特許第5928912号(P5928912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928912
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】車両前部の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20160519BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20160519BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B62D25/20 D
   B62D25/20 F
   B62D25/20 G
   B62D25/08 E
   B62D25/08 F
   B62D21/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-538452(P2013-538452)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2012062774
(87)【国際公開番号】WO2013054564
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-223901(P2011-223901)
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126365(JP,A)
【文献】 特開平08−239056(JP,A)
【文献】 特開2001−063621(JP,A)
【文献】 特開2002−211436(JP,A)
【文献】 特開平10−226358(JP,A)
【文献】 特開2000−108930(JP,A)
【文献】 特開平07−267148(JP,A)
【文献】 特開2000−225966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/00
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向の左右両側にダッシュサイドインナパネル及びダッシュサイドアウタパネルが設けられ、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバとフロアサイドメンバとが接合され、これらフロントサイドメンバ及びフロアサイドメンバの接合部にサスペンションフレームが締結されているとともに、前記サスペンションフレームの締結部から車両幅方向の外側斜め後方へ延びるダッシュサイドメンバが設けられ、前記ダッシュサイドメンバの外側端部はサイドシルの前端部に接合され、前記サイドシルの前端部の車両前方にはサイドアウタパネルの下部の前面が配置され、前記サイドアウタパネル、前記ダッシュサイドインナパネル及び前記ダッシュサイドアウタパネルの前端部には車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記サイドアウタパネルの下部の前面位置で、前記ダッシュサイドアウタパネルと前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルとが前記フランジで接合されており、
前記サイドアウタパネルの下部の前面は、車両側方視で車両後方へ向かって斜め下方に傾斜しているとともに、車両上方視で車両外側へ向かって斜め後方に傾斜した傾斜面に形成されていることを特徴とする車両前部の下部車体構造。
【請求項2】
前記ダッシュサイドインナパネルの下部前面と、前記サイドシルを構成するサイドシルアウタパネルの前端部とは、前記サイドアウタパネルの下部の前面に沿った傾斜面に形成されているとともに、重なるように配置され、この重なった面の部分で、前記ダッシュサイドインナパネル、前記サイドシルアウタパネル及び前記サイドアウタパネルの3枚がいに接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部車体構造。
【請求項3】
前記ダッシュサイドメンバの前面の後方への傾斜角度と前記サイドアウタパネルの下部の前面の傾斜角度とが、一致するように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両前部の下部車体構造。
【請求項4】
前記ダッシュサイドメンバの外側端部には、車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記ダッシュサイドメンバのフランジは、前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルのフランジと接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずかに記載の車両前部の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4輪自動車などの車両前部の下部車体構造は、車両幅方向の左右両側にダッシュサイドインナパネル及びダッシュサイドアウタパネルが設けられ、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバとフロアサイドメンバとが接合され、これらメンバの接合部にサスペンションフレームが締結されているとともに、サスペンションフレームの締結部から横方向外側へ延びるダッシュサイドメンバが設けられており、ダッシュサイドメンバの外側端部はサイドシルの前端部に接合されている。そして、サイドシルの車両前方には、前輪タイヤが配置されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−108930号公報
【特許文献2】特開平7−267148号公報
【特許文献3】特開2000−225966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の下部車体構造では、ダッシュサイドメンバとサイドシルとの接合強度が十分ではなく、かつダッシュサイドメンバなどの部材の配置や形状が余り工夫されていなかったので、車両前方からの荷重が加わった場合に、この荷重を車両後方の部位に伝達して分散させることが難しく、フロントサイドメンバ、ダッシュサイドメンバ及びサイドシルが変形するのみならず、車両前部の周辺部の車体パネルも変形するおそれがあった。また、車両走行時の前輪タイヤからの荷重がサスペンションフレームより車体締結部に伝達するので、周辺部品の変形、振動、騒音等の原因となるおそれがあった。
一方、従来の下部車体構造において、サイドシルの前端部の裏面側にリンフォースメントを接合することによって剛性を高める方法も提案されているが、リンフォースメントを設置すると、部品コスト高及び重量増大を招くとともに、取付工数増加によって取付作業性を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品コスト高及び重量増大を招くことなく、下部車体の剛性向上を図ることが可能であり、車両前方からの荷重をダッシュサイドメンバ、フロアサイドメンバ、サイドシル等の車両後方へ効率良く円滑に伝達して分散させ、下部車体の変形を低減させることが可能な車両前部の下部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両幅方向の左右両側にダッシュサイドインナパネル及びダッシュサイドアウタパネルが設けられ、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバとフロアサイドメンバとが接合され、これらフロントサイドメンバ及びフロアサイドメンバの接合部にサスペンションフレームが締結されているとともに、前記サスペンションフレームの締結部から車両幅方向の外側斜め後方へ延びるダッシュサイドメンバが設けられ、前記ダッシュサイドメンバの外側端部はサイドシルの前端部に接合され、前記サイドシルの前端部の車両前方にはサイドアウタパネルの下部の前面が配置され、前記サイドアウタパネル、前記ダッシュサイドインナパネル及び前記ダッシュサイドアウタパネルの前端部には車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記サイドアウタパネルの下部の前面位置で、前記ダッシュサイドアウタパネルと前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルとが前記フランジで接合されており、前記サイドアウタパネルの下部の前面は、車両側方視で車両後方へ向かって斜め下方に傾斜しているとともに、車両上方視で車両外側へ向かって斜め後方に傾斜した傾斜面に形成されている。
【0007】
また、本発明において、前記ダッシュサイドインナパネルの下部前面と、前記サイドシルを構成するサイドシルアウタパネルの前端部とは、前記サイドアウタパネルの下部の前面に沿った傾斜面に形成されているとともに、重なるように配置され、この重なった面の部分で、前記ダッシュサイドインナパネル、前記サイドシルアウタパネル及び前記サイドアウタパネルの3枚がいに接合されている。
【0008】
さらに、本発明において、前記ダッシュサイドメンバの前面の後方への傾斜角度と前記サイドアウタパネルの下部の前面の傾斜角度とが、一致するように設定されている。
【0009】
そして、本発明において、前記ダッシュサイドメンバの外側端部には、車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記ダッシュサイドメンバのフランジは、前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルのフランジと接合されている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如く、本発明に係る車両前部の下部車体構造は、車両幅方向の左右両側にダッシュサイドインナパネル及びダッシュサイドアウタパネルが設けられ、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバとフロアサイドメンバとが接合され、これらフロントサイドメンバ及びフロアサイドメンバの接合部にサスペンションフレームが締結されているとともに、前記サスペンションフレームの締結部から車両幅方向の外側斜め後方へ延びるダッシュサイドメンバが設けられ、前記ダッシュサイドメンバの外側端部はサイドシルの前端部に接合され、前記サイドシルの前端部の車両前方にはサイドアウタパネルの下部の前面が配置され、前記サイドアウタパネル、前記ダッシュサイドインナパネル及び前記ダッシュサイドアウタパネルの前端部には車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記サイドアウタパネルの下部の前面位置で、前記ダッシュサイドアウタパネルと前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルとが前記フランジで接合されており、前記サイドアウタパネルの下部の前面は、車両側方視で車両後方へ向かって斜め下方に傾斜しているとともに、車両上方視で車両外側へ向かって斜め後方に傾斜した傾斜面に形成されているので、車両前方からの荷重に対してダッシュサイドメンバへの伝達荷重を増大させることが可能となり、フロントサイドメンバの負担を軽減できるとともに、部品コスト高、重量増大及び取付作業工数増加を招くリンフォースメントなどの別部品を設けることなく、下部車体の剛性を向上させることができ、車両前方からの荷重による下部車体の変形を効果的に低減させることができる。
【0011】
また、本発明の下部車体構造によれば、車両前方からの荷重がフロントサイドメンバに加わった場合に、当該フロントサイドメンバへの荷重がダッシュサイドメンバ及びフロアサイドメンバにそれぞれ分散し、ダッシュサイドメンバへの荷重がサイドシルに伝達されることになり、また、車両前方からの荷重により前輪タイヤが車両後方へ後退してサイドアウタパネルの下部の前面に接触した場合に、ダッシュサイドメンバやサイドシルに荷重が掛かることになるので、車両前方からの荷重をダッシュサイドメンバ及びサイドアウタパネルを介してサイドシルの全体で受けることができ、車両前方からの荷重をサイドシルの車両後方に効率的に伝達することができる。
さらに、本発明の下部車体構造によれば、サイドアウタパネルの下部の前面が所定の方向へ傾斜する傾斜面であり、サイドシルの前端部の車両前方には余分な部位が存在しないので、部品形状の最小化による軽量化を図ることができる。
【0012】
また、本発明において、前記ダッシュサイドインナパネルの下部前面と、前記サイドシルを構成するサイドシルアウタパネルの前端部とは、前記サイドアウタパネルの下部の前面に沿った傾斜面に形成されているとともに、重なるように配置され、この重なった面の部分で、前記ダッシュサイドインナパネル、前記サイドシルアウタパネル及び前記サイドアウタパネルの3枚がいに接合されているので、サイドアウタパネルの下部の前面の剛性、車体ねじり剛性、サスペンション取付剛性などを大幅に向上させることができ、車両前方からの荷重によるサイドシルの前端部の変形を低減させ、サイドアウタパネルの下部の傾斜した前面を利用した荷重分散を確実に行うことができる。しかも、車両走行時の前輪タイヤからの旋回荷重、減速及び加速荷重、振動などが掛かるサスペンションフレームが高剛性の箇所で車体側に締結されることになるので、車両の走行安定性を図ることができるとともに、振動及び騒音を低減させることができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記ダッシュサイドメンバの前面の後方への傾斜角度と前記サイドアウタパネルの下部の前面の傾斜角度とが、一致するように設定されているので、車両前方からの荷重をサイドシル後方への真直ぐな荷重としてではなく、車両上下方向および車両幅方向に向きを確実に変えることができ、車両後方に位置する車体の各部分に荷重分散することができる。
【0014】
そして、本発明において、前記ダッシュサイドメンバの外側端部には、車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、前記ダッシュサイドメンバのフランジは、前記サイドアウタパネル及び前記ダッシュサイドインナパネルのフランジと接合されているので、下部車体の剛性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る下部車体構造が適用された車両前部を下方から見た平面図である。
図2図1の車両前部を斜め下方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る下部車体構造が適用された車両前部を示す側面図である。
図4】(a)は、図3の車両前部において、サイドアウタパネルを取り除いた状態を示す側面図、(b)は、(a)の車両前部において、ダッシュサイドアウタパネルを取り除いた状態を示す側面図、(c)は、(b)の車両前部において、サイドシルアウタパネルを取り除いた状態を示す側面図である。
図5図1の車両前部の外側部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図5は本発明の実施形態に係る車両前部の下部車体構造を示すものである。
【0017】
本発明の実施形態に係る車両は、図1図5に示すように、4輪タイプの自動車であり、このタイプの車両前部1の下部車体構造は、主として、車両幅方向の左右両側に設けられるダッシュサイドインナパネル2及びダッシュサイドアウタパネル3と、これらダッシュサイドインナパネル2及びダッシュサイドアウタパネル3よりも車両内側に配置され、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバ4及びフロアサイドメンバ5と、車両前後方向及び車両上下方向に沿って延在することにより車両両側部の車体を構成するサイドアウタパネル6と、該サイドアウタパネル6の車両内側でドア開口部の下部に配置され、車両前後方向へ沿って延びるサイドシル7を備えている。ダッシュサイドインナパネル2とダッシュサイドアウタパネル3とは、両パネルを車両幅方向で内側と外側に重ねて配置した状態で互いに接合することによって、閉断面形状に形成されている。また、サイドシル7は、サイドシルインナパネル8とサイドシルアウタパネル9とを車両幅方向で内側と外側に重ねて配置した状態で互いに接合することによって構成されている。なお、図1及び図5において、矢印F方向は車両前方を示している。
【0018】
フロントサイドメンバ4の後端部とフロアサイドメンバ5の前端部とは、互いに接合されており、これらフロントサイドメンバ4及びフロアサイドメンバ5の接合部には、サスペンションフレーム10の端部がボルトなどにより締結されている。そして、フロントサイドメンバ4及びフロアサイドメンバ5の接合部とサイドシル7の前端部との間には、図1図2及び図5に示すように、開口部を上向きに配置した横断面形状ハット型のダッシュサイドメンバ11が設けられている。
本実施形態のダッシュサイドメンバ11は、サスペンションフレーム10の締結部Pから車両幅方向の外側斜め後方へ向かって傾斜しながら延在しており、ダッシュサイドメンバ11の外側端部は、サイドシル7を構成するサイドシルインナパネル8の前端部に接合されている。また、ダッシュサイドメンバ11の内側端部は、フロントサイドメンバ4及びフロアサイドメンバ5の接合部付近に接合されている。そして、サイドシル7の車両前方には、図1に示すように、前輪タイヤ12が配置されている。
【0019】
また、本実施形態のサイドシル7の前端部の車両前方には、図1図3及び図5に示すように、サイドアウタパネル6の下部の前面6aが配置されている。このため、サイドアウタパネル6の下部の前面6aは、サイドシルインナパネル8の前端部を覆うように車両内側へ向かって屈曲形成されており、車両側方視で車両後方へ向かって斜め下方に傾斜しているとともに、車両上方視で車両外側へ向かって斜め後方に傾斜した幅広の傾斜面に形成されている。しかも、ダッシュサイドメンバ11の前面11aの車両後方への傾斜角度とサイドアウタパネル6の下部の前面6aの傾斜角度とは、同じ角度で一致するように設定されている(図5中の鎖線Cを参照)。このような傾斜面によって、ダッシュサイドメンバ11の前面11aの車両前方領域Sには、下部車体の構成部材が省略することが可能となり、余分な構成部材が存在しなくなった分だけ軽量化が図れるようになっている。
そして、サイドアウタパネル6、ダッシュサイドインナパネル2及びダッシュサイドアウタパネル3の前端部には、車両上下方向へ延びるフランジ6b,2a,3aが設けられており、サイドアウタパネル6の下部の前面6aの位置で、ダッシュサイドアウタパネル3とサイドアウタパネル6及びダッシュサイドインナパネル2とがフランジ3a,6b,2aで接合されている。
【0020】
さらに、本実施形態のダッシュサイドインナパネル2の下部前面と、サイドシルアウタパネル9の前端部とは、サイドアウタパネル6の下部の前面6aに沿った傾斜面にそれぞれ形成されているとともに、これらパネル2,9,6の前面などが重なるように配置されている。そして、この重なった面の部分で、ダッシュサイドインナパネル2、サイドシルアウタパネル9及びサイドアウタパネル6の3枚がスポット溶接により互いに接合されている。また、ダッシュサイドメンバ11の外側端部には、車両上下方向へ延びるフランジが設けられており、ダッシュサイドメンバ11のフランジは、サイドアウタパネル6及びダッシュサイドインナパネル2のフランジと接合されている。したがって、本実施形態の下部車体構造では、車両上方からサイドアウタパネル6、ダッシュサイドインナパネル2及びダッシュサイドアウタパネル3が接合され、車両幅方向からダッシュサイドメンバ11が接合され、車両後方からサイドシルアウタパネル9及びサイドシルインナパネル8が接合されていることになる。
【0021】
このように、本発明の実施形態に係る車両前部1の下部車体構造においては、車両前後方向へ沿って延びるフロントサイドメンバ4及びフロアサイドメンバ5の接合部にサスペンションフレーム10が締結され、サスペンションフレーム10の締結部Pから車両幅方向の外側斜め後方へ延びるダッシュサイドメンバ11が設けられ、ダッシュサイドメンバ11の外側端部はサイドシルインナパネル8の前端部に接合され、サイドシル7の前端部の車両前方にはサイドアウタパネル6の下部の前面6aが配置され、サイドアウタパネル6、ダッシュサイドインナパネル2及びダッシュサイドアウタパネル3の前端部には車両上下方向へ延びるフランジ6b,2a,3aが設けられ、サイドアウタパネル6の下部の前面6aの位置で、ダッシュサイドアウタパネル3とサイドアウタパネル6及びダッシュサイドインナパネル2とがフランジ3a,6b,2aで接合されており、ダッシュサイドインナパネル2の下部前面と、サイドシルアウタパネル9の前端部とが、サイドアウタパネル6の下部の前面6aに沿った傾斜面に形成されて重なるように配置され、この重なった面の部分で、ダッシュサイドインナパネル2、サイドシルアウタパネル9及びサイドアウタパネル6の3枚がスポット溶接により互いに接合され、ダッシュサイドメンバ11の外側端部には、車両上下方向へ延びるフランジが設けられ、ダッシュサイドメンバ11のフランジは、サイドアウタパネル6及びダッシュサイドインナパネル2のフランジと接合されている一方、サイドアウタパネル6の下部の前面6aが、車両側方視で車両後方へ向かって斜め下方に傾斜し、かつ車両上方視で車両外側へ向かって斜め後方に傾斜した傾斜面に形成されているため、別部品を設けることなく、車両前方からの荷重を受ける箇所の剛性を向上させることができ、車両前方からの荷重をダッシュサイドメンバ11及びサイドアウタパネル6を介して車両後方のサイドシル7等に伝達して効率的に分散することができ、サイドシル7などの下部車体の変形を抑えることができる。しかも、車両走行時の前輪タイヤ12からの旋回荷重、減速及び加速荷重、振動などが掛かるサスペンションフレーム10が高剛性の箇所である締結部Pにおいて締結されているため、車両の走行安定性を高め、振動及び騒音を低減させることができ、運転操作性及び室内居住性の向上を図ることができる。
【0022】
また、本実施形態の下部車体構造においては、ダッシュサイドメンバ11の前面11a及びサイドアウタパネル6の下部の前面6aが同じ角度で車両後方へ傾斜するように形成されて配置されているため、サイドシル7の前端部及びダッシュサイドメンバ11の前面11aの車両前方領域Sに余分な構成部材が存在しなくなり、その分だけ軽量化を実現することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両前部
2 ダッシュサイドインナパネル
2a フランジ
3 ダッシュサイドアウタパネル
3a フランジ
4 フロントサイドメンバ
5 フロアサイドメンバ
6 サイドアウタパネル
6a サイドアウタパネルの下部の前面
6b フランジ
7 サイドシル
8 サイドシルインナパネル
9 サイドシルアウタパネル
10 サスペンションフレーム
11 ダッシュサイドメンバ 11a ダッシュサイドメンバの前面
12 前輪タイヤ
P サスペンションフレームの締結部
図1
図2
図3
図4
図5