特許第5928697号(P5928697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928697
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】オイルストレーナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20160519BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   F16H57/04 F
   F16N31/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-35046(P2012-35046)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170631(P2013-170631A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】二家本 博之
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 慶一
(72)【発明者】
【氏名】簑島 建司
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241916(JP,A)
【文献】 特開2009−121525(JP,A)
【文献】 実開平02−069161(JP,U)
【文献】 実開平05−042813(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 31/00
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に流入口が開設され上側に流出口が開設され、オイル槽内に配置されるケースと、このケースの内室を前記流入口側の下部室と前記流出口側の上部室に仕切るように設けられた主濾材と、前記流入口に取り付けられてその下側空間の外周を包囲すると共に下側が大径となるように形成された副濾材と、この副濾材の下端外周縁に設けられ前記オイル槽の底面に密接される先端シール部と、を備え、前記オイル槽内のオイルが、前記副濾材を上から下へ通過し、前記副濾材と前記オイル槽の底面との間の空間を経由して前記ケースの流入口へ流入するものであることを特徴とするオイルストレーナ。
【請求項2】
先端シール部に、オイルの圧力によってオイル槽の底面に密接可能なシールリップを形成したことを特徴とする請求項1に記載のオイルストレーナ。
【請求項3】
先端シール部を、オイル槽の底面へ向けて付勢するばねを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のオイルストレーナ。
【請求項4】
副濾材が蛇腹状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオイルストレーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の自動変速機におけるオイルの循環系等に用いられるオイルストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動変速機等におけるオイルの循環系統に装着されるオイルストレーナとして、従来から図14に示すようなものが知られている。
【0003】
すなわちこの種のオイルストレーナは、流入口101aを有するロアケース101と、前記流入口101aとは平面方向に異なる位置に開口した流出口102aを有するアッパーケース102を外周フランジ101b,102b同士で振動溶着したケース100の内部空間に、この内部空間をロアケース101側(流入口101a側)の下部室S1とアッパーケース102側(流出口102a側)の上部室S2に仕切るように、不織布等からなるシート状の濾材103を配置した構造を備える(例えば下記の特許文献1参照)。
【0004】
このオイルストレーナは、オイルパン200内に設置され、アッパーケース102に設けた流出口102aが不図示のオイルポンプの吸入口へ延びるサクションホース201に接続される。このためオイルパン200内のオイル(エンジンオイル)は、流入口101aからケース100内の下部室S1に流入し、濾材103を上部室S2へ通過して濾過された後、流出口102aからサクションホース201を経てオイルポンプへ吸入される。
【0005】
ところが、自動変速機の内部では歯車等によってオイルが掻き回されるので、オイルパン200内のオイルは多くの気泡ABを含んでおり、この気泡ABは、ロアケース101の外周フランジ101bの下側に溜まったり、オイルと共に下部室S1に流入して濾材103の下面に溜まったりする。そして濾材103の下面に溜まった気泡ABは、オイルポンプへのオイルの流れを妨げるので油量が不足してしまうばかりでなく、濾材103を通過した気泡ABがオイルポンプへ流れると、ポンプ内の圧縮行程によってこの気泡がつぶれ、そのときに発生する衝撃波によってオイルポンプがダメージを受けるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1では、気泡ABを抜きやすくするためにケース100の外周フランジ101bに切欠を設けているが、このような切欠は、ロアケース101の外周フランジ101bの下に溜まった気泡ABを抜くことはできるものの、濾材103の下面に溜まった気泡ABは抜くことができない。
【0007】
一方、オイルに消泡剤(抗泡剤)を添加することによる気泡対策も知られているが、消泡剤を多量に添加するとオイルの性能が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−124188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、オイル内の気泡がオイルストレーナ内へ流入するのを有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るオイルストレーナは、下側に流入口が開設され上側に流出口が開設され、オイル槽内に配置されるケースと、このケースの内室を前記流入口側の下部室と前記流出口側の上部室に仕切るように設けられた主濾材と、前記流入口に取り付けられてその下側空間の外周を包囲すると共に下側が大径となるように形成された副濾材と、この副濾材の下端外周縁に設けられ前記オイル槽の底面に密接される先端シール部と、を備え、前記オイル槽内のオイルが、前記副濾材を上から下へ通過し、前記副濾材と前記オイル槽の底面との間の空間を経由して前記ケースの流入口へ流入するものである。このような構成とすれば、オイルがオイル槽内から副濾材とオイル槽の底面との間の空間へ流入する際に、この流入口の下側空間の外周を包囲すると共に下側が大径となるように形成された副濾材を上から下へ通過することによって気泡が副濾材の上面で捕捉されるので、ケース内の下部室へ気泡が流入して主濾材の下面に溜まるのを防止することができる。しかも副濾材の上面で捕捉された気泡はただちに浮上するので副濾材に溜まることもない。そして副濾材の先端に設けられた先端シール部は、副濾材を通過して流入口へ流入しようとするオイルの圧力によってオイル槽の底面に密接され、副濾材を通過せずに流入口へ流入しようとするオイルの流れを遮断するので、確実に副濾材を経由させる作用を有する。
【0011】
請求項2の発明に係るオイルストレーナは、請求項1に記載の構成において、先端シール部に、オイルの圧力によってオイル槽の底面に密接可能なシールリップを形成したものである。このような構成とすれば、シールリップによって先端シール部の密封性が一層向上する。
【0012】
請求項3の発明に係るオイルストレーナは、請求項1又は2に記載の構成において、先端シール部を、オイル槽の底面へ向けて付勢するばねを備えるものである。このような構成とすれば、オイル槽の底面に対する先端シール部の追随性がばねによって補償されるので、先端シール部の密封性が一層向上する。
【0013】
請求項4の発明に係るオイルストレーナは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、副濾材が蛇腹状に形成されたものである。このような構成とすれば、オイル槽の底面に対する先端シール部の追随性が、蛇腹状の副濾材の伸縮性によって補償されるので、先端シール部の密封性が一層向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るオイルストレーナによれば、オイルが流入口へ流入する際に、副濾材を上から下へ通過することによってオイル内の気泡が捕捉され浮上除去されるので、気泡が流入口からケース内へ流入するのを有効に防止することができ、ケース内の主濾材の下面に気泡が溜まることによるオイルポンプへのオイルの流量の減少や、気泡がオイルと共にオイルポンプへ流れることによる悪影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るオイルストレーナの第一の実施の形態を示す断面図である。
図2】本発明に係るオイルストレーナの第一の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図3】本発明に係るオイルストレーナの第一の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
図4】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図5】本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
図6】本発明に係るオイルストレーナの第三の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図7】本発明に係るオイルストレーナの第四の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図8】本発明に係るオイルストレーナの第五の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図9】本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
図10】本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図11】本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態において使用される副濾材ユニットの先端シール部の形状変更例を示すもので、(A)は下面図、(B)は(A)におけるB−O−B’断面図である。
図12】本発明に係るオイルストレーナの第七の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
図13】本発明に係るオイルストレーナの第八の実施の形態を示す使用状態の断面図である。
図14】従来のオイルストレーナの一例を示す使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るオイルストレーナの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
<第一の実施の形態>
まず図1図3は第一の実施の形態を示すものである。図1に示す第一の実施の形態のオイルストレーナ1は、下側に流入口11が開設され上側に流出口12が開設されたケース10と、このケース10の内室を前記流入口11側の下部室S1と前記流出口12側の上部室S2に仕切るように設けられた主濾材20と、前記流入口11に取り付けられた副濾材ユニット30を備えるものである。
【0018】
詳しくは、ケース10は合成樹脂材等で成形されたものであって、流入口11をなす筒状開口13aを有する皿状のロアケース13と、流出口12をなす筒状開口14aを有する伏皿状のアッパーケース14からなる。
【0019】
主濾材20は、不織布あるいは金属メッシュ等からなるものであって、目が細かく、外周縁部が、振動溶着等によって互いに接合されたロアケース13の外周フランジ13bとアッパーケース14の外周フランジ14bの内周部間に挟着され、オイル中の小さな異物を捕捉可能とするものである。
【0020】
副濾材ユニット30は、ケース10の流入口11をなすロアケース13の筒状開口13aの外周面にバンド32により緊結された取付筒部31と、この取付筒部31から延在されて、前記流入口11の下側空間の外周を包囲すると共に下側が大径となるように傘状に展開した副濾材33と、この副濾材33の下端(外周)縁に設けられたOリング状の先端シール部34と、前記取付筒部31と先端シール部34の間を、図2に示すように円周方向複数個所で連絡するように延びる補強用リブ35を備えるものである。
【0021】
副濾材ユニット30における副濾材33は、主としてオイル中の気泡を補足可能とするものであって、例えば主濾材20よりも粗目の不織布等からなる。そして取付筒部31、先端シール部34及び補強用リブ35は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって互いに連続しており、副濾材33に含浸された状態で一体に成形されている。
【0022】
上述の構成を備える第一の実施の形態のオイルストレーナ1は、図3に示すようにオイルパン3内に設置され、詳しくは、このオイルパン3内に貯留するオイル(エンジンオイル)に浸漬されると共に先端シール部34がオイルパン3の底面に密接された状態で、主濾材20がほぼ水平となるように設置されるものであって、ケース10におけるアッパーケース14側の流出口12が不図示のオイルポンプの吸入口へ延びるサクションホース2に接続される。なお、オイルパン3は請求項1に記載されたオイル槽に相当するものである。
【0023】
このため、オイルパン3内のオイルは、オイルポンプの駆動によって流入口11へ流入する過程で、まず副濾材ユニット30における副濾材33によって気泡が捕捉され、さらに下部室S1から上部室S2へ流入する過程で、主濾材20によって細かい異物が捕捉され、流出口12からサクションホース2を介してオイルポンプへ吸入されるようになっている。
【0024】
詳しくは、副濾材33は外面が上方を向くように傘状に形成されているので、オイルパン3内のオイルは、副濾材ユニット30の内周空間S3へ流入する際に、図3に点線矢印で示すように、副濾材33をその上側から下側へ通過する。このため、オイルに含まれる気泡は副濾材33の上面(外面)で捕捉され、浮力によって副濾材33の上面から離れて不図示の油面まで浮上する。したがって、ケース10内の下部室S1へ気泡が流入して主濾材20の下面に溜まるのを防止することができ、副濾材33に捕捉された気泡が副濾材33に滞留するのも防止される。
【0025】
また、オイルが副濾材33を通過する際に通過抵抗による圧力損失が発生し、すなわち副濾材ユニット30の内周空間S3は、副濾材ユニット30の外側より低圧となり、その圧力差は副濾材ユニット30の先端シール部34をオイルパン3の底面に押し付けるように作用する。このため、オイルパン3内でのオイルストレーナ1の設置位置に僅かな誤差があったり、振動が入力されたりしても、先端シール部34はオイルパン3の底面に密接するので、オイルパン3内のオイルは、副濾材ユニット30の内周空間S3へ流入する際に先端シール部34の下面とオイルパン3の間を経由することはなく、図3に点線矢印で示すように、必ず副濾材33を通過する流れとなるので、確実に気泡が除去されることになる。また、走行中の車体の揺れなどによってオイルパン3内の油面の変動があった場合に、副濾材ユニット30の下側からエアを吸い込んでしまうのを防止することができる。
【0026】
したがって、主濾材20及び副濾材33に気泡が滞留することによるオイルの濾過流量の減少、ひいてはオイルポンプへのオイルの流量の減少や、気泡が主濾材20を通過してオイルと共にオイルポンプへ流れることによるオイルポンプへの悪影響を防止することができる。またこのため、オイルに消泡剤(抗泡剤)を多量に添加する必要もなくなるので、オイルの性能悪化を防止することができる。
【0027】
また、不織布からなる副濾材33は、その繊維の一部がほつれて分離し、コンタミとなるおそれがあるが、上記構成によれば、副濾材33は、ゴム状弾性材料で含浸成形された取付筒部31、先端シール部34及び補強用リブ35によって不織布の繊維が拘束されているので、繊維の脱落によるコンタミの発生を防止することができる。
【0028】
<第二の実施の形態>
次に図4は、本発明に係るオイルストレーナの第二の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すものであり、図5は、使用状態を示すものである。
【0029】
すなわち図4及び図5に示す副濾材ユニット30は、傘状に成形された副濾材33を下側から支持するように、ゴム状弾性材料よりも剛性の高い、例えば金属や合成樹脂材料からなる補強フレーム36を設けたことを特徴としており、その他の構成は図1図3と同様である。
【0030】
詳しくは、補強フレーム36は、副濾材ユニット30における取付筒部31の内周面に密接状態に挿入されて図5に示すバンド32によって取付筒部31と共にケース10のロアケース13の筒状開口13aの外周面に緊結される筒状基部36aと、副濾材ユニット30における先端シール部34の内周面に密接状態に挿入されてこの先端シール部34を内周側から支持する支持環36bと、前記筒状基部36aと支持環36bの間を円周方向複数個所で連絡するように斜めに延びて、副濾材ユニット30における補強用リブ35を下側(内側)から支持する支持リブ36cからなる。支持環36bの下端縁は先端シール部34の下面より高い位置にあり、このため図5に示すオイルパン3への先端シール部34の密接状態が損なわれないようになっている。
【0031】
この構成によれば、先に説明した第一の実施の形態による効果に加え、ゴム状弾性材料からなる先端シール部34及び補強用リブ35自体が補強フレーム36の支持環36b及び支持リブ36cによって補強されるので、オイルポンプの吸引力にばらつきや脈動があっても、先端シール部34がオイルパン3の底面に安定的に密接され、かつオイルが副濾材33を通過する際の通過抵抗による副濾材33の変形を有効に抑制することができる。
【0032】
<第三の実施の形態>
また、図6は、本発明に係るオイルストレーナの第三の実施の形態において使用される副濾材ユニット30を示すものである。
【0033】
この形態は、上述した第二の実施の形態における補強フレーム36に、その筒状基部36a、支持リブ36c及び支持環36bで囲まれた部分に位置して、副濾材33よりも十分に目が粗くゴム状弾性材料よりも剛性の高い例えば金属や合成樹脂材料からなるメッシュ37を一体的に又は別体で設けたものである。
【0034】
したがってこの構成によれば、支持リブ36c,36cの間で、副濾材33がメッシュ37によって下側(内側)から支持されるので、オイルの通過抵抗による副濾材33の変形を一層有効に抑制することができる。
【0035】
<第四の実施の形態>
次に図7は、本発明に係るオイルストレーナの第四の実施の形態において使用される副濾材ユニット30を示すものである。
【0036】
図7に示す副濾材ユニット30は、取付筒部31及び先端シール部34と同じゴム状弾性材料からなる補強用リブ35が、傘状に成形された副濾材33を下側から支持するように、平面形状が放射状に、かつ下側へ板状に延びて、その下端が不図示のオイルパンの底面(図3図5などの符号3参照)に当接されるようになっているものである。その他の部分は第一の実施の形態と同様に構成することができる。
【0037】
この構成によれば、先に説明した第一の実施の形態による効果に加え、ゴム状弾性材料からなる補強用リブ35がオイルパンの底面に支承されて突っ張り棒のように機能するので、オイルポンプの吸引力にばらつきや脈動があっても、先端シール部34がオイルパン3の底面に安定的に密接され、かつオイルが副濾材33を通過する際の通過抵抗による副濾材33の変形を有効に抑制することができる。
【0038】
<第五の実施の形態>
次に図8は、本発明に係るオイルストレーナの第五の実施の形態において使用される副濾材ユニット30を示すものである。
【0039】
図8に示す副濾材ユニット30は、補強用リブ35が傘状に成形された副濾材33を下側から支持するように、下側へ凸の形状に形成されているものであり、その他の部分は第一の実施の形態と同様に構成することができる。この場合、補強用リブ35は取付筒部31及び先端シール部34と同じゴム状弾性材料からなるもののほか、それよりも強度の高い、例えば金属や合成樹脂材料からなるものとしても良い。
【0040】
そしてこの実施の形態でも、先に説明した第一の実施の形態による効果に加え、補強用リブ35が十分な強度を有するので、オイルが副濾材33を通過する際の通過抵抗による副濾材33の変形を有効に抑制することができる。
【0041】
<第六の実施の形態>
また図9は、本発明に係るオイルストレーナの第六の実施の形態を示すものであり、図10は、この第六の実施の形態において使用される副濾材ユニットを示すものである。
【0042】
この実施の形態は、副濾材ユニット30の先端シール部34におけるOリング状の本体部分34aに、オイルパン3の底面と密接可能な薄膜状のシールリップ34bを外周側へ円錐状に張り出すように形成したものである。その他の部分は上述した各実施の形態のいずれかと同様に構成することができる。
【0043】
すなわち上記構成によれば、オイルが副濾材33を通過する際の圧力損失による副濾材ユニット30の内周空間S3とその外側空間との圧力差によって、先端シール部34は特にシールリップ34bにおいてオイルパン3の底面に良好に密接する。このため、オイルが先端シール部34とオイルパン3の間から流入するのを一層確実に防止することができる。
【0044】
なお、図11に第六の実施の形態において使用される副濾材ユニットの先端シール部の形状変更例を示すように、先端シール部34は、その全体をシールリップ状に形成したものも好ましい。
【0045】
<第七の実施の形態>
次に図12は、本発明に係るオイルストレーナの第七の実施の形態を使用状態で示すものである。
【0046】
この実施の形態は、副濾材ユニット30における先端シール部34の上面と、その上方に位置するケース10のロアケース13の下面との間に、コイルスプリング37を適宜圧縮状態で介装したものである。また、コイルスプリング37の上端を着座可能とするために、ケース10の流入口11をなす筒状開口13aを、ロアケース13の中央部に形成してある。
【0047】
コイルスプリング37は請求項3に記載されたばねに相当するものであって、すなわちその圧縮反力によって、副濾材ユニット30における先端シール部34を、オイルパン3の底面へ向けて付勢するものである。なお、先端シール部34の上面には、コイルスプリング37の端部を保持するための溝が凹設されている。その他の部分は先に説明した各実施の形態のいずれかと同様に構成することができる。
【0048】
上記構成によれば、オイルが副濾材33を通過する際の圧力損失による副濾材ユニット30の内周空間S3とその外側空間との圧力差による、オイルパン3の底面に対する先端シール部34の追随性が、コイルスプリング37の付勢力によって補償されるので、オイルパン3内でのオイルストレーナ1の設置位置にある程度の誤差があったり、振動が入力されたりしても、先端シール部34をオイルパン3の底面に確実に密接させることができる。
【0049】
<第八の実施の形態>
さらに図13は、本発明に係るオイルストレーナの第八の実施の形態を使用状態で示すものである。
【0050】
この実施の形態は、副濾材ユニット30における副濾材33を、蛇腹状に形成したものである。詳しくは、副濾材33は、円周方向へ連続した山部33aと谷部33bを交互に有するもので、先端シール部34側ほど大径であり、副濾材33よりも先端シール部34が大径となっている。また、副濾材33に含浸成形された補強用リブ35も、前記山部33aと谷部33bに倣った波型をなしている。その他の部分は先に説明した各実施の形態のいずれかと同様に構成することができ、例えば第七の実施の形態のように、先端シール部34の上面と、その上方に位置するケース10のロアケース13の下面との間に、コイルスプリング37を適宜圧縮状態で介装しても良い。
【0051】
上記構成によれば、副濾材ユニット30の副濾材33が先端シール部34側ほど大径となる蛇腹状をなすため、オイルが副濾材33を通過する際の圧力損失による副濾材ユニット30の内周空間S3とその外側空間との圧力差は、副濾材ユニット30の先端シール部34をオイルパン3の底面へ押し付けるように作用する。しかも副濾材33が蛇腹状をなすことによって伸縮性を有するため、オイルパン3に対する追随性に優れており、オイルパン3内でのオイルストレーナ1の設置位置に大きな誤差があるような場合でも、先端シール部34が良好に追随してオイルパン3の底面に密接することができる。
【0052】
また、副濾材33が蛇腹状をなすことによって濾過面積が広くなるので、気泡除去能力を向上することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 オイルストレーナ
3 オイルパン(オイル槽)
10 ケース
11 流入口
12 流出口
20 主濾材
30 副濾材ユニット
31 取付筒部
33 副濾材
33a 山部
33b 谷部
34 先端シール部
34b シールリップ
35 補強用リブ
36 補強フレーム
37 コイルスプリング(ばね)
S1 下部室
S2 上部室
S3 内周空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14