(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁室内に弁座面を向けて前記弁座面に複数のポートを開口する弁座部材と、前記弁座面上を摺動するシール面を有する弁体と、前記弁体を保持して直線的に移動するプランジャを有する電磁駆動部とを備え、前記複数のポートが前記プランジャの移動方向である軸線に沿って配置され、前記プランジャにより前記弁体を移動させることにより、前記弁室に対して前記複数のそれぞれのポートを択一的に開閉して、前記弁室を介して流れる流体の流路を切り換える切換弁であって、
前記プランジャに、前記弁体を内挿する弁体取付孔が形成されるとともに、前記弁体取付孔の開口部の前記弁座面側の外周の全周に均等な流路が形成されていることを特徴とする切換弁。
前記弁室に導通する第1のポートを有し、前記弁座部材に、前記複数のポートとして第2のポートと第3のポートが形成され、前記弁体を移動させることにより、前記第1のポートを、弁室に対して開となる前記第2のポートまたは前記第3のポートに導通することを特徴とする請求項1に記載の切換弁。
前記弁室に導通する第1のポートを有し、前記弁座部材に、前記複数のポートとして第2のポートと第3のポートが形成されるとともに、前記第2のポートと前記第3のポートの中間に第4のポートが形成され、前記弁体の前記シール面が環状であって前記弁体には前記シール面の内側に凹部が形成され、前記弁体を移動させることにより、前記第1のポートを弁室に対して開となる前記第2のポートまたは前記第3のポートに導通するとともに、弁室に対して閉となる前記第3のポートまたは前記第2のポートを前記弁体の凹部によって前記第4のポートに導通することを特徴とする請求項1に記載の切換弁。
前記第1のポートが前記弁座部材に形成され、前記第1のポートが前記シール面の外側で前記弁体に隣接して開口していることを特徴とする請求項2または3に記載の切換弁。
前記流路は前記弁体取付孔の開口部の外周に形成したテーパ面、または、弁体取付孔の開口部の外周を窪ませた段部により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の切換弁。
前記弁体取付孔と前記弁体との間に間隙を設け、前記プランジャの軸回りの回動時に、前記弁体が前記プランジャの回動に追従せず前記プランジャが前記弁座部材に当接するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の切換弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の切換弁では、入力導口から一方の出力導口に高圧の流体が流れるが、その流体は、弁シートとプランジャとの隙間を通って流れることになる。しかしながら、弁シートとプランジャが接近しているため十分な流量を確保するためには、入力導口や出力導口の口径を大きくする必要がある。しかしながら、入力導口や出力導口の口径を大きくすると、スライド弁(弁体)の口径も大きくする必要がある。
【0005】
スライド弁の口径が大きくなると、受圧面積が大きくなるのでスライド弁の弁シート(弁座)に対する摺動抵抗が大きくなる。また、スライド弁の口径が大きくなると移動ストロークも大きくなってしまう。したがって、プランジャを駆動する電磁コイルの吸引力を大きくする必要があり、電磁駆動部が大きくなるとともに消費電力が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、弁ポートを小さくして弁体及びプランジャの摺動距離(移動ストローク)を小さくした切換弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の切換弁は、弁室内に弁座面を向けて前記弁座面に複数のポートを開口する弁座部材と、前記弁座面上を摺動するシール面を有する弁体と、前記弁体を保持して直線的に移動するプランジャを有する電磁駆動部とを備え、前記複数のポートが前記プランジャの移動方向である軸線に沿って配置され、前記プランジャにより前記弁体を移動させることにより、前記弁室に対して前記複数のそれぞれのポートを択一的に開閉して、前記弁室を介して流れる流体の流路を切り換える切換弁であって、前記プランジャに、前記弁体を内挿する弁体取付孔
が形成
されるとともに、前記弁体取付孔の開口部の前記弁座面側の外周
の全周に均等な流路
が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の切換弁は、請求項1に記載の切換弁であって、前記弁室に導通する第1のポートを有し、前記弁座部材に、前記複数のポートとして第2のポートと第3のポートが形成され、前記弁体を移動させることにより、前記第1のポートを、弁室に対して開となる前記第2のポートまたは前記第3のポートに導通することを特徴とする。
【0009】
請求項3の切換弁は、請求項1に記載の切換弁であって、前記弁室に導通する第1のポートを有し、前記弁座部材に、前記複数のポートとして第2のポートと第3のポートが形成されるとともに、前記第2のポートと前記第3のポートの中間に第4のポートが形成され、前記弁体の前記シール面が環状であって前記弁体には前記シール面の内側に凹部が形成され、前記弁体を移動させることにより、前記第1のポートを弁室に対して開となる前記第2のポートまたは前記第3のポートに導通するとともに、弁室に対して閉となる前記第3のポートまたは前記第2のポートを前記弁体の凹部によって前記第4のポートに導通することを特徴とする。
【0010】
請求項4の切換弁は、請求項2または3に記載の切換弁であって、前記第1のポートが前記弁座部材に形成され、前記第1のポートが前記シール面の外側で前記弁体に隣接して開口していることを特徴とする。
【0011】
請求項5の切換弁は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の切換弁であって、前記流路は前記弁体取付孔の開口部の外周に形成したテーパ面、または、弁体取付孔の開口部の外周を窪ませた段部により構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の切換弁は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の切換弁であって、前記弁体取付孔と前記弁体との間に間隙を設け、前記プランジャの軸回りの回動時に、前記弁体が前記プランジャの回動に追従せず前記プランジャが前記弁座部材に当接するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の切換弁は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の切換弁であって、当該切換弁を別装置に取り付けるためのブラケットを備え、前記ブラケットと前記弁座部材とが一体形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の切換弁によれば、弁座部材に形成された複数のポートが、弁体によって択一的に開閉されて開となったポートに弁室の流体が流れる。このとき、プランジャの弁体取付孔の開口部の外周に形成された流路により、開となったポートに流れる流体の流量を十分に確保できるので、ポートを最小限に小さくすることができ、ポート間の間隔も小さくできるため弁体を小さくできる。したがって、弁体及びプランジャの摺動距離を小さくでき、弁体の移動が容易となる。また、電磁駆動部を小さくするとともに、消費電力を小さくできる。
【0015】
請求項2の切換弁によれば、請求項1の効果に加えて、第1のポートから高圧の流体を第2のポートまたは第3のポートに択一的に流す三方切換弁として構成することができる。
【0016】
請求項3の切換弁によれば、請求項1の効果に加えて、第1のポートから高圧の流体を第2のポートまたは第3のポートに流し、他方の第3のポートまたは第2のポートを低圧側の第4のポートに択一的に導通する四方切換弁として構成することができる。
【0017】
請求項4の切換弁によれば、請求項2または3の効果に加えて、第1乃至第3のポートが一つの弁座部材に形成されているので、各ポートに対応するキャピラリの接続箇所を弁座部材側に纏めることができ、切換弁がコンパクトになる。
【0018】
請求項5の切換弁によれば、請求項1乃至4と同様な効果が得られる。
【0019】
請求項6の切換弁によれば、請求項1乃至5の効果に加えて、流路により流体の流れを確保できるので、プランジャと弁座部材との隙間を極力小さくでき、かつ、プランジャの弁体取付孔と弁体との間隙があるので、プランジャが回動しても、弁体が追従せずにプランジャが弁座部材に当接するため弁体のシール性を確保できる。
【0020】
請求項7の切換弁によれば、請求項1乃至6の効果に加えて、切換弁を四方切換弁等の別装置に取り付けるためのブラケットが弁座部材とが一体形成されているので、このブラケットを別装置の本体に溶接固定やろう付け固定することで強固に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の切換弁の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の切換弁の要部左側断面図(
図1(A) )及び要部正断面図(
図1(B) )、
図2は第1実施形態の切換弁の平断面図(
図2(A) )及び要部正断面図(
図2(B) )、
図3は
図2(A) のC−C断面図(
図3(A) )及び要部底面図(
図3(B) )、
図4は第1実施形態の切換弁を駆動源として用いる四方切換弁の正面図(
図4(A) )及び左側面図(
図4(B) )である。なお、
図1(B) は
図1(A) のA−A断面図である。また、
図2(B) は
図2(A) の軸線Lを含むB−B断面図であり、プランジャ及び弁体の図示を省略してある。また、
図3(B) ではブラケットの図示を省略してある。
【0023】
図4に示すように、この実施形態の切換弁10は、冷凍サイクルに接続される四方切換弁20を駆動するためのパイロット弁として構成したものである。なお、パイロット弁も「四方切換弁」である。四方切換弁20は円筒状の弁ハウジング20aと、冷凍サイクルの配管に接続される継手管201,202,203,204を有している。弁ハウジング20aには、切換弁10が後述のブラケット2Cを介して取り付けられている。ブラケット2Cと弁ハウジング20aは溶接またはろう付けにより固定されている。切換弁10は後述のキャピラリ211,221,231,241を有しており、キャピラリ211,241は四方切換弁20の継手管201,204にそれぞれ接続され、キャピラリ221,231は、四方切換弁20の弁ハウジング20aの両端にそれぞれ接続されている。なお、四方切換弁20の弁ハウジング20a内には図示しないピストン弁が配設されている。切換弁10は電磁駆動部5の駆動により、継手管201からの高圧流体をキャピラリ221またはキャピラリ231に切り換えて供給する。これにより、弁ハウジング20aの両端の内部空間の差圧により弁ハウジング20a内のピストン弁を作動させ、弁ハウジング20aに接続される継手管201〜204を流れる流体の流路を切り換える。
【0024】
図1乃至
図3に示すように、切換弁10は、端部に弁室1Aを形成する非磁性体製の円筒のプランジャチューブ1と、プランジャチューブ1に取り付けられた弁座部材2と、プランジャチューブ1内に配設された弁体3と、弁体3を保持するプランジャ4と、プランジャチューブ1の周囲に取り付けられた電磁駆動部5(
図2(A) 参照)とを有している。そして、プランジャチューブ1の弁室1Aの底面に弁座部材2が取り付けられ、プランジャチューブ1内に略円柱状のプランジャ4が配設されている。
【0025】
弁座部材2は、略円柱形状であり、本体部2Aと、本体部2Aより僅かに径の小さな弁座部2Bと、ブラケット2cを一体形成して構成されている。そして、弁座部2Bはプランジャチューブ1に形成された円形の嵌合孔11に嵌合され、ろう付けまたは溶接等により弁座部材2がプランジャチューブ1に取り付けられている。これにより、弁座部材2は、弁室1A内に弁座面を向けて配置されている。
【0026】
弁座部2Bには、弁座面に開口する「第1のポート」としてのDポート21、「第2のポート」としてのC切換ポート22、「第3のポート」としてのE切換ポート23及び「第4のポート」としてのSポート24がそれぞれ形成されている。本体部2Aには、ブラケット2C側からDポート21、C切換ポート22、E切換ポート23及びSポート24にそれぞれ連通する、キャピラリ取付孔21a,22a,23a,24aが形成されている。
【0027】
そして、キャピラリ取付孔21aを介してDポート21にキャピラリ211が接続され、キャピラリ取付孔22aを介してC切換ポート22にキャピラリ221が接続されている。また、キャピラリ取付孔23aを介してE切換ポート23にキャピラリ231が接続され、キャピラリ取付孔24aを介してSポート24にキャピラリ241が接続されている。キャピラリ211,221,231,241は、ブラケット2Cの開口から引き出されている。なお、以下の説明で、Dポート21、C切換ポート22、E切換ポート23及びSポート24を総称するとき、単に「ポート」ともいう。
【0028】
弁体3は、略円柱形状で、弁座部材2の弁座面上を摺動する円環状のシール面3aを有し、このシール面3aの内側に弁座面に対向するように凹部31が形成されている。弁体3は弁バネ32を介してプランジャ4の後述の弁体取付孔43内に内挿されている。これにより、弁体3はプランジャ4の移動により弁座部材2の弁座面に対して摺動可能となっている。
【0029】
プランジャ4はプランジャチューブ1の内面に整合する円柱部41と、この円柱部41の端部に形成された保持部42を有しており、この保持部42には弁座部材2の弁座面に対向するように円柱状の弁体取付孔43が形成されている。また、弁体取付孔43の開口部の外周には、円錐台の側面形状となるテーパ面44が形成されており、このテーパ面44の弁座面側の空間は円環状の流路44Aとなっている。なお、
図1(A) に示す流路44Aの幅[D]と、
図1(B) に示すポートの径[φd]はD>φdの関係にある。
【0030】
電磁駆動部5は、プランジャチューブ1の回りに嵌合された電磁コイル51と、外函52と、プランジャチューブ1の端部に嵌合された吸引子53と、吸引子53とプランジャ4との間に配設されたコイルバネ54とを有している。
【0031】
以上の構成により、電磁コイル51に通電されると、プランジャ4は磁力によりコイルバネ54の付勢力に抗して吸引子53に吸着され、弁体3は凹部31をSポート24とE切換ポート23とを覆う位置に移動する。この状態で、Sポート24とE切換ポート23は弁体3に覆われて弁室1Aに対して閉状態となるとともに、Sポート24とE切換ポート23は凹部31により導通する。また、C切換ポート22は弁室1Aに対して開状態となり、Dポート21が弁室1Aを介してC切換ポート22に導通する。このとき、Dポート21から弁室1A内に流入する高圧の流体は、弁体取付孔43の周囲の流路44Aを介してC切換ポート22に流れる。
【0032】
また、電磁コイル51への通電を遮断するとプランジャ4はコイルバネ54の付勢力により吸引子53から離間する。この状態で、Sポート24とC切換ポート22は弁体3に覆われて弁室1Aに対して閉状態となるとともに、Sポート24とC切換ポート22は凹部31により導通する。また、E切換ポート23は弁室1Aに対して開状態となり、Dポート21が弁室1Aを介してE切換ポート23に導通する。このとき、Dポート21から弁室1A内に流入する高圧の流体は、
図1(B) に矢印で示すように、弁体3の外側で弁体取付孔43の周囲の流路44Aを介してE切換ポート23に流れる。
【0033】
以上のように、Dポート21からの高圧の流体は、流路44Aを介してE切換ポート23あるいはC切換ポート22に流れるので、この流体の流量を十分に確保することができる。したがって、各ポートの径を最小限に小さくできるので、各ポート間の間隔も小さくでき、弁体3の凹部31の径を小さくできる。弁体3には、弁体3の凹部31と弁室1Aとの差圧が作用するが、凹部31の径を小さくできるので、弁体3の受圧面積が小さくなり、弁体3の移動が容易となる。また、各ポート径、凹部31の径を小さくできるので、弁体3及びプランジャ4の移動ストロークを小さくできる。したがって、電磁駆動部5を小さくするとともに、消費電力を小さくできる。
【0034】
また、Dポート21から高圧の流体が流入するので、
図5に矢印で示すように、プランジャ4は軸線L周りに回動する。しかし、高圧流体の流れを流路44Aにより確保できるので、プランジャ4の保持部42と弁座部材2との隙間(流路44A以外の隙間)を極力小さくでき、かつ、プランジャ4の弁体取付孔43と弁体3との間隙があるので、プランジャ4が回動しても、弁体3が追従せずにプランジャ4が弁座部材2に当接するため弁体3のシール性を確保できる。
【0035】
なお、プランジャの回動防止手段として、プランジャに突起等を設けてこの突起を弁座部材に当接させることも考えられるが、このようにすると摺動抵抗が大きくなる。これに対して、上記実施形態によれば、プランジャ4と弁座部材2とは点で接触するだけであり、騒動抵抗が小さく、電磁駆動部5の作動電圧を低減できる。
【0036】
図1(B) に示すように、Sポート24(第4のポート)とC切換ポート22(第2のポート)とE切換ポート23(第3のポート)は、軸線Lに対して交互にずれた位置に配置されており、これにより、弁体3の凹部31を小さくしながらこの凹部31により2つのポートを覆うことができる。なお、「第2、第3のポート」であるC切換ポート22とE切換ポート23、及び「第4のポート」であるSポート24は、それぞれ軸線Lに沿って配置されている。
【0037】
また、プランジャ4の弁体取付孔43の内径は弁体3の外径よりも僅かに大きくなっており、この弁体取付孔43と弁体3との間隙により、プランジャ4の初動時に弁体取付孔43の内面が弁体3に当たることで、弁体3の移動を容易にしている。これは、いわゆるキック動作である。
【0038】
図6は第2実施形態の切換弁の平断面図(
図6(A) )及び要部正断面図(
図6(B) )、
図7は
図6(A) のE−E断面図(
図7(A) )及び要部底面図(
図7(B) )、
図8は第2実施形態の切換弁を駆動源として用いる四方切換弁の正面図(
図8(A) )及び左側面図(
図8(B) )である。なお、
図6(B) は
図6(A) の軸線Lを含むD−D断面図であり、プランジャ及び弁体の図示を省略してある。また、
図7(B) ではブラケットの図示を省略してある。なお、以下の実施形態で、第1実施形態と同様な要素には
図1乃至
図5と同符号を付記して詳細な説明は省略する。また、以下の実施形態でも、第1実施形態における流路44Aによる作用効果が得られることは同様である。
【0039】
この第2実施形態と第1実施形態との違いは、キャピラリの取付構造とブラケットの構造及び弁体の取り付け構造である。
図8に示すように、四方切換弁20は第1実施形態と同様であり、この四方切換弁20の弁ハウジング20aには、切換弁10がブラケット6を介して取り付けられている。ブラケット6と弁座部材2は溶接またはろう付けにより固定されている。ブラケット6と四方切換弁20の弁ハウジング20aは溶接またはろう付けにより固定されている。第1実施形態のブラケット2Cはキャピラリを引き出すための開口を有しているが、この第2実施形態のブラケット6は単純な矩形形状である。
【0040】
また、この第2実施形態では、弁座部材2のDポート21、C切換ポート22、E切換ポート23及びSポート24にそれぞれ連通するキャピラリ取付孔21a′,22a′,23a′,24a′が、各ポートと直角となるように形成されている。そして、キャピラリ取付孔21a′を介してDポート21にキャピラリ211′が接続され、キャピラリ取付孔22a′を介してC切換ポート22にキャピラリ221′が接続されている。また、キャピラリ取付孔23a′を介してE切換ポート23にキャピラリ231′が接続され、キャピラリ取付孔24a′を介してSポート24にキャピラリ241′が接続されている。
【0041】
また、この第2実施形態では、プランジャ4の弁体取付孔43からプランジャチューブ1の内周側に通じる貫通穴45が形成されている。第1実施形態では、弁体3を弁バネ32によって弁座部材2側に押圧するようにしているが、この第2実施形態では、プランジャチューブ1内(弁室1A内)の高圧を貫通穴45から導入することにより、弁体3の凹部31内の低圧と貫通穴45の高圧との差圧により、弁体3を弁座部材2側に押圧する。これにより弁ばねが不要となる。
【0042】
このように、第2実施形態では、弁座部材2に対して、キャピラリ211′,221′,231′,241′が各ポートと直角に取り付けられているので、ブラケット6はキャピラリを引き出すための開口等を有しない単純な構造とすることができる。
【0043】
図9は第3実施形態の切換弁の要部左側断面図であり、第2実施形態の
図7(A) に対応する断面図である。
図10は第3実施形態の切換弁を駆動源として用いる四方切換弁の左側面図であり、正面図は
図8(A) と同一である。この第3実施形態では、第2実施形態と同様な弁座部材2に対してブラケット2Cを一体形成したものである。その他の構成及び作用は第2実施形態と同一である。
図10に示すように、この第3実施形態の切換弁10も冷凍サイクルに接続される四方切換弁20を駆動するためのパイロット弁として構成したものである。四方切換弁20は第1及び第2実施形態と同様であり、この四方切換弁20の弁ハウジング20aには、切換弁10がブラケット2Cを介して取り付けられている。ブラケット2cと弁ハウジング20aは溶接またはろう付けにより固定されている。
【0044】
図11は従来の切換弁を駆動源として用いる四方切換弁の正面図及び左側面図である(特開2010−112437号広報)。この従来の切換弁30は取付け金具50を用いて四方切換弁20の弁ハウジング20aに取り付けられている。取付け金具50は2つの把持部501,501を有しており、把持部501,501はそれぞれ一対のアーム501a,501aを有している。切換弁30はアーム501a,501aで把持され、このアーム501a,501aの端部をかしめることにより、切換弁30が取付け金具50に固定されている。そして、取付け金具50と弁ハウジング20aは溶接またはろう付けにより固定されている。
【0045】
このように、従来の切換弁30は取付け金具50によりかしめ固定しているので、取り付け金具50が必要であり、部品点数が多くなる。また、かしめ工程が必要で、組み立て工数も多くなる。さらに、かしめ部分の緩み等により固定強度の点で改良の余地がある。これに対して、第3実施形態の切換弁10によれば、ブラケット2Cが弁座部材2と一体成形されているので、部品点数を削減できるとともに、かしめ工程が不要となり、組み立て工数も削減できる。また、一体構造により固定強度も向上し、振動に強い構造となる。
【0046】
図12は第4実施形態の切換弁の要部正断面図であり、第1実施形態の
図1(B) に対応する図である。第1実施形態と同様な要素には
図1乃至
図5と同符号を付記して詳細な説明は省略する。この第4実施形態の切換弁40は三方弁として構成したものである。
図12に示すように、プランジャチューブ1に取り付けられた弁座部材7は、外観形状は第1実施形態の弁座部材2と同じであり、弁座部材7は弁座部7Bを有している。また、弁体8は第1実施形態の弁体3より径の小さな円柱形状をしており
図12に示す断面と同じ円形のシール面を有している。
【0047】
また、プランジャ9は第1実施形態のプランジャ4と略同型であるが、保持部92に形成された弁体取付孔93と流路94Aの径が、弁体8の径に対応して第1実施形態における弁体取付孔43及び流路44Aより小さくなっている。弁体8は、プランジャ9の弁体取付孔93内に内挿されており、第1実施形態と同様に、弁体8はプランジャ9の移動により弁座部材7の弁座面に対して摺動可能となっている。なお、流路94Aは、第1実施形態と同様に円錐台の側面形状となるテーパ面により形成されている。
【0048】
弁座部材7は、弁室1A内に弁座面を向けて配置されており、弁座部7Bには、弁座面に開口する「第1のポート」としてのDポート71、「第2のポート」としての切換ポート72及び「第3のポート」としての切換ポート73がそれぞれ形成されている。また、図示は両略するが、これらのポートにはキャピラリが接続されている。
【0049】
以上の構成により、図示しない第1実施形態と同様な電磁駆動部の電磁コイルに通電されると、プランジャ9が移動され、弁体8はシール面で切換ポート73を覆う位置に移動する。この状態で切換ポート73が閉状態となるとともに、切換ポート72が開状態となる。そして、Dポート71が弁室1Aを介して切換ポート72に導通する。このとき、Dポート71から弁室1A内に流入する高圧の流体は、弁体取付孔93の周囲の流路94Aを介して切換ポート72に流れる。
【0050】
また、電磁コイルへの通電を遮断するとプランジャ9が
図12の位置に移動し、弁体8はシール面で切換ポート72を覆う位置に移動する。この状態で切換ポート72が閉状態となるとともに、切換ポート73が開状態となる。そして、Dポート71が弁室1Aを介して切換ポート73に導通する。このとき、Dポート71から弁室1A内に流入する高圧の流体は、
図12に矢印で示すように、弁体8の外側で弁体取付孔93の周囲の流路94Aを介して切換ポート73に流れる。
【0051】
以上のように、Dポート71からの高圧の流体は、流路94Aを介して切換ポート73あるいは切換ポート72に流れるので、この流体の流量を十分に確保することができる。したがって、各ポートの径を最小限に小さくできるので、各ポート間の間隔も小さくでき、弁体8の径を小さくできる。したがって、前記実施形態と同様に、弁体8の受圧面積が小さくなり、弁体8の移動が容易となる。また、各ポート径を小さくできるので、弁体8及びプランジャ9の移動ストロークを小さくできる。したがって、電磁駆動部を小さくするとともに、消費電力を小さくできる。
【0052】
以上の実施形態では流路44A,94Aをテーパ面により構成するようにしているが、弁体取付孔の開口部の外周を、窪ませるような段部により流路を形成するようにしてもよい。
【0053】
なお、各実施形態において、弁座部材2,7,プランジャ4,9は、金属射出成型(MIM:Metal Injection Molding)により形成することができる。
【0054】
また、実施形態では、高圧側の流体が流入するDポート及びキャピラリを弁座部材側に形成するようにしているが、例えば、プランジャチューブ1の端部や側部に高圧側のキャピラリを接続してそのキャピラリから弁室内に高圧の流体を導入するようにしてもよい。この場合でも、弁室に流入する高圧の流体は前記流路44A,94Aを介して、E切換ポート22あるいはC切換ポート23、切換ポート72あるいは切換ポート73に流すことができ、前記実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0055】
また、第1乃至第4実施形態ではパイロット弁として構成した切換弁の例を説明したが、本発明の切換弁は、冷凍サイクルの流路あるいはその他の配管システムの流路を切り換える三方切換弁や四方切換弁として構成することもできる。また、その他、5個以上のポートの切換を行う切換弁としても構成できる。
【0056】
また、実施形態では、弁座部材2,7は略円柱形状をしているが角柱状でもよい。また、実施形態では、弁体3,8は略円柱形状をしているが楕円柱状でもよい。また、シール面3aは円環状の形状であるが、楕円形状でもよい。これらの形状は、実施形態の形状に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。