特許第5928798号(P5928798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928798
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160519BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B60N2/44
   B60N2/58
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-107268(P2012-107268)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-233857(P2013-233857A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】小山 正剛
(72)【発明者】
【氏名】渥美 穣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 完
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−122962(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
B60N 2/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの後端部の側方に、シートベルト装置のタングが係合するバックルが配設され、
前記バックルは、前記シートクッションの後端部の側方に位置するバックルプレートと、前記バックルプレートの上端部に連結されたバックル本体とから成り、
前記バックルプレートがシート幅方向外側からカバーで覆われ、
前記バックル本体側の前記カバーの周縁部に、前記バックルプレート側に張り出す張り出しカバー部が設けられ、
前記張り出しカバー部に、前記バックルプレートとの干渉を回避する切り欠きが形成されている車両用シートであって、
シートクッションパッドの側面を覆う表皮材が、前記切り欠きのシート前方側の前側表皮材部分と、前記切り欠きのシート後方側の後側表皮材部分とに前後に分割され、
前記バックルプレートが前記後側表皮材部分にシート幅方向外側から覆われ、
前記後側表皮材部分の分割端部が前記切り欠きに入り込み、
前記前側表皮材部分の分割端部と後側表皮材部分の分割端部との間から前記バックル本体が突出している車両用シート。
【請求項2】
前記前側表皮材部分の分割端部と前記後側表皮材部分の分割端部とは互いに重ね合わされている請求項記載の車両用シート。
【請求項3】
前記前側表皮材部分の分割端部のシート幅方向外側の面に、2つ折りに折り畳まれた別の表皮材が縫製されて、前記別の表皮材が前記切り欠き内に入り込んでいる請求項1又は2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記前側表皮材部分の分割端部にカーペット材が重ね合わされて縫製されている請求項1又は2記載の車両用シート。
【請求項5】
前記後側表皮材部分の分割端部はシート幅方向内側に折り曲げられ、
互いに重なり合ったシート幅方向内側の内側分割端部とシート幅方向外側の外側分割端部とが縫製されている請求項1〜のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記内側分割端部と外側分割端部に芯材が挟み込まれ、
前記内側分割端部と外側分割端部と芯材とが一体に縫製されている請求項記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シートクッションの後端部の側方に、シートベルト装置のタングが係合するバックルが配設され、
前記バックルは、前記シートクッションの後端部の側方に位置するバックルプレートと、前記バックルプレートの上端部に連結されたバックル本体とから成り、
前記バックルプレートがシート幅方向外側からカバーで覆われ、
前記バックル本体側の前記カバーの周縁部に、前記バックルプレート側に張り出す張り出しカバー部が設けられ、
前記張り出しカバー部に、前記バックルプレートとの干渉を回避する切り欠きが形成されている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、前記バックルプレートは下端部側の横軸芯を中心として一定角度の揺動が許容されている。そのために、前記切り欠きは比較的大きく形成され、バックルプレートの全揺動範囲にわたってバックルプレートと張り出しカバー部との干渉が回避されている。
上記のように前記切り欠きが比較的大きく形成された構造では、切り欠きとバックルプレートとの間に比較的大きな隙間が形成され、前記切り欠きから小物が落下する虞があった。
そこで、特許文献1に開示されているように、一端部がシートクッションの表皮材に縫製された柔軟な帯材で前記バックルプレートを被覆し、帯材の他端部に設けたフックをヒンジブラケットの側縁に係止する構造が採用されていた。
すなわち、前記帯材をカバーの切り欠き内に入り込ませ、帯材で切り欠きを埋めて(切り欠き空間を狭くして)切り欠きからの小物の落下を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−122962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、シートクッションの組み付けの際、作業者がバックルプレートをヒンジブラケットに取り付け、帯材でバックルプレートを覆った後に、前記フックをヒンジブラケットの側縁に係止しなければならない。そのために、組み付け作業に手間がかかっていた。
本発明の目的は、バックルプレートを覆うカバーに形成された切り欠きから小物が落下することを防止でき、シートクッションの組み付け作業を簡単に行うことができる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
シートクッションの後端部の側方に、シートベルト装置のタングが係合するバックルが配設され、
前記バックルは、前記シートクッションの後端部の側方に位置するバックルプレートと、前記バックルプレートの上端部に連結されたバックル本体とから成り、
前記バックルプレートがシート幅方向外側からカバーで覆われ、
前記バックル本体側の前記カバーの周縁部に、前記バックルプレート側に張り出す張り出しカバー部が設けられ、
前記張り出しカバー部に、前記バックルプレートとの干渉を回避する切り欠きが形成されている車両用シートであって、
シートクッションパッドの側面を覆う表皮材が、前記切り欠きのシート前方側の前側表皮材部分と、前記切り欠きのシート後方側の後側表皮材部分とに前後に分割され、
前記バックルプレートが前記後側表皮材部分にシート幅方向外側から覆われ、
前記後側表皮材部分の分割端部が前記切り欠きに入り込み、
前記前側表皮材部分の分割端部と後側表皮材部分の分割端部との間から前記バックル本体が突出している点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、シートクッションパッドの側面を覆う表皮材が、前記切り欠きのシート前方側の前側表皮材部分と、前記切り欠きのシート後方側の後側表皮材部分とに前後に分割されている。従って、表皮材の分割ラインが前記切り欠きのシート幅方向内側に位置し、上記のように、前側表皮材部分の分割端部と後側表皮材部分の分割端部との間から前記バックル本体を突出させることができる。
さらに、バックルプレートが後側表皮材部分にシート幅方向外側から覆われ、後側表皮材部分の分割端部が前記切り欠き内に入り込んでいる。
これにより、後側表皮材部分の分割端部で切り欠きを埋めることができ(切り欠き空間を狭くすることができ)、切り欠きからの小物の落下を防止することができる。
また、シートクッションの組み付けの際には、前記シートクッションパッドの側面を覆う表皮材を含む複数の表皮材を縫製してシートクッションパッドの全体を覆う表皮を形成しておく。そして、前側表皮材部分の分割端部と後側表皮材部分の分割端部との間からバックル本体が突出するように、前記表皮をシートクッションパッドに被せればよい。これにより、シートクッションの組み付け作業を簡単に行うことができる。(請求項1)
【0009】
本発明において、
前記前側表皮材部分の分割端部と前記後側表皮材部分の分割端部とは互いに重ね合わされていると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0010】
シートフレームやシートクッションパッドなどの内蔵物が両分割端部の間から見えるのを防止することができ、外観品質を向上させることができる。(請求項
【0011】
本発明において、
前記前側表皮材部分の分割端部のシート幅方向外側の面に、2つ折りに折り畳まれた別の表皮材が縫製されて、前記別の表皮材が前記切り欠き内に入り込んでいると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0012】
2つ折りに折り畳まれた別の表皮材で切り欠きを埋めることができ、切り欠きからの小物の落下を防止することができる。
また、シートフレームやシートクッションパッドなどの内蔵物が両分割端部の間から見えるのを前記別の表皮材で防止することができる。従って、外観品質を向上させることができる。(請求項
【0013】
本発明において、
前記前側表皮材部分の分割端部にカーペット材が縫製されていると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0014】
カーペット材は端部にホツレが発生しない為、ホツレ修正のための工程が不要になり、縫製の工数を減らすことができる。(請求項
【0015】
本発明において、
前記後側表皮材部分の分割端部はシート幅方向内側に折り曲げられ、
互いに重なり合ったシート幅方向内側の内側分割端部とシート幅方向外側の外側分割端部とが縫製されていると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0016】
前記後側表皮材部分の分割端部はシート幅方向内側に折り曲げられているから、前記切り欠きを埋める量を増加させることができ、切り欠きからの小物の落下をより確実に防止することができる。
さらに、互いに重なり合ったシート幅方向内側の内側分割端部とシート幅方向外側の外側分割端部とが縫製されているから、後側表皮材部分の分割端部のホツレを防ぐことができ、外観品質を向上させることができる。また、ホツレ修正のための工程が不要になり、縫製の工数を減らすことができる。(請求項
【0017】
本発明において、
前記内側分割端部と外側分割端部に芯材が挟み込まれ、
前記内側分割端部と外側分割端部と芯材とが一体に縫製されていると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0018】
前記切り欠きを埋める量を増加させることができ、切り欠きからの小物の落下をより確実に防止することができる。
また、前記内側分割端部と外側分割端部と芯材とが一体に縫製されているから、前記内側分割端部と外側分割端部の剛性を上げることができる。その結果、内側分割端部と外側分割端部から成る後側表皮材部分の分割端部にシワ、たるみが生じにくくすることができる。(請求項
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
バックルプレートを覆うカバーに形成された切り欠きから小物が落下することを防止でき、組み付け作業を簡単に行うことができる車両用シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両用シートの斜視図
図2】シートクッションの製作方法(組み付け方法)を示す斜視図
図3図1のA部の拡大図
図4】シートクッションパッドの側面を覆う表皮材単品の分解側面図
図5】(a)は図3のB−B断面図、(b)は別実施形態の断面図であり、図3のB−B断面に対応する断面図
図6】バックルのシートフレームへの取り付け方法を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に車両用シート1を示してある。この車両用シート1は、乗員(着座者)の臀部及び大腿部を支持するシートクッション3と、乗員の背中を支持するシートバック2とから成る。シートバック2の上端部には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4が連結されている。
【0022】
また、図6に示すように、シートクッション3の後端部とシートバック2の下端部との間にリクライニング機構30が設けられ、シートバック2がシートクッション3に対して下端部側の横軸芯を中心として揺動可能に構成されている。リクライニング機構30はシートバック2の傾斜角を変更調節する手段として設けられている。
【0023】
図2に示すように、前記シートクッション3は、フロアに載置固定される正面視略門形のシートフレーム32と、シートフレーム32に支持されるシートクッションパッド31と、シートクッションパッド31の全体を覆う袋状の表皮40とから成る。シートクッションパッド31はウレタンフォームで形成されている。前記表皮40は、互い縫製された複数の表皮素材(以下、「表皮材」と称する)から成る。図4に、前記複数の表皮材のうち、シートクッションパッド31の側面31S(図2参照)を覆う表皮材15を示してある。
【0024】
[バックル20の構造]
図1図3図6に示すように、シートクッション3の後端部の側方に、シートベルト装置のタングが係合するバックル20が配設されている。このバックル20は、シートクッション3の後端部の側方に位置する縦長のバックルプレート21と、バックルプレート21の上端部に連結されたバックル本体22とから成る。
【0025】
[バックルプレート21の構造]
バックルプレート21のプレート面はシート幅方向を向いている。このバックルプレート21は金属で形成され、上端部側ほど幅狭に形成されている。また、バックルプレート21の上端部はバックル本体22の厚さ方向中央部(図5(a)参照)に連結されている。
【0026】
図6に示すように、バックルプレート21は上端部側ほどシート前方側Frに位置するように傾斜し、バックルプレート21の下端部がシートフレーム32の後端部の側面32Sに重ねられてボルトBで固定されている。すなわち、バックルプレート21はシートフレーム32の後端部から前上方に立ち上がっている。バックルプレート21の下端部はクランク状に折曲されている。
【0027】
バックルプレート21の上端部は上下方向でシートクッション3の座面の近傍に位置する。また、バックルプレート21は下端部側の横軸芯を中心として一定角度の揺動が許容されている。
【0028】
[バックル本体22の構造]
バックル本体22は幅が厚さよりも長い直方体状に形成され、バックル本体22の先端面(上端面)に、前記タングが挿入される係合孔22H(図1参照)が開口している。
【0029】
[カバー10の構造]
図1図3図6に示すように、シートクッション3の下方のシートフレーム32の側面32Sと、前記リクライニング機構30の側面とを覆う樹脂製のカバー10がシートフレーム32に取り付けられている。
【0030】
前記カバー10は、シートフレーム32の側面32Sを覆うシート前後方向に長い第1カバー部11と、リクライニング機構30の側面を覆う第2カバー部12と、第1カバー部11と第2カバー部12の間の第3カバー部13とから成る。第1カバー部11の後半部と第3カバー部13と第2カバー部12とはシート幅方向外側から見て略L字状を成している。第3カバー部13は側方から見て緩やかな円弧状に形成され、第1カバー部11の後端部と第2カバー部12の下端部を滑らかに接続している。そして、この第3カバー部13が、シートクッション3の後端部の側面を、バックルプレート21ごと覆っている。
【0031】
すなわち、バックルプレート21がシート幅方向外側W2からカバー10で覆われている。図3に示すように、バックル本体22側のカバー10の周縁部10Sに、バックルプレート21側に張り出す張り出しカバー部14が設けられている。符号14Tは張り出しカバー部14の端縁である。
【0032】
そして、張り出しカバー部14に、バックルプレート21との干渉を回避する切り欠き13Kが形成されている。切り欠き13Kはシート幅方向内側W1に開放している。切り欠き13Kが形成されている張り出しカバー部14はシート後方側Rrほど上方に位置するように傾斜している。従って、切り欠き13Kも同様にシート後方側Rrほど上方に位置するように傾斜している。バックルプレート21の上部は切り欠き13K内に位置する。
【0033】
前述のように、バックルプレート21は下端部側の横軸芯を中心として一定角度の揺動が許容されている。そのために、バックルプレート21の全揺動範囲にわたってバックルプレート21が張り出しカバー部14に干渉しないように、前記切り欠き13Kは、張り出しカバー部14の長手方向に長く形成されている。
【0034】
[表皮材15の構造]
図3図4に示すように、前記シートクッションパッド31の側面31S(図2参照)を覆う表皮材15が、前記切り欠き13Kのシート前方側Frの前側表皮材部分16と、切り欠き13Kのシート後方側Rrの後側表皮材部分17とに前後に2分割されている。前記張り出しカバー部14の端縁14Tは表皮材15に当接している(図5(a)参照)。
【0035】
表皮材15の分割ラインは前記切り欠き13Kのシート幅方向内側W1に位置する。詳しくは、表皮材15の分割ラインは、シート幅方向から見て切り欠き13Kとほぼ同じ位置、同じ角度(水平方向に対する角度)に設定されている。つまり、分割ラインと切り欠き13Kとがシート幅方向から見てほぼ重なっている。従って、分割ラインはシート後方側Rrほど上方に位置するように傾斜している。
【0036】
図4に示すように、後側表皮材部分17の分割端部17Tの端縁17Eは、前側表皮材部分16の分割端部16Tの端縁16Eよりも長く設定されている。図4の符号Xは前側表皮材部分16の分割端部16Tの端縁16Eの長さ、Yは後側表皮材部分17の分割端部17Tの端縁17Eの長さであり、Y>Xとなっている。本実施形態では前記YがXよりも約40mm長くなっている。
【0037】
そして、前側表皮材部分16の分割端部16Tの上下両端部と、後側表皮材部分17の分割端部17Tの上下両端部とが各別に縫製されて、後側表皮材部分17の分割端部17Tが前側表皮材部分16の分割端部16Tに対してシート幅方向外側W2に膨らんでいる(図3参照)。
【0038】
すなわち、後側表皮材部分17の分割端部17Tと前記前側表皮材部分16の分割端部16Tとの一方の分割端部(後側表皮材部分17の分割端部17T)の端縁17Eが、他方の分割端部(前側表皮材部分16の分割端部16T)の端縁16Eよりも長く設定されている。そして、上記のように、前側表皮材部分16の分割端部16Tの上下両端部と、後側表皮材部分17の分割端部17Tの上下両端部とが各別に縫製されて、前記一方の分割端部17Tが前記他方の分割端部16Tに対してシート幅方向外側W2に膨らんでいる。
【0039】
前記一方の分割端部が前側表皮材部分16の分割端部16Tであり、前記他方の分割端部が後側表皮材部分17の分割端部17Tであってもよい。
【0040】
前側表皮材部分16の分割端部16Tと後側表皮材部分17の分割端部17Tとは互いに重ね合わされている(すなわち、シート幅方向から見て互いに重複している)。本実施形態では重なり合った部分のシート前後方向の長さは約30mmである。
【0041】
図1図3図5(a)に示すように、バックルプレート21は後側表皮材部分17にシート幅方向外側W2から覆われ、後側表皮材部分17の分割端部17Tが切り欠き13Kに入り込んでいる。そして、前側表皮材部分16の分割端部16Tと後側表皮材部分17の分割端部17Tとの間からバックル本体22及びバックルプレート21の上端部が斜め前上方に突出している。
【0042】
[前側表皮材部分16の詳細構造]
図5(a)に示すように、前側表皮材部分16の分割端部16Tに、2つ折りに折り畳まれた別の表皮材18が縫製されている。前記別の表皮材18は、折り曲げ部18Bとは反対側の端部18Aが前側表皮材部分16の分割端部16Tに縫製されている。符号Lは縫製ラインである。
前記別の表皮材18の先端部側(縫製ラインLよりも折り曲げ部18B側)は、シート前方側Frほどシート幅方向外側W2に位置するように傾斜している。そして、折り曲げ部18Bがバックルプレート21のシート幅方向内側W1のプレート面21Mに当接している。折り曲げ部18Bは切り欠き13Kの近傍に位置する。折り曲げ部18Bが切り欠き13K内に入り込んでいてもよい。
【0043】
[後側表皮材部分17の詳細構造]
図5(a)に示すように、後側表皮材部分17の分割端部17Tはシート幅方向内側W1に折り曲げられている。さらに、互いに重なり合ったシート幅方向内側W1の内側分割端部17T1とシート幅方向外側W2の外側分割端部17T2とにシート状の芯材25が挟み込まれている。そして、内側分割端部17T1と外側分割端部17T2と芯材25とが一体に縫製されている。符号Lは縫製ラインである。
【0044】
本発明によれば、
(1) 表皮材15の分割ラインが切り欠き13Kのシート幅方向内側W1に位置するので、前側表皮材部分16の分割端部16Tと後側表皮材部分17の分割端部17Tとの間からバックル本体22及びバックルプレート21の上端部を突出させることができる。
また、図3図5(a)に示すように、後側表皮材部分17の分割端部17Tが前記切り欠き13K内に入り込んでいる。これにより、後側表皮材部分17の分割端部17Tで切り欠き13Kを埋めることができ(切り欠き空間を狭くすることができ)、切り欠き13Kからの小物の落下を防止することができる。
また、シートクッション3の組み付けの際には、前記表皮材15を含む複数の表皮材を縫製してシートクッションパッド31の全体を覆う表皮40(図2参照)を形成しておく。そして、前記前側表皮材部分16の分割端部16Tと後側表皮材部分17の分割端部17Tとの間からバックル本体22が突出するように、表皮40をシートクッションパッド31に被せればよい。これにより、シートクッション3の組み付け作業を簡単に行うことができる。
【0045】
(2) 後側表皮材部分17の分割端部17Tが前側表皮材部分16の分割端部16Tに対してシート幅方向外側W2に膨らむので、後側表皮材部分17の分割端部17Tが前記切り欠き13K内を横切る状態にすることができる。これにより、切り欠き13Kからの小物の落下を防止することができる。
【0046】
(3) 前側表皮材部分16の分割端部16Tと後側表皮材部分17の分割端部17Tとが重なることで、シートフレーム32やシートクッションパッド31などの内蔵物が両分割端部16T,17Tの間から見えるのを防止することができ、外観品質を向上させることができる。
【0047】
(4) 2つ折りに折り畳まれた別の表皮材18で切り欠き13Kからの小物の落下を防止することができる。
また、シートフレーム23やシートクッションパッド31などの内蔵物が両分割端部16T,17Tの間から見えるのを前記別の表皮材18で防止することができ、外観品質を向上させることができる。
【0048】
(5) 後側表皮材部分17の分割端部17Tはシート幅方向内側W1に折り曲げられているから、前記切り欠き13Kを埋める量を増加させることができ、切り欠き13Kからの小物の落下をより確実に防止することができる。
さらに、互いに重なり合ったシート幅方向内側W1の内側分割端部17T1とシート幅方向外側W2の外側分割端部17T2とが縫製されているから、後側表皮材部分17の分割端部17Tのホツレを防ぐことができる。従って、外観品質を向上させることができる。また、ホツレ修正のための工程が不要になり、縫製の工数を減らすことができる。
【0049】
(6) 前記内側分割端部17T1と外側分割端部17T2に芯材25が挟み込まれているから、前記切り欠き13Kを埋める量を増加させることができ、切り欠き13Kからの小物の落下をより確実に防止することができる。
また、内側分割端部17T1と外側分割端部17T2と芯材25とが一体に縫製されているから、内側分割端部17T1と外側分割端部17T2の剛性を上げることができる。その結果、内側分割端部17T1と外側分割端部17T2から成る後側表皮材部分17の分割端部17Tにシワ、たるみが生じにくくすることができる。
【0050】
[別実施形態]
(1) 図5(b)に示すように、前記2つ折りに折り畳まれた別の表皮材18(図5(a)参照)に換えて、前側表皮材部分16の分割端部16Tのシート幅方向内側W1の面にカーペット材19が縫製されていてもよい。
この構成によれば、カーペット材19で切り欠き13Kを埋めることができる。すなわち、カーペット材19はシートクッションパッド31に重なっていることから、カーペット材19の厚さ分だけ前側表皮材部分16の分割端部16Tが切り欠き13K内に入り込む。これにより、カーペット材19で切り欠き13Kを埋めて、切り欠き13Kからの小物の落下を防止することができる。また、カーペット材19が前側表皮材部分16の分割端部16Tのシート幅方向内側W1の面(裏面)に縫製されていることで、カーペット材19が見えにくくなり、見栄えが低下することを回避することができる。
さらに、カーペット材19は端部にホツレが発生しない為、ホツレ修正のための工程が不要になり、縫製の工数を減らすことができる。
【0051】
(2) 前記芯材25を前記カーペット材19と同一素材、同一形状にしてもよい。これにより、製作コストを削減することができる。
【0052】
(3) 前記芯材25や前記カーペット材19は複数枚重ねられていてもよい。これにより、前記切り欠き13Kを埋める量の調整が可能である。
【0053】
(4) 以上の実施形態で挙げた数値は一例であり、別の数値であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
3 シートクッション
10 カバー
10S カバーの周縁部
13K 切り欠き
14 張り出しカバー部
15 表皮材(シートクッションパッドの側面を覆う表皮材)
16 前側表皮材部分
16E 前側表皮材部分の分割端部の端縁
16T 前側表皮材部分の分割端部(他方の分割端部)
17 後側表皮材部分
17E 後側表皮材部分の分割端部の端縁
17T 後側表皮材部分の分割端部(一方の分割端部)
17T1 内側分割端部
17T2 外側分割端部
18 別の表皮材
19 カーペット材
20 バックル
21 バックルプレート
22 バックル本体
25 芯材
31 シートクッションパッド
31S シートクッションパッドの側面
Fr シート前方側
Rr シート後方側
W2 シート幅方向外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6