特許第5928612号(P5928612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5928612-化合物半導体太陽電池 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928612
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】化合物半導体太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20160519BHJP
【FI】
   H01L31/06 400
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-558418(P2014-558418)
(86)(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公表番号】特表2015-508239(P2015-508239A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2013054643
(87)【国際公開番号】WO2013129275
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-41944(P2012-41944)
(32)【優先日】2012年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雅人
【審査官】 森江 健蔵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−026891(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108685(WO,A1)
【文献】 特開平04−127483(JP,A)
【文献】 特開2011−159920(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098369(WO,A1)
【文献】 Atefeh Jafari, etc.,Effect of Low Concentration Sn Doping on Optical Properties of CdS Films Grrown by CBD Technique,International Journal of Molecular Sciences,スイス,MDPI,2011年 9月23日,vol.12, no.12,6320-6328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた裏面電極と、
前記裏面電極上に設けられたp型化合物半導体光吸収層と、
前記p型化合物半導体光吸収層上に設けられたn型化合物半導体バッファ層と、
前記n型化合物半導体バッファ層上に設けられた透明電極と、
を有する化合物半導体太陽電池において、
前記p型化合物半導体光吸収層が、
(AgCu1−x2aZn(GeSn1−y(S1−zSe
0≦x≦1、0≦y1、0≦z≦1、0.5≦a≦1.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5
であり、
前記n型化合物半導体バッファ層がSnと、CuまたはAgとを含有し、
前記n型化合物半導体バッファ層におけるSn、Cu及びAgの各々の濃度が前記p型化合物半導体光吸収層における濃度に対し、1/10から1/10000であることを特徴とする化合物半導体太陽電池。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられた裏面電極と、
前記裏面電極上に設けられたp型化合物半導体光吸収層と、
前記p型化合物半導体光吸収層上に設けられたn型化合物半導体バッファ層と、
前記n型化合物半導体バッファ層上に設けられた透明電極と、
を有する化合物半導体太陽電池において、
前記p型化合物半導体光吸収層が、
(AgCu1−x2aZn(GeSn1−y(S1−zSe
0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦1、0.5≦a≦1.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5
であり、
前記n型化合物半導体バッファ層がGeを含有し、
前記n型化合物半導体バッファ層におけるGeの濃度が前記p型化合物半導体光吸収層における濃度に対し、1/10から1/10000であることを特徴とする化合物半導体太陽電池。
【請求項3】
前記n型化合物半導体バッファ層がCuまたはAgいずれかを含有し、
前記n型化合物半導体バッファ層におけるCu及びAgの各々の濃度が前記p型化合物半導体光吸収層における濃度に対し、1/10から1/10000であることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体太陽電池。
【請求項4】
前記n型化合物半導体バッファ層がZnを含有することを特徴とする請求項1〜3に記載の化合物半導体太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウェハーを用いた結晶シリコン系太陽電池に対して、近年、変換効率で結晶シリコン系に迫る特性を持ち、薄膜技術を利用したCdTe系太陽電池やCuIn1−XGaSe(CIGS)系太陽電池といった化合物半導体薄膜太陽電池の開発・普及が進んでいる。CdTe系太陽電池は、光吸収層に環境負荷の高いカドミウム、希少元素であるテルルを使用しており、CIGS系太陽電池は、希少元素であるインジウムを使用しており、シリコン系太陽電池と比べて材料の観点から問題を有している。
化合物半導体薄膜太陽電池の中でCuZnSnS(CZTS)は、CdTeやCIGSのように太陽電池に適した1.4−1.5eVのバンドギャップを持ち、環境負荷の高い元素や希少元素を含まないという点から、注目され始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4783908号
【特許文献2】特開2010−245189
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、CZTS光吸収層内のNaとOの濃度を低くすることで、変換効率のばらつきを低減することができることが開示されている。ここでは、バッファ層は、CIGS系で用いられているCdS、ZnO、Zn(O、OH)、Zn(O、S)、Zn(O、S、OH)、Zn1−xMgO、Inが列記されている。
また、特許文献2では大気開放下でCZTS光吸収層へZnO薄膜のバッファ層を形成する方法が開示されている。
このように、CZTSに対しては、これまでCIGS系に用いられているバッファ層がそのまま転用されてきた。
【0005】
しかしながら、従来のCZTS上のバッファ層は、CIGSで用いられているバッファ層がそのまま転用されているだけで、CZTSとバッファ層のp−n接合形成が十分ではなく、CZTS光吸収層の特性を十分引き出せておらず、変換効率がCdTeやCIGSと比べて低いという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、変換効率の高いCZTS系の化合物半導体太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の化合物半導体太陽電池は、
基板と、基板上に設けられた裏面電極と、裏面電極上に設けられたp型化合物半導体光吸収層と、p型化合物半導体光吸収層上に設けられたn型化合物半導体バッファ層と、n型化合物半導体バッファ層上に設けられた透明電極と、を有する化合物半導体太陽電池において、p型化合物半導体光吸収層が、
(AgCu1−x2aZn(GeSn1−y(S1−zSe
0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0.5≦a≦1.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5であり、n型化合物半導体バッファ層がSnまたはGeを含有し、n型化合物半導体バッファ層におけるSn及びGeの濃度がp型化合物半導体光吸収層における濃度よりも低いことを特徴とする。
【0008】
n型化合物半導体バッファ層にSnまたはGeいずれかを含み、その濃度が、p型化合物半導体光吸収層の濃度よりも低い場合に、良好なp‐n接合が形成されるため、太陽電池として変換効率が向上するものと考えられる。
【0009】
本発明の化合物半導体太陽電池は、n型化合物半導体バッファ層が、CuまたはAgのいずれかを含有し、n型化合物半導体バッファ層におけるCu及びAgの濃度が、p型化合物半導体光吸収層の濃度よりも低いことが好ましい。
【0010】
n型化合物半導体バッファ層にCuまたはAgのいずれかを含み、その濃度が、p型化合物半導体光吸収層の濃度よりも低い場合に、より良好なp‐n接合が形成され、化合物半導体太陽電池として変換効率が向上する。
【0011】
本発明の化合物半導体太陽電池は、n型化合物半導体バッファ層がZnを含有することが好ましい。
【0012】
さらに、n型化合物半導体バッファ層にZnを含むことにより、より良好なp‐n接合が形成され、化合物半導体太陽電池として変換効率が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光吸収層とバッファ層の良好なp‐n接合が得られ、高い変換効率のCZTS系の化合物半導体太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素については同一の符号を付す。また、上下左右の位置関係は図面に示す通りである。また、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0016】
(化合物半導体太陽電池)
図1に示すように、本実施形態に係る化合物半導体太陽電池2は、基板4と基板4上に設けられた裏面電極6と、裏面電極6上に設けられたp型化合物半導体光吸収層8と、p型化合物半導体光吸収層8上に設けられたn型化合物半導体バッファ層10と、n型化合物半導体バッファ層10上に設けられた透明電極12と透明電極12上に設けられた上部電極14とを備える薄膜型の化合物半導体太陽電池である。
【0017】
基板4は、その上に設けられる薄膜を形成するための支持体であり、薄膜を十分保持できる程度の強度を有する部材であれば導体でも不導体でもよく、他の化合物半導体太陽電池で主に用いられているような種々の材料を用いることができる。具体的には、ソーダライムガラス、石英ガラス、ノンアルカリガラス、金属、半導体、炭素、酸化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、あるいは、ポリイミドなどの樹脂を用いることができる。
【0018】
基板4上に設けられた裏面電極6は、p型化合物半導体光吸収層8で発生した電流を取り出すためのもので、高い電気伝導度、基板4との良好な密着性を持つものが良い。例えば、基板4にソーダライムガラスを用いる場合には、裏面電極6には、MoやMoS、MoSeを用いることができる。
【0019】
p型化合物半導体光吸収層8は、光吸収によりキャリアを発生するものであり、Cu、Ag、Zn、Sn、Ge、S、Seで構成されるp型化合物半導体の薄膜層である。Cu、Ag、Zn、Sn、Ge、S、Seで構成されるp型化合物半導体とは、化学式(AgCu1−x2aZn(GeSn1−y(S1−zSeで表され、CuZnSnS(CZTS)に代表される、CZTS系化合物である。
【0020】
CZTSは、太陽電池に適した1.4−1.5eVのバンドギャップ、10cm−1台の光吸収係数を有し、x、y、zの値を変えることで、バンドギャップを調整することができ、a、b、cの値を変えることでキャリア濃度を調整できる。
x、y、zは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であり、a、b、cは、それぞれ、0.5≦a≦1.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5である。
バンドギャップの増大と短絡電流の増大を両立させ、さらなるより高い変換効率を得るためには、xは、0≦x≦0.5が好ましく、yは、0≦y≦0.5が好ましく、また、Zは、0≦z≦0.5が好ましい。
a、b、cは、異相の生成を抑制するので、1.5≦2a+b+c<4かつ2a<b+cが好ましい。
【0021】
p型化合物半導体光吸収層8上に設けられたn型化合物半導体バッファ層10は、p型化合物半導体光吸収層8よりも十分に広いバンドギャップ(低い光吸収)をもつことが求められる。また、透明電極12はスパッタ法などの製膜時のp型化合物半導体光吸収層8に与えるダメージを緩和することが求められる。さらに、p型化合物半導体光吸収層8とn型化合物半導体バッファ層10の界面におけるフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯に近づけることなどが求められる。
【0022】
n型化合物半導体バッファ層10の材料としては、CdS、ZnO、酸素、水酸化物、イオウを含む亜鉛の混晶化合物Zn(O、S、OH)、Zn1−xMgO、Inなど他の化合物半導体太陽電池で用いられているn型化合物半導体バッファ層の材料にSnまたはGeを含有させたものを用いることができる。
n型化合物半導体バッファ層10におけるSn及びGeの濃度がp型化合物半導体光吸収層における濃度よりも低いことにより、p型化合物半導体光吸収層8との格子整合性や界面のフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯に近づけることが可能となり、多数キャリアの再結合の増加を抑制でき、高い変換効率が得られる。その一方、n型化合物半導体バッファ層10におけるSn及びGeの濃度がp型化合物半導体光吸収層における濃度よりも高くなると、界面のフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯に近づけることできなくなり、変換効率は低下する。
n型化合物半導体バッファ層10におけるSn及びGeの濃度はp型化合物半導体光吸収層における濃度の1/10から1/10000が好ましく、1/100から1/1000がより好ましい。
【0023】
加えて、n型化合物半導体バッファ層10が、CuまたはAgのいずれかを含有し、n型化合物半導体バッファ層10におけるCu及びAgの濃度が、前記p型化合物半導体光吸収層8の濃度よりも低いものを用いることができる。これにより、p型化合物半導体光吸収層8との格子整合性や界面のフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯に近づけることがより良くなり、高い変換効率が得られる。
n型化合物半導体バッファ層10におけるAg及びCuの濃度がp型化合物半導体光吸収層における濃度よりも高くなると、界面のフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯に近づけることができなくなり、変換効率は低下する。
n型化合物半導体バッファ層10におけるAg及びCuの濃度はp型化合物半導体光吸収層における濃度の1/10から1/10000が好ましく、1/100から1/1000がより好ましい。
【0024】
さらに加えて、n型化合物半導体バッファ層10にZnを含有したものを用いることができる。これにより、p型化合物半導体光吸収層8との格子整合性や界面のフェルミ準位をp型化合物半導体光吸収層8の電導帯にさらに近づけることができ、より高い変換効率が得られる。
【0025】
p型化合物半導体光吸収層8に生じるボイドやピンホールの絶縁、p型化合物半導体光吸収層8と透明電極12との間に起こるトンネル電流によるリークを防ぐために、n型化合物半導体バッファ層10と透明電極12との間に、高抵抗層を設けてもよい。
高抵抗層は、他の化合物半導体太陽電池で用いられているノンドープの高抵抗ZnOやZnMgOを用いることができる。
【0026】
n型化合物半導体バッファ層10上に設けられた透明電極12は、電流を集めるとともに、光をp型化合物半導体光吸収層8まで通すためのものである。具体的には、Al、Ga、Bを数%含有したn型のZnOを用いることができる。他にインジウムスズ酸化物など低抵抗で可視光から近赤外で高い透過率をもつものを用いることができる。
【0027】
透明電極12上に設けられた上部電極14は、効率的な集電のため、櫛型状に形成する。上部電極14の材料としては、Alを用いることができる。薄いNiとAlの2層構造をとっても良く、Al合金を用いても良い。
【0028】
絶縁性の基板4上に絶縁領域で複数に分離された裏面電極6が設けられ、裏面電極6が一部露出した部分を有することで、並び合う裏面電極6上において、片方の裏面電極6に偏りながら、またっがて、p型化合物半導体光吸収層8、n型化合物半導体バッファ層10、高抵抗層が順次設けられ、さらに高抵抗層上に透明電極12が設けられ、裏面電極6が露出した部分で透明電極12と裏面電極6が接続し、この接続部分に対して基板4上の絶縁領域と逆の部分で透明電極12が絶縁され、複数に分離された太陽電池セルが直列接続する集積構造とし、太陽電池モジュールとする。
この場合は、上部電極16を用いなくても良い。
【0029】
さらに、光吸収率を高めるために、透明電極12の上部に、SiO、TiO、Siなどの光散乱層やMgF、SiOなどの反射防止層を設けても良い。
【0030】
さらに高い変換効率を得るために、異なる波長領域の光を吸収する太陽電池セルを複数接合したタンデム型太陽電池を構成する太陽電池セルとして、本発明の化合物半導体太陽電池を用いても良い。
【0031】
(化合物半導体太陽電池の製造方法)
本実施形態の化合物半導体太陽電池の製造方法では、まず、基板4を準備し、基板4上に裏面電極6を形成する。裏面電極6には、Moを用いることができる。裏面電極6の形成方法としては、例えばMoターゲットのスパッタリング等が挙げられる。
【0032】
基板4上に裏面電極6を形成した後、p型化合物半導体光吸収層8を裏面電極6上に形成する。p型化合物半導体光吸収層8の形成方法としては、同時真空蒸着法、前駆体をスパッタリング、電析、塗布、印刷などで形成した後に硫化/セレン化する硫化/セレン化法などが挙げられる。硫化/セレン化法の場合、前駆体と同時にSn及びGe、またはSn及びGeを含む化合物を加えても良い。
【0033】
化学式(AgCu1−x2aZn(GeSn1−y(S1−zSeにおいて、x、y、zは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であり、a、b、cは、それぞれ、0.5≦a≦1.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5であるように蒸着条件、前駆体作成条件、硫化/セレン化条件を調整する。
【0034】
バンドギャップの増大と短絡電流の増大を両立させ、さらなるより高い変換効率を得るためには、xは0≦x≦0.5が好ましく、yは0≦y≦0.5が好ましく、また、zは0≦z≦0.5であるように製膜条件を調整することが好ましい。
a、b、cは、異相の生成を抑制するので、1.5≦2a+b+c<4かつ2a<b+cであるように製膜条件を調整することが好ましい。
【0035】
n型化合物半導体バッファ層10の形成前に、p型化合物半導体光吸収層8の表面を、KCN溶液などでエッチングしても良い。エッチング時間を長くすることにより、p型化合物半導体光吸収層8の組成に傾斜を持たせることができる。また、同時真空蒸着法を多段にすることによって、p型化合物半導体光吸収層8の組成に傾斜を持たせても良い。
【0036】
p型化合物半導体光吸収層8の形成後、p型化合物半導体光吸収層8上にn型化合物半導体バッファ層10を形成する。材料としては、Sn及びGeを含むCdS、Inや、ZnO、Zn(O、OH)、Zn1−xMgO、Zn(O、S)、Zn(O、S、OH)、が挙げられる。これらに加えて、Ag及びCu、Zn、S及びSeのいずれかを含んでもよい。
【0037】
バッファ層は、溶液成長法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の化学蒸着法、スパッタリング、ALD法(Atomic layer deposition)等で形成することができる。
溶液成長法では、Sn及びGeを含CdS層及びZn(O、S、OH)層などを形成することができる。例えば、CdS層の場合、Cd塩とSn及びGeの塩あるいは、さらにCu、Zn、S及びSeのいずれかの塩を溶解した溶液と、塩化アンモニウム(NHCl)水溶液を用いて溶液を調整し、好ましくは40−80℃に加熱してp型化合物半導体光吸収層8を好ましくは1分〜10分浸漬する。その後、好ましくは40−80℃に加熱したアンモニア水で塩基性にしたチオ尿素(CHS)水溶液を撹拌しながら加え、好ましくは2分から20分間撹拌したあと、溶液から取り出し、水で洗浄後、乾燥することで得ることができる。Sn及びGe、Ag及びCu、Zn、Seの濃度は、Cd塩の1/10から1/10000が好ましく、1/100から1/1000がより好ましい。Zn(O、S、OH)層の場合は、Cd塩をZn塩に置き換えればよい。
【0038】
MOCVDでは、ZnMgO層などを形成することができる。MOCVDの場合、材料であるZn、Mgの有機金属ガス源にSn及びGe、さらにはAg及びCu、S、Seの有機金属ガス源を加えて製膜することで得ることができる。Sn及びGe、さらにはAg及びCu、S、Seの有機金属ガス源のZn、Mgの有機金属ガス減に対する割合は、1/10から1/10000が好ましく、1/100から1/1000がより好ましい。スパッタリングの場合、ZnMgOターゲットにSn及びGe、さらにはAg及びCu、S、Seを添加することで製膜することができる。
その他、ALD法では、Zn(O、S)層などが形成でき、ALDの場合もMOCVDの場合と同様に有機金属ガス源を調整して製膜することで得ることができる。
【0039】
n型化合物半導体バッファ層10の形成後、n型化合物半導体バッファ層10上に透明電極12を形成し、透明電極12上に上部電極14を形成する。
透明電極12の形成方法としては、例えば高抵抗層の材料としてノンドープのZnOやZnMgO、透明電極の材料としてAl、Ga、Bを数%含有したn型のZnOや、インジウムスズ酸化物を用いることができ、スパッタリングやMOCVD等の化学蒸着法で形成することができる。
【0040】
上部電極14は例えばAl又はNi等の金属から構成される。上部電極14は抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着またはスパッタリングにより形成することができる。これにより、化合物半導体太陽電池2が得られる。なお、透明電極12上にMgF、TiO、SiOなどの光散乱層や反射防止層を形成してもよい。光散乱層や反射防止層は抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着、スパッタリング法などにより形成することができる。
【0041】
絶縁性の基板4上に形成された裏面電極6をスクライブすることにより複数に分離し、その上にp型化合物半導体光吸収層8、n型化合物半導体バッファ層10、高抵抗層を製膜し、裏面電極6をスクライブした部分から少しずらしてスクライブして、裏面電極6を部分的に露出させる。その上に、透明電極12を製膜し、先にスクライブした部分から少しずらしてスクライブして、裏面電極6を露出させ、個々の太陽電池セルを分離し、複数の太陽電池セルを透明電極12と裏面電極6で直列接続する集積構造とし、裏面電極6側、透明電極12側双方に引き出し電極を形成し、カバーガラス、フレーム取付などを施し、電極太陽電池モジュールとすることができる。この場合は、上部電極16を用いなくても良い。
【0042】
化合物半導体太陽電池セルとそれぞれバンドギャップの異なる光吸収層を有する太陽電池セルを複数接合してタンデム型太陽電池を形成することができる。
【0043】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
ソーダライムガラス基板上に、スパッタリング法により、2.5cm×2.5cmの大きさのMo層を厚み1μm形成した。
【0045】
(Cu層の電解析出)
3.0MのNaOH、0.2Mのソルビトール、0.10MのCuClを含む水溶液を電解液として、電解析出により、Mo層上に230nmのCu膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg/AgCl/飽和KCl溶液の構成の水溶液用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−1.14Vとし、通電量を0.67Cとした。その後、水洗し乾燥した。
【0046】
(Sn層の電解析出)
2.25MのNaOH、0.45Mのソルビトール、55mMのSnClを含む水溶液を電解液として、電解析出により、Cu層上に270nmのSn膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg/AgCl/飽和KCl溶液の構成の水溶液用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−1.21Vとし、通電量を0.42Cとした。その後、水洗し乾燥した。
【0047】
(Zn層の電解析出)
フタル酸水素カリウムとスルファミン酸でpH3に調整した水溶液に、0.24MLiClと50mMZnClを溶解したものを電解液として、電解析出により、Sn層上に150nmのZn膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg/AgCl/飽和KCl溶液の構成の水溶液用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−1.1Vとし、通電量を0.42Cとした。その後、水洗し乾燥した。
【0048】
(硫化)
Cu/Sn/Znを積層した前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型化合物半導体吸収層(光吸収層)としてのCZTS膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS(エネルギー分散型X線)分析による膜組成は、Cu2aZnSnにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0であった。Sn、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0049】
(n型化合物半導体バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)1質量部、及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにしてn型化合物半導体バッファ層(バッファ層)を得た。得られたSn含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.15at%であった。光吸収層のSn含有量と比べて、小さな値となった。
【0050】
(透明電極の製膜)
RFスパッタ装置にて、まず、ノンドープのZnOターゲットを用いて、1.5Pa、400Wで5分間製膜し、高抵抗のZnO透明膜を製膜後、Alを2重量%含むZnOターゲットを用いて、0.2Pa、200Wで40分間製膜し、AlドープZnO透明電極をCZTS/Sn含有CdS上に得た。得られた膜の厚さは600nmであった。
【0051】
(Ni/Al表面電極)
櫛状のマスクを用いて、蒸着装置にてNi100nm、Al1μmの表面電極を製膜し、面積1cmの太陽電池セルを得た。
【0052】
(太陽電池特性)
キセノンランプを光源に用い、スペクトルを太陽光に似せた擬似太陽光光源(ソーラーシミュレータ)を用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.4%となった。
【0053】
(実施例2)
(太陽電池)
バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。バッファ層は以下のように作製した。蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、5mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Cu含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.10at%、Cuの含有量は0.05at%であった。光吸収層のSn、Cu含有量と比べて、小さな値となった。
【0054】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.8%となった。
【0055】
(実施例3)
(太陽電池)
バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。バッファ層は以下のように作製した。蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、5mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、5mM塩化亜鉛(ZnCl2)1.0質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Cu、Zn含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.10at%、Cuの含有量は0.05at%、Znの含有量は0.17at%であった。光吸収層のSn、Cu、Zn含有量と比べて、小さな値となった。
【0056】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が6.8%となった。
【0057】
(比較例1)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0058】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が4.3%となった。
【0059】
(実施例4)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0060】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPhysical Vapor deposition(物理蒸着、以下PVDと呼ぶ)装置にて行った。なおPVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
【0061】
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、Zn、Sn、Ge及びSの各Kセルのシャッターを開き、Cu、Zn、Sn、Ge及びSを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0062】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCZTS膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、Cu2aZn(Sn1−yGeにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0、y=0.3であった。Sn、Ge、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ11.2at%、1.3at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0063】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、5mM塩化ゲルマニウム(GeCl)0.3質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Ge含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.11at%、Geの含有量は0.04at%であった。光吸収層のSn、Ge含有量と比べて、小さな値となった。
【0064】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が6.8%となった。
【0065】
(比較例2)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)、5mM塩化ゲルマニウム(GeCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例2と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0066】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が4.7%となった。
【0067】
(実施例5)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0068】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Ag、Cu、Zn、Sn、及びSの各Kセルのシャッターを開き、Ag、Cu、Zn、Sn及びSを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0069】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCZTS膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、(AgCu1−x2aZnSnにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0、x=0.05であった。Sn、Ag、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、1.2at%、22.6at%、13.8at%であった。
【0070】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.8質量部、5mM塩化銀(AgCl)0.2質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Ag含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.13at%、Agの含有量は0.02at%であった。光吸収層のSn、Ag含有量と比べて、小さな値となった。
【0071】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.1%となった。
【0072】
(比較例3)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)、5mM塩化銀(AgCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例2と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0073】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が3.8%となった。
【0074】
(実施例6)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0075】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Ag、Zn、Sn、及びSの各Kセルのシャッターを開き、Ag、Zn、Sn及びSを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0076】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのAg2aZnSn(AZTS)膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、Ag2aZnSnにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0であった。Sn、Ag、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0077】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.8質量部、5mM塩化銀(AgCl)0.2質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたAZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、AZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Ag含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.13at%、Agの含有量は0.02at%であった。光吸収層のSn、Ag含有量と比べて、小さな値となった。
【0078】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が1.5%となった。
【0079】
(比較例4)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)、5mM塩化銀(AgCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例7と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0080】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が1.0%となった。
(実施例7)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0081】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、Zn、Ge、及びSの各Kセルのシャッターを開き、Cu、Zn、Ge及びSを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0082】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCu2aZnGe(CZGS)膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、Cu2aZnGeにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0であった。Sn、Ag、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0083】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化ゲルマニウム(GeCl)1質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZGS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZGS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたGe含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのGeの含有量は0.13at%であった。光吸収層のGe含有量と比べて、小さな値となった。
【0084】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が2.0%となった。
【0085】
(比較例5)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)、5mM塩化ゲルマニウム(GeCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例8と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0086】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が1.0%となった。
(実施例8)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0087】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、Zn、Sn、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Cu、Zn、Sn及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0088】
(セレン化)
得られた前駆体を1.0×10Paのセレン水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中のセレン化水素の量は、積層体の完全セレン化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCu2aZnSnSe(CZTSe)膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、Cu2aZnSnSeにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0であった。Sn、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0089】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)1質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTSe膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTSe膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのGeの含有量は0.13at%であった。光吸収層のGe含有量と比べて、小さな値となった。
【0090】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が6.7%となった。
【0091】
(比較例6)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例9と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0092】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が4.8%となった。
(実施例9)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0093】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、Zn、Sn、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Cu、Zn、Sn及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0094】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCu2aZnSn(S1−zSe(CZTSSe)膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、Cu2aZnSn(S1−zSeにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0、z=0.7であった。Sn、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ12.5at%、23.8at%、13.8at%であった。
【0095】
(バッファ層の製膜)
蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)1質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTSe膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTSe膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのGeの含有量は0.13at%であった。光吸収層のGe含有量と比べて、小さな値となった。
【0096】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が6.9%となった。
(比較例7)
(太陽電池)
バッファ層形成時に、5mM塩化スズ(SnCl)を加えずに、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液21.0質量部にした以外は、実施例10と同様に太陽電池セルを作製した。このときのCdSバッファ層ではSn、Cu、Zn、Ge、Agは未検出であった。
【0097】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が4.9%となった。
【0098】
(実施例10)
(太陽電池)
バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。バッファ層は以下のように作製した。蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、1mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、3mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Cu含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.02at%、Cuの含有量は0.03at%であった。光吸収層のSn、Cu含有量と比べて、小さな値となった。
【0099】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.6%となった。
【0100】
(実施例11)
光吸収層、バッファ層の製膜以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。光吸収層、バッファ層の製膜は以下のように行った。
【0101】
(光吸収層前駆体の形成)
真空蒸着法によりPVD装置にて行った。実施例4と同様、PVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
ソーダライムガラス上に形成されたMo裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.33×10−6Paとした。
その後、基板を330℃まで加熱し温度が安定した後に、Ag、Cu、Zn、Sn、Ge及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Ag、Cu、Zn、Sn、Ge及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却し、前駆体の成膜を終了した。
【0102】
(硫化)
得られた前駆体を1.0×10Paの硫化水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、1mgのSnを加えて、密封状態で550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。雰囲気中の硫化水素の量は、積層体の完全硫化に必要な当量の100倍とした。これにより、p型半導体としてのCZTS膜を得た。SEM観察により得られた膜の厚さは2μmであり、EDS分析による膜組成は、(AgCu1−x2aZn(SnGe1−y(S1−zSeにおいて、a=0.95、b=1.1、c=1.0、x=0.05であった。Sn、Ge、Ag、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ11.2at%、1.3at%、1.2at%、22.6at%、13.8at%であった。
【0103】
(バッファ層の製膜)
蒸留水71.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、、5mM塩化ゲルマニウム(GeCl)0.3質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.8質量部、5mM塩化銀(AgCl)0.2質量部、5mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、5mM塩化亜鉛(ZnCl2)1.0質量部及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Ge、Ag、Cu、Zn含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.11at%、Geの含有量は0.04at%、Agの含有量は0.02at%、Cuの含有量は0.05at%、Znの含有量は0.15at%であった。光吸収層のSn、Ge、Ag、Cu、Zn含有量と比べて、小さな値となった。
【0104】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が6.3%となった。
【0105】
(実施例12)
(太陽電池)
光吸収層前駆体の製膜でのCu層の電析における通電量を0.50C、Sn層の電析における通電量を0.50C、Zn層の電析における通電量を0.50Cにした以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。SEM観察によりこのとき得られたCZTS膜の厚さは2μmであり、EDS(エネルギー分散型X線)分析による膜組成は、Cu2aZnSnにおいて、a=0.72、b=1.3、c=1.2であった。Sn、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ18.0at%、16.3at%、15.0at%であった。
バッファ層は以下のように作製した。蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、5mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Cu含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.10at%、Cuの含有量は0.05at%であった。光吸収層のSn、Cu含有量と比べて、小さな値となった。
【0106】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.8%となった。
【0107】
(実施例13)
(太陽電池)
光吸収層前駆体の製膜でのCu層の電析における通電量を0.85C、Sn層の電析における通電量を0.31C、Zn層の電析における通電量を0.31Cにした以外は、実施例1と同様に太陽電池セルを作製した。SEM観察によりこのとき得られたCZTS膜の厚さは2μmであり、EDS(エネルギー分散型X線)分析による膜組成は、Cu2aZnSnにおいて、a=1.22、b=0.81、c=0.75であった。Sn、Cu、Znの含有量に換算すると、それぞれ30.5at%、10.1at%、9.4at%であった。
バッファ層は以下のように作製した。蒸留水72.5質量部、0.4M塩化カドミウム(CdCl)水溶液6.5質量部、5mM塩化スズ(SnCl)0.7質量部、5mM塩化銅(CuCl)0.3質量部、及び、0.4M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液20.0質量部を混合した混合液を調製した。これを60℃に加熱し、得られたCZTS膜を5重量%のKCN溶液に5秒間浸漬し、水洗し乾燥した後に、この混合液に5分間浸漬した。その後、0.8Mチオ尿素(CHS)水溶液80質量部、及び、13.8Mアンモニア水20質量部を混合した混合液を調製し、60℃に加熱したものを撹拌しながら加え、4分間撹拌した後、CZTS膜をこの溶液から取り出した。
このようにして得られたSn、Cu含有CdSバッファ層の厚さは50nmであり、このときのSnの含有量は0.10at%、Cuの含有量は0.05at%であった。光吸収層のSn、Cu含有量と比べて、小さな値となった。
【0108】
(太陽電池特性)
ソーラーシミュレータを用いて、100mW/cm(AM1.5)の条件でI−V測定を行い、変換効率を算出したところ、変換効率が5.1%となった。
【0109】
表1にまとめて示すように、CZTS系太陽電池において、比較例に示した従来技術に比べ、実施例に示したように高い変換効率を得ることができる。
【表1】
【符号の説明】
【0110】
2 化合物半導体太陽電池、4 基板、6 裏面電極、8 p型化合物半導体光吸収層、10 n型化合物半導体バッファ層、12 透明電極、14 上部電極
図1