(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928710
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】曝気装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/20 20060101AFI20160519BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20160519BHJP
B01F 7/22 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
C02F3/20 Z
B01F3/04 A
B01F7/22
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-108148(P2012-108148)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-233515(P2013-233515A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一聡
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−251386(JP,A)
【文献】
特開平05−253592(JP,A)
【文献】
特開平08−033896(JP,A)
【文献】
特開2012−125691(JP,A)
【文献】
特開2002−018252(JP,A)
【文献】
特開2010−167329(JP,A)
【文献】
特開2003−211180(JP,A)
【文献】
特開2001−276878(JP,A)
【文献】
特開2012−239977(JP,A)
【文献】
特開2000−317488(JP,A)
【文献】
米国特許第06345810(US,B1)
【文献】
米国特許第04246111(US,A)
【文献】
国際公開第94/026400(WO,A1)
【文献】
米国特許第03643403(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/20
B01F 3/04
B01F 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さが4〜12mの曝気槽と、該曝気槽内の水面下2〜3mの位置に配置され、散気用給気配管から圧力空気の供給を受けて気泡を前記曝気槽の全面に放出する散気装置と、前記散気装置の上方に設置され、該曝気槽の下部に前記気泡を搬送するプロペラ式攪拌機1基または複数基とを備えたことを特徴とする曝気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的廃水処理設備などで用いられる曝気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理や産業廃水処理などでは、活性汚泥法等の生物学的処理方法が広く利用されている。この生物学的処理方法は、嫌気的条件下で行う方法と好気的条件下で行う方法がある。そして、好気的条件下で行う場合の曝気装置には、曝気槽と呼ばれる水槽の底部に設けられる散気装置に空気を送り込み、微細気泡化して水槽内に放出する酸素供給手段が多用されている。
【0003】
この曝気装置の省エネルギー化については、種々の改良が行われている。例えば、特許文献1には、曝気槽内に超音波発生装置を投入し、散気装置から発生した気泡の合一により粗大化した気泡を効率的に微細化して、より高い酸素溶解効率を得ることにより、消費電力を低減させた廃水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−111598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に曝気槽は水深が5m程度であり、その底部に微細気泡を発泡する散気装置を設置して、そこに送風機から配管を介して空気を圧送し、槽内に微細気泡を発生させている。
【0006】
ところで、送風機の必要動力は、風量と圧力に比例する。この送風機に必要な圧力は通常60〜70kPa程度であるが、そのほとんどは通常5m程度の散気水深に対応した水圧によるものであり、これが使用動力の大きな要因になっている。
【0007】
一般に、散気装置の設置水深が5m程度であるのは、酸素溶解効率が散気水深の約0.7乗に比例して増加するため、その点では散気水深は深い程よいが、一方、窒素の過飽和を招かないレベルを考慮すると、適切な水深が5m程度であるからである。
【0008】
本発明の目的は、少ない動力で高い酸素溶解効率が得られる曝気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、曝気槽の水深の中間部に散気装置を設置するとともにその上方に下降流発生手段を設けて散気装置から発生した気泡を槽底部まで送り込むことによってかかる目的を達成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
曝気槽と、該曝気槽内の水面下2〜3mの位置に配置され、散気用給気配管から圧力空気の供給を受けて気泡を放出する散気装置と、前記散気装置の上方に設置され、該曝気槽の下部に前記気泡を搬送する下降流発生手段とを備えたことを特徴とする曝気装置と、
前記下降流発生手段は、プロペラ式攪拌機であることを特徴とする上記の曝気装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、曝気槽の運転コストの大きな部分を占めている送風機動力を大きく節減できる。例えば、散気装置設置水深を5mから2.5mにすれば、送風機の必要圧力は65kPaから40kPaに減少し、送風機動力を約40%削減できる。なお、下降流を発生させる攪拌装置の動力は送風機動力(例えば約50kw)の1/10以下であり、攪拌装置の動力による増加分は送風機動力の10%以下にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の曝気装置を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の別の曝気装置を模式的に示した図である。
【
図3】従来の曝気装置の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の曝気装置は曝気槽と散気装置と下降流発生手段よりなる。
【0014】
曝気槽は、被処理水を収容して生物学的処理を行う槽であり、形状は特に限定されないが、通常は箱形あるいは円筒形である。サイズは被処理水の量等によって変わるが、箱形の場合、縦×横が4〜100m×4〜12m程度、円筒形の場合半径が2〜20m程度である。深さは浅いものから100mに及ぶものなどがあるが、深いものは、全体の攪拌等に特別な設備が必要であり、通常は4〜12m程度である。
【0015】
散気装置は、散気用給気配管から圧力空気の供給を受けて気泡を曝気槽内に放出する装置であり、該曝気槽内の水面下2〜3mの位置に配置される。気泡は微細気泡とするのがよく、径は1〜3mm程度、好ましくは1mm程度とするのがよい。散気装置の散気部は孔タイプ、ノズルタイプ等があるがいずれでもよい。散気装置を水面下2〜3mとしたのは、1.5m程度では下降流発生手段で気泡を槽底まで送ることが難しくなり、一方、3.5m程度になると、送風機の必要圧力が増して動力削減があまりできなくなるからである。この水面は定常運転時のものである。散気装置に送る送風機の必要圧力は、散気装置の散気部の水深に加えて、散気装置及び送気配管の圧力損失分等として、5〜20kPa程度を見込めばよい。曝気槽には種々の目的でその他の空気(酸素)供給機構を設けることができるが、その場合もこの散気装置は曝気槽における主たる散気装置である。
【0016】
下降流発生手段は、散気装置から放出された気泡を曝気槽の槽底近傍まで、好ましくは槽底まで送る手段であり、プロペラ式攪拌機、噴流装置、ポンプ方式などを用いることができる。この下降流発生手段は、気泡を槽底に向けて送る手段であり、そのため、散気装置の上方好ましくは真上に設置される。散気装置の散気部との間隔は垂直距離で50〜250cm程度が適当である。この下降流を生じる結果、曝気槽内では循環流が形成される。
【0017】
曝気槽内に設置される散気装置と下降流発生手段は一基に限らず複数基設けることもできる。
【0018】
本発明の一実施態様である曝気装置の概略構造を
図1に示す。箱形の曝気槽の水深の中間部やや下に散気装置が設けられ、そこには送風機(B)から圧力空気が送られている。散気装置の真上にはモータ(M)によって回転するプロペラ式攪拌機が取付けられ、散気装置から放出される気泡がこの攪拌機によって生じる下降流によって槽底まで送られる。
【0019】
散気装置と攪拌機を槽内に複数設置した例を
図2に示す。
【0020】
図3は、従来の曝気装置の例であり、槽底近傍に設置された散気装置から気泡が放出されている。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、曝気槽の運転コストの大きな割合を占めている散気装置へ送る送風機の動力を大幅に削減できる。各種の曝気装置に広く利用可能である。