(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マンドレルとリベット本体とからなるブラインドリベットの前記マンドレルを軸方向に引き込むことにより、前記リベット本体のスリーブを拡径するように変形させ、拡径したスリーブ部分と前記リベット本体のフランジとによって前記リベット本体を被取付部材に締結し、前記マンドレルを破断するブラインドリベット締結装置であって、
一端部に配置された電動モータと、
前記電動モータの回転を伝達する動力伝達手段と、
前記電動モータの前方に配置され、前記動力伝達手段により動力を伝えられ回転するスピンドルと、
前記スピンドルに隣接し、前記スピンドルに接続されて回転するボールスクリューナットと、
前記ボールスクリューナットの軸方向中央部に設けられ、前記ボールスクリューナットの回転により軸方向に移動するボールスクリューシャフトと、
前記ボールスクリューシャフトに接続され、前記マンドレルの軸部を把持して引き込む引き込み手段と、
前記電動モータの回転数を検出する回転数検出素子と、
ハンドル部に設けられたトリガと、
前記トリガの引き操作と、前記電動モータの回転数とによって、前記電動モータの正回転を制御し、前記トリガの引き操作の解除と、前記電動モータの回転数とによって、逆回転と、停止とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするブラインドリベット締結装置。
請求項1に記載の電動ブラインドリベット締結装置であって、破断したマンドレル軸部の部分を収容する回収容器を、前記電動モータと前記スピンドルの間に配置したことを特徴とするブラインドリベット締結装置。
請求項7に記載の電動ブラインドリベット締結装置であって、前記ボールスクリューシャフトが軸方向後端部に達すると、前記ボールスクリューシャフトの後端部に一体に結合された円筒形のテールのテール凸部が、前記スピンドルクラッチの内側端面を軸方向後方に押して、前記スピンドルクラッチの前記扇型部分と、前記ナットクラッチの前記扇型部分との係合が解除されるブラインドリベット締結装置。
請求項10に記載の電動ブラインドリベット締結装置であって、前記ボールスクリューシャフトが前端部に達すると、前記ボールスクリューシャフトは、軸方向に移動せず、前記ボールスクリューナットと共に回転し、前記フロントクラッチが回転し、前記リアクラッチは軸方向後方に後退し、前記フロントクラッチは回転するようになっているブラインドリベット締結装置。
【背景技術】
【0002】
ブラインドリベットは、マンドレルとリベット本体とからなり、リベット本体は、中空の円筒スリーブとその円筒スリーブの一に形成された大径のフランジとからなる。マンドレルは、リベット本体を貫通しフランジから長く延び出てブラインドリベット締結装置に把持される部分を有する軸部と、円筒スリーブの他端の側に隣接して突出するように配置される円筒スリーブの内径より大径のマンドレルヘッドとからなる。ブラインドリベットは、マンドレル軸部の把持部分がブラインドリベット締結装置のノーズに挿入されてリベット本体とマンドレルヘッドがノーズから出た状態でブラインドリベット締結装置に保持される。ブラインドリベット締結装置に保持されたブラインドリベットは、リベット本体のスリーブが被締結部材の取付孔に挿入されてフランジが被締結部材に接面される。
【0003】
次に、ブラインドリベット締結装置のプリングヘッドの動作によりマンドレル軸部が強く引き抜かれ、マンドレルヘッドがスリーブの一部を拡膨変形させ、その拡膨変形したスリーブ部分とフランジとの間に被締結部材が強く挟持され、マンドレル軸部に形成された小径の破断可能部で破断することにより、リベット本体が被締結部材に締結される。被締結部材が車体パネルと該車体パネルに取付けられる部品とである場合、車体パネルに部品の取付部が重ねられた状態でブラインドリベットが両部材に締結されることによって、車体パネルに部品が固着される。ブラインドリベットは、被締結部材として車体パネルのような面積の大きいパネルであっても片側から締結作業ができる利点がある。一般的に、ブラインドリベットは、スチールやアルミニウム等の金属材料でなる。締結後、ブラインドリベットの破断したマンドレルの軸部部分は、ブラインドリベット締結装置から回収する必要がある。
【0004】
特許文献1は、ブラインドリベット締結装置の1つとして、バッテリで駆動される電動モータを使用した電動ブラインドリベット締結装置を開示する。ハンドルに保持された電動モータは、ブラインドリベット締結機構を駆動して、ノーズに把持されたブラインドリベットのマンドレル軸部の把持部分を、マンドレルヘッドがスリーブの一部を拡膨変形し、マンドレル軸部が小径の破断可能部で破断されるように強く引き抜き、ブラインドリベットを被締結部材に締結する。バッテリで駆動される電動ブラインドリベット締結装置は、空圧作動のブラインドリベット締結装置や油圧作動のブラインドリベット締結装置と違って、空圧又は油圧等の圧力流体の供給源とハンドルとの間に連結される圧力流体供給チューブが不要になり、ハンドルを持つ作業者への負担が軽減されて締結作業が容易になる。
【0005】
特許文献1に記載の電動ブラインドリベット締結装置には、破断したマンドレル軸部部分が収集される回収容器がブラインドリベット締結機構の後方に配置されている。この電動ブラインドリベット締結装置では、ハンドルの上部に大きい電動モータが配置され、締結装置の形状はハンドルの上の部分で大きく、ハンドルの上部の電動モータと、締結装置前部のノーズ部分とが重いため、締結装置の重量のバランスが良くない。そのため、作業者はハンドルを持ちにくく、作業者は快適に作業を行うことが出来ない。
【0006】
特許文献2は電動モータを用いた電動ブラインドリベット締結装置を開示する。この装置では、ブラインドリベット締結機構と、破断マンドレル軸部の収集容器と、締結機構と収集容器との間の電動モータとが、ほぼ円筒状のハウジングの中に同軸的に並べて配置されている。この電動ブラインドリベット締結装置では、電動モータがハンドルの上部より後方に配置されるので、特許文献1に記載の締結装置に比べて装置全体の重量のバランスがよく、作業者はハンドルを持ちやすく、作業者は快適に作業を行うことが出来る。
【0007】
特許文献2の電動ブラインドリベット締結装置では、ブラインドリベット締結機構と破断マンドレル軸部の収集容器との間にモータが設けられているため、破断マンドレル軸部の回収のための通路が、モータの軸心に形成され、モータの軸心には空洞が形成されることになり、使用する電動モータを特殊な構造に形成せねばならない。軸心に破断マンドレル軸部の回収通路を必要としない汎用性の電動モータを、電動ブラインドリベット締結装置に使用できるのが望ましい。
【0008】
特許文献3は、空圧制御機構で制御される油圧駆動のブラインドリベット締結装置を開示する。このブラインドリベット締結装置は、円筒形状のハウジングに収容されたブラインドリベット締結機構と、円筒形状の締結機構のハウジングにほぼ直交するように延びるハンドルとからなる。締結機構のハウジング後端には破断マンドレル軸部の回収容器が設けられている。ハンドルに設けられたトリガレバーを操作すると、ハンドル内部に設けられた空圧制御機構が動作して、ブラインドリベット締結機構の油圧制御機構を動作させる。ノーズに把持されたブラインドリベットのマンドレル軸部に強い引き抜き力が作用して、マンドレルヘッドがスリーブの一部を拡膨変形しながらマンドレル軸部が小径の破断可能部で破断されて、ブラインドリベットが被締結部材に締結され、破断マンドレル軸部が回収容器に収集される。
【0009】
特許文献3のブラインドリベット締結装置は、ハンドルに加圧空気源から延びる加圧空気の供給チューブが連結されるのを必要としており、その供給チューブが作業者の作業に負担をかけ、特許文献1、2のバッテリ駆動の電動ブラインドリベット締結装置のような、流体供給チューブを必要としない手軽な作業を望むことができず、また、供給チューブの引き回しに伴う面倒な作業からの解放が望めない。
【0010】
特許文献4は、電動モータを用いた電動ブラインドリベット締結装置を開示する。特許文献4の装置は、ハンドルの上方部分で電動モータより軸方向前方側の部分にマンドレルの軸部を収容する回収容器が設けられ、電動モータは回収容器の軸方向後方に配置され、回収容器より下方に回収容器を迂回して、電動モータの回転をプリングヘッドに伝達する動力伝達手段が設けられている。この装置では、破断マンドレルの回収容器は電動モータより前方の位置に設けられるので、破断マンドレルの回収のための通路をモータの軸心に設ける必要がない。
特許文献4の装置は、回収容器を迂回して動力伝達手段が設けられ、機械的スイッチを用いて回収容器に下を通る駆動シャフトの回転を検出し、プリングヘッドの位置を求める。機械的スイッチは回収容器の下にある体積を占有し、そのため、回収容器を設置できる容積が小さくなっていた。
【0011】
そのため、破断マンドレルの回収のための通路をモータの軸心に設けるのを必要としない、バッテリで駆動できる、小型のブラインドリベット締結装置が求められていた。
また、破断マンドレルの回収のための回収容器の容積を大きくとることの出来るブラインドリベット締結装置が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、破断マンドレルの回収のための通路をモータの軸心に設けることを必要としない、バッテリで駆動できる小型のブラインドリベット締結装置を提供することである。
本発明の別の目的は、破断マンドレルの回収のための回収容器の容積を大きくとることの出来るブラインドリベット締結装置を提供することである。
本発明の別の目的は、装置に異常なトルクがかかるのを回避することの出来るブラインドリベット締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、マンドレルの回収容器をブラシレスモータより前方に配置し、回収容器の下方に設けられた第2シャフトにより、回収容器を迂回して電動モータの回転をプリングヘッドに伝達する。ブラシレスモータの回転から、プリングヘッドの位置を求める。そのため、機械的スイッチが不要で、回収容器の容積を大きくすることが出来、耐久性が向上する。また、クラッチを設け、プリングヘッドのホーム位置の位置決めをし、異常なトルクがかかるのを回避する。
【0015】
本発明の一態様は、マンドレルとリベット本体とからなるブラインドリベットの前記マンドレルを軸方向に引き込むことにより、前記リベット本体のスリーブを拡径するように変形させ、拡径したスリーブ部分と前記リベット本体のフランジとによって前記リベット本体を被取付部材に締結し、前記マンドレルを破断するブラインドリベット締結装置であって、
一端部に配置された電動モータと、
前記電動モータの回転を伝達する動力伝達手段と、
前記電動モータの前方に配置され、前記動力伝達手段により動力を伝えられ回転するスピンドルと、
前記スピンドルに隣接し、前記スピンドルに接続されて回転するボールスクリューナットと、
前記ボールスクリューナットの軸方向中央部に設けられ、前記ボールスクリューナットの回転により軸方向に移動するボールスクリューシャフトと、
前記ボールスクリューシャフトに接続され、前記マンドレルの軸部を把持して引き込む引き込み手段と、
前記電動モータの回転数を検出する回転数検出素子と、
ハンドル部に設けられたトリガと、
前記トリガの引き操作と、前記電動モータの回転数とによって、前記電動モータの正回転と、逆回転と、停止とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするブラインドリベット締結装置である。
【0016】
本発明によるバッテリで駆動する電動ブラインドリベット締結装置は、電動モータの回転を検出することにより、プリングヘッドの位置を求めることが出来る。そのため、プリングヘッドの位置を求める機械的スイッチが不要であり、耐久性を向上させることが出来る。
前記電動ブラインドリベット締結装置おいて、破断したマンドレルの回収容器がツールハウジングの電動モータより前方の位置に設けられるので、破断マンドレルの回収のための通路をモータの軸心に設ける必要がない。破断マンドレルの回収容器が電動モータとスピンドルの間に配置され、回収容器を迂回して動力を伝達することが出来、電動モータの回転を検出することにより、プリングヘッドの位置を求めることが出来る。そのため、プリングヘッドの位置を求める機械的スイッチが不要であり、回収容器の容積を大きくすることが出来る。
【0017】
前記ブラインドリベット締結装置において、前記引き込み手段は、
前記ボールスクリューシャフトの軸方向移動により軸方向に移動するプリングヘッドと、
前記プリングヘッドに隣接して前記プリングヘッドと一体に配置され、前端に向かって内径が小さくなる内周面を有するジョーケースと、
前記ジョーケース内に配置され、前記ジョーケースの内周面に当接する外周面を有するジョーと、
前記ジョーに隣接して配置され、前記マンドレルの軸部を通す開口部を有するノーズピースと、を有することが出来る。
これにより、マンドレルの軸部を確実に把持して引き込み、ブラインドリベットを締結することが出来る。
【0018】
前記ブラインドリベット締結装置において、前記動力伝達手段は、
前記電動モータに結合したモータギヤと、前記モータギヤの下方に設けられ前記モータギヤに係合する後部ギヤと、前記スピンドルに係合するスピンドルギヤと、前記スピンドルギヤの下方に設けられ前記スピンドルギヤに係合する前部ギヤと、前記回収容器の下方に設けられ、前記後部ギヤと前記前部ギヤとを一体に結合する第2シャフトとを有することが出来る。
これにより、電動モータのシャフトと平行な第2シャフトにより電動モータからスピンドルへ前記回収容器を迂回して動力を伝達することが出来る。
【0019】
前記ブラインドリベット締結装置において、前記電動モータは、ブラシレスモータでもよい。
ブラシレスモータにより、モータの回転数を正確に制御することが出来る。
前記ブラインドリベット締結装置において、前記回転数検出素子は、ホール素子でもよい。
ブラシレスモータに含まれているホール素子により、容易に電動モータの回転を検出することが出来る。
【0020】
前記ブラインドリベット締結装置において、円筒部と扇型部分とを有し、前記スピンドルに対して軸方向に移動可能で、前記スピンドルと一体に回転するスピンドルクラッチと、
前記スピンドルクラッチの前記扇型部分と係合する扇型部分を有し、前記ボールスクリューナットと一体に結合されたナットクラッチとを含む第1クラッチを備え、
前記第1クラッチは、前記スピンドルクラッチと前記ナットクラッチとの係合を解除することが出来、前記スピンドルの回転が前記ボールスクリューナットに伝わらないようにすることが出来る。
これにより、プリングヘッドの引き込みすぎを防止することが出来る。
【0021】
前記ボールスクリューシャフトが軸方向後端部に達すると、前記ボールスクリューシャフトの後端部に一体に結合された円筒形のテールのテール凸部が、前記スピンドルクラッチの内側端面を軸方向後方に押して、前記スピンドルクラッチの前記扇型部分と、前記ナットクラッチの前記扇型部分との係合が解除されるようにしてもよい。
【0022】
前記ブラインドリベット締結装置において、円筒形で、前端部に鋸歯を有し、前記プリングヘッドの周囲に軸方向に移動可能で、回転不能に配置されたリアクラッチと、
円筒形で、後端部に前記リアクラッチの前記鋸歯と係合する鋸歯を有し、前記リアクラッチの前方に配置され、前記プリングヘッドの周囲に配置され、前記プリングヘッドと一体に結合されたフロントクラッチとを含む第2クラッチを備えることが出来る。
これにより、プリングヘッドがホーム位置より前方へ出るのを防止することが出来る。
【0023】
前記リアクラッチの前記鋸歯は、一方の面が前記リアクラッチの軸方向に平行な面であり、他方の面が前記軸方向に対して傾斜していて、
前記フロントクラッチの前記鋸歯は、前記リアクラッチの前記鋸歯と係合する形状であっても良い。
【0024】
前記ボールスクリューシャフトが前端部に達すると、前記ボールスクリューシャフトは、軸方向に移動せず、前記ボールスクリューナットと共に回転し、前記フロントクラッチが回転し、前記リアクラッチは軸方向後方に後退し、前記フロントクラッチは回転するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、破断マンドレルの回収のための通路をモータの軸心に設けることを必要としない、バッテリで駆動できる小型のブラインドリベット締結装置を提供することが出来る。
また、本発明によれば、破断マンドレルの回収のための回収容器の容積を大きくとることの出来、耐久性が向上したブラインドリベット締結装置を提供することが出来る。
また、本発明によれば、装置に異常なトルクがかかるのを回避することの出来るブラインドリベット締結装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る電動ブラインドリベット締結装置の1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の1実施形態による電動ブラインドリベット締結装置の正面図である。電動ブラインドリベット締結装置1は、ほぼ円筒形状のハウジングに収容されたブラインドリベット締結機構2と、この締結機構2の中間位置からほぼ直交して垂下するように延びるハンドル3とを備える。ハンドル3の下部には、バッテリがバッテリ保持部5に取り外し可能に取付けられている。ハンドル3の締結機構2に隣接する位置には、トリガ6が設けられる。作業者がトリガ6を引くことにより、締結機構2を動作させブラインドリベットの締結動作を行わせ、トリガ6の引き操作を解除することによって締結機構2をホーム位置HP(前端位置)に戻し、締結動作を解除(又は停止)させる。
【0028】
ブラインドリベット締結機構2は、前方(
図1の右側)のノーズ7と、後方(
図1の左側)のモータ部9と、中央部の動力伝達・制御部11とを含む。ノーズ7には、ブラインドリベットのマンドレル軸部を後方(
図1の左方)に強く引き抜くプリングヘッド30(
図3等)が設けられ、モータ部9には、ブラシレスモータからなる電動モータ13が収容される。
【0029】
(ブラシレスモータ)
図2は、本発明による電動ブラインドリベット締結装置1のモータ部9と、動力伝達・制御部11との構造を示す。まず、モータ部9について説明する。本発明では、電動モータ13はブラシレスモータである。ブラシレスモータは、回転子は磁石であり、巻線回路は固定子側にある。電動モータ13に組み込まれたホール素子(磁気センサー)13Aで回転子の回転角度を検出する。ブラシレスモータ用の電子回路13Bは、回転子の磁極に合わせたタイミングでスイッチングをしている。ブラシレスモータは、回転子の回転を検出することにより、プリングヘッドの位置を求めることが出来る。回転子の回転検出にホール素子以外の公知の素子を使用することもできる。ブラシレスモータは良く知られているので、これ以上詳述しない。
【0030】
(回収容器)
ノーズ7とモータ部9の間で、ハンドル3の上部に、破断したマンドレル軸部の回収容器10が設けられている。回収容器10は、半円形の円筒形状に形成され、透明又は半透明のカバー10Aで包囲される。カバー10Aを通して、収容された破断マンドレル軸部を外側から見ることができる。カバー10Aは、破断マンドレル軸部を廃棄できるように開閉可能に形成されている。
【0031】
この回収容器10がある位置から、ハンドル3がブラインドリベット締結装置1を作業者に握り易いように斜め下方に延びている。回収容器10がツールハウジング27の中間位置に配置されるので、特許文献2のように、ツールハウジングの後端にマンドレルコレクタを設置する必要がなく、特許文献1のような電動モータの重量による作業者への手持ちの場合の不安定さをなくすことが出来る。
【0032】
(動力伝達機構)
モータ部9とノーズ7との間で、回収容器10の下の部分に、動力伝達・制御部11が設けられる。動力伝達・制御部11は、モータ部9の電動モータ13の回転力(トルク)をノーズ7内のスピンドル14に伝達する動力伝達機構と、トリガの引き操作とその解除操作によって電動モータ13の回転を制御して、スピンドル14の回転を介してノーズ7のプリングヘッドの前進と後退を制御する制御機構とが設けられている。電動ブラインドリベット締結装置1は、バッテリを電源とする電動モータ13でブラインドリベットの締結を行うので、加圧空気等の流体供給チューブを必要とせず、流体供給チューブの引き回しに伴う面倒な作業から解放される。
【0033】
動力伝達・制御部11は、モータ部9のブラシレスモータからなる電動モータ13からの回転力を、回収容器10によって占有される空間を迂回して、ノーズ7のスピンドル14に伝達する機構を有する。回収容器10の後方側には、電動モータ13のモータシャフトに連結されたモータギヤ15が配置され、回収容器10の前方側には、モータシャフトの軸心と同軸の軸心を有するスピンドル14に連結されたスピンドルギヤ17が配置されている。
【0034】
モータギヤ15とスピンドルギヤ17との間には、回収容器10の下方の空間に、第2シャフト18が設けられている。第2シャフト18は、ブラインドリベット締結機構2の前後方向(すなわち軸方向)であって、且つ電動モータ13のモータシャフトとスピンドル14の軸線に平行な方向に、軸回りに回転可能に支持されている。第2シャフト18の後端には、モータギヤ15に係合する後部ギヤ19が取付けられ、第2シャフト18の前端には、スピンドルギヤ17に係合する前部ギヤ21が取付けられている。第2シャフト18は、1本のシャフトであり、後部ギヤ19と前部ギヤ21とを結合する。
【0035】
モータギヤ15に後部ギヤ19が係合しているので、電動モータ13が正回転すると第2シャフト18は逆回転する。前部ギヤ21がスピンドルギヤ17に係合しているので、第2シャフト18が逆回転すると、スピンドルギヤ17が正回転し、スピンドル14は正回転する。これによって、スピンドル14は、電動モータ13と同じ方向に回転する。なお、モータギヤ15と後部ギヤ19、及び、前部ギヤ21とスピンドルギヤ17のギヤ比は、電動モータ13の出力とブラインドリベットの締結力との兼ね合いによって任意に定められる。
【0036】
動力伝達・制御部11は、更に、トリガ6の引き操作とその解除操作によって電動モータ13を、正回転させ、停止させ、逆回転させるのを制御する制御機構を有する。上記のように、電動モータ13の回転は第2シャフト18を介してスピンドル14に伝達されている。制御機構は、トリガ6の引き操作とその解除操作に応答して、電動モータ13を制御することにより、ノーズ7のプリングヘッド30を、ホーム位置HPからブラインドリベットのマンドレル軸部を破断する後端位置RPまで後退させ、その後端位置RPで停止させ、トリガ6の引き操作の解除によって、後端位置RPから前進させて前端位置のホーム位置HPに復帰させる。
なお、ホーム位置HPと、後端位置RPとは、プリングヘッド30の軸方向位置として説明するが、ボールスクリューシャフト36、ジョーケース32、ジョー29も対応するホーム位置HPと、後端位置RPとがある。
【0037】
(ブラインドリベット)
図3は、
図1の電動ブラインドリベット締結装置の締結機構の前方部分の縦断面図であり、ノーズ7にブラインドリベットが装着された状態を示す。
ブラインドリベットが、電動ブラインドリベット締結装置1のノーズピース31に保持されている。ブラインドリベットは、棒状のマンドレルMと、中空の円筒状のリベット本体Rとからなる。リベット本体Rは、円筒スリーブSと、円筒スリーブの一端に形成された円筒スリーブより大径のフランジFとからなる。マンドレルMは、リベット本体を貫通してフランジから長く延び出る棒状体でなり、リベット本体Rのフランジを貫通してノーズ7に把持される部分を有する軸部Jと、円筒スリーブSの内径より大径に形成されて円筒スリーブの他端から延び出るように配置されるマンドレルヘッドHとからなる。ブラインドリベットは、マンドレル軸部Jの把持部分がブラインドリベット締結装置1のノーズ7に挿入されてリベット本体RとマンドレルヘッドHがノーズから出た状態でブラインドリベット締結装置に保持される。
【0038】
ブラインドリベット締結装置1に保持されたブラインドリベットは、リベット本体RのスリーブSが車体パネル及び取付部品等の被締結部材に接面するまで被締結部材の取付孔に挿入される。次に、ブラインドリベット締結装置1によってマンドレル軸部が強く引き抜かれて、マンドレルヘッドHがリベット本体RのスリーブSの一部を拡膨変形させ、その拡膨変形したスリーブ部分とフランジFとの間に被締結部材が強く挟持される。車体パネル及び部品等の複数の被締結部材が拡膨変形したスリーブ部分とフランジFとの間に相互に強く挟持されることにより、リベット本体Rが被締結部材に締結され、車体パネルに部品等が固着される。一般的に、ブラインドリベットは、スチールやアルミニウム等の金属材料からなる。締結後のブラインドリベットにおいて、破断したマンドレル軸部は回収する必要がある。
【0039】
(ノーズ)
図3、4を参照して、ブラインドリベットを締結するブラインドリベット締結機構2の構造及び動作について説明する。ノーズ7は、回収容器10より前方の、ブラインドリベット締結機構2の前方部分を占めている。
図3に示すように、ノーズ7は、軸心の部分が中空に形成されて、ブラインドリベットのマンドレルMを受入れて保持し、更に、破断したマンドレル軸部Jを回収容器10へ送ることが出来るようになっている。ノーズ7は、マンドレル軸部Jを把持するジョー29と、ジョー29を包囲するジョーケース32と、ジョーケース32と一体になりジョー29を後方側に引込めるようにブラインドリベット締結機構2の軸方向に移動可能なプリングヘッド30とを備える。
【0040】
ジョー29で把持されたマンドレル軸部Jは、プリングヘッド30の後方への直線移動により強く引っ張られ、マンドレルヘッドHがリベット本体RのスリーブSの一部を拡膨変形させ、その拡膨変形したスリーブ部分とフランジFとの間に被締結部材が堅く挟持され、マンドレル軸部Jが破断可能部で破断して、ブラインドリベットが被締結部材に締結される。
【0041】
図4は、
図3の締結機構のノーズ7の前方部分の縦断面図であり、ブラインドリベットの破断マンドレル軸部がノーズ部分に残っている状態を示す。ノーズ7は、先端のノーズピース31と、ノーズピース31から後方のツールハウジング27に向けて延び、円筒形のノーズハウジング33を有する。ノーズハウジング33の内側には、筒状のプリングヘッド30が、ノーズハウジング33に対して軸方向(前後方向)にスライド可能に収容される。ジョー29は、その先端がノーズピース31の後端に隣接するように配置されており、ノーズピース31に向けて先細の形状に形成されてジョーケース32の先細形状の空洞に収容される。
【0042】
ジョーケース32が後方に引込まれたとき、先細部分の斜面に軸心へ求心するように力が付与されて、ジョー29の軸心の空洞に保持されたブラインドリベットのマンドレルMの軸部Jの把持力を強化している。
ジョー29は、筒状のジョーケース32の中で周方向に、2個〜3個に分割されて、ジョーケース32の中で軸心が空洞の中空の筒状体に組合わされ、ノーズピース31から挿入されたブラインドリベットのマンドレルMを受入れて、マンドレルMの軸部Jが抜け落ちないように保持する。
【0043】
ジョー29の後方には、中空の筒状体のジョープッシャー35が配置され、ジョー29を前方へ押圧している。ジョープッシャー35とプリングヘッド30との間には、ジョープッシャーバネ42が配置され、ジョープッシャー35を前方へ押圧している。
【0044】
本発明の実施形態において、プリングヘッド30は、ジョー29を包囲支持するジョーケース32と一体であり、ノーズハウジング33に対して軸心が整列した状態で配置され、且つ、ノーズハウジング33に対して軸方向にスライド可能に配置されている。プリングヘッド30は、ジョー29を前端の位置から後端位置まで引込むことができ、また後端位置から前端位置に復帰させることができる。
【0045】
ノーズピース31の入口部分には、O−リング46と鋼球47とが中空通路の一部を阻害するように設けられ、ブラインドリベットのマンドレルMの挿入は許すが、破断マンドレル軸部43がノーズピース31から外部へ排出されてしまうのを防止している。
【0046】
プリングヘッド30とジョーケース32は、ノーズハウジング33の中で軸方向にスライド可能である。
第2クラッチに関して後述するように、プリングヘッド30は、スピンドル14の正回転方向には回転できなが、一定以上の逆回転力がかかると逆回転するようになっている。
【0047】
図3に戻って、プリングヘッド30は、その後方のボールスクリューシャフト36に固定されている。ボールスクリューシャフト36は、円筒形の部材であり、ツールハウジング27に固定されたマストハウジング34の内側を軸方向に延びている。ボールスクリューシャフト36の軸方向後方には、ボールスクリューシャフト36より細い円筒形のテール45が接続されている。テール45は、スピンドル14の軸心部分に沿って後方に延びる。テール45とボールスクリューシャフト36とプリングヘッド30とは直線運動し、ジョー29を、ノーズ7の後方に引込めたりノーズ7の前方に戻したりする。
【0048】
スピンドル14は、後述するように第1クラッチを介して、ボールスクリューナット44に接続されている。ボールスクリューナット44の軸心部分に、ボールスクリューシャフト36が配置される。ボールスクリューナット44には内ねじが形成されている。この内ねじには、ボールスクリューシャフト36の外ねじが螺入している。
【0049】
スピンドル14の回転は、ボールスクリューナット44に伝えられる。軸方向に移動しないスピンドル14の正回転は、ボールスクリューシャフト36を後方に引込める後退運動に変換され、スピンドル14の逆回転はボールスクリューシャフト36を前方に復帰させる前進運動に変換される。スピンドル14が正回転すると、ボールスクリューシャフト36、プリングヘッド30が後退し、プラインドリベットのマンドレル軸部Jを、ジョー29で把持して強く引込み、プラインドリベットを締結する。
【0050】
図3に示すように、ジョー29と、ジョープッシャー35と、プリングヘッド30と、ボールスクリューシャフト36と、テール45のそれぞれの軸心部分は、ノーズ7の入口から回収容器10の入口へ連続する中空の通路として形成されている。これによって、ジョー29にマンドレルMの軸部が挿入され、破断されたマンドレル軸部43が
図3の矢印48のように回収容器10に送り込まれる。破断マンドレル軸部の送りは、次々に中空通路に送られる破断マンドレル軸部が前の破断マンドレル軸部を押し出す方法で行われる。
【0051】
(クラッチ)
本発明の実施形態では、プリングヘッド30が前端部に位置するホーム位置HPと、マンドレルを破断する後端位置RPとの間で移動するように制御されている。しかし、何らかの異常により、プリングヘッド30がホーム位置HPと後端位置RPとの範囲外に移動するなどして異常なトルクがかかった場合、それを防止するクラッチ機構が設けられている。
図5は、ノーズ7の部分を示す斜視図であり、マストハウジング34とノーズハウジング33を取り除いて、内部の構造を示す。
【0052】
スピンドル14とボールスクリューナット44との間の部分に、スピンドルクラッチ61とナットクラッチ62とからなる第1クラッチが設けられる。第1クラッチは、プリングヘッド30の引き込みにより後端位置RPにくると、スピンドルクラッチ61とナットクラッチ62との係合を解除し、スピンドル14からボールスクリューナット44に回転が伝わらないようにし、プリングヘッド30の引き込みすぎを防止する。
また、ボールスクリューシャフト36の前方にリアクラッチ63とフロントクラッチ64とからなる第2クラッチが設けられる。第2クラッチは、プリングヘッド30が前端のホーム位置HPまで前進すると、フロントクラッチ64とプリングヘッド30とがボールスクリューナット44と共に回転することを許容し、プリングヘッド30等に異常なトルクがかかることを防止する。
【0053】
(第1クラッチ)
図6は、スピンドルクラッチ61とナットクラッチ62とからなる第1クラッチの部分の斜視図であり、ツールハウジング27と、マストハウジング34の一部を取り除いて、内部の構造を示す。
円筒形のスピンドル14の内側に隣接して、スピンドルクラッチ61が設けられる。スピンドルクラッチ61は、スピンドル14に対して回転することは出来ないが、軸方向に摺動することが出来、スピンドルクラッチバネ65により、ナットクラッチ62の方向に押し付けられている。スピンドルクラッチ61は、円筒形の円筒部と、円筒部の端部のフランジ部とを有する。フランジ部は、軸方向から見て扇型形状の扇型部分を有する。
【0054】
ボールスクリューナット44と一体にナットクラッチ62が設けられる。ナットクラッチ62は、扇型部分を有し、この扇型部分はスピンドルクラッチ61の扇型部分のない部分に入り込むことのできる形状である。即ち、スピンドルクラッチ61の扇型部分と、ナットクラッチ62の扇型部分とは、相補的な形状である。プリングヘッド30が後端位置RPより前方の位置にあるときは、スピンドルクラッチ61の扇型部分と、ナットクラッチ62の扇型部分とがかみ合い、スピンドルクラッチ61の回転は、ナットクラッチ62に伝えられる。
【0055】
ボールスクリューシャフト36の後端部には、テール45が結合している。テール45の軸部にテール凸部45Aが一体に設けられている。プリングヘッド30が後方に移動すると、テール45も後方に移動する。テール凸部45Aは、スピンドルクラッチ61の内側を後方に移動し、スピンドルクラッチ61の内側端面に到達すると、その端面を押し、スピンドルクラッチ61をスピンドルクラッチバネ65の押圧力に抗して、後方(矢印41の方向)へ移動させる。その結果、スピンドルクラッチ61と、ナットクラッチ62との係合は解除されるようになっている。
【0056】
プリングヘッド30がホーム位置HPにある状態でトリガ6を押すと、電動モータ13は、正回転(矢印39の方向)に回転する。電動モータ13の回転は、スピンドル14に伝えられ、スピンドル14と一体に固定されたスピンドルクラッチ61からナットクラッチ62に伝えられ、ナットクラッチ62と一体のボールスクリューナット44が回転し、ボールスクリューシャフト36が矢印41の方向(後方向)に移動する。
【0057】
プリングヘッド30が後端位置RPに来ると、ボールスクリューシャフト36と一体のテール45のテール凸部45Aがスピンドルクラッチ61の内側端面に当たる。スピンドルクラッチ61は、テール凸部45Aに押されて、スピンドルクラッチバネ65の押圧力に抗して、矢印41の方向へ移動する。スピンドルクラッチ61と、ナットクラッチ62との係合は解除される。その結果、ボールスクリューナット44とスピンドルクラッチ61とが回転しても、ナットクラッチ62は回転しなくなる。ボールスクリューシャフト36の矢印41の方向への移動は停止し、プリングヘッド30の引き込み動作は停止する。
【0058】
何らかの異常により、プリングヘッド30が所定の後端位置RPまで後退して、スピンドル14の正回転が止まらない場合でも、後端位置RPにおいて、スピンドルクラッチ61と、ナットクラッチ62との係合は解除され、スピンドルクラッチ61からナットクラッチ62へ回転は伝えられず、プリングヘッド30の引きこみすぎを防止することが出来る。
【0059】
(第2クラッチ)
図7A〜Cは、リアクラッチ63とフロントクラッチ64とからなる第2クラッチの部分の斜視図であり、ノーズハウジング33と、マストハウジング34の一部を取り除いて、内部の構造を示す。
図7Aは、プリングヘッド30が後端位置RPにあり、ホーム位置HPに戻り始める状態を示す。
図7Bは、プリングヘッド30がホーム位置HPに戻り、ボールスクリューシャフト36が前端部に到達した状態を示す。
図7Cは、ホーム位置HPで、フロントクラッチ64とリアクラッチ63の係合が解除され、プリングヘッド30が移動しなくなる状態を示す。
【0060】
図7Aを参照する。ボールスクリューシャフト36が前端部より後方にあるときは、テール45の端面はナットクラッチ62に当接していず、ボールスクリューナット44が回転すると、ボールスクリューシャフト36は軸方向に移動する。ボールスクリューシャフト36が前端部に到達すると、テール45の端面はナットクラッチ62に当接するので、ボールスクリューシャフト36はそれ以上前方へは移動しない。ボールスクリューシャフト36の外ねじは、ボールスクリューナット44の内ねじに係合しているので、ボールスクリューシャフト36は、ボールスクリューナット44と共に回転するようになっている。
【0061】
リアクラッチ63は、プリングヘッド30の周りを囲む円筒形の部材であり、プリングヘッド30の周りに軸方向に所定距離だけ移動可能に配置されている。リアクラッチ63の前方側に鋸歯が設けられている。鋸歯の一方の面は軸方向に平行であり、他方の面は斜面になっている。また、リアクラッチ63の外周部に、マストハウジング34に当接して、回転止めの作用をするリアクラッチ凸部63Aを有する。リアクラッチ63は、リアクラッチバネ66により、前方のフロントクラッチ64に押し付けられている。
【0062】
プリングヘッド30の周りで、リアクラッチ63の前方側に、円筒形のフロントクラッチ64が設けられる。フロントクラッチ64は、プリングヘッド30と一体に回転するように結合されている。フロントクラッチ64は、リアクラッチ63に面する後方側に鋸歯を有する。フロントクラッチ64の鋸歯の一方の面は軸方向に平行であり、他方の面は斜面になっていて、リアクラッチ63の鋸歯と係合する。
【0063】
フロントクラッチ64が矢印39Rと反対方向に正回転すると、リアクラッチ63の鋸歯とフロントクラッチ64の鋸歯とは、鋸歯の軸方向の面がかみ合うので、スリップしない。リアクラッチ63は、リアクラッチ凸部63Aで回転止めされているので、フロントクラッチ64、プリングヘッド30は回転できない。
従って、スピンドル14が正回転し、プリングヘッド30が後方へ移動する締結動作のときは、プリングヘッド30は回転止めされている。
【0064】
フロントクラッチ64が矢印39Rの方向に逆回転すると、リアクラッチ63の鋸歯とフロントクラッチ64の鋸歯とは、鋸歯の斜面がかみ合うので、所定以上の回転力がかかるとスリップする。リアクラッチ63は、リアクラッチバネ66の押圧力に抗して、矢印41で示す後方向にスライドする。そのため、フロントクラッチ64の逆回転は、リアクラッチ63に伝わらず、フロントクラッチ64、プリングヘッド30は回転するようになっている。
従って、プリングヘッド30がホーム位置HPへ戻っても、スピンドル14の回転が止まらない場合、プリングヘッド30とフロントクラッチ64とは、スピンドル14と共に矢印39Rの方向に逆回転し、リアクラッチ63が後退してフロントクラッチ64との係合が解除され、フロントクラッチ64の回転を許容するようになっている。
【0065】
図7Aに示すように、プリングヘッド30が後端位置RPにあるときトリガ6の引き操作を解除すると、電動モータ13は矢印39Rの方向に逆回転し、モータ13の回転はスピンドルクラッチ61からナットクラッチ62へ伝えられ、ナットクラッチ62と一体のボールスクリューナット44が矢印39Rの方向に逆回転し、リアクラッチ63とフロントクラッチ64との係合により回転が出来ないボールスクリューシャフト36は矢印41Rの方向(前方向)へ移動する。テール45はナットクラッチ62に当接していない。
【0066】
図7Bを参照する。プリングヘッド30がホーム位置HPに戻り、ボールスクリューシャフト36が前端部に到達すると、テール45の端面がナットクラッチ62に当接する。ボールスクリューシャフト36はそれ以上矢印41Rの方向へ移動しない。ボールスクリューシャフト36はボールスクリューナット44と共に回転し始める。ボールスクリューシャフト36の回転は、プリングヘッド30を介して、フロントクラッチ64に伝えられる。
【0067】
図7Cを参照する。リアクラッチ凸部63Aが、マストハウジング34に接触し、リアクラッチ63は回転しない。フロントクラッチ64が回転し始めると、リアクラッチ63は、マストハウジング34により回転できないので、リアクラッチバネ66の押圧力に抗して、矢印41の方向(後方向)へ移動し、フロントクラッチ64とリアクラッチ63の係合は解除される。プリングヘッド30と、ジョーケース32と、フロントクラッチ64とは、前方へ移動せず、回転する。
【0068】
何らかの異常により、プリングヘッド30がホーム位置HPまで復帰しても、スピンドル14の逆回転が止まらない場合、プリングヘッド30と、ジョーケース32と、フロントクラッチ64とは回転し、リアクラッチ63は後方へ移動する。フロントクラッチ64は、リアクラッチ63に回転を妨害されずに回転するので、ボールスクリューシャフト36の回転を許し、プリングヘッド30がホーム位置HPより前方へ出るのを防止することが出来る。
【0069】
(締結装置の動作制御)
トリガ6の引き操作及びその解除操作によって、動力伝達・制御部11は、電動モータ13を、正回転させ、停止させ、逆回転させる。電動モータ13のモータシャフトが軸回りに回転すると、モータギヤ15と後部ギヤ19とによって第2シャフト18は軸回りに回転し、第2シャフト18が回転すると、前部ギヤ21とスピンドルギヤ17とによってスピンドル14は軸回りに回転する。ボールスクリューナット44が回転し、ボールスクリューシャフト36は軸方向に移動する。プリングヘッド30を後方へ引き込み、また前方へ戻す。
【0070】
図8は、動力伝達・制御部のブロック図である。
図8に示される制御回路55によって、トリガ6の引き操作とその解除操作によって動作するトリガスイッチ49のオン・オフ信号に応答して、電動モータ13が制御され、ノーズ7のプリングヘッド30を、ブラインドリベット締結機構2の前端のホーム位置HPからブラインドリベットのマンドレル軸部を破断する後端位置RPまで後退させ、後端位置RPで停止させ、後端位置RPから前端位置のホーム位置HPまで前進させる。
【0071】
トリガ6の操作と、電動モータ13の回転数検出とによって、電動モータ13、スピンドル14、プリングヘッド30、ジョー29等が、制御手段によって、どのように制御されるかを説明する。
ホール素子13Aにより電動モータ13の回転数を検出し、電子回路13Bにより、電動モータ13の回転数信号(R)が、制御手段となる制御回路55に入力される。また、トリガ6の引き操作とその解除によってオン・オフされるトリガスイッチ49のオン・オフ信号が制御回路55に入力される。制御回路55には、信号処理部55Aが設けられている。信号処理部55Aは、電動モータ13の回転数信号(R)と、トリガスイッチ49のオン・オフ信号(T)とを受けて、正回転信号(S
N)、停止信号(S
S)、逆回転信号(S
R)を出力する。これらの信号により、電動モータ13を正回転させ、停止させ、逆回転させる。
【0072】
更に、制御回路55には、ドライバ55Bが設けられている。ドライバ55Bは、信号処理部55Aからの正回転信号(S
N)と停止信号(S
S)と逆回転信号(S
R)とを受けて、電動モータ13を、正回転させ、停止させ、逆回転するように、バッテリ51から供給される電力を制御する。制御回路55を構成する信号処理部55Aとドライバ55Bは、例えば、ハンドル3の空所に配置される。
【0073】
電動モータ13にバッテリ51から電力が供給される前は、プリングヘッド30は、ブラインドリベット締結機構2の前端の側のホーム位置HP(
図3の位置)に位置している。プリングヘッド30がホーム位置HPにあるとき、電動モータ13の回転数をゼロとする。トリガ6のトリガスイッチ49からオン信号が出力されない(あるいは、オフ信号が出力される)状態において、電動モータ13の回転数がゼロのとき、プリングヘッド30はホーム位置HPにある。バッテリ51から電動モータ13へ電力が供給されてもトリガ6を操作しない限り、電動モータ13は動作を停止しており、プリングヘッド30はホーム位置HPにある。トリガ6のトリガスイッチ49からのオフ信号(T
OFF)と、電動モータ13の回転数ゼロとによって、制御回路は、締結装置1がホーム位置HPにあると認識し、停止信号(S
S)を出力する。
【0074】
電動モータ13の回転数ゼロの状態で、トリガ6が引かれると、トリガスイッチ49からオン信号(T
ON)が出力されて、電動ブラインドリベット締結装置1に設けられた制御回路55の信号処理部55Aが、電動モータ13を正回転させる正回転信号(S
N)を出力する。正回転信号(S
N)を受けたドライバ55Bは、バッテリ51からの電力を電動モータ13に送って、電動モータ13を正回転させる。
【0075】
電動モータ13が正回転すると、モータギヤ15と後部ギヤ19と第2シャフト18と前部ギヤ21とスピンドルギヤ17とを介して、スピンドル14に伝達されて、スピンドル14が正回転する。スピンドル14の正回転によって、ボールスクリューシャフト36(
図3)が軸方向に後退し、プリングヘッド30を、前端のホーム位置HPから所定長さ(マンドレル軸部を破断させる長さ)軸方向に後退させる。この後退運動によって、ジョー29を前端の位置から後退させ、ジョー29に把持されたブラインドリベットのマンドレルMの軸部Jを後方へ引込ませる。
【0076】
この後方への引込みは、マンドレル軸部Jを破断する程に強力であり、マンドレルヘッドHがリベット本体RのスリーブSの一部を拡膨変形させ、その拡膨変形したスリーブ部分とリベット本体RのフランジFとの間に被締結部材が強く挟持される。車体パネル及び部品等の複数の被締結部材が拡膨変形したスリーブ部分とフランジFとの間に相互に強く挟持されることによって、リベット本体Rが被締結部材に締結され、車体パネルに部品等が固着される。
【0077】
電動モータ13が正回転すると、モータギヤ15と後部ギヤ19によって、第2シャフト18が逆回転する。第2シャフト18が逆回転すると、スピンドル14が正回転して、プリングヘッド30は軸方向に移動する。プリングヘッド30の軸方向位置は、ホール素子13Aにより電動モータ13の回転数によって求められる。電動モータ13の所定の回転数(マンドレル軸部が破断されるプリングヘッド30の移動長さに対応する回転数)の回転によって、プリングヘッド30がマンドレル軸部Jの破断する位置より後方の後端位置RPまで移動すると、電子回路13Bからの回転数信号により、ブラシレスモータ13の所定の回転数がカウントされる。また、トリガ6は引き操作されたままであるのでトリガスイッチ49からはオン信号(T
ON)が出力されている。
【0078】
トリガスイッチ49からオン信号(T
ON)が出力されている状態で、電動モータ13の所定の回転数がカウントされるとき、プリングヘッド30は、最も後方側の後端位置RPにある。このとき、制御回路55の信号処理部55Aは、トリガスイッチ49からのオン信号(T
ON)と電動モータ13の所定の回転数のカウントを受けて、停止信号を出力する。ドライバ55Bは、停止信号(S
S)を受けて電動モータ13の回転を停止させる(ブレーキ動作による停止、あるいは、回生制動による停止等がある)。電動モータ13の停止によって、スピンドル14の回転も停止して、プリングヘッド30(ジョー29)は、後端位置RPで停止する。
【0079】
電動モータ13が回転を停止してプリングヘッド30が後端位置RPにある状態(すなわちトリガ6のトリガスイッチ49からオン信号(T
ON)が出力され、電動モータ13の所定の回転数をカウントした状態)において、トリガ6の引き操作を解除すると、トリガ6のトリガスイッチ49からのオン信号(T
ON)がなくなる(あるいはオフ信号が出力される)。制御回路55の信号処理部55Aは、トリガスイッチ49からのオフ信号(T
OFF)と電動モータ13の所定の回転数のカウントを受けて、逆回転信号(S
R)を出力する。逆回転信号(S
R)を受けたドライバ55Bは、電動モータ13を逆回転させる。電動モータ13の逆回転によって、スピンドル14も逆回転してボールスクリューシャフト36は前方へ移動し、プリングヘッド30は後端位置RPから前端のホーム位置HPへ移動させられる。
【0080】
これによって、プリングヘッド30がホーム位置HPまで復帰すると、電動モータ13の回転数が減算され、回転数がゼロとなる。制御回路55は、トリガスイッチ49からのオフ信号(T
OFF)と電動モータ13の回転数ゼロとを受けて、停止信号(S
S)を出力する。
プリングヘッド30がホーム位置HPにあるとき、制御回路55は、トリガ6を操作しない限り、電動モータ13を非動作状態にする。従って、電動モータ13は動作を停止し、プリングヘッド30はホーム位置HPに留まる。
【0081】
なお、電動モータ13の正回転中に、電動モータ13の所定の回転数にならない状態において、トリガ6の引き操作が解除されると、制御回路55の信号処理部55Aは、電動モータ13の回転数信号(R)と、トリガスイッチ49のオフ信号(T
OFF)とを受けて、ドライバ55Bに逆回転信号(S
R)を送り、ドライバ55Bは、電動モータ13を逆回転させる。電動モータ13の逆回転は、電動モータ13の回転数のカウントがゼロになるまで続けられ、プリングヘッド30(ジョー29)が、ブラインドリベット締結機構2の前端側のホーム位置HPに戻される。これによって、ブラインドリベットの締結作業が、何らかの理由で中断されても、プリングヘッド30がホーム位置HPに戻される。従って、ブラインドリベットの締結作業を途中で中断しようとする場合、トリガ6の引き操作の解除によって、容易にブラインドリベット締結作業を中断できる。
【0082】
前述したように、何らかの異常により、プリングヘッド30が所定の後端位置RPまで後退して、スピンドル14の正回転が止まらない場合でも、後端位置RPにおいて、第1クラッチの係合は解除され、プリングヘッド30の引きこみすぎを防止することが出来る。
また、何らかの異常により、プリングヘッド30がホーム位置HPまで復帰しても、スピンドル14の逆回転が止まらず異常なトルクがかかる場合でも、第2クラッチがスリップし、スピンドル14と共にプリングヘッド30が逆回転し、プリングヘッド30がホーム位置HPより前方へ出るのを防止することが出来る。
また、何らかの異常により、プリングヘッド30がホープ位置HPまで復帰しなかった場合を考慮し、スピンドル14を常に余分に逆回転させプリングヘッド30がホーム位置HPまで復帰するようにしてもよい。この場合、第2クラッチがホーム位置HPでスリップし、プリングヘッド30がホーム位置HPに位置決めされる。
【0083】
本発明の実施形態によれば、破断マンドレルの回収のための回収容器の容積を大きくとることが出来る。
また、異常が生じた場合でも、オーバーストロークで異常な力がかかるのを回避することが出来る。