【実施例1】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
なお、
図4と共通する部分は同一符号を付して詳細説明は省略する。
金属蒸気放電灯の発光管2の両端に形成されたキャピラリ3R、3Lに気密封止される電極アセンブリ1は、
図1に示すごとく、タングステンロッドで成る電極棒4aの先端側にタングステン線4bを密巻きして放熱用のコイル部が形成された電極4と、モリブデンロッド5aの外周部にモリブデン線5bを密巻きしてコイル部が形成された耐ハロゲン性中間材5と、アルミナ粉末とモリブデン粉末とを混合、焼結して成る封着性部材6と、電力供給リード8とが直列的に突合せ溶接された構成となっている。
【0025】
この電極アセンブリ1を製造する際は、
図2(a)に示すように、封着性部材6の端部に小径部を設け、耐ハロゲン性中間材5と突合せ溶接などで接合し、その後
図1に示すような電極4及び電力供給リード8を突合せ溶接する。以下、順に説明する。
【0026】
図2に示す例では、5は耐ハロゲン性中間材であり、直径0.5mmのモリブデンロッド5aの外周部に、直径0.2mmのモリブデン線5bを密巻きし、所定長さに切断された直径0.90mmの部材である。耐ハロゲン性中間材5の両端面は、モリブデン線5bが密巻きされた状態で、中心軸に対して垂直な平面となっている。6は封着性部材であり、アルミナ粉末とモリブデン粉末とを容量比50対50で混合し、成形、焼結して直径0.9mm、長さ8mmとした導電性サーメットである。封着性部材6の端部には小径部が設けられており、小径部の条件は、その封着性部材6が溶接される耐ハロゲン性中間材5の溶接側端部のモリブデンロッド5aの端面のみに接触するような形状であることである。簡単な具体例としては、耐ハロゲン性中間材5の溶接側端部のモリブデンロッド5aの端面径より封着性部材6の小径部端面径が小さくなるように形成すればよい。本例では、封着性部材6を成形、焼結後に所定の長さに切断し、少なくとも一方の端部を旋盤で面取り加工している。封着性部材6端面の直径φ
1は0.5mmであり、耐ハロゲン性中間材5のモリブデンロッド5aの径φ
2と同じである。導電性サーメット棒6の小径部は端面から45度の角面取り加工をしたもので、旋盤にチャックして導電性サーメットを回転させヤスリを斜めに接触させるか、または電動鉛筆削り器のように導電性サーメットを固定してヤスリを回転させるなどの一般的な加工方法で小径部を成形することができる。本例では小径部の長さLは0.2mmとなる。
【0027】
上述の説明では、封着性部材6の端部を1本ずつ旋盤で切削する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、任意の方法を用いることができる。例えばレーザー照射によって不要部分を蒸発させてもよいし、バレル研磨でも、化学研磨でもよい。要するに直径0.5mmから1.5mm程度の脆性細棒材の片端部を適量範囲だけ小径に加工することができれば、加工方法は任意である。
【0028】
上記2つの部材を突合せ溶接して
図2(b)の形状とする。
突合せ溶接は抵抗溶接の一種であり、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6のそれぞれを溶接電源に接続されたチャックで固定し、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6とを突合せた状態で瞬間的に大電流(本例では、0.9V、90A)を流すことにより接合部Wにジュール熱を発生させて溶接させる。
封着性部材6の溶接側端部には小径部が形成されているので、耐ハロゲン性中間材5はその中心にあるモリブデンロッド5aの部分のみが封着性部材6の端面に接触しており、この接触部のみが発熱する。例えモリブデン線5bのコイル端部が少しほどけて耐ハロゲン性中間材5の端面より局部的に飛び出していたとしても、突合せ溶接前の時点ではモリブデン線5bと封着性部材6とは接触していないため発熱することはない。従ってモリブデンロッド5aと接触している封着性部材6の中心部のみが加熱されることとなる。アルミナ粉末とモリブデン粉末とを混合、焼結して成る封着性部材6はその融点がモリブデンからなる耐ハロゲン性中間材5より低いので、大電流を流すことにより封着性部材6の端部が変形すると共にその部分からアルミナが封着性部材6の外径方向へ溶出する。
【0029】
このときアルミナが溶出した後の導電性サーメット端部にはモリブデンリッチの部分が生じ、これが耐ハロゲン性中間材端部と融合して耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6が一体化し、通電終了後には硬化した溶出アルミナが接合部W付近に留まり、
図2(b)に示すような形状となって突合せ溶接が完了する。
なお、溶出したアルミナは導電性サーメット外径より小径となる空間に溜まるので、その空間の周囲には溢れ出にくくなり、同径の耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6を接合部Wで外径が変化することなく均一な太さに突合せ溶接することができる。
【0030】
ただし、小径部端面の面積φ
1がモリブデンロッド端面の面積φ
2以下であっても小径部の長さLが小さすぎると、封着性部材6の溶接後に封着性部材6の元外径φ
0より小径となる空間がほとんどなくなり、溶出したアルミナが接合部に収まらず、封着性部材6の外径より膨らんでしまうことがある。このような場合、電極アセンブリとしては不良品となる。本例のような構成とした場合、製造時の歩留まりを上げるためには、数回の試作を行って導電性サーメット端面径φ
1と面取り角度θの最適値を決定するのが好ましい。実用的には前記封着性部材の小径部形状は中心軸からの斜面の傾きが30〜50度の円錐台状にするのが好ましい。
【0031】
より好ましい実施例では、導電性サーメットは耐ハロゲン性中間材との溶接側端部に小径部を有し、その小径部は溶接後に溶融した体積と残った小径部の元径より減少した分の体積とが一致するように設計されている。すなわち突合せ溶接を開始してからの押込量をHとし、低融点側の先端からH寸法を切断して突合せた溶接モデルを想定して、その先端形状で定まる切断部分の体積をV
1、流入部となる部分の容積をV
2としたときに、0.8V
2≦V
1≦V
2となるようにHを決定する。Hの寸法は、実際の小径部の形状により変わる。また導電性サーメットのアルミナ−モリブデン比率など、材料の条件によっても必要な押し込み量が変わるので、それに応じた小径部寸法を決定する必要がある。押込量Hは、封着性部材6の溶け込み長さでもある。
【0032】
小径部の形状については
図2(a)に示すテーパ形状に限らず、
図3に示すようなさまざまな形状であってよい。
図3の(a)から(f)に記載されている図はすべて封着性部材6の変形例である。
【0033】
例えば
図3(a)の例では、小径部形状が導電性サーメットの元径φ
0より小さいφ
1を有する円柱である。このような形状の場合、溶け込み長さ(押込量)Hがばらついても小径部の溶融体積V
1の変動が小さいため、突合せ溶接の溶接条件が精密に制御できない製造環境に適用すると有利である。
【0034】
図3(b)の例では、小径部形状が円錐である。このような形状の場合、溶接時に導電性サーメットと耐ハロゲン性中間材との接触部が点接触となるため、導電性サーメット端面が確実に耐ハロゲン性中間材のロッド部分のみに当たる。また小径部加工が旋盤などで簡単に加工できる。
【0035】
図3(c)の例では、小径部形状が半球である。このような形状の場合、溶接時に導電性サーメットと耐ハロゲン性中間材との接触部が点接触となるため、導電性サーメット端面が確実に耐ハロゲン性中間材のロッド部分のみに当たる。さらに溶け残り部分Jの形状を見ると、元径部分との境界が滑らかな曲線で接続しているため、溶け込み量を少なめにしてJの部分が完全に溶融アルミナに覆われない場合であっても導電性サーメット外径の急激な変化がなく、フリットシール後に応力が集中しにくい形状となる。
【0036】
図3(d)の例では、小径部形状が球冠形状である。このような形状の場合、
図3(c)の例と異なり、溶け込み長さHを自由に設定できる。
【0037】
図3(e)の例では、小径部形状が導電性サーメットの肩部を丸面取りした形状である。このような形状の場合、
図3(c)または(d)の例と異なり、溶接時に導電性サーメットと耐ハロゲン性中間材との接触部が面接触となるため、初期から大電流を流しても比較的安定な突合せ溶接を行うことができる。
【0038】
図3(f)の例では、小径部形状が球帯形状である。全体が円柱形状の導電性サーメットをバレル研磨すると両端面がこのような形状となる。バレル研磨によって製造できるため、大量に生産する場合に有利である。また、溶け残り部分Jの形状を見ると元径部分との境界が上記の形状例よりさらに滑らかな曲線で接続しているため、溶け込み量を少なめにしてJの部分が完全に溶融アルミナに覆われない場合であっても導電性サーメット外径の急激な変化がなく、フリットシール後に応力が集中しにくい形状となる。
【0039】
総じて
図3の(b)、(c)、(d)のように導電性サーメット端面に平面部を設けない形状では、溶接時に導電性サーメットと耐ハロゲン性中間材との接触部が点接触となるため、導電性サーメット端面が耐ハロゲン性中間材のロッド部分のみに当たる確率が高い。また溶接電流通電直後に導電性サーメット端部を流れる電流密度が非常に大きくなるため、導電性サーメットが溶融しやすい。ただし電流密度が大きすぎて導電性サーメット端部が蒸発してしまうような不良を防ぐために、溶接電流通電初期には電流値を小さく設定し、徐々に大きくしていくような電流制御が必要となる。
【0040】
また
図3の(a)、(e)、(f)のように導電性サーメット端面に平面部を設けた形状では、溶接時に導電性サーメットと耐ハロゲン性中間材との接触部が面接触となるため、初期から大電流を流しても導電性サーメット端部が蒸発するようなこともなく、比較的安定な突合せ溶接を行うことができる。このためコンデンサに電荷を蓄積して一気に放電させるタイプの溶接電源にも適用できる。
【0041】
なお耐ハロゲン性中間材5の外径と封着性部材6の外径とはほぼ同径で、共にキャピラリ内径よりわずかに小さい寸法となっているため、封着性部材6の端面径φ
1がモリブデンロッド5aの直径より十分小さい場合でも(あるいは導電性サーメット端部が点接触になる場合でも)、突き合わせ溶接時には、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6との軸ずれ許容差はあまり大きくできないことに留意すべきである。
【0042】
次に、耐ハロゲン性中間材5の他端部に電極4を突合せ溶接する。
この場合も、耐ハロゲン性中間材5のモリブデンロッド5aの端面に、電極のタングステンロッド4aを突合わせた状態で瞬間的に大電流(本例では、1.0V、100A)を流すことにより溶接させる。
この場合、電極4を構成するタングステンロッド4aよりも、耐ハロゲン性中間材5を構成するモリブデンロッド5aの方が融点が低いので、モリブデンを溶融し得る程度の大電流が流され、これにより生じたジュール熱によりモリブデンロッド5aの突合せ部分が溶融する温度に瞬時に加熱され、この熱により、モリブデン線5bも溶融される。
この結果、モリブデンロッド5aにタングステンロッド4aが埋め込まれると共に、モリブデン線5bも溶融されてモリブデンロッド5aに一体化される。
【0043】
このように製造された電極アセンブリ1は、同径の耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6とを突合せ溶接する場合に、溶融した導電性サーメットが局部的に元外径を越える領域に膨出することがなく、また、接合部Wには径方向に凹部や凸部が形成されることもなく、一定の外径で連結される。
したがって、電極アセンブリ1をキャピラリ3R,3Lに挿通してその接合部Wまでフリットガラス10を充填して封止したときに、フリットガラス10が均一の厚さで充填されることとなるので、ランプの点灯に伴う熱膨張によりフリットガラス10にクラックが入ることもない。
【0044】
そして最後に、各電極アセンブリ1は、封着性部材6の端部にモリブデン線またはニオブ線で成る電力供給リード8が突合せ溶接され、必要に応じてその溶接部に補強用リング9が外嵌され、該リング9内から各キャピラリ3R、3L内にかけて、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6の接合部Wを覆うようにフリットガラス10が充填される。
【0045】
封着性部材6の端部に形成すべき小径部についてさらに説明する。耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6との溶接側には必ず小径部を設ける必要がある。封着性部材6の反対側端部には電力供給リード8が溶接される。通常電力供給リード8の直径は封着性部材6の直径よりも十分小さいため、こちらの端部には小径部を形成する必要はない。しかし封着性部材6の直径と電力供給リード8の直径にあまり差がない場合には小径部を設けてあったほうが好ましい。すなわち溶接時に接触面に流れる電流密度が大きくなるため材料が早く溶ける。また、封着性部材6が外径よりはみ出すことがない。ただし、封着性部材6と電力供給リード8との溶接部は発光管2のキャピラリ3R3Lより外に出ているため、キャピラリ内に挿入されるほうの接合部Wとは異なり、溶融した導電性サーメットがその外径を越えてはみ出していても実害はない。封着性部材および電力供給リードの外径がほぼ等しく、両者の溶接部に補強用もしくは酸化防止用のリング部材が外嵌されるような構造では、本発明の技術を適用するのが好ましい。
【0046】
以上説明したとおり、本発明の製造方法に従って製造された電極アセンブリは、同径の耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6とを突合せ溶接する場合に、溶融した導電性サーメットが局部的に元外径を越える領域に膨出することがなく、また、接合部Wには径方向に凹部や凸部が形成されることもなく、一定の外径で連結されているため、電極アセンブリをキャピラリに挿入する際に引っかかることがない。また引っかかりによる不良を防止するためにあらかじめ電極アセンブリの接合部を研磨するなどの余計な工程が不要となる。
【0047】
また、本発明の製造方法に従って製造された電極アセンブリを使用したセラミックメタルハライドランプは、電極アセンブリをキャピラリ3R,3Lに挿通してその接合部Wまでフリットガラス10を充填して封止したときに、フリットガラス10が均一の厚さで充填されることとなるので、ランプの点灯に伴う熱膨張によりフリットガラス10にクラックが入ることもない。
【0048】
なお、本例では、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材としての封着性部材6とを突合せ溶接した後、電極4と耐ハロゲン性中間材5を突合せ溶接する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、電極4と耐ハロゲン性中間材5を突合せ溶接した後、耐ハロゲン性中間材5と封着性部材6とを突合せ溶接する場合であってもよい。また、耐ハロゲン性中間材5はモリブデンコイル棒のみならずタングステンロッドとタングステンコイルを組み合わせてもよいし、電極のタングステンモリブデンロッドを延長して封着性部材と溶接する端部にモリブデンもしくはタングステンのワイヤを巻き付ける構造の電極アセンブリであっても同じ効果が得られる。