(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の形態]
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に,本形態の画像形成装置1の概略構成を示す。画像形成装置1は,用紙P上に画像を形成する画像形成部2と,画像形成部2に用紙Pを供給するための給紙部3とを有している。画像形成装置1は,画像形成部2の内部に中間転写ベルト20を有する,いわゆるタンデム型のカラープリンターである。
【0033】
中間転写ベルト20は,導電性を有する無端状のベルト部材であり,その
図1中両端部がローラー21,22によって支持されている。画像形成時には,
図1中右側のローラー21が,図中矢印で示すように反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト20および
図1中左側のローラー22はそれぞれ,図中に矢印で示す方向に従動回転する。
【0034】
中間転写ベルト20のうち,
図1中右側のローラー21に支持されている部分の外周面には,2次転写ローラー23が設けられている。2次転写ローラー23は,中間転写ベルト20へ向けて軸と垂直の方向(
図1中左向き)に圧接されている。中間転写ベルト20と2次転写ローラー23とが接触している部分には,中間転写ベルト20上のトナー像を用紙Pに転写させる転写ニップN1が形成されている。2次転写ローラー23は,画像形成時には,回転する中間転写ベルト20への圧接による摩擦力によって,
図1中に矢印で示す方向に従動回転する。
【0035】
また,中間転写ベルト20のうち,
図1中左側のローラー22に支持されている部分の外周面には,ベルトクリーナー24が設けられている。本形態のベルトクリーナー24は,
図1に示すようにローラー形状をしており,芯金の表面に導電性のブラシを有するものである。この導電性のブラシ繊維としては,ナイロン系,ポリエステル系,アクリル系,レーヨン系などのものが使用できる。ベルトクリーナー24は,中間転写ベルト20の表面に付着しているトナーを回収するためのものである。例えば,ベルトクリーナー24は,転写ニップN1において用紙Pに転写されず,転写ニップN1を通過した後にも中間転写ベルト20上に残っている転写残トナーの回収を行う。
【0036】
中間転写ベルト20の
図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kが配置されている。画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を形成して中間転写ベルト20上に転写するためのものである。画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,
図1では,画像形成ユニット10Yによって代表して符号をつけている。
【0037】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11,および,その周囲に配置された帯電装置12,露光装置13,現像装置14,1次転写ローラー15,および感光体クリーナー16を有している。帯電装置12は,感光体11の表面を均一に帯電させるためのものである。露光装置13は,該当色の画像データに基づいたレーザー光を感光体11の表面に照射させ,静電潜像を形成するためのものである。現像装置14は,収容しているトナーを感光体11の表面に付与するためのものである。
【0038】
1次転写ローラー15は,感光体11と中間転写ベルト20を挟んで対向する位置に配置されている。1次転写ローラー15は,中間転写ベルト20へ向けて軸と垂直の方向(
図1中下向き)に圧接されている。この圧接により,中間転写ベルト20と感光体11とが接触している部分にはそれぞれ,各色の感光体11上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写させる1次転写ニップが形成されている。感光体クリーナー16は,感光体11上から中間転写ベルト20上に転写されなかったトナーを回収するためのものである。
【0039】
なお,
図1では,感光体クリーナー16として,板状でその一端部が感光体11の外周面に接触しているものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。その他のクリーニング部材,例えば固定ブラシ,回転ブラシ,ローラーまたはそれらのうちの複数の部材を組み合わせたものを使用することができる。あるいは,感光体11上の未転写トナーを現像装置14により回収するクリーナーレス方式を採用すれば,感光体クリーナー16はなくてもよい。
【0040】
また,中間転写ベルト20の
図1中上方には,各色のトナーを収容したホッパー17Y,17M,17C,17Kが配置されている。これらに収容されている各色のトナーはそれぞれ,各色の現像装置14へと適宜補給される。
【0041】
本形態の画像形成装置1は,画像形成部2の下に位置する給紙部3に,給紙カセット51,61,手差しトレイ71を有している。これら給紙カセット51,61,手差しトレイ71にはそれぞれ,複数の用紙Pが積載により載置されている。
図1に示す用紙Pは,普通紙である。
【0042】
図1に示すように,給紙カセット51,61の
図1中右側にはそれぞれ,用紙Pを給紙経路50,60に送り出す送出動作を行う給紙ローラー52,62が設けられている。また,手差しトレイ71の
図1中左側には,用紙Pを給紙経路70に送り出す送出動作を行うための給紙ローラー72が設けられている。給紙ローラー52,62,72はいずれも,送出動作により,それぞれ給紙カセット51,61,手差しトレイ71に載置された用紙Pを,その最上部のものより各給紙経路50,60,70へ送り出すことができるものである。このため,給紙ローラー52,62,72はいずれも,各給紙経路50,60,70における最も上流に位置する搬送ローラーである。また,給紙経路50,60,70へ送り出された用紙Pはいずれも,給紙経路50,60,70が合流している合流位置Eよりも下流の画像形成経路30へと搬送されるようになっている。
【0043】
さらに,給紙カセット51,61,手差しトレイ71にはそれぞれ,用紙Pの有無を検出するエンプティーセンサー53,63,73が設けられている。エンプティーセンサー53,63,73は,給紙カセット51,61,手差しトレイ71のそれぞれの用紙Pのエンプティーを検出するためのものである。また,エンプティーセンサー53,63,73は,給紙カセット51,61,手差しトレイ71において,各給紙経路50,60,70に接続されている側の下部に配置されている。つまり,エンプティーセンサー53,63,73は,給紙カセット51,61,手差しトレイ71のそれぞれの用紙Pについて,いずれも搬送方向の先端側を検知位置としている。
【0044】
加えて,給紙カセット51,61にはそれぞれ,載置されている用紙Pの後端側の位置を規制するための規制板54,64が設けられている。一方,手差しトレイ71には,給紙カセット51,61の規制板54,64のようなものは設けられていない。
【0045】
また,本形態の手差しトレイ71は,
図1の上下方向に移動することにより,給紙可能位置と離間位置とをとることができるものである。
図1に実線で示す手差しトレイ71は,給紙ローラー72の送出動作により,手差しトレイ71に載置された用紙Pを給紙経路70へ給紙することができる給紙可能位置にあるときのものである。一方,
図1に二点鎖線により,離間位置にあるときの手差しトレイ71を示している。手差しトレイ71が離間位置にあるとき,手差しトレイ71に載置された用紙Pは,給紙ローラー72から離れることとなる。
【0046】
そして,給紙部3より送り出された用紙Pの画像形成経路30には,1対のレジストローラー31,転写ニップN1,定着装置32,排紙ローラー33がこの順で配置されている。画像形成経路30のさらに下流側には,画像形成の完了した用紙Pが排出される排紙部34が設けられている。レジストローラー31は,用紙Pを転写ニップN1へ送り出すタイミングを微調整するためのものである。
【0047】
本形態の定着装置32は,
図1に示すように,一対のローラーを圧接してなるものである。またその圧接により,定着ニップN2が形成されている。定着装置32は,用紙Pを定着ニップN2に通しつつ,通過する用紙Pを加熱しつつ加圧する定着処理を行うことができる。また,定着ニップN2における定着処理により,用紙Pに担持されたトナー像を用紙Pに定着させることができる。
【0048】
本形態の画像形成装置1は,
図1に示すように,両面搬送経路35を有している。両面搬送経路35は,一度,画像形成経路30を通過した用紙Pを再度,画像形成経路30に搬送するためのものである。これにより,画像形成装置1は,用紙Pの両面に画像を形成することができる。また,画像形成経路30,給紙経路50,60,70,両面搬送経路35はいずれも,用紙Pを搬送するための搬送経路である。
【0049】
画像形成経路30のレジストローラー31の上流の位置には,用紙センサー40が設けられている。用紙センサー40は,画像形成経路30上の検知位置Dでの用紙Pの有無を検知することができる。つまり,用紙センサー40の検知の状態により,検知位置Dにおける用紙Pの到達や通過を検出することができる。具体的には,用紙センサー40の検知の状態が無しから有りへ変わったことにより,用紙Pの先端を検出することができる。また,用紙センサー40の検知の状態が有りから無しへ変わったことにより,用紙Pの後端を検出することができる。なお,搬送経路の各所には,用紙センサー40以外にも,用紙Pの到達や通過を検出するためのセンサーが設けられている。
【0050】
図2に,画像形成装置1の制御構成の概略を示す。画像形成装置1は,各部の制御を行うために,エンジン部4とコントローラー部5とを有している。エンジン部4は,全体の制御処理を行うCPU6と,本体に付属されている不揮発性メモリ7とを有している。
【0051】
不揮発性メモリ7には,例えば,給紙ローラー52,62,72のそれぞれの位置から用紙センサー40の検知位置Dまでの距離など,画像形成装置1の機械的寸法の値が記憶されている。また例えば,ローラー21の回転速度や各感光体11の回転速度,用紙Pや形成されたトナー像を搬送する速度であるシステム速度などの値が記憶されている。さらに,後述する通常紙間,給紙検知時間,検知無視時間などについても記憶されている。
【0052】
CPU6は,不揮発性メモリ7に記憶されている値に基づいて,画像形成装置1の各部を制御する。例えば,各露光装置13による静電潜像の形成開始のタイミングを調整することにより,中間転写ベルト20上にズレのないカラートナー像を形成する。また画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにより画像を形成するタイミングと,給紙部3より用紙Pを給紙するタイミングとを調整することにより,これらの転写ニップN1への突入タイミングが合うように制御する。
【0053】
さらに,CPU6は,搬送中の用紙Pの実際の位置を,画像形成経路30などの用紙Pの搬送経路の各所に設置されたセンサーより取得している。例えば,前述したように,用紙センサー40により,用紙Pが検知位置Dを通過したか否かを検出することができる。よって,CPU6は,搬送を制御することによる用紙Pの目標位置と,搬送経路に沿って設けられたセンサーより取得する実際の位置とを比較することにより,用紙Pのジャムの発生などを検出することができる。
【0054】
また,CPU6は,給紙ローラー72の送出動作により手差しトレイ71の用紙Pの給紙が適切に行われなかった場合に,その用紙Pの給紙を再度行う給紙リトライ制御を実行する。さらに,CPU6は,給紙ローラー72を,手差しトレイ71の用紙Pを給紙するときの回転方向とは逆方向に回転させる逆転制御を実行することができる。なお,本形態のCPU6は,手差しトレイ71を離間位置へと移動させた状態で逆転制御を行う。
【0055】
また,本形態の画像形成装置1は,複数の用紙Pに連続して画像形成を行う連続印刷を,通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替えつつ行うことができる。その連続印刷における紙間モードの切り替えについても,CPU6が行う。これら給紙リトライ制御,逆転制御,通常紙間モード,延長紙間モードについては後に詳述する。
【0056】
またエンジン部4は,画像形成装置1に含まれている各種ユニット8を制御するとともに,各種ユニット付属の不揮発性メモリ9の書き込みや読み出しを行う。各種ユニット8には例えば,トナーボトルやイメージングユニットなどが含まれる。そして,各種ユニット付属の不揮発性メモリ9には,例えばトナーボトルに付属のメモリにはトナー残量など,イメージングユニットに付属のメモリには印刷枚数などが記憶されている。
【0057】
また,コントローラー部5は,外部のパソコンなどに接続されて指示入力を受けるものである。例えば,画像形成指令をパソコンから受信することにより,画像形成装置1には画像形成ジョブが発生する。さらに,エンジン部4とコントローラー部5とで,ドットカウンタ値などの各種の情報がやりとりされる。
【0058】
次に,本形態の画像形成装置1による,通常の画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,手差しトレイ71に載置されている用紙Pに,4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードにおける画像形成動作の一例である。
【0059】
通常のカラー画像の形成時には,中間転写ベルト20および各色の感光体11はそれぞれ,
図1に矢印で示す向きに所定の周速度で回転される。そして,まず,感光体11の外周面は,帯電装置12によりほぼ一様に帯電される。帯電された感光体11の外周面には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。続いて,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。各色のトナー像は,感光体11と中間転写ベルト20とにより形成されている1次転写ニップにおいて,中間転写ベルト20上に転写(1次転写)される。すなわち,中間転写ベルト20上には,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像がこの順で重ね合わされる。
【0060】
また,中間転写ベルト20に転写されず,1次転写ローラー15を過ぎた後も感光体11上に残留している転写残トナーは,感光体クリーナー16によって掻き取られ,感光体11上から除去される。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト20の回転によって転写ニップN1に搬送される。
【0061】
一方,手差しトレイ71に載置されている用紙Pは,給紙ローラー72の送出動作により,最上部のものから1枚ずつ給紙経路70に引き出される。給紙ローラー72による送出動作は,手差しトレイ71が給紙可能位置にある状態で行われる。また,送出動作は当然,手差しトレイ71に用紙Pが載置されている状態で開始される。手差しトレイ71に用紙Pが載置されているか否かは,エンプティーセンサー73により検知することができる。
【0062】
手差しトレイ71から引き出された用紙Pは,給紙経路70,画像形成経路30に沿って転写ニップN1に搬送される。用紙Pの転写ニップN1への突入タイミングは,中間転写ベルト20上のトナー像の転写ニップN1への突入タイミングと一致するように,通常は,レジストローラー31により微調整される。これにより,転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写(2次転写)される。
【0063】
トナー像が転写された用紙Pは,さらに画像形成経路30の下流側へと搬送される。つまり,用紙Pは,定着ニップN2を通過することによってトナー像が定着された後,排紙ローラー33によって排紙部34に排出される。なお,転写ニップN1を通過した後も中間転写ベルト20上に残留する転写残トナーは,ベルトクリーナー24によって回収される。これにより,中間転写ベルト20上から除去される。
【0064】
また,画像形成装置1は,複数の用紙Pについて連続して画像形成を行う連続印刷の際には,上記の画像形成の動作を一定の間隔で連続して行う。当然,用紙Pを一定の間隔で転写ニップN1へ通すため,用紙Pを給紙する送出動作についても一定の間隔で行う。
【0065】
また,用紙Pに対して両面印刷を行う場合,画像形成経路30を通過することにより一方の面に画像の形成された用紙Pは,排紙ローラー33によって表裏が反転された後,両面搬送経路35に搬送される。そして,両面搬送経路35を通過した用紙Pは再度,画像形成経路30に搬送される。これにより,すでに画像が形成されている一方の面とは反対の他方の面に画像を形成することができる。このようにして両面に画像が形成された用紙Pはその後,排紙部34へと排出される。
【0066】
次に,給紙リトライ制御について説明する。
図3には,画像形成装置1のうち,給紙カセット51,61,手差しトレイ71から転写ニップN1までの構成を示している。
図3に示すように,手差しトレイ71には,給紙ローラー72と対向する位置にサバキローラー74が設けられている。サバキローラー74は,給紙ローラー72の送出動作により複数の用紙Pが給紙経路70へ送り出されてしまう重送を防止するためのものである。本形態のサバキローラー74は,トルクリミッター付きのローラーである。
【0067】
具体的には,送出動作により用紙Pが1枚だけ給紙されているときには,その摩擦により従動回転する。一方,重送が発生し,給紙ローラー72とサバキローラー74との間に複数の用紙Pがあるときには,従動回転しないように負荷がかけられている。よって,送出動作により重送が発生した場合でも,給紙ローラー72に接触している最上の用紙Pのみが給紙経路70へと送り出される。さらに,
図3には,用紙Pの搬送経路上における給紙ローラー72から用紙センサー40の検知位置Dまでの距離を,給紙検知距離Xとして示している。
【0068】
本形態の給紙リトライ制御は,給紙不良が生じていると判断される場合に,用紙Pの送出動作を一度停止し,再度,新たな送出動作を行うものである。また,本形態の給紙リトライ制御は,手差しトレイ71の給紙ローラー72について実行されるものである。手差しトレイ71には,給紙カセット51,61とは異なり,普通紙である用紙Pだけではなく,封筒や特殊なシートが載置される頻度が高い。よって,手差しトレイ71については,例えば,送出動作を開始した給紙ローラー72と用紙Pとの間でスリップが生じてしまうなどの給紙不良が発生しやすいからである。そして,給紙リトライ制御を行うことにより,スリップなどの給紙不良を解消できることがある。
【0069】
また,給紙リトライ制御は,給紙ローラー72による送出動作を開始したときから給紙検知時間を経過したときまでに,用紙Pが検知位置Dまで到達しなかった場合に実行される。給紙検知時間は,給紙検知距離Xと用紙Pの搬送速度とに基づいて予め定められた時間である。すなわち,本形態の給紙検知時間は,用紙Pが,給紙検知距離Xを,給紙経路70および画像形成経路30に沿ってジャムなどが発生することなく適正に搬送されたときの時間である。
【0070】
給紙ローラー72に接触している用紙Pが給紙ローラー72の送出動作により適正に給紙され,さらに検知位置Dまで適正に搬送された場合,その用紙Pの先端は,送出動作が開始されてから給紙検知時間が経過するまでの間に,検知位置Dまで到達する。一方,スリップなどの給紙不良が生じている場合,送出動作が行われているにもかかわらず,用紙Pは手差しトレイ71から適正に送り出されない。そして,スリップなどの給紙不良により用紙Pが適正に給紙されていなかった場合には,送出動作が開始されてから給紙検知時間が経過するまでの間に,用紙Pが検知位置Dに到達しないことがある。
【0071】
そこで,本形態のCPU6は,給紙ローラー72による送出動作を開始したときに時間のカウントを開始する。そして,カウントしている時間が給紙検知時間になるまでに用紙Pが検知位置Dに到達しなかった場合には,給紙リトライ制御を実行する。なお,給紙リトライ制御により用紙Pが適正に給紙された場合には,給紙された用紙Pが検知位置Dを通過し,その用紙Pについて画像形成が行われる。このため,最初の送出動作においてスリップなどの給紙不良が生じてしまったときにも,給紙リトライ制御により給紙がなされた場合には,画像形成装置1を停止させることなく画像形成を行うことができる。
【0072】
一方,給紙リトライ制御によっても用紙Pが適正に給紙されない場合には,再度の給紙リトライ制御を行うこととしてもよい。あるいは,手差しトレイ71の用紙Pについて給紙不良が発生していることを使用者に知らせることとしてもよい。この場合,表示パネルが設けられている画像形成装置1においては,その表示パネルにより給紙不良を使用者に通知することができる。あるいは,警告音やランプの点灯により給紙不良を通知することもできる。
【0073】
なお,給紙リトライ制御は,給紙ローラー72による送出動作を開始したときからの時間に替えて,用紙Pについて搬送を行う各搬送ローラーなどの回転量に基づいて行うこととしてもよい。用紙Pが適正に搬送された距離は,例えば,給紙ローラー72など,搬送経路の各所に配置されている搬送ローラーの回転量により求めることができるからである。すなわち,給紙検知距離Xに相当する各搬送ローラーの回転量を,給紙検知回転量として予め定めておく。そして,CPU6は,給紙ローラー72が送出動作を開始したときからカウントしている各搬送ローラーの回転量が給紙検知回転量になるまでの間に,用紙Pが検知位置Dに到達しなかった場合,給紙リトライ制御を実行するものであってもよい。
【0074】
あるいは,給紙検知時間や給紙検知回転量は,給紙検知距離Xに限らず,給紙検知距離X以上の距離に基づいて定めることができる。すなわち,給紙検知時間または給紙検知回転量は,用紙Pが,給紙検知距離X以上の距離を,給紙経路70および画像形成経路30に沿ってジャムなどが発生することなく適正に搬送されたときの時間または各搬送ローラーの回転量に定めておけばよい。
【0075】
また,送出動作を再度行う給紙リトライ制御に替えて,給紙ローラー72による送出動作を停止させずに,給紙検知時間や給紙検知回転量を超えて連続して行わせる送出動作連続制御を行うこととしてもよい。また,例えば,給紙リトライ制御では,給紙ローラー72を,給紙リトライ制御の前の送出動作における回転速度よりも遅い回転速度で回転させることとしてもよい。給紙ローラー72の回転速度を遅くすることにより,スリップの発生頻度を低減させることができるからである。
【0076】
また,これら給紙リトライ制御および送出動作連続制御はともに,給紙に係る検知位置Dへの到達が遅れている用紙Pの検知位置Dへの到達を待つ到達待ち制御である。そして,到達待ち制御が行われた場合にも,画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいてはそれぞれ,すでにトナー像の形成が開始されている。よって,転写対象の用紙Pについて到達待ち制御が行われた場合には,形成したトナー像の転写ニップN1への到達を遅らせる制御が行われる。具体的には,中間転写ベルト20および感光体11などの回転速度を遅くすることが考えられる。あるいは,中間転写ベルト20および感光体11などの回転を一時的に停止させてもよい。
【0077】
次に,画像形成装置1における連続印刷のモードである通常紙間モードと延長紙間モードとについて説明する。本形態の画像形成装置1において,通常紙間モードおよび延長紙間モードはともに,手差しトレイ71に載置されている用紙Pに対して連続印刷を行う場合のモードである。
【0078】
通常紙間モードは,連続する用紙P同士の紙間ができるだけ短くなるように給紙ローラー72に送出動作を行わせるモードである。これにより,通常紙間モードでは,画像形成の生産性を高めることができる。一方,延長紙間モードは,通常紙間モードよりも,紙間が長くなるように給紙ローラー72に送出動作を行わせるモードである。また,連続印刷は,通常,画像形成の生産性を優先させるため,通常紙間モードにより行うことが好ましい。このため,画像形成装置1の電源が投入された初期設定においては,通常紙間モードに設定されている。
【0079】
図4は,通常紙間モードと延長紙間モードとについて説明するための図である。
図4には,連続印刷に係る連続する用紙P同士の紙間について,通常紙間モードにおける通常紙間RSと,延長紙間モードにおける延長紙間WSとを示している。つまり,通常紙間モードでは,給紙された用紙Pの後端が,搬送により,
図4にFで示す位置に到達したときに,次の用紙Pについての送出動作が開始されるように給紙ローラー72が駆動される。また,延長紙間モードでは,給紙された用紙Pの後端が,搬送により,
図4にGで示す位置に到達したときに,次の用紙Pについての送出動作が開始されるように給紙ローラー72が駆動される。
【0080】
また,本形態において,通常紙間RSおよび延長紙間WSはともに,手差しトレイ71上に適切に載置されている用紙Pの先端から用紙センサー40の検知位置Dまでの距離Yよりも短いものである。このため,通常紙間モードおよび延長紙間モードのいずれにおいても,ジャムなどが発生していない限り,連続印刷に係る先の用紙Pの後端が検知位置Dを通過する前に,次の用紙Pについての送出動作が開始される。
【0081】
ここで,給紙カセット51,61,手差しトレイ71への用紙Pの補充は,使用者により行われる。その補充の際,手差しトレイ71については,給紙カセット51,61と比較して,用紙Pが乱雑に載置された状態となりやすい。手差しトレイ71には,給紙カセット51,61のような,用紙Pの後端を規制する規制板54,64が設けられていないからである。
【0082】
また,手差しトレイ71については,すでに用紙Pが載置されている状態で,その載置されている用紙Pの上にさらに追加で用紙Pが補充されてしまいやすい。給紙カセット51,61とは異なり,装置の外部に露出しているからである。そして,手差しトレイ71上に乱雑に追加された用紙Pは,給紙ローラー72に接触しない位置であることがある。つまり,手差しトレイ71では,用紙Pが乱雑に補充されたことにより,
図5に示すような状態になりがちである。
【0083】
図5には,追加で1枚だけ補充された用紙Pを,追加用紙BPとして示している。
図5に示す追加用紙BPは,その先端が給紙ローラー72から離れた位置に補充されたものである。また,給紙ローラー72から離れて補充された追加用紙BPの,その先端から給紙ローラー72までの距離を,
図5にZ1で示している。さらに,
図5には,追加用紙BPが補充される前に手差しトレイ71上に適切に載置されていた用紙Pの束を,当初用紙束APとして示している。加えて,当初用紙束APのうちの最上の用紙Pを,第1当初用紙AP1として
図5に示している。
【0084】
なお,手差しトレイ71に追加用紙BPが補充されたことは,本形態の画像形成装置1において検出することができない。追加用紙BPを検知するセンサーなどが設けられていないからである。さらに,エンプティーセンサー73は,当初用紙束APのうちの最も下側のものを検知するためのセンサーであり,追加用紙BPの検知まではできないものである。また,
図5などに示すように,本形態の手差しトレイ71は,その給紙ローラー72側が低い位置となるように傾斜して設けられている。しかし,その傾斜の程度は,重力によって追加用紙BPが給紙ローラー72まで滑って移動するほどのものではない。
【0085】
そして,
図5の状態で,手差しトレイ71より送出動作を行いつつ画像を形成するジョブが実行された場合,まず,第1当初用紙AP1について給紙が開始される。第1当初用紙AP1が給紙ローラー72に接触しているからである。そして,第1当初用紙AP1が給紙されるのに伴い,その上の追加用紙BPも給紙ローラー72側へと移動する。第1当初用紙AP1の上面と追加用紙BPの下面との間には,摩擦があるからである。
【0086】
図6は,
図5の状態で送出動作を行った際の第1当初用紙AP1および追加用紙BPの移動について説明するための図である。まず,前述したように,
図5の状態で送出動作が開始された場合,給紙ローラー72に接触している第1当初用紙AP1が給紙される。そして,第1当初用紙AP1が,追加用紙BPが補充されたときの追加用紙BPの先端から給紙ローラー72までの距離Z1だけ給紙されたとき,追加用紙BPの先端が給紙ローラー72に到達する。そして,
図6(a)に示すように,追加用紙BPの先端が給紙ローラー72に到達したとき,第1当初用紙AP1は,距離Z1だけ給紙された状態である。
【0087】
さらに,
図6(a)の状態においても送出動作が継続された場合,
図6(b)に示すように,給紙ローラー72に接触している追加用紙BPについて給紙が開始される。また,
図6(b)に示す状態では,給紙された追加用紙BPが検知位置Dを通過している。
【0088】
なお,
図5の状態で送出動作が開始された場合,
図6(a)から
図6(b)に至るまでの間には,給紙リトライ制御が実行されている。
図5に示す状態で送出動作が開始された後,検知位置Dを通過するのは追加用紙BPである。さらに,送出動作が開始されたときの追加用紙BPの先端は,
図5に示す状態において,検知位置Dから,給紙検知距離Xに給紙ローラー72からの距離Z1を加えた位置にある。このため,
図5に示す追加用紙BPが補充された状態で送出動作が開始された場合,その送出動作が開始されてから追加用紙BPの先端が検知位置Dに到達するまでの時間は,給紙検知時間よりも長いからである。
【0089】
また,
図6(a)に示す追加用紙BPが給紙ローラー72に到達した以降,第1当初用紙AP1については,給紙ローラー72に接触していない状態となる。また,第1当初用紙AP1は,その下面がサバキローラー74と接触している。このため,第1当初用紙AP1は,追加用紙BPが給紙ローラー72に到達したときの位置で停止した状態となる。第1当初用紙AP1は,
図6においては,その先端が合流位置Eよりも下流まで給紙された位置でその給紙が停止している。さらに,
図6(b)の状態においても送出動作が継続された場合,
図6(c)に示すように,追加用紙BPが画像形成経路30を搬送される。これにより,追加用紙BPの表面に画像が形成される。
【0090】
そして,
図5に示す追加用紙BPが補充された状態で実行された画像形成のジョブが連続印刷であった場合,追加用紙BPを給紙した次の送出動作により給紙されるのは,第1当初用紙AP1である。追加用紙BPが給紙ローラー72を通過した後,給紙ローラー72に接触しているのは第1当初用紙AP1だからである。第1当初用紙AP1は,送出動作が開始されたときには,
図6(c)に示すように,距離Z1だけ手差しトレイ71からすでに搬送されている位置からその給紙が開始される。
【0091】
また,
図6(c)は,追加用紙BPの後端が,通常紙間RSに係る位置Fまで搬送されたときを示している。つまり,連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されていた場合,
図6(c)の状態で,次の送出動作が開始されることとなる。さらに,
図6(c)に示すように,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離Z1は,通常紙間RSよりも長いものである。つまり,
図6(c)に示す状態では,第1当初用紙AP1は,その先端が通常紙間RSに係る位置Fよりも下流まで搬送されている。
【0092】
このため,
図6(c)の状態で連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されていた場合には,追加用紙BPの後端側と第1当初用紙AP1の先端側とが重なった状態で,画像形成経路30を搬送されることとなる。よって,この場合には,用紙センサー40により,追加用紙BPの後端の通過,および,第1当初用紙AP1の先端の到達を,ともに検出することができない。このため,画像形成装置1では,手差しトレイ71から給紙した追加用紙BPのサイズを誤検出してしまうことがある。あるいは,画像形成装置1は,追加用紙BPや第1当初用紙AP1のジャムを誤検出して停止してしまうことがある。また,追加用紙BPと第1当初用紙AP1とが重なった状態では,これらに適切に画像を形成することができない。
【0093】
そこで,本形態の画像形成装置1では,
図6(c)のように第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに給紙されている状態であると判断される場合には,連続印刷を延長紙間モードで行う。
図6(c)に示すように,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離Z1は,延長紙間WSよりも短いものである。つまり,
図6(c)に示す状態では,第1当初用紙AP1は,その先端が延長紙間WSに係る位置Gよりも上流の位置にある。よって,連続印刷を延長紙間モードで行うことにより,追加用紙BPと第1当初用紙AP1とが重なった状態で搬送されてしまうことを防止することができる。追加用紙BPの後端が延長紙間WSに係る位置Gに到達したときに,第1当初用紙AP1についての送出動作が開始されるからである。これにより,追加用紙BPおよび第1当初用紙AP1についての画像形成を適切に行うことができる。
【0094】
なお,
図6は,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離Z1が通常紙間RSよりも長かった場合を示すものである。これに対し,
図7に,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離が通常紙間RSよりも短かった場合を示す。
図7は,追加用紙BPの後端が,通常紙間RSに係る位置Fまで搬送されたときを示している。
【0095】
また,
図7には,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離をZ2により示している。
図7に示すように,距離Z2は,通常紙間RSよりも短いものである。そして,
図7に示す状態では,第1当初用紙AP1は,その先端が通常紙間RSに係る位置Fよりもわずかに上流の位置にある。
【0096】
このため,
図7の状態で通常紙間モードにより連続印刷が行ったとしても,追加用紙BPと第1当初用紙AP1とが重なることはない。追加用紙BPの後端と第1当初用紙AP1の先端との間には,
図7に示すように,隙間Z3があるからである。
【0097】
しかし,用紙センサー40については,通常,チャタリングによる用紙Pの誤検知を防止するための誤検出防止制御が行われている。具体的には,誤検出防止制御では,用紙センサー40の検知の状態が有りから無しとなり,再度,有りとなったきにおける無しである時間が予め定めた検知無視時間内であった場合に,その無しの検知を無視する。これにより,用紙Pの先端および後端の誤検出が防止されている。
【0098】
また,隙間Z3は,非常に短いものである。このため,追加用紙BPの後端が検知位置Dを通過してから第1当初用紙AP1の先端が検知位置Dに到達するまでの時間は非常に短い時間である。よって,誤検出防止制御中には,用紙センサー40により,追加用紙BPの後端や第1当初用紙AP1の先端を検知することができないおそれがある。そして,追加用紙BPの後端や第1当初用紙AP1の先端を検知できない場合には,
図6(c)の場合と同様に,サイズやジャムを誤検出してしまうおそれがある。よって,
図7に示す第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離Z2が通常紙間RSよりも短い場合であっても誤検出防止制御を行う場合には,連続印刷を通常紙間モードで行うことは好ましくない。すなわち,連続印刷を延長紙間モードで行うことが好ましい。
【0099】
また,延長紙間モードでは,延長紙間WSを,通常紙間RSに距離Z1を加えた長さに設定することとしてもよい。距離Z1は,第1当初用紙AP1が手差しトレイ71からすでに搬送されている距離である。このため,以下,距離Z1を当初用紙突出距離ともいう。また,紙間が通常紙間RSに当初用紙突出距離Z1を加えた長さとなるように給紙ローラー72に送出動作を行わせることにより,追加用紙BPの後端と第1当初用紙AP1の先端との紙間を,通常紙間RSとなるように給紙することができるからである。
【0100】
例えば,当初用紙突出距離Z1は,給紙ローラー72の回転時間により求めることができる。ここで,
図5に示すように,追加用紙BPの先端は,追加用紙BPが給紙検知距離Xと距離Z1とを合わせた距離だけ搬送されたときに検知位置Dへと到達する。本形態において,追加用紙BPは,給紙リトライ制御が実行される前の給紙検知時間における最初の送出動作において,補充された位置から給紙検知距離Xだけ検知位置Dの向きへ移動する。さらに,追加用紙BPは,給紙リトライ制御に係る送出動作において,距離Z1だけ移動し,検知位置Dへと到達する。つまり,当初用紙突出距離Z1は,給紙リトライ制御が行われたことによる,給紙リトライ制御前の最初の送出動作における給紙検知距離Xに対して余剰に搬送された分である。
【0101】
また,給紙検知距離X,給紙ローラー72の直径や回転速度などは,設計上,既知の値である。よって,当初用紙突出距離Z1は,給紙リトライ制御前の最初の送出動作が開始され給紙検知距離Xの分だけ搬送がなされたときから追加用紙BPが検知位置Dに到達したときまでの間の給紙ローラー72の回転時間により求めることができる。あるいは,距離Z1は,給紙リトライ制御前の最初の送出動作が開始され給紙検知距離Xの分だけ搬送がなされたときから追加用紙BPが検知位置Dに到達したときまでの間の給紙ローラー72の回転量により求めることもできる。
【0102】
また,延長紙間モードでは,先の用紙Pの後端が検知位置Dを通過してから,次の用紙Pに係る送出動作を行うようにしてもよい。先の用紙Pが検知位置Dを通過した以降に次の用紙Pに係る送出動作を行うことで,確実に連続印刷における紙間を確保することができるからである。
【0103】
次に,逆転制御について説明する。前述したように,逆転制御は,手差しトレイ71を離間位置へと移動させた状態で,給紙ローラー72を,送出動作時における回転方向とは反対向きに逆回転させることにより行う。
【0104】
例えば,
図6(c)の状態において,第1当初用紙AP1は,手差しトレイ71から当初用紙突出距離Z1だけ搬送されている。そして,追加用紙BPへの画像形成がジョブにおける最後の画像形成であった場合,逆転制御を行うことが好ましい。逆転制御を行わなかった場合,第1当初用紙AP1は,次の給紙ローラー72による送出動作が行われるまで,当初用紙突出距離Z1だけ搬送された
図6(c)の状態で保持される。このため,次に給紙ローラー72が送出動作を行う画像形成のジョブが実行されるまでの時間が長い場合には,第1当初用紙AP1にはカールなどが生じてしまうおそれがあるからである。
【0105】
また,
図6(c)に示す状態では,第1当初用紙AP1は,その先端が合流位置Eよりも下流の画像形成経路30へと搬送されている。よって,次のジョブが給紙カセット51,61の用紙Pに画像を形成するものである場合,第1当初用紙AP1が,給紙経路50,60を通って画像形成経路30へと搬送される用紙Pの搬送を妨げてしまうおそれがある。つまり,逆転制御を行わない場合には,ジャムを発生させてしまうおそれがあるからである。そこで,本形態では,逆転制御により第1当初用紙AP1を手差しトレイ71上へ戻すことで,第1当初用紙AP1のカールやジャムを抑制することができる。
【0106】
なお,例えば,
図6(c)の状態の後に行われる逆転制御では,給紙ローラー72を,第1当初用紙AP1が当初用紙突出距離Z1以上の距離を手差しトレイ71側へと送られるように逆回転させればよい。当初用紙突出距離Z1は,前述したように,最初の送出動作が開始され給紙検知距離Xの分だけ搬送がなされたときから追加用紙BPが検知位置Dに到達したときまでの間の給紙ローラー72の回転時間または回転量により求めることができる。
【0107】
次に,本形態における通常紙間モードと延長紙間モードとを切り替える判断を行う手順について,
図8のフローチャートにより説明する。CPU6は,画像形成装置1に手差しトレイ71の用紙Pに画像形成を行うジョブが入力されるとともに,
図8に示すフローを開始する。つまり,CPU6は,ジョブを開始し,給紙ローラー72に画像形成に係る送出動作を行わせたときに(S101),その給紙がジョブの1枚目のものであるか否かを判断する(S102)。すなわち,実行するジョブが連続印刷であるときには,連続印刷における複数の送出動作のうち,1枚目を給紙する送出動作であるときに,1枚目の給紙であると判断する。また,ジョブが1枚の用紙Pに画像形成を行うものであるときには,その送出動作が1枚目の給紙であると判断する。
【0108】
次に,1枚目の給紙であるときには(S102:YES),その給紙において到達待ち制御が実行されたか否かを判断する(S103)。本形態における到達待ち制御は,給紙リトライ制御である。しかし,前述したように,到達待ち制御として送出動作連続制御を行ってもよい。そして,連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されている状態で(S104:YES)到達待ち制御が実行されている場合(S103:YES),連続印刷のモードを延長紙間モードに切り替える(S105)。
【0109】
1枚目の給紙のときには,その給紙に係る用紙Pが追加用紙BPである可能性が高い。追加用紙BPは,当初用紙束APの上に補充されがちだからである。また,到達待ち制御が実行された場合には,追加用紙BPが給紙ローラー72から離れた位置に補充されていたことにより,第1当初用紙AP1が搬送経路の途中まで搬送されている可能性が高い。よって,それ以降の連続印刷は,延長紙間モードで行うことが好ましいからである。
【0110】
一方,2枚目以降の給紙であるときには(S102:NO),その給紙に係る用紙Pが追加用紙BPである可能性は,1枚目のときよりも低い。また,複数の追加用紙BPが給紙ローラー72から離れた位置に補充されていた場合であっても,2枚目以降の給紙であるときには(S102:NO),その前の1枚目の給紙(S102:YES)においてすでに到達待ち制御が実行されている(S103:YES)。このため,すでに延長紙間モードへと切り替えられた後である(S105)。また,1枚目の給紙であっても(S102:YES),到達待ち制御が実行されていない場合(S103:NO),第1当初用紙AP1が搬送経路の途中まで搬送された状態である可能性は低い。よって,これらの場合には,延長紙間モードへの切り替えが必要ないと判断することができる。また,すでに延長紙間モードである場合(S104:NO),当然,延長紙間モードへ切り替える必要はない。
【0111】
そして,連続印刷に係る画像形成が残っている場合(S106:NO)次の送出動作(S101)が行われる。また,前の給紙により,第1当初用紙AP1が搬送経路の途中まで搬送された状態である場合,その送出動作は延長紙間モードにより行われる。よって,追加用紙BPや第1当初用紙AP1についても,サイズやジャムが誤検出されることなく,画像形成がなされる。
【0112】
一方,その送出動作(S101)に係る画像形成によりジョブが終了である場合には(S106:YES),そのジョブ終了時の連続印刷のモードが延長紙間モードであるか否かを判断する(S107)。
【0113】
延長紙間モードでジョブが終了された場合(S107:YES),第1当初用紙AP1が搬送経路の途中まで搬送された状態のままである可能性が高い。よって,この場合には,逆転制御(S108)を実行する。これにより,搬送経路の途中まで搬送された第1当初用紙AP1を,手差しトレイ71へと戻すことができる。よって,第1当初用紙AP1へのカールを抑制するとともに,その後,給紙カセット51,61より給紙がなされたとしても,その給紙に係る用紙Pの搬送が妨げられることはない。
【0114】
また,逆転制御を実行後,連続印刷のモードは通常紙間モードへと切り替えておくことが好ましい(S109)。次回のジョブを,生産性の高い通常紙間モードで行うことができるからである。なお,ジョブの終了時に通常紙間モードである場合には(S107:NO),逆転制御(S108)を行う必要はない。また,本形態では,画像形成のジョブの終了後,連続印刷のモードは通常紙間モードに設定されている。このため,本形態では,連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されている状態で,次のジョブが開始される。
【0115】
また,
図8のフローチャートに示す手順では,2枚目以降の給紙であるときには(S102:NO),延長紙間モードへの切り替え(S105)が行われないこととしている。しかし,ステップS102の判断はなくてもよい。例えば,当初用紙束APの上に,2回に分けて追加用紙BPが補充されることがある。その際,当初用紙束APの上の1回目の補充に係る追加用紙BPは給紙ローラー72から離れた位置であり,さらにその上の2回目の補充に係る追加用紙BPは給紙ローラー72に接触する位置であることがある。このような場合,2枚目以降の給紙において,到達待ち制御が実行され(S103:YES),第1当初用紙AP1が搬送経路の途中まで搬送された状態となり得る。よって,ステップS102の判断を行わないことにより,上記のような場合にも適切に,延長紙間モードへの切り替え(S105)を行うことができるからである。さらに,ステップS107からステップS109までの判断についても必須ではない。また,ステップS109のみを行わないこととすることもできる。
【0116】
また,連続印刷に係るジョブを延長紙間モードで実行している途中において(S101〜S106),手差しトレイ71の用紙Pがエンプティーとなったときには,連続印刷のモードを通常紙間モードに切り替えることが好ましい。例えば,連続印刷のジョブの実行中に手差しトレイ71の用紙Pが全て給紙された場合,使用者により用紙Pが手差しトレイ71に補充される。このとき,補充された用紙Pはすべて,そろえて補充されている可能性が高い。このため,給紙ローラー72から離れた位置に用紙Pが補充されている可能性は低いからである。これにより,その後,生産性の高い通常紙間モードにより,中断されている連続印刷のジョブを再開することができる。手差しトレイ71のエンプティーは,エンプティーセンサー73により検知することができる。
【0117】
また,本形態のように,連続印刷を通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替えつつ行うことは,特に,手差しトレイ71より給紙を行うジョブがなされていない間,手差しトレイ71を離間状態とする離間待機制御を行う場合に有効である。離間状態とされている時間が長い場合,その離間状態の手差しトレイ71には,追加用紙BPが補充されやすいからである。
【0118】
[第2の形態]
第2の形態について説明する。第2の形態においても,画像形成装置1の構成や,画像形成装置1において実行される給紙リトライ制御および逆転制御,連続印刷のモードである通常紙間モードおよび延長紙間モードなどについては,第1の形態と同様である。第2の形態では,連続印刷のモードを通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替える判断手順が,第1の形態と異なる。
【0119】
第2の形態における通常紙間モードと延長紙間モードとを切り替える判断を行う手順について,
図9のフローチャートにより説明する。本形態では,
図9に示すように,ステップS202の手順が追加されている点において,
図8に示す第1の形態と異なる。その他のステップS201およびステップS203からステップS210の手順についてはそれぞれ,
図8に示す第1の形態におけるステップS101からステップS109の手順と同じである。
【0120】
すなわち,本形態では,ジョブを開始し,給紙ローラー72に画像形成に係る送出動作を行わせたときに(S201),当該ジョブが,手差しトレイ71に用紙Pが載置された後,2回目以降のジョブであるか否かを判断する(S202)。すなわち,手差しトレイ71のエンプティーセンサー73による検知が無しから有りに変わった後,今回のジョブの実行前に少なくとも1回,手差しトレイ71から給紙を行うジョブが実行されていた場合に,今回のジョブが2回目以降のジョブであると判断する(S202:YES)。
【0121】
そして,今回のジョブが用紙Pが載置された後の2回目以降のジョブである場合(S202:YES),ステップS203からステップS205において,連続印刷のモードを延長紙間モードに切り替えるか否かを判断する。一方,今回のジョブが用紙Pが載置された後の1回目のジョブである場合(S202:NO),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替えは行わない。
【0122】
エンプティーの手差しトレイ71に用紙Pが載置された後,1回目のジョブが開始されるまでの間には,追加用紙BPが補充されている可能性が低い。これに対し,その1回目のジョブにおいて連続印刷に係るジョブが実行されていた場合,1回目のジョブの終了時には手差しトレイ71の用紙Pが少なくなっていることがある。よって,用紙Pが手差しトレイ71に載置された後の2回目以降のジョブが開始されるまでの間には,手差しトレイ71上の当初用紙束APが少なくなっていることにより,追加用紙BPが補充されている可能性が高い。
【0123】
そこで,本形態では,今回のジョブが用紙Pが載置された後の1回目のジョブである場合には,連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替えを行わないようにしている。すなわち,今回のジョブが用紙Pが載置された後の1回目のジョブである場合,到達待ち制御が実行されたとしても,その到達待ち制御はスリップなどによる通常の給紙不良によるものである可能性が高い。そして,通常紙間モードにより,高い生産性を維持することができるからである。
【0124】
なお,本形態におけるジョブの回数のカウントにおいては,手差しトレイ71の用紙Pのエンプティーにより中断されたジョブも含まれる。すなわち,連続印刷のジョブが手差しトレイ71のエンプティーにより中断され,用紙Pが補充により載置された後に再開されたときには,このジョブを1回とカウントする。
【0125】
[第3の形態]
第3の形態について説明する。第3の形態においても,画像形成装置1の構成や,画像形成装置1において実行される給紙リトライ制御および逆転制御,連続印刷のモードである通常紙間モードおよび延長紙間モードなどについては,上記の形態と同様である。第3の形態では,連続印刷のモードを通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替える判断手順が,上記の形態と異なる。
【0126】
第3の形態における通常紙間モードと延長紙間モードとを切り替える判断を行う手順について,
図10のフローチャートにより説明する。本形態では,
図10に示すように,ステップS302の手順が追加されている点において,
図8に示す第1の形態と異なる。その他のステップS301およびステップS303からステップS310の手順についてはそれぞれ,
図8に示す第1の形態におけるステップS101からステップS109の手順と同じである。
【0127】
すなわち,本形態では,ジョブを開始し,給紙ローラー72に画像形成に係る送出動作を行わせたときに(S301),前回のジョブが終了されてからの経過時間が長いか否かを判断する(S302)。具体的には,前回の手差しトレイ71より給紙を行うジョブが終了したときから今回の手差しトレイ71より給紙を行うジョブが開始されたときまでの時間が,予め定めた用紙補充時間以上であるときには,前回のジョブが終了されてからの経過時間が長いと判断する(S302:YES)。
【0128】
そして,前回のジョブが終了されてからの経過時間が長い場合(S302:YES),ステップS303からステップS305において,連続印刷のモードを延長紙間モードに切り替えるか否かを判断する。一方,前回のジョブが終了されてからの経過時間が用紙補充時間未満であることにより短い場合(S302:NO),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替えは行わない。
【0129】
前回の手差しトレイ71より給紙を行うジョブが終了したときから今回の手差しトレイ71より給紙を行うジョブが開始されたときまでの時間が長い場合には,追加用紙BPが補充されている可能性が高い。一方,前回のジョブが終了してから今回のジョブが開始されるまでの時間が短い場合には,追加用紙BPが補充されている可能性は低い。そこで,本形態では,前回のジョブが終了されてからの経過時間が短い場合には,連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替えを行わないようにしている。通常紙間モードにより,高い生産性を維持することができるからである。
【0130】
[第4の形態]
第4の形態について説明する。第4の形態においても,画像形成装置1の構成や,画像形成装置1において実行される給紙リトライ制御および逆転制御,連続印刷のモードである通常紙間モードおよび延長紙間モードなどについては,上記の形態と同様である。第4の形態では,連続印刷のモードを通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替える判断手順が,上記の形態と異なる。
【0131】
第4の形態における通常紙間モードと延長紙間モードとを切り替える判断を行う手順について,
図11のフローチャートにより説明する。本形態では,
図11に示すように,ステップS406からステップS408の手順が追加されている点において,
図8に示す第1の形態と異なる。その他のステップS401からステップS405,ステップS409からステップS412の手順についてはそれぞれ,
図8に示す第1の形態におけるステップS101からステップS109の手順と同じである。
【0132】
すなわち,本形態では,給紙ローラー72に画像形成に係る送出動作を行わせたときに(S401),第1の形態と同様,連続印刷のモードを延長紙間モードに切り替えるか否かの判断を行う(S402〜S405)。さらに,連続印刷のモードが延長紙間モードである場合には(S406:YES),通常紙間モードに切り替えるか否かの判断を行う。
【0133】
詳細には,延長紙間モードである場合には(S406:YES),今回の給紙に係る用紙Pと,その前の給紙に係る先の用紙Pとの紙間が,延長紙間モードにおいて設定されている延長紙間WS未満か否かを判断する(S407)。具体的には,用紙センサー40により今回の給紙に係る用紙Pの先端が検知されたときに,その前の給紙に係る用紙Pの後端が検知されてからの経過時間が,延長紙間WSだけ用紙Pが適正に搬送されたときの時間未満であるか否かにより判断することができる。そして,今回の給紙に係る用紙Pと,その前の給紙に係る用紙Pとの紙間が延長紙間WS未満である場合には(S407:YES),連続印刷のモードを通常紙間モードに切り替える。
【0134】
今回の給紙に係る用紙Pと,その前の給紙に係る用紙Pとの紙間が延長紙間WS未満である場合には,搬送経路の途中まで搬送されていた第1当初用紙AP1について画像形成が行われたと判断できるからである。すなわち,それ以降,通常紙間モードにより画像形成を行ったとしても,第1当初用紙AP1が搬送経路の途中で停止していることによる問題が生じないからである。そして,通常紙間モードにより,高い生産性で画像形成を行うことができる。なお,ステップS407では,紙間が延長紙間WSよりも短い長さに定めた閾値未満である場合に,延長紙間モードから通常紙間モードに切り替えることとしてもよい。
【0135】
また,延長紙間モードにて先の用紙Pが検知位置Dを通過してから次の用紙Pに係る送出動作を行っている場合,連続印刷における紙間が手差しトレイ71上の用紙Pの先端から検知位置Dまでの距離Yよりも短かったときに,通常紙間モードに切り替えればよい。さらに,本形態のように,紙間を検出しつつ連続印刷を行うときには,用紙センサー40に係る誤検出防止制御を行わないことが好ましい。追加用紙BPと第1当初用紙AP1との紙間は,第1当初用紙AP1についての給紙が搬送経路の途中まで搬送されている位置から開始されてしまう分,短いものである。よって,誤検出防止制御を行っている場合,その短い追加用紙BPと第1当初用紙AP1との紙間を,用紙センサー40によって検知することができないおそれがあるからである。
【0136】
[第5の形態]
第5の形態について説明する。第5の形態においても,画像形成装置1の構成や,画像形成装置1において実行される給紙リトライ制御および逆転制御,連続印刷のモードである通常紙間モードおよび延長紙間モードなどについては,上記の形態と同様である。第5の形態では,連続印刷のモードを通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替える判断手順が,上記の形態と異なる。
【0137】
図12は,手差しトレイ71に適切に載置されている当初用紙束APの上に乱雑に追加用紙BPを補充した状態で,連続印刷を行わせたときの給紙結果を示すものである。なお,
図12は,連続印刷について,CPU6にモードの切り替えを行わせず,すべて通常紙間モードで行ったときのものである。
【0138】
まず,追加用紙BPが給紙ローラー72から離れた位置に補充されていたときの,追加用紙BPの当初用紙束APに対するズレが20mm未満である場合,
図12に「無」で示すように,給紙リトライ制御は行われない。画像形成装置1においては,追加用紙BPのズレが20mm未満である場合,送出動作が開始されたときから給紙検知時間以内に,追加用紙BPの先端が用紙センサー40の検知位置Dに到達するからである。またこの場合,
図12に「○」で示すように,連続して給紙された追加用紙BPおよび第1当初用紙AP1はともに搬送経路を適正に搬送され,その表面に画像形成がなされた。
【0139】
次に,追加用紙BPのズレが20mm以上,30mm未満の範囲内である場合,
図12に「有」で示すように,給紙リトライ制御が行われた。追加用紙BPのズレが20mm以上である場合,送出動作が開始されたときから給紙検知時間以内に,追加用紙BPの先端が検知位置Dに到達しないからである。しかし,追加用紙BPのズレが20mm以上,30mm未満の範囲内である場合には,給紙リトライ制御が行われた後,
図12に「○」で示すように,追加用紙BPおよび第1当初用紙AP1にともに,通常紙間モードにより適切に連続印刷を行うことができた。すなわち,追加用紙BPと第1当初用紙AP1とが重なることなく,さらには,チャタリングによる誤検知を防止するための誤検出防止制御におけるジャムなども誤検出されることなく,連続印刷がなされた。追加用紙BPのズレが20mm以上,30mm未満の範囲内である場合は,
図5および
図6で説明した距離Z1が,通常紙間RSに対して十分に短いからである。
【0140】
一方,追加用紙BPのズレが30mm以上である場合には,
図12に「有」で示すように給紙リトライ制御が行われた後,ジャムやサイズエラーが検出されたことにより連続印刷が停止された。具体的には,追加用紙BPのズレが30mm以上,35mm未満の範囲内である場合,第1当初用紙AP1についてジャムが検出されたことにより,連続印刷が停止された。また,追加用紙BPのズレが35mm以上である場合,追加用紙BPについてサイズエラーが検出されたことにより,連続印刷が停止された。
【0141】
よって,
図12より,画像形成装置1においては,追加用紙BPのズレが20mm以上,30mm未満の範囲内である場合には,給紙リトライ制御は行われるものの,通常紙間モードにより連続印刷を行うことができることがわかる。一方,追加用紙BPのズレが30mm以上である場合には,通常紙間モードによっては連続印刷を行うことができないことがわかる。
【0142】
そこで,本形態では,追加用紙BPのズレが30mm未満と小さいときには,生産性の高い通常紙間モードにより連続印刷を行う。その本形態における通常紙間モードと延長紙間モードとを切り替える判断を行う手順について,
図13のフローチャートにより説明する。本形態では,
図13に示すように,ステップS504の手順が追加されている点において,
図8に示す第1の形態と異なる。その他のステップS501からステップS503およびステップS505からステップS510の手順についてはそれぞれ,
図8に示す第1の形態におけるステップS101からステップS109の手順と同じである。
【0143】
すなわち,本形態では,給紙ローラー72に画像形成に係る送出動作を行わせ(S501),その1枚目の給紙において(A502:YES)到達待ち制御が実行されたときには(S503:YES),給紙した用紙Pのズレが大きいか否かを判断する(S504)。本形態では,給紙した用紙Pのズレが大きいか否かの判断を,最初の送出動作が開始され給紙検知距離Xの分だけ搬送がなされたときから用紙Pが検知位置Dに到達したときまでの間の給紙ローラー72の回転時間により行う。つまり,当初用紙突出距離Z1の分の給紙ローラー72の回転時間である当初用紙突出時間により行う。
【0144】
すなわち,当初用紙突出時間が,予め定めた給紙ローラー72の回転時間についての閾値である許容当初用紙突出時間以上か否かにより判断する。そして,当初用紙突出時間が許容当初用紙突出時間以上であり,給紙した用紙Pのズレが大きいと判断され(S504:YES),さらに通常紙間モードである場合には(S505:YES),延長紙間モードへと切り替える(S506)。一方,当初用紙突出時間が許容当初用紙突出時間未満であり,給紙した用紙Pのズレが小さいと判断される場合には(S504:NO),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替えは行わない。
【0145】
給紙した用紙Pのズレが大きい場合,その後,通常紙間モードでは,ジャムなどの発生により連続印刷を適切に行うことができないからである。一方,給紙した用紙Pのズレが小さい場合には,その後,通常紙間モードによりジャムなどを発生させることなく高い生産性で連続印刷を行うことができる。
【0146】
なお,許容当初用紙突出時間は,画像形成装置の構成や設定されている通常紙間RSなどにより異なる値とすることができる。また,給紙した用紙Pのズレが大きいか否かの判断は(S504),最初の送出動作が開始され給紙検知距離Xの分だけ搬送がなされたときから用紙Pが検知位置Dに到達したときまでの間の給紙ローラー72の回転量である当初用紙突出回転量により求めることができる。
【0147】
また,給紙した用紙Pのズレが大きいか否かの判断は(S504),手差しトレイ上にセンサーを設けることにより行うこともできる。
図14に,本形態の
図13のフローチャートを適用することのできる画像形成装置90を示す。画像形成装置90は,上記の画像形成装置1(
図1)と異なる手差しトレイ91を有している。画像形成装置90の手差しトレイ91以外の構成は,上記の画像形成装置1(
図1)と同様である。
【0148】
画像形成装置90においても,手差しトレイ91に載置された用紙Pは,給紙ローラー72の送出動作により,その最上部のものより給紙経路70へと送り出される。また,手差しトレイ91についても,用紙Pの後端を規制するものは設けられておらず,
図14に実線で示す給紙可能位置と二点鎖線で示す離間位置とをとることができる。
【0149】
そして,手差しトレイ91には,載置されている用紙Pを検知するためのエンプティーセンサー92と,異常検知センサー93とが設けられている。エンプティーセンサー92は,上記の画像形成装置1の手差しトレイ71に設けられているエンプティーセンサー73と同様,手差しトレイ91に載置されている用紙Pの搬送方向の先端側を検知位置とするものである。つまり,手差しトレイ91の用紙Pのエンプティーを検知することができるものである。
【0150】
一方,異常検知センサー93は,手差しトレイ91における給紙ローラー72から遠い位置に設けられている。具体的に,異常検知センサー93は,手差しトレイ91に適切に載置されている用紙Pの後端よりも,距離Z4だけ,給紙ローラー72から離れた位置を検知位置としている。このため,手差しトレイ91に適切に用紙Pが載置されているときには,異常検知センサー93により用紙Pが検知されることはない。一方,手差しトレイ91に大きくズレて載置されている異常な用紙Pがあるときには,異常検知センサー93はこれを検知する。
【0151】
本形態において,距離Z4は,30mmとされている。また,CPU6は,手差しトレイ91上に適切に載置されている用紙Pの後端を,例えば,画像形成装置90に使用者によって手差しトレイ91に載置されている用紙Pのサイズが入力されることなどにより知ることができる。このため,追加用紙BPが適切に載置されている当初用紙束APに対して30mm以上,ズレて補充された場合に,その追加用紙BPを異常検知センサー93により異常なものとして検知することができる。
【0152】
そして,画像形成装置90では,
図13のステップS504において,給紙した用紙Pのズレが大きいか否かの判断を,異常検知センサー93により行うことができる。すなわち,送出動作を開始したときに(S501),異常検知センサー93によって用紙Pが検知されていた場合には,ズレの大きい用紙Pが存在すると判断することができる(S504:YES)。
【0153】
この場合,到達待ち制御において(S503:YES),第1当初用紙AP1が30mmである距離Z4以上,給紙されているおそれがある。すなわち,その後,通常紙間モードで連続印刷を行うことによりジャムなどが発生するおそれがある。従って,連続印刷のモードが通常紙間モードである場合には(S505:YES),延長紙間モードに切り替える(S506)。
【0154】
一方,異常検知センサー93によって用紙Pが検知されていないことにより,ズレの大きい用紙Pが存在しない場合(S504:NO),延長紙間モードへの切り替えを行わずに,通常紙間モードにより高い生産性で連続印刷を行うことができる。
【0155】
[第6の形態]
第6の形態について説明する。第6の形態においても,画像形成装置1の構成や,画像形成装置1において実行される給紙リトライ制御および逆転制御,連続印刷のモードである通常紙間モードおよび延長紙間モードなどについては同様である。第6の形態では,逆転制御を実行するタイミングが,上記の形態と異なる。
【0156】
第6の形態における逆転制御を行う手順について,
図15のフローチャートにより説明する。
図15のフローチャートは,上記の形態とは異なり,給紙カセット51,61より用紙Pを給紙しつつ画像形成を行うときのものである。つまり,CPU6は,画像形成装置1に,給紙カセット51,61に載置されている用紙Pに画像形成を行うジョブが入力されるとともに,
図15に示すフローを開始する。
【0157】
さらに,本形態に係る
図15のフローを行う画像形成装置1においては,手差しトレイ71より用紙Pを給紙するジョブを行った場合,そのジョブ終了後の逆転制御を行わないものである。例えば,手差しトレイ71から用紙Pを給紙する場合に
図8に係るフローを行う画像形成装置1においては,そのステップS107からステップS109までの手順を行わないようにされている。このため,延長紙間モードで手差しトレイ71より用紙Pを給紙するジョブが終了した場合,搬送経路には,途中まで搬送された第1当初用紙AP1が残った状態であることがある。
【0158】
そこで,本形態では,
図15に示すように,給紙カセット51,61より用紙Pを給紙するジョブが入力された場合,手差しトレイ71に係る連続印刷のモードが延長紙間モードに設定されているか否かを判断する(S601)。延長紙間モードに設定されている場合(S601:YES),前回実行されたジョブが手差しトレイ71より用紙Pを給紙するジョブであったか否かを判断する(S602)。
【0159】
前回のジョブが手差しトレイ71より給紙するジョブであった場合(S602:YES),逆転制御(S603),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替え(S604)を行った後,今回のジョブを開始する。今回のジョブでは,給紙カセット51,61より用紙Pを給紙する送出動作を開始し(S605),今回のジョブが終了したとき(S606:YES),
図15のフローを終了する。
【0160】
そして,
図15においては,途中まで搬送された第1当初用紙AP1が残っている状態である場合には,今回のジョブが開始される前に,逆転制御が行われる。つまり,今回のジョブが開始されるまでには,第1当初用紙AP1は手差しトレイ71へ戻されている。これにより,給紙カセット51,61より用紙Pの給紙を行う今回のジョブを,その給紙した用紙Pの搬送が,搬送経路の途中まで搬送された第1当初用紙AP1に妨げられることなく行うことができる。また,本形態では,手差しトレイ71より給紙を行うジョブを,逆転制御を行うことなく続けて行うことができる。よって,ジョブの終了時に必ず逆転制御を行う場合と比べて,手差しトレイ71より給紙を行う連続するジョブを短時間で行うことができる。
【0161】
なお,手差しトレイ71に係る連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されている場合(S601:NO)には,逆転制御(S603),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替え(S604)を行うことなく,今回のジョブを開始する。また,前回のジョブが手差しトレイ71より給紙するジョブではなかった場合についても(602:NO),逆転制御(S603),連続印刷のモードの延長紙間モードへの切り替え(S604)を行うことなく,今回のジョブを開始する。これらの場合には,搬送経路の途中まで搬送された第1当初用紙AP1がないため,当然,給紙カセット51,61より給紙された用紙Pの搬送が妨げられることはない。
【0162】
以上詳細に説明したように上記の形態の画像形成装置では,連続印刷のモードが通常紙間モードに設定されている状態について,到達待ち制御を行わなかったときには,延長紙間モードに切り替えずに画像形成を続行する。このため,生産性の高い通常紙間モードにより連続印刷を行うことができる。一方,到達待ち制御が行われた場合,搬送経路には,すでにその途中まで搬送された用紙が存在する可能性が高い。そこで,到達待ち制御が行われた一定の場合には,その後,延長紙間モードで連続印刷を行う。これにより,すでに搬送経路の途中まで搬送されている用紙と,その前の用紙との紙間を十分に確保しつつ連続印刷を行うことができる。従って,シートが乱雑に補充されたことによって生じる連続印刷時の紙間が十分に確保されなくなる問題を抑制することのできる画像形成装置が実現されている。
【0163】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本形態においては,連続印刷のモードを手差しトレイについてのみ,通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替えることとして説明しているが,これに限るものではない。すなわち,その他の給紙トレイについても,連続印刷のモードを通常紙間モードと延長紙間モードとの間で切り替えることとしてもよい。また例えば,本発明はカラープリンターに限らず,公衆回線経由で印刷ジョブの送受信を行うような画像形成装置などにも適用可能である。また例えば,本発明は中間転写ベルトを有するものに限らず,用紙担持ベルトを有する画像形成装置にも適用可能である。