特許第5928811号(P5928811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928811
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20160519BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   H01F30/10 E
   H01F30/10 F
   H01F30/10 J
   H01F27/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-169718(P2012-169718)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29927(P2014-29927A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 広利
(72)【発明者】
【氏名】小池 正敏
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−166648(JP,A)
【文献】 特開2010−050153(JP,A)
【文献】 特開平06−151207(JP,A)
【文献】 特開2000−208341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/28
H01F 27/29
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部材と、
前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、
前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、
を備えるトランスであって、
前記ホルダは、前記渦巻電線を平たい形状で載置可能な載置部を有し、
前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されており、
前記電線通し溝内には、前記電線を異なる高さに導く案内部が形成されているトランス。
【請求項2】
コア部材と、
前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、
前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、
を備えるトランスであって、
前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されており、
前記渦巻電線は、前記ホルダの両側に一対備えられており、前記各導出部を嵌め入れる前記電線通し溝が前記ホルダの両側に形成されているトランス。
【請求項3】
前記ホルダの両側に設けられた前記各電線通し溝は、前記一対の渦巻電線の前記各導出部が並んで導出されるように形成されている請求項に記載のトランス。
【請求項4】
コア部材と、
前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、
前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、
を備えるトランスであって、
前記ホルダは、前記渦巻電線の最外周を包囲する包囲部を有し、
前記包囲部には、前記渦巻電線の最外周に係止する係止部が内方側に突出しており、
前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されているトランス。
【請求項5】
前記ホルダは、前記渦巻電線を保持した状態で樹脂でモールド成形されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項6】
前記1次コイルが前記渦巻電線であり、前記2次コイルは、平板状である請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、DC/DCコンバータのような電圧変換器は、一般に、トランスを備えている。
【0003】
特許文献1では、平板状の1次巻線、円環状の巻線支持部材、外周にフランジを有する円環状の巻線絶縁部材を備えており、渦巻き状の1次巻線が巻線支持部材と巻線絶縁部材との間に配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、1次巻線が巻線支持部材と巻線絶縁部材との間に配されているだけでは、渦巻状の1次巻線(コイル)の形状が崩れやすく、その後の作業に支障が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、渦巻状のコイルの形状を保つことが可能なトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コア部材と、前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、を備えるトランスであって、前記ホルダは、前記渦巻電線を平たい形状で載置可能な載置部を有し、前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されており、前記電線通し溝内には、前記電線を異なる高さに導く案内部が形成されている。
【0008】
本構成によれば、渦巻電線における外部に導出される導出部が電線通し溝に嵌め入れられることで、導出部を電線通し溝の位置に保持することが可能になる。これにより、少なくとも導出部の位置を固定できるから、渦巻状のコイルの形状を保つことが可能になり、コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
また、渦巻電線の平たい形状を崩さずに渦巻電線の導出部を外方側に導出することが可能になる。
本発明は、コア部材と、前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、を備えるトランスであって、前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されており、前記渦巻電線は、前記ホルダの両側に一対備えられており、前記各導出部を嵌め入れる前記電線通し溝が前記ホルダの両側に形成されている。
本構成によれば、渦巻電線における外部に導出される導出部が電線通し溝に嵌め入れられることで、導出部を電線通し溝の位置に保持することが可能になる。これにより、少なくとも導出部の位置を固定できるから、渦巻状のコイルの形状を保つことが可能になり、コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
また、一対の渦巻電線について、簡素な構成で、コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
本発明は、コア部材と、前記コア部材に巻回される1次コイル及び2次コイルと、前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも一方である渦巻状の電線からなる渦巻電線を保持するホルダと、を備えるトランスであって、前記ホルダは、前記渦巻電線の最外周を包囲する包囲部を有し、前記包囲部には、前記渦巻電線の最外周に係止する係止部が内方側に突出しており、前記ホルダには、前記渦巻電線の渦巻の中心側から前記渦巻を構成する電線群を横切って外部に導出される導出部を嵌め入れる電線通し溝が形成されている。
本構成によれば、渦巻電線における外部に導出される導出部が電線通し溝に嵌め入れられることで、導出部を電線通し溝の位置に保持することが可能になる。これにより、少なくとも導出部の位置を固定できるから、渦巻状のコイルの形状を保つことが可能になり、コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
また、簡素な構成で渦巻部を所定の位置に保持することが可能になる。
【0009】
上記構成の実施態様として以下の構成を備えれば好ましい。
・前記ホルダは、前記渦巻電線を保持した状態で樹脂でモールド成形されている。
このようにすれば、樹脂が電線間に充填されることで放熱性を向上させることができるとともに、渦巻電線の形状が崩れることを確実に防止できる。
【0012】
・前記ホルダの両側に設けられた前記各電線通し溝は、前記一対の渦巻電線の前記各導出部が並んで導出されるように形成されている。
このようにすれば、電線を外部に引き出す構成を簡素化することが可能になる。
【0014】
・前記1次コイルが前記渦巻電線であり、前記2次コイルは、平板状である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、渦巻状のコイルの形状を保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1のホルダに渦巻電線が装着される様子を説明する斜視図
図2】トランスの分解斜視図
図3】トランスを示す斜視図
図4】一方の渦巻電線を示す平面図
図5】一方の渦巻電線を示す正面図
図6】一方の渦巻電線を示す側面図
図7】他方の渦巻電線を示す平面図
図8】他方の渦巻電線を示す正面図
図9】他方の渦巻電線を示す側面図
図10】ホルダを示す平面図
図11】ホルダを示す正面図
図12】ホルダを示す側面図
図13】ホルダを示すA−A断面図
図14】ホルダを示すB−B断面図
図15】ホルダを示すC−C断面図
図16】ホルダを示す底面図
図17】渦巻電線付きホルダを示す斜視図
図18】渦巻電線付きホルダが樹脂モールドで覆われた状態を示す斜視図
図19】モールド成形体を示す平面図
図20】モールド成形体を示す正面図
図21】モールド成形体を示す側面図
図22】モールド成形体を示すD−D断面図
図23】モールド成形体を示すE−E断面図
図24】モールド成形体を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、実施形態1のトランス10について、図1図24を参照して説明する。
本実施形態のトランス10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両のDC/DCコンバータ(図示しない)に備えられる。DC/DCコンバータは、バッテリ(電源)からの直流をスイッチングして形成した交流の1次電流をトランス10の1次コイルである渦巻電線17A,17Bに供給し、トランス10の2次コイル21,22からの2次電流を整流回路、平滑回路を用いて所定の電圧の直流に降圧して出力するものである。以下では、前後方向については、図19の上方を前方、下方を後方とし、上下方向及び左右方向については、図20の方向を基準として説明する。
【0018】
トランス10は、図3に示すように、コア部材11と、1次コイルである渦巻電線17A,17Bと2次コイル21,22を有してコア部材12に収容される被収容体41とを備えている。
コア部材11は、フェライト等の高透磁率磁性体で形成されており、上下一対の分割部材12,13を嵌め合わせて構成されている。
【0019】
各分割部材12,13は、図2に示すように、円柱状の柱部14と、円弧状に湾曲した内面を有する側壁部15と、柱部14と側壁部15を連結して被収容体41を支持する板状の連結支持部16と、を備え、これらが一体に形成されている。
【0020】
被収容体41は、一対の渦巻電線17A,17B及びホルダ25がモールド樹脂部39で覆われたモールド成形体43と、モールド成形体43の上下に装着される一対の2次コイル21,22と、を備えて構成される。
【0021】
モールド成形体43は、図22に示すように、一対の渦巻電線17A,17Bと、一対の渦巻電線17A,17Bを両側に保持するホルダ25と、一対の渦巻電線17A,17B及びホルダ25を覆うモールド樹脂部39とを備えている。
【0022】
一対の渦巻電線17A,17Bは、図1に示すように、共に、渦巻状の渦巻部18と、渦巻部18の中心部側における渦巻の中心部から渦巻部18の電線WA,WBを横切るように外部に導出される導出部19と、渦巻に沿うように外部に引き出される引出部20とを備えている。
【0023】
一対の渦巻電線17A,17Bは、渦巻部18に対して導出部19が導出される側が異なっている。具体的には、一方の1次コイル渦巻電線17Aの導出部19が渦巻部18の上方(直上)を横切るとともに、他方の渦巻電線17Bの導出部19が渦巻部18の下方(直下)を横切る。
【0024】
電線WA,WBは、共に耐熱性のある同一の丸形電線(導体断面が丸形の電線)が用いられており、例えば、AIW(ポリアミドイミド銅線。JIS規格の温度指数(耐熱温度)220℃)、又は、PEW(ポリエステル銅線)からなる被覆電線が用いられているが、電線WA,WBの材質として他の材質を用いることも可能である。
なお、図1では、電線WAは、引出部20の先に延出された部分がWA1,導出部19の先に延出された部分がWA2で示され、電線WBは、引出部20の先に延出された部分がWB1,導出部19の先に延出された部分がWB2で示されている。
【0025】
2次コイル21,22は、図2に示すように、金属板材を打ち抜いて形成した環状のバスバーからなる。
各2次コイル21,22には、前方側に接続片23が延出されており、接続片23の先端部には接続孔23Aが貫通形成されている。
下方側の2次コイル22は、曲げ加工によりクランク状に屈曲されており、その先端部に接続片23が形成されている。2次コイル21,22がモールド成形体43に組み付けられると、2次コイル21の一方の接続片23及び2次コイル22の一方の接続片23が重ね合わされた状態となる。
このように、トランス10は、1次側の電流や2次側の電流を2本に分岐させることで、許容電流を大きくしている。
【0026】
ホルダ25は、図1に示すように、中空円板状であって、筒状の内筒部26と、内筒部26と同心で内筒部26よりも径の大きい筒状の外筒部28と、内筒部26と外筒部28を一体に連結するスペーサ部30と、外筒部28の外方に延出された張出部38と有する。
筒部26及び外筒部28は、図14に示すように、共に、スペーサ部30において渦巻電線17A,17Bが載置される載置部34A,34Bの載置面に対して上方及び下方に張り出しており、外筒部28の張り出した部分は、渦巻部18の最外周を包囲する包囲部28Aとされている。
【0027】
この包囲部28Aには、周方向に所定間隔ごとに内方側に突出する係止部29が周縁部に設けられている。
係止部29は、渦巻電線17A,17Bの最外周の電線WA,WBを内側に嵌め入れることが可能な爪状をなす。
内筒部26の内面は、中心部にコア部材11の柱部14を挿通する挿通孔27とされている。
【0028】
スペーサ部30は、図10に示すように、内筒部26及び外筒部28を連結する連結部31と、連結部31間の隙間からなり上下方向に貫通する孔部30Aとを有する。
連結部31は、概ね所定角度ごとに設けられた上下方向に肉厚で、周方向に肉薄の板状の部材からなり、外筒部28側は、2股に枝分かれしている。
【0029】
連結部31は、その上面及び下面が、一対の渦巻電線17A,17Bが載置される一対の載置部34A,34Bとされている。
連結部31には、内筒部26と同心の環状部32が内筒部26側の位置に形成されている。
【0030】
ホルダ25の上下両面の載置部34A,34Bの形状は、前後方向を軸として概ね対称な形状であるが、後述する第2電線通し溝35の延びる方向がやや異なる。
環状部32は、内筒部26との間に1本の電線WA(WB)を嵌め入れることが可能な環状の第1電線通し溝33を有している。
第1電線通し溝33の内側には、図15に示すように、電線WA,WBを異なる高さに案内する案内部36が形成されている。
【0031】
案内部36は、第1電線通し溝33の所定長毎に設けられ、第1電線通し溝33間に溝底33Aから起立する起立壁により形成されている。
案内部36は、電線WA,WBの渦巻方向において第2電線通し溝35に近づくにつれてその高さ寸法が低くされている。
【0032】
環状部32は、図10に示すように、各電線WA,WBの導出部19が通が通される部分が分断されており、この分断された部分から外方側は、第1電線通し溝33に連なる第2電線通し溝35が形成されている。
【0033】
第2電線通し溝35は、直線状に延びており、1本の電線WA(WB)を嵌め入れることが可能な幅寸法で形成されている。第2電線通し溝35の溝壁35Aは、環状部32に連なっている。
【0034】
底面側の載置部34Bにおける第2電線通し溝35は、図16に示すように、その端部がやや右方側に位置するように前後方向に対して傾斜している。これにより、第2電線通し溝35の端部から導出された電線WB2が上面側の載置部34Aの第2電線通し溝35の端部から導出された電線WA2と並んで引き出されるようになっている。
この第2電線通し溝35は、第1電線通し溝33に連なる位置から張出部38の端部まで形成されている。
【0035】
張出部38は、図1に示すように、外筒部28の前方及び後方に突き出た形状となっており、最外周の電線WA,WBの引出部20を右方に導くとともに、導出部19が嵌め入れられる第2電線通し溝35の端部が設けられている。これにより、電線WA,WBの導出部19と引出部20が交差する。
【0036】
モールド成形体43は、ホルダ25のスペーサ部30を挟むように一対の渦巻電線17A,17Bが各載置部34A,34Bに載置され、電線WA,WBの導出部19が第2電線通し溝35に嵌め入れられた状態でモールド樹脂部39に覆われている。これにより、各電線WA,WB間に樹脂が充填された状態になり、電線WA,WBがホルダ25の所定位置に確実に固定される。ホルダ25及びモールド樹脂部39は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱温度の高い樹脂が使用されている。
モールド樹脂部39で覆われたモールド成形体43の上下には、2次コイル21,22が装着される凹部44が形成されている。
【0037】
次に、トランス10の組み付けについて説明する。
図1に示すように、2本の電線WA,WBをそれぞれ渦巻状に巻き付けて一対の渦巻電線17A,17Bを形成し、ホルダ25の上下の載置部34A,34Bに渦巻電線17A,17Bを載置する。このとき、各渦巻電線17A,17Bの最内側の電線を第1電線通し溝33に嵌め入れるとともに渦巻電線17A,17Bの導出部19を第2電線通し溝35に嵌め入れて、渦巻電線17A,17Bがホルダ25に保持された状態の渦巻電線付きホルダ40を形成する(図17)。
【0038】
次に、渦巻電線付きホルダ40を金型(図示しない)にセットし、金型内にPPS等の合成樹脂を流し込んで固化させるモールド成形を行い、渦巻電線付きホルダ40がモールド樹脂部39で覆われたモールド成形体43を形成する(図18)。なお、モールド樹脂部39から前方に突き出た電線WA2,WB2は、全て左方に纏める。
次にモールド成形体43の上下の凹部44に一対の2次コイル21,22を嵌め合わせて被収容体41を形成する。
【0039】
そして、分割部材13の柱部14を被収容体41の挿通孔27に挿通するとともに、両分割部材12,13に嵌め合わせてトランス10が形成される(図3)。
【0040】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、渦巻電線17A,17Bにおける外部に導出される導出部19が第2電線通し溝35(電線通し溝)に嵌め入れられることで、導出部19を第2電線通し溝35の位置に保持することが可能になる。これにより、、少なくとも導出部19の位置を固定できるから、1次コイルの形状を保つことが可能になり、1次コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
【0041】
(2)ホルダ25は、渦巻電線17A,17Bを保持した状態で樹脂でモールド成形されている。
このようにすれば、樹脂が電線WA,WB間に充填されることで放熱性を向上させることができるとともに、1次コイルの形状が崩れることを確実に防止できる。
【0042】
(3)ホルダ25は、渦巻電線17A,17Bを平たい形状で載置可能な載置部34A,34Bを有し、第1電線通し溝33(電線通し溝)内には、電線WA,WBを異なる高さに導く案内部36が形成されている。
このようにすれば、渦巻電線17A,17Bの平たい形状を崩さずに渦巻電線17A,17Bの導出部19を外方側に導出することが可能になる。
【0043】
(4)渦巻電線17A,17Bは、ホルダ25の両側に一対備えられており、各導出部19を嵌め入れる第2電線通し溝35がホルダ25の両側に形成されている。
このようにすれば、一対の渦巻電線17A,17Bについて、簡素な構成で、1次コイルの形状が崩れて、その後の作業に支障が生じることを抑制できる。
【0044】
(5)ホルダ25の両側に設けられた各第2電線通し溝35は、一対の渦巻電線17A,17Bの各導出部19が並んで導出されるように形成されている。
このようにすれば、電線WA,WBを外部に引き出す構成を簡素化することが可能になる。
【0045】
(6)ホルダ25は、渦巻電線17A,17Bの最外周を包囲する包囲部28Aを有し、包囲部28Aには、渦巻電線17A,17Bの最外周に係止する係止部29が内方側に突出している。
このようにすれば、簡素な構成で渦巻部18を所定の位置に保持することが可能になる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、トランス10は、車両において電圧を降圧するDC/DCコンバータに用いられることとしたが、これに限られない。例えば、電圧を昇圧するDC/DCコンバータのトランスに用いてもよい。また、DC/DCコンバータ以外に使用されるトランスに用いてもよい。さらに、車両以外のトランスに本発明を用いてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、1次コイルを渦巻電線17A,17Bとしたが、これに限らず、2次コイルを渦巻電線として、ホルダの電線通し溝に2次コイルの導出部を保持させるようにしてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、ホルダ25の両面側に渦巻電線17A,17Bが配される構成としたが、これに限らず、ホルダの片面側に渦巻電線17A(17B)が配されるようにしてもよい。
(4)上記実施形態では、導出部19が所定長さに亘って第1電線通し溝33及び第2電線通し溝35に嵌め入れられる構成であったが、これに限らず、導出部19の一部分(短い部分)のみを嵌め入れる電線通し溝を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…トランス
11…コア部材
14…柱部
17A,17B…渦巻電線
18…渦巻部
19…導出部
20…引出部
21,22…2次コイル
25…ホルダ
26…内筒部
27…挿通孔
28…外筒部
28A…包囲部
29…係止部
30…スペーサ部
31…連結部
32…環状部
33…第1電線通し溝(電線通し溝)
34A,34B…載置部
35…第2電線通し溝(電線通し溝)
35A…溝壁
36…案内部
38…張出部
39…モールド樹脂部
40…渦巻電線付きホルダ
41…被収容体
43…モールド成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24