【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明によれば、請求項1の対象及び請求項14の課題によって達成される。
【0005】
インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを有する射出成形装置(1)を用いて製造する方法であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、以下の方法ステップを含んでおり、すなわち
a)IMDフィルム(16)を、前記加飾側金型半部分(12)の、加飾側成形面(12f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IMDフィルム(16)を固定する方法ステップと、
b)IML成形部品(15)を、前記コア側金型半部分(11)の、コア側成形面(11f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IML成形部品(15)を固定し、その際前記IML成形部品(15)がインサート部品加飾層(15d)とバッキングフィルム(15b)とを含んでいる方法ステップと、
c)前記加飾側金型半部分(12)を前記コア側金型半部分(11)上に降下させることによって前記射出成形装置(1)を閉じる方法ステップと、
d)液状の熱可塑性射出成形材(17)を前記コア側金型半部分の前記成形キャビティ内へ射出し、その際、前記液状の射出成形材(17)が前記IML成形部品(15)を前記コア側金型半部分(11)から解離させて、前記加飾側金型半部分(12)の前記成形キャビティ内にある前記IMDフィルム(16)に対して押圧させる方法ステップと、
e)前記成形部品の冷却時間が満了した後に前記射出成形装置(1)を開く方法ステップと、
f)加飾された前記成形部品(14)を取り出す方法ステップと、
を含んでいる方法が提案される。
【0006】
本発明の前記目的は、インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを用いて製造するための射出成形装置(1)であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、少なくとも1つの射出路(13)を有し、前記コア側金型半部分(11)の成形キャビティが前記IML成形部品(15)のための固定手段を有し、前記少なくとも1つの射出路(13)の射出口が、前記コア側金型半部分(11)に挿入される前記IML成形部品(15)の下方に配置されること、により、さらに達成される。
【0007】
提案した上記方法及び提案した上記装置は、インモールド加飾フィルムを用いた加飾の長所と、インモールドラべリング成形部品を用いた加飾の長所とを併せ持ったものであり、同時に新規な構成の可能性をも含んでいる。
【0008】
有利には、ステップa)で挿入されるIMDフィルムとステップb)で挿入されるIML成形部品とは、方法ステップd)を実施した後に、IMDフィルムの構成部分がIML成形部品の表面に付着または接着することなく、IMDフィルムが成形部品から除去することができるほど、IMDフィルムがIML成形部品の表面にほとんど付着しないように、互いに整合されている。
【0009】
方法ステップa)において、IMDフィルムの全面が、前記加飾側金型半部分の前記成形キャビティ部上に配置されるように構成されている。好ましくは網状または帯状の形態のIMDフィルムは、例えばフィルム搬送装置を用いて射出成形装置に導入されてもよい。フィルム搬送装置は、IMDフィルム用供給ローラ、残余フィルム用巻取りローラ、IMDフィルムを歩進的に搬送するための搬送装置、供給されたIMDフィルムを加飾側金型半部分に固定するための固定装置を含んでいてもよい。IMDフィルムは、好ましくはその外縁にレジスタマークを有していてよく、該レジスタマークは、好ましくは射出成形装置に設けられた光学位置センサによって検出される。これにより該位置センサは、射出成形装置に対するIMDフィルムの正確な位置決め、すなわち正確な位置合わせを行うことができるように、フィルム搬送装置を制御することができる。この場合の搬送方向における位置精度は、ほぼ0mmから1mmの公差を有し、好ましくは0.25mmから0.75mmの公差を有する。これによって、成形部品上に位置正確に被着させる必要のある単一のイメージ加飾を備えたIMDフィルムを、レジスタマークにより、適宜位置正確に射出成形装置内に配置することが可能である。しかしながら、IMDフィルムは、例えば連続模様及び/または木目及び/または単色彩色のようなエンドレスな加飾を有していてもよく、この場合、このようなエンドレスな加飾に対しては、IMDフィルムの位置正確な位置決めは必要ない。
【0010】
IML成形部品は、方法ステップb)の前に、縁側がトリミングされてもよく、及び/または、トリミング後に熱成形されてもよい。
【0011】
方法ステップb)において、IMLインサート部品が、コア側金型半部分の成形キャビティ部内に配置される位置決めピンによって固定されるようにしてよい。位置決めピンは、IML成形部品の背面に、特にバッキングフィルムに配置されるキャビティ部に係合して、IML成形部品を側方へずれないように固定するように形成されていてよい。液状の熱可塑性射出成形材が射出されると、特にIML成形部品の下方に射出されると、IML成形部品は位置決めピンによって持ち上げられて、射出成形材の圧力によって加飾側金型半部分の成形キャビティ内にあるIMDフィルムに対し押しつけられる。IML成形部品のずれは位置決めピンによるガイドなしに、流入する射出成形材によって非常に迅速に行われるので、実際に、その際に生じるIML成形部品の側方への移動はほとんど問題にならないことが明らかになっている。
【0012】
方法ステップb)において、IMLインサート部品が、静電力及び/または真空力によって、コア側金型半部分の前記成形キャビティ内に固定されるようにしてもよい。
【0013】
さらに、射出成形材は、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、または、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体とポリカーボネートとの混合物、または、ポリカーボネートとアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体との混合物であり、バッキングフィルムがアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体であるようにしてよい。
【0014】
他の実施形態では、射出成形材がポリカーボネートであり、バッキングフィルムがポリカーボネートであってもよい。
【0015】
さらに、射出成形材がポリプロピレン(PP)であり、バッキングフィルムがポリプロピレンであってもよい。
【0016】
また、射出成形材がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、バッキングフィルムがポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることも可能である。
【0017】
上述の射出成形材とバッキングフィルムとの材料組み合わせ以外にも、他の組み合わせが可能である。ただし、バッキングフィルムが射出成形工程の際に少なくとも表面領域で液状化され、これによって液状の射出成形材との、冷えた後も安定であるような融着を保証することができることが条件である。
【0018】
さらに、IML成形部品のインサート部品加飾層が放射線で硬化される、特に紫外線で硬化されるように構成してもよい。硬化により、インサート部品加飾層がIMDフィルムの加飾層と融着しないこと、特にIMDフィルムの加飾層の接着層と融着しないことが達成される。このようなインサート部品加飾層は、例えばイソシアネート架橋性アクリレート保護ラッカー塗装部から成っていてよい。
【0019】
さらに、IML成形部品は、インサート部品加飾層の外側層としての保護ラッカー塗装膜を有し、該保護ラッカー塗装膜は、方法ステップd)において、IMDフィルムの加飾層に、特にIMDフィルムの加飾層の接着層に付着しないように形成されていてもよい。このような保護ラッカー塗装膜は、例えばポリウレタン(PU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド、またはポリエステルから成っていてよく、或いは、構成成分としてそれらを有していてもよい。
【0020】
特に、前述した射出成形装置内でのIMDフィルムの位置正確な位置決めと併せて、IMDフィルムが部分的にのみ設けられる接着層を有し、該接着層が、特にIMDフィルムがIML成形部品と重なる面領域で、切除されているように構成してもよい。これにより、IMDフィルムと、特にIMDフィルムの接着層と、IML成形部品の表面との、望ましくない付着結合の可能性を低減させることができる。
【0021】
特に、前述した射出成形装置内でのIMDフィルムの位置正確な位置決めと併せて、IMDフィルムが全面に形成された接着層を有し、該接着層は、IMDフィルムがIML成形部品と重なる面領域において部分的にコーティングすることによって、非活性化するように構成してよい。非活性化のため、例えば部分的なコーティングは、方法ステップd)の間にIML成形部品の表面に付着しないように、または、わずかしか付着しないように形成されていてもよい。コーティングは、例えば放射線で硬化されるラッカー塗装、顔料成分の多いラッカー塗装、または粉末コーティングであってもよい。コーティングは、液状で、または固形でも熱間エンボス加工により、被着させることができる。コーティングは、例えばインクジェットプリント部によっても被着させることができ、インクジェットプリント部は、射出成形装置へのフィルム供給部の領域に配置され、前述した射出成形装置に対するIMDフィルムの位置正確な位置決めとともに、コーティングをIMDフィルム上に適宜位置正確に被着させる。このコーティングは、自己接着ラベルまたはステッカーであってもよい。これによって、IMDフィルムと、特にIMDフィルムの接着層とIML成形部品の表面との間の望ましくない付着結合の可能性を減少させることができる。
【0022】
前述した、IMDフィルムの、特にIMDフィルムの接着層の、IML成形部品の表面への、特に射出成形工程の間の付着を防止するまたはかなり減少させる可能性に加えて、IMDフィルムとIML成形部品の他の組み合わせも可能である。ただし、IMDフィルム及びIML成形部品の互いに向き合っている層の付着(付着=分子間相互作用による2つの物質間の付着力)と、IMDフィルム及びIML成形部品の互いに向き合っている層内部の結合(結合=物質内部の原子または分子間の内部結合力)とが、IMDフィルムの構成成分がIML成形部品の表面に付着または接着せずに、射出成形工程後に、IMDフィルムをIML成形部品から除去することができる程度に、IMDフィルムがIML成形部品の表面に付着するように、互いに整合しあっているのが条件である。同時に、IMDフィルムとIML成形部品の互いに向き合っている層の用途上の機能、すなわち接着層または保護層としての機能を果たすことができるようにするには、当該互いに向き合っている層が十分安定で、耐久性がなければならない。
【0023】
材料の厚みまたはIML成形部品の壁の厚みは、射出成形工程の間に射出成形装置内へ流入する射出成形材とIMDフィルムの熱活性接着層との間に断熱空間を有利に形成することができる。これにより、IMDフィルムの熱活性接着層が接着性になり、すなわち活性化され、射出成形工程の間に、IMDフィルムの接着層が、IML成形部品の表面に当接する領域において、IML成形部品の表面に対して付着する可能性を防ぐことを可能とする。特に、射出成形装置が閉じられ、射出成形圧が射出成形装置内部に印加されてIMDフィルムの接着層に作用し、特に数秒だけ(部品の形状及び部品のサイズにより、約1秒から20秒)継続する、射出成形工程の短時間の間は、射出成形材の熱がIMDフィルムの断熱空間を十分な速度及び適した量で克服することができず、その結果、IMDフィルムの接着層に十分作用して活性化させることができない。方法ステップd)では、射出成形工程の間に、IML成形部品は、IMDフィルムが中に配置された加飾側金型半部分に対し押圧される。その際に、IML成形部品は、約2mmから2.5mm移動することがある。この「移動」は、最終的に望ましい成形部品の壁の厚みから、IML成形部品の壁の厚みを差し引いて算出される。射出成形材の射出は、IML成形部品の下で、IMDフィルムを備えた加飾側金型半部分の方向で行われ、その結果実際にはIML成形部品はこの方向でのみ移動し、IML成形部品に対する側方へのずれ力が回避され、加飾側金型半部分に対する垂直な押圧が保証されることが好ましい。
【0024】
本発明の他の構成は、射出成形装置から取り出される加飾された成形部品のクリーニングに向けられている。加飾された成形部品に、IMDフィルムの加飾層残余、いわゆるフィルムフレークが残ることは避けがたく、成形部品から除去されなければならない。このフィルムフレークは、キャリアフィルムから解離したものであり、両金型半部分の間の継目個所に形成されるプラスティック材のバリと混同されることはない。
【0025】
他の方法ステップg)として、加飾された成形部品のクリーニングが設けられている。
【0026】
方法ステップg)においては、接触式クリーニング及び/または非接触式クリーニングが設けられ、例えばイオン化と併せて、ブラシクリーニングが行われる。イオン化によってフィルムフレークが除電され、その結果、フィルムフレークが、ブラシクリーニングを困難にするブラシ摩擦による静電荷電が生じる加飾された成形部品の表面に付着することがない。
【0027】
方法ステップg)において、回転ブラシを用いたクリーニングと、イオン化及び吸引によるクリーニングとの組み合わせが設けられていてもよい。
【0028】
さらに、方法ステップg)において、イオン化と、部品に対する乱流圧縮空気による吹き付けと、オプションの吸引とによる、クリーニングの組み合わせが設けられていてもよい。
【0029】
射出成形装置内には、位置決めピンによる固定装置が設けられていてよく、或いは、静電気力供給装置及び/または真空力を存在させるための真空供給装置による固定装置も設けられていてよい。これにより、射出成形装置内の所定位置でのIML成形部品の特に優れた保持を保証することができ、この保持は射出成形材を注入することによってはじめて解消される。
【0030】
射出成形装置は1つ以上の射出路を有していてもよい。この構造は、IML成形部材を加飾側金型半部分のIMDフィルムに対し均等に押圧させるうえで、例えば加飾される成形部品のサイズに比べて広い面積のIML成形部品の場合に好ましい。
【0031】
さらに、加飾側成形面は、IML成形部品を取り囲むデザイン溝を形成するための成形要素を有しているように構成してよい。デザイン溝は、IMDフィルムの加飾層に対するIML成形部品の位置精度の低さ及び/または成形精度の低さを、視覚的に隠すことができる。射出成形装置及びIML成形部品に対する、約0mmから1mmの間、好ましくは0.25mmから0.75mmの間の、IMDフィルムの位置精度の公差に従い、且つ、約0mmから1mmの間、好ましくは0.25mmから0.75mmの間の、射出成形装置内でのIML成形部品の位置精度の公差に従い、デザイン溝の幅が、0mmと2mmの間、好ましくは0.5mmと1.5mmの間であることが有利である。
【0032】
次に、本発明を実施形態を用いて詳細に説明する。