特許第5928726号(P5928726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928726
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】被覆アーク溶接棒
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/365 20060101AFI20160519BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B23K35/365 F
   B23K35/30 330A
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-19561(P2013-19561)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-147970(P2014-147970A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123249
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 元一
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢
(72)【発明者】
【氏名】大津 穣
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幹宏
(72)【発明者】
【氏名】名古 秀徳
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124529(WO,A1)
【文献】 特開2012−187619(JP,A)
【文献】 特開2008−229718(JP,A)
【文献】 特開平10−137975(JP,A)
【文献】 特開昭62−224497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/365
B23K 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆アーク溶接棒全質量あたり、被覆剤中に、金属炭酸塩をCO換算値で5〜10質量%、アルカリ金属酸化物をアルカリ金属換算値で0.4〜2.0質量%、フッ素化合物をF換算値で1.0〜5.0質量%含み、
被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤に含まれる合金成分が、前記心線および前記被覆剤のいずれか一方に含まれる場合はいずれか一方の含有量で、両方に含まれる場合は両方の合計の含有量で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、C:0.04〜0.15質量%、Si:1.0〜1.5質量%、Mn:0.7〜1.2質量%、Cr:1.3〜1.9質量%、Mo:0.5〜1.0質量%、V:0.3〜0.5質量%、Nb:0.02〜0.06質量%、B:0.005〜0.015質量%、Mg:0.05〜0.15質量%、Fe:60〜75質量%含み、残部が不可避不純物であり、前記不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が0.10質量%以下であることを特徴とする被覆アーク溶接棒。
【請求項2】
被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤に含まれる合金成分が、前記心線および前記被覆剤のいずれか一方に含まれる場合はいずれか一方の含有量で、両方に含まれる場合は両方の合計の含有量で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、C:0.05〜0.10質量%、Si:1.0〜1.3質量%、Mn:0.8〜1.2質量%、Cr:1.3〜1.9質量%、Mo:0.5〜1.0質量%、V:0.3〜0.5質量%、Nb:0.02〜0.06質量%、B:0.005〜0.015質量%、Mg:0.05〜0.10質量%、Fe:60〜75質量%含み、残部が不可避不純物であり、前記不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が0.10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆アーク溶接棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製リアクタなど、エネルギープラント中の圧力容器に用いられる2.25Cr−1Mo−V鋼の溶接に供せられる被覆アーク溶接棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石油精製リアクタなどの圧力容器用途として2.25Cr−1Mo鋼が用いられてきた。しかしながら、その運転効率向上の観点から、設計温度・圧力の高温・高圧化に耐えうる鋼材として、より高強度な2.25Cr−1Mo−V鋼製リアクタの適用が進められている。このような石油精製リアクタ用途の2.25Cr−1Mo−V鋼の溶接に供せられる被覆アーク溶接棒あるいは溶接金属として、クリープ破断性能や靭性などに優れる被覆アーク溶接棒あるいは溶接金属の開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1では、被覆アーク溶接によって形成される溶接金属において、Cr:2.00〜3.25質量%に対して、V:0.20〜0.70質量%とし、Nb、Co、Wの添加によってクリープ強度を確保している。また、特許文献2では、溶接棒全質量あたり、Cr:1.00〜3.50質量%に対して、V:0.1〜1.0質量%、Nb:0.02〜0.50質量%とし、Co、W、Niの添加によってクリープ強度と靭性を確保している。また、特許文献3では、溶接棒全質量あたり、Cr:1.00〜3.50質量%に対して、V:0.01〜0.60質量%、W:0.6〜2.5質量%とし、Nb、Taの添加によってクリープ強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−137975号公報
【特許文献2】特開2002−263883号公報
【特許文献3】特開2001−300768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては以下の問題がある。
石油精製リアクタ用途の鋼材の溶接に供せられる溶接材料としては、優れたクリープ性能と、それに追随する諸性能である靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性(応力除去焼鈍時に粒界割れを起こさないこと)、および溶接作業性とを両立することが要求されている。
そして前記のとおり、2.25Cr−1Mo鋼よりも高強度な2.25Cr−1Mo−V鋼製リアクタの適用が進められている。しかしながら、2.25Cr−1Mo−V鋼製リアクタにおいても、その操業条件が高温・高圧化する傾向にあり、従来の溶接材料では昨今の高温強度、特にクリープ破断性能の要求を満足しないという問題があった。
【0006】
また、特許文献1では、溶接後熱処理(PWHT)条件が700℃×26hと低温・短時間であり、また、クリープ試験条件が538℃/207MPaと低温・低応力であることから、昨今の市場要求に則していない。特許文献2では、PWHT条件が740℃×1hと、保持温度が高温である一方、保持時間が短く、また、クリープ試験条件が600℃/140MPaと、いずれの試験条件も昨今の市場要求に則していない。特許文献3では、PWHT条件が690℃×1hと、保持温度が低温で保持時間も短く、また、クリープ試験条件が600℃/140MPaと、いずれの試験条件も昨今の市場要求に則していない。
【0007】
そして、このようにCr−Mo鋼溶接金属のクリープ破断強度を上昇させるための先行技術としては、V,Nb,Ta,Wといった強炭化物形成元素やCoなどの固溶強化元素を、主要成分であるCr−Mo系に加算的に添加する方法が採用されてきた。しかしこれでは、衝撃靭性の劣化、硬度の上昇による耐割れ性の劣化を招く。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、優れたクリープ性能と、それに追随する諸性能である靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性および溶接作業性とを両立する被覆アーク溶接棒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の事項を見出した。
本発明者らは、優れたクリープ強度を有し、且つ靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性に優れた2.25Cr−1Mo−V鋼溶着金属の形成に際して、そのクリープ性能の改善手段として(1)炭化物の析出形態制御、および(2)ミクロ組織制御という着想を得た。
【0010】
2.25Cr−1Mo−V鋼およびその溶着金属のミクロ組織はベイナイト主体であり、そのクリープ変形挙動は主として、転位のクリープ拡散と、旧γ粒界および結晶粒内のベイナイトブロック・パケット・ラス境界のすべりが支配的とされている。前者の抑制には転位のクリープ拡散を阻害する微細な炭化物の結晶粒内への分散析出が有効である。一方で、後者の抑制には旧γ粒界におけるすべりを阻害する炭化物の分散析出、およびすべりサイトの低減、すなわちミクロ組織の粗大化が有効である。
【0011】
前記の(1)の実現には、結晶粒内に優先的に微細な炭化物を形成する合金元素の添加が有効であり、本願ではCおよびVに着目した。これらの合金元素は被覆アーク溶接棒を構成する心線および被覆剤の何れか一方から添加されても良いし、その両方から添加されても良い。
前記の(2)の実現には、旧γ粒界に優先的に炭化物を形成してすべりを阻害する合金元素の添加、および焼入れ性を低下させる合金元素の添加、あるいは焼入れ性を増加させる合金元素の低減が有効であり、本願ではCrおよびMnに着目した。特に、Crを適度に低減することで、熱処理時の微細な炭化物の結晶粒内への析出を促進し、この微細な炭化物のピン留め効果によってクリープ転位の拡散を抑制するという効果が得られることを見出した。これら合金元素の添加方法は上項と同様である。
【0012】
従来技術においては、本願のように、高強度2.25Cr−1Mo−V鋼用の溶着金属として、Crの低い範囲でクリープ破断強度が飛躍的に改善する、即ち、合金元素を低く抑えることでクリープ破断強度を改善したというような知見は一切示唆されていない。
さらに、従来技術において構成される何れの溶接材料も、クリープ特性について「PWHT条件:705℃×32h、クリープ破断試験条件:540℃/210MPa」という、今までに類を見ない厳しい直近の市場要求を満たすことはできない。
【0013】
本発明に係る被覆アーク溶接棒は、被覆アーク溶接棒全質量あたり、被覆剤中に、金属炭酸塩をCO換算値で5〜10質量%、アルカリ金属酸化物をアルカリ金属換算値で0.4〜2.0質量%、フッ素化合物をF換算値で1.0〜5.0質量%含み、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤に含まれる合金成分が、前記心線および前記被覆剤のいずれか一方に含まれる場合はいずれか一方の含有量で、両方に含まれる場合は両方の合計の含有量で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、C:0.04〜0.15質量%、Si:1.0〜1.5質量%、Mn:0.7〜1.2質量%、Cr:1.3〜1.9質量%、Mo:0.5〜1.0質量%、V:0.3〜0.5質量%、Nb:0.02〜0.06質量%、B:0.005〜0.015質量%、Mg:0.05〜0.15質量%、Fe:60〜75質量%含み、残部が不可避不純物であり、前記不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が0.10質量%以下であることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、被覆アーク溶接棒は、被覆剤中に金属炭酸塩を所定量含有することで、溶接ビードが保護されるとともに、アーク雰囲気中の水素分圧が下がり、溶着金属中の拡散性水素量が低減される。また、被覆剤中にアルカリ金属酸化物を所定量含有することで、被覆アーク溶接棒に良好な溶接作業性を付与する。また、被覆剤中にフッ素化合物を所定量含有することで、ビード形状を悪化させることなくフッ素化合物がスラグ形成剤として作用する。
さらに、被覆アーク溶接棒は、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤のいずれか一方または両方に所定の成分を所定量含有することで、溶接金属のクリープ破断性能、靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性や、溶接作業性が向上する。なお、溶接作業性とは、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ剥離性、ビードなじみ性、ビード外観などの観点に基づくものである。
【0015】
本発明に係る被覆アーク溶接棒は、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤に含まれる合金成分が、前記心線および前記被覆剤のいずれか一方に含まれる場合はいずれか一方の含有量で、両方に含まれる場合は両方の合計の含有量で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、C:0.05〜0.10質量%、Si:1.0〜1.3質量%、Mn:0.8〜1.2質量%、Cr:1.3〜1.9質量%、Mo:0.5〜1.0質量%、V:0.3〜0.5質量%、Nb:0.02〜0.06質量%、B:0.005〜0.015質量%、Mg:0.05〜0.10質量%、Fe:60〜75質量%含み、残部が不可避不純物であり、前記不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が0.10質量%以下であることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤のいずれか一方または両方に含有される成分範囲をさらに限定することで、溶接金属のクリープ破断性能、靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性や、溶接作業性がより向上しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る被覆アーク溶接棒によれば、クリープ破断性能、靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性に優れた溶接金属を得ることができる。また、本発明に係る被覆アーク溶接棒によれば、溶接作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に用いた溶接試験体の開先形を示す模式図である。
図2】本発明の実施例におけるPWHT条件を示すグラフである。
図3】本発明の実施例におけるステップクーリング処理条件を説明するグラフである。
図4】本発明の実施例における耐SR割れ性の評価において使用する試験片について説明するための模式図である。
図5】本発明の実施例における耐SR割れ性の評価のSR条件を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の被覆アーク溶接棒は、被覆アーク溶接棒全質量あたり、被覆剤中に、金属炭酸塩をCO換算値で5〜10質量%、アルカリ金属酸化物をアルカリ金属換算値で0.4〜2.0質量%、フッ素化合物をF換算値で1.0〜5.0質量%含むものである。
さらに、被覆アーク溶接棒は、被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤のいずれか一方または両方の合計で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Nb、B、Mg、Feを所定量含み、不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和を所定量以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和を所定量以下としたものである。
以下、各構成について説明する。
【0020】
[被覆アーク溶接棒全質量あたり、被覆剤中に、金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、フッ素化合物含む]
【0021】
<金属炭酸塩:CO換算値で5〜10質量>
金属炭酸塩はアーク熱によって金属酸化物とCOに分解する。そして前者はスラグを形成して溶接ビードを保護し、後者はアーク雰囲気中の水素分圧を下げて溶着金属中の拡散性水素量を低減させるため、被覆剤中に添加する。この金属炭酸塩はMgCOや、CaCO,BaCO,NaCOなど、特に限定されるものではない。しかしながら、その含有量が少なすぎるとスラグ生成量が不足してビード外観が劣化するだけでなく、溶着金属中の拡散性水素量が増加して低温割れ感受性が増加する。特に、本願が対象とする高強度2.25C−1Mo−V鋼の様な強度の高い鋼種に対して、溶着金属中の拡散性水素量の増加は施工上極めて大きな問題となる。一方、これらの金属炭酸塩を過剰に添加すると、溶融スラグの粘度が増加して溶融スラグが先行しやすくなるため、溶接ビードのなじみ性が悪化し、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥を誘発する。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりの金属炭酸塩の含有量は、CO換算値で換算して5〜10質量%とする。
【0022】
<アルカリ金属酸化物:アルカリ金属換算値で0.4〜2.0質量%>
アルカリ金属酸化物は被覆を形成するバインダの役割を果たし、また心線へと固着させるために被覆剤中に添加する水ガラス中に含有される。その化学的組成としてNaOやKO、LiO等が挙げられるが、これらアルカリ金属酸化物は被覆アーク溶接棒の溶接作業性にも影響を与える。これらアルカリ金属酸化物が少なすぎても多すぎても、即ち、水ガラス添加量が少なすぎても多すぎても溶接作業性、特にアーク安定性に悪影響を与える。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりの含有量は、アルカリ金属換算値で0.4〜2.0質量%とする。
【0023】
<フッ素化合物:F換算値で1.0〜5.0質量%>
フッ素化合物はスラグ形成剤として被覆剤に添加する。このフッ素化合物はBaFや、CaF,KF,NaF,AlFなどに代表される金属フッ化物だけでなく、KSiFやPTFEに代表される複合金属フッ化物や高分子重合体など、特に限定されるものではない。しかしながら、その含有量が少なすぎる、または多すぎてもビード形状を悪化させる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりの含有量は、F換算値で1.0〜5.0質量%とする。
【0024】
[被覆アーク溶接棒の心線および被覆剤のいずれか一方または両方の合計で、被覆アーク溶接棒全質量あたり、所定元素を所定量含む]
【0025】
<C:0.04〜0.15質量%>
Cは溶着金属の焼入れ性、および炭化物の析出形態に大きな影響を及ぼす。溶着金属中のC量が低いとベイナイト変態温度が高くなるため、ベイナイト組織が粗大化し、靭性および焼戻脆化特性を低下させる。また、炭化物の析出量が不十分となり、クリープ破断強度も低下する。一方で、C量が過剰に高くなると、炭化物の析出量が増加してクリープ強度が上昇する一方、析出する炭化物の粗大化が促進され、靭性および焼戻脆化特性が低下するだけでなく、高温割れや低温割れ、SR割れなどの各種割れ感受性を高める。また、アーク安定性が劣化する。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのC量は0.04〜0.15質量%とする。好ましくは0.05〜0.10質量%である。
【0026】
<Si:1.0〜1.5質量%>
Siは溶着金属の室温強度を確保すると同時に、溶着金属を脱酸・清浄化して靭性を向上させる効果がある。溶着金属中のSi量が低すぎるとそのクリープ強度が低下し、さらに溶着金属中の酸素量が増加して粗大な酸化物を形成するため、靭性を低下させる。また、ビードなじみ性、ビード外観が劣化する。一方で、過剰なSiの添加は焼戻脆化特性を劣化させる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのSi量は1.0〜1.5質量%とする。好ましくは1.0〜1.3質量%である。
【0027】
<Mn:0.7〜1.2質量%>
MnはCに次いで溶着金属のベイナイト変態温度を下げる元素であるため、Mnの添加によってベイナイト変態点を低下させて微細組織を形成し、靭性の向上を図ることができる。一方、ミクロ組織の微細化に伴うすべりサイトの増加により、そのクリープ強度の低下を招くという相反する効果がある。また、MnはSi同様、溶着金属を脱酸・清浄化してその靭性を向上させる一方、過剰な添加は焼戻脆化特性を低下させる。よって、溶着金属の靭性・焼戻脆化特性とクリープ破断強度の両立の観点から、被覆アーク溶接棒全質量あたりのMn量は0.7〜1.2質量%とする。好ましくは0.8〜1.2質量%である。
【0028】
<Cr:1.3〜1.9質量%>
Crは、Mo、Vとともに高強度2.25Cr−1Mo−V鋼の基本成分である。Crは旧γ粒界に優先的に炭化物を形成して室温強度、およびクリープ強度を向上させ、また、耐食性を向上させるために必要不可欠な成分である。本発明者らの研究により、Crの低下は微細な炭化物の析出を促進し、Crの増加は粗大な炭化物の析出を促進することが明らかとなっている。溶着金属中のCr量が少なすぎると、微細な炭化物が過剰に析出して靭性を低下させるだけでなく、耐SR割れ性も劣化させる。一方、Cr量が多くなると、析出する炭化物が粗大化して靭性およびクリープ強度を低下させるだけでなく、不純物の粒界偏析を促進して焼戻脆化特性および耐SR割れ性を劣化させる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのCr量は1.3〜1.9質量%とする。
【0029】
<Mo:0.5〜1.0質量%>
Moは、Cr、Vとともに高強度2.25Cr−1Mo−V鋼の基本成分である。Moは炭化物を形成するとともに母相中に固溶して、その室温強度・クリープ破断強度を向上させる。溶着金属中のMo量が少なすぎると、炭化物析出量、および母相中への固溶量が不足してクリープ破断強度を低下させる。一方、Mo量が多くなると、炭化物量、および母相中への固溶量が過剰に増加して強度が著しく増加し、靭性を劣化させる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのMo量は0.5〜1.0質量%とする。
【0030】
<V:0.3〜0.5質量%>
Vは、Cr、Moとともに高強度2.25Cr−1Mo−V鋼の基本成分である。Vは微細な炭化物を形成することで転位のクリープ拡散を阻害し、室温強度・クリープ破断強度を向上させる。溶着金属中のV量が少なすぎると炭化物の析出量が不足してクリープ破断強度を低下させる。一方、V量が多くなると、炭化物の析出量が過剰に増加し、靭性、焼戻脆化特性および耐SR割れ性を低下させる。また、アーク安定性、スパッタ発生量およびビード外観が劣化する。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのV量は0.3〜0.5質量%とする。
【0031】
<Nb:0.02〜0.06質量%>
Nbは、V同様、微細炭化物の形成傾向が強く、クリープ強度を向上させる。溶着金属中のNb量が少なすぎると、炭化物の析出量が不足してクリープ強度を低下させる。一方、Nb量が多くなると、炭化物の析出量が過剰に増加し、靭性、焼戻脆化特性および耐SR割れ性を低下させる。また、スパッタ発生量が増加する。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのNb量は0.02〜0.06質量%とする。
【0032】
<B:0.005〜0.015質量%>
Bは微量な添加で溶着金属の焼入れ性を高め、その組織を微細化して靭性を向上させるとともに、クリープ強度をも向上させる効果がある。溶着金属中のB量が少なすぎると、組織が粗大化して靭性が低下し、またクリープ破断強度も低下する。一方、B量が多くなると、耐SR割れ性を著しく低下させる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのB量は0.005〜0.015質量%とする。
【0033】
<Mg:0.05〜0.15質量%>
Mgは溶着金属を脱酸・清浄化して靭性を向上させるとともに、溶接時のアーク安定性・再アーク性を向上させる。溶着金属中のMg量が少なすぎると、溶着金属中の酸素量が増加して粗大な酸化物を形成し、その靭性が低下するとともに、アーク安定性およびスパッタ発生量が不良となる。一方、Mg量が多くなってもアーク安定性、スパッタ発生量およびビード外観が不良となる。よって、被覆アーク溶接棒全質量あたりのMg量は0.05〜0.15質量%とする。好ましくは0.05〜0.10質量%である。
【0034】
<Fe:60〜75質量%>
Feは溶着金属を構成する主成分であり、主として被覆アーク溶接棒の心線より添加されるが、被覆剤から添加されてもよい。特に、被覆剤から鉄粉あるいは合金鉄の形で添加することで、溶着効率を高めることが出来る。その添加量が少なすぎても多すぎても、他の合金成分の添加効果が十分に得られないため、被覆アーク溶接棒全質量あたりのFe量は60〜75質量%とする。またFeはその添加量が60質量%未満であると、スラグ剥離性およびビード外観が劣化する。
【0035】
<不可避不純物>
本発明においては、不可避不純物として、Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%以下、S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が0.10質量%以下である。
【0036】
Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWは固溶強化元素、あるいは炭窒化物形成元素として溶着金属の高強度化に寄与する。しかしながら、本願における溶接材料の設計上、これらの元素は不可避不純物として溶着金属中に存在し、主要合金成分の添加効果を阻害する。よって、これらの総和は0.10質量%以下とする。なお、下限値としては特に規定されるものではないが、測定限界として例えば0.03質量%である。
Cu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が0.10質量%を超えるとスパッタ発生量が増加する。更に1.00質量%を超えるとアーク安定性も劣化する。
【0037】
S,Sn,As,Sb,Pb,およびBiは不可避不純物として溶着金属中に存在し、結晶粒界強度を低下させ、焼戻脆化特性や耐SR割れ性を劣化させる。よって、これらの総和は0.10質量%以下とする。なお、下限値としては特に規定されるものではないが、測定限界として例えば0.01質量%である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の効果を説明するために、本発明の範囲に入る実施例と、本発明の範囲から外れる比較例とを比較して説明する。
【0039】
[被覆アーク溶接棒の化学成分]
被覆アーク溶接棒は中実の心線および被覆剤にて構成し、被覆剤の質量(=被覆率)は被覆アーク溶接棒全質量に対して25〜40質量%とした。被覆アーク溶接棒の化学組成を表1、2に示す。なお、本発明の範囲を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
[溶接条件]
本願の実施例に用いた溶接試験体の開先形状を図1(a)に示す。試験板にはASTM A387. Gr.22鋼などの2.25Cr−1Mo鋼や、図1(b)に示すように、開先面を供試材で2〜3層程度バタリング溶接を実施したJIS G3106 SM490A鋼などの炭素鋼を用いても良い。何れの試験板を用いても試験結果は同一であるから、本願の実施例においては共金系であるASTM A387 Gr.22 Cl.2鋼を用いた。試験板・バッキング板の板厚は20mm、開先形状は20°V開先、ルートギャップは19mmとした。溶接長は300mm〜600mmとして1層2パスの振り分け溶接を実施し、その積層数は8層仕上げとした。
【0043】
次に、溶接試験時の溶接条件を表3に示す。被覆アーク溶接棒を用いた溶接時の電源極性はAC、もしくはDCEPが一般的である。しかしながら、本願における溶接試験では何れの電源極性を用いても溶着金属の性能は同等であったので、実施例中には全てAC電源による試験結果を記載した。また、Cr−Mo鋼用被覆アーク溶接棒の心線径は2.6、3.2、4.0、5.0および6.0mmφが一般的である。しかしながら、本願における溶接試験では何れの心線径の被覆アーク溶接棒を用いても溶着金属の性能は同等であったので、実施例中には全て5.0mmφの心線径の被覆アーク溶接棒による試験結果を記載した。さらに、溶接姿勢は下向として溶接試験を行った。
【0044】
【表3】
【0045】
[PWHT]
溶接試験材に施工した各種PWHT条件を図2に示す。PWHTの強弱はLarson−Miller(ラーソン・ミラー)の熱処理パラメータ(以下[P]と略記)の概念を導入することで、定量化することができる。[P]は下式1にて表され、式中のTはPWHT温度(℃)、tはPWHT時間(h)を表す。

[P]=(T+273)×(20+logt)×10−3 ・・・(式1)
【0046】
すなわち、PWHT温度が高いほど、また、PWHT時間が長いほど[P]が大きくなり、溶着金属はより焼きなまされる。特に、Cr−Mo鋼に代表される低合金耐熱鋼の強度を確保するのに大きな役割を果たす炭窒化物の凝集・粗大化が進行するため、その強度は低下する。一方で、[P]が大きくなり、溶着金属の強度が低下することでその靭性は反比例的に向上する。しかしながら、炭窒化物の凝集・粗大化が過剰に進行すると、これら粗大炭窒化物が脆性破壊の起点として作用し、逆に靭性が劣化する場合もある。また、強度および靭性の増減傾向は[P]に対してほぼ線形的であり、クリープ破断強度に代表される高温強度も同様の傾向を示す。
【0047】
本願で対象とするPWHT条件は(1)705(±15)℃×8(±1)h、および(2)705(±15)℃×32(±1)hであり、その[P]の範囲はそれぞれ(1)20.07〜20.81、および(2)20.70〜21.37となる。
【0048】
また、溶着金属の焼戻脆化特性を評価するに際しては、後述のStep cooling(ステップクーリング(S.C.)、図3)と呼ばれる、特殊な脆化促進熱処理を施した試験材を用いた。
ここで、
Min.PWHT(703℃×8h):シャルピー衝撃試験(図2の(a)条件)
Min.PWHT(703℃×8h)+S.C.:シャルピー衝撃試験(焼戻脆化特性評価用)
Max.PWHT(708℃×32h):クリープ破断試験(図2の(b)条件)
である。
【0049】
<ステップクーリング>
次に、ステップクーリングについて説明する。図3に、ステップクーリングの処理条件を説明するための、縦軸を温度、横軸を時間とするグラフを示す。図3に示すように、ステップクーリングは、供試材を加熱し、供試材の温度が300℃を超えると、昇温速度が50℃/h以下となるように加熱条件を調整して、供試材の温度が593℃に到達するまで加熱した。そして、593℃で1時間保持した後、冷却速度6℃/hで538℃まで供試材を冷却して15時間保持し、同冷却速度で523℃まで冷却して24時間保持、さらに同冷却速度で495℃まで冷却して60時間保持した。次に、冷却速度3℃/hで468℃まで供試材を冷却して100時間保持した。そして、供試材の温度が300℃以下になるまで、冷却速度が28℃/h以下となるように供試材を冷却した。なお、この処理において、供試材の温度が300℃以下の温度域では、昇温速度および冷却速度は規定しない。
【0050】
[靭性・焼戻脆化特性(シャルピー衝撃試験)]
溶着金属の靭性・焼戻脆化特性を評価するに際して、PWHT条件を703℃×8h、および703℃×8h+ステップクーリングとした両試験材からISO 148−1準拠の2mm−Vノッチのシャルピー衝撃試験片を採取し、20、0、−18、−30、−50、−70、−90℃の各温度で3本ずつシャルピー衝撃試験を実施した。次に、各温度における試験値を潤滑に通過する相互の遷移曲線から、54Jを示すシャルピー遷移温度(以下vTr54およびvTr’54と表記)を決定、ステップクーリングによるvTr54の変動量(=vTr’54−vTr54、以下ΔvTr54と表記)を脆化量として算出した。
【0051】
溶接金属の焼戻脆化感受性はvTr54、およびΔvTr54の両者から総合的に判断される。ここで、vTr54にΔvTr54を3倍した値を加えた値(=vTr54+3ΔvTr54)を焼戻脆化特性値と定義した。これは、ステップクーリングが加速試験であり、実機稼動年数が数十年であることを考慮し、実機溶着金属においてはステップクーリングによる脆化量の3倍の脆化を起こすものと見なし、長期間の稼動を経た溶着金属が54Jを示すシャルピー遷移温度を概算するためのもので、ΔvTr54の係数(本願の場合、3)も、クリープ性能と同じく、1.5→2.0→2.5→3.0と年々厳化する傾向にあり、係数3は実質至近の要求において最も厳しいものである。脆化量(=ΔvTr54)が小さくても、vTr54が大きい場合はvTr54+3ΔvTr54も大きくなるため、高位に安定した溶接品質が求められる当該溶着金属の適用箇所として好ましくない。一方、PWHT後の靭性(=vTr54)が優れていても、脆化量(=ΔvTR54)が大きい場合はやはりvTr54+3ΔvTr54が大きくなり、同様の理由で好ましくない。
【0052】
本実施例において、靭性は−30℃における衝撃値の3点平均(以下vE−30℃と表記)が100J以上のものを◎、80J以上100J未満のものを○、80J未満のものを×と評価した。
脆化量に関しては、ΔvTr54が5℃以下のものを◎、5℃を超え11℃未満のものを○、11℃以上のものを×と評価した。
焼戻脆化特性値に関しては、vTr54+3ΔvTr54が−30℃以下のものを◎、−30℃を超え0℃以下のものを○、0℃を超えるものを×と評価した。
【0053】
ここで、
vTr54:PWHT後に54Jを示すシャルピー遷移温度(℃)
vTr’54:PWHT+ステップクーリング後に54Jを示すシャルピー遷移温度(℃)
ΔvTr54(=vTr’54−vTr54):ステップクーリングによる脆化量(℃)
vTr54+3ΔvTr54:焼戻脆化特性(℃)
である。
【0054】
[クリープ破断試験]
PWHT条件を708℃×32hとした溶接試験材よりISO 204準拠のクリープ破断試験片を採取し、試験温度を540℃、負荷応力を210MPaとしてクリープ破断試験を実施し、その破断時間を調査した。本実施例において、破断時間(以下Trと表記)が1500h以上のものを◎、1500h未満1000h以上のものを○、1000h未満のものを×と評価した。
【0055】
[耐SR割れ性評価試験(リング割れ試験)]
Cr−Mo鋼を初めとした低合金耐熱鋼製圧力容器の製作時には、PWHTの施工以前に、製作中の構造物の残留応力低減を主たる目的として、しばしばSR(Stress relief:応力除去焼鈍)が施工される。このSR時に旧γ粒界において発生するのがSR割れである。SR割れは、SRによる結晶粒内における炭化物の析出、および旧γ粒界における不純物の偏析の二者が重畳することによって結晶粒内と旧γ粒界界面に過剰な強度差が生じ、相対的に弱化した旧γ粒界が残留応力に抗し切れなくなることで発生する。
【0056】
本願における溶着金属の耐SR割れ性評価には、リング割れ試験と呼ばれる試験方法を適用した。U溝(Uノッチ)およびスリット(スリット幅:0.3mm)を有したリング状試験片を溶接ままの溶接試験材の図4(a)に示す位置(=Uノッチ直下が最終パス原質部となる位置)より採取した。試験数は2個である。試験片の形状を図4(b)に示す。
図4(c)に示すように、スリットを約0.05mmまでかしめた状態でスリットをTIG溶接して、U溝直下に残留応力を負荷した。次に、TIG溶接後の試験片に図5に示す条件のSR(625℃×10h)を実施した後、図4(d)に示すように、試験片を長手方向に3分割し、各断面のノッチ直下を観察して、旧γ粒界におけるSR発生の有無を観察した。観察を行なった6断面(=観察面3×試験数2)中、SR割れの発生が見られないものを◎、SR割れ発生個数が1〜2断面のものを○、3断面以上のものを×と評価した。
【0057】
[溶接作業性]
表2に示す溶接条件下で溶接試験を実施した際の溶接作業性を官能的に評価した。第一に、「アーク安定性」について、アークのバタツキ傾向が弱いものを◎、やや弱いものを○、強いものを×と評価した。第二に、「スパッタ発生量」について、スパッタ発生傾向が弱いものを◎、やや弱いものを○、強いものを×と評価した。第三に、「スラグ剥離性」について、スラグ剥離が容易なものを◎、比較的容易なものを○、困難なものを×と評価した。第四に、「ビードなじみ性」について、ビード止端へのスラグ巻き込み傾向がきわめて弱いものを◎、弱いものを○、強いものを×と評価した。第五に、「ビード外観」について、ビードの波目がきわめて美麗で平滑であるものを◎、美麗で平滑であるものを○、波目が粗く凹凸が激しいものを×と評価した。
これらの結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、No.1〜10は本発明の範囲を満たすため、すべての評価項目において良好な結果が得られた。
一方、No.11〜40は、本発明の範囲を満たさないため、以下の結果となった。
【0060】
No.11〜16は、金属炭酸塩をCO換算値、アルカリ金属酸化物をアルカリ金属換算値、フッ素化合物をF換算値のいずれかが本発明の範囲を外れるため、溶接作業性に劣った。No.17はC含有量が下限値未満のため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.18はC含有量が上限値を超えるため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、耐SR割れ性、溶接作業性の評価が悪かった。
【0061】
No.19はSi含有量が下限値未満のため、靭性、脆化量、クリープ破断性能、溶接作業性の評価が悪かった。No.20はSi含有量が上限値を超えるため、脆化量、焼戻脆化特性の評価が悪かった。No.21はMn含有量が下限値未満のため、靭性の評価が悪かった。No.22はMn含有量が上限値を超えるため、脆化量、焼戻脆化特性、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.23はCr含有量が下限値未満のため、靭性、耐SR割れ性の評価が悪かった。No.24はCr含有量が上限値を超えるため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、クリープ破断性能、耐SR割れ性の評価が悪かった。
【0062】
No.25はMo含有量が下限値未満のため、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.26はMo含有量が上限値を超えるため、靭性の評価が悪かった。No.27はV含有量が下限値未満のため、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.28はV含有量が上限値を超えるため、靭性、焼戻脆化特性、耐SR割れ性、溶接作業性の評価が悪かった。No.29はNb含有量が下限値未満のため、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.30はNb含有量が上限値を超えるため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、耐SR割れ性、溶接作業性の評価が悪かった。
【0063】
No.31はB含有量が下限値未満のため、靭性、クリープ破断性能の評価が悪かった。No.32はB含有量が上限値を超えるため、耐SR割れ性の評価が悪かった。No.33はMg含有量が下限値未満のため、靭性、溶接作業性の評価が悪かった。No.34はMg含有量が上限値を超えるため、溶接作業性の評価が悪かった。No.35はFe含有量が下限値未満のため、靭性、焼戻脆化特性、クリープ破断性能、溶接作業性の評価が悪かった。No.36はFe含有量が上限値を超えるため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、クリープ破断性能の評価が悪かった。
【0064】
No.37はCu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が上限値を超えるため、靭性、クリープ破断性能、溶接作業性の評価が悪かった。No.38はCu,Ni,Ti,Al,Ta,Co,およびWの総和が上限値を超えるため、靭性、脆化量、焼戻脆化特性、クリープ破断性能、耐SR割れ性、溶接作業性の評価が悪かった。No.39はS,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が上限値を超えるため脆化量、焼戻脆化特性、耐SR割れ性の評価が悪かった。No.40はS,Sn,As,Sb,Pb,およびBiの総和が上限値を超えるため、脆化量、焼戻脆化特性、耐SR割れ性の評価が悪かった。
【0065】
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5