(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷感を感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置では、便座の昇温の迅速性や、省エネルギー化などを図るために種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、誘導加熱の原理を利用し、使用者がトイレ室に入ってから便座に着座するまでの短時間で便座の温度を急速に上昇させる暖房便座が提案されている。誘導加熱では、加熱対象である導体付近に置かれた誘導加熱コイルに高周波電流を流すことにより高周波で変化する磁界が発生し、その導電体を通過する磁界が変化することで生ずる渦電流により導電体が発熱する。このような暖房便座のうち、便座を周回するように誘導加熱コイルを巻いた構造が知られている。
【0004】
しかしながら、便座を周回するように誘導加熱コイルを巻いた構造では、便座において温度むらが生ずるという問題がある。すなわち、便座は、一般的に楕円形状を有する。便座の形状については、例えば、座り心地や、耐荷重性や、排泄の際の防汚性や、トイレ室内の空間の確保などが考慮されている。そのため、便座の前方部および後方部の座面の幅は、便座の中央部の座面の幅よりも狭い。そのため、便座の前方部および後方部に誘導加熱コイルを配置できるスペースは、便座の中央部に誘導加熱コイルを配置できるスペースよりも狭い。
【0005】
これによれば、便座の前方部および後方部における誘導加熱コイル同士の間隔は、便座の中央部における誘導加熱コイル同士の間隔よりも狭い。そして、便座の前方部および後方部では、便座の中央部と比較して、誘導加熱コイルが密集する。そのため、便座の前方部および後方部では、便座の中央部と比較して、導電体の位置での磁束密度が集中し強くなる。これにより、便座の前方部および後方部では、便座の中央部と比較して、渦電流が集中し、発熱量が増加する。つまり、座面の幅がより狭い前方部および後方部における誘導加熱の出力は、便座の中央部における誘導加熱の出力よりも高くなる。そして、便座の前方部および後方部の温度は、例えば便座の中央部などの他の部分の温度よりも高くなる。つまり、便座において温度むらが生ずる場合がある。
【0006】
これに対して、発熱体の発熱量を均等化し、発熱体が設けられる設備や機器の表面形状が平坦でなくても、表面温度を均一にすることができる暖房装置がある(特許文献1)。また、便座表面温度の均一化または調節を可能とする暖房便座装置がある(特許文献2)。しかしながら、特許文献1に記載された暖房装置および特許文献2に記載された暖房便座装置では、便座を複数の誘導コイルで加熱するため、それぞれの誘導コイルは、便座よりも小さくなる。その複数の誘導コイルが発生する磁界は、互いに干渉し合う。そのため、発熱体の位置での磁束密度が弱くなる部分と、発熱体の位置での磁束密度が強くなる部分と、が存在する。これにより、磁束密度が弱くなる部分と磁束密度が強くなる部分との間において、便座内に複数の小さな温度むらが生ずるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、
図2は、本実施形態の便座を表す模式図である。
なお、
図2(a)は、本実施形態の便座を上方から眺めた平面模式図であり、
図2(b)は、
図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0025】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0026】
図2(a)に表したように、便座200を上方からみたときに、便座200は、略楕円形状を有する。便座200は、真円形状を有しているわけではない。
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0027】
便座200の筐体210の内部には、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222が設けられている。
図2に表した便座200では、誘導加熱コイル222は、便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていている。
図2(a)に表したように、誘導加熱コイル222は、便座200の形状に沿って周回するように配置されている。誘導加熱コイル222の設置形態については、後に詳述する。
【0028】
便座200には、誘導加熱コイル222から発生した磁界により誘導加熱される導電体(発熱体)231が設けられている。より具体的には、導電体231は、導電性材料により形成され、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に、例えばインサート成型等の手段により設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。つまり、導電体231は、誘導加熱コイル222からみて便座200の着座面の側に配置されている。
【0029】
導電体231としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、アルミニウムなどの常磁性体、または銅などの反磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0030】
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より速く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0031】
図3は、本実施形態の便座を表す斜視模式図である。
また、
図4は、本実施形態の便座を表す断面模式図である。
また、
図5は、本実施形態の比較例にかかる便座を上方から眺めた平面模式図である。 また、
図6は、本実施形態の比較例にかかる便座を表す断面模式図である。
【0032】
なお、
図4(a)は、
図3に表した便座200の前方部の切断面B−Bにおける断面模式図である。
図4(b)は、
図3に表した便座200の中央部の切断面C−Cおける断面模式図である。
図4(c)は、
図3に表した便座200の後方部の切断面D−Dにおける断面模式図である。
【0033】
図5(a)は、本実施形態の比較例にかかる便座を上方から眺めた平面模式図である。
図5(b)は、誘導加熱コイル222を省略して本比較例の便座を上方から眺めた平面模式図である。
図5(c)は、本比較例の便座に配置された誘導加熱コイル222を表す平面模式図である。
【0034】
図6(a)は、
図5(a)に表した便座200aの前方部の切断面E−Eにおける断面模式図である。
図6(b)は、
図5(a)に表した便座200aの中央部の切断面F−Fおける断面模式図である。
図6(c)は、
図5(a)に表した便座200aの後方部の切断面G−Gにおける断面模式図である。
【0035】
本願明細書において、便座200の「前方部」とは、
図3に表したように、使用者が便座200に着座したときに使用者の前方側の両膝の間の空間となり、使用者の身体が接触しにくい範囲205をいうものとする。また、本願明細書において、便座200の「後方部」とは、
図3に表したように、使用者が便座200に着座したときに使用者の後方側の空間となり、使用者の身体が接触しにくい範囲206をいうものとする。便座200の後方部においては、使用者の体型や座りかたによって臀部が触れる場合もあり、触れない場合もある。また、本願明細書において、便座200の「中央部」とは、
図3に表したように、使用者が便座200に着座したときに腿から臀部が便座200に乗って体重を支える範囲であって、使用者の身体が主に接触する範囲207をいうものとする。
【0036】
まず、
図5および
図6を参照しつつ、本実施形態の比較例にかかる便座200aについて説明する。
本比較例の便座200aでは、誘導加熱コイル222は、便座200aの形状に沿って周回するように配置されている。また、本比較例の便座200aは、本実施形態の便座200と同様に、上方からみたときに略楕円形状を有する。
【0037】
便座の形状については、例えば、座り心地や、耐荷重性や、排泄の際の防汚性や、トイレ室内の空間の確保などが考慮されている。そのため、
図5(a)、
図5(b)、および
図6(a)〜
図6(c)に表したように、便座200aの前方部および後方部の座面の幅は、便座200aの中央部の座面の幅よりも狭い。そのため、便座200aの前方部および後方部に誘導加熱コイル222を配置できるスペースは、便座200aの中央部に誘導加熱コイル222を配置できるスペースよりも狭い。
【0038】
これによれば、
図5(c)に表したように、便座200aの前方部および後方部における誘導加熱コイル222同士の間隔は、便座200aの中央部における誘導加熱コイル222同士の間隔よりも狭い。そして、便座200aの前方部および後方部では、便座200aの中央部と比較して、誘導加熱コイル222が密集する。そのため、便座200aの前方部および後方部では、便座200aの中央部と比較して、導電体231の位置での磁束密度が集中し強くなる。これにより、便座200aの前方部および後方部では、便座200aの中央部と比較して、渦電流が集中し、発熱量が増加する。つまり、便座200aの幅がより狭い前方部および後方部における誘導加熱の出力は、便座200aの中央部における誘導加熱の出力よりも高くなる。そして、便座200aの前方部および後方部の温度は、例えば便座200aの中央部などの他の部分の温度よりも高くなる。つまり、便座200aにおいて、温度むらが生ずる場合がある。
【0039】
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、導電体231の位置での磁束密度は、便座200の前方部、後方部、および中央部において略同一である。言い換えれば、導電体231の位置での磁束密度は、便座200の全周にわたって略同一である。
【0040】
これによれば、便座200の前方部、後方部、中央部、および側面部を略均一に加熱することができる。そのため、温度むらを抑えた、あるいは温度むらのない快適な暖房便座装置を提供することができる。
なお、本願明細書において、「温度むらを抑えた」状態および「温度むらのない」状態とは、便座200の幅の中央線203(
図2(a)参照)における温度差が±3℃以下である状態をいうものとする。そのため、本願明細書において、「同一」および「均一」とは、便座200の幅の中央線203における温度差を±3℃以下とすることができる程度に、磁束密度が同一であること、あるいは加熱量が均一であることをいうものとする。
【0041】
また、
図1および
図2に関して前述したように、本実施形態の便座200では、誘導加熱コイル222は、便座200の形状に沿って周回するように配置されている。そのため、誘導加熱コイル222が発生する磁界同士が互いに干渉し合うことはない。つまり、導電体231の位置での磁束密度が弱くなる部分と、導電体231の位置での磁束密度が強くなる部分と、が存在することはない。
【0042】
また、便座200の幅をより有効に利用して誘導加熱コイル222を配置することができる。そのため、より太い外形を有する線をより多くの巻き数で配置することができる。ここでいう「線」とは、例えば個々に絶縁された複数の導体素線を撚り合わせた構造を有するリッツ線などである。これにより、より高出力の誘導加熱を行うことができる。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、より高い昇温性能を発揮することができ、便座200の温度をより短時間で快適な温度にすることができる。また、使用者にとって、快適な暖房便座装置100を提供することができるとともに、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0043】
具体的には、
図3、
図4(a)、および
図4(c)に表したように、本実施形態の便座200では、前方部および後方部の導電体231は、着座面だけではなく便座200の側面にまで延在し配置されている。また、前方部および後方部の誘導加熱コイル222は、導電体231の設置形態と同様に、着座面の下方だけではなく便座200の側面にまで配置されている。
なお、
図4に表したように便座断面をみたときの導電体231の幅は、便座200の前方部、後方部、および中央部の何れにおいても略同じ幅となることが望ましい。
一方、
図3および
図4(b)に表したように、本実施形態の便座200では、中央部の導電体231は、着座面に配置されている。また、中央部の誘導加熱コイル222は、着座面の下方に設けられている。
【0044】
これによれば、便座200の前方部、後方部、および中央部において、導電体231の位置での磁束密度を略同一とすることができる。つまり、便座200の前方部、後方部、中央部、および側面部を略均一に加熱することができる。そのため、温度むらを抑えた、あるいは温度むらのない快適な暖房便座装置を提供することができる。また、便座の前方部および後方部は高温にはならないのでその配慮が不要となり、便座200の中央部に合わせた温度調整を行い、便座200の温度をより短時間で設定温度に昇温することができる。また、使用者にとって、快適な暖房便座装置100を提供することができるとともに、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0045】
次に、誘導加熱コイル222の他の設置形態について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の誘導加熱コイルの他の設置形態を説明するための平面模式図である。
また、
図8は、本実施形態の誘導加熱コイルの他の設置形態を説明するための断面模式図である。
【0046】
なお、
図7(a)は、本実施形態の便座を上方から眺めた平面模式図である。
図7(b)は、本実施形態の便座を右側方から眺めた平面模式図である。
図8(a)は、
図7(a)に表した便座200の前方部の切断面H−Hにおける断面模式図である。
図8(b)は、
図7(a)に表した便座200の中央部の切断面I−Iおける断面模式図である。
図8(c)は、
図7(a)に表した便座200の後方部の切断面J−Jにおける断面模式図である。
【0047】
図7(b)、
図8(a)、および
図8(c)に表したように、本設置形態では、前方部および後方部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離は、中央部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離と異なっている。具体的には、前方部および後方部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離は、中央部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離よりも離れている。導電体231の設置形態は、
図3および
図4に関して前述した導電体231の設置形態と同様である。
【0048】
これによれば、便座200の前方部および後方部では、便座200の中央部と比較して、誘導加熱コイル222が密集する一方で、導電体231と誘導加熱コイル222との距離を離すことによって磁束密度を調整することができる。つまり、便座200の前方部、後方部、および中央部において、導電体231の位置での磁束密度を略同一とすることができる。これにより、温度むらを抑えた、あるいは温度むらのない快適な暖房便座装置を提供することができる。
【0049】
また、前方部および後方部の誘導加熱コイル222を便座200の側面にまで配置する必要はない。そのため、誘導加熱コイル222の設置形態をより簡略化することができる。
【0050】
図9は、本実施形態の誘導加熱コイルのさらに他の設置形態を説明するための平面模式図である。
また、
図10は、本実施形態の誘導加熱コイルのさらに他の設置形態を説明するための断面模式図である。
【0051】
なお、
図9(a)は、本実施形態の便座を上方から眺めた平面模式図である。
図9(b)は、本実施形態の便座を右側方から眺めた平面模式図である。
図10(a)は、
図9(a)に表した便座200の前方部の切断面K−Kにおける断面模式図である。
図10(b)は、
図9(a)に表した便座200の中央部の切断面L−Lおける断面模式図である。
図10(c)は、
図9(a)に表した便座200の後方部の切断面M−Mにおける断面模式図である。
【0052】
本設置形態では、誘導加熱コイル222は、第1の誘導加熱コイル222aと、第2の誘導加熱コイル222bと、を有する。
図9(b)、および
図10に表したように、前方部および後方部の第1の誘導加熱コイル222aと導電体231との距離は、中央部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離と略同じである。一方、前方部および後方部の第2の誘導加熱コイル222bと導電体231との距離は、中央部の誘導加熱コイル222と導電体231との距離よりも離れている。つまり、便座200の前方部および後方部では、第2の誘導加熱コイル222bは、第1の誘導加熱コイル222aと比較して、導電体231から離れた位置に設けられている。導電体231の設置形態は、
図3および
図4に関して前述した導電体231の設置形態と同様である。
【0053】
これによれば、便座200の内部の空間を有効に利用して導電体231の位置での磁束密度をより容易に調整することができる。すなわち、便座200の内部に設けられた誘導加熱コイル222を、導電体231からみて相対的に近い位置に設けられた第1の誘導加熱コイル222aと、導電体231からみて相対的に遠い位置に設けられた第2の誘導加熱コイル222bと、に分けることで、導電体231の位置での磁束密度をより容易に調整することができる。
【0054】
ここで、前方部および後方部のそれぞれの誘導加熱コイルの役割について説明する。第1の誘導加熱コイル222aは、第2の誘導加熱コイル222bと比較して、導電体231に近い位置に設けられ、第1の誘導加熱コイル222aの各線の配置に対応して導電体231に誘導磁界を与える。このとき、前方部および後方部の第1の誘導加熱コイル222aの密度は、中央部の第1の誘導加熱コイル222aの密度よりも低い。そのため、前方部および後方部の第1の誘導加熱コイル222aから発生する磁界は、均一ではあるが、強度的に弱い磁界となる。
一方、第2の誘導加熱コイル222bは、第1の誘導加熱コイル222aと比較して、導電体231から遠い位置に設けられ、導電体231の広範囲に誘導磁界を与える。
よって、第1の誘導加熱コイル222aは、磁界の分布形状を整える役割を有する。一方で、第2の誘導加熱コイル222bは、磁界強度を底上げしてレベル調整する役割を有する。
【0055】
図11は、本実施形態の誘導加熱コイルのさらに他の設置形態を説明するための断面模式図である。
図11(a)は、
図3に表した便座200の前方部の切断面B−Bにおける断面模式図に相当する。
図11(b)は、
図3に表した便座200の中央部の切断面C−Cおける断面模式図に相当する。
図11(c)は、
図3に表した便座200の後方部の切断面D−Dにおける断面模式図に相当する。
【0056】
本設置形態では、前方部および後方部の誘導加熱コイル222は、便座200の側面にまでは配置されていない一方で、前方部および後方部の誘導加熱コイル222と、導電体231と、の間に磁性体233が配置されている。磁性体233は、例えばフェライトやステンレスなどを含み、誘導加熱コイル222と導電体231との磁気結合を抑えることができる。つまり、磁性体233は、導電体231の位置での磁束密度を低減することができる。導電体231の設置形態は、
図3および
図4に関して前述した導電体231の設置形態と同様である。
【0057】
これによれば、便座200の前方部および後方部などのような比較的狭い空間において誘導加熱コイル222や導電体231などの配置により導電体231の位置での磁束密度を調整すると、便座200の製造の手間がかかる場合がある。これに対して、本設置形態によれば、前方部および後方部の誘導加熱コイル222と、導電体231と、の間に磁性体233が配置されたことで、導電体231の位置での磁束密度をより簡易的に低減することができる。これにより、より簡易的な構造で、便座200の前方部、後方部、および中央部において、導電体231の位置での磁束密度を略同一とすることができる。
なお、磁性体233に渦電流が流れると、磁性体233が発熱する。そのため、磁性体233の材料としてステンレスなどの導体を使用する場合には、誘導加熱コイル222と直交する方向に磁性体233を切り離し、断片化したものを使用することが望ましい。
【0058】
図12は、本実施形態の誘導加熱コイルのさらに他の設置形態を説明するための断面模式図である。
図12(a)は、
図9(a)に表した便座200の前方部の切断面K−Kにおける断面模式図に相当する。
図12(b)は、
図9(a)に表した便座200の中央部の切断面L−Lおける断面模式図に相当する。
図12(c)は、
図9(a)に表した便座200の後方部の切断面M−Mにおける断面模式図に相当する。
【0059】
図12に表した誘導加熱コイルの設置形態では、
図9および
図10に関して前述した設置形態に対して、便座200の前方部および後方部において、第1の誘導加熱コイル222aと、第2の誘導加熱コイル222bと、の間に磁性体233が配置されている。
図12に表した誘導加熱コイル222の設置形態は、前方部および後方部の誘導加熱コイル222と、導電体231と、の間に磁性体233が配置された形態という範囲に含まれる。磁性体233は、
図11に関して前述した如くである。導電体231の設置形態は、
図3および
図4に関して前述した導電体231の設置形態と同様である。
【0060】
これによれば、磁性体233を設置することで導電体231の位置での磁束密度を低減することができるため、磁性体233を設置しない場合と比較して第2の誘導加熱コイル222bを導電体231に近づけることができる。そのため、便座200の薄型化を図りつつ、便座200の前方部、後方部、および中央部において、導電体231の位置での磁束密度を略同一とすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや導電体231や誘導加熱コイル222の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。