤにおいて、主溝11は同一の溝深さを有していても良く、或いは、互いに異なる溝深さを有していても良い。いずれにしても、主溝11の最大溝深さをGDmaxとしたとき(
図3参照)、3.0mm≦GDmax≦6.0mmとすることが好ましい。このように主溝11の最大溝深さGDmaxを比較的小さく設定することにより、コーナリングフォースを増加させ、操縦安定性を向上することができる。ここで、主溝11の最大溝深さGDmaxが3.0mmよりも小さいと排水性が悪化し、逆に6.0mmよりも大きいと操縦安定性の改善効果が低下する。
【0043】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4のカーカスコードの繊度
は900dtex/2〜1400dtex/2とし、その幅50mm当たりの打ち込み本数は45本〜70本とすると良い。つまり、より細いカーカスコードを採用することでカーカス層4を薄くして軽量化に貢献する一方で、カーカスコードの打ち込み本数をより多くすることで必要な耐圧性を確保することが可能になる。ここで、カーカスコードの繊度が900dtex/2よりも小さいと耐圧性の確保が困難になり、逆に1400dtex/2よりも大きいと軽量化効果が低下する。
【0044】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む少なくとも1層の傾斜補強層8を設けることにより、コーナリングフォースを増加させ、操縦安定性を向上することができる。特に、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に、タイヤ径方向に積層された複数層の傾斜補強層8を設けた場合、トレッド部1のタイヤ幅方向の剛性を高めてコーナリングフォースを効果的に増加させ、操縦安定性を更に向上することができる。但し、トレッド部1に傾斜補強層8を含まない構造とすることも可能である。
【0045】
傾斜補強層8の補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は15°〜60°であると良い。傾斜補強層8の補強コードの傾斜角度を適正化することにより、コーナリングフォースを十分に確保することができる。ここで、傾斜補強層8の補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が15°よりも小さいとコーナリングパワーの増加量が少なくなり、逆に60°よりも大きいと傾斜補強層8の面外曲げ剛性が低下するため接地長さの増加により転がり抵抗が悪化する。なお、複数層の傾斜補強層8が配設されている場合、これら傾斜補強層8の補強コードが層間でタイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜することが望ましい。但し、タイヤ周方向に対する傾斜角度は同一角度である必要はない。また、コーナリングパワーと転がり抵抗とをバランス良く両立するために、傾斜補強層8の補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は18°〜45°とするのが良い。
【0046】
図5及び
図6は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の変形例を示すものである。
図5及び
図6に示すように、傾斜補強層8の外周側には、タイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1層の周方向補強層9が配置されている。
図5において、周方向補強層9は傾斜補強層8の全域を覆うフルカバーと傾斜補強層8のエッジ部のみを覆うエッジカバーとから構成されている。
図6において、周方向補強層9は傾斜補強層8のエッジ部のみを覆うエッジカバーだけで構成されている。このように傾斜補強層8の外周側に周方向補強層9を配置することにより、コーナリングパワーの増加を図り、操縦安定性を向上することができる。
【0047】
周方向補強層9はタイヤ周方向に配向する補強コードをゴム中に埋没させた複合材料から構成されることが好ましい。タイヤ周方向に配向する補強コードを含む周方向補強層9を付加することで傾斜補強層8の面内曲げ剛性を高め、コーナリングパワーの増加を図り、操縦安定性を向上することができる。なお、周方向補強層9として、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを用いることも可能である。
【0048】
周方向補強層9の補強コードは有機繊維コードであると良い。周方向補強層9の補強コードとして軽量な有機繊維コードを用いることで軽量化を図ることができ、更には転がり抵抗を低減することができる。周方向補強層9の補強コードとしては、アラミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン等の有機繊維コードが好適に使用されるが、特に高弾性のアラミド繊維コードや高弾性のアラミド繊維と低弾性のナイロン繊維とを撚り合わせた複合コードを用いることが更に好ましい。なお、周方向補強層9の補強コードとして、スチールコードを用いることも可能である。
【0049】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4に沿ってタイヤ内部及び/又はタイヤ内面には空気透過防止層7が配置されているが、この空気透過防止層7の空気透過係数は50×10
-12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下であると良い。特に、空気透過防止層7は熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成されるのが良い。このように従来のブチルゴムを主体とする空気透過防止層に比べて空気透過係数が低い空気透過防止層7を設けることにより、空気透過防止層7を薄くして更なる軽量化を図ることができる。ここで、空気透過防止層7の空気透過係数が50×10
-12cc・cm/cm
2・sec・cmHgよりも大きいと更なる軽量化を図ることが困難になる。
【0050】
以下、本発明の空気入りタイヤの空気透過防止層を構成する熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物について説明する。
【0051】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物〔例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0052】
本発明で使用されるエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0053】
前記した特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているゴム粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
【0054】
熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜15/85である。
【0055】
本発明において、熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物には、空気透過防止層としての必要特性を損なわない範囲で前記した相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等を空気透過防止層としての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。
【0056】
また、エラストマーは熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0057】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
【0058】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0059】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0060】
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
【0061】
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
【0062】
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
【0063】
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
【0064】
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は1000〜7500sec
-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
【0065】
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナー層に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
【0066】
熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物のJIS K7100により定められるところの標準雰囲気中におけるヤング率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
【0067】
上記熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物はシート又はフィルムに成形して単体で用いることが可能であるが、隣接するゴムとの接着性を高めるために接着層を積層しても良い。この接着層を構成する接着用ポリマーの具体例としては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン(PP)及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。これらは常法に従って例えば樹脂用押出機によって押し出してシート状又はフィルム状に成形することができる。接着層の厚さは特に限定されないが、タイヤ軽量化のためには厚さが少ない方がよく、5μm〜150μmが好ましい。
【実施例】
【0068】
タイヤサイズを195/65R15又は155/55R20とし、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に1層のカーカス層を装架し、タイヤ内面に空気透過防止層を設けた空気入りタイヤにおいて、タイヤ総幅SWとタイヤ外径ODとの比SW/OD、第一領域乃至第三領域の断面積SA,SB,SC(mm
2)及びペリフェリ長さa,b,c(mm)から求められる比SA/a,SB/b,SC/c、溝面積比率GR、主溝の最大溝深さGDmax、傾斜補強層(層数、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度)、周方向補強層(有無、形態、材質)、空気透過防止層(材質、空気透過係数)を表3〜表5のように種々異ならせた従来例、比較例1〜3
、参考例1,2及び実施例1〜14のタイヤを製作した。
【0069】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ重量、低燃費性能、操縦安定性を評価し、その結果を表3〜表5に併せて示した。
【0070】
タイヤ重量:
各試験タイヤの重量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど軽量であることを意味する。
【0071】
低燃費性能:
各試験タイヤをリムサイズ15×6J又は20×5Jのホイールに組み付けて排気量1800ccの前輪駆動車に装着し、空気圧を230kPaとし、全長2kmのテストコースを時速100km/hにて50周走行し、燃料消費率(km/l)を計測した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど低燃費性能が優れていることを意味する。
【0072】
操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ15×6J又は20×5Jのホイールに組み付けて排気量1800ccの前輪駆動車に装着し、空気圧を230kPaとし、3名のテストドライバーがそれぞれ全長2kmのテストコースをレーンチェンジしながら3周走行した際の操縦安定性について官能評価を行い、これらテストドライバーによる評価点の平均値を求めた。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
表3〜表5から判るように、
参考例1,2及び実施例1〜14のタイヤは、従来例との対比において、タイヤ重量を大幅に低減することができ、しかも、操縦安定性と低燃費性能とを両立することが可能であった。
【0077】
一方、比較例1のタイヤは、従来例と同様に比SW/ODが0.32である空気入りタイヤにおいて、比SA/aを小さくしたため、タイヤ重量の低減効果が得られるものの、操縦安定性が低下していた。比較例2のタイヤは、比SW/ODを小さくしているものの、比SA/aが大き過ぎるため、低燃費性能の改善効果が不十分であった。比較例3のタイヤは、比SW/ODを小さくし、比SA/aを小さくしているものの、溝面積比率GRが大き過ぎるため、操縦安定性が大幅に悪化していた。