特許第5928794号(P5928794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928794
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】着脱式の灰皿
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/08 20060101AFI20160519BHJP
   B60N 3/10 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B60N3/08
   B60N3/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-96482(P2012-96482)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224062(P2013-224062A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】山口 正人
(72)【発明者】
【氏名】石川 晶規
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069405(JP,A)
【文献】 特開2005−007910(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0289641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/08−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱式の灰皿であって、
断面円形のカップホルダと断面矩形のカップホルダとの任意の一方に内嵌及び内嵌解除自在な嵌合部を備え、
前記嵌合部は断面八角形多角形状に形成され、
前記嵌合部の隣り合う角部間の外側面のうち、前記断面矩形に対応する4つの外側面に凸部が形成され、
前記断面円形のカップホルダには前記嵌合部の複数の角部が線状に当接して内嵌し、
前記断面矩形のカップホルダには前記嵌合部の外側面の凸部が内嵌する着脱式の灰皿。
【請求項2】
前記嵌合部の上部に、前記カップホルダの開口周縁部に受け止められる鍔部が張り出し形成されている請求項1記載の着脱式の灰皿。
【請求項3】
前記鍔部は矩形状に形成され、
前記鍔部の角部の下方に前記嵌合部の一対の角部が位置する請求項2記載の着脱式の灰皿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着脱式の灰皿に関する。
【背景技術】
【0002】
着脱式の灰皿は一般に自動車の車室内に配置され、車室内のカップホルダに内嵌及び内嵌解除自在に構成されている。従来、上記の着脱式の灰皿は、断面円形のカップホルダに内嵌及び内嵌解除自在な断面円形の嵌合部を備えていた。そして、走行の振動で灰皿が回転しないように、嵌合部の外周面や上端部に回り止めのリブや突起が設けられていた。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−162143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、断面円形のカップホルダに灰皿の断面円形の嵌合部を内嵌させるために、飲料容器の径に合わせてカップホルダの径を大きくすると、灰皿の嵌合部の径を大きくするか、回り止めのリブや突起の高さ寸法を高くしなければならなかった。その結果、灰皿が不必要に大型化していた。
本発明の目的は小型化できる着脱式の灰皿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
着脱式の灰皿であって、
断面円形のカップホルダと断面矩形のカップホルダとの任意の一方に内嵌及び内嵌解除自在な嵌合部を備え、
前記嵌合部は断面八角形多角形状に形成され、
前記嵌合部の隣り合う角部間の外側面のうち、前記断面矩形に対応する4つの外側面に凸部が形成され、
前記断面円形のカップホルダには前記嵌合部の複数の角部が線状に当接して内嵌し、
前記断面矩形のカップホルダには前記嵌合部の外側面の凸部が内嵌する点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成により、断面円形のカップホルダには前記嵌合部の複数の角部が線状に当接して内嵌する。従って、断面円形のカップホルダに断面円形の嵌合部が嵌合する構造に比べると、嵌合部を小型化して灰皿を小型化することができる。また、前記複数の角部がカップホルダの飲料容器収納部の内周面に線状に当接することで、カップホルダの飲料容器収納部の内周面に対する嵌合部の嵌合圧力を高くすることができる。これにより、カップホルダで灰皿の嵌合部を上下にわたって安定して保持することができる。
前記断面矩形のカップホルダは、断面円形のカップホルダに収納する飲料容器よりも容量が小さい飲料容器を収納する。このような断面矩形のカップホルダには前記嵌合部の外側面の凸部が内嵌する。
つまり、本発明の構成によれば、容量が異なる様々な飲料容器に対応したカップホルダに対して共通の灰皿を使用することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記嵌合部の上部に、前記カップホルダの開口周縁部に受け止められる鍔部が張り出し形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
灰皿がカップホルダの飲料容器収納部に深く入りすぎて取り出し難くなるのを防ぐことができ、使い勝手が向上する。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記鍔部は矩形状に形成され、
前記鍔部の角部の下方に前記嵌合部の一対の角部が位置すると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
鍔部全体を大きくすること無く、鍔部の角部がカップホルダの広い面積の開口周縁部分に当接することができ、灰皿の嵌まり込みを防ぐことができる。(請求項3)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば小型化できる着脱式の灰皿を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コンソールボックスとカップホルダを示す斜視図
図2】灰皿の斜視図
図3】コンソールボックスのカップホルダに灰皿が収納された状態を示す斜視図
図4図3の縦断面図
図5図3の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、車室内の左右一対の座席間に配置される車両前後方向に長い樹脂製のコンソールボックス1を示してある。コンソールボックス1はパーキングレバー(図示せず)の周囲を覆うカバーとしての役割を有する。このコンソールボックス1の上壁1Jに、パーキングレバーを上方に突出させる車両前後方向に長い長孔1Hが形成されている。
【0014】
コンソールボックス1の後端部(車両後方側Rrの端部)には角形の物品収納凹部2が設けられている。また、コンソールボックス1の前端部(車両前方側Frの端部)に、断面円形の600mLのペットボトル(飲料容器に相当)を収納・保持する左右一対のカップホルダ3が設けられている。左右一対のカップホルダ3は、コンソールボックス1の幅方向の中心に対して対称(左右対称)に形成されている。
【0015】
前記カップホルダ3は断面円形のペットボトル収納部4(飲料容器収納部に相当)を備え、左右一対のペットボトル収納部4のペットボトル収納空間同士は連通している。ペットボトル収納部4の左右両側壁4Sの上部には上方に開放する切り欠き4Kが形成されている。これにより、カップホルダ3の成形性を向上させ、ペットボトル収納部4からのペットボトルの抜き取りを容易にしてある。
【0016】
図3に示すように、コンソールボックス1のペットボトル収納部4に着脱式の灰皿5が収納されている。図2図4図5にも示すように、灰皿5は、前記断面円形のカップホルダ3(図1参照)と、他機種の自動車に設けられた断面矩形のカップホルダ(図示せず)との任意の一方に内嵌及び内嵌解除自在な嵌合部6を備えている。
【0017】
断面矩形のカップホルダは、断面円形のカップホルダ3に収納されるペットボトルよりも容量が小さいペットボトルを収納する。断面矩形のカップホルダに断面円形のペットボトルを収納する場合、断面円形のペットボトルの外周面を、断面矩形のカップホルダの互いに90°の角度を成す4つの内面に内嵌させる。断面矩形のカップホルダに断面矩形のペットボトルを収納することもできる。
【0018】
図5に示すように、前記灰皿5の嵌合部6は断面八角形に形成されている。詳しくは、断面矩形の基本形状の四つの角部を大きめに面取りして嵌合部6が断面八角形に形成されている。面取りされた部分の外側面6Nは断面において緩やかな湾曲面状に形成されている。そして、前記嵌合部6の角部7が、断面円形のカップホルダ3のペットボトル収納部4の内周面4Mに線状に当接して内嵌する。
【0019】
カップホルダ3のペットボトル収納部4の左右両側壁4Sの上部は切り欠かれているが下部は切り欠かれていない。従って、前記嵌合部6の8個の角部7の全てがカップホルダ3のペットボトル収納部4の内周面4Mに線状に当接して内嵌する。これにより、灰皿5が自動車の走行に伴って振動を受けても、ペットボトル収納部4に対して灰皿5が回転しにくくなる。
【0020】
また、嵌合部6の隣り合う角部7間の外側面6N,6Sのうち、前記矩形に対応する4つの外側面6Sの上半部に、上下方向に延びる断面円弧状の凸部6Tが一対づつ形成されている。そして、前記断面矩形のカップホルダのペットボトル収納部の内面には、嵌合部6の前記4つの外側面6Sの凸部6Tが内嵌するよう構成されている。
【0021】
図2図3に示すように、嵌合部6の上端部に、ヒンジHを介して開閉自在な矩形の蓋8が連結され、乗員が蓋8を開閉操作する際に指を掛けるつまみ8Tが蓋8の側部に膨出形成されている。
【0022】
また、蓋8が車両後方側Rrから車両前方側Frに向かって開くように、前記嵌合部6をペットボトル収納部4に嵌合してある。これに換えて、前記蓋8が乗員側から他の乗員側に向かって左右方向に開くように、前記嵌合部6をペットボトル収納部4に嵌合することもできる。つまり、蓋8の開き方向を、図3に示す蓋8の開き方向に対して90度傾ける。蓋8の開き方向が、図3に示す蓋8の開き方向に対して45度傾くように、前記嵌合部6をペットボトル収納部4に嵌合することもできる。
【0023】
図1に示すカップホルダ3のペットボトル収納部4は断面円形であるので、上記のように、前記蓋8の開き方向を乗員(ユーザー)の好みの方向に設定することができる。従って、使い勝手をよくすることができる。この場合、蓋8は矩形に形成されているから、ペットボトル収納部4に対する灰皿5の縦軸芯(上下方向に沿う軸芯)周りの位置を認識しやすくすることができる。
【0024】
一般に、灰皿5の深さよりもカップホルダ3のペットボトル収納部4の深さを深くする必要がある。そのために、乗員の使い方によっては、灰皿5の嵌合部6がペットボトル収納部4に深く嵌合し過ぎ、互いの接触面の摩擦が大きくなりすぎて、灰皿5を強く引っ張らないと灰皿5がペットボトル収納部4から抜けなくなる虞がある。
そこで、前記嵌合部6の上部に、カップホルダ3のペットボトル収納部4の開口周縁部3Sに受け止められる鍔部9が張り出し形成されている。すなわち、灰皿5の嵌合部6がペットボトル収納部4に深く入り込み過ぎないように、前記鍔部9をカップホルダ3のペットボトル収納部4の開口周縁部3Sに受け止めさせてある。これにより、図4に示すように、前記嵌合部6の底壁6Tは、カップホルダ3のペットボトル収納部4の底壁4Tから浮き上がった状態になる。
【0025】
図2に示すように、前記鍔部9は矩形状に形成され、鍔部9の角部17の下方に前記嵌合部6の一対の角部7が位置する。鍔部9の張り出し量は嵌合部6に対してほぼ一定であるが、上記のように面取りした4箇所では、他の箇所よりも鍔部9の下面の面積が大きくなる。従って、前記4箇所を記ペットボトル収納部4の開口周縁部3Sに当接させるように、ペットボトル収納部4の開口周縁部3Sを形成してある。これにより、前記嵌合部6がペットボトル収納部4に深く嵌まり込むのを防いでいる。
【0026】
灰皿5の嵌合部6を、断面円形又は断面矩形のカップホルダのペットボトル収納部4に内嵌した状態では前記凸部6Tが鍔部9に覆われるので、灰皿5を見た乗員に自然な外観を感じさせることができる。
【0027】
上記の構成により、
断面円形のカップホルダ3のペットボトル収納部4には、前記嵌合部6の8個の角部7が線状に当接して内嵌する。従って、断面円形のカップホルダ3のペットボトル収納部4に断面円形の嵌合部が嵌合する構造に比べると、嵌合部6を小型化して灰皿5を小型化することができる。
【0028】
また、前記8個の角部7がカップホルダ3のペットボトル収納部4の内周面4Mに線状に当接することで、前記ペットボトル収納部4の内周面4Mに対する嵌合部6の嵌合圧力を高くすることができる。これにより、カップホルダ3で灰皿5の嵌合部6を上下にわたって安定して保持することができる。その結果、自動車の走行に伴って灰皿5が振動を受けても、ペットボトル収納部4に対して灰皿5が回転しにくくなる。
【0029】
前記他機種の自動車に設けられた断面矩形のカップホルダには前記嵌合部6の外側面6Sの凸部6Tが内嵌する。断面矩形のカップホルダは、断面円形のカップホルダ3に収納するペットボトルよりも容量が小さいペットボトルを収納する。
本発明の構成によれば、上記のように、容量が異なる様々なペットボトルに対応したカップホルダ3に対して共通の灰皿5を使用することができる。
【0030】
[別実施形態]
(1) 前記角部7の面取りの深さを変更することで、断面円形に形成された種々のカップホルダ3のペットボトル収納部4の径に対応することができる。また、前記凸部6Tの高さ寸法を変更することで、断面矩形に形成された種々のカップホルダのペットボトル収納部4の大きさに対応することができる。
【0031】
(2) 前記8個の角部7のうち、8個よりも少ない数の角部7が断面円形のカップホルダ3のペットボトル収納部4の内周面4Mに線状に当接して内嵌するよう構成してあってもよい。
【0033】
(4) 本発明は、同一機種の自動車に、断面円形のカップホルダ3(図1参照)と断面矩形のカップホルダ(図示せず)とのいずれもが設けられている場合にも適用することができる。すなわち、前記灰皿5の嵌合部6は、同一機種の自動車に設けられた断面円形のカップホルダ3(図1参照)と断面矩形のカップホルダ(図示せず)との任意の一方に内嵌及び内嵌解除自在となる。
【符号の説明】
【0034】
3 カップホルダ
3S 開口周縁部
5 灰皿
6 嵌合部
6S 外側面
6T 凸部
7 角部(嵌合部の角部)
17 角部(鍔部の角部)
9 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5