特許第5928688号(P5928688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928688
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】船舶用電源システム
(51)【国際特許分類】
   B63J 99/00 20090101AFI20160519BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20160519BHJP
   B63J 3/04 20060101ALI20160519BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B63J99/00 A
   B63J3/02 A
   B63J3/04
   H02P9/04 K
   H02P9/04 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-272387(P2011-272387)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-123943(P2013-123943A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147315
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧本 十良三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健
(72)【発明者】
【氏名】光嶋 久夫
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−039099(JP,U)
【文献】 特開昭56−049636(JP,A)
【文献】 実開平03−015000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 99/00,3/02−3/04
B63H 21/17
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船内に設置され、船内母線へ交流電力を供給する発電装置と
荷役装置等を駆動する複数の電動機と、
スクリューを駆動する主機により駆動される軸発電機と、
前記軸発電機あるいは前記船内母線がコンバータと接続するように切替える電源切替開閉器と、
複数系統の電力回路と、を備え、
前記各電力回路には、前記コンバータで変換された直流電力を入力するインバータと、
前記インバータの出力を前記船内母線あるいは前記複数の電動機へ切替え接続する負荷回路切替手段と、
出力指令に基づいて前記インバータを制御する制御信号を出力する発電用制御装置と、
速度指令に基づいて前記インバータを制御する制御信号を出力する速度制御装置と、
前記発電用制御装置の制御信号あるいは前記速度制御装置の制御信号を切替えて前記インバータに出力する信号切替手段と、を備え
前記インバータの出力が、前記負荷回路切替手段により前記船内母線に接続された場合は、前記軸発電機の交流電力が前記コンバータに入力するように前記電源切替開閉器を切替えると共に、前記インバータに前記発電用制御装置の制御信号が入力するように前記信号切替手段を切替え、前記発電用制御装置の制御信号に基づいた一定電圧一定周波数の電力を前記インバータから前記船内母線に供給し
前記インバータの出力が、前記負荷回路切替手段により前記電動機に接続された場合は、前記軸発電機の交流電力あるいは前記船内母線の交流電力が前記コンバータに入力するよう前記電源切替開閉器を切替えると共に、前記インバータに前記速度制御装置の制御信号が入力するように前記信号切替手段を切替え、前記速度制御装置の制御信号に応じた可変電圧可変周波数の電力を前記インバータから前記電動機に供給して駆動させることを特徴とする船舶用電源システム。
【請求項2】
前記軸発電機が、前記複数系統の電力回路と同数の固定子巻線を有する多重巻線型軸発電機であり、
前記電源切替開閉器およびコンバータが、前記複数系統の電力回路に対応して複数設けられ、
前記軸発電機のそれぞれの固定巻線あるいは前記船内母線を前記それぞれの電源切替開閉器およびコンバータを介して前記それぞれの電力回路のインバータと接続し、
前記インバータの出力が前記船内母線に接続された場合は、当該インバータの電力回路に対応する前記軸発電機の固定子巻線が、当該コンバータを介して当該電力回路のインバータと接続するように、当該電源切替開閉器を切替え、
前記インバータの出力が前記電動機に接続された場合は、当該インバータの電力回路に対応する前記軸発電機の固定子巻線あるいは前記船内母線が当該コンバータを介して当該電力回路のインバータと接続するように、当該電源切替開閉器を切替えることを特徴とする請求項1記載の船舶用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主機によって駆動される発電機で船舶の船内負荷へ電力を供給する船舶用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に備えられる電源システムには、ディーゼル発電装置やガスタービン発電装置等の発電装置に加えて、主機の駆動軸によって駆動される発電機(以下、軸発電機という)で発電するシステムや主機に備わった排気ガスターボチャージャに直結された発電機で発電するようにした発電システムが利用されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
このように、ディーゼル発電装置やガスタービン発電装置等の発電装置に加えて主機や排気ガスターボチャージャで駆動される発電機から船内の各種負荷に電力を供給する発電システムを併用すると、ディーゼル発電装置やガスタービン発電装置等で消費する燃料を削減でき、船舶用電源システムの発電効率を向上させることができる。
【0004】
このような船舶用電源システムの従来例として、図4および図5に示すものがある。まず、図4を参照して第1従来例を説明する。
図4において、船内に設けられたディーゼル発電装置またはガスタービン発電装置等の発電装置1は遮断器2を介して船内母線3に一定電圧一定周波数の交流電力を供給するようになっており、船内母線3には遮断器4を介して船内の一般負荷5が接続されている。また、船内母線3には遮断器6を介して荷役用ポンプ8を駆動する電動機9が負荷として接続されている。
【0005】
一方、主機10はスクリュー11を駆動する軸上に軸発電機12を設けており主機の回転トルクにより軸発電機12を駆動するようになっている。この軸発電機12の固定子巻線に発生した電圧の大きさおよび周波数は、主機10の回転速度に応じて変化する。このため、軸発電機12の固定子巻線は、一点鎖線枠で囲んだ発電用インバータ装置13のほかフィルタ14および遮断器15を介して船内母線3に接続されており、軸発電機12の出力電圧および周波数は発電用インバータ装置13によって船内母線3の電圧および周波数と等しくなるように調整されて船内の一般負荷5や電動機9等の各種負荷に給電するようになっている。
【0006】
図4の場合、発電用インバータ装置13は電圧および周波数が変動する軸発電機12の出力電力を入力し、内部のコンバータ13-1で一旦直流電力に変換した後、直流主回路13-2を介してインバータ13-3により船内母線3の電圧および周波数に変換して出力する。
【0007】
発電用インバータ装置13の内部に設けられている発電用制御装置13-4は、計器用変圧器(PT)16により検出した船内母線3の電圧の周波数と位相を基準とし、計器用変流器17により検出されたインバータ13-3の出力有効電流および出力無効電流が、それぞれインバータ装置13に入力される出力有効電流指令「ip*」および出力無効電流指令「iq*」と一致するようにインバータ13-3の出力電圧および出力電流を制御することにより出力電力を自動制御するようになっている。
【0008】
図4に示す従来の船舶用電源システムでは、主機10の運転中は、その動力を電力に変換して船内母線3の各負荷に給電するので、ディーゼル発電装置1の燃料を低減して船舶内の発電システム全体の効率を向上させることができる。
【0009】
次に、図5を参照して第2従来例について説明する。
図5において、この第2従来例が前述した第1従来例と相違する点は、発電用インバータ装置13の用途とは別の用途の電動機駆動専用のインバータ装置7を新たに設け、この電動機駆動専用のインバータ装置7により電動機9を駆動するように構成したことである。この場合、船内母線3には、新たに設けた遮断器6および電動機駆動専用インバータ装置7を介して荷役用ポンプ8を駆動する電動機9が負荷として接続されるようになっている。
【0010】
新たに設けた電動機駆動専用インバータ装置7は、遮断器6を介して船内母線3から供給される一定電圧一定周波数の電力を入力し、内部のコンバータ7-1で一旦直流電力に変換した後に直流主回路7-2を介してインバータ7-3で任意の電圧・周波数の電力に変換することにより電動機9を駆動する。速度制御装置7-4は、速度指令に基づいて例えばV/F制御によってインバータ7-3を制御し、出力電圧と周波数を制御して電動機9の速度を可変速制御する。
【0011】
なお、電動機駆動専用インバータ装置7は、主に船舶が港湾に停泊中の荷役作業時に運転され、航海中に運転されることは少ない。一方、発電用インバータ装置13は、船舶が港湾に停泊中主機10および発電機12の運転停止しているため、運転されることはないが航海中は常時運転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−521363号公報
【特許文献2】特開2010−222001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、図4で示した第1従来例では、電動機9が始動する際に定格電流より大きい始動電流が流れるため、その始動電流をディーゼル発電機1から供給するためには、ディーゼル発電機1の容量を電動機の始動電流を供給するのに十分な容量および体格にする必要がある。
【0014】
また、電動機9の始動完了後には、ディーゼル発電機1から始動電流を供給する必要はなくなるので、大容量化したディーゼル発電機1は部分負荷で運転せざるを得なくなる。このため、電動機9の始動電流を供給するのに十分な容量のディーゼル発電機1では、燃費効率が低下する問題がある。また、ディーゼル発電機1は、体格が大きくなるため、設置スペースの増大、設置コストの増加等の課題が発生するという課題がある。
【0015】
なお、電動機9の始動電流を発電用インバータ装置13から供給することも考えられるが、この場合、発電用インバータ装置13から大きな始動電流を流すために発電用インバータ装置13の容量を始動電流を負担しない場合に比べて大きくする必要があり、発電用インバータ装置13の体格が大きくなり、設置スペースの増大、設置コストの増加となる問題がある。
【0016】
一方、図5で示した第2従来例では、発電用インバータ装置13および電動機駆動用インバータ装置7はいずれか一方が運転停止される期間があり、それぞれの稼働時間に無駄が生じている。
【0017】
仮に、航海中に荷役作業が行われることを想定したとしても、軸発電機12から発電用インバータ装置13、船内母線3および電動機駆動用インバータ装置7を介して電動機9に供給される電力は、軸発電機12の交流電力から船内母線3の一定電圧一定周波数の交流電力に変換された後、さらに電動機9を駆動するための可変電圧可変周波数の交流電力に変換されることになり、電力変換の過程で生じる損失は図4の場合に比べて大きくなるという問題がある。
【0018】
さらに、電動機駆動用インバータ装置7により電動機9を可変速駆動するので、発電用インバータ装置13には電動機9の大きな始動電流が流れることはないが、その反面、発電用インバータ装置13と電動機駆動専用インバータ装置7の合計2台のインバータ装置を必要とするので、その分インバータ装置の設置スペースの増大、設置コストの増加といった問題もある。
【0019】
さらにまた、第1従来例と第2従来例に共通する課題として、軸発電機12と船内母線3との間には、発電用インバータ装置13を1台しか設けていないため、万一、インバータ装置13内のコンバータ13-1またはインバータ13-3のいずれか一方が故障した場合には、軸発電機12の発電電力を全く船内負荷へ供給できなくなる不具合が発生することである。実際の船舶用電源システムでは複数台のコンバータ13-1およびインバータ13-3を設けて、万一、1台のコンバータ13-1またはインバータ13-3のいずれか一方が故障しても軸発電機12から船内の各負荷5、9への電力供給ができる冗長性を備えることが望ましい。
【0020】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、船内母線に電力供給する用途のインバータおよび電動機を駆動する用途のインバータを一つのインバータで兼用することにより、設置スペースの増大や設置コストの増加を抑制しつつ、船内の発電装置の部分負荷運転を防止して運転効率の向上を図るとともに、インバータを複数台備えて軸発電機から船内への電力供給の冗長性を高めることのできる船舶用電源システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために請求項1に係る船舶用電源システムの発明は、船内に設置され、船内母線へ交流電力を供給する発電装置と、荷役装置等を駆動する複数の電動機と、スクリューを駆動する主機により駆動される軸発電機と、前記軸発電機あるいは前記船内母線がコンバータと接続するように切替える電源切替開閉器と、複数系統の電力回路と、を備え、前記各電力回路には、前記コンバータで変換された直流電力を入力するインバータと、前記インバータの出力を前記船内母線あるいは前記複数の電動機へ切替え接続する負荷回路切替手段と、出力指令に基づいて前記インバータを制御する制御信号を出力する発電用制御装置と、速度指令に基づいて前記インバータを制御する制御信号を出力する速度制御装置と、前記発電用制御装置の制御信号あるいは前記速度制御装置の制御信号を切替えて前記インバータに出力する信号切替手段と、を備え、前記インバータの出力が、前記負荷回路切替手段により前記船内母線に接続された場合は、前記軸発電機の交流電力が前記コンバータに入力するように前記電源切替開閉器を切替えると共に、前記インバータに前記発電用制御装置の制御信号が入力するように前記信号切替手段を切替え、前記発電用制御装置の制御信号に基づいた一定電圧一定周波数の電力を前記インバータから前記船内母線に供給し、前記インバータの出力が、前記負荷回路切替手段により前記電動機に接続された場合は、前記軸発電機の交流電力あるいは前記船内母線の交流電力が前記コンバータに入力するよう前記電源切替開閉器を切替えると共に、前記インバータに前記速度制御装置の制御信号が入力するように前記信号切替手段を切替え、前記速度制御装置の制御信号に応じた可変電圧可変周波数の電力を前記インバータから前記電動機に供給して駆動させることを特徴とする。
【0022】
また、請求項2に係る船舶用電源システムの発明は、請求項1記載の船舶用電源システムにおいて、前記軸発電機が、前記複数系統の電力回路と同数の固定子巻線を有する多重巻線型軸発電機であり、前記電源切替開閉器およびコンバータが、前記複数系統の電力回路に対応して複数設けられ、前記軸発電機のそれぞれの固定巻線あるいは前記船内母線を前記それぞれの電源切替開閉器およびコンバータを介して前記それぞれの電力回路のインバータと接続し、前記インバータの出力が前記船内母線に接続された場合は、当該インバータの電力回路に対応する前記軸発電機の固定子巻線が、当該コンバータを介して当該電力回路のインバータと接続するように、当該電源切替開閉器を切替え、前記インバータの出力が前記電動機に接続された場合は、当該インバータの電力回路に対応する前記軸発電機の固定子巻線あるいは前記船内母線が当該コンバータを介して当該電力回路のインバータと接続するように、当該電源切替開閉器を切替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、主機で駆動されるために電圧および周波数が変動する軸発電機の電力を、船内母線への給電用および電動機駆動用を兼用するインバータを採用し、かつ、この二つの用途を切り替えて運転するように構成したので、船内母線への給電用インバータと電動機駆動用インバータとの2台のインバータを備える場合に比べ、インバータの台数が減るため、軸発電機の発電電力で荷役を行う場合、電力変換過程での損失を減らすことができる。
【0025】
また、電動機を可変速運転することにより電動機始動電流を抑制することができるので、船内に設けた発電装置の容量を大きくする必要が無くなり、当該発電装置の部分負荷運転による燃費効率の悪化を防止できる。
【0026】
更に、船内母線への給電用と電動機駆動用を兼用するインバータを複数台備えることにより、一方のインバータが故障しても、健全なインバータを使用して船内母線への給電を行うことができ、電力供給の冗長性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図。
図2】本発明の第2の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図。
図3】本発明の第3の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図。
図4】船舶用電源システムの第1従来例を示す構成図。
図5】船舶用電源システムの第2従来例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図を通して対応する装置、部品には同一符号を付けることにより、重複する説明は適宜省略する。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図である。
図1を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
図1と第2従来例の図5との違いは、軸発電機12の固定子巻線が電源切替開閉器18と、船内母線への給電用および電動機駆動用の二つの用途を兼用するインバータ装置19と、遮断器15と、遮断器20と、フィルタ14とを介して船内母線3に接続されるとともに、遮断器15および遮断器20の共通接続点Jに接続された遮断器6を介して荷役用ポンプ8駆動用の電動機9にも接続されている点である。
【0030】
なお、遮断器6と遮断器20とは、インバータ19-3の出力を荷役ポンプ駆動用電動機9、あるいは船内母線3を介して一般負荷5のいずれかに供給する際に互いに逆側に開閉することから、遮断器6と遮断器20とを合わせて負荷回路切替手段と総称する。
【0031】
インバータ装置19は、軸発電機12の固定子巻線で発生した電圧および周波数の変動する交流電力を電源切替開閉器18を介して入力し、内部に設けたコンバータ19-1で一旦直流電力に変換し、直流主回路19-2に接続されたインバータ19-3により任意の電圧および周波数の交流電力に変換して出力する。
【0032】
また、インバータ装置19の内部に設けた発電用制御装置19-4は、計器用変圧器(PT)16を介して検出した船内母線3の電圧の周波数と位相を基準とし、計器用変流器(CT)17を介して検出した出力有効電流および出力無効電流が、出力有効電流指令「ip*」および出力無効電流指令「iq*」と一致するようにインバータ19-3の出力電圧と出力電流とを制御する制御信号「a」を出力する。なお、「ip*」および「iq*」を総称して「出力指令」と言う場合がある。
【0033】
また、インバータ装置19内部に設けた速度制御装置19-5は、外部から与えられた「速度指令」に基づいて、例えばV/F制御によってインバータ19-3の出力電圧および出力周波数を制御する制御信号「b」を出力する。
【0034】
さらに、インバータ装置19内部に設けた信号切替器19-6は、外部から与えられた「切替設定」に基づいて前記発電用制御装置19-4から出力された制御信号「a」と前記速度制御装置19-5から出力された制御信号「b」のいずれか一方を選択し、その選択された信号をインバータ19-3へゲート信号として出力する。インバータ19-3は信号切替器19-6から与えられた制御信号「a」または制御信号「b」のいずれか一方の制御信号に基づいてインバータ19-3の出力を制御する。
【0035】
以下、インバータ19-3が制御信号「a」で動作している状態をCVCFモード、制御信号「b」で動作している状態をVVVFモードと呼ぶ。
軸発電機12の発電電力を船内母線3を介して負荷5に供給する場合には、前記電源切替開閉器18は可動接点c3を固定接点c1に接続し、信号切替器19-6は制御信号「a」を選択してインバータ19-3をCVCFモードとし、軸発電機12の発電電力をインバータ装置19で一定電圧一定周波数の電力に変換し、遮断器15および遮断器20を閉としてフィルタ14を介して船内母線3へ出力する。このとき電動機9側の遮断器6は開にしておく。
【0036】
軸発電機12の発電電力で荷役用の電動機9を駆動する場合には、前記遮断器20を開、遮断器15および6を閉とし、信号切替器19-6は制御信号「b」を選択して、インバータ19-3はVVVFモードとして電動機9を可変速運転制御する。
【0037】
主機10が停止しているときには、軸発電機12では発電できないため、ディーゼル発電装置やガスタービン発電装置等の発電装置1のみで船内の必要な電力を賄うこととなる。このとき電動機9を駆動するには、電源切替開閉器18と船内母線3に接続される電路21を設けておけば、電源切替開閉器18の可動接点c3を固定接点c2に接続することにより、船内母線3から電路21を介してインバータ装置19への電力供給が可能になる。
【0038】
以上述べた本実施形態によれば、主機10で駆動される軸発電機12の電圧および周波数が変動する電力を、1台のインバータ装置19のみで船内母線3への電力供給と電動機9の駆動を切り替えて運転可能とする船舶用電源システムを実現することができる。
【0039】
本実施形態は、第1従来例の船舶用電源システム(図4)と比べると、電動機9を可変速運転して電動機の始動電流を抑制することができるので、ディーゼル発電装置やガスタービン発電装置等の発電装置1の容量を大きくする必要が無い。このため発電装置1が部分負荷で運転されて燃費効率が悪化することを防止できる。
【0040】
また、第2従来例の船舶用電源システム(図5)と比べると、インバータ装置19のみで電力変換を行えるので、電動機9を駆動するための電動機駆動専用インバータ装置7が不要となり、軸発電機12の発電電力で荷役を行う場合に電力変換過程での損失を減らすことができる。また、インバータの台数を減らせるので、設置スペースおよびコストも削減できる。
【0041】
[第2の実施形態]
図2は本発明の第2の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図である。
図2を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。
図2と第1の実施形態の図1との違いは、荷役用ポンプ8を駆動する電動機9を2台設け、さらに、この電動機9の設置台数に対応して、インバータを備えた電力回路をA系統およびB系統の2系統(PLA、PLB)設け、A系統およびB系統の電力回路PLA、PLBにはインバータ19-3のほかに遮断器15、6、20およびフィルタ14を設け、さらに、各系統の電力回路PLA、PLBに対応してそれぞれの系に属するインバータを制御するための制御装置として発電用制御装置19-4、速度制御装置19-5、信号切替器19-6、計器用変圧器16および計器用変流器17を設けた点にある。
【0042】
本実施形態では、A系統の装置や部品には例えばインバータであれば19A-3の如く符号Aを付け、一方B系統の装置や部品には例えばインバータであれば19B-3の如く符号Bを付けて両者を区別しているが、A、B両系統とも装置や部品の構成および機能(動作)、特性は同じである。
【0043】
前述した第1の実施形態では、インバータ19-3を1台しか設置しなかったが、本実施形態では、インバータ19-3を二系統の電力回路にそれぞれインバータ19A-3、19B-3を設けるようにしたので、荷役ポンプ駆動用電動機9を2台(9A、9B)設置した場合に、A系統のインバータ19A-3とB系統のインバータ19B-3の両方を共にVVVFモードで使用して電動機9Aおよび電動機9Bを始動したり、あるいは一方のインバータ19A-3はCVCFモードで船内母線3に電力を供給し、他方のインバータ19B-3はVVVFモードとして電動機9Bを始動するといった運転を行わせることができる。
【0044】
また、A系統のインバータ19A-3またはB系統のインバータ19B-3のどちらかが故障した場合には、健全な系統のインバータのみを使用して、船内母線3への電力供給、あるいは荷役ポンプ駆動用電動機9A、9Bの運転を行わせることができる。
【0045】
以上述べたように、本実施形態によれば、第1の実施の形態の奏する効果に加えて、荷役用の電動機9が複数ある場合に、両方のインバータ19A-3およびインバータ19B-3を共に電動機駆動用に使用したり、一方のインバータを電動機駆動用に用い、他方のインバータを船内母線への電力供給用に使用することもでき、また、一方の系統のインバータが故障した場合には他方の系統の健全なインバータのみを使用して船内母線への電力供給、荷役用の電動機9の駆動を継続することができる。
この結果、本実施形態によれば、電力供給の冗長性の高い船舶用電源システムを提供することができる。
【0046】
[第3の実施形態]
図3は本発明の第3の実施形態に係る船舶用電源システムの構成図である。
図3を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。
前述した第2の実施形態の場合、主機10によって駆動される軸発電機は固定子巻線が1巻線型の軸発電機12であったが、本実施形態の場合、主機10によって駆動される軸発電機は固定子巻線が2巻線型の軸発電機22であること、さらに、A系統、B系統に共通な電源切替開閉器18およびコンバータ19-1に替えて、それぞれの固定子巻線に接続されるA系統側の電源切替開閉器18A、B系統側の電源切替開閉器18B、A系統側のコンバータ19A-1、B系統側のコンバータ19B-1を設けたことである。
【0047】
A系統側のコンバータ19A-1は、軸発電機22の一方の固定子巻線からの発電電力を電源切替開閉器18Aを介して入力して直流電力に変換してインバータ19-3へ出力する。同様に、B系統側のコンバータ19B-1は、軸発電機22の別の固定子巻線からの発電電力を電源切替開閉器18Bを介して入力して直流電力に変換してインバータ19B-3へ出力する。
【0048】
また、A系統のコンバータ19A-1、B系統のコンバータ19B-1のどちらかが故障した場合には、健全な系統側のコンバータのみを使用して、船内母線3への電力供給を行わせることができる。
【0049】
本実施形態によれば、第2の実施形態の奏する効果に加えて、一方のコンバータが故障した場合には健全な方のコンバータのみを使用して船内母線への電力供給を継続することができる。
なお、以上述べた第2および第3の実施形態では、電力回路および制御装置を二系統設けた場合を説明したが、二系統を上回る複数系統であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ディーゼル発電装置、ガスタービン発電装置等の発電装置、2…遮断器、3…船内母線、4…遮断器、5…一般負荷、6A,6B…遮断器、6および20…負荷回路切替手段、8A,8B…荷役用ポンプ、9A,9B…電動機、10…主機、11…スクリュー、12…軸発電機、14A,14B…フィルタ、15A,15B…遮断器、16A,16B…変圧器、17A,17B…変流器、18A,18B…電源切替開閉器、19A-1,19B-1…コンバータ、19-2…直流主回路、19A-3,19B-3…インバータ、19A-4,19B-4…発電用制御装置、19A-5,19B-5…速度制御装置、19A-6,19B-6…信号切替器、20A,20B…遮断器、21A,21B…電路、22…2巻線型の軸発電機、PLA,PLB…A系統、B系統の電力回路。
図1
図2
図3
図4
図5