特許第5928786号(P5928786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928786
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】運行情報記録装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20160519BHJP
   G07C 1/00 20060101ALI20160519BHJP
   G01C 21/26 20060101ALN20160519BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G07C1/00 Z
   !G01C21/26 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-32695(P2012-32695)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-171297(P2013-171297A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】坂野 淳
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−128918(JP,A)
【文献】 特開2011−221802(JP,A)
【文献】 特開2004−326647(JP,A)
【文献】 特開2005−339181(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0191413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G07C 1/00−15/00
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運行状況を示す運行情報が記録される運行情報記憶手段と、
前記運行情報の変更又は記録に係る操作が入力される複数の操作スイッチと、
前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
操作入力許可位置範囲と入力を許可する操作スイッチとの関係を示す操作入力許可位置範囲情報を参照して、前記現在位置検出手段によって検出された前記現在位置が前記操作入力許可位置範囲に含まれるか否かを操作スイッチ毎に判定し、含まれると判定された操作スイッチを有効と設定する位置判定手段と、
操作が入力された操作スイッチが有効と設定されているとき、当該操作を有効と判定し、操作が入力された操作スイッチが有効と設定されていないとき、当該操作を無効と判定する操作判定手段と、
前記操作判定手段によって前記操作が有効と判定されたとき、当該操作に対応する前記運行情報の変更又は記録に係る動作を行い、かつ、前記操作が無効と判定されたとき、当該操作に対応する前記運行情報の変更又は記録に係る動作を禁止する運行情報処理手段と、
を有していることを特徴とする運行情報記録装置。
【請求項2】
前記操作スイッチには、前記運行情報に含まれる前記車両の走行する道路の種別を切り換える操作が入力される道路種別切替スイッチが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の運行情報記録装置。
【請求項3】
前記操作スイッチには、前記運行情報の記録を終了する操作が入力される記録終了スイッチが含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の運行情報記録装置。
【請求項4】
前記操作スイッチには、前記運行情報に含まれる前記車両の運行状態の種別を切り換える操作が入力される運行状態種別切替スイッチが含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の運行情報記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行状況を示す運行情報を記録する運行情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、タクシー、バス、トラック等の車両を用いて運送業務を行う運送業者においては、社内の各運転者に対して安全運転を促し、事故を未然に防止することが重要な課題となっている。
【0003】
そこで、各運転者が日常的に実際に安全運転を実施しているかどうかを、運送業者の社内等に配置される管理者が確認できるように、例えば「デジタルタコグラフ」と呼ばれる運行状態を記録する装置が実用化され利用されている。このデジタルタコグラフは、タクシー、バス、トラック等の車両毎に搭載され、一定時間毎に取得した走行速度やエンジン回転数等の運行状況を示す運行情報をメモリカード等の記憶手段に自動的に記録するものである(例えば、特許文献1)。
【0004】
そして、例えば、営業所等に設置された運転状況解析支援装置としてのパーソナルコンピュータを用いて、上記メモリカード等に記録された運行情報を読み出して詳細に解析することにより、管理者が、その車両の走行時間、走行距離、最高速度、平均速度、速度オーバー時間、速度オーバー回数、エンジン回転数オーバー時間、回転数オーバー回数、急発進、急加速、急減速、アイドリング時間等を運転者毎に把握することができ、この把握された結果に基づいて、その運転者毎に安全運転や経済的な運転を促すことができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−351648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなデジタルタコグラフには、運行情報の記録動作に係る操作が入力される各種操作スイッチが設けられている。具体的には、運行情報の記録を開始及び終了するための操作が入力される開始/終了スイッチ、車両の積荷状態及び空荷状態を切り換える操作が入力される実車/空車スイッチ、高速道路及び一般道路を切り換える操作が入力される高速道/一般道スイッチ、などである。
【0007】
そして、デジタルタコグラフにおいては、例えば、積荷状態及び空荷状態のそれぞれの状態においてエンジン回転数オーバーを判定するための互いに異なる回転数判定値が設定されており、また、高速道路及び一般道路のそれぞれについても、同様に、速度オーバーを判定するための互いに異なる速度判定値が設定されている。そして、各操作スイッチに入力された操作に応じて、各判定値を切り換えて速度オーバーや回転数オーバーを判定していた。
【0008】
回転数判定値については、積荷状態の方が車両の重量が重くなり大きなパワーを必要とすることからエンジン回転数が高くなるため、空荷状態の回転数判定値よりも積荷状態の回転数判定値の方が高い値が設定されていた。また、速度判定値についても、高速道路の方が車両の速度が高くなるため、一般道路の速度判定値よりも高速道路の速度判定値の方が高い値が設定されていた。
【0009】
しかしながら、エンジン回転数オーバーや速度オーバーが記録されにくくなるように又は記録されないようにするために、運転者が、空荷状態にもかかわらず、積荷状態となる操作を実車/空車スイッチに入力したり、一般道路にもかかわらず、高速道路となる操作を高速道/一般道スイッチに入力したり、営業運転中にもかかわらず、運行情報の記録を終了する操作を開始/終了スイッチに入力したりして、不正を働くことがあり、運行情報の精度が低下して、安全管理が正確にできない恐れがあるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、操作スイッチに不正な操作が入力された場合でも運行情報を精度良く記録できる運行情報記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、図1の基本構成図に示すように、車両の運行状況を示す運行情報が記録される運行情報記憶手段D1と、前記運行情報の変更又は記録に係る操作が入力される複数の操作スイッチD2と、前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段P1と、操作入力許可位置範囲と入力を許可する操作スイッチとの関係を示す操作入力許可位置範囲情報を参照して、前記現在位置検出手段P1によって検出された前記現在位置が前記操作入力許可位置範囲に含まれるか否かを操作スイッチ毎に判定し、含まれると判定された操作スイッチを有効と設定する位置判定手段P2と、操作が入力された操作スイッチが有効と設定されているとき、当該操作を有効と判定し、操作が入力された操作スイッチが有効と設定されていないとき、当該操作を無効と判定する操作判定手段P3と、前記操作判定手段P3によって前記操作が有効と判定されたとき、当該操作に対応する前記運行情報の変更又は記録に係る動作を行い、かつ、前記操作が無効と判定されたとき、当該操作に対応する前記運行情報の変更又は記録に係る動作を禁止する運行情報処理手段P4と、を有していることを特徴とする運行情報記録装置である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記操作スイッチD2には、前記運行情報に含まれる前記車両の走行する道路の種別を切り換える操作が入力される道路種別切替スイッチが含まれていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記操作スイッチD2には、前記運行情報の記録を終了する操作が入力される記録終了スイッチが含まれていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記操作スイッチD2には、前記運行情報に含まれる前記車両の運行状態の種別を切り換える操作が入力される運行状態種別切替スイッチが含まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の現在位置が所定の操作入力許可位置範囲に含まれている状態で操作スイッチに運行情報の変更又は記録に係る操作が入力されたとき、その操作を有効として当該操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作を行い、かつ、車両の現在位置が所定の操作入力許可位置範囲に含まれていない状態で操作スイッチに運行情報の変更又は記録に係る操作が入力されたとき、その操作を無効として当該操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作を禁止するので、車両の現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれているときのみ操作スイッチに入力された操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作(例えば、運行情報として記録される運行状況(道路種別(高速道/一般道)、運行状態(実車/空車))の変更や、各判定値の切り換え、運行情報の記録の終了など)が行われ、その一方で、現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれていないときには操作スイッチに入力された操作は無効として取り扱われて、運行情報の変更又は記録に係る動作が行われず、そのため、操作入力許可位置範囲を適切に設定することにより、操作スイッチへの操作入力が許可されていない場所において不正な操作が入力された場合でも、当該不正な操作を無効として、運行情報を精度良く記録できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の運行情報記録装置の基本構成を示す図である。
図2】本発明に係る運行情報記録装置の一実施形態であるデジタルタコグラフの正面図であって、(a)は、カバーを閉じた状態を示す図であり、(b)は、カバーを開いた状態を示す図である。
図3図2のデジタルタコグラフの構成図である。
図4図2のデジタルタコグラフが備える不揮発性メモリに記憶された情報(速度判定値、回転数判定値、操作入力許可位置範囲)について模式的に示した図である。
図5図3のCPUが実行する本発明に係る処理(現在位置判定処理)の一例を示すフローチャートである。
図6図3のCPUが実行する本発明に係る処理(操作有効判定処理)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の運行情報記録装置の一実施形態である運行記録計としてのデジタルタコグラフを、図2図6を参照して説明する。
【0018】
以下に説明するデジタルタコグラフ1は、トラックやトレーラなどの荷物運搬用の車両に搭載されており、当該車両における走行時間、走行距離、最高速度、平均速度、速度オーバー時間、速度オーバー回数、エンジン回転数オーバー時間、回転数オーバー回数、急発進、急加速、急減速、アイドリング時間、車両の現在位置、道路種別、運行状態などの車両データを収集して、これらを運行情報として、運行情報記憶手段としてのメモリカード23に記録するものである。
【0019】
このデジタルタコグラフ1は、車両の運行を管理する管理会社などに設置されたパソコン等で構成された情報管理装置(図示なし)と無線通信で接続されており、デジタルタコグラフ1と情報管理装置とで運行管理システムが構成されている。
【0020】
図2(a)、(b)に示すように、デジタルタコグラフ1は、箱状の筐体によって本体1aが形成されている。本体1aは、合成樹脂等によって形成されており、その前面部にはフロントケース1bが設けられている。このデジタルタコグラフ1は、フロントケース1bが車両の運転席側に向けて配置されるようにして当該車両に取り付けられる。
【0021】
フロントケース1bは、カバー1cと、挿入口1dと、表示部27と、操作部28と、を有して構成されている。
【0022】
カバー1cは、前面が板状に形成されており、フロントケース1bの高さとほぼ等しく、且つ、挿入口1dを塞ぐ大きさとなっている。カバー1cは、フロントケース1bの前面側(図2の紙面手前側)に設けられて、フロントケース1bの幅方向(図2の左右方向)にスライド可能な構成となっている。つまり、カバー1cは、挿入口1dを覆い隠す閉状態(図2(a))と、挿入口1dに対するメモリカード23の出し入れが可能な開状態(図2(b))とに遷移する構成となっている。
【0023】
挿入口1dは、フロントケース1bの左側寄りの箇所に幅方向にスリット状に形成されている。挿入口1dには、メモリカード23が挿入/取り出しされる。この挿入口1dにメモリカード23が挿入されることで、本体1a内に収容される外部記録メディアインタフェース13(図3参照)のリーダライタ部に装着される。
【0024】
表示部27は、LCDディスプレイで構成されており、運行状況、各種警報等を表示する。また、表示部27は、車両の状態を示すメッセージを表示可能に構成されている。
【0025】
操作部28は、開始/終了スイッチ28aと、表示切替スイッチ28bと、走行/休憩スイッチ28cと、高速道/一般道スイッチ28dと、実車/空車スイッチ28eと、を有している。
【0026】
開始/終了スイッチ28aは、押圧操作に応じて、運行情報の記録を開始及び終了するための信号を発生する。表示切替スイッチ28bは、押圧操作に応じて機能、表示画面等の切り替えるための信号を発生する。走行/休憩スイッチ28cは、運行情報の記録が開始されているときの押圧操作に応じて、運行中の一時的な休憩の開始及び終了を運行情報として記録するための信号を発生する。高速道/一般道スイッチ28dは、一般道路と高速道路との走行道路の切り替わり時に操作され、これら道路の種別を運行情報として記録するための信号を発生する。実車/空車スイッチ28eは、積荷状態と空荷状態との切り替わり時に操作され、これら状態を運行情報として記録するための信号を発生する。
【0027】
つまり、開始/終了スイッチ28aは、運行情報の記録を終了する操作が入力される記録終了スイッチである。また、高速道/一般道スイッチ28dは、車両の走行する道路の種別(高速道路又は一般道路)を切り換える操作が入力される道路種別切替スイッチである。また、実車/空車スイッチ28eは、車両の運行状態(積荷状態(実車)又は空荷状態(空車))の種別を切り換える操作が入力される運行状態種別切替スイッチである。
【0028】
また、フロントケース1bには、複数の小径の貫通孔からなる音声出力部1eが設けられており、この音声出力部1eの奥側(図2の紙面奥側)にスピーカ26が配設されている。
【0029】
図3に示すように、デジタルタコグラフ1は、CPU2、不揮発性メモリ3、速度インタフェース(以下I/F)10、エンジン回転数I/F11、GPSI/F12、外部記録メディアI/F13、音声I/F16、スピーカ26、LCDコントローラ17、表示部27、操作部I/F18、操作部28、通信端末I/F19、及び、図示しない電源などを備えている。
【0030】
上記電源は、デジタルタコグラフ1が搭載されている車両のバッテリやイグニッションスイッチと接続され、イグニッションスイッチに連動してデジタルタコグラフ1に電源供給する。
【0031】
CPU2は、ROMやRAMなどを内蔵しており、ROMに予め記憶された制御プログラムを実行することによって各種制御を行う。CPU2は、デジタルタコグラフ1全体の制御を司る。
【0032】
速度I/F10には、単位距離走行する毎に走行パルス信号を出力する速度センサ20が接続されていて、この速度センサ20は、速度I/F10を介して上記走行パルス信号をCPU2に対して出力する。
【0033】
エンジン回転数I/F11には、車両のエンジン回転数を検出して当該エンジン回転数を示す信号を出力する回転数センサ21が接続されていて、回転数センサ21は、エンジン回転数I/F11を介して上記エンジン回転数を示す信号をCPU2に対して出力する。
【0034】
GPSI/F12には、GPSを構成する複数のGPS衛星から供給される位置及び時刻を示す信号を受信するGPS受信機22が接続されている。このGPS受信機22は、GPSI/F12を介して位置信号及び時刻信号をCPU2に対して出力する。この位置信号は緯度経度を含み、即ち、車両の位置を示す位置情報である。
【0035】
外部記録メディアI/F13には、メモリカード23を着脱可能なリーダライタ部が設けられている。外部記録メディアI/F13は、CPU2の制御に応じてリーダライタ部に取り着けられたメモリカード23に車両データ等を記録したり、メモリカード23に記録された情報を読み出したりする。
【0036】
音声I/F16には、フロントケース1bの音声出力部1eの奥側に設けられ、車両の運転席に向けて配置されたスピーカ26が接続されていて、このスピーカ26は、CPU2から音声I/F16を介して入力された音声信号に応じた音声を出力する。
【0037】
LCDコントローラ17には、上述した表示部27が接続されていて、表示部27は、CPU2からLCDコントローラ17を介して入力された画像信号に応じた文字や図形などの画像を表示部27に表示する。
【0038】
操作部I/F18には、上述した操作部28が接続されていて、この操作部28は、操作部I/F18を介して、入力された操作に応じた信号をCPU2に対して出力する。
【0039】
通信端末I/F19には、例えば、公衆無線通信回線を利用した無線通信が可能な通信端末29が接続されていて、この通信端末29は、CPU2の制御に応じて、情報管理装置に車両データ等を通信端末I/F19を介して送信したり、上記情報管理装置から各種情報を受信して通信端末I/F19を介してCPU2に対して出力したりする。
【0040】
不揮発性メモリ3は、電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリであり、例えば、周知のEEPROMやフラッシュメモリが用いられている。この不揮発性メモリ3には、例えば、デジタルタコグラフ1が搭載された車両に固有の識別データなどの各種情報が記憶されている。また、この不揮発性メモリ3には、図4に示すように、(1)高速道路での車両速度の判定に用いられる高速道路速度判定値(例えば、80km/h)、(2)一般道路での車両速度の判定に用いられる一般道路速度判定値(例えば、50km/h)、(3)積荷状態でのエンジン回転数の判定に用いられる積荷状態回転数判定値(例えば、5000rpm)、(4)空荷状態でのエンジン回転数の判定に用いられる空荷状態回転数判定値(例えば、3000rpm)、(5)所定の位置範囲(場所)と当該位置範囲において操作の入力が許可される操作スイッチとの関係を示す操作入力許可位置範囲、が記憶されている。図4に示す操作入力許可位置範囲においては、1つの位置範囲に対して1つの操作スイッチが割り当てられているが、1つの位置範囲に対して複数の操作スイッチが割り当てられていてもよい。
【0041】
このデジタルタコグラフ1のCPU2は、例えば、運行記録処理として、速度I/F10、エンジン回転数I/F11、及び、GPSI/F12からの信号を基に車両データを収集して、外部記録メディアI/F13に接続されたメモリカード23に記録する処理を行う。
【0042】
この運行記録処理の中で、予め設定された速度判定値と速度I/F10を通じて収集した車両速度とを比較して、速度オーバーを検出して運行情報として記録したり、予め設定された回転数判定値とエンジン回転数I/F11を通じて収集したエンジン回転数とを比較して、エンジン回転数オーバーを検出して運行情報として記録したりする。
【0043】
さらに、CPU2は、後述する現在位置判定処理及び操作有効判定処理を行う。
【0044】
次に、上述した構成のデジタルタコグラフ1の本発明に係る動作(現在位置判定処理処理、操作有効判定処理)を、図5図6のフローチャートを参照して説明する。
【0045】
運転者は車両に乗車する前に管理会社においてメモリカード23を受け取る。このメモリカード23には、管理会社内に設置された情報管理装置などよって車両の識別データや、その日の荷積み・荷下ろしを行う必要のある荷積地・荷下地についての情報などが記憶されている。運転者は、受け取ったメモリカード23をデジタルタコグラフ1の外部記録メディアI/F13に装着した後、車両のイグニッションスイッチをオンする。このイグニッションスイッチのオンに応じてCPU2に電源が供給される。これにより、CPU2は、各種初期化処理を実行し、その後、操作部28に運行情報の記録開始を要求する操作が入力されたことを検出すると、当該車両における速度やエンジン回転数、走行している位置、速度オーバー、エンジン回転数オーバーなどの車両データを収集して運行情報としてメモリカード23に記録する運行記録処理を開始する。
【0046】
また、この運行記録処理と並行して、CPU2は、所定のタイミング(例えば、1秒毎)で、図5に示す現在位置判定処理のステップS110に処理を進める。
【0047】
ステップS110では、GPS受信機22からの位置信号に基づいて、車両の現在位置を検出する。そして、ステップS120に進む。
【0048】
ステップS120では、ステップS110で検出した車両の現在位置と、不揮発性メモリ3に記憶された操作入力許可位置範囲とを比較する。車両の現在位置が、操作入力許可位置範囲を構成するいずれかの場所(営業所内や高速道路出入口など)に含まれていれば、現在位置において操作入力が許可される操作スイッチがあるものとしてステップS130に進み(S120でY)、含まれていなければ、現在位置において操作スイッチへの操作入力が不可であるものとしてステップS140に進む(S120でN)。
【0049】
ステップS130では、各操作スイッチに対応する操作有効フラグをオンにする。具体的には、CPU2は、RAM上に各操作スイッチに対応する操作有効フラグが設けられており、ステップS120において車両の現在位置が含まれていると判定された場所に対応する操作スイッチの操作有効フラグをオンにし、それ以外の操作スイッチの操作有効フラグをオフにする。例えば、車両の現在位置が含まれていると判定された場所が、営業所内だった場合、開始/終了スイッチ28aに対応する操作有効フラグをオンにし、それ以外の高速道/一般道スイッチ28d、実車/空車スイッチ28eに対応する操作有効フラグをオフにする。または、車両の現在位置が含まれていると判定された場所が、高速道路入口だった場合、高速道/一般道スイッチ28dに対応する操作有効フラグをオンにし、それ以外の開始/終了スイッチ28a、実車/空車スイッチ28eに対応する操作有効フラグをオフにする。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0050】
ステップS140では、全ての操作スイッチに対応する操作有効フラグをオフにする。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0051】
また、現在位置判定処理と並行して、CPU2は、所定のタイミング(例えば、1秒毎)で、図6に示す、操作有効判定処理のステップT110に処理を進める。
【0052】
ステップT110では、操作部28からの信号に基づいて、各操作スイッチに入力された操作を検出する。そして、ステップT120に進む。
【0053】
ステップT120では、ステップT120で操作が入力されたことが検出された操作スイッチに対応する操作有効フラグがオンか否かを判定する。そして、この操作有効フラグがオンであれば、操作が有効なものとしてステップT130に進み(T120でY)、オフであれば、操作が無効なものとして本フローチャートの処理を終了する(T120でN)。
【0054】
ステップT130では、ステップT110で入力が検出されるとともにステップT120で有効と判定された操作に応じた動作を実行する。例えば、有効と判定された入力操作が、開始/終了スイッチ28aへの運行情報の記録開始又は記録終了の操作の場合は、運行情報の記録を開始又は終了する。有効と判定された入力操作が、高速道/一般道スイッチ28dへの切り換え操作の場合は、運行情報として道路種別を記録すると共に、道路種別に応じた速度判定値に切り換える。有効と判定された入力操作が、実車/空車スイッチ28eへの切り換え操作の場合は、運行情報として運行状態を記録すると共に、運行状態に応じた回転数判定値に切り換える。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
上述したステップS110が、請求項中の現在位置検出手段に相当し、ステップS120が、請求項中の位置判定手段に相当し、ステップT120が、請求項中の操作判定手段に相当し、ステップT130が、請求項中の運行情報処理手段に相当する。
【0056】
次に、本実施形態のデジタルタコグラフ1における本発明に係る動作の一例を説明する。
【0057】
営業所内に停車されていた車両において、イグニションスイッチをオンにするとデジタルタコグラフ1が動作を開始する。そして、車両の現在位置が営業所内であるため、開始/終了スイッチ28aへの操作入力が許可される状態にあり(S110、S120でY、S130(フラグオン))、この状態において、開始/終了スイッチ28aに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、運行情報の記録を開始する(T110、T120でY、T130)。または、運行情報の記録が開始されている状態で、開始/終了スイッチ28aに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、運行情報の記録を終了する。
【0058】
また、営業所内において高速道/一般道スイッチ28d、実車/空車スイッチ28eへの操作入力は許可されない状態にあり(S110、S120でY、S130(フラグオフ))、この状態において、これら操作スイッチに操作が入力されても、当該操作に応じた動作は行われない(T110、T120でN)。
【0059】
そして、車両が一般道路を走行して高速道路入口に到達すると、高速道/一般道スイッチ28dへの操作入力が許可される状態になり(S110、S120でY、S130(フラグオン))、この状態において、高速道/一般道スイッチ28dに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、道路種別を一般道路から高速道路に切り換えるとともに運行情報として記録し、さらに、速度判定値を一般道路速度判定値から高速道路速度判定値に切り換える(T110、T120でY、T130)。
【0060】
また、高速道路入口において開始/終了スイッチ28a、実車/空車スイッチ28eへの操作入力は許可されない状態にあり(S110、S120でY、S130(フラグオフ))、この状態において、これら操作スイッチに操作が入力されても、当該操作に応じた動作は行われない(T110、T120でN)。
【0061】
また、高速道路出口に到達した場合においても、高速道路入口と同様であり、高速道/一般道スイッチ28dに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、道路種別を高速道路から一般道路に切り換えるとともに運行情報として記録し、さらに、速度判定値を高速道路速度判定値から一般道路速度判定値に切り換える。
【0062】
そして、車両が荷積地に到達すると、実車/空車スイッチ28eへの操作入力が許可される状態になり(S110、S120でY、S130(フラグオン))、この状態において、実車/空車スイッチ28eに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、運行状態を空荷状態から積荷状態に切り換えるとともに運行情報として記録し、さらに、回転数判定値を空荷状態回転数判定値から積荷状態回転数判定値に切り換える(T110、T120でY、T130)。
【0063】
また、積荷地において開始/終了スイッチ28a、高速道/一般道スイッチ28dへの操作入力は許可されない状態にあり(S110、S120でY、S130(フラグオフ))、この状態において、これら操作スイッチに操作が入力されても、当該操作に応じた動作は行われない(T110、T120でN)。
【0064】
また、荷下地に到達した場合においても、荷積地と同様であり、実車/空車スイッチ28eに操作が入力されると、デジタルタコグラフ1は、運行状態を積荷状態から空荷状態に切り換えるとともに運行情報として記録し、さらに、回転数判定値を積荷状態回転数判定値から空荷状態回転数判定値に切り換える。
【0065】
また、車両が、例えば、一般道路や高速道路本線(高速道路出入口以外)など、営業所内、高速道路出入口、荷積地及び荷下地以外の場所にいるとき、開始/終了スイッチ28a、高速道/一般道スイッチ28d、実車/空車スイッチ28eへの操作入力は許可されない状態にあり(S110、S120でN、S140)、この状態において、これら操作スイッチに操作が入力されても、当該操作に応じた動作は行われない(T110、T120でN)。
【0066】
本実施形態のデジタルタコグラフ1は、車両の運行状況を示す運行情報が記録されるメモリカード23と、運行情報の変更又は記録に係る操作が入力される複数の操作スイッチとしての開始/終了スイッチ28a、高速道/一般道スイッチ28d及び実車/空車スイッチ28eと、車両の現在位置を検出するCPU2(現在位置検出手段P1)と、CPU2によって検出された現在位置が予め設定された操作入力許可位置範囲に含まれるか否かを判定するCPU2(位置判定手段P2)と、CPU2によって現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれると判定された状態で操作スイッチに操作が入力されたとき、当該操作を有効と判定し、かつ、現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれないと判定された状態で操作スイッチに操作が入力されたとき、当該操作を無効と判定するCPU2(操作判定手段P3)と、CPU2によって操作が有効と判定されたとき、当該操作に対応する運行情報の変更又は記録に係る動作を行い、かつ、操作が無効と判定されたとき、当該操作に対応する運行情報の変更又は記録に係る動作を禁止するCPU2(運行情報処理手段P4)と、を有している。
【0067】
以上より、本実施形態によれば、車両の現在位置が所定の操作入力許可位置範囲に含まれている状態で操作スイッチに運行情報の変更又は記録に係る操作が入力されたとき、その操作を有効として当該操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作を行い、かつ、車両の現在位置が所定の操作入力許可位置範囲に含まれていない状態で操作スイッチに運行情報の変更又は記録に係る操作が入力されたとき、その操作を無効として当該操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作を禁止するので、車両の現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれているときのみ操作スイッチに入力された操作に対応した運行情報の変更又は記録に係る動作(運行情報として記録される運行状況(道路種別(高速道/一般道)、運行状態(実車/空車))の変更や、各判定値の切り換え、運行情報の記録の終了)が行われ、その一方で、現在位置が操作入力許可位置範囲に含まれていないときには操作スイッチに入力された操作は無効として取り扱われて、運行情報の変更又は記録に係る動作が行われず、そのため、操作入力許可位置範囲を適切に設定することにより、操作スイッチへの操作入力が許可されていない場所において不正な操作が入力された場合でも、当該不正な操作を無効として、運行情報を精度良く記録できる。
【0068】
本実施形態において、操作入力許可位置範囲は不揮発性メモリ3に記憶されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、メモリカード23に記憶されているなど、本発明の目的に反しない限り、操作入力許可位置範囲が記憶される記憶手段は任意である。
【0069】
また、本実施形態においては、運行情報の記録動作に係る操作が入力される操作スイッチの一例として、開始/終了スイッチ28a、高速道/一般道スイッチ28d及び実車/空車スイッチ28eについて上述した処理を行うものであったが、これら操作スイッチに限定されるものではなく、例えば、走行/休憩スイッチ28cやその他のスイッチなど、本発明の目的に反しない限り、操作スイッチの種類については任意である。
【0070】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 デジタルタコグラフ(運行情報記録装置)
2 CPU(現在位置検出手段、位置判定手段、操作判定手段、運行情報処理手段)
3 不揮発性メモリ
23 メモリカード(運行情報記憶手段)
28 操作部
28a 開始/終了スイッチ(操作スイッチ)
28d 高速道/一般道スイッチ(操作スイッチ)
28e 実車/空車スイッチ(操作スイッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6