(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻線を巻回してなるコイルと、そのコイルの内部に挿通される磁性コアと、前記コイルの端面に当接して、前記コイルと前記磁性コアとの間の絶縁を確保する枠状ボビンと、これらコイルおよび磁性コアの組合体を収納する有底筒状のケースと、を備えるリアクトルであって、
前記枠状ボビンは、前記ケースの所定位置に前記組合体を配置する際に前記組合体を持つために利用される把手部を備え、
前記把手部は、前記ケースの底面に交差する方向に延び、かつ前記組合体を前記ケースに収納した状態で、前記ケースの開口縁部に引っ掛からないように構成されているリアクトル。
巻線を巻回してなるコイルと、そのコイルの内部に挿通される磁性コアと、前記コイルの端面に当接して、前記コイルと前記磁性コアとの間の絶縁を確保する枠状ボビンと、これらコイルおよび磁性コアの組合体を収納する有底筒状のケースと、を備えるリアクトルであって、
前記コイルは、一対のコイル素子が互いに並列された状態で連結される構成を備え、それらコイル素子は、その軸方向が前記ケースの底面に平行な方向に向いた状態で横並びに前記ケースに収納されており、
前記枠状ボビンは、前記ケースの所定位置に前記組合体を配置する際に前記組合体を持つために利用される把手部を備え、
前記把手部は、前記コイル素子の並列方向に延び、かつ前記組合体を前記ケースに収納した状態で、前記ケースの開口縁部に引っ掛からないように構成されているリアクトル。
巻線を巻回してなるコイルと、そのコイルの内部に挿通される磁性コアと、前記コイルの端面に当接して、前記コイルと前記磁性コアとの間の絶縁を確保する枠状ボビンと、これらコイルおよび磁性コアの組合体を収納する有底筒状のケースと、を備えるリアクトルであって、
前記コイルは、一対のコイル素子が互いに並列された状態で連結される構成を備え、それらコイル素子は、その軸方向が前記ケースの底面に平行な方向に向いた状態で横並びに前記ケースに収納されており、
前記枠状ボビンは、前記ケースの所定位置に前記組合体を配置する際に前記組合体を持つために利用される把手部を備え、
前記把手部は、前記コイル素子の軸方向に延び、かつ前記組合体を前記ケースに収納した状態で、前記ケースの開口縁部に引っ掛からないように構成されているリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケース内に組合体を収納するリアクトルには、その組み立ての過程で、ケースの所定位置に組合体を配置する作業がある。しかし、上記従来のリアクトルの組合体には、組合体を持ち上げたり移動させるときの把手となる部分がなく、上記配置作業が行ない難い。
【0006】
例えば、組合体を収納するケースには、底板部と側壁部とが一体成形されたものと、別々に作製された底板部と側壁部とを組み合わせて形成されたものと、がある。一体成形されたケースに組合体を収納する場合、および個別に作製された底板部と側壁部とを組み合わせてケースを完成させた後、そのケースに組合体を収納する場合、ケースの開口部から組合体を挿入する作業がある。また、底板部の上に組合体を載置した後、組合体の上方から側壁部を被せてケースを完成させる場合、底板部に組合体を載置する作業がある。それらの作業を手で行なうにせよ運搬治具を用いて行なうにせよ、組合体のコイルや磁性コアに手や運搬治具が触れると、コイルや磁性コアを損傷する可能性があるため、当該作業には相当程度の慎重さを要求される。また、ケースの開口部から組合体を挿入する場合は、物理的に組合体をケースに挿入し難いという事情もある。リアクトルの大型化を避けるため、組合体とケースとの間のクリアランスが比較的小さく設定されることが多いからである。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、従来の構成よりも組み立てが容易で生産性に優れるリアクトルを提供することにある。また、本発明の別の目的は、本発明のリアクトルを用いたコンバータ、およびそのコンバータを用いた電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリアクトルは、巻線を巻回してなるコイルと、そのコイルの内部に挿通される磁性コアと、コイルの端面に当接して、コイルと磁性コアとの間の絶縁を確保する枠状ボビンと、これらコイルおよび磁性コアの組合体を収納する有底筒状のケースと、を備えるリアクトルである。この本発明のリアクトルに備わる枠状ボビンは、ケースの所定位置に組合体を配置する際に組合体を持つために利用される把手部を備え、その把手部は、組合体をケースに収納した状態で、ケースの開口縁部に引っ掛からないように構成されている。
【0009】
本発明のリアクトルの構成によれば、コイルおよび磁性コアに触れることなく組合体を扱うことが可能となる。そのため、リアクトルの組み立ての過程でケースの所定位置に組合体を配置する際、コイルおよび磁性コアに損傷が生じる可能性を低減でき、組合体の扱いに過度の慎重さを要求されることがない。つまり、ケースの所定位置への組合体の配置作業を容易にでき、ひいてはリアクトルの生産性を向上させることができる。
【0010】
上記本発明のリアクトルの構成は特に、ケースの開口部から組合体を挿入する場合に、その挿入作業を極めて容易にできる。把手部を手や運搬治具で掴んで組合体を持ち上げ、そのまま組合体をケース内に挿入してケースの底板部に載置すれば良いからである。その際、把手部はケースの開口縁部に引っ掛からないように構成されているので、把手部はケースの収納作業の邪魔にはならない。
【0011】
本発明のリアクトルとして、把手部がケースの底面に交差する方向に延びている上方延伸タイプとした形態を挙げることができる。
【0012】
把手部を上方延伸タイプとすることで、本発明のリアクトルを作製するにあたり、ケースの開口部からケース内に組合体を挿入することが非常に容易になる。上方延伸タイプの把手部を設けることで、組合体を吊り下げるような形で扱うことができ、ケースの開口部から組合体を挿入し易いからである。
【0013】
上方延伸タイプの把手部を備える本発明のリアクトルとして、コイルは、一対のコイル素子が互いに並列された状態で連結される構成を備え、それらコイル素子は、その軸方向がケースの底面に平行な方向に向いた状態で横並びにケースに収納される形態を挙げることができる。この形態の場合、コイル素子を基準とした上方延伸タイプの把手部の延伸方向は、コイル素子の軸方向およびコイル素子の並列方向の両方に交差する方向となる。
【0014】
本発明のリアクトルにおけるコイルは、一つのコイル素子を備えるものであっても、一対のコイル素子を備えるものであっても良い。ここで、後者の双子素子タイプでは、組合体が大型化・高重量化する場合があるが、その場合であっても、上方延伸タイプの把手部を設けることで、組合体を吊り下げるような形で扱うことができ、ケースの開口部から組合体を挿入し易い。
【0015】
本発明のリアクトルとして、把手部がケースの底面に平行な方向に延びている側方延伸タイプとした形態を挙げることができる。
【0016】
把手部を側方延伸タイプとすることで、把手部をケース内に納めることができる。把手部がケース内に収まるのは、把手部がケースの開口縁部に引っ掛からない大きさに構成されているからである。このように把手部がケース内に収まることで、把手部によるリアクトルの大型化を回避することができる。また、側方延伸タイプの把手部を採用することで、ケース内壁面に対する組合体の接触を防止することができる。特に、把手部の延伸長を調節することで、ケース内における組合体の位置決め部材として把手部を利用することもできる。
【0017】
側方延伸タイプの把手部を備える本発明のリアクトルとして、コイルが双子素子タイプである形態を挙げることができる。この場合、コイル素子を基準とした側方延伸タイプの把手部の延伸方向は、コイル素子の軸方向となる場合と、コイル素子の並列方向となる場合の二通りある。
【0018】
双子素子タイプのコイルを備えるリアクトルにおいて、上記側方延伸タイプの把手部を採用する場合、組合体を構成するコイルや磁性コアの配置関係から把手部を延伸し易い方向がある。それが、コイル素子の軸方向と並列方向であり、従ってコイル素子の軸方向と並列方向に延伸された把手部を備えるリアクトルは生産性に優れる。
【0019】
本発明のリアクトルとして、把手部は、ケースの所定位置に組合体を配置するための運搬治具を係合させる係合部を備える形態を挙げることができる。
【0020】
係合部としては、後述する実施形態1に示す屈曲部、実施形態2,5に示す貫通孔、実施形態4に示す切欠きなどを挙げることができる。これら係合部を形成することで、運搬治具による組合体の把持状態を安定させることができる。
【0021】
本発明のコンバータは、本発明のリアクトルを備える。
【0022】
組み立てが容易な本発明のリアクトルを用いた本発明のコンバータは、生産性に優れる。
【0023】
本発明の電力変換装置は、本発明のコンバータを備える。
【0024】
組み立てが容易な本発明のリアクトルを用いた本発明の電力変換装置は、生産性に優れる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のリアクトルは、ケースの所定位置に組合体を配置する作業が容易であるため、生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0028】
<実施形態1>
図1〜3を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と枠状ボビン4Aの組合体1Aをケース6に収納して状態で封止樹脂6Rにより封止した構成を備える。このリアクトル1の特徴とするところは、リアクトル1を構成する組合体1Aに備わる枠状ボビン4Aに把手部44Aが設けられていることにある。以下、本実施形態1のリアクトル1の各構成を詳細に説明する。
【0029】
[組合体]
組合体1Aは、
図3の分解斜視図に示すように、巻線を巻回してなるコイル2、このコイル2の内部に挿入される磁性コア3、およびコイル2と磁性コア3との間の絶縁を確保する一対の枠状ボビン4Aを備えていれば良い。これら組合体1Aを構成する部材2,3,4Aのうち、コイル2と磁性コア3には公知の構成を利用できる。一方、枠状ボビン4Aの構成も、把手部44A以外の部分については公知の構成を利用できる。
【0030】
(コイル)
コイル2は、一対のコイル素子2A,2Bと、両コイル素子2A,2Bを連結するコイル素子連結部2rと、を備える。各コイル素子2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行するように横並びに並列されている。また、コイル素子連結部2rは、両コイル素子2A,2Bを繋ぐU字状に屈曲された部分である。このコイル2は、接合部の無い一本の巻線を螺旋状に巻回して形成しても良いし、各コイル素子2A,2Bを別々の巻線により作製し、各コイル素子2A,2Bの巻線の端部同士を半田付けや圧着などにより接合することで形成しても良い。その場合、接合した部分がコイル素子連結部2rとなる。
【0031】
コイル2は、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線を好適に利用できる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用し、各コイル素子2A,2Bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルである。また、各コイル素子2A,2Bの端面形状を長方形の角部を丸めた形状としているが、端面形状は、円形状など適宜変更することができる。
【0032】
コイル2を構成する巻線の両端部2a,2bは、ターン形成部分から引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
【0033】
(磁性コア)
磁性コア3は、各コイル素子2A,2Bの内部に配置される一対の内側コア部31,31と、コイル2から露出されている一対の外側コア部32,32とを環状に組み合わせて形成される。
【0034】
内側コア部31,31は、略直方体状の磁性材料からなるコア片31mと、コア片31mよりも低透磁率のギャップ材31gとを交互に連結した積層柱状体である。内側コア部31の両端面にはギャップ材31gが配置されている。
【0035】
一方、外側コア部32,32は、例えばその上面が略ドーム状の柱状コア片である。紙面左側に配置される一方の外側コア部32は、内側コア部31,31の一端側(紙面左側)の面に対向し、紙面右側に配される他方の外側コア部32は、上記内側コア部31,31の他端側(紙面右側)に対向している。その結果、内側コア部31,31と外側コア部32,32とで環状の磁性コア3が形成される。
【0036】
上記内側コア部31と外側コア部32を構成する各コア片には、鉄などの鉄属金属やその合金などに代表される軟磁性粉末を用いた圧粉成形体や、軟磁性粉末を含む樹脂からなる成形硬化体、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体などが利用できる。内側コア部31,31を構成するコア片31mと、外側コア部32,32とは、磁気特性を異ならせても良い。例えば、コア片31mと外側コア部32とで使用する材質を異ならせることで両者の磁気特性を異ならせても良いし、コア片31mを成形硬化体、外側コア部32を圧粉成形体とすることで両者の磁気特性を異ならせても良い。一般に、成形硬化体に含まれる磁性粉末の量は、圧粉成形体と比較して少ない傾向にあるため、『成形硬化体の比透磁率<圧粉成形体の比透磁率』となる。そのため、内側コア部31のコア片31mを成形硬化体、外側コア部32を圧粉成形体とすれば、大電流で使用した場合でも磁気飽和し難い磁性コア3(リアクトル1)とすることができる。なお、図示する構成とは異なり、成形硬化体からなる一つのコア片31mと、そのコア片31mの両端面に貼り合わされる二枚のギャップ材31gとで内側コア部31を形成しても良い。
【0037】
(ボビン部材)
本実施形態では、コイル2(コイル素子2A,2B)の端面と外側コア部32との間の絶縁を確保する枠状ボビン4Aは、筒状ボビン4Zと一体化されたボビン部材5の形態で用いられる。筒状ボビン4Zは、コイル2(コイル素子2A,2B)の内周面と内側コア部31との間の絶縁を確保する部材である。もちろん、枠状ボビン4Aと筒状ボビン4Zとを別個に用意し、コイル2と磁性コア3に組み付けても構わない。
【0038】
上記ボビン部材5は、二つ一組で用いられる。両ボビン部材5,5の形状は全く同じである。同一形状のボビン部材5を採用することで、一つの金型でボビン部材5を効率的に生産することができる。ボビン部材5の構成材料には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの熱可塑性樹脂を利用することができる。
【0039】
各ボビン部材5は、枠状ボビン4Aと、一対の筒状ボビン4Z,4Zとを備え、枠状ボビン4Aには本発明のリアクトル1の特徴である一対の把手部44A,44Aが設けられている。枠状ボビン4Aには、内側コア部31,31を挿通させる二つの貫通孔があり、その貫通孔が筒状ボビン4Zの内周面に繋がっている。枠状ボビン4Aは、筒状ボビン4Zの外周面よりも筒状ボビン4Zの径方向外方に拡がっており、筒状ボビン4Zをコイル素子2A,2Bの内部に挿入すれば、筒状ボビン4Zに繋がる枠状ボビン4Aは、コイル素子2A,2Bの端面に当接する。その結果、コイル2と外側コア部32との絶縁が確保される。一方、コイル2と内側コア部31との絶縁は、筒状ボビン4Zによって確保される。
【0040】
枠状ボビン4Aに設けられる把手部44Aは、組合体1Aの運搬を容易にするためのものである。把手部44Aは、一つの枠状ボビン4Aに二つずつ、組合体全体で見れば合計四つ設けられている。把手部44Aを備える枠状ボビン4Aは、コイル2および磁性コア3に組付けられ、これらと一体化しているため、枠状ボビン4Aの把手部44Aを手や運搬治具などで掴めば、組合体1Aを持ち上げることができる。その組合体1Aの持ち上げの際、コイル2および磁性コア3に触れることなく組合体1Aを持ち上げることができるため、コイル2および磁性コア3を損傷する可能性が低い。
【0041】
本実施形態における把手部44Aは、
図1,2に示すように、ケース6の底面に交差する方向(ここでは、底面に直交する方向)に延びる上方延伸タイプとなっている。コイル素子2A,2Bを基準として見た場合、把手部44Aは、コイル素子2A,2Bの軸方向および並列方向の両方に交差する方向に延びている。また、本実施形態の把手部44Aは、
図1に示すように、ケース6の開口部から突出しており、ケース6の開口縁部に引っ掛からないように構成されており、コイル2と磁性コア3との間に介在されてもいない。つまり、本実施形態の把手部44Aは、リアクトル1の磁気特性に影響を与えるものではなく、組合体1Aを運搬する把手としての機能以外のものを特に有していない。
【0042】
上記把手部44Aの上方端部は、外側コア部32の側(コイル軸方向外方)に屈曲している。屈曲部44a(
図3)を設けることで、把手部44Aを手や運搬治具で掴み易くすることができる。特に運搬治具を用いる場合、屈曲部44aは運搬治具を係合させる係合部として機能する。屈曲部44aは運搬治具を係合させることができる形状であれば特に限定されず、例えば、フック状になっていても良い。なお、屈曲部44aの屈曲方向は、特に限定されず、コイル軸方向内方でも良いし、コイル並列方向の外方または内方でも良い。要は、各屈曲部44aは、リアクトル1を上面視したときにどの方向を向いていても良い。
【0043】
把手部44Aの屈曲部44aの長さは特に限定されない。手や運搬治具で掴み易い長さに選択すれば良い。なお、本実施形態の屈曲部44aは、リアクトル1を上面視したときに、ケース6の開口縁部に若干重複している。
【0044】
上述した把手部44Aの他、枠状ボビン4Aにはさらに、庇部40と仕切り部41とが設けられている(
図3を参照)。庇部40は、コイル2のコイル素子連結部2rと外側コア部32との間に介在され、両者2r,32の絶縁を確保する部材である。一方、仕切り部41は、並列されるコイル素子2A,2B間に介在され、両者2A,2Bの絶縁を確保する部材である。なお、コイル2の端部2a,2b側に配置される枠状ボビン4Aの庇部40は特に必要ない。用意した二つのボビン部材5が同一形状のものであるため、コイル2の端部2a,2b側に配置される枠状ボビン4Aにも庇部40があるだけである。
【0045】
一方、上述した枠状ボビン4Aに一体化される筒状ボビン4Zの周面には厚み方向に貫通する窓が形成されている。この窓は、ケース6内に封止樹脂6Rを充填したときに、その封止樹脂6Rが、筒状ボビン4Zと内側コア部31との間にも入り込み易くするためのものである(
図1を合わせて参照)。この窓は、設けることが好ましいが、特になくてもかまわない。
【0046】
[ケース]
ケース6は、
図1,2に示すように、その内部に組合体1Aを収納することができる箱状の部材である。本実施形態では、ケース6は、組合体1Aを載置する底板部60と、底板部60とは別個に作製された側壁部61と、で構成される。つまり、側壁部61を後から底板部60に取り付けることでケース6が形成される。もちろん、底板部60と側壁部61とが最初から繋ぎ目なく一体となったものであっても構わない。その他、ケース6として、コンバータケースを利用することもできる。
【0047】
(底板部)
底板部60は、組合体1Aを支持しつつ、組合体1Aからリアクトル1の取付対象(例えば、冷却ベース)への放熱経路として機能する板状の部材である。具体的には、底板部60の一面側(紙面上方側)が組合体1Aを搭載する搭載面であり、底板部60の他面側(紙面下方側)がリアクトル1を冷却する冷却ベース(図示せず)への取付面である。
【0048】
底板部60の四隅にはそれぞれ、リアクトル1を冷却ベースに取り付けるための第一取付孔H1(
図2参照)が設けられている。
【0049】
上記構成を備える底板部60は、コイル2に近接して配置されるため、非磁性材料から構成することが好ましい。また、底板部60は、組合体1Aの放熱経路に利用されるため、熱伝導性に優れる金属材料から構成する。つまり、底板部60は、アルミニウムやその合金、あるいはマグネシウムやその合金などの非磁性金属から構成する。上記列挙した非磁性金属は軽量であるため、軽量化が望まれている車載部品の構成材料に適する。この底板部60の厚さは、強度、磁束の遮蔽性を考慮して、2〜5mm程度とすることが好ましい。
【0050】
(側壁部)
側壁部61は、上方と下方に開口部を有する筒状の部材である。この側壁部61の下方縁部にはフランジ部61Fが設けられている。フランジ部61Fの輪郭形状は、上述した底板部60の輪郭形状にほぼ一致し、そのフランジ部61Fには、底板部の第一取付孔H1に対応する位置に第二取付孔H2が形成されている。第二取付孔H2は、側壁部61に埋め込まれるカラーによって形成されている。側壁部61の第二取付孔H2にネジを打てば、ネジが、第二取付孔H2と底板部60の第一取付孔H1を貫通し、リアクトル1を冷却ベースに取り付けることができる。
【0051】
上記構成を備える側壁部61は、樹脂で構成することが好ましい。樹脂であれば、例えば、射出成形などで複雑な形状に形成することが容易であるからである。側壁部61を構成する樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などを利用することができる。これらの樹脂は、電気絶縁性に優れることから、組合体1Aのコイル2と側壁部61との間の絶縁を確保し易い。これら樹脂には、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、および炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスフィラーが含有されていても良く、そうすることで、側壁部61の絶縁性および放熱性を向上させることができる。
【0052】
なお、側壁部61は金属で形成することもできる。例えば、アルミニウムなどの非磁性金属で側壁部61を構成すれば、側壁部61に電磁波シールドの機能を持たせることができる。
【0053】
[封止樹脂]
封止樹脂6Rは、
図1に示すように、組合体1Aを収納したケース6の内部に充填され、ケース6内での組合体1Aの位置を固定すると共に、組合体1Aを機械的な衝撃や腐食雰囲気から保護するものである。また、封止樹脂6Rは、リアクトル1を動作させたときに組合体1Aで発生した熱をケース6側に逃がす放熱経路としての役割も持つ。なお、封止樹脂6Rは必須ではない。
【0054】
封止樹脂6Rとしては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを利用することができる。また、これらの樹脂に、側壁部61の説明の際に例示したセラミックスフィラーを含有させると、封止樹脂6Rの放熱性を向上させることができる。
【0055】
[用途]
上記構成を備えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。
【0056】
[リアクトルの製造方法]
以上説明したリアクトル1は、例えば、次に示す工程α〜γに従って作製することができる。
[α]組合体1Aを作製する。
[β]組合体1Aをケースに収納する。
[γ]ケース内に封止樹脂6Rの充填し、封止樹脂6Rを硬化させる。
以下、各手順を順次説明すると共に、本実施形態のリアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0057】
[α]組合体1Aの作製
組合体1Aの作製手順の一例を
図3に基づいて説明する。まず、上述した内側コア部31と外側コア部32とボビン部材5とをそれぞれ一対ずつ用意する。次いで、コイル2の両端側からそれぞれボビン部材5,5をコイル素子2A,2Bの内部に挿入、さらにボビン部材5,5の筒状ボビン4Zの内部に内側コア部31,31を挿入する。そして、内側コア部31,31を外側コア部32,32で挟み込むことで、磁性コア3を完成させる。内側コア部31と外側コア部32とは接着剤を介して接合すれば良い。接着剤を用いることで、リアクトル1(
図1参照)の使用時におけるコア部31,32同士の衝突を抑制でき、リアクトル1の使用時の騒音を抑制できる。
【0058】
[β]ケース6への組合体1Aの収納
上記[α]で作製した組合体1Aをケース6に収納するにあたり、本実施形態では、
図2に示すように、ケース6と、絶縁シート7を用意した。まず、用意した部材について説明する。
【0059】
[ケース]
ケース6については既に説明済である。即ち、本実施形態のケース6は、個別に用意した底板部60と側壁部61とを組み合わせることで形成されるケース6である。
【0060】
[絶縁シート]
図2に示すように、絶縁シート7は、ケース6の底板部60と組合体1Aとの間に介在されるシート状部材である。絶縁シート7は、非磁性金属からなる底板部60と組合体1Aとの間の絶縁を確保するため部材であって、接着剤などで底板部60に貼り付けられる。絶縁シート7に加えて、絶縁シート7と組合体1Aとの間に接着シート(図示せず)を配置しても良い。接着シートは、その両面が粘着質で柔らかいものとすれば、複雑な凹凸形状を有する組合体1Aを絶縁シート7に強固に密着させることができる。
【0061】
上記絶縁シート7には所定の耐電圧特性(リアクトル1においては10kV/mm以上)が求められる。また、絶縁シート7は、コイル2(コイル素子2A,2B)で発生した熱を効果的に底板部60に伝達できるように、0.1W/m・K以上の優れた熱伝導性を有することが好ましく、その熱伝導率は高いほど好ましい(特に好ましくは2.0W/m・K以上)。
【0062】
一方、接着シート7と組合体1Aとの間に接着シートを追加する場合、その接着シートには、リアクトル1の使用時における最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性が求められる。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性の絶縁性樹脂が接着シートに好適に利用できる。この絶縁性樹脂には、側壁部61の説明の際に例示したセラミックスフィラーが含有されていても良く、そうすることで、接着シートの絶縁性および放熱性を向上させることができる。接着シートの熱伝導率は、絶縁シート7と同等程度が好ましい。
【0063】
なお、絶縁シート7の代わりに、底板部60の上面に接着剤を塗布または印刷しても良い。この接着剤にも上述したセラミックスフィラーを含有させ、接着剤の絶縁性および放熱性を向上させても良い。接着剤単独、あるいはセラミックスフィラーを含有した状態の接着剤は、上記絶縁シート7と同等程度の耐電圧特性を有するものとする。
【0064】
[組合体1Aの収納手順]
次に、組合体1Aのケース6内への収納手順を説明する。まず、底板部60の上面に接着剤を用いて絶縁シート7を取り付けると共に、底板部60に側壁部61を接着してケース6を完成させる。絶縁シート7に加えて接着シートを用いる場合、絶縁シート7の上に接着シートを重ねておく。
【0065】
次いで、組合体1Aの把手部44A(屈曲部44a)に運搬治具を係合させ、組合体1Aを運搬治具で吊り下げた状態として、ケース6の開口部から組合体1Aをケース6内に挿入する。その際、組合体1Aのコイル2および磁性コア3に運搬治具が直接接触することがないため、コイル2および磁性コア3が損傷する可能性は低い。また、組合体1Aを吊り下げた状態でケース6内に挿入するため、ケース6と組合体1Aとの間のクリアランスが小さくても、組合体1Aの挿入作業に支障がない。
【0066】
上述した収納手順とは別の収納手順として、底板部60の上面に絶縁シート7を取り付け、その絶縁シート7の上に組合体1Aを載置した後、組合体1Aの上方から側壁部61を被せても良い。その場合も、把手部44Aを利用することで組合体1Aのコイル2および磁性コア3に触れることなく組合体1Aの配置作業を行なうことができる。なお、この収納手順を採用する場合、把手部44Aの屈曲部44aが側壁部61の内周面に接触しない大きさ、もしくは屈曲部44aが内周面に接触して把手部44Aが弾性変形する程度の大きさとすることが好ましい。その他、側壁部61の取付け前に屈曲部44aもしくは把手部44A全体をカットしてしまっても構わない。把手部44Aはリアクトル1の磁気特性に何ら影響を与えない部材であるからである。
【0067】
[γ]封止樹脂6Rの充填と硬化
ケース6への封止樹脂6Rの充填量は、適宜選択することができる。但し、組合体1Aのコイル素子2A,2Bが封止樹脂6Rに埋設されるようにすることが好ましい。
図1に示すように、ケース6の側壁部61の縁一杯にまで封止樹脂6Rを充填しても構わない。なお、コイル2の端部2a,2bは、接続端子を接続するために封止樹脂6Rから露出させている。
【0068】
封止樹脂6Rを硬化させる方法は、封止樹脂6Rに何を使用するかによって変化する。例えば、封止樹脂6Rが常温硬化性樹脂であれば時間の経過、熱硬化性樹脂であれば熱処理である。例えば封止樹脂6Rがエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である場合、ケース6ごと100〜160℃×50〜300分間の熱処理を施せば良い。
【0069】
[効果]
以上説明した構成を備えるリアクトル1は、生産性に優れる。それは、枠状ボビン4Aに把手部44Aが設けられていることによって、リアクトル1Aの組み立ての過程でケース6の所定位置に組合体1Aを配置する際、コイル2および磁性コア3に触れることなく組合体1Aを扱うことができ、組合体1Aの扱いに過度の慎重さを要求されることがないからである。特に、ケース6の開口部から組合体1Aを挿入する本実施形態の構成では、把手部44Aを手や運搬治具で掴んで組合体1Aを持ち上げ、そのまま組合体1Aをケース6内に挿入するだけで、コイル2や磁性コア3を損傷することなく、ケース6内に組合体1Aを配置できる。
【0070】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1とは異なる形状の把手部44Bを枠状ボビン4Bに設けたリアクトルを
図4に基づいて説明する。枠状ボビン4B以外の構成は、実施形態1のリアクトル1と同じであるため、
図4では組合体1Bのみを図示し、ケースは省略している(後述する
図5〜8も同様)。
【0071】
把手部44Bの説明にあたり、四つある把手部44Bの特定を行なう。まず、コイル軸方向の端部2a,2b側の二つの把手部44Bのうち、コイル並列方向のコイル素子2A側(紙面9時の位置)にある把手部44Bを左手前の把手部44B、コイル並列方向のコイル素子2B側(紙面6時の位置)にある把手部44Bを右手前の把手部44Bとする。一方、コイル軸方向のコイル素子連結部2r側の二つの把手部44Bのうち、コイル並列方向のコイル素子2A側(紙面12時の位置)にある把手部44Bを左奥の把手部44B、コイル並列方向のコイル素子2B側(紙面3時の位置)にある把手部44Bを右奥の把手部44Bとする。なお、この位置の特定の仕方は、
図5〜8でも同じである。
【0072】
組合体1Bの枠状ボビン4Bに備わる把手部44Bは、実施形態1と同じく上方延伸タイプである。但し、この把手部44Bの上端側が屈曲しておらず、その代わりに貫通孔44bが形成されている。この貫通孔44bは、組合体1Bをケース内に収納する際に用いられる運搬治具を引っ掛ける係合部である。引っ掛ける運搬治具は、フック状でも棒状でも良く、特に限定されない。
【0073】
上記貫通孔44bの形成方向は特に限定されない。本実施形態では、貫通孔44bの軸線が、コイル素子2A,2Bの軸線とほぼ平行に設けられ、かつ右手前の把手部44Bの貫通孔44bの軸線と、右奥の把手部44Bの貫通孔44bの軸線と、がほぼ一致するようになっている。同様に、左手前および左奥の把手部44Bの貫通孔44bの軸線同士がほぼ一致している。そのため、右手前の貫通孔44bおよび右奥の貫通孔44bに棒状の運搬治具を貫通させ、同様に左手前の貫通孔44bおよび左奥の貫通孔44bに棒状の運搬治具を貫通させることで、二本の棒状運搬治具で組合体1Bを安定した状態で持ち上げることができる。
【0074】
<実施形態3>
実施形態3では、側方延伸タイプの把手部44Cを枠状ボビン4Cに設けたリアクトルを
図5に基づいて説明する。
【0075】
組合体1Cの枠状ボビン4Cに備わる把手部44Cは、枠状ボビン4Cの上端側の部分がコイル素子2A,2Bの並列方向に張り出すことで形成されている。その側方に張り出した把手部44Cの下端面に運搬治具を引っ掛けることで、組合体1Cを持ち上げることが容易にできる。
【0076】
上記把手部44Cは、コイル素子2A,2Bの側面よりも張り出していることが好ましい。そうすることで、把手部44Cに運搬治具を引っ掛けたときに、運搬治具がコイル素子2A,2Bの外周面に接触する可能性を大幅に低減することができる。
【0077】
この組合体1Cを運搬治具で持ち上げる場合、例えば、四つの把手部44Cにそれぞれフック状の運搬治具を取り付けても良いし、実施形態2と同じように右手前と右奥の把手部44C(左手前と左奥の把手部44C)の下端面に棒状の運搬治具を渡らせても良い。
【0078】
上記側方延伸タイプの把手部44Cを設けることで、組合体1Cをケースに収納する際、組合体1Cの周面がケースの内壁面に接触することを回避することができる。さらに把手部44Cの張出長さを調節することで、ケース内における組合体1Cの位置決め部材としての機能を把手部44Cに持たせることができる。
【0079】
<実施形態4>
実施形態4では、実施形態3と同じ側方延伸タイプの把手部44Dに切欠き44dを設けたリアクトルを
図6に基づいて説明する。
【0080】
切欠き44dは、枠状ボビン4Dの把手部44Dのうち、コイル素子2A,2Bの側面よりも張り出している部分の下端側に設けられており、運搬治具を係合させる係合部の役目を果たす。また、組合体1Dをコイル軸方向から見たときに、右手前の切欠き44dと右奥の切欠き44dとが一致し、左手前の切欠き44dと左奥の切欠き(図示せず)とが一致している。そのため、実施形態2と同様に、二本の棒状の運搬治具で組合体1Dを安定した状態で持ち上げることができる。
【0081】
<実施形態5>
実施形態5では、実施形態3,4と同じ側方延伸タイプの把手部44Eに貫通孔44eを設けたリアクトルを
図7に基づいて説明する。
【0082】
貫通孔44eは、枠状ボビン4Eの把手部44Eのうち、コイル素子2A,2Bの側面よりも張り出している部分に設けられており、組合体1Eの運搬治具を係合させる係合部の役割を果たす。その貫通孔44eの軸線は、コイル素子2A,2Bの軸線にほぼ平行となっている。また、組合体1Eをコイル軸方向から見たときに、右手前の貫通孔44eと右奥の貫通孔44eとが一致し、左手前の貫通孔44eと左奥の貫通孔(図示せず)とが一致している。そのため、実施形態2と同様に、二本の棒状の運搬治具で組合体1Eを安定した状態で持ち上げることができる。
【0083】
<実施形態6>
実施形態6では、実施形態3〜5とは異なる方向に張り出した側方延伸タイプの把手部44Fを
図8に基づいて説明する。
【0084】
枠状ボビン4Fの把手部44Fは、図中の点線で示すように、庇部40をコイル素子2A,2Bの並列方向に延長することで形成されており、コイル軸方向に延びている。この場合、把手部44Fに例えばフック状の運搬治具を取付け、組合体1Fを安定して持ち上げることができる。
【0085】
なお、図示しないが、把手部44Fの厚み方向(即ち組合体1Fの高さ方向)に貫通する貫通孔を設けても良い。その場合、貫通孔は、フック状の運搬治具を係合させる係合部としての役割を果たし、組合体1Fの持ち上げを安定的に行なうことができる。
【0086】
<実施形態7>
実施形態1〜6のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0087】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、
図9に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。なお、
図9では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態としても良い。
【0088】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0089】
コンバータ1110は、
図10に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜6に記載のリアクトルを用いる。軽量で扱い易いこれらリアクトルを用いることで、電力変換装置1100(コンバータ1110を含む)の軽量化を図ることができる。
【0090】
ここで、上記車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC−DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC−DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC−DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1〜6のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜6のリアクトルなどを利用することもできる。
【0091】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、コイル素子を一つしか持たないリアクトルにも、本発明の構成を適用することができる。