(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物からなるフェノール成分と、ホルムアルデヒドからなるアルデヒド成分とを縮重合して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、一般式(1)の化合物に由来するフェノール性水酸基の数量の割合(個数)が、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量(個数)100%に対して、40%を超えることを特徴とする。
【0017】
前記一般式(1)で表される化合物は、一つのベンゼン環からなり、少なくともベンゼン環上の互いに隣接した位置に2個のフェノール性水酸基を有する、多価フェノール類である。置換基として炭素数1〜10の1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族を含む炭化水素基、或いは不飽和結合を含む炭化水素基)を有しても構わない。具体的には、カテコール、メチルカテコール、ジメチルカテコール、エチルカテコール、プロピルカテコール、フェニルカテコール、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール等を好適に挙げることができる。これらの中では、二価又は三価のフェノール類が好ましく、更に二価のフェノール類がより好ましい。特に好ましくは、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコールである。
【0018】
前記一般式(2)で表される化合物は、一つのベンゼン環からなり、ベンゼン環上に1個のフェノール性水酸基を有する、一価フェノール類である。置換基として炭素数1〜10の1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族を含む炭化水素基、或いは不飽和結合を含む炭化水素基)を有しても構わない。具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、フェニルフェノール、ターシャリーブチルフェノール等を好適に挙げることができる。これらの中では、フェノール、クレゾール、がより好ましく、フェノールが特に好ましい。
【0019】
本発明において、ホルムアルデヒドとは、フェノール類と反応してメチレン基としてフェノール類とフェノール類とを結合(架橋)できるものであればよく、ホルムアルデヒドの前駆体であってもよい。使用する形態(状態)には特に制限はない。ホルムアルデヒド水溶液、或いはパラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物などを好適に用いることができる。
取り扱いの容易性からは、ホルムアルデヒド水溶液が好適であり、例えば市販の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま使用することができる。
【0020】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物以外のフェノール成分や、ホルムアルデヒド以外のアルデヒド成分を、本発明の効果の範囲内で用いても構わない。それらの成分を用いる場合には、フェノール成分及びアルデヒド成分の各成分中好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0021】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、一般式(1)の化合物に由来するフェノール性水酸基の数量(個数)の割合が、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量(個数)100%に対して、40%を超えること、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、特に好ましくは85%以下であることを特徴とする。
一般式(1)の化合物に由来するフェノール性水酸基の数量の樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対する割合が、前記の範囲内であれば、得られる硬化物が優れた耐熱性、低熱膨張率、低吸水率のみならず、更に高温での高い機械的強度(高い貯蔵弾性率)を保持できるので好ましい。一般式(1)の化合物に由来するフェノール性水酸基の数量の樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対する割合が、前記範囲よりも小さくなると、高温での高い機械的強度(高い貯蔵弾性率)を保持できないので好ましくなく、前記範囲を超えると、吸水率が高くなることがある。
【0022】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物とからなるフェノール成分(a)と、ホルムアルデヒドからなるアルデヒド成分(b)とを、通常のノボラック型フェノール樹脂を製造する際と同様にして縮重合反応を行うことによって好適に得ることができる。
【0023】
すなわち、本発明のノボラック型フェノール樹脂の製造方法においては、通常のノボラック型フェノール樹脂を製造する際に使用される酸触媒を好適に使用することができる。
酸触媒としては、フェノ−ル成分とアルデヒド成分とを反応させる能力のあるものであれば、特に限定されることなく使用可能であり、例えば、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などを使用できる。触媒の使用量は、フェノ−ル成分100質量に対して、0.01〜5質量%であるが、反応終了後に残存する酸触媒を除去することを考慮すると極力少ない方が好ましい。反応終了後、アミン類または無機アルカリを使用して反応混合液中の酸触媒を中和することが好ましい。
【0024】
また、アルカリ触媒を用い、フェノール成分とアルデヒド成分とを付加反応させレゾール中間体を調製後、酸で中和、酸性化することでレゾール中間体とフェノール成分を縮重合反応させノボラック化する多段反応で調製することもできる。
アルカリ触媒としては、フェノ−ル成分とアルデヒド成分とを反応させる能力のあるものであれば、特に限定されることなく使用可能であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用できる。中和、酸性化させる酸としては、特に限定されることなく使用でき、たとえばシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などを好適に使用できる。
【0025】
すなわち、本発明のノボラック型フェノール樹脂は、酸触媒を用い2種又はそれ以上のフェノール成分を同時にホルムアルデヒドと反応させる1段反応、1種類のフェノール成分をホルムアルデヒドと反応後さらに別のフェノール成分とホルムアルデヒドを追加して反応させる多段反応、或いはアルカリ触媒を用いレゾール中間体を調製後、酸で中和、酸性化することでレゾール中間体とフェノール成分を反応させノボラック化する多段反応などのいずれの製造方法でも好適に得ることができる。
【0026】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の製造方法においては、アルカリ触媒を用い(特に過剰モル量のアルデヒド成分をフェノール成分に付加反応させて)レゾール中間体を調製後、酸で中和、酸性化することでレゾール中間体とフェノール成分を縮重合反応させてノボラック化する多段反応で調製する製造方法が、得られるノボラック型フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物の高温での貯蔵弾性率やTgをより効果的に向上させることができるので好ましい。この製造方法によれば、得られるノボラック型フェノール樹脂中の低分子量生成物の生成を容易に抑制できる。低分子量生成物の生成を抑制することによって、硬化物の高温での貯蔵弾性率やTgをより効果的に向上させることができる。
【0027】
また、本発明の製造方法において、縮重合反応中にアルデヒド成分を必ずしもすべて反応させる必要はないが、アルデヒド成分特にホルムアルデヒドは有害性が高いため、反応後に未反応のアルデヒド成分が残存する場合には、水洗や蒸留操作により除去するのが望ましい。本発明の製造方法においては、縮重合反応中にアルデヒド成分を完全に反応させるのが好ましい。
【0028】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を製造する際に、原料として使用するアルデヒド成分とフェノール成分との好適な割合は、特に限定されるものではないが、フェノール成分に対しアルデヒド成分が5モル%以上、100モル%以下が好ましく、10モル%以上、90モル%以下がより好ましい。
【0029】
本発明の製造方法における縮重合反応の反応温度は、特に限定されるものではないが、酸触媒を用いて合成する場合は好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜140℃である。50℃より低いと重合が進まず、200℃より高いと反応の制御が難しくなる場合があり、目的のノボラック型フェノール樹脂を安定的に得ることが困難となる場合があるので好ましくない。
アルカリ触媒を用いてレゾール中間体を合成する場合、レゾール中間体の合成温度は0〜100℃より好ましくは20〜70℃である。レゾール中間体を酸により中和、酸性化後ノボラック化する反応温度は、特に限定されないが、20〜160℃、より好ましくは40〜140℃である。
【0030】
本発明の製造方法では、無溶媒で反応を行ってもよいが、必要によって反応溶媒を使用することができる。
反応溶媒としては、フェノール成分(a)、アルデヒド成分(b)を好適に溶解することができる水が好適であるが、場合によっては反応に影響を及ぼさない有機溶媒を使用することもできる。
このような有機溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
反応溶媒を使用する場合の使用量は、通常、反応原料100質量部当り、20〜1000質量部である。
【0031】
本発明の製造方法における反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.5時間以上であって20時間以内である。
本発明の製造方法における反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0032】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の製造方法において、縮重合反応終了後、後処理として、塩基を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を実施することが好ましい。
酸触媒の中和のための塩基としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。塩基としては、例えば、金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基ならびにアミンや有機アミンなどの有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。有機塩基のアミンあるいは有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。好ましくは有機アミンが使用される。塩基の使用量は、酸触媒を中和し、反応系内のpHを4〜8の範囲にする量で使用することが好ましい。
水洗における水洗水の量と水洗の回数は、特に限定されない。酸触媒やアルカリ触媒、中和により生成した塩など不純物をエポキシ硬化剤用としての実使用に影響ない程度の量まで除去するには、水洗回数としては1〜5回程度である。
水洗温度も特に限定されないが、触媒除去の効率と作業性の観点から20〜95℃で行うのが好ましい。水洗中、樹脂と水洗水の分離が悪い場合は、樹脂の粘度を低下させる溶媒の添加や水洗温度を上昇させることが効果的である。このような溶媒は、フェノ−ル樹脂を溶解し、粘度を低下させるものであれば特に限定されることなく使用することができる。
酸性触媒を中和及び水洗により除去した後、例えば、反応系の温度を130℃〜230℃に上げて、20〜50torrの減圧下で、反応系内に存在する未反応原料、有機溶媒等の揮発分を留去することによって、本発明のノボラック型フェノール樹脂を好適に得ることができる。
【0033】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、好ましくは、化学式によって表示すると下記一般式(3)のように表示できる。そして、この式中の全フェノール性水酸基の数量100%に対して、式中の少なくともベンゼン環上の互いに隣接した位置に2個のフェノール性水酸基を有する多価フェノール類(すなわち、前記一般式(1)の化合物)に由来するフェノール性水酸基の数量が、40%を超えることを特徴としている。
【0035】
樹脂中の一般式(1)の化合物に由来するフェノール性水酸基の数量の割合の調節は、原料として用いる一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との使用量の割合を調節することによって好適に調整できる。その際、それぞれの原料とホルムアルデヒドとの反応性の大きさ、更に採用する反応条件等を加味して行われる。当業者にとっては、その調節方法は自明であるが、必要なら予備的な実験を行うことによって簡単に見出すことができる。
【0036】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量は、好ましくは65〜85g/eq、より好ましくは70〜80g/eqである。この範囲未満では、吸水率が高くなって積層板として用いることが難しくなり、この範囲を超えると、高温での機械的強度を維持することが難しくなるため積層板に用いた場合に反りを制御することが難しくなる。
【0037】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、好ましくは40〜180℃、より好ましくは60〜160℃である。この範囲未満ではプリプレグ作成後にベタツキが発生し作業性が悪化することがある。この範囲を超えると、プリプレグに溶剤の残りやすくなりボイドの発生原因となることがある。
【0038】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは400〜20000、より好ましくは600〜10000、更に好ましくは800〜5000である。
【0039】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルイソブチルケトン、メタノールなどの溶媒に可溶であるためワニスとして好適に使用することができる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物と共に本発明のノボラック型フェノール樹脂を硬化剤として含有することを特徴とする。エポキシ化合物としては、特に限定されないが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などを好適に例示することができる。
それらの配合割合は、従来のエポキシ樹脂組成物における硬化剤の使用量と同様であるが、エポキシ樹脂100質量部に対し、本発明のノボラック型フェノール樹脂20〜150質量部程度である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物が含有する、公知の硬化触媒、無機充填材、難燃剤、カップリング剤、着色剤などの添加材を好適に含有することができる。
硬化促進剤としては例えば有機ホスフィン化合物およびそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。
充填材としては非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。また難燃剤としてはリン酸、三酸化アンチモンなどがあげられる。
これらを含有したエポキシ樹脂組成物をガラスクロスなどの基材に適切に含浸させるために、エポキシ樹脂組成物は、溶媒に均一に溶解させてワニス化することが望ましい。その際の溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、N、N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルイソブチルケトンなどを好適に挙げることができる。
【0041】
エポキシ樹脂組成物は、限定するものではないが、例えば150℃〜250℃で、0.1時間〜10時間加熱処理することによって好適に硬化物を得ることができる。
【0042】
本発明のプリプレグは、基材に本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸させることによって好適に得ることができる。
基材としては、紙、ガラスクロス、ガラスマット、アラミド繊維、炭素繊維などが挙げられる。基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させる手法としては、特に限定されないが、基材を本発明のエポキシ樹脂組成物からなるワニスに浸漬する方法が好ましい。含浸させた基材は、特に限定されないが、例えば乾燥炉内で80〜200℃の範囲で乾燥させることによりプリプレグを好適に得ることができる。
【0043】
本発明の金属張り積層板は、プリプレグと金属箔とを一体に成形して得られる。
例えば、プリプレグと金属箔を所定の枚数重ね、特に限定されないが50〜250℃程度に加熱したプレスにより加熱プレスして金属箔と複数枚のプリプレグを硬化一体化させることで得られる。金属箔は、特に限定されないが、例えば銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金からなる金属箔が挙げられる。
【0044】
本発明の配線板は、本発明の金属張り積層板を加工することによって得られる。
特に限定されないが具体的には金属張り積層板をフォトエッチング法などにより金属箔をパターニングして回路を形成する工程、パターンを形成した積層板にさらにプリプレグと金属箔を重ね加熱プレスし多層化する工程、ドリル等によりスルーホールを形成後メッキによりスルーホールを充填し金属箔層間を電気的に接続する工程、及び外形加工など公知の加工工程を施すことで得られる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
ノボラック型フェノール樹脂に係る測定方法を以下に示す。
(1)遊離のホルムアルデヒド濃度
JIS K6910に準じて測定した。
(2)水酸基当量
塩化アセチルでアセチル化を行い、過剰の塩化アセチルを水で分解しアルカリで滴定する方法で測定を行った。
具体的には、試料0.5〜1gを1,4−ジオキサン10mlに溶解した溶液に、1.5mol/Lの塩化アセチルの無水トルエン溶液10mlを加え、0℃まで冷却する。これに、ピリジン2mlを加え、60±1℃のウォーターバス中で1時間反応させる。反応後、冷却し、純水25mlを加え、混合して塩化アセチルを十分に分解させる。次いで、この溶液にアセトン25mlと、フェノールフタレインを加え、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、試料溶液が赤紫色に呈色するまで滴定を行う。ブランク(試料なし)についても前記操作にて測定を行う。
水酸基当量は、次式により算出した。
OH当量[g/eq.]=(1000×W)/(f×(b−a))
ここでW、f、b、aは、それぞれ以下のとおりである。
W:試料重量[g]
f:1mol/Lの水酸化カリウム水溶液のファクター=1.002
b:ブランク測定に要した1mol/Lの水酸化カリウム水溶液の量[ml]
a:試料測定に要した1mol/Lの水酸化カリウム水溶液の量[ml]
(3)軟化点
メトラー・トレド株式会社製軟化点測定装置 FP83HTを使用し、昇温速度3℃/分の条件で測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)
東ソー株式会社製ゲル浸透クロマトグラフ分析装置 HLC-8220GPCを使用して下記条件でGPC測定を行い、ポリエチレン標準物質による検量線に基づいてMwを算出した。
カラム:TSK−GEL Hタイプ
G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件
温度:40℃
溶媒:THF
送液圧力:14.2MPa
流速:1mL/分
検出器:スペクトロフォトメーターUV−8020(波長:254nm)
(5)ノボラック型フェノール樹脂のフェノール成分の割合
仮にホルムアルデヒドからなるアルデヒド成分とフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)からなるフェノール成分とを縮重合反応させた場合に、生成したノボラック型フェノール樹脂の各フェノール成分に由来するユニットの割合の測定方法について説明する。
反応終了後、反応混合物中の遊離ホルムアルデヒド濃度を測定して、ホルムアルデヒドが完全に反応し遊離ホルムアルデヒドがないことを確認する。次いで、反応混合物をGPC測定し、反応混合液中の、生成したノボラック型フェノール樹脂、未反応のフェノール化合物(A)、未反応のフェノール化合物(B)の質量割合を算出した。
これを用いて、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール成分の割合[フェノール化合物(B)に由来するユニット/フェノール化合物(A)に由来するユニット](B/Aと略記する)を次式により算出した。
B/A=[(I
B−W
N×C
B)/M
B]/[(I
A−W
N×C
A)/M
A]
W
N:生成したノボラック型フェノール樹脂の質量
I
B:フェノール化合物(B)の仕込み量
C
B:未反応フェノール化合物(B)と生成ノボラック型フェノール樹脂の割合[未反応フェノール化合物(B)/生成ノボラック型フェノール樹脂]
M
B:フェノール化合物(B)の分子量
I
A:フェノール化合物(A)の仕込み量
C
A:未反応フェノール化合物(A)と生成ノボラック型フェノール樹脂の割合[未反応フェノール化合物(A)/生成ノボラック型フェノール樹脂]
M
A:フェノール化合物(A)の分子量
【0047】
〔実施例1〕
フェノール94g(1mol)、カテコール55g(0.5mol)、42%ホルマリン61.2g(0.857mol)、シュウ酸0.11gを4つ口フラスコに仕込み1時間かけ100℃まで昇温し、100℃で3時間反応させることでホルムアルデヒドを完全に反応させた。反応終了後の反応混合物のGPC測定を行い、生成した樹脂に対する未反応フェノールならびに未反応カテコールの割合を求めた。その後180℃まで昇温し、未反応のフェノールおよびカテコールを減圧ならびに水蒸気蒸留により系外へ除去しノボラック型フェノール樹脂115gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは1512、水酸基当量は78g/eq、軟化点は123℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂のフェノールに由来するユニットとカテコールに由来するユニットの割合[フェノール由来ユニット/カテコール由来ユニット]は、1.7であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して54%であった。
【0048】
〔実施例2〕
フェノール94g(1mol)、カテコール110g(1mol)、42%ホルマリン81.6g(1.14mol)、シュウ酸0.11gを用い、実施例1と同様の操作を行ってノボラック型フェノール樹脂130gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは1464、水酸基当量は75g/eq、軟化点は127℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂のフェノールに由来するユニットとカテコールに由来するユニットの割合[フェノール由来ユニット/カテコール由来ユニット]は、0.73であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して73%であった。
【0049】
〔実施例3〕
フェノール23.5g(0.25mol)、カテコール110g(1mol)、42%ホルマリン51.0g(0.714mol)、シュウ酸0.11gを用い、実施例1と同様の操作を行ってノボラック型フェノール樹脂95gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは1252、水酸基当量は64g/eq、軟化点は130℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂のフェノールに由来するユニットとカテコールに由来するユニットの割合[フェノール由来ユニット/カテコール由来ユニット]は、0.21であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して90%であった。
【0050】
〔実施例4〕
カテコール110g(1mol)、92%パラホルム65.2g(2mol)、25%NaOH水溶液160g、溶媒の純水160gを4つ口フラスコに仕込み50℃で6時間反応させてレゾール中間体を得た。このときフラスコ内の反応混合物中にはホルムアルデヒドが0.15質量%あった。その後フェノール360g(3.83mol)と25%塩酸158gを添加し、100℃に昇温し1時間反応させた。このとき反応混合物中のホルムアルデヒドは完全に反応した。その後水洗を4回行ったのち減圧ならびに水蒸気蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂198gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは1318、水酸基当量は74g/eq、軟化点は134℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂のフェノールに由来するユニットとカテコールに由来するユニットの割合[フェノール由来ユニット/カテコール由来ユニット]は、1.02であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して66%であった。
【0051】
〔比較例1〕
フェノール94g(1mol)、カテコール29.7g(0.27mol)、42%ホルマリン51.8g(0.726mol)、シュウ酸0.09gを用い、実施例1と同様の操作を行ってノボラック型フェノール樹脂95gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは1427、水酸基当量は86g/eq、軟化点は120℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂のフェノールに由来するユニットとカテコールに由来するユニットの割合[フェノール由来ユニット/カテコール由来ユニット]は、3.0であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して40%であった。
【0052】
〔比較例2〕
カテコール154g(1.4mol)、42%ホルマリン50g(0.7mol)、シュウ酸0.078g、溶媒の純水19.2gを用い、実施例1と同様の操作を行ってノボラック型フェノール樹脂83gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂のMwは793、水酸基当量は60g/eq、軟化点は126℃であった。
また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノールに由来するユニット0であり、カテコール由来のフェノール性水酸基の数量の割合は、樹脂全体のフェノール性水酸基の数量に対して100%である。
【0053】
以下に本発明のノボラック型フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物について説明する。
まず、エポキシ樹脂組成物から得かられる硬化物の評価方法を以下に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)および貯蔵弾性率
エポキシ硬化物を40mm×2mm×4mmに切り出し測定試料とした。測定は、ティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA−G2を用い、30℃から3℃/分の昇温速度で昇温しながら貯蔵弾性率を測定し、250℃での貯蔵弾性率を求めた。またTanδのピーク温度をTgとした。
(2)吸水率
エポキシ硬化物を30mm×15mm×4mmに切り出し測定試料とした。試料を95℃の純水に浸漬させ、浸漬前の質量と24時間浸漬後の質量から算出した質量増加率を吸水率とした。
(3)線膨張係数(α1、α2)
エポキシ硬化物を10mm×6mm×4mmに切り出し測定試料とした。島津製作所株式会社製熱機械分析装置 TMA−60を用い、30℃から3℃/分の昇温速度で昇温しながら試料のTg以上の線膨張係数(α1)と、Tg以下の線膨張係数(α2)を測定した。
【0054】
〔実施例5〕
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製YX−4000、エポキシ当量:185g/eq)と実施例1で得たノボラック型フェノール樹脂、及び硬化促進材(北興化学株式会社製TPP)を、表1に記載する割合で配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を、溶融して金型に注型後、175℃で5時間次いで200℃で8時間加熱処理することによってエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。
この硬化物の評価結果を表1に示す。
【0055】
〔実施例6、7、8、比較例3,4〕
実施例1で得たノボラック型フェノール樹脂の代わりに、実施例2,3、4及び比較例1,2で得たノボラック型フェノール樹脂を用い、実施例5と同様にしてエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。
これらの硬化物の評価結果を表1に示す。
【0056】
以下に本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグとそれを用いた銅張り積層板について説明する。
まず、積層板の評価方法を以下に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)および貯蔵弾性率
積層板を35mm×12mm×1.1mmに切り出し測定試料とした。測定は、ティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA−G2を用い、30℃から3℃/分の昇温速度で昇温しながら貯蔵弾性率を測定し、高温での貯蔵弾性率の指標として250℃での貯蔵弾性率を求めた。またTanδのピーク温度をTgとした。
(2)吸水率
積層板を50mm×50mm×1.1mmに切り出し測定試料とした。試料を23℃の純水に浸漬させ、浸漬前の質量と24時間浸漬後の質量から算出した質量増加率を吸水率とした。
【0057】
〔実施例9〕
ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製828EL、エポキシ当量:186g/eq)と実施例1で得たノボラック型フェノール樹脂、硬化促進材(四国化成工業株式会社製2E4MZ)、及び溶媒のメチルエチルケトン(以下MEK)を表2に記載する割合で配合してエポキシ樹脂組成物からなるワニスを調製した。このワニスにガラスクロス(株式会社有沢製作所製M7628VN−105)を含浸後、130℃で15分乾燥することでプリプレグを得た。このプリプレグを110mm×95mmに切り出し、それを8枚重ね後、銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製CF−T9B−HTE)で挟んで170℃に加熱したホットプレスで加圧後、200℃で5時間加熱処理することにより銅張り積層板を得た。
この銅張り積層板の表面の銅箔をエッチング液で除去し洗浄した後の積層板について評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0058】
〔実施例10〕
実施例1で得たノボラック型フェノール樹脂の代わりに、実施例2で得たノボラック型フェノール樹脂を用いたこと以外は、実施例9と同様にして銅張り積層板を得た。
この銅張り積層板の表面の銅箔をエッチング液で除去し洗浄した後の積層板について評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0059】
〔比較例5〕
実施例1で得たノボラック型フェノール樹脂の代わりに、市販のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(MEH−7500、水酸基当量:98g/eq)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして銅張り積層板を得た。
この銅張り積層板の表面の銅箔をエッチング液で除去し洗浄した後の積層板について評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】